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審決分類 審判 訂正 ただし書き3号明りょうでない記載の釈明 訂正する G03G
審判 訂正 3項(134条5項)特許請求の範囲の実質的拡張 訂正する G03G
管理番号 1314605
審判番号 訂正2016-390005  
総通号数 199 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-07-29 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2016-01-14 
確定日 2016-03-25 
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5759172号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第5759172号の明細書、及び特許請求の範囲を本件審判請求書に添付された訂正明細書、及び特許請求の範囲のとおり訂正することを認める。 
理由 第1 手続の経緯
本件訂正審判の請求に係る特許第5759172号は、平成22年12月28日に特許出願され、その請求項1ないし4に係る発明は、平成27年6月12日にその特許権の設定登録がなされたものであって、平成28年1月14日に本件訂正審判が請求された。

第2 請求の趣旨及び訂正の内容
1.請求の趣旨及び訂正の内容
本件訂正審判の請求の趣旨は、特許第5759172号の特許権全体に対し、明細書、特許請求の範囲を本件審判請求書に添付された、訂正明細書、訂正特許請求の範囲のとおり訂正することを求めるものであり、その訂正の内容は、以下のとおりである。(審決注:下線部分が訂正箇所である。)

ア 訂正事項1
本件特許の特許請求の範囲の請求項1に「基材と、発泡シリコーンゴムからなる弾性層と、表層とをこの順に有し、該発泡シリコーンゴムは発泡剤としてシリカゲルを含む液状シリコーンゴム混和物を発泡および硬化させて形成したものであることを特徴とする電子写真装置用の熱定着装置に用いられる定着部材。」とあるのを、「基材と、発泡シリコーンゴムからなる弾性層と、表層とをこの順に有する、電子写真装置用の熱定着装置に用いる定着部材の製造方法であって、該発泡シリコーンゴムを、発泡剤としてシリカゲルを含む液状シリコーンゴム混和物を発泡および硬化して形成することを特徴とする定着部材の製造方法。」に訂正する。
イ 訂正事項2
本件特許の特許請求の範囲の請求項2に「定着部材」とあるのを、「定着部材の製造方法」に訂正する。
ウ 訂正事項3
本件特許の特許請求の範囲の請求項3に「定着部材」とあるのを、「定着部材の製造方法」に訂正する。
エ 訂正事項4
本件特許の特許請求の範囲の請求項4を削除する。
オ 訂正事項5
本件特許の明細書の【発明の名称】に「定着部材及び定着装置」とあるのを、「定着部材の製造方法」に訂正する。
カ 訂正事項6
本件特許の明細書の段落【0001】に「本発明は電子写真装置に用いる定着部材およびこれを用いた定着装置に関する。」とあるのを、「本発明は電子写真装置に用いる定着部材の製造方法に関する。」に訂正する。
キ 訂正事項7
本件特許の明細書の段落【0008】に「そこで、本発明の目的は、熱定着装置の定着部材として長期にわたって使用した場合にも硬度の低下が小さい弾性層を備えた定着部材を提供することを目的とする。また、本発明の他の目的は、長期にわたって、安定した定着性能を発現する定着装置を提供することを目的とする。」とあるのを、「そこで、本発明の目的は、熱定着装置の定着部材として長期にわたって使用した場合にも硬度の低下が小さい弾性層を備えた定着部材の製造方法を提供することを目的とする。」に訂正する。
ク 訂正事項8
本件特許の明細書の段落【0009】に「本発明は、基材と、発泡シリコーンゴムからなる弾性層と、表層とをこの順に有し、該発泡シリコーンゴムは発泡剤としてシリカゲルを含む液状シリコーンゴム混和物を発泡および硬化させて形成したものであることを特徴とする電子写真装置用の熱定着装置に用いられる定着部材定着部材である。」とあるのを、「本発明は、基材と、発泡シリコーンゴムからなる弾性層と、表層とをこの順に有する、電子写真装置用の熱定着装置に用いる定着部材の製造方法であって、該発泡シリコーンゴムを、発泡剤としてシリカゲルを含む液状シリコーンゴム混和物を発泡および硬化して形成することを特徴とする定着部材の製造方法である。」に訂正する。
ケ 訂正事項9
本件特許の明細書の段落【0010】を削除する。
コ 訂正事項10
本件特許の明細書の段落【0011】に「本発明によれば、電子写真装置用熱定着装置に用いる定着部材であって、高温低酸素雰囲気下での硬度の低下が小さい定着部材が提供される。また、前記の定着部材を定着装置に具備することにより、長期にわたって、安定した画像性能を発現する定着装置が得られる。」とあるのを、「本発明によれば、電子写真装置用の熱定着装置に用いる定着部材の製造方法であって、高温低酸素雰囲気下での硬度の低下が小さい定着部材の製造方法が提供される。」に訂正する。

第3 当審の判断
1.訂正事項1について
(1)訂正の目的について
訂正前請求項1の記載は、「?電子写真装置用の熱定着装置に用いられる定着部材」であるから、訂正前請求項1発明の対象は、「定着部材」という「物」であることは明らかである。
そして、訂正前請求項1には、「該発泡シリコーンゴムは発泡剤としてシリカゲルを含む液状シリコーンゴム混和物を発泡および硬化させ」と特定されていることから、定着部材の有する弾性層を構成する「発泡シリコーンゴム」に関し、その「製造方法」が記載されている。

ここで、「物の発明についての特許に係る特許請求の範囲にその物の製造方法が記載されている場合において、当該特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号にいう『発明が明確であること』という要件に適合するといえるのは、出願時において当該物をその構造又は特性により直接特定することが不可能であるか、又はおよそ実際的でないという事情が存在するときに限られると解するのが相当である」(最高裁第二小法廷判決平成27年6月5日(平成24年(受)第1204号))と判示されている。

そこで、上記判示事項を踏まえて検討すると、訂正前請求項1の「発泡剤としてシリカゲルを含む液状シリコーンゴム混和物を発泡および硬化させ」との「発泡シリコーンゴム」の製造方法が記載されているから、「発明が明確であること」という要件を欠くおそれがあるものである。

そして、訂正事項1は、「発明が明確であること」という要件を欠くおそれがある訂正前請求項1を、「基材と、発泡シリコーンゴムからなる弾性層と、表層とをこの順に有する、電子写真装置用の熱定着装置に用いる定着部材の製造方法」として、「発泡シリコーンゴムを、発泡剤としてシリカゲルを含む液状シリコーンゴム混和物を発泡および硬化して形成すること」を特定する訂正後請求項1に訂正するものであって、「発明が明確であること」という要件を満たすものである。
したがって、当該訂正は、特許法第126条第1項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当する。

(2)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであるか否かについて
本件の願書に添付した明細書の段落【0009】には、訂正後請求項1発明に対応する「発泡シリコーンゴムは発泡剤としてシリカゲルを含む液状シリコーンゴム混和物を発泡および硬化させ」ることが記載されているから、訂正事項1は、本件の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものである。
したがって、訂正事項1は、特許法第126条第5項の規定に適合する。

(3)訂正が実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものであるか否かについて
ア 発明が解決しようとする課題とその解決手段について
特許法第126条第6項は、第1項に規定する訂正がいかなる場合にも実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものであってはならない旨を規定したものである。
また、特許法第36条第4項第1号の規定により委任された特許法施行規則の第24条の2には、「特許法第36条第4項第1号の経済産業省令で定めるところによる記載は、発明が解決しようとする課題及びその解決手段その他のその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が発明の技術上の意義を理解するために必要な事項を記載することによりしなければならない。」と規定されているから、訂正前請求項1発明と訂正後請求項1発明において、発明が解決しようとする課題及びその解決手段が、実質的に変更されたものか否かにより、訂正後請求項1発明の技術的意義が、訂正前請求項1発明の技術的意義を実質上拡張し、又は変更されたものであるか否かについて検討する。

訂正前の本件特許明細書の段落【0008】?【0011】の記載から、訂正前請求項1発明の課題は、「長期にわたって使用した場合にも、定着部材の弾性層の硬度の低下を小さくする」ことであり、その解決手段は「発泡シリコーンゴムからなる弾性層」について、「発泡シリコーンゴムを、発泡剤としてシリカゲルを含む液状シリコーンゴム混和物を発泡および硬化させて形成」することである。
一方、訂正後の本件特許明細書の段落【0008】?【0011】の記載から、訂正後請求項1発明の課題は、「長期にわたって使用した場合にも、定着部材の弾性層の硬度の低下を小さくする」ことであり、その解決手段は「発泡シリコーンゴムからなる弾性層」について、「発泡シリコーンゴムを、発泡剤としてシリカゲルを含む液状シリコーンゴム混和物を発泡および硬化して形成」することである。
してみると、訂正前請求項1発明と訂正後請求項1発明の課題には、何ら変更はなく、訂正前請求項1発明と訂正後請求項1発明における課題解決手段も、実質的な変更はない。
したがって、訂正後請求項1発明の技術的意義は、訂正前請求項1発明の技術的意義を実質上拡張し、又は変更するものではない。

イ 訂正による第三者の不測の不利益について
特許請求の範囲は、「特許を受けようとする発明を特定するために必要と認める事項のすべて」が記載されたもの(特許法第36条第5項)である。
また、特許法第126条第6項は、第1項に規定する訂正がいかなる場合にも実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものであってはならない旨を規定したものであって、訂正前の特許請求の範囲には含まれないとされた発明が訂正後の特許請求の範囲に含まれることとなる、言い換えれば、訂正前の発明の「実施」に該当しないとされた行為が訂正後の発明の「実施」に該当する行為となる場合、第三者にとって不測の不利益が生じるおそれがあるため、そうした事態が生じないことを担保したものである。
以上を踏まえ、訂正前請求項1発明と訂正後請求項1発明において、それぞれの発明の「実施」に該当する行為の異同により、訂正後請求項1発明の「実施」に該当する行為が、訂正前請求項1発明の「実施」に該当する行為を実質上拡張し、又は変更するものであるか否かについて検討する。

ここで、特許法第2条第3項第1号に規定された「物の発明」(訂正前請求項1発明)及び第3号に規定された「物を生産する方法の発明」(訂正後請求項1発明)の実施について比較する。
「物の発明」の実施(第1号)とは、「その物の生産、使用、譲渡等、輸出若しくは輸入又は譲渡等の申出をする行為」であり、「物を生産する方法」の実施(第3号)とは、「その方法の使用をする行為」(第2号)のほか、その方法により生産した「物の使用、譲渡等、輸出若しくは輸入又は譲渡等の申出をする行為」である。ここで、「物を生産する方法」の実施における「その方法の使用をする行為」とは、「その方法の使用により生産される物の生産をする行為」と解されることから、「物の発明」の実施における「その物の生産」をする行為に相当する。

すると、「物の発明」の実施においては、物の生産方法を特定するものではないのに対して、「物を生産する方法の発明」の実施においては、物の生産方法を「その方法」に特定している点で相違するが、その実施行為の各態様については、全て対応するものである。

そして、訂正前請求項1発明は、「発泡剤としてシリカゲルを含む液状シリコーンゴム混和物を発泡および硬化させ」るという製造方法(以下「特定の製造方法」という)により「定着部材」という物が特定された「物の発明」であるから、前記特定の製造方法により製造された「定着部材」に加え、前記特定の製造方法により製造された「定着部材」と同一の構造・特性を有する物も、特許発明の実施に含むものである。
一方、訂正後請求項1発明は、上記特定の製造方法により「定着部材の製造方法」という方法が特定された「物を生産する方法の発明」であるから、前記特定の製造方法により製造された「定着部材」を、特許発明の実施に含むものである。

したがって、訂正後請求項1発明の「実施」に該当する行為は、訂正前請求項1発明の「実施」に該当する行為に全て含まれるので、第三者にとって不測の不利益が生じるおそれはないから、訂正前請求項1発明の「実施」に該当する行為を実質上拡張し、又は変更するものとはいえない。

ウ 小括
訂正後請求項1発明の技術的意義は、訂正前請求項1発明の技術的意義を実質上拡張し、又は変更するものではなく、訂正後請求項1発明の「実施」に該当する行為は、訂正前請求項1発明の「実施」に該当する行為を実質上拡張し、又は変更するものとはいえないから、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第126条第6項の規定に適合する。

2.訂正事項2、及び3について
上記「1.」と同様の理由により、当該訂正は、特許法第126条第1項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当し、また、特許法第126条第5項、第6項の規定に適合する。

3.訂正事項4について
上記訂正事項4は、請求項4を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
したがって、当該訂正は、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当し、また、特許法第126条第5項、第6項の規定に適合する。また、訂正後請求項1発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないとする理由を発見しないから、当該訂正は、特許法第126条第7項の規定に適合する。

4.訂正事項5?10について
上記訂正事項5?10は、上記訂正事項1?4の訂正に伴って、特許請求の範囲と明細書の記載の整合を図るものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
したがって、当該訂正は、特許法第126条第1項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当し、また、特許法第126条第5項、第6項の規定に適合する。

第4 むすび
以上のとおりであるから、本件審判の請求に係る訂正事項1ないし10は、特許法第126条第1項ただし書第1号、及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ同条第5項、第6項、及び第7項の規定に適合するものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
定着部材の製造方法
【技術分野】
【0001】
本発明は電子写真装置に用いる定着部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真装置の加熱定着装置は、未定着トナーを熱定着させるための定着部材として、未定着トナーを加熱するための加熱用部材と、当該加熱用部材と対向して配置され、加熱用部材とともにニップ部を形成する加圧用部材とを有している。
【0003】
ここで、加熱定着装置の加熱方式には、内部加熱方式と外部加熱方式とが知られている。すなわち、内部加熱方式は、図7に示すように、加熱用部材の内部にセラミックヒータなどの加熱手段14を配置し、加熱用部材の表面を定着温度に加熱する方式である。内部加熱方式においては、未定着トナーの加熱効率を高めるために、加熱用部材に対向配置付与されている加圧用部材に熱が流れることを抑制するために、加圧用部材の断熱性の向上が求められている。また、外部加熱方式は、加熱用部材の外部に加熱手段を配置し、加熱用部材の表面を外部から定着温度にまで加熱する方式である。特許文献1では、可撓性部材を加熱用部材に接触させ、この可撓性部材を内側から加熱源により加熱して加熱用部材の外側から当該加熱用部材の表面を加熱する構成が開示されている。かかる外部加熱方式においては、外部からの熱を加熱用部材の表面により効率良く蓄積させるべく、加熱用部材の断熱性の向上が求められている。
【0004】
定着部材(以降、本発明においては、「加圧用部材」および「加熱用部材」を包括して「定着部材」と称する)の断熱性を高める方法の一つとして、熱伝導率の低いスポンジゴムからなる弾性層を設ける方法がある。また、材質的には、熱劣化に対して優れた耐久性を示すシリコーンゴムが好適に用いられている。
【0005】
特許文献2には、シリコーンゴム発泡体に係る発明が開示されている。そして、シリコーンゴム発泡体の製造方法として、水やガスを吸着しているゼオライトを液状シリコーンゴムに加えて均一混合し、これを加熱することにより空洞に存在する水やガス等を熱膨張せしめて発泡体を形成する方法を開示している。この方法は、低コストでセル径の揃った微小かつ均一な発泡セルを有する発泡シリコーンゴムを得るうえで好ましい方法であるとの知見を本発明者らは得た。しかしながら、この方法により製造した発泡シリコーンゴムからなる弾性層を有する定着部材を熱定着装置に適用して、更なる検討を重ねたところ、長期の使用により弾性層が通常のシリコーンゴムの耐熱性から想定されるよりも軟化劣化しやすくなる場合があることを本発明者らは知見した。ここでいう軟化劣化とは弾性層の硬度の低下のことである。「軟化劣化しやすい」とは、「硬度の低下が大きい」ということを指す。弾性層の硬度の変化は、定着時のニップ巾の変化をもたらし、熱定着装置の定着性能に影響を与えることとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007-121441号公報
【特許文献2】特開2008-019337号公報
【特許文献3】特開2001-062380号公報
【特許文献4】特開2002-213432号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】シリコーンハンドブック、出版:日刊工業新聞社、p299?302
【非特許文献2】最新フィラー全集、出版:技術情報協会、第3章第4節
【非特許文献3】Bull. Chem. Soc. Jpn., 2005, 78, 1154
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明の目的は、熱定着装置の定着部材として長期にわたって使用した場合にも硬度の低下が小さい弾性層を備えた定着部材の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、基材と、発泡シリコーンゴムからなる弾性層と、表層とをこの順に有する、電子写真装置用の熱定着装置に用いる定着部材の製造方法であって、該発泡シリコーンゴムを、発泡剤としてシリカゲルを含む液状シリコーンゴム混和物を発泡および硬化して形成することを特徴とする定着部材の製造方法である。
【0010】(削除)
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、電子写真装置用の熱定着装置に用いる定着部材の製造方法であって、高温低酸素雰囲気下での硬度の低下が小さい定着部材の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係るベルト形状およびローラ形状の定着部材の横断面模式図である。
【図2】本発明に係る定着部材の弾性層の断面模式図である。
【図3】シリコーンゴム発泡体(発泡シリコーンゴム)の吸着特性の説明図である。
【図4】シリコーンゴム発泡体からの吸着質の脱離過程の説明図である。
【図5】液状シリコーンゴム混和物の加熱による発泡・硬化過程の説明図である。
【図6】本発明に係る定着部材の表層を形成する工程の説明図である。
【図7】本発明に係る定着装置の一態様を示す断面図である。
【図8】本発明に係る定着装置の他の態様を示す概略断面図である。
【図9】実施例で用いた窒素ガス吸着操作の一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明者らは、特許文献2に係る方法によって製造した発泡シリコーンゴムからなる弾性層を備えた定着部材が有する上記の課題について検討した。評価に用いた定着部材の弾性層は、フッ素樹脂(PFA)製のチューブからなる表層で被覆していた。PFA製のチューブは空気透過性が低く、弾性層は低酸素雰囲気下にあると考えられるため、弾性層の硬度が低下するのは、弾性層のベース材であるシリコーンゴムの酸化による劣化が原因である可能性は低いと考えられる。しかしながら、シリコーンゴムの耐熱性は不純物の存在により影響を受けることが知られている。(非特許文献1参照)
そこで、本発明者らは、特許文献2に記載の発泡シリコーンゴムの製造に用いたゼオライト中に構成成分として存在するナトリウム等のアルカリ金属元素が、イオン化することで不純物として作用し、シリコーンゴムの高温低酸素雰囲気下での劣化を促進させているものと推定した。かかる推定に基づき、ゼオライトと同様に、発泡に必要な空孔を有するものの、構成成分にアルカリ金属元素を含有しないシリカゲルを用いて発泡シリコーンゴムを製造した。かかる方法によって得られた発泡シリコーンゴムからなる弾性層を備えた定着部材は、高温低酸素雰囲気下における弾性層の軟化劣化が、格段に抑制されたものであった。本発明はこのような実験結果に基づきなされたものである。
すなわち、本発明に係る定着部材は、基材と、発泡シリコーンゴムからなる弾性層と、表層とをこの順に有している。そして、該発泡シリコーンゴムは発泡剤としてシリカゲルを含む液状シリコーンゴム混和物を発泡および硬化させて形成したものである。
【0014】
(1)定着部材の構成概略
本発明の詳細について図面を用いて説明する。
図1は、本発明に係る電子写真用定着部材を示す概略断面模式図である。1はベルト形状を有する定着部材(定着ベルト及び加圧ベルト)であり、2はローラ形状の定着部材(定着ローラもしくは加圧ローラ)を示している。図1において、3は基材、4は基材3の周面を被覆している弾性層、6は表層である。表層6は、弾性層4の周面に接着層5により固定されている場合がある。また、図2は、定着部材の弾性層の断面を模式的に表した図である。図2において、4aは弾性層のベース材としてのシリコーンゴム、4bはシリカゲル、4cは発泡セルを示している。これらについては後に詳述する。
【0015】
(2)定着部材の基材
定着部材がローラ形状である場合、基材にはアルミニウム、鉄などの金属や合金からなる芯金が用いられ、定着装置での加圧に耐える強度を有していればよい。
定着部材がベルト形状である場合、電鋳ニッケルスリーブやステンレススリーブ、ポリイミドなどの耐熱性樹脂を用いることができる。内面には、耐磨耗性や断熱性などの機能を付与するための層がさらに設けられることがあり、外面には弾性層との接着性の機能を付与するための層が設けられることがある。
【0016】
(3)定着部材の弾性層
弾性層は、定着部材が加熱用部材として用いられる場合、定着時に紙の凹凸に追従するための弾性を付与させる層として機能し、定着部材が加圧用部材として用いられる場合、定着時のニップ巾を確保するための弾性を付与する層として機能する。このような機能を発現させる上で、弾性層のベース材として、未硬化のシリコーンゴムを用いることが好ましい。未硬化のシリコーンゴムには、大きくは液状シリコーンゴムやミラブル型シリコーンゴムがあるが、本発明では、液状シリコーンゴムを用いる。液状シリコーンゴムのほうがシリカゲルを分散させやすく、発泡セルを均一に分散させた発泡シリコーンゴムの層を形成できるからである。液状シリコーンゴムの中でも、縮合硬化型と付加硬化型があるが、硬化の均一性に優れていることから付加硬化型の液状シリコーンゴムが特に好ましい。本発明における弾性層は、発泡シリコーンゴムからなり、発泡シリコーンゴムは、液状シリコーンゴムと発泡剤からなる液状シリコーンゴム混和物を発泡および硬化させて形成したものを指す。
【0017】
(3-1)付加硬化型の液状シリコーンゴム
図2に定着部材の弾性層の断面模式図を示す。弾性層のベース材4aを構成するものとして、例えば、付加硬化型の液状シリコーンゴムがある。一般に、付加硬化型の液状シリコーンゴムには、不飽和脂肪族基を有するオルガノポリシロキサンと、ケイ素に結合した活性水素を有するオルガノポリシロキサン、および架橋触媒として白金化合物が含まれている。
【0018】
不飽和脂肪族基を有するオルガノポリシロキサンの例は以下のものを含む。
(a)分子両末端がR_(3)SiO_(1/2)で表され、中間単位がR_(2)SiOおよびR_(2)SiOで表される直鎖状オルガノポリシロキサン;および
(b)中間単位にRSiO_(3/2)乃至SiO_(4/2)が含まれる分岐状ポリオルガノシロキサン。直鎖状のオルガノポリシロキサンの例としては、下記一般式で示される。
【化1】

分岐状のオルガノポリシロキサンの例としては、下記一般式で示される。
【化2】

ここでl、m、nは、l≧0、m≧0、n≧0、m+n≧1を満たす整数である。
Rは、以下の(A)、(B)に示す官能基を表す。
(A)ケイ素原子に結合した、脂肪族不飽和基を含まない1価の非置換または置換炭化水素基
(B)ケイ素原子に結合した不飽和脂肪族基
(A)の具体例として、(a)アルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル等);(b)アリール基(フェニル基等);(c)置換炭化水素基(例えば、クロロメチル、3-クロロプロピル、3,3,3-トリフルオロプロピル、3-シアノプロピル、3-メトキシプロピル等)。特に、合成や取扱いが容易で、優れた耐熱性が得られることから、Rの50%以上がメチル基であることが好ましく、すべてのRがメチル基であることが特に好ましい。また、(B)の具体例として、ビニル基、アリル基、3-ブテニル基、4-ペンテニル基および5-ヘキセニル基があり、合成や取扱いが容易で、架橋反応も容易に行われることから、ビニル基が好ましい。
R’は、オルガノポリシロキサンを示す。
【0019】
また、ケイ素に結合した活性水素を有するオルガノポリシロキサンは白金化合物の触媒作用により、不飽和脂肪族基を有するオルガノポリシロキサン成分のアルケニル基との反応によって架橋構造を形成させる架橋剤である。
【0020】
ケイ素原子に結合した水素原子の数は、1分子中に平均3個を越える数である。
【0021】
ケイ素原子に結合した有機基としては、不飽和脂肪族基を有するオルガノポリシロキサン成分のR^(1)と同じ範囲である非置換または置換の1価の炭化水素基が例示される。特に、合成および取扱いが容易なことから、メチル基が好ましい。
【0022】
ケイ素に結合した活性水素を有するオルガノポリシロキサンの分子量は特に限定されない。
【0023】
また、当該オルガノポリシロキサンの25℃における動粘度は、好ましくは10mm^(2)/s以上100,000mm^(2)/s以下の範囲である。保存中に揮発して所望の架橋度や成形品の物性が得られないということがなく、また合成や取扱いが容易で、系に容易に均一に分散させることができるからである。
【0024】
シロキサン骨格は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでも差支えなく、これらの混合物を用いてもよい。特に合成の容易なことから、直鎖状のものが好ましい。Si-H結合は、分子中のどのシロキサン単位に存在してもよいが、少なくともその一部が、R^(1)_(2)HSiO_(1/2)単位のような分子末端のシロキサン単位に存在することが好ましい。
【0025】
付加硬化型の液状シリコーンゴムとしては、不飽和脂肪族基の量が、ケイ素原子1モルに対して0.1モル%以上、2.0モル%以下であるものが好ましい。特に好ましくは、0.2モル%以上、1.0モル%以下である。
【0026】
(3-2-1)発泡剤について
図2において、発泡剤としてのシリカゲルは4bで示されている。
(a)種類
シリコーンゴムの耐熱性への影響を考えると、シリカゲルは不純物の量が少ないほどよい。また、本発明に用いるシリカゲルとして、メソポーラスシリカを用いてもよい。メソポーラスシリカは、均一で規則的な細孔を有するので、より均一で規則的な発泡セルを形成することができるため、好適である。
(b)粒子特性
平均粒径は、1μm以上50μm以下が好ましい。粒子径が小さいと、粒子径の大きいものに比べ、硬化後の弾性層の硬度が上昇しやすい。粒子径が大きいと硬度ムラが発生する可能性がある。粒子径、細孔径、比表面積、細孔容積の異なる二成分以上のシリカゲル及びメソポーラスシリカを同時に液状シリコーンゴムに添加してもよい。液状シリコーンゴムへシリカゲル等の粒子の充填による弾性層の硬度上昇の問題を解決する方法として、平均粒径の異なる二成分以上の球状粒子を適度な比率で含有させることで、大きい粒子の間に発生する隙間を小さな粒子が埋めることができ、弾性層の硬度上昇を抑えることができる(非特許文献2参照)。
形状は球状、粉砕状などがあるが、分散性の観点から球状が好ましい。
【0027】
シリカゲルやメソポーラスシリカといった多孔質体は、細孔を有し、細孔表面と吸着質との間に働く分子間相互作用によりガスなどの吸着質を吸着させる性質を有しており、吸着剤として用いられている。そのため、多孔質体の細孔径、比表面積、細孔容積は、多孔質体の吸着特性に関連がある。
【0028】
多孔質体の比表面積や細孔容積が大きいほど、多孔質体の細孔部分が大きく、吸着できる量が多くなる。図3に、多孔質体7の吸着特性の概略説明図を示す。図3(a)は吸着層(吸着質9の層)が形成されていない多孔質体、図3(b)は細孔8表面に一層の吸着層を形成している多孔質体、図3(c)は細孔8の表面に複数の吸着層を形成している多孔質体の空孔部分を示している。
【0029】
具体的には、図3で示すように、吸着質9は、細孔表面にまず吸着層として一層形成した後、二層目、三層目と順に形成する。多孔質体の比表面積は、多孔質体の細孔表面に吸着質が吸着層を一層形成できる量に関係する。また、多孔質体の細孔容積は、多孔質体の細孔内に吸着層を二層以上形成できる量に関係すると考えられている。シリコーンゴムの発泡倍率を大きくすることを考えると、比表面積が100m^(2)/g以上、または細孔容積が0.80mL/g以上であるシリカゲル及びメソポーラスシリカを用いることが好ましい。
【0030】
また、細孔径は、2nm以上の細孔が好ましい。さらに、好ましくは5nm以上である。
【0031】
これら多孔質体の細孔径、比表面積、細孔容積は、比表面積測定装置(商品名:TriSter3000、島津製作所製)を用いることにより、測定可能である。
【0032】
多孔質体7における吸着質9の脱離過程について、図4に示される概略図を用いて説明する。図4の(a)では細孔8の径の小さい多孔質体7における吸着質9の脱離過程、(b)では細孔8の径の大きい多孔質体7における吸着質9の脱離過程を示している。細孔8の径が大きいと、吸着している分子が減圧や加熱により脱離する際、細孔外へ出る出口の面積が大きいため、細孔の外に出やすいと考えられる。平均細孔径が2nmより小さいと吸着する力が強くなりすぎて、細孔中の吸着質が脱離するために大きなエネルギーが必要となる上、細孔外へ出る出口の面積も小さいため、液状シリコーンゴムを硬化させるまでの間に発泡させることが難しくなる。平均細孔径が30nmより大きいと、細孔外へ出る出口の面積が大きく、室温・大気圧条件下であまり吸着しないと考えられるので、液状シリコーンゴムを十分に発泡させることが難しい。
【0033】
そのため、細孔の径の大きいシリカゲルの方が液状シリコーンゴムが硬化するまでの間により多くの吸着質を細孔外に排出することができるので発泡速度がよりはやくなり、一方で、比表面積や細孔容積が大きい方が、吸着質を細孔に含有できる量が大きくなる。液状シリコーンゴムが硬化するまでにより多く吸着質を排出できる速度を考えると、これらを両立したメソ細孔を持つシリカゲル用いることにより、より発泡倍率の大きなシリコーンゴム発泡体を得ることができる。
【0034】
(3-2-2)シリカゲルの含有量
弾性層の柔軟性を確保しつつも、その断熱性を充分に達成させるために、総量として弾性層4中に、液状シリコーンゴム100重量部に対して、上記シリカゲルは、吸着質を除いたシリカゲルのみの重量基準で0.1重量部以上40重量部以下の範囲で含有させることが好ましい。40重量部以上では、前駆体組成物の粘度が大きくなり、均一にシリカゲルを分散させた弾性層を形成することが難しくなる。
【0035】
(3-3)弾性層の厚さ
弾性層の厚みについては、定着部材がローラ形状を有する場合は、十分に低い熱伝導率を有し、且つ熱容量が大きくなり過ぎないためには、2.0?5.0mm、好ましくは2.5?4.0mmとすることが好ましい。
定着部材がベルト形状を有する場合には、断熱性を有し、ベルトとして弾性層の厚みは0.5?2.0mm程度に設定することが好ましい。
【0036】
(3-4-1)弾性層の形成
弾性層は金型成型法、またはブレードコート法、ノズルコート法、リングコート法等の加工法により形成されることが、広く知られている(特許文献3および4参照)。これらの方法により基材の上に担持された混和物を加熱・架橋することで弾性層を形成することができる。シリカゲルと液状シリコーンゴムとを有する液状シリコーンゴム混和物が加熱によりシリカゲルの細孔内の吸着質が発泡することを考えると、金型成型法が好ましい。型内で弾性層を形成するので外表面が平滑な弾性層を得ることができる。
図1に示す基材3上に弾性層4を形成する工程の一例として、所謂金型成型法を用いる方法を説明する。基材3を任意の内径の円筒状金型内に同心となるように設置させて、シリカゲルと液状シリコーンゴムとを有する液状シリコーンゴム混和物を円筒状金型へ注型し、130℃のオーブンに入れ20分間加熱成型した。このとき、シリカゲルによりシリコーンゴムを発泡させると同時に硬化する。脱型後、200℃のオーブンで4時間加熱処理することによりシリコーンゴム弾性ローラを形成した。
【0037】
(発泡体形成原理)
図2は、本発明の定着部材の弾性層の断面模式図である。詳しくは、室温、大気圧下で保存されていたシリカゲルと、付加硬化型の液状シリコーンゴムを均一混合して液状シリコーンゴム混和物とし、これを加熱し、液状シリコーンゴムを硬化させると同時に発泡させて得た、本発明の高温低酸素雰囲気下での硬度の低下が小さいシリコーンゴム発泡体の断面図である。ベース材4aとしてのシリコーンゴム中にシリカゲル4bが発泡剤として含まれている。上記液状シリコーンゴム混和物を加熱したときに、全体が加熱されて硬化するまでの間に、液状シリコーンゴムを通してシリカゲルが加熱され、シリカゲルの細孔に吸着している窒素や酸素などを含む空気が脱離するためのエネルギーを得て、細孔外に出て硬化前の液状シリコーンゴムを押しのけて発泡セル4cを作る。
【0038】
(発泡体制御方法)
図2では、室温かつ大気圧下でシリカゲルの細孔に吸着していた空気中に含まれる窒素や酸素などが、加熱により細孔から脱離することで、液状シリコーンゴムに発泡セルを形成させるものであるが、シリカゲルの細孔に吸着質を予め吸着させることで、吸着質を増やし、発泡倍率を大きくすることもできる。窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガスや水など発泡シリコーンゴムの軟化劣化しやすくさせない物質ならシリカゲルに予め吸着させてもよい。
【0039】
図3は、細孔に窒素などの吸着質を吸着させたシリカゲルを液状シリコーンゴム中に均一混合し、これを加熱して、シリカゲルの細孔に吸着させていた吸着質を脱離させて発泡セルが形成された高温低酸素雰囲気下での硬度の低下が小さいシリコーンゴム発泡体の細孔部分を示す。
【0040】
また、シリカゲルの細孔径、比表面積や細孔容積や液状シリコーンゴムの硬化速度や加熱方法によって発泡セルのサイズや発泡倍率を調整することができる。
【0041】
また、遅延剤により液状シリコーンゴムの硬化速度を調整することによって、シリコーンゴム発泡体の発泡セルの大きさや発泡倍率を調整することができる。液状シリコーンゴムの硬化速度を遅くすることでシリコーンゴム発泡体の発泡倍率が大きくなるが、気泡の合一や気泡の熱膨張により発泡セルが大きくなりすぎてしまい、硬度ムラや強度の低下を引き起こしてしまう恐れがある。液状シリコーンゴムの硬化速度が速いと、シリカゲルが加熱され、細孔の中の吸着質が脱離して、細孔外へ出る前に、硬化してしまい、発泡倍率が小さくなる可能性がある。
【0042】
(加熱方法)
加熱方法に関しては、図5(a)で示すようにシリカゲル4bとベース材4aとしての液状シリコーンゴムを含む液状シリコーンゴム混和物の全体を均一に加熱する方が好ましい。液状シリコーンゴム混和物を加熱したとき、液状シリコーンゴムはシリカゲルの細孔内の吸着質より熱伝導率が高く、温まりやすい。そのため、図5(b)で示すように、シリカゲル4bと液状シリコーンゴム4aを含む液状シリコーンゴム混和物を全体に不均一に加熱したとき、ほとんどの熱は、液状シリコーンゴムに伝わってしまい、シリカゲルの細孔内の吸着質へ熱が伝わって、吸着質がシリカゲルの細孔から排出されるまでの時間が増大する。つまり、液状シリコーンゴムの硬化速度に対して、発泡速度が遅くなり、発泡倍率の小さい発泡シリコーンゴムとなってしまう可能性がある。シリカゲルと液状シリコーンゴムを含む液状シリコーンゴム混和物の全体を均一に加熱すると熱伝導率の差による熱の伝わり方に差が少なくなるので、好ましい。
【0043】
(4)表層及びその形成方法
表層6としては、主にフッ素樹脂層、例えば、以下に例示列挙する樹脂が用いられる。例えば、テトラフルオロエチレン-パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体(PFA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)等である。
形成手段としては、チューブ状に成形したものを被覆する方法など、形成した定着部材の弾性層の低酸素雰囲気を保つことができる手段であればよい。
フッ素樹脂表層の厚みは、10μmから100μmとするのが一般的である。10μm未満であると十分な耐久性が得られず、100μmより大きいと積層した際に弾性層の弾性を維持し、熱定着用部材としての表面硬度が高くなりすぎる可能性がある。
【0044】
(4-1)フッ素樹脂チューブ被覆による表層の形成
フッ素樹脂チューブの内面は、予め、ナトリウム処理やエキシマレーザ処理、アンモニア処理等を施すことで、表面を活性化し、接着性を向上させることが出来る。
図6は、弾性層4上に、接着剤10を介してフッ素樹脂チューブを表層6として被覆する工程の一例の模式図である。前述した弾性層4の表面に、接着剤10を塗布して接着層5を形成する。接着剤については後に詳述する。
この接着剤10の外面に、表層6としてのフッ素樹脂チューブ11を被覆し、積層させる。
基材3が形状保持可能な芯金の場合には必要ないが、ベルト形状の定着部材に用いられる樹脂ベルトや金属スリーブのような薄肉の基材を用いる際には、加工時の変形を防ぐために基材3を中子12に外嵌させて保持する。
被覆方法は特に限定されないが、接着剤を潤滑剤として被覆する方法や、フッ素樹脂チューブを外側から拡張し、被覆する方法等を用いることが出来る。
被覆後、不図示の手段を用いて、弾性層4と表層6との間に残った、余剰の接着剤を、扱き出すことで除去する。扱き出した後の接着層5の厚みは、20μm以下であることが好ましい。これ以上に厚くなると、定着部材の硬度が大きくなるため、熱定着用部材として用いた場合は紙の凹凸に対する追従性が悪くなり、加圧用部材として用いた場合は定着時にニップ巾が狭くなってしまい、定着画像を悪化させる可能性がある。次に、電気炉などの加熱手段にて所定の時間加熱することで、接着剤を硬化・接着させ、必要に応じて両端部を所望の長さに加工することで、本発明の定着部材を得ることが出来る。
【0045】
(5)定着装置
本発明は、また、上記定着部材と該定着部材の加熱手段とを具備する定着装置である。電子写真用加熱定着装置は、一対の加熱されたローラとローラ、フィルムとローラ、ベルトとローラ、ベルトとベルトといった回転体が圧接されており、電子写真画像形成装置全体としてのプロセス速度、大きさ等の条件を勘案して適宜選択される。
定着装置においては、図7に示すように、加熱された熱定着用部材と加圧用部材を圧接することで定着ニップ幅Nを形成し、この定着ニップ幅Nに未定着トナーTによって画像が形成された、被加熱体となる被記録材Pを挟持搬送させる。これにより、トナー像を加熱、加圧する。その結果、トナー像は溶融・混色、その後、冷却されることによって被記録材上にトナー像が定着される。
【0046】
(5-1)内部加熱方式による加熱定着装置
図7には本発明に係るベルト形状の電子写真用定着部材を用いた、加熱定着装置の一例における横方向断面模式図を示す。
この加熱定着装置における定着部材はシームレス形状の定着ベルト1である。この定着ベルト1を保持するために耐熱性・断熱性の樹脂によって成型された、ベルトガイド部材13が形成されている。
【0047】
このベルトガイド部材13と定着ベルト1の内面とが接触する位置に熱源としてのセラミックヒータ14を具備する。
セラミックヒータ14はベルトガイド部材13の長手方向に沿って成型具備された溝部に嵌入して固定支持されている。セラミックヒータ14は、不図示の手段によって通電され発熱する。
【0048】
シームレス形状の定着ベルト1はベルトガイド部材13にルーズに外嵌させてある。加圧用剛性ステイ15はベルトガイド部材13の内側に挿通してある。
加圧用部材として本発明の定着部材を用いることができる。弾性加圧ローラ16はステンレス芯金16aに弾性層16bを設けて表面硬度を低下させたものである。
芯金16aの両端部を装置に不図示の手前側と奥側のシャーシ側板との間に回転自由に軸受け保持させて配設してある。
弾性加圧ローラ16は、本発明の一形態であり、表面性及び離型性を向上させるために表層16cとして、50μmのフッ素樹脂チューブが被覆されている。
加圧用剛性ステイ15の両端部と装置シャーシ側のバネ受け部材(不図示)との間にそれぞれ加圧バネ(不図示)を縮設することで、加圧用剛性ステイ15に押し下げ力を付与している。
これによってベルトガイド部材13の下面に配設したセラミックヒータ14の下面と加圧ローラ16の上面とが定着ベルト1を挟んで圧接して所定の定着ニップNが形成される。
この定着ニップNに未定着トナーTによって画像が形成された、被加熱体となる被記録材Pを搬送速度Vで挟持搬送させる。これにより、トナー像を加熱、加圧する。その結果、トナー像は溶融・混色、その後、冷却されることによって被記録材上にトナー像が定着される。
【0049】
(5-2)外部加熱方式による加熱定着装置
図8には本発明に係るローラ形状の電子写真用定着部材を用いた、加熱定着装置の一例における横方向断面模式図を示す。
【0050】
この加熱定着装置において、2は本発明の一形態となる、定着部材としての定着ローラである。この定着ローラ2は基材である芯金3の外周面に弾性層4が形成され、更にその外側にフッ素樹脂などのチューブを被覆することにより表層6が形成されている。ここで定着ローラ2の表層には、加熱手段からの熱の蓄積と被加熱体への熱供給のための熱物性が付与される場合がある。弾性層4においては、外部加熱ユニット18から付与された熱量を必要以上に蓄積しないよう、断熱性の高い弾性材料が必要となる。
【0051】
加圧ローラ16はステンレス芯金17a、弾性層17b、表層17cからなり、本発明の一形態となる。定着ローラ2と対向するように加圧用部材とし配されており、不図示の加圧手段により、二つのローラが回転可能に押圧されることで、定着ニップNが形成されている。
【0052】
外部加熱ユニット18は、定着ローラ2をローラ外側から非接触で加熱する。外部加熱ユニット18は、熱源としてのハロゲンヒータ(赤外線源)18aと、ハロゲンヒータ18aの輻射熱を効率的に利用するための反射鏡(赤外線反射部材)18bとを有する。
ハロゲンヒータ18aは、定着ローラ2と対向して配置され、不図示の手段によって通電し発熱する。これにより、定着ローラ2の表面を直接加熱する。また、ハロゲンヒータ18aによる定着ローラ2方向以外の方向に、反射率の高い反射鏡18bが配設される。反射鏡18bは、ハロゲンヒータ18aが中に入るように、定着ローラ2と反対側に突出するように湾曲して配設される。これにより、ハロゲンヒータ18aからの輻射熱を発散させずに、輻射熱を効率的に定着ローラ2側へ反射させることができる。
本実施形態では、反射鏡18bの形状は通紙方向に対して楕円軌道とし、一方の焦点にハロゲンヒータ18aを、もう一方の焦点には定着ローラ2内側の表面付近となるように配置する。これにより、楕円の集光効果を利用することができ、定着ローラ表面近傍に反射光が集光する。
【0053】
また、定着ローラ2の温度制御手段として、シャッター18cや温度検知素子18dを配し、これら、並びにハロゲンヒータ18aを不図示の手段で適切に制御することで、定着ローラ2の表面温度を略均一に制御可能となる。
【0054】
定着ローラ2および加圧ローラ16は不図示の手段により基材3およびステンレス芯金17aの端部を通じて回転力が加えられ、定着ローラ2表面の移動速度が被記録体搬送速度Vと略等速となるように回転制御されている。この際、回転力は、定着ローラ2及び加圧ローラ16のどちらかに付与され、もう一方が従動により回転していても良いし、両方に回転力が付与されていても良い。
【0055】
このように形成された加熱定着装置の定着ニップNに、未定着トナーTによって画像が形成された被加熱体となる被記録材Pを挟持搬送させる。これにより、トナー像を加熱、加圧する。その結果、トナー像は溶融・混色、その後、冷却されることによって被記録材上にトナー像が定着される。
【実施例】
【0056】
以下に具体的な実施例を用いて本発明をさらに詳細に説明する。
【0057】
(実施例A-1)
(シリコーンゴム発泡体の成形品の作製)
付加硬化型の液状シリコーンゴムa(商品名:TSE3450、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製、JIS-A硬度:45°)のA液(動粘度:69000mm^(2)/s)100重量部及びB液(動粘度:1470mm^(2)/s)10重量部をへらで混練し、これに室温大気圧下でプラスチック容器に保存されていたシリカゲルS1(商品名:YMC*GEL SIL SL12SA5、株式会社ワイエムシィ製)を11重量部加え、遠心攪拌装置(商品名:HM500、株式会社キーエンス製)で1分間混練し、5分間放置し、液状シリコーンゴム混和物を得た。その後、JIS K 6262に準拠した大型試験片用成形金型を用いて、130℃、15分間加熱成形し、金型から脱型後、加熱オーブン(エスペック株式会社製)を用いて、200℃で2時間加熱し二次架橋させ、シリコーンゴム発泡体(発泡シリコーンゴム)の試験片を得た。
【0058】
(密度の測定)
液浸法による密度測定装置を用いてシリコーンゴム発泡体の試験片の密度を測定した。試験結果を表1に示す。
(低酸素雰囲気下での劣化試験方法)
シリコーンゴム発泡体の試験片の軟化劣化を調べる方法について説明する。
予め二次硬化された該シリコーンゴム発泡体の試験片をJIS K 6253に準拠したA型硬度計(JIS-A硬度計)を用いて硬度を測定した後、該シリコーンゴム発泡体の試験片をアルミホイルで包み、外からの空気と接触しにくい低酸素雰囲気を形成した。アルミホイルで包まれた試験片に対し、230℃で48時間、加熱オーブンで加熱処理を行った。その後、アルミホイル内の試験片を取り出し、再度JIS-A硬度を測定し、加熱処理による硬度変化量を比較した。この硬度変化量を本発明における軟化劣化の評価指標とした。その結果を表1に示す。
【0059】
(実施例A-2)
次に、シリカゲルS1に窒素ガスを吸着させ、これを液状シリコーンゴムa中に均一混合した。図9は窒素ガス吸着操作についての概略説明図である。実施例A-1で用いた球状シリカゲル粒子4bをガラスセル19に入れ、該ガラスセル19の口にゴム栓20を装着し、室温下でその隙間から窒素ガスバルブと接続されている細い金属製チューブ21から窒素ガスを1時間吹き込み、該シリカゲル粒子4bの細孔内に窒素ガスを吸着させた。その後、実施例A-1で用いた液状シリコーンゴムaのA液100重量部及びB液10重量部をへらで混練し、該シリカゲル粒子を11重量部加え、実施例A-1で用いた遠心攪拌装置で1分間混練し、5分間放置し、液状シリコーンゴム混和物を得た。この混合液を用いること以外は、実施例A-1と同様の方法によりシリコーンゴム発泡体の試験片を得た。
実施例A-1と同様に、密度を測定し、低酸素雰囲気下での劣化試験を行った。試験結果を表1に示す。
【0060】
(実施例A-3)
11重量部のシリカゲルS1の細孔内に水を11重量部吸着させた。その後、実施例A-1で用いた液状シリコーンゴムaのA液100重量部及びB液10重量部をへらで混練し、水を吸着させたシリカゲル粒子22重量部に加えた。実施例A-1で用いた遠心攪拌装置で1分間混練し、5分間放置し、液状シリコーンゴム混和物を得た。この混合液を用いること以外は、実施例A-1と同様の方法によりシリコーンゴム発泡体の試験片を得た。
実施例A-1と同様に、密度を測定し、低酸素雰囲気下での劣化試験を行った。試験結果を表1に示す。
【0061】
(実施例A-4)
(メソポーラスシリカ合成方法)
メソポーラスシリカ粒子の合成方法について説明する。
非特許文献3記載の方法に従い、水100重量部に28重量%のアンモニア水62重量部、メタノール505重量部、[(EO)_(20)(PO)_(70)(EO)_(20)]_(n)の化学式で示されるトリブロックコポリマー0.1重量部を加えて、超音波洗浄装置(装置名:BRANSONIC B2510J-DTH、BRANSON社製)を用いて超音波処理行った後、テトラエトキシシラン1重量部を加え、10秒間浸透させた。室温20時間静置させた後、固液分離し、60℃で24時間、加熱オーブンで乾燥を行い、550℃で10時間、加熱オーブンで界面活性剤を焼成し、メソポーラスシリカ粒子S2を得た。
【0062】
実施例A-1で用いた液状シリコーンゴムaのA液100重量部及びB液10重量部をへらで混練し、メソポーラスシリカ粒子S2を11重量部加え、実施例A-1で用いた遠心攪拌装置で1分間混練し、5分間放置し、液状シリコーンゴム混和物を得た。この混合液を用いること以外は、実施例A-1と同様の方法によりシリコーンゴム発泡体の試験片を得た。
【0063】
実施例A-1と同様に、密度を測定し、低酸素雰囲気下での劣化試験を行った。試験結果を表1に示す。
【0064】
(実施例A-5)
(シリコーンゴム発泡体の成形品の作製)
付加硬化型の液状シリコーンゴムb(東レ・ダウコーニング株式会社製、JIS-A硬度:30°、T-10:15sec)のA液(動粘度:4100mm^(2)/s)50重量部及びB液(動粘度:4100mm^(2)/s)50重量部をへらで混練し、100重量部の液状シリコーンゴムを得た。T-10とは、JIS-K6300-2準拠した試験方法に基づいて130℃で測定した硬化開始時間である。表1に示すように前記液状シリコーンゴムにシリカゲルS3を10重量部加え、実施例A-1と同様の方法によりシリコーンゴム発泡体の試験片を得た。実施例A-1と同様に密度を測定し、低酸素雰囲気下での劣化試験を行った。試験結果を表1に示す。
【0065】
(実施例A-6?A-9)
表1に示すように100重量部の液状シリコーンゴムbにシリカゲルS4?S7を10重量部加え、実施例A-1と同様の方法によりシリコーンゴム発泡体の試験片を得た。実施例A-1と同様に試験片の密度を測定し、低酸素雰囲気下での劣化試験を行った。試験結果を表1に示す。
【0066】
(比較例A-1)
表1に示すように110重量部の液状シリコーンゴムaに室温大気圧下でプラスチック容器に保存されたゼオライト粒子Z1(商品名:ゼオラムF-9粉末品、東ソー株式会社製)を11重量部加え、実施例A-1と同様の方法で試験片を作製し、密度を測定し、低酸素雰囲気下での劣化試験を行った。試験結果を表1に示す。
【0067】
(比較例A-2)
11重量部のゼオライト粒子Z1に実施例A-2と同様の方法で窒素を吸着させた。表1に示すように110重量部の液状シリコーンゴムaに該ゼオライト粒子を加え、実施例A-1と同様の方法で試験片を作製し、密度を測定し、低酸素雰囲気下での劣化試験を行った。試験結果を表1に示す。
【0068】
(比較例A-3)
11重量部のゼオライト粒子Z1に実施例A-3と同様に水11重量部を吸着させた。表1に示すように110重量部の液状シリコーンゴムaに該ゼオライト粒子を加え、実施例A-1と同様の方法で試験片を作製し、密度を測定し、低酸素雰囲気下での劣化試験を行った。試験結果を表1に示す。
【0069】
(比較例A-4)
表1に示すように100重量部の液状シリコーンゴムbに用いたゼオライトZ1を10重量部加え、実施例A-1と同様の方法を用いてシリコーンゴム発泡体の試験片を得た。施例A-1と同様に密度を測定し、低酸素雰囲気下での劣化試験を行った。試験結果を表1に示す。
【0070】
(実施例B-1)
(シリコーンゴム加圧ローラの作製)
次に、外径24mm金属製芯金を内径30mmの円筒状金型内に同心となるように設置させ、表2に示すように11重量部のシリカゲル粒子S1と110重量部のシリコーンゴムaとを実施例A-1と同様の手段で調製した液状シリコーンゴム混和物を注型し、130℃に設定されたオーブンを用いて加熱硬化し、脱型した。続いてこの加熱硬化したシリコーンゴムを200℃に設定されたオーブン内で2時間加熱処理することにより弾性層厚み3mm発泡弾性ローラとした。
次いで、厚み70μmのフッ素樹脂チューブ(商品名:KURANFLON-LT;倉敷紡績株式会社製)を図6に示すように被覆した。その後、フッ素樹脂チューブの上からベルト表面を均一に扱くことにより、過剰の接着剤を弾性層とフッ素樹脂チューブの間から十分に薄くなるように扱き出した。
そして、該発泡弾性ローラを200℃に設定した電気炉にて1時間加熱することで接着剤を硬化させて、該フッ素樹脂チューブを弾性層上に固定し、直径30mm加圧ローラを得た。
【0071】
(空回転性能試験による定着部材評価)
次に、この加圧ローラをカラーレーザービームプリンタ(商品名;Satera LBP5900、キヤノン株式会社)に搭載されている定着ユニットへ図7に示すように装着し、空回転性能試験を行った。一般にプリンタや複写機に搭載されている定着ユニットの定着部材表面温度は、240℃以下であるので、加圧ローラ表面温度が略均一に240℃となるようセラミックヒータを通電制御しながら、300時間加圧ローラを回転させつづけたが、破断することはなかった。
【0072】
(加圧ローラの硬度測定)
マイクロゴム硬度計(MD1-Capa;高分子計器製)を用いて、加圧ローラの初期の表面硬度と空回転性能試験後の表面硬度を測定した。試験結果を表2に示す。
【0073】
(実施例B-2)
表2に示すように、11重量部のシリカゲル粒子S1に実施例A-2と同様の方法で窒素を吸着させた。該シリカゲルを液状シリコーンゴムa110重量部に加え、実施例A-1と同様の方法で調製した液状シリコーンゴム混和物を用いて、実施例B-1と同様の方法で加圧ローラを得た。実施例B-1と同様に空回転性能試験と加圧ローラの初期表面硬度と空回転性能試験後の表面硬度を測定した。試験結果を表2に示す。
【0074】
(実施例B-3)
表2に示すように、11重量部のシリカゲル粒子S1に実施例A-3と同様に水11重量部を吸着させた。該シリカゲルを液状シリコーンゴムa110重量部に加え、実施例A-1と同様の方法で調製した液状シリコーンゴム混和物を用いて、実施例B-1と同様の方法で加圧ローラを得た。実施例B-1と同様に空回転性能試験と加圧ローラの初期表面硬度と空回転性能試験後の表面硬度を測定した。試験結果を表2に示す。
【0075】
(実施例B-4)
表2に示すように、11重量部のシリカゲルS2と110重量部のシリコーンゴムaとを実施例A-1と同様の手段で調製した液状シリコーンゴム混和物を用いて、実施例B-1と同様の方法で加圧ローラを得た。実施例B-1と同様に空回転性能試験と加圧ローラの初期表面硬度と空回転性能試験後の表面硬度を測定した。試験結果を表2に示す。
【0076】
(実施例B-5?B-9)
表2に示すように、10重量部のシリカゲルS3?S7と100重量部のシリコーンゴムbとを実施例A-1と同様の手段で調製した液状シリコーンゴム混和物を用いて、実施例B-1と同様の加圧ローラを用いて実施例B-1と同様に空回転性能試験と加圧ローラの初期表面硬度と空回転性能試験後の表面硬度を測定した。試験結果を表2に示す。
【0077】
(比較例B-1)
表2に示すように、11重量部のゼオライト粒子Z1と110重量部のシリコーンゴムaとを同様の手段で調製した液状シリコーンゴム混和物を用いて、実施例B-1と同様の方法で加圧ローラを得た。実施例B-1と同様に空回転性能試験と加圧ローラの初期表面硬度と空回転性能試験後の表面硬度を測定した。試験結果を表2に示す。
【0078】
(比較例B-2)
表2に示すように、11重量部のゼオライト粒子Z1に実施例A-2と同様の方法で窒素を吸着させた。該ゼオライト粒子を液状シリコーンゴムa110重量部に加え、実施例A-1と同様の方法で調製した液状シリコーンゴム混和物を用いて、実施例B-1と同様の方法で加圧ローラを得た。実施例B-1と同様に空回転性能試験と加圧ローラの初期表面硬度と空回転性能試験後の表面硬度を測定した。試験結果を表2に示す。
【0079】
(実施例B-3)
表2に示すように、11重量部のゼオライト粒子Z1に実施例A-3と同様の方法で水11重量部を吸着させた。該ゼオライト粒子を液状シリコーンゴムa110重量部に加え、実施例A-1と同様の方法で調製した液状シリコーンゴム混和物を用いて、実施例B-1と同様の方法で加圧ローラを得た。実施例B-1と同様に空回転性能試験と加圧ローラの初期表面硬度と空回転性能試験後の表面硬度を測定した。試験結果を表2に示す。
【0080】
(比較例B-4)
表2に示すように、10重量部のゼオライト粒子Z1と100重量部のシリコーンゴムbとを実施例A-1と同様の手段で調製した液状シリコーンゴム混和物を用いて、実施例B-1と同様の方法で加圧ローラを得た。実施例B-1と同様に空回転性能試験と加圧ローラの初期表面硬度と空回転性能試験後の表面硬度を測定した。試験結果を表2に示す。
S1:YMC*GEL SIL SL12SA5、株式会社ワイエムシィ製
S2:メソポーラスシリカ
S3:YMC*GEL SIL SL06S11、株式会社ワイエムシィ製
S4:YMC*GEL SIL SL12S11、株式会社ワイエムシィ製
S5:YMC*GEL SIL SL20S11、株式会社ワイエムシィ製
S6:YMC*GEL SIL SL30S11、株式会社ワイエムシィ製
S7:YMC*GEL SIL SLA0S11、株式会社ワイエムシィ製
Z1:ゼオラムF-9粉末品、東ソー株式会社製
【0081】
【表1】

【表2】

【符号の説明】
【0082】
1 定着ベルト
2 定着ローラ
3 基材
4 弾性層
5 接着層
6 表層
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、発泡シリコーンゴムからなる弾性層と、表層とをこの順に有する、電子写真装置用の熱定着装置に用いる定着部材の製造方法であって、
該発泡シリコーンゴムを、発泡剤としてシリカゲルを含む液状シリコーンゴム混和物を発泡および硬化して形成することを特徴とする定着部材の製造方法。
【請求項2】
前記シリカゲルは、前記液状シリコーンゴム混和物中の液状シリコーンゴム100重量部に対して、前記シリカゲル中に吸着している吸着質を除いたシリカゲルのみの重量基準で、0.1重量部以上40重量部以下の範囲で含有されている請求項1に記載の定着部材の製造方法。
【請求項3】
前記シリカゲルの細孔径が2nm以上30nm以下である請求項1または2に記載の定着部材の製造方法。
【請求項4】(削除)
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2016-03-02 
結審通知日 2016-03-04 
審決日 2016-03-15 
出願番号 特願2010-292782(P2010-292782)
審決分類 P 1 41・ 853- Y (G03G)
P 1 41・ 854- Y (G03G)
最終処分 成立  
前審関与審査官 佐藤 孝幸  
特許庁審判長 丹治 彰
特許庁審判官 千葉 成就
藤本 義仁
吉村 尚
黒瀬 雅一
登録日 2015-06-12 
登録番号 特許第5759172号(P5759172)
発明の名称 定着部材の製造方法  
代理人 黒岩 創吾  
代理人 阿部 琢磨  
代理人 黒岩 創吾  
代理人 阿部 琢磨  

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