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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01M
管理番号 1314639
審判番号 不服2014-8476  
総通号数 199 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-07-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-05-07 
確定日 2016-04-11 
事件の表示 特願2010-73266「タイヤの接地特性の測定方法及び測定装置」拒絶査定不服審判事件〔平成23年10月13日出願公開、特開2011-203207〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、平成22年3月26日の出願であって、平成25年10月1日付けで拒絶理由が通知され、同年12月9日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がなされたが、平成26年1月29日付けで拒絶査定がなされたのに対し、同年5月7日に拒絶査定不服審判が請求がされたものである。

2 本願発明
この出願の請求項5に係る発明は、平成25年12月9日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項5に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められ、その請求項5に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりのものである。

「転動するタイヤの接地特性を測定する装置であって、
少なくとも、タイヤの接地圧、幅方向せん断応力及び周方向せん断応力を測定可能な測定手段を埋設された回転ドラムと、
該回転ドラムの回転速度を制御するドラム用駆動手段と、
測定対象としてのタイヤを、該回転ドラムの回転軸方向に一定のピッチ幅で相対的に変位させるとともに、該回転ドラムに対して接近及び離反する方向に変位させるタイヤ制御スタンドと、
前記タイヤの回転速度を制御するタイヤ用駆動手段と、
前記タイヤに所要のキャンバ角及びスリップ角を付与するタイヤ角制御手段とを具えたことを特徴とするタイヤの接地特性の測定装置。」

3 刊行物の記載事項
(1)本願出願前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された特開2006-226778号公報(以下、「刊行物1」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。

「【0031】
図5および図6は、本発明の第2実施形態に係るドラム式のタイヤ接地圧分布測定装置30を示している。
【0032】
このドラム式のタイヤ接地圧分布測定装置30は、表面が平滑な円筒形状のドラム31を軸心P3回りに回転可能に保持するドラム保持部35と、試験タイヤ36を軸心P4回りに回転自在に保持するタイヤ保持部37とを備えており、ドラム31の外周面31aに接触するように試験タイヤ36を転動させて接地圧分布を測定するものである。
【0033】
詳しくは、前記ドラム保持部35には、ドラム31の回転速度制御手段を備えた回転駆動装置38が装備されているが、タイヤ保持部37には回転駆動装置は設けられておらず、試験タイヤ36はドラム31の回転に従動回転される。
【0034】
前記タイヤ保持部37は、試験タイヤ36をドラム31の外周面31aに対して接触・離反方向に昇降させるシリンダ40’を介して基台39に支承している。前記シリンダ40’により、ドラム31の外周面31aに試験タイヤ36を半径方向より押圧接触させて負荷をかけるとともに、負荷する荷重を調整可能としている。
【0035】
図6にも示すように、前記ドラム31の軸心P3方向の幅W3は、試験タイヤ36の軸心P4方向の幅W4よりも大寸としている。このドラム31の外周面31a側には、前記幅W3の全幅にわたって、多数の超小型の圧力センサ25を軸心P3方向に一列に埋設している。この超小型の圧力センサ25は、前記第1実施形態の圧力センサ25と同一のものであるため、同一符号を付して説明を省略する。
【0036】
具体的には、圧力センサ25の接触面25aをドラム31の外周面31a側に、該外周面31aが平坦になるように露出させながら、0.5mm間隔をあけて一列に埋設している。このように配置された圧力センサ25の周囲は、ドラム31に予め形成しておいた凹部31bに充填した樹脂43で固めている。各圧力センサ25のケーブル27はドラム31の内周側に導出し、図示しないデータ読取装置に接続している。
【0037】
本実施形態においては、超小型圧力センサ25をドラム31の幅W3方向に一列にのみ配置しているが、ドラム31は試験タイヤ36よりも広幅であるため、一通過時点におけるタイヤ全幅の接地圧分布を正確に測定することができる。
【0038】
図7は第3実施形態を示し、第1実施形態との相違点は、タイヤ保持手段17側に試験タイヤ16を任意の回転速度で回転駆動させる駆動手段を付設している点である。他の構成は同様とし、ドラム11を回転駆動するモータを備えている。
即ち、支持アーム21にモータ60を付設し、該モータ60により支持軸22を所要の回転速度で回転駆動している。
このように、ドラム11と試験タイヤ16の両方を回転駆動させると共に、回転速度を相違させることにより、タイヤのスリップ状態とすることができ、該スリップ時における]タイヤの接地圧力分布も測定することができる。
【0039】
図8は第4実施形態を示し、第1実施形態との相違点は、タイヤの軸線をドラムの軸線に対して水平方向で傾斜させて、試験タイヤをドラムに接触させることができる軸線角度調整手段を設け、タイヤが直線状に進行するのではなく進行方向に対して傾き、スリップ角度を有する状態での接地圧力分布を測定できるようにしている。
詳細には、支持アーム21から上下狭持板部21a、21bを突設し、これら狭持板部21aの間に支持軸22の基端側に挿入し、上下狭持板部21a、21bの間に支持軸22を挟んだ状態でピン49で支承している。該ピン49は支持軸22に固定すると共に、上下狭持板部21a,21bに回転自在に通し、ピン49の一端に設けた回転操作板49aを回転操作することによりピン49を介して支持軸22を回転させ、該支持軸22で保持する試験タイヤ16を回転させて、その軸線P5をドラム11の軸線P6と任意の角度で傾斜できるようにしている。
このように、試験タイヤの軸線をドラム11の軸線に対して傾斜させ、スリップ角度を調整することにより、コーナリング時におけるタイヤの接地圧力分布が測定できる。
【0040】
さらに、前記軸線角度調整手段で、水平方向に配置されているタイヤの軸線とドラムの軸線に対して、タイヤの軸線を垂直方向で傾斜させると、試験タイヤをドラムに対してキャンバー角度を調整しながら接地圧力分布を測定することができる。
また、スリップ角度とキャンバー角度を同時に調整しながら接地圧力分布の測定をすることもできる。」

以上の記載事項から、刊行物1には、以下の発明が記載されていると認められる。

「表面が平滑な円筒形状のドラム31を軸心P3回りに回転可能に保持するドラム保持部35と、試験タイヤ36を軸心P4回りに回転自在に保持するタイヤ保持部37とを備えており、ドラム31の外周面31aに接触するように試験タイヤ36を転動させて接地圧分布を測定するドラム式のタイヤ接地圧分布測定装置30であって、
前記ドラム保持部35には、ドラム31の回転速度制御手段を備えた回転駆動装置38が装備されているが、タイヤ保持部37には回転駆動装置は設けられておらず、試験タイヤ36はドラム31の回転に従動回転されるものであり、
前記タイヤ保持部37は、試験タイヤ36をドラム31の外周面31aに対して接触・離反方向に昇降させるシリンダ40’を介して基台39に支承しており、
このドラム31の外周面31a側には、幅W3の全幅にわたって、多数の超小型の圧力センサ25を軸心P3方向に一列に埋設しており、
超小型圧力センサ25をドラム31の幅W3方向に一列にのみ配置しているが、ドラム31は試験タイヤ36よりも広幅であるため、一通過時点におけるタイヤ全幅の接地圧分布を正確に測定することができる
ドラム式のタイヤ接地圧分布測定装置30。」(以下、「引用発明1」という。)

(2)本願出願前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された特開平9-26382号公報(以下、「刊行物2」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。

ア 「【0012】図1と図2は、本発明に係る台上摩耗エネルギー測定試験機を示し、この試験機は、タイヤ1が着脱自在に取付けられるタイヤ軸2と、平板状のタイヤ接地台3と、タイヤ摩耗エネルギーを測定する測定器4と、タイヤ接地台3を往復駆動させる台駆動手段5と、タイヤ軸2を回転駆動させるタイヤ軸駆動手段6と、を備えている。」

イ 「【0023】なお、タイヤ1に対する測定器4の位置を、タイヤ1の幅方向(図2の軸心L方向)に自由に変更できるように、例えば、タイヤ1,タイヤ軸2,第2モータ16と、タイヤ接地台3,支持体7,第1モータ14等と、の内の一方を、上記幅方向に位置を変更・固定自在に構成する。」

ウ 「【0028】タイヤ駆動・台駆動いずれの場合も、タイヤ1の摩耗を測定する箇所(例えばSh部やCr部)が、第1センサー19と第2センサー20に接触するようにタイヤ1を転がして(例えば図1に図示する接地入S1から接地出S2まで)タイヤ摩耗エネルギーを測定する。これを各測定箇所毎に行う。
【0029】ここで、タイヤ摩耗エネルギーは、〔接地圧×Δすべり量〕、あるいは、〔前後力・横力(応力)×Δすべり量〕、と定義する。接地圧は第1センサー19で測定され、Δすべり量は第2センサー20にて測定される。」

エ 「【0040】…さらに、複数の測定器4…を、タイヤ1の幅方向に所定ピッチで配設して、一度にタイヤ接地面各部のタイヤ摩耗エネルギーを測定できるようにするも自由である。…」

以上の記載事項ア?ウから、刊行物2には、以下の発明が記載されていると認められる。

「タイヤ1に対する測定器4の位置を、タイヤ1の幅方向に自由に変更できるように、タイヤ1,タイヤ軸2,第2モータ16と、タイヤ接地台3,支持体7,第1モータ14等と、の内の一方を、上記幅方向に位置を変更・固定自在に構成し、
タイヤ1の摩耗を測定する箇所が、接地圧を測定する第1センサー19とすべり量を測定する第2センサー20に接触するようにタイヤ1を転がしてタイヤ摩耗エネルギーを測定し、
これを各測定箇所毎に行うものであり、
さらに、複数の測定器4を、タイヤ1の幅方向に所定ピッチで配設して、一度にタイヤ接地面各部のタイヤ摩耗エネルギーを測定できるようにするも自由である
台上摩耗エネルギー測定試験機。」(以下、「引用発明2」という。)

4 対比
本願発明と引用発明1とを対比する。
(1)引用発明1の「試験タイヤ36を転動させて接地圧分布を測定する」「タイヤ接地圧分布測定装置30」は、本願発明の「転動するタイヤの接地特性を測定する装置」に相当する。

(2)引用発明1の「接地圧分布を」「測定する」「超小型圧力センサ25を」「埋設し」た「回転可能」な「ドラム31」と、本願発明の「少なくとも、タイヤの接地圧、幅方向せん断応力及び周方向せん断応力を測定可能な測定手段を埋設された回転ドラム」とは、「タイヤの接地圧を測定可能な測定手段を埋設された回転ドラム」の点で共通する。

(3)引用発明1の「ドラム31の回転速度制御手段を備えた回転駆動装置38」は、本願発明の「該回転ドラムの回転速度を制御するドラム用駆動手段」に相当する。

(4)引用発明1の「試験タイヤ36をドラム31の外周面31aに対して接触・離反方向に昇降させるシリンダ40’を介して基台39に支承して」いる「タイヤ保持部37」と、本願発明の「測定対象としてのタイヤを、該回転ドラムの回転軸方向に一定のピッチ幅で相対的に変位させるとともに、該回転ドラムに対して接近及び離反する方向に変位させるタイヤ制御スタンド」とは、「測定対象としてのタイヤを、該回転ドラムに対して接近及び離反する方向に変位させるタイヤ制御スタンド」の点で共通する。

してみると、本願発明と引用発明1とは
「転動するタイヤの接地特性を測定する装置であって、
タイヤの接地圧を測定可能な測定手段を埋設された回転ドラムと、
該回転ドラムの回転速度を制御するドラム用駆動手段と、
測定対象としてのタイヤを、該回転ドラムに対して接近及び離反する方向に変位させるタイヤ制御スタンドと、
を具えたタイヤの接地特性の測定装置。」
である点で一致し、次の点で相違する。

(相違点1)
回転ドラムに埋設される測定手段が、本願発明では「少なくとも、タイヤの接地圧、幅方向せん断応力及び周方向せん断応力を測定可能な」ものであるのに対し、引用発明1では「タイヤの接地圧」のみを測定可能なものである点。

(相違点2)
タイヤ制御スタンドが、本願発明では「測定対象としてのタイヤを、該回転ドラムの回転軸方向に一定のピッチ幅で相対的に変位させる」ものであるのに対し、引用発明1ではそのようなものではなく、超小型圧力センサ25をドラム31の幅W3方向に一列に配置している点。

(相違点3)
本願発明が「前記タイヤの回転速度を制御するタイヤ用駆動手段」を具えるのに対し、引用発明1は「タイヤ保持部37には回転駆動装置は設けられておらず、試験タイヤ36はドラム31の回転に従動回転されるものであ」る点。

(相違点4)
本願発明は「前記タイヤに所要のキャンバ角及びスリップ角を付与するタイヤ角制御手段」を具えるのに対し、引用発明1はそのようなものではない点。

5 判断
(相違点1について)
タイヤの接地特性を測定する装置において、タイヤの接地圧、幅方向せん断応力及び周方向せん断応力を測定可能な測定手段をタイヤが接する面内に埋設することは、例えば、

ア 原査定の拒絶の理由に引用された特開平11-142265号公報
(ア)「【0016】…センサ本体の垂直方向変形から接地面に負荷される接地荷重のうちの垂直荷重、センサ本体の走行方向の変形から接地面に負荷される接地荷重のうちの走行方向荷重、およびセンサ本体の幅方向の変形から接地面に負荷される接地荷重のうち幅方向荷重からなる3分力荷重をそれぞれ検出する荷重検出計を設けた。」
(イ)「【0028】…垂直荷重検出用ストレンゲージ21…」
(ウ)「【0029】…幅方向荷重検出用ストレンゲージ22…走行方向荷重検出用ストレンゲージ23…」
(エ)「【0035】…センサ本体20のセンサ取付台板30内の埋設…」

イ 原査定の拒絶の理由に引用された特表2002-502963号公報
(ア)「【0002】(背景技術)従来技術は、タイヤの接触圧を測定するセンサを有する。例えば、ある従来技術による装置では、接触部分すなわちタイヤの踏み跡における局部3軸接触圧および接線方向のすべり圧、を測定するために変換器は複数の個別の圧力センサを備えていた。」
(イ)「【0004】…本発明の目的は、3軸力ピンセンサアレイを提供することである。」
(ウ)「【0016】支持構造12は複数の片持ち梁3軸力ピン36a、36b、36c、36d、36e、36f、36gおよび36h…を備え、それらは互いに隣接して配置されて支持構造12のベース部40に一体化して取付けられる…」
(エ)「【0017】片持梁ピン36bは、図5、8A、8Bおよび8Cにそれぞれ示されたように、平らな、丸みのある、凸状、または凹状にできる上部接触面42bを有している。…接触面42bは図1に示されたように平らである。通常タイヤの踏み跡で発生した測定対象の力は、片持梁ピン36a?36hの各々の接触面に伝えられる。」
(オ)「【0031】ひずみゲージセット112、114および116はピン36a?36hに取付けられて、ピン36a?36hの上部接触面42a?42hで発生する垂直力およびせん断力をそれぞれ測定する。タイヤに使うために、前後の方向すなわち測定対象のタイヤがモジュールの上面を横切って回転する方向をx-x方向として単一の通過における完全な踏面要素を測定するために、複数のセンサアレイモジュール130はセンサアレイ取付けフレーム構造34に取付けられ得る(単一のモジュール130だけが図7に示されている)。前後の方向を横切るのは水平方向すなわちy-y方向である。垂直または負荷接触圧がz-z方向で測定される。」、

ウ 原査定の拒絶の理由に引用された独国特許発明第19704605号明細書(なお、独語表記にあたっては、ウムラウト記号は表記せず、エスツェットは「ss」で表記した。)
(ア)「An mehreren sowohl in Umfangsrichtung als auch in axialer Richtung versetzt zueinander ausgebildeteten Positionen ist jeweils ein 3-Komponeten- Kraftmesssensor 23, 24, 25 bekannter Art in einer, wie in Fig. 2 am Beispiel des 3-Komponeten-Kraftsensors 23 dargestellten, Ausnehmung 40 der Trommeloberflache integriert.」4欄61?67行、当審訳:「周方向及び軸方向に交互にずれて展開されたいくつかの位置に、公知の3分力センサ23、24、25がそれぞれ、図2に3分力センサ23の例で示されているように、ドラム表面の凹部40に統合される。」
(イ)「Der 3-Komponenten-Kraftaufnehmer ist ein Quarzkristall-Kraftaufnehmer zum Messen der 3 orthogonalen Komponeten einer beliebig gerichteten dynamischen oder quasi statischen Kraft.」5欄2?5行、当審訳:「3分力センサは、任意の方向の動的または準静的な力の3直交成分を測定するための水晶力変換器である。」
(ウ)「Beim Abrollen des Reifens 17 auf der Trommeloberflache werden die Profilelemente der Laufflache 18, die mit einem der 3-Komponenten-Kraftaufnehmer 23, 24, 25 wahrend des Abrollens in Beruhrung kommen, hinsichtlich der zwischen Trommeloberflache und Profilelement wirkenden Krafte in Umfangsrichtung, in seitlicher Richtung und in radialer Richtung des Reifens vermessen. 」5欄43?49行、当審訳:「タイヤ17がドラム表面で回転すると、当該回転の間に3分力センサ23、24、25の1つに接触する、トレッド18のプロファイル要素が、ドラム表面とプロファイル要素間に作用する力について、タイヤの周方向と横方向と径方向とで測定される。」

エ 原査定の拒絶の理由に引用された特開2005-214860号公報
(ア)「【0072】計測器内蔵路面92の下面側には、フレーム98が支持されている。」
(イ)「【0073】フレーム98には、リング状の圧力センサー100が搭載されており、圧力センサー100には円錐台状の接触部102が搭載されている。」
(ウ)「【0074】圧力センサー100は、試験タイヤ82の踏面から受ける3方向(路面16の長手方向、路面16の幅方向、路面16の鉛直方向)それぞれの力の大きさを測定可能な、所謂3分力センサーである。」

に記載されているように周知技術である。
そして、タイヤが路面から受ける外力をより的確に測定するために、タイヤの接地圧だけでなく、幅方向せん断応力及び周方向せん断応力をも測定可能にするように、この周知技術を引用発明1に適用することは、当業者が容易になし得たというべきである。

(相違点2について)
引用発明2において、「各測定個所毎に」「タイヤ摩耗エネルギーを測定」するために「タイヤ1,タイヤ軸2,第2モータ16」を「タイヤ1の幅方向に」「位置を変更する」際には、「複数の測定器4を、タイヤ1の幅方向に所定ピッチで配設」することとの互換性に鑑みれば、所定のピッチ幅、すなわち、一定のピッチ幅で行えばよいことは自明である。
したがって、引用発明2は、タイヤが接地する面が「ドラム31」ではなく「タイヤ設置台3」である点を除く相違点2に係る本願発明の構成、すなわち、「測定対象としてのタイヤを」、「タイヤが接する面の運動に対する横方向に一定のピッチ幅で相対的に変位させる」ことを開示するものといえる。
そして、引用発明1の「ドラム31」も、引用発明2の「タイヤ設置台3」もタイヤが接地する面であることに変わりはないことから、引用発明1の「超小型圧力センサ25をドラム31の幅W3方向に一列に配置」することによるコストを削減するために、引用発明2を適用して、相違点2に係る本願発明の如くすることは、当業者が容易になし得たというべきである。

(相違点3について)
刊行物1の段落【0038】には、「タイヤ保持手段17側に試験タイヤ16を任意の回転速度で回転駆動させる駆動手段を付設」して、「ドラム11と試験タイヤ16の両方を回転駆動させると共に、回転速度を相違させることにより、タイヤのスリップ状態とすることができ」ることが開示されており、タイヤのスリップ時におけるタイヤの接地圧力分布をも測定可能にするためにこれを引用発明1に適用することは、当業者が容易になし得たというべきである。

(相違点4について)
刊行物1の段落【0039】?【0040】には、「スリップ角度とキャンバー角度を同時に調整しながら接地圧力分布の測定をする」「軸線角度調整手段」が開示されており、種々のスリップ角度及びキャンバー角度でのタイヤの接地圧分布をも測定可能にするためにこれを引用発明1に適用することは、当業者が容易になし得たというべきである。

(効果について)
本願発明の奏する効果は、引用発明1、引用発明2、刊行物1に記載された技術事項及び周知技術から、当業者が予測できる範囲のものであり、格別顕著なものとはいえない。

6 むすび
したがって、本願発明は、引用発明1、引用発明2、刊行物1に記載された技術事項及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その余の請求項について論及するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-06-03 
結審通知日 2015-06-09 
審決日 2015-06-22 
出願番号 特願2010-73266(P2010-73266)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G01M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 福田 裕司  
特許庁審判長 森林 克郎
特許庁審判官 ▲高▼場 正光
藤田 年彦
発明の名称 タイヤの接地特性の測定方法及び測定装置  
代理人 山口 雄輔  
代理人 杉村 憲司  

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