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審決分類 審判 査定不服 4項4号特許請求の範囲における明りょうでない記載の釈明 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 4項3号特許請求の範囲における誤記の訂正 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 特174条1項 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 4項1号請求項の削除 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1314699
審判番号 不服2015-3724  
総通号数 199 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-07-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-02-26 
確定日 2016-05-09 
事件の表示 特願2013-532809「ワイヤレスハンドヘルドコンピューティングデバイスのメモリリソースを管理するためのシステムおよび方法」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 4月12日国際公開,WO2012/047419,平成25年10月31日国内公表,特表2013-540322〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は,2011年8月31日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2010年10月4日 アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって,
平成25年4月3日付けで特許法第184条の4第1項の規定による明細書,請求の範囲,及び,図面(図面の中の説明に限る)の日本語による翻訳文が提出されると共に審査請求がなされ,平成26年1月14日付けで審査官により拒絶理由が通知され,これに対して平成26年5月21日付けで意見書が提出されると共に手続補正がなされ,平成26年7月14日付けで審査官により最後の拒絶理由が通知され,これに対して平成26年9月12日付けで意見書が提出されると共に手続補正がなされたが,平成26年10月23日付けで審査官により平成26年9月12日付けの手続補正に対して補正却下の決定がなされる共に拒絶査定がなされ,これに対して平成27年2月26日付けで審判請求がなされると共に手続補正がなされ,平成27年4月23日付けで審査官により特許法第164条第3項の規定に基づく報告がなされ,平成27年8月11日付けで上申書の提出があったものである。

第2.平成27年2月26日付けの手続補正の却下の決定

[補正却下の決定の結論]

平成27年2月26日付け手続補正を却下する。

[理由]

1.補正の内容
平成27年2月26日付けの手続補正(以下,「本件手続補正」という)により,平成26年5月21日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲,
「 【請求項1】
ワイヤレスハンドヘルドコンピューティングデバイスの1つまたは複数のメモリリソースを管理するための方法であって,
ウェブブラウザモジュールを開始するための要求を受信するステップと,
ウェブアドレスのための入力を受信するステップと,
前記ウェブアドレスに対応するファイルを受信するステップと,
前記ファイル内に存在するオブジェクトの1つまたは複数のアドレスをレビューするステップであって,前記1つまたは複数のアドレスは夫々,前記ウェブブラウザモジュールによりアクセスされるオブジェクトを指すステップと,
オブジェクトごとにアクセス頻度を記録するためのオブジェクトトラッキングテーブルを更新するステップであって,前記アクセス頻度は,所与のオブジェクトが前記ウェブブラウザモジュールによりアクセスされた所与の期間にわたるインスタンスの数を示すステップと,
オブジェクトが前記1つまたは複数のメモリリソース内にすでに存在するか否かを判断するステップと,
第1のオブジェクトが前記1つまたは複数のメモリリソースに存在しないときに前記第1のオブジェクトに対する優先順位を計算するステップであって,前記優先順位は,前記第1のオブジェクトのタイプ,前記オブジェクトトラッキングテーブルにおける前記第1のオブジェクトに関連付けられたアクセス頻度に基づく,ステップと,
前記優先順位を前記オブジェクトに割り当てるステップであって,前記第1のオブジェクトがウェブ閲覧におけるユーザエクスペリエンスを向上させることを目的とする場合には,前記第1のオブジェクトに高い優先順位が割り当てられるステップと
を含む,方法。
【請求項2】
前記ワイヤレスハンドヘルドコンピューティングデバイス内の1つまたは複数のメモリリソースの現在状態を判断するステップをさらに含む,請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記1つまたは複数のメモリリソースの状態が,前記ウェブブラウザモジュールのための容量の増加に応じられることを示す場合に,前記ウェブブラウザモジュールのために利用可能な容量を増加させる,請求項2に記載の方法。
【請求項4】
オブジェクトに対する優先順位を計算するステップが,前記ウェブブラウザモジュールによって以前に前記オブジェクトがアクセスされたか否かを判断するステップを含む,請求項1に記載の方法。
【請求項5】
オブジェクトに対する優先順位を計算するステップが,前記ウェブブラウザモジュールの動作に対するグローバルアプリケーションを前記オブジェクトが有するか否かを判断するステップを含む,請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記優先順位を前記1つまたは複数のメモリリソース内に記憶するステップをさらに含む,請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記オブジェクトが前記1つまたは複数のメモリリソースの閾値を超えるか否かを判断するステップと,より低い優先順位を有する他のオブジェクトを廃棄するステップとをさらに含む,請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記オブジェクトが,カスケーディングスタイルシート,ジャバスクリプトファイル,画像ファイル,およびジャバスクリプトライブラリのうちの少なくとも1つを含む,請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記ワイヤレスハンドヘルドコンピューティングデバイスが,携帯電話,携帯情報端末,ページャ,スマートフォン,ナビゲーションデバイス,およびワイヤレス接続またはワイヤレスリンクを含むハンドヘルドコンピュータのうちの少なくとも1つを備える,請求項1に記載の方法。
【請求項10】
ワイヤレスハンドヘルドコンピューティングデバイスの1つまたは複数のメモリリソースを管理するためのコンピュータシステムであって,
ウェブブラウザモジュールを開始するための要求を受信し,
ウェブアドレスのための入力を受信し,
前記ウェブアドレスに対応するファイルを受信し,
前記ファイル内に存在するオブジェクトの1つまたは複数のアドレスをレビューし,
オブジェクトごとにアクセス頻度を記録するためのオブジェクトトラッキングテーブルを更新し,
オブジェクトが前記1つまたは複数のメモリリソース内にすでに存在するか否かを判断し,
第1のオブジェクトが前記1つまたは複数のメモリリソースに存在しないときに前記第1のオブジェクトに対する優先順位を計算し,
前記優先順位を前記オブジェクトに割り当てる
ように動作可能なプロセッサを備え,
前記1つまたは複数のアドレスは夫々,前記ウェブブラウザモジュールによりアクセスされるオブジェクトを指し,
前記アクセス頻度は,所与のオブジェクトが前記ウェブブラウザモジュールによりアクセスされた所与の期間にわたるインスタンスの数を示し,
前記優先順位は,前記第1のオブジェクトのタイプ,前記オブジェクトトラッキングテーブルにおける前記第1のオブジェクトに関連付けられたアクセス頻度に基づき,
前記第1のオブジェクトがウェブ閲覧におけるユーザエクスペリエンスを向上させることを目的とする場合には,前記第1のオブジェクトに高い優先順位が割り当てられる,
システム。
【請求項11】
前記プロセッサがさらに,
前記ワイヤレスハンドヘルドコンピューティングデバイス内の1つまたは複数のメモリリソースの現在状態を判断するように動作可能である,請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記1つまたは複数のメモリリソースの状態が,前記ウェブブラウザモジュールのための容量の増加に応じられることを示す場合に,前記プロセッサが,前記ウェブブラウザモジュールのために利用可能な容量を増加させるように動作可能である,請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
オブジェクトに対する優先順位を計算するように動作可能な前記プロセッサが,前記ウェブブラウザモジュールによって以前に前記オブジェクトがアクセスされたか否かを判断する前記プロセッサを含む,請求項10に記載のシステム。
【請求項14】
オブジェクトに対する優先順位を計算するように動作可能な前記プロセッサが,前記ウェブブラウザモジュールの動作に対するグローバルアプリケーションを前記オブジェクトが有するか否かを判断する前記プロセッサを含む,請求項10に記載のシステム。
【請求項15】
前記プロセッサがさらに,
前記優先順位を前記1つまたは複数のメモリリソース内に記憶するように動作可能である,請求項10に記載のシステム。
【請求項16】
前記プロセッサがさらに,
前記オブジェクトが前記1つまたは複数のメモリリソースの閾値を超えるか否かを判断して,より低い優先順位を有する他のオブジェクトを廃棄するように動作可能である,請求項10に記載のシステム。
【請求項17】
前記オブジェクトが,カスケーディングスタイルシート,ジャバスクリプトファイル,画像ファイル,およびジャバスクリプトライブラリのうちの少なくとも1つを備える,請求項10に記載のシステム。
【請求項18】
前記ワイヤレスハンドヘルドコンピューティングデバイスが,携帯電話,携帯情報端末,ページャ,スマートフォン,ナビゲーションデバイス,およびワイヤレス接続またはワイヤレスリンクを含むハンドヘルドコンピュータのうちの少なくとも1つを備える,請求項10に記載のシステム。
【請求項19】
ワイヤレスハンドヘルドコンピューティングデバイスの1つまたは複数のメモリリソースを管理するためのコンピュータシステムであって,
ウェブブラウザモジュールを開始するための要求を受信するための手段と,
ウェブアドレスのための入力を受信するための手段と,
前記ウェブアドレスに対応するファイルを受信するための手段と,
前記ファイル内に存在するオブジェクトの1つまたは複数のアドレスをレビューするための手段であって,前記1つまたは複数のアドレスは夫々,前記ウェブブラウザモジュールによりアクセスされるオブジェクトを指す手段と,
オブジェクトごとにアクセス頻度を記録するためのオブジェクトトラッキングテーブルを更新する手段であって,前記アクセス頻度は,所与のオブジェクトが前記ウェブブラウザモジュールによりアクセスされた所与の期間にわたるインスタンスの数を示す手段と,
オブジェクトが前記1つまたは複数のメモリリソース内にすでに存在するか否かを判断するための手段と,
第1のオブジェクトが前記1つまたは複数のメモリリソースに存在しないときに前記第1のオブジェクトに対する優先順位を計算する手段であって,前記優先順位は,前記第1のオブジェクトのタイプ,前記オブジェクトトラッキングテーブルにおける前記第1のオブジェクトに関連付けられたアクセス頻度に基づく,手段と,
前記優先順位を前記オブジェクトに割り当てるための手段であって,前記第1のオブジェクトがウェブ閲覧におけるユーザエクスペリエンスを向上させることを目的とする場合には,前記第1のオブジェクトに高い優先順位が割り当てられる手段と
を含む,システム。
【請求項20】
前記ワイヤレスハンドヘルドコンピューティングデバイス内の1つまたは複数のメモリリソースの現在状態を判断するための手段をさらに含む,請求項19に記載のシステム。
【請求項21】
前記1つまたは複数のメモリリソースの状態が,前記ウェブブラウザモジュールのための容量の増加に応じられることを示す場合に,前記ウェブブラウザモジュールのために利用可能な容量を増加させる,請求項20に記載のシステム。
【請求項22】
オブジェクトに対する優先順位を計算するための前記手段が,前記ウェブブラウザモジュールによって以前に前記オブジェクトがアクセスされたか否かを判断するための手段をさらに含む,請求項19に記載のシステム。
【請求項23】
オブジェクトに対する優先順位を計算するための前記手段が,前記ウェブブラウザモジュールの動作に対するグローバルアプリケーションを前記オブジェクトが有するか否かを判断するための手段を含む,請求項19に記載のシステム。
【請求項24】
前記優先順位を前記1つまたは複数のメモリリソース内に記憶するための手段をさらに含む,請求項19に記載のシステム。
【請求項25】
前記オブジェクトが前記1つまたは複数のメモリリソースの閾値を超えるか否かを判断するための手段と,より低い優先順位を有する他のオブジェクトを廃棄するための手段とをさらに含む,請求項19に記載のシステム。
【請求項26】
前記オブジェクトが,カスケーディングスタイルシート,ジャバスクリプトファイル,画像ファイル,およびジャバスクリプトライブラリのうちの少なくとも1つを備える,請求項19に記載のシステム。
【請求項27】
前記ワイヤレスハンドヘルドコンピューティングデバイスが,携帯電話,携帯情報端末,ページャ,スマートフォン,ナビゲーションデバイス,およびワイヤレス接続またはワイヤレスリンクを含むハンドヘルドコンピュータのうちの少なくとも1つを備える,請求項19に記載のシステム。
【請求項28】
コンピュータにより実行可能なコンピュータ可読プログラムコードからなるコンピュータプログラムであって,前記コンピュータ可読プログラムコードが,ワイヤレスハンドヘルドコンピューティングデバイスの1つまたは複数のメモリリソースを管理するための方法を実施するように実行されるようになされ,前記方法が,
ウェブブラウザモジュールを開始するための要求を受信するステップと,
ウェブアドレスのための入力を受信するステップと,
前記ウェブアドレスに対応するファイルを受信するステップと,
前記ファイル内に存在するオブジェクトの1つまたは複数のアドレスをレビューするステップであって,前記1つまたは複数のアドレスは夫々,前記ウェブブラウザモジュールによりアクセスされるオブジェクトを指すステップと,
オブジェクトごとにアクセス頻度を記録するためのオブジェクトトラッキングテーブルを更新するステップであって,前記アクセス頻度は,所与のオブジェクトが前記ウェブブラウザモジュールによりアクセスされた所与の期間にわたるインスタンスの数を示すステップと,
オブジェクトが前記1つまたは複数のメモリリソース内にすでに存在するか否かを判断するステップと,
第1のオブジェクトが前記1つまたは複数のメモリリソースに存在しないときに前記第1のオブジェクトに対する優先順位を計算するステップであって,前記優先順位は,前記第1のオブジェクトのタイプ,前記オブジェクトトラッキングテーブルにおける前記第1のオブジェクトに関連付けられたアクセス頻度に基づく,ステップと,
前記優先順位を前記オブジェクトに割り当てるステップであって,前記第1のオブジェクトがウェブ閲覧におけるユーザエクスペリエンスを向上させることを目的とする場合には,前記第1のオブジェクトに高い優先順位が割り当てられるステップと
を含む,コンピュータプログラム。
【請求項29】
前記方法を実施する前記プログラムコードが,
前記ワイヤレスハンドヘルドコンピューティングデバイス内の1つまたは複数のメモリリソースの現在状態を判断するステップをさらに含む,請求項28に記載のコンピュータプログラム。
【請求項30】
前記方法を実施する前記プログラムコードが,
前記1つまたは複数のメモリリソースの状態が,前記ウェブブラウザモジュールのための容量の増加に応じられることを示すか否かを判断するステップと,前記ウェブブラウザモジュールのために利用可能な容量を増加させるステップとをさらに含む,請求項28に記載のコンピュータプログラム。
【請求項31】
前記方法を実施する前記プログラムコードが,
前記ウェブブラウザモジュールによって以前に前記オブジェクトがアクセスされたか否かを判断するステップによってオブジェクトに対する前記優先順位を計算するステップをさらに含む,請求項28に記載のコンピュータプログラム。
【請求項32】
前記方法を実施する前記プログラムコードが,
前記ウェブブラウザモジュールの動作に対するグローバルアプリケーションを前記オブジェクトが有するか否かを判断するステップによってオブジェクトに対する前記優先順位を計算するステップをさらに含む,請求項28に記載のコンピュータプログラム。
【請求項33】
前記方法を実施する前記プログラムコードが,
前記優先順位を前記1つまたは複数のメモリリソース内に記憶するステップをさらに含む,請求項28に記載のコンピュータプログラム。
【請求項34】
前記方法を実施する前記プログラムコードが,
前記オブジェクトが前記1つまたは複数のメモリリソースの閾値を超えるか否かを判断するステップと,より低い優先順位を有する他のオブジェクトを廃棄するステップとをさらに含む,請求項28に記載のコンピュータプログラム。
【請求項35】
前記オブジェクトが,カスケーディングスタイルシート,ジャバスクリプトファイル,画像ファイル,およびジャバスクリプトライブラリのうちの少なくとも1つを備える,請求項28に記載のコンピュータプログラム。
【請求項36】
前記ワイヤレスハンドヘルドコンピューティングデバイスが,携帯電話,携帯情報端末,ページャ,スマートフォン,ナビゲーションデバイス,およびワイヤレス接続またはワイヤレスリンクを含むハンドヘルドコンピュータのうちの少なくとも1つを備える,請求項28に記載のコンピュータプログラム。」(以下,上記引用の請求項各項を,「補正前の請求項」という)は,
「 【請求項1】
ワイヤレスハンドヘルドコンピューティングデバイスの1つまたは複数のメモリリソースを管理するための方法であって,
ウェブブラウザモジュールを開始するための要求を受信するステップと,
ウェブアドレスのための入力を受信するステップと,
前記ウェブアドレスに対応するファイルを受信するステップと,
前記ファイル内に存在するオブジェクトの1つまたは複数のアドレスをレビューするステップであって,前記1つまたは複数のアドレスは夫々,前記ウェブブラウザモジュールによりアクセスされるオブジェクトを指すステップと,
オブジェクトごとにアクセス頻度を記録するためのオブジェクトトラッキングテーブルを更新するステップであって,前記アクセス頻度は,所与のオブジェクトが前記ウェブブラウザモジュールによりアクセスされた所与の期間にわたるインスタンスの数を示すステップと,
オブジェクトが前記1つまたは複数のメモリリソース内にすでに存在するか否かを判断するステップと,
第1のオブジェクトが前記1つまたは複数のメモリリソースに存在しないときに前記第1のオブジェクトに対する優先順位を計算するステップであって,前記優先順位は,前記第1のオブジェクトのタイプ,前記オブジェクトトラッキングテーブルにおける前記第1のオブジェクトに関連付けられたアクセス頻度に基づく,ステップと,
前記優先順位を前記オブジェクトに割り当てるステップであって,前記第1のオブジェクトが前記ウェブブラウザモジュールの動作に対するグローバルアプリケーションを有する場合には,前記第1のオブジェクトに高い優先順位が割り当てられるステップと
を含む,方法。
【請求項2】
前記ワイヤレスハンドヘルドコンピューティングデバイス内の1つまたは複数のメモリリソースの現在状態を判断するステップをさらに含む,請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記1つまたは複数のメモリリソースの状態が,前記ウェブブラウザモジュールのための容量の増加に応じられることを示す場合に,前記ウェブブラウザモジュールのために利用可能な容量を増加させる,請求項2に記載の方法。
【請求項4】
オブジェクトに対する優先順位を計算するステップが,前記ウェブブラウザモジュールによって以前に前記オブジェクトがアクセスされたか否かを判断するステップを含む,請求項1に記載の方法。
【請求項5】
オブジェクトに対する優先順位を計算するステップが,前記ウェブブラウザモジュールの動作に対するグローバルアプリケーションを前記オブジェクトが有するか否かを判断するステップを含む,請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記優先順位を前記1つまたは複数のメモリリソース内に記憶するステップをさらに含む,請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記オブジェクトが前記1つまたは複数のメモリリソースの閾値を超えるか否かを判断するステップと,より低い優先順位を有する他のオブジェクトを廃棄するステップとをさらに含む,請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記オブジェクトが,カスケーディングスタイルシート,ジャバスクリプトファイル,画像ファイル,およびジャバスクリプトライブラリのうちの少なくとも1つを含む,請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記ワイヤレスハンドヘルドコンピューティングデバイスが,携帯電話,携帯情報端末,ページャ,スマートフォン,ナビゲーションデバイス,およびワイヤレス接続またはワイヤレスリンクを含むハンドヘルドコンピュータのうちの少なくとも1つを備える,請求項1に記載の方法。
【請求項10】
ワイヤレスハンドヘルドコンピューティングデバイスの1つまたは複数のメモリリソースを管理するためのコンピュータシステムであって,
ウェブブラウザモジュールを開始するための要求を受信し,
ウェブアドレスのための入力を受信し,
前記ウェブアドレスに対応するファイルを受信し,
前記ファイル内に存在するオブジェクトの1つまたは複数のアドレスをレビューし,
オブジェクトごとにアクセス頻度を記録するためのオブジェクトトラッキングテーブルを更新し,
オブジェクトが前記1つまたは複数のメモリリソース内にすでに存在するか否かを判断し,
第1のオブジェクトが前記1つまたは複数のメモリリソースに存在しないときに前記第1のオブジェクトに対する優先順位を計算し,
前記優先順位を前記オブジェクトに割り当てる
ように動作可能なプロセッサを備え,
前記1つまたは複数のアドレスは夫々,前記ウェブブラウザモジュールによりアクセスされるオブジェクトを指し,
前記アクセス頻度は,所与のオブジェクトが前記ウェブブラウザモジュールによりアクセスされた所与の期間にわたるインスタンスの数を示し,
前記優先順位は,前記第1のオブジェクトのタイプ,前記オブジェクトトラッキングテーブルにおける前記第1のオブジェクトに関連付けられたアクセス頻度に基づき,
前記第1のオブジェクトが前記ウェブブラウザモジュールの動作に対するグローバルアプリケーションを有する場合には,前記第1のオブジェクトに高い優先順位が割り当てられる,
システム。
【請求項11】
前記プロセッサがさらに,
前記ワイヤレスハンドヘルドコンピューティングデバイス内の1つまたは複数のメモリリソースの現在状態を判断するように動作可能である,請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記1つまたは複数のメモリリソースの状態が,前記ウェブブラウザモジュールのための容量の増加に応じられることを示す場合に,前記プロセッサが,前記ウェブブラウザモジュールのために利用可能な容量を増加させるように動作可能である,請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
オブジェクトに対する優先順位を計算するように動作可能な前記プロセッサが,前記ウェブブラウザモジュールによって以前に前記オブジェクトがアクセスされたか否かを判断する前記プロセッサを含む,請求項10に記載のシステム。
【請求項14】
オブジェクトに対する優先順位を計算するように動作可能な前記プロセッサが,前記ウェブブラウザモジュールの動作に対するグローバルアプリケーションを前記オブジェクトが有するか否かを判断する前記プロセッサを含む,請求項10に記載のシステム。
【請求項15】
前記プロセッサがさらに,
前記優先順位を前記1つまたは複数のメモリリソース内に記憶するように動作可能である,請求項10に記載のシステム。
【請求項16】
前記プロセッサがさらに,
前記オブジェクトが前記1つまたは複数のメモリリソースの閾値を超えるか否かを判断して,より低い優先順位を有する他のオブジェクトを廃棄するように動作可能である,請求項10に記載のシステム。
【請求項17】
前記オブジェクトが,カスケーディングスタイルシート,ジャバスクリプトファイル,画像ファイル,およびジャバスクリプトライブラリのうちの少なくとも1つを備える,請求項10に記載のシステム。
【請求項18】
前記ワイヤレスハンドヘルドコンピューティングデバイスが,携帯電話,携帯情報端末,ページャ,スマートフォン,ナビゲーションデバイス,およびワイヤレス接続またはワイヤレスリンクを含むハンドヘルドコンピュータのうちの少なくとも1つを備える,請求項10に記載のシステム。
【請求項19】
ワイヤレスハンドヘルドコンピューティングデバイスの1つまたは複数のメモリリソースを管理するためのコンピュータシステムであって,
ウェブブラウザモジュールを開始するための要求を受信するための手段と,
ウェブアドレスのための入力を受信するための手段と,
前記ウェブアドレスに対応するファイルを受信するための手段と,
前記ファイル内に存在するオブジェクトの1つまたは複数のアドレスをレビューするための手段であって,前記1つまたは複数のアドレスは夫々,前記ウェブブラウザモジュールによりアクセスされるオブジェクトを指す手段と,
オブジェクトごとにアクセス頻度を記録するためのオブジェクトトラッキングテーブルを更新する手段であって,前記アクセス頻度は,所与のオブジェクトが前記ウェブブラウザモジュールによりアクセスされた所与の期間にわたるインスタンスの数を示す手段と,
オブジェクトが前記1つまたは複数のメモリリソース内にすでに存在するか否かを判断するための手段と,
第1のオブジェクトが前記1つまたは複数のメモリリソースに存在しないときに前記第1のオブジェクトに対する優先順位を計算する手段であって,前記優先順位は,前記第1のオブジェクトのタイプ,前記オブジェクトトラッキングテーブルにおける前記第1のオブジェクトに関連付けられたアクセス頻度に基づく,手段と,
前記優先順位を前記オブジェクトに割り当てるための手段であって,前記第1のオブジェクトが前記ウェブブラウザモジュールの動作に対するグローバルアプリケーションを有する場合には,前記第1のオブジェクトに高い優先順位が割り当てられる手段と
を含む,システム。
【請求項20】
前記ワイヤレスハンドヘルドコンピューティングデバイス内の1つまたは複数のメモリリソースの現在状態を判断するための手段をさらに含む,請求項19に記載のシステム。
【請求項21】
前記1つまたは複数のメモリリソースの状態が,前記ウェブブラウザモジュールのための容量の増加に応じられることを示す場合に,前記ウェブブラウザモジュールのために利用可能な容量を増加させる,請求項20に記載のシステム。
【請求項22】
オブジェクトに対する優先順位を計算するための前記手段が,前記ウェブブラウザモジュールによって以前に前記オブジェクトがアクセスされたか否かを判断するための手段をさらに含む,請求項19に記載のシステム。
【請求項23】
オブジェクトに対する優先順位を計算するための前記手段が,前記ウェブブラウザモジュールの動作に対するグローバルアプリケーションを前記オブジェクトが有するか否かを判断するための手段を含む,請求項19に記載のシステム。
【請求項24】
前記優先順位を前記1つまたは複数のメモリリソース内に記憶するための手段をさらに含む,請求項19に記載のシステム。
【請求項25】
前記オブジェクトが前記1つまたは複数のメモリリソースの閾値を超えるか否かを判断するための手段と,より低い優先順位を有する他のオブジェクトを廃棄するための手段とをさらに含む,請求項19に記載のシステム。
【請求項26】
前記オブジェクトが,カスケーディングスタイルシート,ジャバスクリプトファイル,画像ファイル,およびジャバスクリプトライブラリのうちの少なくとも1つを備える,請求項19に記載のシステム。
【請求項27】
前記ワイヤレスハンドヘルドコンピューティングデバイスが,携帯電話,携帯情報端末,ページャ,スマートフォン,ナビゲーションデバイス,およびワイヤレス接続またはワイヤレスリンクを含むハンドヘルドコンピュータのうちの少なくとも1つを備える,請求項19に記載のシステム。
【請求項28】
コンピュータにより実行可能なコンピュータ可読プログラムコードからなるコンピュータプログラムであって,前記コンピュータ可読プログラムコードが,ワイヤレスハンドヘルドコンピューティングデバイスの1つまたは複数のメモリリソースを管理するための方法を実施するように実行されるようになされ,前記方法が,
ウェブブラウザモジュールを開始するための要求を受信するステップと,
ウェブアドレスのための入力を受信するステップと,
前記ウェブアドレスに対応するファイルを受信するステップと,
前記ファイル内に存在するオブジェクトの1つまたは複数のアドレスをレビューするステップであって,前記1つまたは複数のアドレスは夫々,前記ウェブブラウザモジュールによりアクセスされるオブジェクトを指すステップと,
オブジェクトごとにアクセス頻度を記録するためのオブジェクトトラッキングテーブルを更新するステップであって,前記アクセス頻度は,所与のオブジェクトが前記ウェブブラウザモジュールによりアクセスされた所与の期間にわたるインスタンスの数を示すステップと,
オブジェクトが前記1つまたは複数のメモリリソース内にすでに存在するか否かを判断するステップと,
第1のオブジェクトが前記1つまたは複数のメモリリソースに存在しないときに前記第1のオブジェクトに対する優先順位を計算するステップであって,前記優先順位は,前記第1のオブジェクトのタイプ,前記オブジェクトトラッキングテーブルにおける前記第1のオブジェクトに関連付けられたアクセス頻度に基づく,ステップと,
前記優先順位を前記オブジェクトに割り当てるステップであって,前記第1のオブジェクトが前記ウェブブラウザモジュールの動作に対するグローバルアプリケーションを有する場合には,前記第1のオブジェクトに高い優先順位が割り当てられるステップと
を含む,コンピュータプログラム。
【請求項29】
前記方法を実施する前記プログラムコードが,
前記ワイヤレスハンドヘルドコンピューティングデバイス内の1つまたは複数のメモリリソースの現在状態を判断するステップをさらに含む,請求項28に記載のコンピュータプログラム。
【請求項30】
前記方法を実施する前記プログラムコードが,
前記1つまたは複数のメモリリソースの状態が,前記ウェブブラウザモジュールのための容量の増加に応じられることを示すか否かを判断するステップと,前記ウェブブラウザモジュールのために利用可能な容量を増加させるステップとをさらに含む,請求項28に記載のコンピュータプログラム。
【請求項31】
前記方法を実施する前記プログラムコードが,
前記ウェブブラウザモジュールによって以前に前記オブジェクトがアクセスされたか否かを判断するステップによってオブジェクトに対する前記優先順位を計算するステップをさらに含む,請求項28に記載のコンピュータプログラム。
【請求項32】
前記方法を実施する前記プログラムコードが,
前記ウェブブラウザモジュールの動作に対するグローバルアプリケーションを前記オブジェクトが有するか否かを判断するステップによってオブジェクトに対する前記優先順位を計算するステップをさらに含む,請求項28に記載のコンピュータプログラム。
【請求項33】
前記方法を実施する前記プログラムコードが,
前記優先順位を前記1つまたは複数のメモリリソース内に記憶するステップをさらに含む,請求項28に記載のコンピュータプログラム。
【請求項34】
前記方法を実施する前記プログラムコードが,
前記オブジェクトが前記1つまたは複数のメモリリソースの閾値を超えるか否かを判断するステップと,より低い優先順位を有する他のオブジェクトを廃棄するステップとをさらに含む,請求項28に記載のコンピュータプログラム。
【請求項35】
前記オブジェクトが,カスケーディングスタイルシート,ジャバスクリプトファイル,画像ファイル,およびジャバスクリプトライブラリのうちの少なくとも1つを備える,請求項28に記載のコンピュータプログラム。
【請求項36】
前記ワイヤレスハンドヘルドコンピューティングデバイスが,携帯電話,携帯情報端末,ページャ,スマートフォン,ナビゲーションデバイス,およびワイヤレス接続またはワイヤレスリンクを含むハンドヘルドコンピュータのうちの少なくとも1つを備える,請求項28に記載のコンピュータプログラム。」(以下,上記引用の請求項各項を,「補正後の請求項」という)に補正された。

2.補正の適否
(1)新規事項
本件手続補正が,特許法第184条の12第2項により読み替える同法第17条の2第3項の規定を満たすものであるか否か,即ち,本件手続補正が,平成25年4月3日付けで提出された明細書,請求の範囲の日本語による翻訳文,及び,国際出願の願書に添付された図面(以下,これを「当初明細書等」という)に記載した事項の範囲内でなされたものであるかについて,以下に検討する。

ア.新規事項についての当審の判断
本件手続補正は,補正前の請求項1,請求項10,請求項19,及び,請求項28に記載された,
「ウェブ閲覧におけるユーザエクスペリエンスを向上させることを目的とする」,
という記載事項を,
「前記ウェブブラウザモジュールの動作に対するグローバルアプリケーションを有する」,
という記載に変更するものである。
前記引用の補正前の請求項1,請求項10,請求項19,及び,請求項28に附加された記載内容に関して,当初明細書等には,段落【0077】に,
「オブジェクトが以前にアクセスされていない,つまりオブジェクト605がオブジェクトトラッキング表1000の中に存在しないものとDMAS 109が判断する場合,DMAS 109は,そのオブジェクト605をオブジェクトトラッキング表1000の中に記入し,次いで決定ブロック1325に進んで,オブジェクト605がウェブブラウザ105に対してグローバルアプリケーションを有し得るか否かを判断することができる。この決定ブロック1325で,DMAS 109は,オブジェクト605がグローバルアプリケーションであるか否かをオブジェクトタイプに基づいて判断することができる。上述の通り,グローバルアプリケーションを有するオブジェクト605は,図11に示すように,複数のサイトによってアクセスされるジャバスクリプトライブラリ1105などを含むことができる。この段において,オブジェクト605がグローバルアプリケーションを有するものとDMAS 109が判断する場合,YES分岐が追従されてブロック1330に至り,DMAS 109は,オブジェクト605の優先順位を調整することができる。このステップで,オブジェクト605は,異なるウェブサイトにわたるグローバルアプリケーションを有し得るものと判断されているので,一般に,オブジェクト605の優先順位は,オブジェクト605がより高い優先順位を有するように調整される。決定ブロック1325に対する照会が否定的である場合,つまりオブジェクト605がウェブサイトにわたるグローバルアプリケーションを持たないものとDMAS 109が判断した場合,処理は,NO分岐を追従して図12のブロック1260に戻る。」(下線は,当審にて,説明の都合上附加したものである。以下,同じ。)
と記載されていて,上記引用の段落【0077】の記載内容の,特に,下線を附した記載内容から,当初明細書等には,本件手続補正によって,補正前の請求項1,請求項10,請求項19,及び,請求項28に附加された,
「前記ウェブブラウザモジュールの動作に対するグローバルアプリケーションを有する」,
という記載事項が,記載されていることが読み取れるので,本件手続補正は,当初明細書等の記載の範囲内でなされたものである。

イ.新規事項むすび
以上に検討したとおりであるから,本件手続補正は,特許法第184条の12第2項により読み替える同法第17条の2第3項の規定を満たすものである。

(2)目的要件
本件手続補正が,特許法第184条の12第2項により読み替える同法第17条の2第5項の規定を満たすものであるか否か,即ち,本件手続補正が,特許法第17条の2第5項に規定する請求項の削除,特許請求の範囲の減縮(特許法第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであって,その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る),誤記の訂正,或いは,明りょうでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る)の何れかを目的としたものであるかについて,以下に検討する。

ア.目的要件についての当審の判断
審判請求人は,平成27年2月26日付けの審判請求書において,
「3.1.手続補正について
審判請求人は,本審判請求と同日付でする提出する手続補正書により,平成26年5月21日に提出した手続補正書に記載の請求項1,10,19,および28を補正致しました。
かかる補正は,出願当初明細書段落0077等の記載に基づき,新規事項を追加するものではありません。また,当該補正は所謂シフト補正にはあたらず,限定的減縮をする補正であり,特許法第17条の2第3項乃至第5項(第2号)の要件を満たす補正であります。」
と述べているので,本件手続補正が,限定的減縮を目的としたものであるかについて,以下に検討する。
本件手続補正は,上記「(1)新規事項」の「ア.新規事項についての当審の判断」において指摘したとおりの補正事項を含むものである。
ここで,補正前の請求項1,請求項10,請求項19,及び,請求項28に記載された,
「ウェブ閲覧におけるユーザエクスペリエンスを向上させることを目的とする」,
という記載事項は,原審により平成26年7月14日付けの拒絶理由のおいて指摘されたとおり,当初明細書等には記載されていない事項である。
そして,上述の補正事項は,上記引用の補正前の記載事項を,
「前記ウェブブラウザモジュールの動作に対するグローバルアプリケーションを有する」,
という補正後の記載事項に置き換えるものである。
加えて,上記引用の補正前の記載内容と,補正後の記載内容の間には,直接の関連性は見出せない。
以上,検討したとおりであるから,当初明細書等に記載されていない,上記引用の補正前の記載事項を,直接の関連性が見出せない,他の表現に補正することは,特許請求の範囲に記載された事項の限定的な減縮を意図したものであるとは認められない。
また,上述の補正事項が,上記引用の補正前の記載事項が明瞭でないという指摘に基づいた,明瞭でない記載の釈明を目的としたものでないこと,誤記の訂正,請求項の削除を目的としたものでないことも明らかであるから,
本件手続補正は,請求項の削除,特許請求の範囲の減縮(特許法第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであって,その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る),誤記の訂正,或いは,明りょうでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る)の何れかを目的としたものであるとは認められない。

イ.目的要件むすび
したがって,本件手続補正は,特許法第184条の12第2項により読み替える同法第17条の2第5項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

(3)独立特許要件
本件手続補正は,上記「(2)目的要件」において検討したとおり,特許法第184条の12第2項により読み替える同法第17条の2第5項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものであるが,仮に,本件手続補正が,目的要件を満たすものとして,
本件手続補正が,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定を満たすものであるか否か,即ち,補正後の請求項に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か,以下に検討する。

ア.独立特許要件についての当審の判断
(ア)補正後の請求項1に係る発明
補正後の請求項1に係る発明(以下,これを「本件補正発明」という)は,上記「1.補正の内容」において,補正後の請求項1として引用した,次のとおりのものである。

「ワイヤレスハンドヘルドコンピューティングデバイスの1つまたは複数のメモリリソースを管理するための方法であって,
ウェブブラウザモジュールを開始するための要求を受信するステップと,
ウェブアドレスのための入力を受信するステップと,
前記ウェブアドレスに対応するファイルを受信するステップと,
前記ファイル内に存在するオブジェクトの1つまたは複数のアドレスをレビューするステップであって,前記1つまたは複数のアドレスは夫々,前記ウェブブラウザモジュールによりアクセスされるオブジェクトを指すステップと,
オブジェクトごとにアクセス頻度を記録するためのオブジェクトトラッキングテーブルを更新するステップであって,前記アクセス頻度は,所与のオブジェクトが前記ウェブブラウザモジュールによりアクセスされた所与の期間にわたるインスタンスの数を示すステップと,
オブジェクトが前記1つまたは複数のメモリリソース内にすでに存在するか否かを判断するステップと,
第1のオブジェクトが前記1つまたは複数のメモリリソースに存在しないときに前記第1のオブジェクトに対する優先順位を計算するステップであって,前記優先順位は,前記第1のオブジェクトのタイプ,前記オブジェクトトラッキングテーブルにおける前記第1のオブジェクトに関連付けられたアクセス頻度に基づく,ステップと,
前記優先順位を前記オブジェクトに割り当てるステップであって,前記第1のオブジェクトが前記ウェブブラウザモジュールの動作に対するグローバルアプリケーションを有する場合には,前記第1のオブジェクトに高い優先順位が割り当てられるステップと
を含む,方法。」

(イ)引用刊行物に記載された事項
あ.原審における平成26年1月14日付けの拒絶理由(以下,これを「原審拒絶理由1」という)に引用された,本願の第1国出願前に既に公知である,特開2008-009618号公報(2008年1月17日公開,以下,これを「引用刊行物1」という)には,関連する図面と共に,次の事項が記載されている。

A.「【0002】
現在の携帯電話装置は,インターネットなどの通信ネットワーク上に配置されたコンテンツサーバから配信されるコンテンツデータを通信端末に内蔵されたブラウザ機能により閲覧することができる。
【0003】
そして,携帯電話装置は,無線を使用することから転送レートが小さく,頁の閲覧に時間がかかるため,高速化を図ってきた。即ち,携帯電話装置は,一度閲覧した頁はキャッシュメモリに保存しておき,再度閲覧する場合はそれを参照するようにした(例えば,特許文献1参照。)。
【0004】
そして,現在,PCなどのWebブラウザで閲覧する一般コンテンツが閲覧可能なWebブラウザを搭載している携帯電話が登場している。
【0005】
ところが,現在の携帯電話装置に搭載されているWebブラウザのキャッシュ領域は携帯向けコンテンツ向けに考えられているため,大きな容量を確保していない。即ち,携帯端末装置のWebブラウザは,PCなどで閲覧可能な一般コンテンツサイズに対応したキャッシュ領域を有していない。
【0006】
しかも現在のキャッシュ登録方法では,わずか数秒での頁移動やキー操作が皆無などの重要でないと思われるコンテンツも全てキャッシュ領域に登録していた。その結果,以前に登録した重要なコンテンツがキャッシュ領域から削除される可能性が高くなった。
【0007】
そのため重要なコンテンツをキャッシュ領域からヒストリバック/フォアード機能により表示しようとした場合,コンテンツサーバとの無駄な通信が発生してしまう確率が非常に高くなった。なぜなら,その重要なコンテンツがキャッシュ領域になければ,通信によりネットワークよりそのコンテンツを再取得する必要があったからである。」

B.「【0031】
次に,本発明を実施するための最良の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0032】
図1は,本発明の第1の実施の形態を示す携帯電話装置のブロック図である。
【0033】
図1を参照すると,携帯電話装置1は,プログラム2,コンテンツキャッシュ領域3,時計装置4,通信装置5と代替コンテンツ6,表示装置7およびヒストリ管理テーブル8とからなる。プログラム2は,図示しないROMに格納され,図示しないCPUによりプログラム2が実行される。図1ではその実行機能を機能ブロックで示している。
【0034】
プログラム2には,あらかじめWebブラウザ21が組み込まれている。
【0035】
コンテンツキャッシュ領域3はRAM(ランダム・アクセス・メモリ)によって構成され,Webブラウザ21が管理する領域であり,ブラウザ21で表示したコンテンツを保存するために使用される。」

C.「【0039】
ヒストリ管理テーブル8は,コンテンツの閲覧履歴情報を管理するテーブルである(具体例は,図2で説明する)。
【0040】
Webブラウザ21には,コンテンツキャッシュ領域3にコンテンツの登録/削除を行うキャッシュ登録/削除手段211,コンテンツの閲覧履歴を示す閲覧履歴情報を管理するヒストリ管理手段212がある。
【0041】
Webブラウザ21には,さらに,閲覧時間取得手段213,コンテンツ重要度判断手段214,ヒストリバック/フォアード手段215,コンテンツ取得手段216がある。」

D.「【0048】
まず,Webブラウザ21にてユーザのURL指定操作による次のコンテンツ取得の開始要求が発生した場合(ステップA1),コンテンツ重要度判断手段214は,閲覧時間取得手段213により表示装置7が現在表示しているコンテンツのコンテンツ閲覧時間を取得し(ステップA2),次に,コンテンツ重要度判断手段214は,コンテンツの閲覧時間はn秒より長いかによってコンテンツの重要度の判断を行う(ステップA3)。そして,コンテンツの閲覧時間がn秒より長い場合は,コンテンツの重要度は高いと見なしステップA4に遷移する。そして,コンテンツの閲覧時間がn秒より短い場合は,コンテンツの重要度は低いと見なしステップA7に遷移する。尚,nの値は,利用者が任意に設定できるようにしても良い。
【0049】
ステップA4では,キャッシュ登録/削除手段211は,キャッシュ領域3にコンテンツを登録する(ステップA4)。そして,ヒストリ管理手段212は,ヒストリ管理テーブル8(図2)に閲覧履歴情報の設定を行い,その際重要度に“高”を設定する(ステップA5)。」

E.「【0053】
ヒストリ管理テーブル8に該当するコンテンツの閲覧履歴情報が存在しなかった場合,コンテンツ取得手段216は,通信によってネットワークからそのコンテンツを取得する(ステップB6)。
【0054】
ヒストリ管理テーブル8に該当するコンテンツの閲覧履歴情報が存在した場合,コンテンツ取得手段216は,該当コンテンツの重要度を参照する(ステップB3)。
【0055】
重要度が“高”の場合,コンテンツ取得手段216は,コンテンツキャッシュ領域3より該当するコンテンツを取得する(ステップB4)。」

い.原審拒絶理由1において引用された,本願の第1国出願前に既に公知である,特開2006-146967号公報(2006年6月8日公開,以下,これを「引用刊行物2」という)には,関連する図面と共に,次の事項が記載されている。

F.「【0007】
ユーザー1のブラウザがindex.htmlを受信した後,ブラウザは,そのページを構文解析し,画像とアイコンのような埋め込まれたオブジェクトをフェッチするために追加要求を出す。しかし,代理サーバー28は,最初にこれらの要求を受信し,埋め込まれたオブジェクトがキャッシュ30の中で利用可能であるかどうかを決定する。もし,希望するオブジェクトがキャッシュ30の中にあれば,代理サーバー28は,原ウェブサイト(ウェブサイト1)からオブジェクトをフェッチしようとせずに,単にキャッシュ30の中のオブジェクトをユーザー1に送るだけである。もし,希望するオブジェクトがキャッシュ30の中に無ければ,代理サーバー28は,オブジェクトをフェッチするよう適切なウェブサイトに要求を送る。」

う.原審拒絶理由1に引用された,本願の第1国出願前に既に公知である,特開2001-051892号公報(2001年2月23日公開,以下,これを「引用刊行物3」という)には,関連する図面と共に,次の事項が記載されている。

G.「【0002】
【従来の技術】キャッシュサーバは,リクエストされたオブジェクトがキャッシュ内に蓄積されている場合は,当該オブジェクトをクライアントへ転送し,キャッシュ置換アルゴリズムによって,当該オブジェクトの順位を変更する。また,リクエストされたオブジェクトがキャッシュ内に蓄積されていない場合は,当該オブジェクトをオリジンサーバから取得してキャッシュ内に蓄積し,キャッシュ置換アルゴリズムによって当該オブジェクトの順位を決定する。その際,リクエストされたオブジェクトを蓄積しようとしたとき,キャッシュ容量を越える場合は,キャッシュされたオブジェクトの中で順位の低いものから削除することによって空き容量を作り,リクエストされたオブジェクトをキャッシュ内に蓄積する。」

エ.原審における平成26年7月14日付けの拒絶理由(以下,これを「原審拒絶理由2」という)において,参考文献として提示された「山本 祐次 他2名,「キャッシュするデータをファイル種別で選別するキャッシュ方式の提案」,電子情報通信学会2008年総合大会講演論文集,通信2,2008年3月5日 p175」(以下,これを「周知文献」1という)には,関連する図面と共に次の事項が記載されている。

H.「2.提案手法
限られたキャッシュ領域でヒット率を向上させるには,将来再び使われる可能性の高いデータを残すこと,可能性の低いデータを捨てることが大事である.ここでは,後者に着目した.
Webのアクセスログよりキャッシュヒット率を解析したところ,ファイルの種別によって,HTMLおよびXMLのバイトヒット率は低く,画像,スタイルシートおよびJavaScriptのバイトヒット率は高いことが分かった(図1).アクセスログは,キャッシュの容量に制限がないという条件の下で8日分取得した.」(175頁左欄17行?27行)

I.「



オ.本願の第1国出願時点での周知技術を示す文献であって,本願の第1国出願前に既に公知である,特開平05-308366号公報(1993年11月19日公開,以下,これを「周知文献2」という)には,関連する図面と共に,次の事項が記載されている。

J.「(57)【要約】
【目的】 LANにおけるキャッシュシステムにおいて,サーバ側およびクライアント側のキャッシュメモリを効率的に使用して,クライアントに対する応答を高速化する。
【構成】 サーバには,仮想回線によって接続されたクライアント端末ごとに,サーバ側のキャッシュメモリ11に格納されているデータのアクセス頻度,および,その頻度にもとづいて設定した優先順位等の情報を登録するクライアント管理テーブルを設け,その優先順位にもとづいてキャッシュメモリ11内のデータを管理するとともに,仮想回線が切断された端末のデータから解放するように制御する。一方,クライアント端末のインタフェースボード6には,CPUと,キャッシュメモリと,ユーザの入力したコマンドおよびそれに応じてサーバから送信されたデータを対応づけるコマンドテーブルと設け,そのデータをキャッシュメモリに蓄積して,ユーザから同一コマンドが入力された場合,蓄積データを直ちにユーザに返すように制御する。」

(ウ)引用刊行物に記載の発明
あ.上記Aの「現在の携帯電話装置は,インターネットなどの通信ネットワーク上に配置されたコンテンツサーバから配信されるコンテンツデータを通信端末に内蔵されたブラウザ機能により閲覧することができる」という記載,同じく,上記Aの「携帯電話装置は,一度閲覧した頁はキャッシュメモリに保存しておき,再度閲覧する場合はそれを参照するようにした」という記載,及び,上記Aの「PCなどのWebブラウザで閲覧する一般コンテンツが閲覧可能なWebブラウザを搭載している携帯電話が登場している」という記載から,引用刊行物1には,
“インターネットなどの通信ネットワーク上に配置されたコンテンツサーバから配信される一般コンテンツが閲覧可能なWebブラウザを搭載し,一度閲覧した頁はキャッシュメモリに保存しておき,再度閲覧する場合はそれを参照するようにした携帯電話装置”が記載されていることが読み取れる。

い.上記Bの「携帯電話装置1は,プログラム2,コンテンツキャッシュ領域3,時計装置4,通信装置5と代替コンテンツ6,表示装置7およびヒストリ管理テーブル8とからなる。プログラム2は,図示しないROMに格納され,図示しないCPUによりプログラム2が実行される」という記載,同じく,上記Bの「プログラム2には,あらかじめWebブラウザ21が組み込まれている」という記載,同じく,上記Bの「コンテンツキャッシュ領域3はRAM(ランダム・アクセス・メモリ)によって構成され,Webブラウザ21が管理する領域であり,ブラウザ21で表示したコンテンツを保存するために使用される」という記載,及び,上記Cの「ヒストリ管理テーブル8は,コンテンツの閲覧履歴情報を管理するテーブルである」という記載から,引用刊行物1に記載の「携帯電話装置」は,
“少なくともROMに格納された,Webブラウザを含むプログラムと,前記プログラムを実行するCPUと,RAMによって構成され,前記Webブラウザが管理する領域であり,前記Webブラウザで表示したコンテンツを保存するために使用されるコンテンツキャッシュ領域と,前記コンテンツの閲覧履歴情報を管理するテーブルであるヒストリ管理テーブルと,通信装置とから構成される”ものであることが読み取れる。

う.上記Cの「Webブラウザ21には,コンテンツキャッシュ領域3にコンテンツの登録/削除を行うキャッシュ登録/削除手段211,コンテンツの閲覧履歴を示す閲覧履歴情報を管理するヒストリ管理手段212がある」という記載,及び,同じく,上記Cの「Webブラウザ21には,さらに,閲覧時間取得手段213,コンテンツ重要度判断手段214,ヒストリバック/フォアード手段215,コンテンツ取得手段216がある」という記載から,引用刊行物1において,
“Webブラウザは,コンテンツキャッシュ領域にコンテンツの登録/削除を行うキャッシュ登録/削除手段,コンテンツの閲覧履歴を示す閲覧履歴情報を管理するヒストリ管理手段,さらに,閲覧時間取得手段,コンテンツ重要度判断手段,ヒストリバック/フォアード手段,コンテンツ取得手段とを有する”ものであることが読み取れる。

え.上記Dの「Webブラウザ21にてユーザのURL指定操作による次のコンテンツ取得の開始要求が発生した場合(ステップA1),コンテンツ重要度判断手段214は,閲覧時間取得手段213により表示装置7が現在表示しているコンテンツのコンテンツ閲覧時間を取得し(ステップA2),次に,コンテンツ重要度判断手段214は,コンテンツの閲覧時間はn秒より長いかによってコンテンツの重要度の判断を行う(ステップA3)。そして,コンテンツの閲覧時間がn秒より長い場合は,コンテンツの重要度は高いと見なしステップA4に遷移する」という記載,同じく,上記Dの「ステップA4では,キャッシュ登録/削除手段211は,キャッシュ領域3にコンテンツを登録する(ステップA4)。そして,ヒストリ管理手段212は,ヒストリ管理テーブル8(図2)に閲覧履歴情報の設定を行い,その際重要度に“高”を設定する」という記載から,引用刊行物1においては,
“WebブラウザにてユーザのURL指定操作による次のコンテンツ取得の開始要求が発生した場合,コンテンツ重要度判断手段が,閲覧時間取得手段により,現在表示しているコンテンツのコンテンツ閲覧時間を取得し,コンテンツ重要度判断手段が,コンテンツの閲覧時間の長さによって,コンテンツの重要度の判断を行い,コンテンツの閲覧時間が所定の時間より長い場合は,コンテンツの重要度は高いと見なし,キャッシュ登録/削除手段が,前記コンテンツを,キャッシュ領域に登録し,ヒストリ管理手段が,ヒストリ管理テーブルに,前記コンテンツの閲覧履歴情報を,重要度“高”に設定する”ものであることが読み取れる。

お.上記Eの「ヒストリ管理テーブル8に該当するコンテンツの閲覧履歴情報が存在しなかった場合,コンテンツ取得手段216は,通信によってネットワークからそのコンテンツを取得する」という記載から,引用刊行物1においては,
“ヒストリ管理テーブルに該当するコンテンツの閲覧履歴情報が存在しなかった場合,コンテンツ取得手段は,通信によってネットワークからそのコンテンツを取得する”ものであることが読み取れる。

か.以上あ.?お.において検討した事項から,引用刊行物1には,次の発明(以下,これを「引用発明」という)が記載されているものと認める。

インターネットなどの通信ネットワーク上に配置されたコンテンツサーバから配信される一般コンテンツが閲覧可能なWebブラウザを搭載し,一度閲覧した頁はキャッシュメモリに保存しておき,再度閲覧する場合はそれを参照するようにした携帯電話装置であって,
前記携帯電話装置は,少なくともROMに格納された,前記Webブラウザを含むプログラムと,前記プログラムを実行するCPUと,RAMによって構成され,前記Webブラウザが管理する領域であり,前記Webブラウザで表示したコンテンツを保存するために使用されるコンテンツキャッシュ領域と,前記コンテンツの閲覧履歴情報を管理するテーブルであるヒストリ管理テーブルと,通信装置とから構成され,
前記Webブラウザは,前記コンテンツキャッシュ領域にコンテンツの登録/削除を行うキャッシュ登録/削除手段,コンテンツの閲覧履歴を示す閲覧履歴情報を管理するヒストリ管理手段,さらに,閲覧時間取得手段,コンテンツ重要度判断手段,ヒストリバック/フォアード手段,コンテンツ取得手段とを有し,
前記WebブラウザにてユーザのURL指定操作による次のコンテンツ取得の開始要求が発生した場合,前記コンテンツ重要度判断手段が,前記閲覧時間取得手段により,現在表示しているコンテンツのコンテンツ閲覧時間を取得し,前記コンテンツ重要度判断手段が,前記コンテンツの閲覧時間の長さによって,コンテンツの重要度の判断を行い,前記コンテンツの閲覧時間が所定の時間より長い場合は,前記コンテンツの重要度は高いと見なし,前記キャッシュ登録/削除手段が,前記コンテンツを,前記コンテンツキャッシュ領域に登録し,前記ヒストリ管理手段が,前記ヒストリ管理テーブルに,前記コンテンツの閲覧履歴情報を,重要度“高”に設定し,
前記ヒストリ管理テーブルに該当するコンテンツの閲覧履歴情報が存在しなかった場合,前記コンテンツ取得手段は,通信によってネットワークからそのコンテンツを取得する,携帯電話装置。

(エ)本件補正発明と引用発明との対比
あ.引用発明における携帯電話装置は,CPUを有し,一般コンテンツが閲覧可能なWebブラウザを有していることから,本件補正発明における「ワイヤレスハンドヘルド紺ピューティングデバイス」に相当し,引用発明における「Webブラウザ」,「URL」が,本件補正発明における「ウェブブラウザモジュール」,「ウェブアドレス」に相当し,
引用発明における「WebブラウザにてユーザのURL指定操作による次のコンテンツ取得の開始要求が発生した場合」とは,当該「Webブラウザ」の起動操作を行う態様を含むことは明らかであり,「ユーザのURL指定操作」とは,当該「Webブラウザ」への「URL」の入力操作に他ならないから,
引用発明における「WebブラウザにてユーザのURL指定操作による次のコンテンツ取得の開始要求が発生した場合」が,
本件補正発明における「ウェブブラウザモジュールを開始するための要求を受信するステップ」と,「ウェブアドレスのための入力を受信するステップ」に相当する。

い.引用発明においても,「ヒストリ管理テーブルに該当するコンテンツの閲覧履歴情報が存在しなかった場合,前記コンテンツ取得手段は,通信によってネットワークからそのコンテンツを取得する」ステップを有し,上記あ.において検討した「ユーザのURL指定操作による次のコンテンツ取得の開始要求が発生した場合」,要求された「コンテンツ」がキャッシュされていなければ,該「コンテンツ」を,「ネットワーク」から受信することは明らかである。
そして,引用発明における「コンテンツ」が,本件補正発明における「ファイル」に相当するので,引用発明においても,本件補正発明と同様に,
「前記ウェブアドレスに対応するファイルを受信するステップ」を有していることは明らかである。

う.引用発明において,「Webブラウザ」の有する「コンテンツキャッシュ領域にコンテンツの登録/削除を行うキャッシュ登録/削除手段」は,引用発明における「携帯電話装置」の「キャッシュメモリ」を「管理」するものに他ならない。
加えて,引用発明における「コンテンツキャッシュ領域」は,「携帯電話装置」が有する「キャッシュメモリ」に設けられているものであって,「コンテンツ」を「登録」,即ち,“保存する”「領域」であるから,引用発明は,
“携帯電話装置のキャッシュメモリを管理するため方法”,
を含むものであることは明らかである。
一方,本件補正発明における「ワイヤレスハンドヘルドコンピューティングデバイス」の「メモリリソース」は,「ファイル内に存在するオブジェクト」を記憶するものであって,本件補正発明は,「ワイヤレスハンドヘルドコンピューティングデバイスの1つまたは複数のメモリリソースを管理するための方法」に関するものである。
そして,引用発明における「キャッシュメモリ」と,本件補正発明における「メモリリソース」とは,“記憶手段”である点で共通するので,
引用発明における“携帯電話装置のキャッシュメモリを管理するため方法”と,
本件補正発明における「ワイヤレスハンドヘルドコンピューティングデバイスの1つまたは複数のメモリリソースを管理するための方法」とは,
“ワイヤレスハンドヘルドコンピューティングデバイスの記憶手段を管理するための方法”である点で共通する。

え.引用発明においては,「コンテンツの重要度」は,「コンテンツの閲覧時間の長さ」によって判断されている。前記「コンテンツの閲覧時間の長さ」は,「閲覧時間取得手段」によって取得されるが,この前記「閲覧時間取得手段」によって取得される「閲覧時間」は,前記「コンテンツ閲覧時間取得手段」によって取得可能とするために,該「閲覧時間」が更新される度に変更され,保持されているものと解される。
このことから,引用発明には,“コンテンツの閲覧時間を保持するための保持手段を更新するステップ”を有しているものと解される。
一方,本件補正発明における「第1のオブジェクトに関連付けられたアクセス頻度」は,「優先順位」の基となるものであって,「オブジェクト」が,「ウェブブラウザモジュール」によって「アクセス」された「頻度」に応じて変化するものであって,変化する度に,「オブジェクトトラッキングテーブル」が,「更新」されるものである。
ここで,本件補正発明における「オブジェクト」は,上記う.において指摘したとおり,「ファイル内に存在する」ものであるから,該「アクセス頻度」とは,“ファイルに関連したアクセス履歴”と言い得るものである。
そして,引用発明における「コンテンツの閲覧時間」とは,“コンテンツにアクセスしている頻度情報”ともいえるものであり,引用発明における「コンテンツ」と,本件補正発明における「オブジェクト」は,共に,“ウェブブラウザモジュールによってアクセスされる情報”である点で共通するので,
したがって,引用発明における“コンテンツの閲覧時間を保持するための保持手段を更新するステップ”と,
本件補正発明における「オブジェクトごとにアクセス頻度を記録するためのオブジェクトトラッキングテーブルを更新するステップ」とは,
“ウェブブラウザモジュールによってアクセスされる情報のアクセス頻度を記録するための保持手段を更新するステップ”である点で共通する。

お.引用発明において,「ヒストリ管理テーブルに該当するコンテンツの閲覧履歴情報が存在しなかった場合」において,「コンテンツの閲覧履歴情報存在しかった場合」とは,「キャッシュメモリ」に,該「コンテンツ」が存在しないことを意味することは明らかであり,引用発明において,「ヒストリ管理テーブルに該当するコンテンツの閲覧履歴情報が存在」するか否かを判断することは,結果として,「キャッシュメモリ」に,「Webブラウザ」が要求した「コンテンツ」が存在するか否かの判断をすることと同義である。
即ち,引用発明には,“キャッシュメモリに該当するコンテンツが存在するか否かを判断するステップ”が存在している。
ここで,引用発明において,“存否の判断が行われているコンテンツ”とは,「Webブラウザ」がアクセスの要求をした「コンテンツ」に他ならない。
一方,本件補正発明において,「オブジェクトが前記1つまたは複数のメモリリソース内にすでに存在するか否かを判断するステップ」における「オブジェクト」も,「ウェブブラウザモジュール」がアクセスしようとしている「オブジェクト」である。
よって,引用発明の“キャッシュメモリに該当するコンテンツが存在するか否かを判断するステップ”における「コンテンツ」と,
本件補正発明の「オブジェクトが前記1つまたは複数のメモリリソース内にすでに存在するか否かを判断するステップ」における「オブジェクト」とは,
“ウェブブラウザモジュールが要求をした情報”である点で共通する。
したがって,引用発明における“キャッシュメモリに該当するコンテンツが存在するか否かを判断するステップ”と,
本件補正発明における「オブジェクトが前記1つまたは複数のメモリリソース内にすでに存在するか否かを判断するステップ」とは,
“Webブラウザの要求をした情報が,記憶手段にすでに存在するか否かを判断するステップ”である点で共通する。

か.引用発明においては,“コンテンツ重要度判断手段が,閲覧時間取得手段により,現在表示しているコンテンツのコンテンツ閲覧時間を取得し,前記コンテンツ重要度判断手段が,前記コンテンツの閲覧時間の長さによって,コンテンツの重要度の判断を行い,前記コンテンツの閲覧時間が所定の時間より長い場合は,前記コンテンツの重要度は高いと見なし,前記コンテンツに対して,ヒストリ管理手段が,前記コンテンツの重要度を“高”に設定する”ものである。即ち,引用発明には,
“コンテンツの重要度をコンテンツに設定するステップ”が存在している。
一方,本件補正発明においては,“優先順位は,前記第1のオブジェクトのタイプ,前記オブジェクトトラッキングテーブルにおける前記第1のオブジェクトに関連付けられたアクセス頻度に基づいて計算され,第1のオブジェクトに対して割り当てられるステップ”が存在している。
引用発明において,「コンテンツの重要度」が「高」である場合は,「キャッシュ登録/削除手段」が,「キャッシュメモリ」への「登録」が優先されることを示すものと解されるので,引用発明における「コンテンツの重要度」が,本件補正発明における「優先順位」に相当する。
よって,上記え.において検討した事項を踏まえると,
引用発明における“コンテンツの重要度をコンテンツに設定するステップ”と,
本件補正発明における「優先順位を前記オブジェクトに割り当てるステップ」とは,
“優先順位をウェブブラウザモジュールによってアクセスされる情報に割り当てるステップ”である点で共通する。

以上あ.?か.において検討した事項から,本件補正発明と,引用発明との,一致点,及び,相違点は,次のとおりである。

[一致点]
ワイヤレスハンドヘルドコンピューティングデバイスの記憶手段を管理するための方法であって,
ウェブブラウザモジュールを開始するための要求を受信するステップと,
ウェブアドレスのための入力を受信するステップと,
前記前記ウェブアドレスに対応するファイルを受信するステップと,
ウェブブラウザモジュールによってアクセスされる情報のアクセス頻度を記録するための保持手段を更新するステップと,
ウェブブラウザモジュールの要求をした情報が,記憶手段にすでに存在するか否かを判断するステップと,
優先順位を前記ウェブブラウザモジュールよってアクセスされる情報に割り当てるステップ,を有する方法。

[相違点1]
“記憶手段”に関して,
本件補正発明においては,「1つまたは複数のメモリリソース」であるのに対して,
引用発明においては,「キャッシュメモリ」,或いは,「コンテンツキャッシュ領域」が,複数個で構成されている点について,特に言及されていない点。

[相違点2]
本件補正発明においては,「ファイル内に存在するオブジェクトの1つまたは複数のアドレスをレビューするステップであって,前記1つまたは複数のアドレスは夫々,前記ウェブブラウザモジュールによりアクセスされるオブジェクトを指すステップ」が存在するのに対して,
引用発明においては,そのようなステップについて,特に言及されていない点。

[相違点3]
“ウェブブラウザモジュールによってアクセスされる情報のアクセス頻度を記録するための保持手段を更新するステップ”に関して,
本件補正発明においては,「オブジェクトごとにアクセス頻度を記録するためのオブジェクトトラッキングテーブルを更新するステップであって,前記アクセス頻度は,所与のオブジェクトが前記ウェブブラウザモジュールによりアクセスされた所与の期間にわたるインスタンスの数を示すステップ」であるのに対して,
引用発明においては,「オブジェクト」への「アクセス」に関して,特に言及されていない点。

[相違点4]
“ウェブブラウザモジュールの要求をした情報が,記憶手段にすでに存在するか否かを判断するステップ”に関して,
本件補正発明においては,「ウェブブラウザモジュールの要求をした情報」が,「オブジェクト」であり,「記憶手段」が,「1つまたは複数のメモリリソース」であるのに対して,
引用発明においては,それぞれ,「コンテンツ」と,「キャッシュメモリ」の「コンテンツキャッシュ領域」である点。

[相違点5]
本件補正発明においては,「第1のオブジェクトが前記1つまたは複数のメモリリソースに存在しないときに前記第1のオブジェクトに対する優先順位を計算するステップであって,前記優先順位は,前記第1のオブジェクトのタイプ,前記オブジェクトトラッキングテーブルにおける前記第1のオブジェクトに関連付けられたアクセス頻度に基づく,ステップ」が存在するのに対して,
引用発明においては,「コンテンツキャッシュ領域」に「コンテンツ」が存在しない時点で,該「コンテンツ」の「重要度」の設定を行う点については,特に言及されていない点。

[相違点6]
“優先順位を前記ウェブブラウザモジュールよってアクセスされる情報に割り当てるステップ”に関して,
本件補正発明においては,「第1のオブジェクトが前記ウェブブラウザモジュールの動作に対するグローバルアプリケーションを有する場合には,前記第1のオブジェクトに高い優先順位が割り当てられる」ものであるのに対して,
引用発明においては,「グローバルアプリケーション」に対する言及がない点。

(オ)相違点についての当審の判断
あ.[相違点1]について
引用発明において,「キャッシュメモリ」を複数持たせること,或いは,該「キャッシュメモリ」の「コンテンツキャッシュ領域」を複数に分割して,“1または複数のメモリリソース”として構成することは,当業者が適宜なし得る事項に過ぎない。
よって,[相違点1]は,格別のものではない。

い.[相違点2]について
上記Fにおいて引用した,引用刊行物2の記載内容において,引用刊行物2の「ページ」が,引用発明の「コンテンツ」,及び,本件補正発明の「ファイル」に相当する。
引用刊行物2の「画像とアイコンのような埋め込まれたオブジェクトをフェッチするために追加要求を出す」という記載から,「画像」という「オブジェクト」が存在する“アドレス”,及び,「アイコン」という「オブジェクト」が存在する“アドレス”を指定して「フェッチ」が行われていることは明らかである。
即ち,本件補正発明における「ファイル内に存在するオブジェクトの1つまたは複数のアドレスをレビューするステップであって,前記1つまたは複数のアドレスは夫々,前記ウェブブラウザモジュールによりアクセスされるオブジェクトを指すステップ」は,本願の第1国出願前に,当業者には,広く知られた技術事項である。
そして,引用発明も,引用刊行物2に係る発明も,共に,“ブラウザが,ページを要求する技術”に関連するものであるから,引用発明において,「コンテンツ」に含まれる「オブジェクト」の「アドレス」を取得するようなことは,引用刊行物2に係る発明に基づいて,当業者が適宜なし得た事項に過ぎない。
よって,[相違点2]は,格別のものではない。

う.[相違点3]について
上記Jにおいて引用した,周知文献2に「キャッシュメモリ11に格納されているデータのアクセス頻度,および,その頻度にもとづいて設定した優先順位等の情報を登録するクライアント管理テーブルを設け」るという記載もあるように,「キャッシュメモリに格納されているデータ」への「アクセス頻度」を「登録」することは,本願の第1国出願前に,当業者には周知の技術事項である。そして,「オブジェクト」に関しては,上記い.において検討したとおりである。
したがって,引用発明においても,「閲覧時間」に換えて,「アクセス頻度」を保持するよう構成することは,周知の技術事項から,同業者が適宜なし得る事項である。
よって,[相違点3]は,格別のものではない。

え.[相違点4]について
「オブジェクト」については,上記い.において言及した,引用刊行物2に記載されているとおり,当業者には,本願の第1国出願前に既に広く知られた技術事項であり,「1つまたは複数のメモリリソース」については,上記あ.において検討したとおりである。
よって,[相違点4]は,格別のものではない。

お.[相違点5]について
上記Gに引用した,引用刊行物3に,「リクエストされたオブジェクトがキャッシュ内に蓄積されていない場合は,当該オブジェクトをオリジンサーバから取得してキャッシュ内に蓄積し,キャッシュ置換アルゴリズムによって当該オブジェクトの順位を決定する」と記載されてもいるように,「オブジェクト」を取得する際に,該「オブジェクト」の優先順位を決定することは,本願の第1国出願前に,当業者に広く知られた技術事項である。
そして,引用発明と,引用刊行物3に記載の発明とは,「キャッシュメモリ」に格納された情報を管理する技術である点で共通するので,引用発明においても,「キャッシュメモリ」にコンテンツが存在しないとき,「コンテンツ取得手段は,通信によってネットワークからそのコンテンツを取得する」際に,該「コンテンツ」或いは,該「コンテンツ」に含まれる「オブジェクト」の「優先度」を決定するよう構成することは,当業者が適宜なし得る事項である。
よって,[相違点5]は,格別のものではない。

か.[相違点6]について
上記H,及び,Iにおいて引用した,周知文献1の「将来再び使われる可能性の高いデータを残すこと・・・(中略)・・・スタイルシートおよびJavaScriptのバイトヒット率は高いことが分かった」という記載内容と,周知文献1の「図1」から,「スタイルシート(css)」,「JavaScript」の“キャッシュに残す優先順位を高くする”ことが,本願の第1国出願前に,当業者には周知の技術事項であることが読み取れる。
そして,引用発明と,周知文献1に記載の技術とは,“Web関連情報をキャッシュするキャッシュの管理に関する技術”である点で共通するので,
引用発明においても,「コンテンツ」に,「オブジェクト」として,「スタイルシート」や,「JavaScript」が含まれる場合に,該「オブジェクト」の「優先度」を高く設定するよう構成することは,当業者が適宜なし得る事項である。
よって,[相違点6]は,格別のものではない。

以上あ.?か.において検討したとおり,[相違点1]?[相違点6]はいずれも格別のものではなく,そして,本願発明の構成によってもたらされる効果も,当業者であれば当然に予測可能なものに過ぎず格別なものとは認められない。
よって,本件補正発明は,本願の特許出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので,特許法第29条第2項の規定により特許出願に際独立して特許を受けることができない。

(カ)独立特許要件むすび
したがって,本件手続補正は,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので,同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.補正却下むすび
以上に検討したとおりであるから,本件手続補正は,特許法第184条の12第2項により読み替える同法第17条の2第5項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
仮に,本件手続補正が目的要件を満たすものであったとしても,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので,同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって,補正却下の決定の結論のとおり決定する。

第3.本願発明について
平成27年2月26日付けの手続補正は,上記のとおり却下されたので,本願に係る発明は,平成26年5月21日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項(以下,これを「本願の請求項」という)1?請求項36に記載された,上記「第2.平成27年2月26日付けの手続補正の却下の決定」の「1.補正の内容」において,補正前の請求項1?請求項36として引用した記載事項により特定されるものである。

第4.原審の拒絶理由
原審による平成26年7月14日付けの拒絶理由は,概略,以下のとおりである。

「 理 由

平成26年5月21日付け手続補正書でした手続補正は,下記の点で国際出願日における国際特許出願の明細書若しくは図面(図面の中の説明に限る。)の翻訳文,国際出願日における国際特許出願の請求の範囲の翻訳文(特許協力条約第19条(1)の規定に基づく補正後の請求の範囲の翻訳文が提出された場合にあっては,当該翻訳文)又は国際出願日における国際特許出願の図面(図面の中の説明を除く。)(以下,翻訳文等という。)(誤訳訂正書を提出して明細書,特許請求の範囲又は図面について補正をした場合にあっては,翻訳文等又は当該補正後の明細書,特許請求の範囲若しくは図面)に記載した事項の範囲内においてしたものでないから,特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない(同法第184条の12第2項参照)。



補正後の請求項1には,「前記第1のオブジェクトがウェブ閲覧におけるユーザエクスペリエンスを向上させることを目的とする場合には,前記第1のオブジェクトに高い優先順位が割り当てられる」との記載があり,出願人は同日付で提出された意見書において,その補正の根拠として段落【0053】-【0074】である旨主張している。
しかしながら,段落【0074】には,「オブジェクトタイプは,所定の優先順位を与えられてよく,ジャバスクリプトファイル605Cならびにカスケードスタイルシートファイル605Aなどのより複雑なオブジェクト605は,一般に,画像ファイル605Bなどの他のオブジェクトに対してより高い優先順位を割り当てられる。同じく,小形からウェブサイトにわたって検索されるジャバスクリプトライブラリファイル1105などのライブラリファイルがまた,重み付けされ,すべての他のタイプのオブジェクト605に対してより高い優先順位を与えられ得る。」とのみ記載されているに過ぎず,「ウェブ閲覧におけるユーザエクスペリエンスを向上させることを目的とする場合に,高い優先順位を割り当てる」ことは記載も示唆もされていない。
補正後の請求項10,19,28についても同様。
・・・・(中略)・・・・
なお,単純にCSSやjavascriptのファイルを優先的にキャッシュするという手法は,参考文献Aに開示されている。
・・・・(中略)・・・・
参 考 文 献 等 一 覧
A.山本 祐次 他2名,キャッシュするデータをファイル種別で選別するキャッシュ方式の提案,電子情報通信学会2008年総合大会講演論文集 通信2,2008年3月5日」

第5.平成26年7月14日付けの拒絶理由に対する当審の判断
本願の請求項1,請求項10,請求項19,及び,請求項28に記載された,
「前記第1のオブジェクトがウェブ閲覧におけるユーザエクスペリエンスを向上させることを目的とする場合には,前記第1のオブジェクトに高い優先順位が割り当てられる」,
に関して,
上記「第2.平成27年2月26日付けの手続補正の却下の決定」の「2.補正の適否」における「(1)新規事項」において,「当初明細書等」とした,平成25年4月3日付けで提出された明細書,請求の範囲の日本語による翻訳文,及び,国際出願の願書に添付された図面には,
「前記第1のオブジェクトがウェブ閲覧におけるユーザエクスペリエンスを向上させることを目的とする場合には,前記第1のオブジェクトに高い優先順位が割り当てられる」,
という記載は存在しない。
そこで,当初明細書等の記載内容から,
「前記第1のオブジェクトがウェブ閲覧におけるユーザエクスペリエンスを向上させることを目的とする場合には,前記第1のオブジェクトに高い優先順位が割り当てられる」,
という記載内容が読み取れるかについて,以下に検討する。

当初明細書等において「高い優先順位が割り当てられるステップ」に相当する記載として,当初明細書等の段落【0074】に,
「一般に,画像ファイル605Bなどの他のオブジェクトに対してより高い優先順位を割り当てられる。同じく,小形からウェブサイトにわたって検索されるジャバスクリプトライブラリファイル1105などのライブラリファイルがまた,重み付けされ,すべての他のタイプのオブジェクト605に対してより高い優先順位を与えられ得る」,
という記載が存在し,更に,当初明細書等の段落【0077】に,
「このステップで,オブジェクト605は,異なるウェブサイトにわたるグローバルアプリケーションを有し得るものと判断されているので,一般に,オブジェクト605の優先順位は,オブジェクト605がより高い優先順位を有するように調整される」,
という記載が存在するのみである。
そして,これら何れの記載内容を見ても,「第1のオブジェクトがウェブ閲覧におけるユーザエクスペリエンスを向上させることを目的とする場合」が上記引用記載の何処に対応するか不明であり,上記引用の当初明細書等の記載内容からは,
「前記第1のオブジェクトがウェブ閲覧におけるユーザエクスペリエンスを向上させることを目的とする場合には,前記第1のオブジェクトに高い優先順位が割り当てられる」,
という記載事項を読み取ることはできない。
当初明細書等には,「優先順位」に関して,上記飲用の段落の他,段落【0007】?段落【0010】,段落【0057】?段落【0060】,段落【0067】,段落【0068】,段落【0075】,段落【0076】,及び,段落【0078】に記載されているが,何れの記載内容を検討しても,
「前記第1のオブジェクトがウェブ閲覧におけるユーザエクスペリエンスを向上させることを目的とする場合には,前記第1のオブジェクトに高い優先順位が割り当てられる」,
という記載事項を読み取ることはできない。
よって,平成26年5月21日付けの手続補正は,当初明細書等の記載の範囲内でなされたものではない。

なお,審判請求人は,平成26年5月21に付けの意見書において,
「かかる補正は何れも出願当初明細書段落0053乃至0074の記載に基づき,したがって,新規事項を追加するものではございません。」
と主張すると共に,平成26年9月12日付けの意見書において,
「かかる補正は何れも出願当初明細書段落0077の記載に基づき,したがって,新規事項を追加するものではございません。
・・・・(中略)・・・・
段落0053には,「ジャバスクリプトコードは,ユーザアクションに迅速に応答することができ,アプリケーションをより敏感に感じさせる。さらに,JSファイル605Cのジャバスクリプトコードは,個々のキーストロークなど,HTML単独では通常,検出不可能なユーザアクションを検出することができる」とあります。これは,即ち,ジャバスクリプトコードが,ウェブ閲覧におけるユーザエクスペリエンスを向上させることを目的としているものの一例であることを示しています。
そして,段落0074の記載「ジャバスクリプトファイル605Cならびにカスケードスタイルシートファイル605Aなどのより複雑なオブジェクト605は,一般に,画像ファイル605Bなどの他のオブジェクトに対してより高い優先順位を割り当てられる」と組み合わせれば,「オブジェクトがウェブ閲覧におけるユーザエクスペリエンスを向上させることを目的とする場合に,当該オブジェクトに高い優先順位を割り当てる」ことは本願明細書段落0053及び0074に開示ないし示唆されていると言えると思料致します。」
と主張しているが,
当初明細書等においては,「ユーザエクスペリエンス」という用語がそもそも存在しておらず,「前記第1のオブジェクトがウェブ閲覧におけるユーザエクスペリエンスを向上させることを目的とする場合には,前記第1のオブジェクトに高い優先順位が割り当てられる」という記載事項については,上記において検討したとおりであるから,審判請求人のこれら意見書における主張は採用できない。

進歩性に関する附言(この部分は審決を構成しない)
原審による平成26年7月14日付けの拒絶理由は,特許法第17条の2第3項であって,当該拒絶理由に対する当審の判断は上述のとおりであるが,当該拒絶理由において,進歩性についても言及しているので,その点について附言しておく。

1.本願の請求項1に係る発明
本願の請求項1に係る発明(以下,これを「本願発明」という)は,上記「第3.本願発明について」において言及したとおり,上記「第2.平成27年2月26日付けの手続補正の却下の決定」の「1.補正の内容」において,補正前の請求項1として引用した記載事項により特定されるものである。

2.引用刊行物に記載の発明
一方,原審による平成26年1月14日付けの拒絶理由において引用された,上記「第2.平成27年2月26日付けの手続補正の却下の決定」の「2.補正の適否」の「(3)独立特許要件」の「ア.独立特許要件についての当審の判断」における「(イ)引用刊行物に記載された事項」において,引用刊行物1とした,特開2008-009618号公報には,同じく,上記「第2.平成27年2月26日付けの手続補正の却下の決定」の「2.補正の適否」の「(3)独立特許要件」の「ア.独立特許要件についての当審の判断」における「(ウ)引用刊行物に記載の発明」において認定したとおりの引用発明が記載されている。

3.本願発明と引用発明との対比
本願発明は,上記「第2.平成27年2月26日付けの手続補正の却下の決定」の「2.補正の適否」の「(3)独立特許要件」において検討した本件補正発明の,
「前記ウェブブラウザモジュールの動作に対するグローバルアプリケーションを有する」, という構成を,
「ウェブ閲覧におけるユーザエクスペリエンスを向上させることを目的とする」,
という構成に置き換えたものである。
したがって,本願発明と引用発明との,一致点,及び,相違点は,次のとおりである。
[一致点]
[一致点]
ワイヤレスハンドヘルドコンピューティングデバイスの記憶手段を管理するための方法であって,
ウェブブラウザモジュールを開始するための要求を受信するステップと,
ウェブアドレスのための入力を受信するステップと,
前記前記ウェブアドレスに対応するファイルを受信するステップと,
ウェブブラウザモジュールによってアクセスされる情報のアクセス頻度を記録するための保持手段を更新するステップと,
ウェブブラウザモジュールの要求をした情報が,記憶手段にすでに存在するか否かを判断するステップと,
優先順位を前記ウェブブラウザモジュールよってアクセスされる情報に割り当てるステップ,を有する方法。

[相違点a]
“記憶手段”に関して,
本願発明においては,「1つまたは複数のメモリリソース」であるのに対して,
引用発明においては,「キャッシュメモリ」,或いは,「コンテンツキャッシュ領域」が,複数個で構成されている点について,特に言及されていない点。

[相違点b]
本願発明においては,「ファイル内に存在するオブジェクトの1つまたは複数のアドレスをレビューするステップであって,前記1つまたは複数のアドレスは夫々,前記ウェブブラウザモジュールによりアクセスされるオブジェクトを指すステップ」が存在するのに対して,
引用発明においては,そのようなステップについて,特に言及されていない点。

[相違点c]
“ウェブブラウザモジュールによってアクセスされる情報のアクセス頻度を記録するための保持手段を更新するステップ”に関して,
本願発明においては,「オブジェクトごとにアクセス頻度を記録するためのオブジェクトトラッキングテーブルを更新するステップであって,前記アクセス頻度は,所与のオブジェクトが前記ウェブブラウザモジュールによりアクセスされた所与の期間にわたるインスタンスの数を示すステップ」であるのに対して,
引用発明においては,「オブジェクト」への「アクセス」に関して,特に言及されていない点。

[相違点d]
“ウェブブラウザモジュールの要求をした情報が,記憶手段にすでに存在するか否かを判断するステップ”に関して,
本願発明においては,「ウェブブラウザモジュールの要求をした情報」が,「オブジェクト」であり,「記憶手段」が,「1つまたは複数のメモリリソース」であるのに対して,
引用発明においては,それぞれ,「コンテンツ」と,「キャッシュメモリ」の「コンテンツキャッシュ領域」である点。

[相違点e]
本願発明においては,「第1のオブジェクトが前記1つまたは複数のメモリリソースに存在しないときに前記第1のオブジェクトに対する優先順位を計算するステップであって,前記優先順位は,前記第1のオブジェクトのタイプ,前記オブジェクトトラッキングテーブルにおける前記第1のオブジェクトに関連付けられたアクセス頻度に基づく,ステップ」が存在するのに対して,
引用発明においては,「コンテンツキャッシュ領域」に「コンテンツ」が存在しない時点で,該「コンテンツ」の「重要度」の設定を行う点については,特に言及されていない点。

[相違点f]
“優先順位を前記ウェブブラウザモジュールよってアクセスされる情報に割り当てるステップ”に関して,
本願発明においては,「ウェブ閲覧におけるユーザエクスペリエンスを向上させることを目的とする場合には,前記第1のオブジェクトに高い優先順位が割り当てられる」ものであるのに対して,
引用発明においては,「ウェブ閲覧におけるユーザエクスペリエンスを向上させることを目的とする場合」に対する言及がない点。

4.相違点についての当審の判断
(1)[相違点a]?[相違点e]について
本願発明と,引用発明との間の[相違点a]?[相違点e]は,本件補正発明と,引用発明との間の[相違点1]?[相違点5]と同じものであるから,上記「第2.平成27年2月26日付けの手続補正の却下の決定」の「2.補正の適否」の「(3)独立特許要件」の「ア.独立特許要件についての当審の判断」における「(オ)相違点についての当審の判断」において検討したとおり,本願発明と,引用発明との間の[相違点a]?[相違点e]は,本件補正発明と,引用発明との間の[相違点1]?[相違点5]と同じく,格別のものではない。

(2)[相違点f]について
本願発明における,
「ウェブ閲覧におけるユーザエクスペリエンスを向上させることを目的とする」,
という構成は,上記「第5.平成26年7月14日付けの拒絶理由に対する当審の判断」において検討したとおり,当初明細書等には記載されていないものである。
したがって,そのままでは,引用発明との間で,相違点の判断を行うことができない。
そこで,上記引用の本願発明の構成については,上記「第5.平成26年7月14日付けの拒絶理由に対する当審の判断」において言及した,審判請求人の,平成26年9月12日付けの意見書の内容を参考にする。
審判請求人は,当該意見書において,当初明細書等の記載内容と,「ユーザエクスペリエンス」との関連性について,
「段落0053には,「ジャバスクリプトコードは,ユーザアクションに迅速に応答することができ,アプリケーションをより敏感に感じさせる。さらに,JSファイル605Cのジャバスクリプトコードは,個々のキーストロークなど,HTML単独では通常,検出不可能なユーザアクションを検出することができる」とあります。これは,即ち,ジャバスクリプトコードが,ウェブ閲覧におけるユーザエクスペリエンスを向上させることを目的としているものの一例であることを示しています。」
と主張している。
そうすると,本願発明における「前記第1のオブジェクトがウェブ閲覧におけるユーザエクスペリエンスを向上させることを目的とする場合には,前記第1のオブジェクトに高い優先順位が割り当てられるステップ」とは,
“第1のオブジェクトが,ジャバスクリプトコードである場合には,前記第1のオブジェクトに高い優先順位が割り当てられるステップ”,
という構成を含むものであると解される。
上記解釈の下に[相違点f]を検討すると,「JavaScript」に対して,“高い優先順位”を割り当てることは,上記「第2.平成27年2月26日付けの手続補正の却下の決定」の「2.補正の適否」の「(3)独立特許要件」の「ア.独立特許要件についての当審の判断」における「(オ)相違点についての当審の判断」の「か.[相違点6]について」において検討したとおり,本願の第1国出願前に,当業者にとって周知の技術事項であるから,引用発明においても,「コンテンツ」に,「オブジェクト」として,「JavaScript」が含まれる場合に,該「オブジェクト」の「優先度」を高く設定するよう構成することは,当業者が適宜なし得る事項である。
よって,[相違点f]は,格別のものではない。

以上に検討したとおりであるから,仮に,当初明細書等に記載されていない事項を,審判請求人の意見書において主張している事項を参考にして解釈したとしても,本願発明は,進歩性を有していない。

第6.むすび
したがって,平成26年5月21日付け手続補正は,特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-12-01 
結審通知日 2015-12-07 
審決日 2015-12-18 
出願番号 特願2013-532809(P2013-532809)
審決分類 P 1 8・ 574- Z (G06F)
P 1 8・ 575- Z (G06F)
P 1 8・ 121- Z (G06F)
P 1 8・ 572- Z (G06F)
P 1 8・ 573- Z (G06F)
P 1 8・ 55- Z (G06F)
P 1 8・ 571- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 萩島 豪  
特許庁審判長 高木 進
特許庁審判官 浜岸 広明
石井 茂和
発明の名称 ワイヤレスハンドヘルドコンピューティングデバイスのメモリリソースを管理するためのシステムおよび方法  
代理人 村山 靖彦  
代理人 黒田 晋平  

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