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審決分類 審判 一部無効 2項進歩性  H04N
管理番号 1314679
審判番号 無効2014-800151  
総通号数 199 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-07-29 
種別 無効の審決 
審判請求日 2014-09-04 
確定日 2016-04-13 
事件の表示 上記当事者間の特許第5533998号発明「書画カメラ」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1.手続の経緯
1.本件出願の経緯
本件特許第5533998号に係る出願は、平成21年1月23日に出願した特願2009-12690号の一部を、新たな出願として平成24年12月26日に出願したものであって、平成26年5月9日に設定登録されたものであり、登録時の請求項の数は7である。

2.本件審判の経緯
本件無効審判における手続の経緯は、概要、以下のとおりである。

平成26年 9月 4日 無効審判請求書(請求人)
(甲第1号証乃至甲第9号証添付)
平成26年12月 3日 答弁書(被請求人)
(乙第1号証乃至乙第2号証添付)
平成27年 2月 9日 審理事項通知書(合議体)
平成27年 3月16日 口頭審理陳述要領書(請求人)
(甲第10号証添付)
平成27年 3月19日 口頭審理陳述要領書(被請求人)
平成27年 3月23日 上申書(請求人)
(甲10号証部分翻訳)
平成27年 4月 9日 口頭審理


第2.本件特許発明
特許第5533998号の請求項1?7に係る発明のうち、請求項1、5に係る発明(以下、各請求項の番号に対応させて、「本件特許発明1」、「本件特許発明5」という。)は、本件の特許明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1、5に記載された次のとおりのものである。

[本件特許発明1](請求項1)
A.先端にカメラを有する第1アーム部と前記第1アーム部を支持する第2アーム部とを有し、前記第1アーム部と前記第2アーム部とを折り畳み可能なアーム部と、
B.非使用時には前記アーム部を折り畳んだ状態で収納する収納凹部と、操作部とを有する本体部とを有する書画カメラであって、
C.非使用時には、前記アーム部を、前記第1アーム部と前記第2アーム部と前記本体部とがZ字状になるように折り畳んで前記収納凹部に収納し、
D.使用時には、前記アーム部を、前記第1アーム部と前記第2アーム部とが逆L字状になるように展開して使用するように構成され、
E.前記アーム部を折り畳んで前記収納凹部に収納したとき、前記アーム部の上面と前記操作部の上面とが略面一となるように構成されていることを特徴とする書画カメラ。

[本件特許発明5](請求項5)
請求項1?4のいずれかに記載の書画カメラにおいて、
F.前記第1アーム部は、前記第2アーム部に支持される第1アーム基端部と、前記第1アーム基端部の先端部に位置し、前記カメラを有する第1アーム先端部とを有し、
前記第1アーム先端部は、前記第1アーム部の長手方向に沿った所定の軸を中心として回転自在に前記第1アーム基端部に支持されるとともに、前記カメラの光学軸が鉛直方向下向きになった回転位置及びカメラの光学軸が水平方向になった回転位置で固定可能となるように構成されていることを特徴とする書画カメラ。

なお、請求項1、5における分説符号は、請求人が付したものであるが、争いがなく、妥当と認められるので、そのまま採用した。


第3.請求人の主張
1.請求の趣旨
特許第5533998号発明の特許請求の範囲の請求項1及び5に記載された発明についての特許を無効とする。
審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める。

2.本件特許を無効にすべき理由
本件請求項1及び5に係る各特許発明は、甲第1号証?甲第8号証に記載された発明に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が特許出願前に容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、特許法第123条第1項第2号に該当し、本件特許は無効とすべきものである。

3.請求の理由の要点
(請求項1)
請求項1に係る本件発明は甲第1号証又は甲第2号証に開示されている公知の構成と甲第3号証?甲第7号証に開示されている公知の構成を寄せ集めたものにすぎないので、当業者にとって容易である。
(請求項5)
請求項5に係る本件発明は甲第1号証又は甲第2号証に開示されている公知の構成と甲第3号証?甲第7号証に開示されている公知お構成及び甲第8号証い開示されている公知の構成を寄せ集めたものにすぎないので、当業者にとって容易である。

4.証拠方法
請求人は、証拠方法として、審判請求書に添付して以下の甲第1乃至9号証を提出し、口頭審理陳述要領書に添付して以下の甲第10号証を提出している。

甲第1号証:特開2001-211350号公報
甲第2号証:特開2003-153041号公報
甲第3号証:国際公開第WO01/084827号公報
甲第4号証:特開2004-96661号公報
甲第5号証:特開平6-125552号公報
甲第6号証:意匠登録第1247305号公報
甲第7号証:特開平10-62867号公報
甲第8号証:特開2005-70296号公報
甲第9号証:特願2009-12690号の審査における拒絶理由通知書
甲第10号証:米国特許公開第2009/0002548 A1号公報


第4.被請求人の主張
1.答弁の趣旨
本件無効審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求める。

2.答弁の要点
請求人による各号証の主張は誤っており、甲号証には「非使用時には、前記アーム部を、前記第1アーム部と関第2アーム部と前記本体部とがZ字状になるように折り畳んで前記収納凹部に収納し、」等の構成がなく、さらに容易であるとの主張も誤っている。本件発明1、5に無効理由は存在しない。

3.証拠方法
乙第1号証:平成22年5月27日提出の株式会社エルモ社有価証券報告書(抜粋)
乙第2号証:広辞苑第五版 奥付及び413ページ


第5.当審の判断
1.本件特許発明
本件特許発明は、上記第2.に記載のとおりである。

2.証拠記載事項
請求人が証拠方法として提出した甲第1乃至8号証及び甲第10号証には、以下の事項及び発明が記載されている。

2.1 甲第1号証
2.1.1 甲第1号証の記載
請求人が証拠方法として提出した甲第1号証(特開2001-211350号公報)には、「書画カメラ装置及び書画カメラ装置付きデータプロジェクタ」として図面とともに、以下の事項が記載されている。

ア.「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、撮像した映像を映像信号に変換して出力する書画カメラ装置に関する。また、この発明は、プロジェクタ本体に書画カメラ装置を着脱自在にした書画カメラ装置付きデータプロジェクタに関する。」(第3頁第4欄第6?11行目)

イ.「【0025】図1及び図2は本発明の第1の実施の形態に係る書画カメラ装置を示し、図1は書画カメラ部にアタッチメントを取り付けた状態を示す斜視図、図2は書画カメラ部から取り外した状態のアタッチメントを示す斜視図である。
【0026】図1に示すように、書画カメラ装置10は、書画カメラ部31に転倒防止用のアタッチメント11を取付けたものである。
【0027】書画カメラ部31は、撮像対象物の撮像を行い撮像した映像を映像信号に変換して出力するビデオカメラ本体部32と、このビデオカメラ本体部に一端側が取り付けられたアーム40と、このアーム40の他端側を取り付けるビデオカメラ支持部33と、から構成されている。
【0028】一方、アタッチメント11は、前記ビデオカメラ支持部33を着脱自在に取り付ける取付台12と、この取付台12に設けられ、前記取付台12に前記ビデオカメラ支持部33を取り付けたとき、前記ビデオカメラ支持部33の転倒防止を行う転倒防止機構(転倒防止脚)13,14と、から構成されている。
【0029】以下、アタッチメント11及び書画カメラ部31についてさらに詳細に説明する。
【0030】アタッチメント11は、取付台12の背面に接続面15が設けられ、取付台12の底面に転倒防止脚13,14を設けている。
【0031】書画カメラ部31は、板状に形成されたビデオカメラ支持部33の背面の下側に回路収納部34を取付け固定している。回路収納部34は、上面の図中右側が操作キーを設けた操作部35となり、図中左側が低く形成された段部36となっている。
【0032】また、ビデオカメラ支持部33の背面の図中左上側には、アーム40の他端側の回動部41が接続している。アーム40は、他端側から回動部41、棒状部材42、回動部43,44、棒状部材45、回動部46の順番で連結している。アーム40の一端側の回動部46は被写体50の撮像を行うビデオカメラ本体部32に接続される。
【0033】書画カメラ部31は、回動部41,43,44,46の回動により、ビデオカメラ本体部32の位置調整が行えるとともに、アーム40を折り畳んだ状態で段部36にビデオカメラ本体部32を配置できるようになっている。」(第5頁第7欄第40行目?第8欄第31行目)

2.1.2 甲第1号証に記載された発明
上記甲第1号証(以下「甲1」と略称する。)の記載及びこの技術分野における技術常識を考慮すると、

(a1) 甲1には、上記ア.に記載されるように、「書画カメラ装置」に係る発明が記載されている。

(a2) 上記イ.の段落【0026】には、「書画カメラ装置」が書画カメラ部31を含むものであることが記載されており、段落【0027】には、書画カメラ部31が「ビデオカメラ本体部32」と「アーム40」を有することが記載されている。
また、上記イ.の段落【0032】には「アーム40」が回動部を介して連結された「棒状部材42」と「棒状部材45」とを有し、「棒状部材45」の「一端側」には回動部を介して「ビデオカメラ本体部32」が接続されていることが記載されており、段落【0033】には、「アーム40」が折り畳み可能であることが記載されている。そして、回動部を介して連結された「棒状部材42」と一端側にビデオカメラ本体部32が接続された「棒状部材45」とを有するアーム40を折り畳むとは、回動部を回動させて「棒状部材42」と一端側にビデオカメラ本体部32が接続された「棒状部材45」を「折り畳」むことを指すことは明らかである。
また、図1には「棒状部材42」が、一端側にビデオカメラ本体部32が接続された「棒状部材45」を回動部を介して支持することが示されている。
したがって、甲1には、「書画カメラ装置」が「ビデオカメラ本体部32」と「一端側に前記ビデオカメラ本体部32が接続された棒状部材45と、前記棒状部材45を支持する棒状部材42とを有し、前記棒状部材42と前記棒状部材45とを折り畳み可能なアーム40」を有していることが記載されている。

(b、c) 上記イ.の段落【0027】には、書画カメラ部31が「ビデオカメラ支持部33」を有することが記載されており、上記イ.の段落【0031】には、書画カメラ部31が「回路収納部34」を有しており、「回路収納部34」が「段部36」と「操作部35」とを備えることが記載されている。
また、上記イ.の段落【0033】には、回動部の回動により、「アーム40を折り畳んだ状態で段部36にビデオカメラ本体部32を配置できるようになっている。」と記載されている。ここで、「段部36にビデオカメラ本体部32を配置」した状態は、ビデオカメラ本体部32が被写体50を撮影できる状態でないことは図1より明らかであることから、「書画カメラ装置」として使用できない状態、すなわち「非使用時」であるといえる。
したがって、甲1には、「非使用時には前記ビデオカメラ本体部32を配置する段部36と操作部35とを備える回路収納部34と、ビデオカメラ支持部33とを有する書画カメラ装置であって、
非使用時には、前記アーム40を折り畳んで前記ビデオカメラ本体部32を前記段部36に配置」することが記載されている。

(d) 図1に示される状態は、ビデオカメラ本体部32が被写体50を撮影できる状態であることが明らかであることから、書画カメラ装置として使用できる状態、すなわち「使用時」であるといえる。
そして、「使用時」における状態として、図1には、アーム40を構成する、カメラ本体部32が接続された棒状部材45と棒状部材42とが折れ曲がるように展開されていることが示されている。
したがって、甲1には、「使用時には、前記アーム40を、前記カメラ本体部32が接続された前記棒状部材45と前記棒状部材42とが折れ曲がるように展開して使用する」ことが記載されている。

以上のとおりであるから、甲1には書画カメラ装置に係る以下の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されている。
なお、分説記号は、本件特許発明の構成に対応するように当審が付したものである。

(甲1発明)
「a.ビデオカメラ本体部32と、
一端側に前記ビデオカメラ本体部32が接続された棒状部材45と、前記棒状部材45を支持する棒状部材42とを有し、前記棒状部材42と前記棒状部材45とを折り畳み可能なアーム40と、
b.非使用時には前記ビデオカメラ本体部32を配置する段部36と操作部35とを備える回路収納部34と、ビデオカメラ支持部33を有する書画カメラ装置であって、
c.非使用時には、前記アーム40を折り畳んで前記ビデオカメラ本体部32を前記段部36に配置し、
d.使用時には、前記アーム40を、前記カメラ本体部32が接続された前記棒状部材45と前記棒状部材42とが折れ曲がるように展開して使用するように構成される
e.書画カメラ装置」

2.2 甲第2号証
2.2.1 甲第2号証の記載
請求人が証拠方法として提出した甲第2号証(特開2003-153041号公報)には、「資料提示装置」として図面とともに、以下の事項が記載されている。

ア.「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、書画や物品等の資料を載置する資料載置台を有し、資料を撮像手段で撮像する資料提示装置に関する。」(第2頁第1欄第50行目?第2欄第3行目)

イ.「【0020】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
(第1の実施の形態)図1?図13は本発明の第1の実施の形態に係り、図1は第1の実施の形態の資料提示装置を使用状態に設定した状態で示し、図2?図4は図1の使用状態から折り畳むまでの状態を示すもので、図2は撮像部とアーム部を構成する一部の連結部材を折り畳んだ状態を示し、図3は図2から撮像部と連結部材側を資料載置台部材の裏面に形成した凹部側に回動した様子を示し、図4は図3の状態から回動可能な資料載置台部材を折り畳んで、撮像部とアーム部を凹部内部に収納した状態を示し、図5は照明手段が取り付けられる連結部材付近を示し、図6は照明手段が取り付けられる連結部材を横断面図で示し、図7は撮像用アタッチメントが着脱可能な撮像部の撮像窓付近の構造を示し、図8は撮像用アタッチメントが装着された状態の撮像部付近を示し、図9は照明用アタッチメントを使用しないで書画を照明して撮像する様子を示し、図10は図9の場合には書画の照明の際に照明ムラが発生する様子を模式的に示し、図11は照明手段と共に、照明用アタッチメントが着脱可能な連結部材付近の構造を示し、図12は照明用アタッチメントを装着した状態での連結部材を横断面図で示し、図13は信号処理回路の構成を示す。
【0021】図1に示すように本発明の1実施の形態の資料提示装置1は、上面が資料載置面となるように殆ど同一平面となるよう構成された、略長方形の板形状の2つの資料載置台部材2a、2bから成る資料載置部2と、この資料載置部2の上面に載置される書画3等の資料(図9参照))を撮像する撮像部4と、この撮像部4を支持するために撮像部4と資料載置部2とで連結された複数の連結部材、具体的には3つの連結部材5a、5b、5cから成るアーム部5と、によって構成されている。
【0022】資料載置部2を構成する2つの資料載置台部材2a、2bは、資料載置部2の中央で隣接する端面が、その端面と平行で裏面側の角部に沿って形成される回転軸6の周りで回動自在(屈曲自在)である。従って、図1等に示すように通常の載置状態では両端面が接触して、この状態ではその上面は殆ど同一平面を形成する。この状態で、回転軸6の回りで両資料載置台部材2a、2bを回動させると、図3に示すように裏面側に折り曲げることができるようにしてある。なお、両資料載置台部材2a、2bはその裏面側に設けた図示しない蝶番等で回転軸6で回動自在に連結される。
【0023】なお、図1のように2つの資料載置台部材2a、2bを広げた載置状態では、2つの資料載置台部材2a、2b全体による資料載置面は、2つの資料載置台部材2a、2bの連結方向が他方より長くなる長方形状となり、そのサイズは例えばA4サイズより僅かに広く設定できるようにしてある。この場合、各資料載置台部材2a、2bは上記連結方向と直交する方向が長手方向となる略A5サイズの長方形状で、かつ同じサイズとなっており、折り畳んだ状態では図4に示すようにコンパクトなサイズに設定できるようにしている。
【0024】また、図3に示すようにこれら2つの資料載置台部材2a、2bの裏面側にはそれぞれ凹部7a、7bが形成され、これら凹部7a、7bにアーム部5の連結部材5a、5b、5c及び撮像部4とを内部に完全に収納して、2つの資料載置台部材2a、2bを折り畳むことができるようにしている。」(第3頁第4欄第27行目?第4頁第5欄第37行目)

ウ.「【0033】そして、図1の状態から撮像部4を回転軸12の回りで反時計回り方向に回転させてその面が連結部材5aとほぼ同一平面となる状態に設定した後、連結部材5aを撮像部4と一体で回転軸11の回りで時計回り方向に回転させると、回転軸12部分を切り欠き8内で回転軸9と同じ直線上に設定できる。つまり、図2に示す状態に設定できる。
【0034】この状態では、3つの連結部材5a、5b、5c及び撮像部4の箱状の面とは同一の平面に、重なり合うことなく折り畳まれた平面状の状態となる。そして、この平面状の状態の3つの連結部材5a、5b、5c及び撮像部4を回転軸9、12の回りで資料載置台部材2a、2bの裏面側に回転させると図3から分かるように、切り欠き8に連通する凹部7a内に収納ができる。
【0035】このように本実施の形態では、3つの連結部材5a、5b、5c及び撮像部4とを重なり合うことなく折り畳まれた平面状の状態に設定できるようにし、それを一体的に回動させることにより資料載置台部材2a、2bの裏面に形成した凹部7a、7bにガイドしてその平面状の状態で収納できるようにしている。
」(第5頁第7欄第1?21行目)

2.2.2 甲第2号証に記載された発明
上記甲第2号証(以下「甲2」と略称する。)の記載及びこの技術分野における技術常識を考慮すると、

(a1) 甲2には、上記ア.に記載されるように、「資料提示装置」に係る発明が記載されている。

(a2) 上記イ.の段落【0021】には、「資料提示装置1」が「撮像部4」と、3つの「連結部材5a、5b、5c」から成る「アーム部5」を有することが記載されており、図1には、「連結部材5a」が先端で「撮像部4」を支持するとともに、前記「連結部材5a」を「連結部材5b」が、前記「連結部材5b」を「連結部材5c」が、それぞれ支持することが示されている。
また、上記ウ.の段落【0034】、【0035】には、「連結部材5a、5b、5c」及び「撮像部4」を「折り畳」むことが記載されている。
したがって、甲2には、「撮像部4」と、「先端で前記撮像部4を支持する連結部材5a、前記連結部材5aを支持する連結部材5b、及び前記連結部材5bを支持する連結部材5cから成り、前記撮像部4とともに折り畳み可能なアーム部5」が記載されている。

(b) 上記イ.の段落【0021】?【0022】には、「資料提示装置1」が資料載置台部材2a、2bから構成される「資料載置部2」を有することが、段落【0024】には、「資料載置部2」を構成する資料載置台部材2aの裏面側には「凹部7a」が形成されることが記載されている。
また、上記ウ.の段落【0034】?【0035】には、「折り畳まれた」状態にある、連結部材5a、5b、5c、すなわち「アーム部5」を「撮像部4」とともに「凹部7a」内に「収納」させることが記載されている。
そして、上記ア.に記載されているように、資料提示装置は資料を撮像するものであることから、撮像部4を凹部7aに収納する状態は、資料提示装置としての「非使用時」であるといえる。
したがって、甲2には、「非使用時には前記アーム部5及び前記撮像部4を折り畳まれた状態で収納する凹部7aが形成された資料載置部2を有する資料提示装置1」が記載されている。

(c) 上記ウ.には、撮像部4を凹部7aに収納するとき、すなわち「非使用時」の手順として、段落【0033】には、図1の状態から、「撮像部4」の面が「連結部材5a」とほぼ同一平面となる状態に設定した後、「連結部材5a」と「撮像部4」と一体で回転軸11の回りで時計回り方向に回転させて折り畳まれた状態とすることが、段落【0034】には、折り畳まれた状態となった連結部材5a、5b、5c、すなわち「アーム部5」及び「撮像部4」を回転軸9、12の回りで回転させ「凹部7a」に収納させることが記載されている。
したがって、甲2には、「非使用時には、前記アーム部5及び撮像部4を、前記撮像部4を前記連結部材5aとほぼ同一平面となる状態に設定した後、前記連結部材5aと前記撮像部4と一体で時計回り方向に回転させ折り畳まれた状態とするとともに、折り畳まれた状態となったアーム部5及び撮像部4を回転させ前記凹部7aに収納」させることが記載されている。

(d) 上記イ.の段落【0020】には、図1に示される状態が資料提示装置の「使用状態」であることが記載されている。
また、「使用状態」である図1には、連結部材5a、5b、5cから成る「アーム部5」、及び「撮像部4」を展開するようにすることが示されている。
したがって、甲2には、「使用状態では、前記アーム部5及び前記撮像部4を展開して使用するように構成され」ていることが記載されている。

(e) 上記ウ.の段落【0035】には、「資料載置部2」を構成する資料載置台部材2aの裏面側の「凹部7a」に、「折り畳まれた」状態の連結部材5a、5b、5cから成る「アーム部5」及び「撮像部4」とを収納することが記載されている。
また、図3には、「アーム部5」及び「撮像部4」の厚みと「凹部7a」の深さがほぼ等しいことも示されていることから、「凹部7a」に「アーム部5」及び「撮像部4」を収納したときには、「アーム部5」及び「撮像部4」の上面と「資料載置部2」の裏面とが「略面一」となることは明らかである。
したがって、甲2には、「前記アーム部5及び前記撮像部4を、折り畳まれた状態で前記凹部7aに収納したとき、前記アーム部5及び撮像部4の上面と前記資料載置部2の裏面とが略面一となるように構成されている」ことが記載されている。

以上のとおりであるから、甲2には資料提示装置に係る以下の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されている。
なお、分説記号は、本件特許発明の構成に対応するように当審が付したものである。

(甲2発明)
「a.撮像部4と、
先端で前記撮像部4を支持する連結部材5a、前記連結部材5aを支持する連結部材5b、及び前記連結部材5bを支持する連結部材5cから成り、前記撮像部4とともに折り畳み可能なアーム部5と、
b.非使用時には前記アーム部5及び前記撮像部4を折り畳まれた状態で収納する凹部7aが形成された資料載置部2を有する資料提示装置1であって、
c.非使用時には、前記アーム部5及び前記撮像部4を、前記撮像部4を前記連結部材5aとほぼ同一平面となる状態に設定した後、前記連結部材5aと前記撮像部4と一体で時計回り方向に回転させ折り畳まれた状態とするとともに、折り畳まれた状態となったアーム部5及び撮像部4を回転させ前記凹部7aに収納し、
d.使用状態では、前記アーム部5及び前記撮像部4を展開して使用するように構成され、
e.前記アーム部5及び前記撮像部4を、折り畳まれた状態で前記凹部7aに収納したとき、前記アーム部5及び撮像部4の上面と前記資料載置部2の裏面とが略面一となるように構成されている資料提示装置。」

2.3 甲第3号証
2.3.1 甲第3号証の記載
請求人が証拠方法として提出した甲第3号証(国際公開第WO01/084827号公報)には、「据え置き型カメラ装置」として図面とともに、以下の事項が記載されている。

ア.「[実施形態3]
第10図は、本発明の据え置き型カメラ装置の実施形態3を示す全体斜視図、第11図および第12図はこの据え置き型カメラ装置の使用形態を示す斜視図である。
この据え置き型カメラ装置A3は、実施形態2に示す据え置き型カメラ装置A2と同様、載置部21と、カメラ支持部22と、カメラ部23とからなっている。ただし、載置部21の形状については、意匠性を考慮した形状となっている。
実施形態2と異なるところは、実施形態2のカメラ支持部12が、伸縮のみ可能であるのに対し、本実施形態3のカメラ支持部22が屈曲可能(第10図、矢符Xにより示す)および伸縮可能(第10図中、矢符Dにより示す)に設けられている点である。その他の構成、例えば、載置部21に対してカメラ支持部22が回動可能である点、カメラ部13がカメラ支持部12に対して回転および3次元方向に回動可能(すなわち、半円球面状に回動可能)である点は、実施形態2のものと同様である。
ただし、本実施形態3の据え置き型カメラ装置A3では、カメラ支持部22の基端部22aが、載置部21の前面21aに突出して取り付けられた構造となっている。そのため、回動方向は、載置部21の前面21aをスライドするように回転(第10図中、矢符Eにより示す)する構造となっている。すなわち、180度回転させることによって、筐体92の上に載置する使用形態(第11図参照)と、表示装置91の前の載置台93上に載置する使用形態(第12図参照)との両方の使用形態が可能となっている。
また、本実施形態3の据え置き型カメラ装置A3では、載置部21の上面21bから背面21c(第13図(b)を併せて参照)にかけて、カメラ支持部22およびカメラ部23を収納するための溝状の収納部21dが設けられており、使用しないときには、この収納部21dにカメラ支持部22およびカメラ部23を収納できるようになっている。第13図(a),第13図(b)は、カメラ支持部22およびカメラ部23を収納部21dに収納した状態を示している。このように、カメラ支持部22およびカメラ部23を載置部21に密着させる形で収納することで、未使用時にカメラ支持部22や カメラ部23が邪魔にならず、かつ損傷する心配もない。また、このようにカメラ支持部22およびカメラ部23を載置部21に密着させる形で収納することで、例えば生産後にこの据え置き型カメラ装置A3を出荷するときに、小さく梱包することができるので、輸送効率も向上するといつた利点がある。」(第8頁第18行?第9頁第23行目)

2.3.2 甲第3号証に記載された発明
上記ア.の記載及び関連する図面並びにこの分野における技術常識を考慮すると、甲第3号証(以下「甲3」と略称する。)には、次の発明(以下、「甲3発明」という。)が記載されている。

(甲3発明)
「カメラ支持部22を屈曲させてカメラ部23とともに収納部21dに収納したとき、カメラ支持部22の上面と載置部21の上面とが略面一となるように構成した据え置き型カメラ装置A3。」

2.4 甲第4号証
2.4.1 甲第4号証の記載
請求人が証拠方法として提出した甲第4号証(特開2004-96661号公報)には、「カメラ装置」として図面とともに、以下の事項が記載されている。

ア.「【0013】
図1は、本発明のカメラ装置1を示す斜視図、図2は、本発明のカメラ装置1の動作を説明する斜視図、図3は、本発明のカメラ装置1のカメラ支持部3およびカメラ部4を収納部20に収納した状態を示す斜視図、図4および図5は、本発明のカメラ装置1の使用状態を説明する斜視図である。
【0014】
本発明に係るカメラ装置1は、モニタ5上に載置可能な載置部2と、載置部2に取り付けられたカメラ支持部3と、カメラ支持部3の先端部に取り付けられたカメラ部4と、から主要部が構成される。以下、順次上記の各構成部分について説明する。
【0015】
載置部2は、横長に形成されており、本実施の形態では、スピーカが内蔵されている。また、通信回線の接続・切断等を行なうための通信ボタン22や、通信状態を表示するランプ23、回線接続状態を示すランプ24、電源ランプ25などの各種ランプ、リモコンからの信号を受信する受光部などが備えられている。さらに、電源スイッチ、電源ケーブル、ヘッドセットのジャックを接続するための接続端子および回線端子、外部入出力端子(図示せず)などが設けられている。
【0016】
また、載置部2は、モニタ5上に安定的に設置できるように、底面が平坦面となっている。なお、載置部2を確実に載置固定するために、底面部分の複数箇所(例えば、左右2個所、若しくは左右両側の前後4個所)に吸盤などの吸着具を取り付けたり、モニタ5上面と載置部2底面に互いに係着する面ファスナーを取り付けて固定するようにしてもよい。
【0017】
載置部2の上面には、カメラ支持部3およびカメラ部4を収納するための溝状の収納部20が設けられており、使用しないときには、この収納部20にカメラ支持部3およびカメラ部4を収納できるようになっている(図3参照)。」(第3頁第34行目?第4頁第8行目)

2.4.2 甲第4号証に記載された発明
上記ア.の記載及び関連する図面並びにこの分野における技術常識を考慮すると、甲第4号証(以下「甲4」と略称する。)には、次の発明(以下、「甲4発明」という。)が記載されている。

(甲4発明)
「カメラ支持部3及びカメラ部4を収納部20に収納したとき、カメラ支持部3及びカメラ部4の上面と通信ボタン22の上面とが略面一となるように構成したカメラ装置1。」

2.5 甲第5号証
2.5.1 甲第5号証の記載
請求人が証拠方法として提出した甲第5号証(特開平6-125552号公報)には、「テレビ電話機」として図面とともに、以下の事項が記載されている。

ア.「【0007】本実施例のテレビ電話機においては、上記画像表示部4を平面型表示素子(例えば、液晶カラー表示素子)により構成して筐体7の後部に配置すると共に、アーム1の一端に平面型撮像素子(例えば、CCD2次元センサー)よりなる撮像部3を保持し、前記アーム1の他端をヒンジ機構6を介して筐体7前方寄りに固定している。これによって、アーム1が筐体7に対し光軸と鉛直線を含む平面内において前後方向に回動するようになっている。そして、アーム1を後方に倒したときに、アーム1が筐体7に形成した保持部7aに収納されるように構成してある。また、この収納状態においては、人物撮像状態に対応して、撮像レンズ2の光軸がほぼ水平やや上向きに保持される。アーム1を前方に起こしたとき、すなわち展開したときは、書画撮像状態に対応してストッパー5の働きにより、アーム1の回動が停止され、光軸は机上面に対してほぼ垂直となり、書画被写界視野範囲8のほぼ中心点上部に撮像部3が位置するようになる。」(第2頁第2欄第40行目?第3頁第3欄第7行目)

2.5.2 甲第5号証に記載された発明
上記ア.の記載及び関連する図面並びにこの分野における技術常識を考慮すると、甲第5号証(以下「甲5」と略称する。)には、次の発明(以下、「甲5発明」という。)が記載されている。

(甲5発明)
「アーム1及び撮像部3を保持部7aに収納したとき、アーム1及び撮像部3の上面と操作部及び画像表示部4の上面とが略面一となるように構成したテレビ電話機。」

2.6 甲第6号証
2.6.1 甲第6号証の記載
請求人が証拠方法として提出した甲第6号証(意匠登録第1247305号公報)には、「テレビ電話」について、以下の図面が示されている。
ア.「【斜視図】



イ.「【収納状態を示す参考側面図】



ウ.「【アームの回転を示す参考側面図】



2.6.2 甲第6号証に記載された発明
図面並びにこの分野における技術常識を考慮すると、甲第6号証(以下「甲6」と略称する。)には、次の発明(以下、「甲6発明」という。)が記載されている。

(甲6発明)
「カメラ及びアームを収納凹部に収納したとき、カメラ及びアームの上面と筐体の上面とが略面一となるように構成したテレビ電話」

2.7 甲第7号証
2.7.1 甲第7号証の記載
請求人が証拠方法として提出した甲第7号証(特開平10-62867号公報)には、「液晶プロジェクタ」として図面とともに、以下の事項が記載されている。

ア.「【0026】図5は、本発明の液晶プロジェクタの第2の実施形態を示す収納時の外観斜視図であり、図6はその使用時の外観斜視図である。液晶プロジェクタ32のプロジェクタ本体37上面には、一端が回動自在にプロジェクタ本体37内に軸着され、他端に撮像ヘッド47が設けられたアーム48が設けられている。また、アーム48の近傍には、セットアップボタン40が設けられている。
【0027】このアーム48は、図5に示す収納位置と図6に示す撮像位置との間で回動し、収納位置においては、撮像ヘッド47を含めてアーム48全体がプロジェクタ本体37の上面から突出しないように、プロジェクタ本体37に埋没して収納される。そして、セットアップボタン40を押すと、アーム48が付勢部材(図示せず)の付勢により撮像位置まで回動する。撮像ヘッド47を含むアーム48は、撮像位置においてはプロジェクタ本体37の外側に出っ張るようになり、撮像ヘッド47の直下に被写体21を載置して撮像する。
【0028】撮像ヘッド47には撮像レンズ42が設けられており、撮像ヘッド47内に設けられたCCDモジュール(図示せず)上に被写体像を結像させる。また、この撮像レンズ42の回りには、光源であるリングライト43が設けられており、拡大投影する原稿等の被写体21を照明する。」(第4頁第5欄第25?48行目)

2.7.2 甲第7号証に記載された発明
上記ア.の記載及び関連する図面並びにこの分野における技術常識を考慮すると、甲第7号証(以下「甲7」と略称する。)には、次の発明(以下、「甲7発明」という。)が記載されている。

(甲7発明)
「撮像ヘッド47が設けられたアーム48を回動させてプロジェクタ本体37に埋没して収納したとき、撮像ヘッド47及びアーム48の上面とセットアップボタン40の上面とが略面一となるように構成した液晶プロジェクタ。」

2.8 甲第8号証
2.8.1 甲第8号証の記載
請求人が証拠方法として提出した甲第8号証(特開2005-70296号公報)には、「撮影装置」として図面とともに、以下の事項が記載されている。

ア.「【0001】
本発明は撮影装置に係り、特に原稿等の書類を撮影しスクリーンに投影する書画カメラ付きビデオプロジェクタ等の撮影装置に関する。」(第2頁第19?21行目)

イ.「【0016】
カメラ部18は、固体撮像素子(不図示)が内蔵されたカメラ本体28とレンズ装置30とから構成されるとともに、図3の如くジョイント32及びクリック機構34を介してアーム16の上端部に回動自在に連結される。カメラ部18は、ジョイント32によってジョイント32の回動軸A(図3で一点鎖線で示す軸:水平軸)を中心に回動されるとともに、クリック機構34によって図1の下方向き位置と図2の側方向き位置とにその回動位置が位置決めされる。
【0017】
カメラ部18には、位置検出装置(位置検出手段)であるポテンショメータ36、CPU38、及びモータやソレノイド等のレンズ駆動装置(レンズ駆動手段)40が内蔵されている。ポテンショメータ36は、ジョイント32の回動部にそのすべり接触子が取り付けられ、アーム16に対してカメラ部18が図1の下方向き位置のときには第1の抵抗値を示す信号がレンズ駆動装置40に出力されるとともに、アーム16に対してカメラ部18が図2の側方向き位置のときには第2の抵抗値を示す信号がレンズ駆動装置40に出力される。なお、ポテンショメータ36からの第1の抵抗値及び第2の抵抗値をCPU38に出力してもよい。」(第4頁第10?25行目)

ウ.「【0022】
図4、図5は、第2の実施の形態に係る書画カメラ付きビデオプロジェクタ50の斜視図であり、図1?図3に示した第1の実施の形態の書画カメラ付きビデオプロジェクタ10と同一若しくは類似の部材については同一の符号を付して説明する。
【0023】
図4、図5に示したビデオプロジェクタ50のアーム52は、ヒンジ部54によって回動自在に構成されている。すなわちアーム52は、プロジェクタ本体14のテーブル20に固定された本体アーム56と、この本体アーム56にヒンジ部54を介して連結された回動アーム58とから構成され、回動アーム58の先端部にカメラ部18が連結される。ヒンジ部54には図6の如くクリック機構60が設けられており、このクリック機構60によって、原稿22をカメラ部18で撮像する90°回動した位置(図4参照)と、プレゼンテーション会場の風景を撮影する直棒状に伸びた位置(図5参照)との間で回動アーム58が位置決めされる。」(第5頁第10?22行目)

エ.「【0031】
図9は、図4に示したカメラ部18のカメラ本体28を回動アーム58の先端に回動自在に連結したもので、その連結部には図3に示したように、その回動位置を検出するポテンショメータ36が設けられている。これにより、図9の如くカメラ本体28を回動させてカメラ部18を側方に向けた場合には、プレゼンテーション会場の風景を撮影する合焦位置にレンズ装置30のフォーカスレンズ44が位置する。」(第6頁第14?19行目)

2.8.2 甲第8号証に記載された発明
上記甲第8号証(以下「甲8」と略称する。)の記載及びこの技術分野における技術常識を考慮すると、甲8には、上記ア.に記載される「撮影装置」について記載されており、

(f1) 上記エ.及び、ウ.の段落【0023】には、図9に示される「撮影装置」が、「本体アーム56」と「回動アーム58」を有することが記載されており、図9には前記「回動アーム58」が前記「本体アーム56」に支持されることが示されている。
また、上記エ.及び、ウ.の段落【0023】には、前記「回動アーム58」の先端部に「カメラ部18」が連結されることが記載されており、上記イ.の段落【0016】には、前記「カメラ部18」が「カメラ本体28」を有することが記載されている。

(f2) 上記エ.及び図9には、前記「カメラ部18」が前記「回動アーム部58」に対して回動自在に連結されたものであり、連結部には図3で示されるポテンショメータ36が設けられ、上記イ.の段落【0016】?【0017】には、図3の説明として、ポテンショメータ36を備えたカメラ部18に関し、アームに対して回動自在に連結された「カメラ部18」の回動軸を水平軸とするとともに、アームに対して「下向き位置」と「側方向き位置」に「位置決め」することが記載されている。
なお、図3に示されるように、「カメラ部18」の回動軸である水平軸が水平に伸びたアームの長手方向に沿った所定の軸であることは明らかである。

以上のとおりであるから、甲8には撮影装置に係る以下の発明(以下、「甲8発明」という。)が記載されている。
なお、分説記号は、本件特許発明の構成に対応するように当審が付したものである。

(甲8発明)
「f.本体アーム56に支持される回動アーム58と、前記回動アーム58の先端部に連結され、カメラ本体28を有するカメラ部18とを有する撮影装置であって、
前記カメラ部18は、前記回動アーム58の長手方向に沿った所定の軸を中心として回動自在に前記回動アーム58に連結するとともに、前記カメラ本体28が下方向き位置及び側方向き位置となるように回動アーム58に対して位置決め可能となるように構成されている撮影装置。」

2.9 甲第10号証
2.9.1 甲第10号証の記載
請求人が証拠方法として提出した甲第10号証(米国特許公開第2009/0002548 A1号公報)には、「DOCUMENT CAMERA」(邦訳「書画カメラ」)として図面とともに、以下の事項が記載されている。
なお、甲第10号証の記載のうち、請求人が提出した口頭審理陳述要領書中で「本件特許を無効にすべき理由2」において参照されているFIG.4及びFIG.5Bに関する記載は、「本件特許を無効にすべき理由2」が削除されている(第1回口頭審理調書の「請求人」欄7参照。)ことから、以下の事項にも含めていない。
また、邦訳については、当審が作成した。

ア.「[0045] FIG. 2B illustrates another embodiment of a 3 axis/3 arm document camera according to an embodiment of the present invention. The portable document camera includes a base 220, a first hinge 205, a first arm 225, a first telescoping portion 227, a second hinge 230, a second arm 235, a second telescoping portion 237, a third hinge 240, a third arm 245, and a camera head assembly 250. The first arm 225 is connected to the base via a first hinge. In an embodiment of the invention, the first arm 225 rotates in a counterclockwise direction from a base 220. The first arm 225 includes a telescoping portion 227. The end of the first arm 225 including the telescoping portion 227 is attached to the second arm 235 via a second hinge 230. The second arm 235 includes a telescoping portion 237. The end of the second arm 235 includes including the telescoping portion 237 is attached to a third arm 245 via a third hinge 240. The third arm 245 includes a camera head assembly 250. In the embodiment of the invention illustrated in FIG. 2B, the camera head assembly 250 rotates in a counterclockwise direction. The camera head assembly 250 may also rotate in a clockwise direction.
[0046] FIG. 2C illustrates the document camera of FIG. 2B in a storage mode according to an embodiment of the invention. In this storage mode, the first arm 225 lies parallel (or alongside) a first side of the base 220. The second arm 235 lies alongside (or parallel) to the first arm 235 and also the first side of the base 220. The third arm 245 lies alongside (or parallel) to a second face of the base 220. The third arm 245 is positioned at a 90 degree angle to the first arm 225 and the second arm 235.
[0047] FIG. 3A illustrates an embodiment of a document camera according to an embodiment of the invention. The portable document image capture includes a base 310, a first U-shaped arm 320, a second arm 330, a third arm 340, and a document camera assembly 350. The first U-shaped arm 320 is a connected to the base via a pivot 355. In an embodiment of the invention, the pivot 355 has a range of greater than 180 degrees. The second arm 330 may fit into the hole of the first arm 320 as is illustrated in FIG. 3A. The second arm 330 is extendable from a bottom of the hole formed by the first U-shaped arm 320 to a top portion of the first U-shaped arm 320. The second arm 330 is connected to the third arm 340 via a second pivot 360. In an embodiment of the invention, the range of operation of a third arm 340 in relation to the second arm 330 is approximately 360 degrees. In other words the pivot 360 may have a range of operation of approximately 360 degrees. The third arm 340 is connected to the camera assembly 350 via a third pivot 365. In an embodiment of the invention, the third pivot 365 may have a range of operation of approximately 360 degrees. The document camera assembly 350 includes a rotating camera head 370. The rotating camera head 370 may rotate approximately 360 degrees. As is illustrated in FIG. 3A, a control panel 375 may be located on a top surface of the base 310. FIG. 3B illustrates a folded side view of the document camera illustrated in FIG. 3A according to an embodiment of the invention. FIG. 3B shows that the second arm 330 slides into the U-shaped opening of the first arm 320. The first arm 320 rotates on the first pivot 355 in a clockwise direction so that the first arm 320 /second arm 330 rest on top of a face of the base 310. The third arm 340 rotates on the second pivot 360 (in a counterclockwise direction) and lies on the first arm 320 /second arm 330, as is illustrated in FIG. 3B.」(第2頁左欄第46行目?右欄第43行目)

(邦訳)
「[0045] 図2Bは、本発明の実施形態に係る3軸/3アーム書画カメラの別の実施形態を示す。ポータブル書画カメラはベース220、第1ヒンジ205、第1アーム225、第1伸縮部227、第2ヒンジ230、第2アーム235、第2伸縮部237、第3ヒンジ240、第3アーム245及びカメラヘッドアセンブリ250を含む。第1アーム225は、第1ヒンジを介してベースに接続されている。本発明の一実施形態では第1アーム225は、ベース220から反時計回りに回転する。第1アーム225は伸縮部227を含む。伸縮部227を含む第1アーム225の端部は、第2ヒンジ230を介して第2アーム235に取り付けられている。第2アーム235は伸縮部237を含む。伸縮部237を含む第2アーム235の端部は第3ヒンジ240を介して第3アーム245に取り付けられている。第3アーム245はカメラヘッドアセンブリ250を含む。図2Bに示された本発明の実施形態では、カメラヘッドアセンブリ250は、反時計方向に回転する。カメラヘッドアセンブリ250は、時計方向に回転しても良い。
[0046]図2Cは、図2Bに示す本発明の一実施形態に係る書画カメラの格納モードを示す。この格納モードでは、第1アーム225は、ベース220の第1側面に並列に(並んで)位置する。第2アーム235は、第1アーム225及びベース220の第1側面に並んで(または並列に)位置する。第3アーム245はベース220の第2面と並んで(または並列に)位置する。第3アーム245は、第1アーム225と第2アーム235に対して90度の角度で配置されている。
[0047] 図3Aは、本発明の一実施形態による書画カメラの実施形態を示す。可搬型文書画像取得装置は、ベース310、第1のU字状アーム320、第2アーム330、第3アーム340、および書画カメラアセンブリ350を含む。第1のU字状アーム320は回動軸355を介してベースに接続されている。本発明の一実施形態では、回動軸355は180度以上の範囲を有する。図3Aに示されるように、第2アーム330は、第1アーム320のくぼみに嵌合することができる。第2アーム330は、第1のU字状アーム320のくぼみの底部から、第1のU字状アーム320の頂部まで伸長可能である。第2アーム330は第2回動軸360を介して第3アーム340に接続されている。本発明の一実施形態では、第2アーム330に対する第3アーム340の可動範囲は約360度である。言い換えると、回動軸360は、約360度の可動範囲を有することができる。第3アーム340は第3回動軸365を介してカメラアセンブリ350に接続されている。本発明の一実施形態では、第3回動軸365は、約360度の可動範囲を有することができる。書画カメラアセンブリ350は、回転カメラヘッド370を含む。回転カメラヘッド370は、約360度回転させることができる。図3Aに示されるように、コントロールパネル375は、ベース310の上面に配置されてもよい。図3Bは、図3Aに示した本発明の一実施例に係る書画カメラの折り畳まれた側面図を示す。図3Bは第2アーム330が第1アーム320のU字型の開口部内にスライドすることを示す。第1アーム320は第1回動軸355で時計方向に回転するので、第1アーム320/第2アーム330はベース310の上面に位置する。第3アーム340は第2回動軸360で(反時計方向に)回転し、図3Bに示されるように、第1アーム320/第2アーム330上に位置する。」

2.9.2 甲第10号証に記載された発明
上記ア.の記載及び関連する図面並びにこの分野における技術常識を考慮すると、甲第10号証(以下「甲10」と略称する。)には、FIG.2B、2Cに係る次の発明(以下、「甲10発明1」という。)、及びFIG.3A、3Bに係る次の発明(以下、「甲10発明2」という。)が記載されている。

(甲10発明1)
「非使用時には、第2アーム235と第1アーム225とベース220とが並んで重なるように折り畳み、
使用時には、前記第2アーム235と前記第1アーム225とが折れ曲がるように展開して使用する
書画カメラ。」

(甲10発明2)
「非使用時には、第3アーム340と、第1アーム320及び第2アーム330とからなるアームと、ベース310とを折り畳み、
使用時には、前記第3アーム340と、前記第1アーム320及び第2アーム330とからなるアームとが折れ曲がるように展開して使用する
書画カメラ。」

3.対比・判断
上記第3.の2.に示す請求人の主張する本件特許を無効にすべき理由は、本件特許の請求項1に係る発明は、甲第1号証又は甲第2号証と、甲第3号証乃至甲第7号証に記載された発明に基づいて、また、本件特許の請求項5に係る発明は、甲第1号証又は甲第2号証と、甲第3号証乃至甲第7号証、さらに甲第8号証に記載された発明に基づいて(第1回口頭審理調書の「請求人」欄3参照。)、出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許を無効とすべきものであるというものである。
したがって、当該理由は、対象となる本件特許発明と、根拠となる引用発明の組み合わせにより、以下に示す4つの理由に整理することができる。

理由1 本件特許発明1は甲1発明と甲3乃至甲7発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
理由2 本件特許発明1は甲2発明と甲3乃至甲7発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
理由3 本件特許発明5は甲1発明と甲3乃至甲7発明、さらに甲8発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
理由4 本件特許発明5は甲2発明と甲3乃至甲7発明、さらに甲8発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

以下、上記各理由毎に検討を行う。

3.1 理由1について
3.1.1 本件特許発明1について
上記第2.の[本件特許発明1]として認定したとおりである。

3.1.2 引用発明について
上記第5.の2.1.2において、(甲1発明)として認定したとおりである。

3.1.3 対比
(1) 本件特許発明1の構成要件Aと甲1発明の構成要件aの対比
甲1発明の「ビデオカメラ本体部32」は被写体50の撮像を行うものであることから、本件特許発明1の「カメラ」に相当する構成を有していることは明らかである。
また、甲1発明の「棒状部材42」、「棒状部材45」は、アーム状の部材であると言え、棒状部材45の「一端側」とは、棒状部材45の2つある「先端」のうちの一方を指すことは明らかであることから、甲1発明の「ビデオカメラ本体部32」と「一端側に前記ビデオカメラ本体部32が接続された棒状部材45」を併せた部材は、本件特許発明1の「先端にカメラを有する第1アーム部」に相当し、甲1発明の、一端側にビデオカメラ本体部32が接続された「前記棒状部材45を支持する棒状部材42」は、本件特許発明1の「前記第1アーム部を支持する第2アーム部」に相当する。
また、甲1発明の「前記棒状部材42と前記棒状部材45とを折り畳み可能なアーム40」に関し、棒状部材45は「一端側に前記ビデオカメラ本体部32が接続された」ものであることから、棒状部材42と棒状部材45とを折り畳むことは、棒状部材42と、「ビデオカメラ本体部32」と「一端側に前記ビデオカメラ本体部32が接続された棒状部材45」を併せた部材とを折り畳むことであり、甲1発明の「ビデオカメラ本体部32」と「前記棒状部材42と前記棒状部材45とを折り畳み可能なアーム40」は、併せて本件特許発明1の「前記第1アーム部と前記第2アーム部とを折り畳み可能なアーム部」に相当する。
したがって、甲1発明の構成要件aである「ビデオカメラ本体部32と、一端側に前記ビデオカメラ本体部32が接続された棒状部材45と、前記棒状部材45を支持する棒状部材42とを有し、前記棒状部材42と前記棒状部材45とを折り畳み可能なアーム40」は、本件特許発明1の構成要件Aである「先端にカメラを有する第1アーム部と前記第1アーム部を支持する第2アーム部とを有し、前記第1アーム部と前記第2アーム部とを折り畳み可能なアーム部」に相当する。

(2) 本件特許発明1の構成要件Bと甲1発明の構成要件bの対比
甲1発明における「非使用時には前記ビデオカメラ本体部32を配置する段部36」に関し、上記第5の2.1.2(b、c)で検討したとおり、甲1発明において、「非使用時」である「ビデオカメラ本体部32」の「段部36」への配置は、アーム40を折り畳んだ状態で行う旨記載されていることから、甲1発明における「非使用時には前記ビデオカメラ本体部32を配置できる段部36」は、「非使用時には」アーム40を折り畳んで「前記ビデオカメラ本体部32を配置できる段部36」であるといえる。
そして、甲1発明において「非使用時には」アーム40を折り畳むことは、アーム40を折り畳むと棒状部材45に接続されたビデオカメラ本体部32も併せて折り畳まれることが明らかであることから、本件特許発明1における「非使用時に前記アーム部を折り畳」むことに相当する。
また、甲1発明の「前記ビデオカメラ本体部32を配置する段部36」とは、甲1の図1を考慮すれば、ビデオカメラ支持部33を側面、段部36と操作部35(すなわち回路収納部34の上面)を底面とした空間(以下、「段差空間」という。)にビデオカメラ本体部32を配置できることを表現しているものといえる。そして、この段差空間は、ビデオカメラ支持部33と回路収納部34とからなる部材が内接する直方体状の空間よりも凹んだ空間であることから、ビデオカメラ支持部33と回路収納部34とからなる部材が有する「凹部」であるといえる。
そして、非使用時にビデオカメラ本体部32を「凹部」に配置することは、「収納」を意図していることは明らかである。
したがって、「収納」のための「凹部」でありアーム部の一部であるビデオカメラ本体部32を配置可能な前記段差空間は、本件特許発明1と下記相違点を除き「収納凹部」に相当する。
また、甲1発明における「操作部35」は、本件特許発明1の「操作部」に、そして甲1発明における「書画カメラ装置」は本件特許発明1における「書画カメラ」にそれぞれ相当することは明らかである。
そして、甲1発明におけるビデオカメラ支持部33と回路収納部34とからなる部材は、下記相違点を除き本件特許発明1における「収納凹部」と、「操作部」とを有する部材といえることから、当該部材は本件特許発明1における「本体部」に相当する。
ここで、甲1発明における段差空間は、非使用時にアーム40を折り畳み、ビデオカメラ本体部32を配置できるものであり、本件特許発明1の「収納凹部」は非使用時にアーム部、すなわち「カメラ」を有する「第1アーム部」と「第2アーム部」とを折り畳んだ状態で収納するものであることから、甲1発明における段差空間は、非使用時にアーム40を折り畳み、ビデオカメラ本体部32を配置できる点において、本件特許発明1の「収納凹部」と共通するものの、折り畳まれたアーム40、すなわち「棒状部材45」と「棒状部材42」とを収納するか特定されていない点で本件特許発明1の「収納凹部」と相違する。
したがって、本件特許発明1の構成要件Bと甲1発明の構成要件bは、「非使用時には前記アーム部を折り畳んだ状態で、前記カメラを収納する収納凹部と、操作部とを有する本体部とを有する書画カメラ」である点で共通し、非使用時に、本件特許発明1においては収納凹部に折り畳んだ状態の「アーム部」を収納するのに対して、甲1発明においては収納凹部に折り畳んだ状態の「アーム部」の一部分である「カメラ」を収納することについてのみ特定されている点で相違する。

(3) 本件特許発明1の構成要件Cと甲1発明の構成要件cの対比
甲1発明における、「前記アーム40を折り畳んで前記ビデオカメラ本体部32を前記段部36に配置する」ことに関し、「前記アーム40を折り畳」むことは、本件特許発明1における「アーム部を」「折り畳」むことに相当し、「前記ビデオカメラ本体部32を前記段部36に配置する」ことは、本件特許発明1における「前記アーム部」の一部であるカメラを「収納凹部に収納」することに相当するから、甲1発明における上記記載は、本件特許発明1における「前記アーム部を、前記第1アーム部と前記第2アーム部と前記本体部とがZ字状になるように折り畳んで前記収納凹部に収納」することと、「前記アーム部を折り畳んで、前記アーム部の一部である前記カメラを前記収納凹部に収納」する点で共通し、甲1発明においては収納凹部に折り畳んだ状態の「アーム部」の一部分である「カメラ」を収納することについてのみ特定されているのに対し、本件特許発明1においては収納凹部に折り畳んだ状態の「アーム部」を収納するという上記(2)で挙げた相違点に加え、甲1発明においては、アーム40を折り畳む際に、「前記第1アーム部と前記第2アーム部と前記本体部とがZ字状になるように折り畳」むことが特定されていない点で本件特許発明1と相違する。
したがって、本件特許発明1の構成要素Cと甲1発明の構成要素cは、「非使用時には、前記アーム部を折り畳んで、前記アーム部の一部である前記カメラを前記収納凹部に収納」する点で共通し、本件特許発明1においては、収納凹部に折り畳んだ状態の「アーム部」を収納するのに対して、甲1発明においては収納凹部に折り畳んだ状態の「アーム部」の一部分である「カメラ」を収納することについてのみ特定されているという上記(2)で挙げた相違点に加え、非使用時に収納されるアーム部を、本件特許発明1においては「前記第1アーム部と前記第2アーム部と前記本体部とがZ字状になるように折り畳」むのに対し、甲1発明においてはそのような特定がない点で相違する。

(4) 本件特許発明1の構成要件Dと甲1発明の構成要件dの対比
甲1発明の「前記カメラ本体部32が接続された前記棒状部材45と前記棒状部材42とが折れ曲がるように展開」した状態は、甲1の図1にあるように、下側の棒状部材42を基準として見れば、上側のカメラ本体部32が接続された棒状部材45が折れ曲がって「逆L字状」に展開した状態であると認められる。
したがって、甲1発明の構成要素dである「使用時には、前記アーム40を、前記カメラ本体部32が接続された前記棒状部材45と棒状部材42とが折れ曲がるように展開して使用するように構成」することは、本件特許発明1の構成要素Dである「使用時には、前記アーム部を、前記第1アーム部と前記第2アーム部とが逆L字状になるように展開して使用するように構成」することに相当する。

(5) 本件特許発明1の構成要件Eと甲1発明の構成要件eの対比
本件特許発明1においては、「前記アーム部を折り畳んで前記収納凹部に収納したとき、前記アーム部の上面と前記操作部の上面とが略面一となるように構成されている」のに対して、甲1発明においてはそのように構成されていない点で、本件特許発明1と相違する。

したがって、本件特許発明1と甲1発明とは、以下の点で一致ないし相違している。

(一致点)
「先端にカメラを有する第1アーム部と前記第1アーム部を支持する第2アーム部とを有し、前記第1アーム部と前記第2アーム部とを折り畳み可能なアーム部と、
非使用時には前記アーム部を折り畳んだ状態で、前記カメラを収納する収納凹部と、操作部とを有する本体部とを有する書画カメラであって、
非使用時には、前記アーム部を折り畳んで、前記アーム部の一部である前記カメラを前記収納凹部に収納し、
使用時には、前記アーム部を、前記第1アーム部と前記第2アーム部とが逆L字状になるように展開して使用するように構成される
ことを特徴とする書画カメラ。」

(相違点)
(ア) 非使用時に、本件特許発明1においては収納凹部に折り畳んだ状態の「アーム部」を収納するのに対して、甲1発明においては収納凹部に折り畳んだ状態の「アーム部」の一部分である「カメラ」を収納することについてのみ特定されている点。

(イ) 非使用時に収納されるアーム部を、本件特許発明1においては「前記第1アーム部と前記第2アーム部と前記本体部とがZ字状になるように折り畳」むのに対し、甲1発明においてはそのような特定がない点。

(ウ) 本件特許発明1においては「前記アーム部を折り畳んで前記収納凹部に収納したとき、前記アーム部の上面と前記操作部の上面とが略面一となるように構成されている」のに対して、甲1発明においてはそのように構成されていない点。

3.1.4 判断
(1) 相違点(ア)について
相違点(ア)に係る請求人、被請求人の主張をみるに、
請求人は、無効審判請求書「6.(4)[ロ]先行技術発明が存在する事実及び証拠の説明(請求項1)○1 b.」(丸囲み数字は特許庁の電子情報処理組織の制約により使用できないため、「○1」等と表記する。以下同様である。)(第4頁第30?32行目)、「6.(4)[ハ]本件特許発明と先行技術発明との対比(請求項1)」(第8頁第3?4行目)において、甲1には、本件特許発明1の構成要件Bに対応する構成が開示されている旨主張するとともに、口頭審理陳述要領書第3頁第5行目?第3頁第16行目において、甲1における、折り畳まれた第1アーム部(棒状部材45)と第2アーム部(棒状部材42)は、本体部(ビデオカメラ支持部33と回路収納部34とからなる部材(第1回口頭審理調書の「請求人」欄6参照。))の収納凹部(回路収納部34とビデオカメラ支持部33で区画形成され、操作部35と段部36を底面とする凹部)に収納されるものである旨主張している。
一方、被請求人は、答弁書第4頁第6行目?第6頁第4行目において、甲1には、「段部36」にビデオカメラ本体部32を収納することは開示されているが、折り畳んだアーム40を収納することは記載されておらず、収納できる構造でもないことから、「段部36」が本件特許発明1における「収納凹部」に相当するとの主張は誤りであり、また、甲1における「段部36」が本件特許発明1における「収納凹部」に相当しないことから、「収納凹部」に相当する構成を有していない甲1の「回路収納部34」は本件特許発明1における「本体部」に相当しない、旨主張している。

そこで、当審が判断する。
まず、第5.の3.1.3の(2)で検討したように、本件特許発明1における「収納凹部」及び「本体部」に相当する甲1発明の構成要素は、「段部36」及び「回路収納部34」ではなく「段差空間」及び「ビデオカメラ支持部33と回路収納部34とからなる部材」である。
ここで、一般にアーム部を折り畳む目的として、収納や運搬のための小型化は周知のものに過ぎず、甲1発明においても、アーム40を折り畳むことは、小型化のためであると考えることは自然である。そうしてみたときに、甲1発明において、アーム40を折り畳む際に書画カメラ装置から突出する部分を少なくするために、少なくとも回動部44を回動させ棒状部材42と棒状部材45とを折り畳むとともに、回動部41を回動させて折り畳んだ棒状部材を水平にして段差空間に収納させるようにすることは、当業者であれば容易に想到しうる程度の事項に過ぎない。
したがって、被請求人の上記主張を考慮しても相違点(ア)は格別なものではない。

(2) 相違点(ウ)について
相違点(ウ)に係る請求人、被請求人の主張をみるに、
請求人は、無効審判請求書「6.(4)[ロ]先行技術発明が存在する事実及び証拠の説明(請求項1)○3?○7」(第5頁第26行目?第7頁第20行目)、「6.(4)[ハ]本件特許発明と先行技術発明との対比(請求項1)」(第8頁第10?21行目)において、甲3乃至7には、本件特許発明1の構成要件Eに対応する構成が開示されており、本件特許発明1は甲1に開示されている構成に甲3乃至7に開示されている構成を単に寄せ集めたに過ぎない旨主張している。
一方、被請求人は、答弁書第7頁第18行目?第10頁第24行目において、
・甲3について、「載置部21」は「操作部」ではなく、「据え置き型カメラ装置A3」は「書画カメラ」ではなく、乙第1号証から請求人が自認する「書画カメラ」とも異なり、アーム部について(乙第2号証によるところの)「折り畳」んでもいない。
・甲4について、「載置部2」は「操作部」ではなく、「カメラ装置1」は「書画カメラ」ではなく、乙第1号証から請求人が自認する「書画カメラ」とも異なる。
・甲5について、「筐体7」は「操作部」ではなく、「折り畳む」構成もない。
・甲6について、「テレビ電話機」は書画カメラではなく、「折り畳む」構成も、「操作部」もない。
・甲7について、「プロジェクタ本体37」は「操作部」ではなく、請求人は「液晶プロジェクタ2」について「書画カメラ」に相当するとの主張とともに、書画カメラではないが、技術分野としては同じとも主張をしており、当を得ず、アーム48の上面は収納時には下側になり、何かの上面とほぼ面一にはなっていない。
旨、主張している。

そこで、当審が判断する。
まず、上述の通り請求人が無効審判請求書において、アーム部を折り畳んで収納凹部に格納したとき、前記アーム部の上面と操作部の上面とが略面一となるように構成すること(相違点(ウ))を含む構成要件Eに対応する構成が、甲3乃至7に開示されている旨主張していることから、甲3乃至7発明について検討する。

上記第5の2.3乃至2.7における認定によれば、
・甲3、6発明からは、収納凹部に収納したアーム部の上面と本体部の上面とが略面一となるように構成することは周知技術であるといえるものの、甲3、6発明にはアーム部の上面と操作部の上面とが略面一となるように構成することも、アーム部を折り畳んで収納することについても特定されていない。
・甲4乃至5、7発明からは、収納凹部に収納したアーム部の上面と操作部の上面とが略面一となるように構成することは周知技術であるといえるものの、甲4乃至5、7発明にはアーム部を折り畳んで収納することについては特定されていない。

以上のとおり、請求人の本件特許発明1における構成要素E「前記アーム部を折り畳んで前記収納凹部に収納したとき、前記アーム部の上面と前記操作部の上面とが略面一となるように構成されていること」に対応する構成が甲3乃至7に開示されているとの主張は採用できない。

しかしながら、甲4乃至5、7発明からは、少なくとも収納凹部に収納したアーム部の上面と操作部の上面とが略面一となるように構成することが周知技術であると認められることから、甲1発明に甲4乃至5、7発明に例示された周知技術を適用する場合について更に検討する。

上記第5.の3.1.4(1)で相違点(ア)として検討したよう、甲1発明である書画カメラ装置において、アーム40を折り畳んで段差空間に収納させることは容易想到であると認められるが、アーム40を折り畳んで段差空間に収納させたとき、操作部35の上面は、折り畳まれたアーム40の下になることは明らかである。
そして、甲4乃至5、7発明に例示された周知技術には、収納凹部に収納したアーム部の上面と操作部の上面とが略面一となるように構成することのみが開示されていることから、甲1発明に甲4乃至5、7発明に例示された周知技術を適用し、アーム40を折り畳んで段差空間に収納したとき、アーム40の上面と操作部の上面とが略面一とするためには、折り畳まれたアーム40の下にある操作部の位置を、折り畳まれたアームの上面と略面一の位置に変えることが当業者に容易想到でなければならない。
しかしながら、甲1発明において、アーム40を折り畳んで段差空間に収納させたとき、アーム40の上面と略面一となる部分はビデオカメラ支持部33の上面であるが、当該ビデオカメラ支持部33は「板状に形成された」(第5.の2.1.1 イ.の段落【0031】参照。)支持板に過ぎず、その内部に回路の収納等を開示も示唆もしていないビデオカメラ支持部33の上面に操作部を設けることは当業者であっても容易想到であるとは到底認められない。
また、甲3、6発明には、収納凹部に収納したアーム部の上面と操作部の上面とが略面一となるように構成することすらも開示していないことから、甲1発明に対して、甲3乃至7発明の何れかを適用したとしても、相違点(ウ)に係る構成が当業者に容易想到であったとは認められない。
したがって、相違点(ウ)に係る構成を容易想到とすることはできない。

(3) 相違点(イ)について
相違点(イ)に係る請求人、被請求人の主張をみるに、
請求人は、無効審判請求書「6.(4)[ロ]先行技術発明が存在する事実及び証拠の説明(請求項1)○1 c.」(第5頁第1?3行目)、「6.(4)[ハ]本件特許発明と先行技術発明との対比(請求項1)」(第8頁第3?4行目)において、甲第1号証には、本件特許発明1の構成要件Cに対応する構成が開示されている旨主張するとともに、口頭審理陳述要領書第2頁第5行目?第3頁第9行目においては、甲1における、請求人の考える折り畳み手順では、参考図面に図示するように、第1アーム部(棒状部材45)と第2アーム部(棒状部材42)と本体部(ビデオカメラ支持部33と回路収納部34とからなる部材(第1回口頭審理調書の「請求人」欄6参照。))とがZ字状になるように折り畳んで、収納凹部(回路収納部34とビデオカメラ支持部33で区画形成され、操作部35と段部36を底面とする凹部)に収納されるものであり、同書第5頁第27行目?第6頁第20行目には、第1アーム部と第2アーム部の折り畳み手順は参考図面に図示するように幾通りも可能であるが、そもそも非使用時にアーム部を、第1アーム部と第2アーム部と本体部とがZ字状になるように折り畳むことは、甲10に記載され、被請求人が本件特許に係る特許公報に参考例3として記載しているように、書画カメラの分野においては公知の構成に過ぎない旨主張している。
なお、本件特許に係る特許公報に「参考例3」との記載は存在しないことから、当審では当該主張における「参考例3」は「比較例3」の誤記と認める。
一方、被請求人は、答弁書第5頁第8行目?第6頁第4行目において、甲1にはZ字状に折り畳む旨の記載はなく、図1乃至4における棒状部材42は扁平な形状で記載されており、その厚みも回路収納部34の幅の半分以下であることから、図1から棒状部材45を回動部44で右手前側に回動し、その後に棒状部材42を、回動部41を中心に右側に回動させて折り畳むと考えるのが自然であり、仮に棒状部材45を棒状部材42の上に折り畳むとすると、構成同士が干渉する上に、ビデオカメラ本体部32が段部36に位置しにくくなる。また、棒状部材42と回路収納部34とはZ字状と言えない程度の相当の距離を有して離れていることから、「前記第1アーム部と前記第2アーム部と前記本体部とがZ字状になるように折り畳んで前記収納凹部に収納」との構成が甲1に開示されているとの請求人の主張は誤りである旨主張するとともに、口頭審理陳述要領書第1頁23行目?第2頁第3行目においては、「Z字状」は文字の形状のとおり「3つの部分が1つの平面内において逆方向に折れ曲がって配置されている状態」を示し、甲1における棒状部第45と棒状部材42と回路収納部34とがZ字状であると読み取ることができない旨主張している。

そこで当審が判断する。
まず、被請求人の主張のうち、甲1の図面から棒状部材42が扁平な形状であり、そのために棒状部材45を棒状部材42の上に折り畳もうとすると、構成同士が干渉するとの主張については、明細書における図面が必ずしも現実の寸法を表すものではないことから採用できない。
また、被請求人の主張のうち、Z字状を構成する要素のうち、棒状部材42と本体部に相当する回路収納部34とはZ字状と言えない程度の相当の距離を有して離れている旨の主張については、第5.の3.1.3(2)で検討したように、本件特許発明1における「本体部」に相当する甲1発明の構成要素は、「回路収納部34」ではなく「ビデオカメラ支持部33と回路収納部34とからなる部材」であり、該部材が棒状部材42と連結されていることは甲1の図1等から明らかであることからこれも採用できない。
また、被請求人の主張のうち、「Z字状」は文字の形状のとおり「3つの部分が1つの平面内において逆方向に折れ曲がって配置されている状態」を示すとの主張については、本件特許発明1の請求項あるいは詳細な説明の何れにも「1つの平面内」との規定は規定は存在しないことからやはり採用できない。
当審では、「Z字状」とは、3つの部分が「Z」の文字と同様の形状になるように結合した状態を表しており、「1つの平面内」との記載は明細書及び請求の範囲の記載に基づかない主張であると判断する。
一方、甲10発明1及び2には、書画カメラにおいてアーム部を折り畳むに際して、第1アーム部(第2アーム235、第3アーム340)と第2アーム部(第1アーム225、第1アーム320及び第2アーム330からなるアーム)と本体部(ベース220、ベース310)とを折り畳むことは開示されていると認められるものの、折り畳み態様がZ字状であるかどうかについては明示されておらず、その点については請求人が甲10とともに挙げた本件特許に係る特許公報に比較例3として記載されたものについても同様である。
しかしながら、請求人が口頭審理陳述要領書の参考図面1-1、1-2で示したように、甲1発明においても、回動部41、43、44、を回動させることにより、ビデオカメラ本体部32及び棒状部材45を併せた部材、棒状部材42、及びビデオカメラ支持部33と回路収納部34とからなる部材、がZ字状となるようにアーム40を折り畳み、棒状部材45を棒状部材42の上に折り畳んだとしても、ビデオカメラ本体部32が段部36に配置されるようにすることは、阻害なく取り得るアーム部の折り畳み態様の一つであると認められる。





したがって、被請求人の上記主張は認められず、甲1発明においても非使用時に収納されるアーム40を、ビデオカメラ本体部32及び棒状部材45を併せた部材、棒状部材42、及びビデオカメラ支持部33と回路収納部34とからなる部材、がZ字状になるように折り畳むようにすることは、当業者が容易に想到し得るものであることから、相違点(イ)は格別なものではない。

3.1.5 結論
以上のとおり、相違点(ウ)に係る構成が容易想到とはいえないことから、本件特許発明1が、甲1発明と、甲3乃至7発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。

3.2 理由2について
3.2.1 本件特許発明1について
上記第2.の[本件特許発明1]として認定したとおりである。

3.2.2 引用発明について
上記第2.の証拠記載事項中において、(甲2発明)として認定したとおりである。

3.2.3 対比
(1) 本件特許発明1の構成要件Aと甲2発明の構成要件aの対比
甲2発明の「撮像部4」は書画3等を撮像するものであることから、本件特許発明1の「カメラ」に相当する構成を有していることは明らかであり、甲2発明の「連結部材5a」は、「アーム部5」の構成部材であり、さらに先端で「撮像部4」を支持することから、甲2発明の「撮像部4」と「先端で前記撮像部4を支持する連結部材5a」を併せた部材は、本件特許発明1の「先端にカメラを有する第1アーム部」に相当する。
また、甲2発明の「連結部材5c」も、「アーム部5」の構成部材であり、さらに連結部材5bを介して「撮像部4」と「連結部材5a」を支持していることから、本件特許発明1の「第2アーム部」と「前記第1アーム部を支持する」点において共通するものの、本件特許発明1においては、「第2アーム部」が他のアーム部を介することなく直接「前記第1アーム部を支持する」ものであるのに対し、甲2発明における「連結部材5c」は「連結部材5b」を介して間接的に「撮像部4」と「連結部材5a」を支持する点で相違する。
また、甲2発明の「連結部材5a」、「連結部材5b」、「連結部材5c」から成る「アーム部5」は、「撮像部4」とともに折り畳み可能であることから、前記「アーム部5」と「撮像部4」を併せた部材は、前記撮像部4と連結部材5aを併せた部材と、連結部材5bと、連結部材5cとから成る折り畳み可能な部材であるといえるから、本件特許発明1の「前記第1アーム部と前記第2アーム部とを折り畳み可能なアーム部」と、「前記第1アーム部と前記第2アーム部とを含めて折り畳み可能なアーム部」である点で共通し、本件特許発明1においては「アーム部」が折り畳み対象としているのは「第1アーム部」と「第2アーム部」だけであるのに対し、甲2発明においては、「アーム部5」と「撮像部4」を併せた部材が折り畳み対象としているのは、撮像部4と連結部材5aとからなる部材と、連結部材5c、のみならず連結部材5bを含む点で相違する。
したがって、本件特許発明1の構成要素Aと、甲2発明の構成要素aは、「先端にカメラを有する第1アーム部と前記第1アーム部を支持する第2アーム部とを少なくとも有し、前記第1アーム部と前記第2アーム部とを含めて折り畳み可能なアーム部」である点で共通し、本件特許発明1においては、「アーム部」が、「第1アーム部」と「第2アーム部」との間に、他のアーム部が存在しないのに対し、甲2発明においては、撮像部4と連結部材5aとからなる部材と、連結部材5cとの間に連結部材5bが存在する点で相違する。

(2) 本件特許発明1の構成要件Bと甲2発明の構成要件bの対比
甲2発明の「非使用時には、前記アーム部5及び前記撮像部4を折り畳まれた状態で収納する凹部7a」は、上記(1)で検討した相違点を除き、本件特許発明1の「非使用時には前記アーム部を折り畳んだ状態で収納する収納凹部」に相当する。
また、甲2発明の「資料載置部2」は、「凹部7a」を有する点で、本件特許発明1の「収納凹部」を有する「本体部」と共通するものの、本件特許発明1においては、「本体部」が「操作部」を有するのに対し、甲2発明においては、資料載置部2に「操作部」がない点で相違する。
また、甲2発明の「資料提示装置1」は、第5.の2.2.1のア.に、「書画」等を撮像する装置である旨記載されていることから、本件特許発明1の「書画カメラ」に相当する。
したがって、本件特許発明1の構成要件Bと甲2発明の構成要件bは、「非使用時には前記アーム部を折り畳んだ状態で収納する収納凹部を有する本体部とを有する書画カメラ」である点で共通し、「収納凹部」を有する「本体部」が、本件特許発明1においてはさらに「操作部」を有するのに対し、甲2発明においては「資料載置部2」に「操作部」がない点で相違する。

(3) 本件特許発明1の構成要件Cと甲2発明の構成要件cの対比
甲2発明の、「折り畳まれた状態となったアーム部5及び撮像部4を」回転させ「前記凹部7aに収納」することは、上記(1)で検討した相違点を除き、本件特許発明1における折り畳んだアーム部を「前記収納凹部に収納」することに相当する。
また、甲2発明の、「前記アーム部5及び前記撮像部4を、前記撮像部4を前記連結部材5aとほぼ同一平面となる状態に設定した後、前記連結部材5aと前記撮像部4と一体で時計回り方向に回転させ折り畳まれた状態とする」ことは、本件特許発明1における「前記アーム部を、前記第1アーム部と前記第2アーム部と前記本体部とがZ字状になるように折り畳」むことと、「前記アーム部を折り畳」む点で共通するものの、本件特許発明1においては、アーム部を折り畳むに際し、「前記第1アーム部と前記第2アーム部と前記本体部とがZ字状になるように」折り畳むのに対し、甲2発明においては、「前記撮像部4を前記連結部材5aとほぼ同一平面となる状態に設定した後、前記連結部材5aと前記撮像部4と一体で時計回り方向に回転させ」折り畳む点で相違する。
したがって、本件特許発明1の構成要件Cと甲2発明の構成要件cは、「非使用時には、前記アーム部を折り畳んで前記収納凹部に収納」する点で共通し、本件特許発明1においては、非使用時にアーム部を折り畳むに際し、「前記第1アーム部と前記第2アーム部と前記本体部とがZ字状になるように」折り畳むのに対し、甲2発明においては、「前記撮像部4を前記連結部材5aとほぼ同一平面となる状態に設定した後、前記連結部材5aと前記撮像部4と一体で時計回り方向に回転させ」折り畳む点で相違する。

(4) 本件特許発明1の構成要件Dと甲2発明の構成要件dの対比
甲2発明の「使用状態」とは、使用するときの状態であることから、本件特許発明の「使用時」に相当する。
また、甲2発明において、「前記アーム部5及び前記撮像部4を展開」することは、非使用時の折り畳まれた状態に対して、使用のために「アーム部5」及び「撮像部4」、すなわち連結部材5a及び撮像部4と、連結部材5bと、連結部材5cとを展開した状態であるといえるから、本件特許発明1における「前記アーム部を、前記第1アーム部と前記第2アーム部とが逆L字状になるように展開して使用する」ことと、上記(1)で検討した相違点を除き、「前記アーム部を、前記第1アーム部と前記第2アーム部とを展開して使用する」点において共通し、本件特許発明1においては第1アーム部と第2アーム部とが「逆L字状」になるように展開するのに対して、甲2発明においてはそのような特定がない点で相違する。
したがって、本件特許発明1の構成要素Dと、甲2発明の構成要素dは、「使用時には、前記アーム部を、前記第1アーム部と前記第2アーム部とを展開して使用する」点において共通し、本件特許発明1においては第1アーム部と第2アーム部とが「逆L字状」になるように展開するのに対して、甲2発明においてはそのような特定がない点で相違する。

(5) 本件特許発明1の構成要件Eと甲2発明の構成要件eの対比
甲2発明の「前記アーム部5及び前記撮像部4を、折り畳まれた状態で前記収納凹部7aに収納したとき」の「前記アーム部5及び前記撮像部4の上面」は、本件特許発明1の「前記アーム部を折り畳んで前記収納凹部に収納したとき」の「前記アーム部の上面」に相当する。
しかしながら、アーム部を折り畳んで収納したときの上面と略面一になる本体部の面が、甲2発明においては、「資料載置部2の裏面」であるのに対して、本件特許発明1においては、「操作部の上面」である点で相違する。
したがって、本件特許発明1の構成要件Eと甲2発明の構成要件eとは、「前記アーム部を折り畳んで前記収納凹部に収納したとき、前記アーム部の上面と前記本体部の面とが略面一となるように構成されている」点で共通し、本件特許発明1においては、収納されたアーム部の上面と略面一になる本体部の面が「操作部の上面」であるのに対し、甲2発明においては、「資料載置部2の裏面」である点で相違する。

したがって、本件特許発明1と甲2発明とは、以下の点で一致ないし相違している。

(一致点)
「先端にカメラを有する第1アーム部と前記第1アーム部を支持する第2アーム部とを少なくとも有し、前記第1アーム部と前記第2アーム部とを含めて折り畳み可能なアーム部と、
非使用時には前記アーム部を折り畳んだ状態で収納する収納凹部を有する本体部とを有する書画カメラであって、
非使用時には、前記アーム部を折り畳んで前記収納凹部に収納し、
使用時には前記アーム部を、前記第1アーム部と前記第2アーム部とを展開して使用するように構成され、
前記アーム部を折り畳んで前記収納凹部に収納したとき、前記アーム部の上面と前記本体部の面とが略面一となるように構成されていることを特徴とする書画カメラ。」

(相違点)
(ア) 本件特許発明1においては、「アーム部」が、「第1アーム部」と「第2アーム部」との間に、他のアーム部が存在しないのに対し、甲2発明においては、撮像部4と連結部材5aとからなる部材と、連結部材5cとの間に連結部材5bが存在する点。

(イ) 「収納凹部」を有する「本体部」が、本件特許発明1においてはさらに「操作部」を有するのに対し、甲2発明においては「資料載置部2」に「操作部」がない点。

(ウ) 非使用時にアーム部を折り畳むに際し、本件特許発明1においては、「前記第1アーム部と前記第2アーム部と前記本体部とがZ字状になるように」折り畳むのに対し、甲2発明においては、「前記撮像部4を前記連結部材5aとほぼ同一平面となる状態に設定した後、前記連結部材5aと前記撮像部4と一体で時計回り方向に回転させ」折り畳む点。

(エ) 使用時に第1アーム部と第2アーム部とを展開するに際して、本件特許発明1においては第1アーム部と第2アーム部とが「逆L字状」になるように展開するのに対して、甲2発明においてはそのような特定がない点。

(オ) アーム部を折り畳んで収納凹部に収納したとき、アーム部の上面と略面一となる本体部の面が、本件特許発明1においては「操作部の上面」であるのに対し、甲2発明においては、「資料載置部2の裏面」である点。

3.2.4 判断
(1) 相違点(ア)、(ウ)、(エ)について
相違点(ア)、(ウ)に係る、請求人、被請求人の主張をみるに、
請求人は、相違点(ウ)に関し、無効審判請求書「6.(4)[ロ]先行技術発明が存在する事実及び証拠の説明(請求項1)○2 c.」(第5頁第16?18行目)、「6.(4)[ハ]本件特許発明と先行技術発明との対比(請求項1)」(第8頁第5?6行目)において、甲2には、本件特許発明1の構成要件Cに対応する構成、すなわち相違点(ウ)に係る「前記第1アーム部と前記第2アーム部と前記本体部とがZ字状になるように」折り畳む点も含めて開示されている旨主張するとともに、口頭審理陳述要領書第4頁第29行目?第5頁第22行目においては、甲2における、請求人の考える折り畳み手順では、参考図面に図示するように、第1アーム部(連結部材5a)と第2アーム部(連結部材5c)と本体部(資料載置部2a)とがZ字状になるように折り畳んで、収納凹部(凹部7a)に収納されるものであり、同書第5頁第27行目?第6頁第20行目には、この種の書画カメラにおける第1アーム部と第2アーム部の折り畳み手順として、非使用時にアーム部を、第1アーム部と第2アーム部と本体部とがZ字状になるように折り畳むことは、甲10に記載され、被請求人が本件特許に係る特許公報に参考例3として記載しているように公知の構成に過ぎない旨主張している。
なお、「参考例3」との記載については、第5の3.1.4(3)で検討したとおり、当審では「比較例3」の誤記と認める。
一方、被請求人は、相違点(ウ)に関し、答弁書第6頁第6行目?第7頁第4行目において、甲2の段落【0049】?【0051】に記載された資料提示装置1を折り畳む方法の記載と図1?3からみて、甲2において「前記第1アーム部と前記第2アーム部と前記本体部とがZ字状になるように折り畳んで収納」していないことは明らかである旨主張するとともに、相違点(ア)、(ウ)に関し、口頭審理陳述要領書第1頁第23行目?第2頁第8行目においては、「Z字状」は本件特許明細書の【0041】段落にその一例を示しており、「3つの部分が1つの平面内において逆方向に折れ曲がって配置されている状態」を示し、甲2について、連結部材5aと連結部材5cとが左右に並び、資料載置部2がそれらの下に位置する点でZ字状ではなく、更に、連結部材5aと連結部材5cとが大きく離れている点でもZ字状ではない旨主張している。

そこで、当審が判断する。
まず、請求人の甲10発明1、2、及び本件特許に係る特許公報に参考例3として記載されたものについての主張、及び被請求人の「Z字状」に係る主張については、上記第5の3.1.4(3)において検討した通り認められない。
したがって、当審では、「Z字状」とは、3つの部分が「Z」の文字と同様の形状になるように結合した状態を表しており、「1つの平面内」との記載は明細書及び請求の範囲の記載に基づかない主張であると判断する。
そして、甲2発明の、「非使用時には、前記アーム部5及び前記撮像部4を、前記撮像部4を前記連結部材5aとほぼ同一平面となる状態に設定した後、前記連結部材5aと前記撮像部4と一体で時計回り方向に回転させ」る際、連結部材5a及び撮像部4が資料載置部2と水平になったとき、回転軸10側から資料提示装置1の側面を見ると、一見、連結部材5a及び撮像部4と、連結部材5cと、資料載置部2とが「Z字状」となっているように見えるものの、連結部材5aと連結部材5cは、間に連結部材5bが存在しているために結合しておらず、対象となる3つの部材が「Z字状」を構成する一纏まりの状態であるとは認められないことから、当該状態をもって「Z字状」であるとは認められず、さらに連結部材5bは撮像部4の幅に対応する長さ分だけ必要であることから、5bを省略することが甲2発明において容易に想到し得たものであるとも認められない。
そして、請求人の主張する何れのアーム部の折り畳み方においても、連結部材5aと連結部材5cとの間に連結部材5bが存在していることから、「Z字状」であるとは認めることはできない。
したがって、相違点(ア)、(ウ)に係る構成を容易想到とすることはできない。

一方、相違点(エ)に係る、請求人、被請求人の主張をみるに、
請求人は、相違点(エ)に関し、無効審判請求書「6.(4)[ロ]先行技術発明が存在する事実及び証拠の説明(請求項1)○2 d.」(第5頁第19?21行目)、「6.(4)[ハ]本件特許発明と先行技術発明との対比(請求項1)」(第8頁第5?6行目)において、甲2には、本件特許発明1の構成要件Dに対応する構成、すなわち相違点(エ)に係る第1アーム部と第2アーム部とが「逆L字状」になるように展開する点も含めて開示されている旨主張するとともに、口頭審理陳述要領書第4頁第29行目?第5頁第25行目においては、参考図面に図示するように、甲2における請求人の考える折り畳み手順の中で、第1アーム部(連結部材5a)と第2アーム部(連結部材5c)とが略逆L字状になるように展開して使用されるものであり、同書第5頁第27行目?第6頁第20行目には、使用時に第1アーム部と第2アーム部とが逆L字状になるように展開して使用することは、甲10に記載され、被請求人が本件特許に係る特許公報に参考例3として記載しているように、書画カメラの分野においては公知の構成に過ぎない旨主張している。
なお、「参考例3」との記載については、第5の3.1.4(3)で検討したとおり、当審では「比較例3」の誤記と認める。
一方、被請求人は、相違点(エ)に関し、答弁書第7頁第5?17行目において、甲2の資料提示装置の使用状態を示す図1において、アーム部に相当する「連結部材」は逆L字型に展開して使用されていない旨主張するとともに、口頭審理陳述要領書第2頁第9?12行目においては、「逆L字状」は本件特許明細書の【0041】段落にその一例を示しており、「2つの部分が折れ曲がって配置されている状態」である旨主張している。

そこで、当審が判断する。
まず、甲2発明において、連結部材5aと連結部材5cとは回転軸10、11を介して接続されており、使用に際して、撮像部の向きや高さを調整するために回転軸回りに連結部材を回転させることは周知慣用の技術に過ぎないことから、使用状態において、連結部材5aと連結部材5cとを回転軸(10?12の何れか)側から資料提示装置1の側面を見たときに、一見、連結部材5a及び撮像部4と、連結部材5cとが「逆L字状」となるように見える場合は当業者であれば容易に想到しうるものであると認められるものの、連結部材5aと連結部材5cは、間に連結部材5bが存在しているために結合しておらず、対象となる2つの部材が「逆L字状」を構成する一纏まりの状態であるとは認められないことから、当該状態をもって「逆L字状」であるとは認められず、さらに、前述したように連結部材5bは撮像部4の幅に対応する長さ分だけ必要であることから、5bを省略することが甲2発明において容易に想到し得たものであるとも認められない。
そして、請求人の主張する何れのアーム部の展開状態においても、連結部材5aと連結部材5cとの間に連結部材5bが存在していることから、「逆L字状」であるとは認めることはできない。
したがって、相違点(エ)に係る構成も容易想到とすることはできない。

(2) 相違点(イ)、(オ)について
相違点(イ)に係る、請求人、被請求人の主張をみるに、
請求人は、無効審判請求書「6.(4)[ロ]先行技術発明が存在する事実及び証拠の説明(請求項1)○2」(第5頁第22?25行目)において、甲2には、本体部(資料載置部2)の操作部に関する記述はないが、本体部に操作部を設けることは単なる設計的事項である旨主張している。
一方、被請求人は、答弁書第11頁第14?27行目において、甲2の本体部に相当する構成に操作部を設けることについて主張しているが、これは相違点(オ)に係る主張である。

そこで、当審が判断するに、書画カメラにおいて、撮影に係る操作等を行うための操作部を本体部に設けることは、周知慣用の技術に過ぎないことから、甲2発明においても、本体部に操作部を設けるようにすることは単なる周知技術の付加に過ぎない。
したがって、相違点(イ)は格別なものではない。

一方、相違点(オ)に係る、請求人、被請求人の主張をみるに、
請求人は、無効審判請求書「6.(4)[ロ]先行技術発明が存在する事実及び証拠の説明(請求項1)○3?○7」(第5頁第26行目?第7頁第20行目)、「6.(4)[ハ]本件特許発明と先行技術発明との対比(請求項1)」(第8頁第10?21行目)において、甲3乃至7には、本件特許発明1の構成要件Eに対応する構成、すなわち相違点(オ)に係る、アーム部を折り畳んで収納凹部に収納したとき、アーム部の上面と略面一となる本体部の面が「操作部の上面」である点、も含めて開示されており、本件特許発明1は甲2に開示されている構成に甲3乃至7に開示されている構成を単に寄せ集めたに過ぎない旨主張している。
一方、被請求人は、答弁書第7頁第18行目?第10頁第24行目において、
・甲3について、「載置部21」は「操作部」ではなく、「据え置き型カメラ装置A3」は「書画カメラ」ではなく、乙第1号証から請求人が自認する「書画カメラ」とも異なり、アーム部について(乙第2号証によるところの)「折り畳」んでもいない。
・甲4について、「載置部2」は「操作部」ではなく、「カメラ装置1」は「書画カメラ」ではなく、乙第1号証から請求人が自認する「書画カメラ」とも異なる。
・甲5について、「筐体7」は「操作部」ではなく、「折り畳む」構成もない。
・甲6について、「テレビ電話機」は書画カメラではなく、「折り畳む」構成も、「操作部」もない。
・甲7について、「プロジェクタ本体37」は「操作部」ではなく、請求人は「液晶プロジェクタ2」について「書画カメラ」に相当するとの主張とともに、書画カメラではないが、技術分野としては同じとも主張をしており、当を得ず、アーム48の上面は収納時には下側になり、何かの上面とほぼ面一にはなっていない。
旨、主張するとともに、答弁書第11頁第14?27行目において、請求人が「本体部」に相当するとしている「資料載置台部材2a、2b」において、本件特許発明1の「アーム部を折り畳んで前記収納凹部に収納したとき、前記アーム部の上面と前記操作部の上面とが略面一となるように構成」しようとすると、「操作部」は甲2の図3の資料載置台部2aの上面に設けられることになるが、これは使用時である図1の状態では裏面になるので、使用状態で操作できない「操作部」を設けることには阻害要因がある旨主張している。

そこで、当審が判断する。
まず、甲3乃至7についての請求人の主張については、第5の3.1.4(2)で検討した通り、請求人の本件特許発明1における構成要素Eに係る構成が甲3乃至7に記載されているとの主張は採用できないものの、甲4乃至5、7発明からは、少なくとも収納凹部に収納したアーム部の上面と操作部の上面とが略面一となるように構成することが周知技術であると認められることから、甲2発明に甲4乃至5、7発明に例示された周知技術を適用する場合について更に検討する。

まず、上記相違点(イ)として検討した通り、本体部に操作部を設けるようにすることは単なる周知技術の付加に過ぎない。
しかしながら、甲2発明において、アーム部5及び撮像部4を折り畳んで凹部7aに収納したとき、アーム部5及び撮像部4の上面と操作部の上面とが略面一となるためには、資料載置部2の裏面に操作部を設けなければならないが、資料載置部2の裏面は使用状態において「裏」となる面であり、使用状態において操作することができない面であることから、資料載置部2の裏面に操作部を設けることには阻害要因があると認められる。
したがって、甲4乃至5、7発明に例示されているように、収納凹部に収納したアーム部の上面と操作部の上面とが略面一となるように構成することが周知技術であったとしても、阻害要因の存在する甲2発明において該周知技術の適用が容易であったとは認められない。

また、甲3、6発明には、収納凹部に収納したアーム部の上面と操作部の上面とが略面一となるように構成することすらも開示していないことから、甲2発明に対して、甲3乃至7発明の何れかを適用したとしても、相違点(オ)に係る構成が当業者に容易想到であったとは認められない。
したがって、相違点(オ)に係る構成を容易想到とすることはできない。

3.2.5 結論
以上のとおりであるから、相違点(ア)、(ウ)?(オ)に係る構成が容易想到とはいえないことから、本件特許発明1が、甲2発明と、甲3乃至7発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。

3.3 理由3について
3.3.1 本件特許発明5について
上記第2.の[本件特許発明5]として認定したとおりである。

3.3.2 引用発明について
上記第2.の証拠記載事項中において、(甲1発明)として認定したとおりである。

3.3.3 対比
(1) 本件特許発明5の「請求項1?4のいずれかに記載の書画カメラ」に係る構成と甲1発明の対比
本件特許発明5の「請求項1?4のいずれかに記載の書画カメラ」との構成が、「請求項1に記載の書画カメラ」を含むことは明らかであり、「請求項1に記載の書画カメラ」と甲1発明との一致点、相違点(ア)?(ウ)については上記第5の3.1.3で検討したとおりである。

(2) 本件特許発明5の構成要件Fと甲1発明の構成要件aの対比
第5の3.1.3(1)で検討したとおり、甲1発明における「ビデオカメラ本体部32」と「一端側に前記ビデオカメラ本体部32が接続された棒状部材45」を併せた部材は、本件特許発明1の先端にカメラを有する「第1アーム部」に相当し、甲1発明の、一端側にビデオカメラ本体部32が接続された「棒状部材45を支持する棒状部材42」は、本件特許発明1の第1アーム部を支持する「第2アーム部」に相当することから、本件特許発明5においても、甲1発明における「ビデオカメラ本体部32」と「一端側に前記ビデオカメラ本体部32が接続された棒状部材45」を併せた部材と、「棒状部材42」とが、それぞれ「第1アーム部」と、「第2アーム部」に相当する。
そして、本件特許発明5の「第2アーム部」に相当する甲1発明の「棒状部材42」によって支持される甲1発明の「棒状部材45」は本件特許発明5における「第1アーム基端部」に相当し、前記「棒状部材45」の先端に位置し、撮像を行うための構成、すなわち本件特許発明5の「カメラ」に相当する構成を有していることが自明な甲1発明の「ビデオカメラ本体部32」は本件特許発明5における「第1アーム先端部」に相当する。
そして、第1アーム部について、本件特許発明5においては、「前記第1アーム先端部は、前記第1アーム部の長手方向に沿った所定の軸を中心として回転自在に前記第1アーム基端部に支持されるとともに、前記カメラの光学軸が鉛直方向下向きになった回転位置及びカメラの光学軸が水平方向になった回転位置で固定可能となるように構成されている」のに対し、甲1発明においては、そのように構成されていない点で相違する。

したがって、本件特許発明5と甲1発明とは、「請求項1に記載の書画カメラ」についての上記第5の3.1.3で検討した一致点、相違点(ア)?(ウ)に加え、構成要件Fについて以下の点で一致ないし相違している。

(一致点)
「前記第1アーム部は、前記第2アーム部に支持される第1アーム基端部と、前記第1アーム基端部の先端部に位置し、前記カメラを有する第1アーム先端部とを有する
ことを特徴とする書画カメラ。」

(相違点)
(エ) 第1アーム部について、本件特許発明5においては、「前記第1アーム先端部は、前記第1アーム部の長手方向に沿った所定の軸を中心として回転自在に前記第1アーム基端部に支持されるとともに、前記カメラの光学軸が鉛直方向下向きになった回転位置及びカメラの光学軸が水平方向になった回転位置で固定可能となるように構成されている」のに対し、甲1発明においては、そのように構成されていない点。

3.3.4 判断
(1) 相違点(エ)について
相違点(エ)に係る、請求人、被請求人の主張をみるに、
請求人は、無効審判請求書「6.(4)[ロ]先行技術発明が存在する事実及び証拠の説明(請求項5)○8」(第7頁第22?31行目)、「6.(4)[ハ]本件特許発明と先行技術発明との対比(請求項5)」(第8頁第22?31行目)において、甲8には、本件特許発明1の構成要件Fに対応する構成が開示されおり、本件特許発明5は、甲1乃至7に開示されている構成と甲8に開示されている構成を寄せ集めることで容易に推考し得るものである旨主張している。
また、被請求人は、上記相違点(エ)については特段の主張はしていない。

そこで、当審が判断する。
まず、甲8発明の「カメラ本体28」は、固体撮像素子を備え、原稿等の書類の撮像を行うものであることから、本件特許発明5における「カメラ」に相当し、甲8発明における前記「カメラ本体28」を有し「回動アーム58」の先端に連結される「カメラ部18」、先端に前記「カメラ部18」が連結された前記「回動アーム58」、そして前記「カメラ部18」と「回動アーム58」とからなる部材は、それぞれ本件特許発明5における「第1アーム先端部」、「第1アーム基端部」、「第1アーム部」に相当し、甲8発明において、本件特許発明5の「第1アーム部」に相当する構成を支持する「本体アーム56」は、甲8発明における「第2アーム部」に相当する。
また、甲8発明における「撮影装置」は原稿等の書類の撮像を行うものであることから、本件特許発明5における「書画カメラ」に相当する。
ここで、甲8発明における「回動アーム58の長手方向に沿った所定の軸」が「カメラ部18」と「回動アーム58」とからなる部材全体の長手方向に沿った所定の軸であることも、「回動アーム58」に「回動自在に」「連結」された「カメラ部18」が、「回動アーム58」に「回転自在に」「支持」されたものであることも明らかであることから、甲8発明における「カメラ部18」が「前記回動アーム58の長手方向に沿った所定の軸を中心として回動自在に前記回動アーム58に連結」されたものであることは、本件特許発明5における「第1アーム先端部」が「前記第1アーム部の長手方向に沿った所定の軸を中心として回転自在に前記第1アーム基端部に支持される」ものであることに相当する。
また、甲8発明における「カメラ部18」を「前記カメラ本体28が下方向き位置及び側方向き位置に位置決め可能となるように構成されていること」に関し、カメラの「向き」がカメラの「光学軸」を指すことはカメラの分野における技術常識であり、水平な台に置くことを前提とした書画カメラにおいて、「下方向き」、「側方向き」が、それぞれ「鉛直方向下向き」、「水平方向」を指すことも、回動によって各位置に「位置決め可能」であることが、「回転位置で固定可能」であることに相当することも明らかである。

したがって、甲第8発明における、「前記カメラ部18は、前記回動アーム58の長手方向に沿った所定の軸を中心として回動自在に前記回動アーム58に連結するとともに、前記カメラ本体28が下方向き位置及び側方向き位置に位置決め可能となるように構成されている」ことは、本件特許発明5における「前記第1アーム先端部は、前記第1アーム部の長手方向に沿った所定の軸を中心として回転自在に前記第1アーム基端部に支持されるとともに、前記カメラの光学軸が鉛直方向下向きになった回転位置及びカメラの光学軸が水平方向になった回転位置で固定可能となるように構成されている」ことに相当する。
そして、甲1発明においても、ともに「書画カメラ」に関する技術である点で共通する甲8発明に記載の技術を適用するようにすることは当業者であれば容易に想到しうるものである。
よって、相違点(エ)は格別なものではない。

(2) 「請求項1に記載の書画カメラ」と甲1発明との相違点(ア)?(ウ)について
上記第5の3.1.4で検討したとおりである。

3.3.5 結論
以上のとおり、構成要件Fに係る相違点(エ)は格別なものではないものの、「請求項1に記載の書画カメラ」に係る構成が上記第5の3.1.4で検討したとおり甲1発明から容易想到とは言えないことから、本件特許発明5が、甲1発明と甲3乃至7発明、さらに甲8発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。

3.4 理由4について
3.4.1 本件特許発明5について
上記第2.の[本件特許発明5]として認定したとおりである。

3.4.2 引用発明について
上記第2.の証拠記載事項中において、(甲2発明)として認定したとおりである。

3.4.3 対比
(1) 本件特許発明5の「請求項1?4のいずれかに記載の書画カメラ」に係る構成と甲2発明の対比
本件特許発明5の「請求項1?4のいずれかに記載の書画カメラ」との構成が、「請求項1に記載の書画カメラ」を含むことは明らかであり、「請求項1に記載の書画カメラ」と甲2発明との一致点、相違点(ア)?(オ)については上記第5の3.2.3で検討したとおりである。

(2) 本件特許発明5の構成要件Fと甲2発明の構成要件aの対比
第5の3.2.3(1)で検討したとおり、甲2発明における「撮像部4」と「先端で前記撮像部4を支持する連結部材5a」を併せた部材は、本件特許発明5の先端にカメラを有する「第1アーム部」に相当し、甲2発明の、「連結部材5c」は、「連結部材5a」との間に「連結部材5b」が存在するという第5の3.2.3に示す相違点(ア)を除き、本件特許発明5の第1アーム部を支持する「第2アーム部」に相当する。
そして、本件特許発明5の「第2アーム部」に相当する甲2発明の「連結部材5c」によって間接的に支持される甲2発明の「連結部材5a」は本件特許発明5における「第1アーム基端部」に相当し、前記「連結部材5a」の先端に位置し、撮像を行うための構成、すなわち本件特許発明5の「カメラ」に相当する構成を有していることが自明な甲2発明の「撮像部4」は本件特許発明5における「第1アーム先端部」に相当する。
そして、第1アーム部について、本件特許発明5においては、「前記第1アーム先端部は、前記第1アーム部の長手方向に沿った所定の軸を中心として回転自在に前記第1アーム基端部に支持されるとともに、前記カメラの光学軸が鉛直方向下向きになった回転位置及びカメラの光学軸が水平方向になった回転位置で固定可能となるように構成されている」のに対し、甲2発明においては、そのように構成されていない点で相違する。

したがって、本件特許発明5と甲2発明とは、「請求項1に記載の書画カメラ」についての上記第5の3.2.3で検討した一致点、相違点(ア)?(オ)に加え、構成要件Fについて以下の点で一致ないし相違している。

(一致点)
「前記第1アーム部は、前記第2アーム部に支持される第1アーム基端部と、前記第1アーム基端部の先端部に位置し、前記カメラを有する第1アーム先端部とを有する
ことを特徴とする書画カメラ。」

(相違点)
(カ) 第1アーム部について、本件特許発明5においては、「前記第1アーム先端部は、前記第1アーム部の長手方向に沿った所定の軸を中心として回転自在に前記第1アーム基端部に支持されるとともに、前記カメラの光学軸が鉛直方向下向きになった回転位置及びカメラの光学軸が水平方向になった回転位置で固定可能となるように構成されている」のに対し、甲2発明においては、そのように構成されていない点。

3.4.4 判断
(1) 相違点(カ)について
相違点(カ)に係る、請求人、被請求人の主張、及び当審の判断する甲8発明と本件特許発明5との対応については、上記第5の3.3.4の中で検討したとおりである。

したがって、甲第8発明における、「前記カメラ部18は、前記回動アーム58の長手方向に沿った所定の軸を中心として回動自在に前記回動アーム58に連結するとともに、前記カメラ本体28が下方向き位置及び側方向き位置に位置決め可能となるように構成されている」ことは、本件特許発明5における「前記第1アーム先端部は、前記第1アーム部の長手方向に沿った所定の軸を中心として回転自在に前記第1アーム基端部に支持されるとともに、前記カメラの光学軸が鉛直方向下向きになった回転位置及びカメラの光学軸が水平方向になった回転位置で固定可能となるように構成されている」ことに相当する。
そして、甲2発明においても、ともに「書画カメラ」に関する技術である点で共通する甲8発明に記載の技術を適用するようにすることは当業者であれば容易に想到しうるものである。
よって、相違点(カ)は格別なものではない。

(2) 「請求項1に記載の書画カメラ」と甲2発明との相違点(ア)?(オ)について
上記第5の3.2.4で検討したとおりである。

3.4.5 結論
以上のとおり、構成要件Fに係る相違点(カ)は格別なものではないものの、「請求項1に記載の書画カメラ」に係る構成が上記第5の3.2.4で検討したとおり甲2発明から容易想到とは言えないことから、本件特許発明5が、甲2発明と甲3乃至7発明、さらに甲8発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。

3.5 小括
第5の3.1?3.4より、本件特許発明1は、甲1発明又は甲2発明と、甲3乃至7発明に基づいて当業者が容易に想到し得たものではなく、本件特許発明5も甲1発明又は甲2発明と、甲3乃至7発明、さらに甲8発明に基づいて当業者が容易に想到し得たものではない。
よって、請求人の主張する理由によって、本件特許を無効とすることはできない。

第6.むすび
以上のとおりであるから、請求人の主張する理由によっては、本件特許を、特許法第29条第2項の規定に違反するとすることがでいないから、本件特許は、同法123条第1項第2号の規定に該当せず、無効とすることができない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-06-23 
結審通知日 2015-06-25 
審決日 2015-07-07 
出願番号 特願2012-282796(P2012-282796)
審決分類 P 1 123・ 121- Y (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 高野 美帆子  
特許庁審判長 藤井 浩
特許庁審判官 豊島 洋介
清水 正一
登録日 2014-05-09 
登録番号 特許第5533998号(P5533998)
発明の名称 書画カメラ  
代理人 渡辺 和昭  
代理人 有賀 昌也  
代理人 三宅 始  
代理人 鈴野 幹夫  
代理人 中村 和男  

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