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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  H04M
管理番号 1314331
異議申立番号 異議2016-700140  
総通号数 198 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2016-06-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-02-19 
確定日 2016-04-26 
異議申立件数
事件の表示 特許第5767381号「緊急通報システム、緊急通報方法、運営者装置および緊急通報プログラム」の請求項1ないし20に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第5767381号の請求項1ないし20に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
特許第5767381号の請求項1ないし20に係る特許についての出願は、平成26年10月28日に特許出願され、平成27年6月26日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許に対し、特許異議申立人 中川 賢治により特許異議の申立てがされたものである。

2.本件発明
特許第5767381号の請求項1ないし20の特許に係る発明は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1ないし20に記載された事項により特定されるとおりのものである。

3.申立理由の概要
特許異議申立人 中川 賢治は、甲第1号証として、特開2001-325689号公報を提出し、甲第2号証として、平成28年2月3日付け宇野達矢宛ての「行政文書開示決定通知書」の写しを提出し、甲第3号証として、「大規模災害、聴覚・言語機能障がいに対応した緊急通報技術の開発 平成25年度研究成果報告書」の写しを提出し、甲第3-1号証として、「大規模災害、聴覚・言語機能障がいに対応した緊急通報技術の開発 平成25年度報告書 平成26年2月 一般社団法人 情報通信技術委員会」の写しを提出し、甲第3-2号証として、「パケット通信を利用した緊急通報システム仕様書 第1版 2014年2月 一般社団法人 情報通信技術委員会」の写しを提出し、請求項1ないし20に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるから、請求項1ないし20に係る特許を取り消すべきものである旨主張している。

4.刊行物の記載
(1)甲第1号証について
甲第1号証として特許異議申立人が提出した特開2001-325689号公報(以下「刊行物」という。)には、特に図3及びその説明箇所に関して、次の発明が記載されていると認める。

「コールセンタ1と、救急通報端末2と、消防署3と、病院4と、救急車5とを有し、それらが互いにインターネットを介して接続された配車管理システムであって、
救急車5を呼ぶ状況の発生に際し、通報者により音声以外の方法により入力される救急通報元の患者の容体等に関する情報を取得し、前記情報を救急通報(119番通報)及び当該救急通報端末2の住所情報とともに前記コールセンタ1に送信する救急通報端末2と、
前記救急通報とともに前記患者の容体等に関する情報と前記住所情報を受信し、病状や住所情報等から救急通報元へ最も早く到着できる救急車5およびその救急車5を管轄する消防署3を判定し、前記消防署3へ前記住所情報を提供するとともに救急車5の出動を指示し、前記消防署3が決定した救急車5の端末に前記住所情報、患者の容体についての詳細情報や救急通報元までの経路情報を送信し、
さらに、病院状況データベースを参照し、患者の病状、指定された病院の有無により患者搬送先の病院4を決定し、前記病院4の端末に前記患者の容体等に関する情報を送信するコールセンタ1と、
前記経路情報を受信し該経路情報を確認できる救急車5の端末と
を備える配車管理システム。」(以下「刊行物に記載された発明」という。)

(2)甲第2号証、甲第3号証及び甲第3-1号証について
甲第2号証、甲第3号証及び甲第3-1号証は、甲第3-2号証の本件特許出願時の公知性を示すために特許異議申立人が提出したものである。

(3)甲第3-2号証について
甲第3-2号証は、行政機関の保有する情報の公開に関する法律(平成十一年五月十四日法律第四十二号)に基づき、甲第2号証のとおりに開示された「パケット通信を利用した緊急通報システム仕様書 第1版 2014年2月 一般社団法人 情報通信技術委員会」(以下「仕様書」という。)に関する行政文書の写しであると認められる。
そこで、仕様書に記載された事項が「公然知られた」(特許法第29条第1項第1号)、または、仕様書が「頒布された刊行物」(特許法第29条第1項第3号)にあたるかについて、平成24年10月4日判決(大阪地裁平成22年(ワ)第10064号)で判示された事項をふまえて検討する。

ア 出願前公知の有無(特許法第29条第1項第1号)について
特許法第29条第1項第1号による「公然知られた」とは、秘密保持義務のない第三者に実際に知られたことをいうと解されるところ、仕様書が、本件特許の出願日前に情報公開請求により第三者に対して開示されたことを認めるに足りる証拠はない。
この点に関して、特許異議申立人は、申立ての理由において、「甲第3号証、甲第3-1号証及び甲第3-2号証などの前記消防庁に研究結果として報告された文書は、一般的に国として早急に普及を図るべき研究内容であるから、甲第3-2号証である仕様書に記載された技術は、当該仕様書が消防署に納品された時点(平成26年2月)において、当該仕様書を作成した情報通信技術委員会の委員及び関係者の間で、また、それらの者が外部発表した際に報告・説明を受けた不特定多数の者の間で公知になっていたと考えられる。」と主張しているが、甲第3-2号証である仕様書は、甲第2号証によると平成28年1月28日付けの開示請求に対し同年2月3日付けで開示決定がされたものであるところ、仕様書の開示がどの時点で可能となったかは不明であり、また、本件特許の出願日より前に「不特定多数の者の間で公知になっていた」事実を提出された証拠から確認することができないから、前記主張は採用できない。
さらに、特許異議申立人は、申立ての理由において、「甲第3号証及び甲第3-1号証によれば、甲第3-2号証を作成した委員には守秘義務が課せられていたことを伺わせる記載はない。むしろ、甲第3号証の記載事項1の4.○1(当審注:「○1」は丸数字の1を表す。)によれば、甲第3号証の研究成果(甲第3-2号証を含む)は前記委員会の委員や関係者によって積極的に外部公表されたことが明記されているのである。してみれば、甲第3-2号証の仕様書についても、その作成委員などに守秘義務は課せられていなかったと考えるのが妥当である。」と主張しているが、仕様書の内容が、守秘義務が課せられることなく積極的に外部公表された事実を提出された証拠から確認することができないから、前記主張は採用できない。
よって、仕様書に記載された事項は、「公然知られた」にあたらず、特許法第29条第1項第1号の適用があるとはいえない。

イ 刊行物該当性(特許法第29条第1項第3号)について
特許法第29条第1項第3号の「刊行物」とは、「公衆に対し、頒布により公開することを目的として複製された文書・図書等の情報伝達媒体」をいうところ、仕様書は、頒布により公開することを目的として複製されたものとはいえない(請求があれば、その都度複製して交付することをもって、頒布ということはできない。)。
したがって、仕様書を「頒布された刊行物」であるということはできず、特許法第29条第1項第3号の適用があるとはいえない。

ウ 小活
よって、甲第3-2号証は、本件各特許が特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるか否かを判断する証拠として採用することはできない。

(4)周知技術について
ア 特許異議申立人が申立ての理由で周知技術として引用した特開2002-269660号公報(以下「周知例1」という。)には、以下の事項が記載されている。

「通報者端末4は、予め、センター1に対して・・・個人情報を登録する。」(段落【0017】)
「登録情報があれば、登録されている移動体端末の電話番号をキーにして」(段落【0018】)
「センター1は・・・通報者端末4からのメール本文の先頭に、・・・通報者端末5が予め登録した個人情報である・・・メールアドレスを追加して・・・消防端末3へ送信して、通報者端末4からの緊急通報の転送を行う。」(段落【0019】)

イ 特許異議申立人が申立ての理由で周知技術として引用した特開2002-325147号公報(以下「周知例2」という。)には、以下の事項が記載されている。

「コミュニケーション・センタ200のシステムに事前登録を行わなければならない。保護者が登録しなければならない情報は、例えば氏名、・・・、住所、」(段落【0014】)
「緊急事態記録・処理部262は、・・・動静情報DB247に格納されている看護婦500の活動可能日情報を取得して、適切な出動看護婦候補を抽出する。そして、優先順位の高い出動看護婦候補から音声会話システム21を用いて看護婦電話機51(又は携帯電話機)に電話をかけ、」(段落【0050】)

5.判断
(1)特許法第29条第2項について
ア.対比・判断
(ア)請求項1に係る発明について
請求項1に係る発明と刊行物に記載された発明とを対比すると、刊行物に記載された発明には、請求項1に係る発明に記載された「運営者装置」に関する
A 「前記通報転送手段は、前記管轄受信機関となり得るすべての前記受信機関について前記受信者装置が設置されているか否かを示す情報があらかじめ記憶されている受信機関データベースを参照して、前記管轄受信機関に前記受信者装置が設置されているか否かを判定し、前記管轄受信機関に前記受信者装置が設置されていない場合に、前記緊急通報情報を前記通報者が利用者登録をしている前記受信機関である登録受信機関に設置された前記受信者装置に送信し、」
が記載されていない。
したがって、請求項1に係る発明は、刊行物に記載された発明から当業者が容易になし得るものではない。

特許異議申立人は、前記事項Aについて、刊行物に記載された発明の「病院」を、請求項1に係る発明の「受信機関」に対応させて進歩性の検討を行っている。ここで、本件に係る特許公報の段落【0017】を参照すると、「受信機関」は、「それぞれ管轄する領域が定められている」機関をいい、さらに「管轄受信機関」は、「通報位置を管轄する受信機関」をいうことを勘案すると、刊行物に記載された発明の、病院状況データベースを参照し、患者の病状等により患者搬送先として決定される「病院」は、請求項1に係る発明の「管轄受信機関」となり得ないことが明らかである。
また、刊行物には、刊行物に記載された発明の「病院状況データベース」に、「すべての前記受信機関について前記受信者装置が設置されているか否かを示す情報」が記憶されている点は記載がなく、前記「病院状況データベース」に前記「情報」を記憶する動機付けはない。
さらに、刊行物に記載された発明は、通報者が「病院」を「指定」することはできるものの、指定された「病院」は、「通報者が利用者登録をしている受信機関(病院)」ではないから、請求項1に係る発明の「登録受信機関」ということはできない。
また、特許異議申立人が周知技術としてあげた周知例1、2の上記記載を参照しても、前記事項Aを充足できないことは明らかである。
これらの点をふまえると、前記事項Aは、刊行物に記載された発明と周知技術から容易になし得るものではないから、特許異議申立人の申立ての理由を採用することはできない。

(イ)請求項2ないし20に係る発明について
請求項2ないし17に係る発明は、請求項1に係る発明をさらに限縮したものであるから、上記請求項1に係る発明の判断と同様の理由により、刊行物に記載された発明と周知技術から当業者が容易になし得るものではない。
請求項18ないし20に係る発明は、請求項1に係る「緊急通報システム」についての発明を、それぞれ「緊急通報方法」、「運営者装置」および「緊急通報プログラム」として捉えたものであり、いずれも前項の事項Aに相当する事項を備えていることから、上記請求項1に係る発明の判断と同様の理由により、刊行物に記載された発明と周知技術から当業者が容易になし得るものではない。

(ウ)小活
以上のとおり、請求項1ないし20に係る発明は、刊行物に記載された発明と周知技術から当業者が容易に発明をすることができたものではない。

6.むすび
したがって、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、請求項1ないし20に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1ないし20に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2016-04-15 
出願番号 特願2014-219206(P2014-219206)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (H04M)
最終処分 維持  
前審関与審査官 山岸 登  
特許庁審判長 大塚 良平
特許庁審判官 林 毅
中野 浩昌
登録日 2015-06-26 
登録番号 特許第5767381号(P5767381)
権利者 株式会社妻鳥通信工業
発明の名称 緊急通報システム、緊急通報方法、運営者装置および緊急通報プログラム  
代理人 村上 浩之  
代理人 河野 貴明  
代理人 小池 晃  
代理人 伊賀 誠司  
代理人 佐藤 陽  
代理人 柑子山 浩一  
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