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審決分類 |
審判 全部申し立て 特174条1項 E05B 審判 全部申し立て 2項進歩性 E05B |
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管理番号 | 1314333 |
異議申立番号 | 異議2015-700018 |
総通号数 | 198 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2016-06-24 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2015-09-14 |
確定日 | 2016-04-28 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第5733877号「ドアロック装置」の請求項1ないし3に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第5733877号の請求項1ないし3に係る特許を維持する。 |
理由 |
1 手続の経緯 特許第5733877号(以下「本件特許」という。)の請求項1ないし3に係る特許についての出願は、平成20年8月4日に特許出願され、平成27年4月24日に特許の設定登録がされ、その後、その特許に対し、特許異議申立人青山勝(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。 2 本件発明1ないし3 本件特許の請求項1ないし3に係る発明は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定される、下記のとおりのものである(以下、それぞれ「本件発明1」「本件発明2」「本件発明3」という。分説は申立人の主張に基づく。)。 「【請求項1】 A.車両本体に対して開閉可能な後部ドアを全閉状態で保持する、上記車両本体と後部ドアの一方に設けたストライカと他方に設けた上記ストライカに係合するラッチ機構と、 B.このラッチ機構と上記ストライカの係合を解除する電動装置を備え、 C.上記電動装置が駆動部ケースに収納されたドアロック装置において、 D.上記駆動部ケース内には、揺動して上記ラッチ機構に当接して上記ラッチ機構とストライカの係合を解除するオープンレバーが備えられ、 E.このオープンレバーを車両本体内から解除操作可能にする長穴が上記駆動部ケースに形成され、 F.上記駆動部ケースに、上記後部ドアが全閉された状態において上記長穴の上方を覆い、かつ上記長穴の両端部よりも外方に延びた樋状のリブが一体に成形され突設されていること、を特徴とするドアロック装置。 【請求項2】 G.請求項1記載のドアロック装置において、上記ラッチ機構及び駆動部ケースは上記後部ドアに設けられ、上記駆動部ケースの下部に上記ラッチ機構が接続されていて、上記駆動部ケースには、上記ラッチ機構との接続部を跨ぐように樋状の第二リブが突設されているドアロック装置。 【請求項3】 H.請求項2記載のドアロック装置において、上記後部ドアが閉じられた状態において、上記第二リブは、上記リブの下方に形成された山形形状を呈していて、かつ両端部が上記リブよりも両横方向に長く形成されているドアロック装置。」 3 取消理由の概要 申立人が主張する取消理由の概要は以下のとおりである。 (1)取消理由1(補正要件違反) 平成26年7月7日付け手続補正書による補正は、本件の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものではなく、特許法第17条の2第3項に違反してなされたものであるから、同法第113条第1号の規定に該当し、請求項1に係る特許は取り消されるべきものである。 (2)取消理由2(進歩性欠如) 請求項1ないし3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるから、同法第113条第2号の規定に該当し、該特許は取り消されるべきものである。 [証拠方法] 甲第1号証:特開2006-207192号公報(「刊行物1」という。以下同様。) 甲第2号証:実願昭51-34106号(実開昭52-126519号)のマイクロフイルム(「刊行物2」) 甲第3号証:特開平7-259413号公報(「刊行物3」) 4 刊行物の記載 (1)本件特許の出願日前に頒布された刊行物1には、次の発明(以下「刊行物1発明」という。)が記載されている(申立人の主張に基づく。) 。 「A.車両本体に対して開閉可能なリアドアを全閉状態で保持する、上記車両本体に設けたストライカ(S)とリアドアに設けられ上記ストライカ(S)と係合するラッチ機構(10)と、 B.このラッチ機構(10)と上記ストライカ(S)の係合を解除するリリース機構(30)を備え、 C.上記リリース機構(30)が外装ケース(21)に収容されたドアロック装置において、 D.上記外装ケース(21)内には、揺動して上記ラッチ機構(10)に当接して上記ラッチ機構(10)とストライカ(S)の係合を解除する出力レバー(31)が備えられ、 E.この出力レバー(31)を車両本体内から解除操作可能にする窓部(211)が上記外装ケース(21)に形成されているドアロック装置。」 (2)本件特許の出願日前に頒布された刊行物2には、次の事項が記載されている。 ア 「本考案は特に自動車のドアに用いられるロック装置に関するものである。」(明細書第2頁第10?11行) イ 「第1図に於て、1は車体(図示せず)に固着されるストライカーであり、2はドア(図示せず)に固着されるドアロックである。該ドアロック2には・・・・カバープレート3と、ベースプレート4に下記主要部を樹脂にて一体的に成型加工した本体5の二基盤が設けられている。」(同第4頁第1?9行) ウ 「5fはベースプレート4の上端部及び側部に設けた防水壁であり、ドアパネル内に漏れた雨水等がドアロック1内に浸水し、ストライカー進入用溝部5aにより車室内に漏水するのを防止するものである。」(同第5頁第7?11行) エ 「該ポール13にはベースプレート4に設けた切欠孔4bに突出しベースプレート4の背面に設けたサブレバー20に連動される被連動部13aと、・・・」(同第6頁第16?19行) オ 「該噛合機構の上端部及び側部はベースプレート4に一体的に成型した防水壁5fにて水の浸入を防いでおり」(同第9頁第15?17行) カ 「第二当接部20dが該ポール13の被連動部13aを連動し、ポール13とラッチ11の係合を解除させ開扉可能となる」(同第10頁第5?8行) (3)本件特許の出願日前に頒布された刊行物3には、次の事項が記載されている。 ア 「また、シール部材(5)を伝わって流れ落ちてきた雨水は、延長部(5c)に案内されてレバー(8)の側方に流れ落ちるので、ドアパネル(A)の開口から室内側へ雨水が侵入するのが防止される。」(段落【0024】) イ 図2には、延長部(5c)の下側部分の形状が、山形形状を呈していることが、看取できる。 5 判断 (1)補正要件違反について ア 申立人の主張 申立人は、平成26年7月7日付けの手続補正書の補正により、特許請求の範囲の請求項1に「上記駆動部ケースに、・・・・樋状のリブが一体に成形され突設され」ることが追加されたが、出願当初の明細書等には、カバー51にリブ51dが一体に形成されていることは記載されておらず、出願当初の明細書等から自明でもないと主張する。 イ 判断 (ア)本件の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲及び図面(以下「当初明細書等」という。)には、以下の事項が記載されている。 a 「ケース41及びカバー51は、通常、合成樹脂で形成される。」(段落【0023】) b 「さらにこのケース41には、円弧状長穴51cの上方を覆うように、樋状または庇状のリブ51dが、連結溝51bの上方を覆うように、第二のリブとして樋状または庇状のリブ51eが形成されている。」(段落【0029】) c 「以上のように本実施形態のドアロック装置は、カバー51の表面に樋状または庇状のリブ51d、51eを設けた」(段落【0030】) d 図面について 図2の分解斜視図からは、カバー51が1つの部材であって、カバー51にリブ51dが一体に形成されていると解することができる。 (イ)上記段落【0029】には、ケース41(段落【0030】及び図2からみて、「ケース41」は「カバー51」の誤記である。)にリブ51dが形成されていることが記載されており、「形成」は「形ができ上がること。形づくること。」(広辞苑第六版)であり、「成形」は「形を作ること。形成。」( 広辞苑第六版)であること、及び図2の図示内容を踏まえると、当初明細書等には、駆動部ケース(カバー51)にリブ51dが一体に成形されていることが記載されていると認められる。 また、合成樹脂でリブなどの凹凸のある部材を一体成形することは、本願出願前から周知慣用であるところ、カバー51は合成樹脂で形成されることが記載されているから、リブ51dはカバー51と一体に成形したものであると解するのが合理的である。 (ウ)以上のとおりであるから、平成26年7月7日付け手続補正書による補正は、当初明細書等に記載された事項の範囲内でなされたものであるから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしている。 よって、申立人が主張する補正要件違反に係る理由では、本件発明1に係る特許を取り消すことはできない。 (2)進歩性欠如について ア 本件発明1について (ア)対比・判断 本件発明1と、刊行物1発明とを対比すると、刊行物1発明には、本件発明1の発明特定事項Fである「上記駆動部ケースに、上記後部ドアが全閉された状態において上記長穴の上方を覆い、かつ上記長穴の両端部よりも外方に延びた樋状のリブが一体に成形され突設されていること」が記載されていない。 また、刊行物2には、上記4(2)で摘記した事項からみて、ベースプレート4の上端部及び側部に防水壁5fが設けられていることが記載されているが、穴の上方を覆う樋状のリブは記載されていない。刊行物3には、上記4(3)で摘記した事項が記載されているが、穴の上方を覆う樋状のリブは記載されていない。すなわち、刊行物2及び3には、本件発明1の発明特定事項Fに相当する構成は開示されていない。 そして、本件発明1は、「ドア内部に水が進入しても、手動ロック解除を可能にするための長穴が樋状のリブで覆われているので、長穴から浸水することが無い。」(段落【0008】)という効果を奏するものである。 したがって、本件発明1は、当業者が刊行物1ないし3に記載の発明に基いて容易に発明することができたものでもない。 (イ)申立人の主張について 申立人は、刊行物2には、自動車のドアに用いられるロック装置において、樹脂にて一体的に成型加工した本体(5)に、被連動部13aを外部から操作するための切欠孔(4b)の上方を切欠孔(4b)の両端部よりも外方に延びる樋状の防水壁(5f)によって覆うことが開示されていると主張する。 しかしながら、刊行物2のロック装置は、上記4(2)イで摘記したように、ドアロック2はカバープレート3とベースプレート4に主要部を一体的にした本体5からなるものであって、第6図からは、本体5のベースプレート4の上端部に設けた防水壁5fがカバープレート3に接続されて、ベースプレート4とカバープレート3の間の空間を覆っていることが見てとれるから、ベースプレート4の上端部に設けた防水壁5fは、ケースの外周壁に相当するものと解するのが妥当である。 また、上記4(2)ウ及びオで摘記した事項から明らかなように、ベースプレート4の上端部及び側部に設けた防水壁5fは、ドアパネル内に漏れた雨水等がドアロック2内に浸水するのを防止するとともに、噛合機構の上端部及び側部への水の浸入を防ぐものであるが、切欠孔(4b)からドアロック2内に浸水するのを防止するとの記載や示唆はない。 したがって、刊行物2には、本件発明1の発明特定事項Fに相当する構成は記載も示唆もされていないから、申立人の上記主張は採用できない。 イ 本件発明2及び3について 本件発明2及び3は、本件発明1をさらに減縮したものであるから、本件発明1ついての判断と同様の理由により、当業者が刊行物1?3に記載の発明に基いて容易に発明することができたものではない。 6 むすび 以上のとおり、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、請求項1ないし3に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に請求項1ないし3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2016-04-18 |
出願番号 | 特願2008-200581(P2008-200581) |
審決分類 |
P
1
651・
121-
Y
(E05B)
P 1 651・ 55- Y (E05B) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 家田 政明 |
特許庁審判長 |
赤木 啓二 |
特許庁審判官 |
小野 忠悦 住田 秀弘 |
登録日 | 2015-04-24 |
登録番号 | 特許第5733877号(P5733877) |
権利者 | シロキ工業株式会社 |
発明の名称 | ドアロック装置 |
代理人 | 三浦 邦夫 |
代理人 | 三浦 邦陽 |