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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 C12N
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C12N
管理番号 1314706
審判番号 不服2013-11636  
総通号数 199 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-07-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-06-19 
確定日 2016-04-25 
事件の表示 特願2010-523324「トランスフェクションおよび免疫活性化のためのRNAの複合化」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 3月12日国際公開、WO2009/030481、平成22年12月 9日国内公表、特表2010-537651〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯・本願発明
本願は、平成20年(2008年)9月4日を国際出願日(パリ条約による優先権主張 2007年9月4日 欧州)とする出願であって、平成24年11月28日付けで特許請求の範囲について手続補正がなされたが、平成25年2月8日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年6月19日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。

第2 平成25年6月19日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成25年6月19日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.補正の内容
平成25年6月19日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)により、特許請求の範囲の請求項1は以下のように補正された。

補正前:
「【請求項1】
1つ以上のオリゴペプチドと複合化された少なくとも1つのRNA(分子)を包含する免疫活性化複合化一本鎖RNAであって、
上記RNAと上記オリゴペプチドとが、これらの分子の非共有的な相互作用によって連結しており
上記1つのRNA(分子)の、上記1つ以上のオリゴペプチドに対する窒素/リン酸塩比(N/P比)が、0.5?50の範囲内にあって、
上記オリゴペプチドは8?15アミノ酸の長さであり、かつ以下の実験式
(Arg)l;(Lys)m;(His)n;(Orn)o;(Xaa)x (式I)によって表され、
上記実験式において、
l+m+n+o+x=8?15であり、かつl、m、n、およびoは、それぞれ独立して、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、および15から選択された任意の数値であり、Arg、Lys、His、およびOrnの総含有量が、上記オリゴペプチドの全てのアミノ酸の少なくとも50%に相当するように規定され;
Xaaは、Arg、Lys、His、およびOrn以外の天然アミノ酸または非天然アミノ酸から選択された任意のアミノ酸であり;さらに
xは、0、1、2、3、4、5、6、7、および8から選択された任意の数値であり、Xaaの総含有量が、上記オリゴペプチドの全アミノ酸の50%を超えないように規定された、
腫瘍または癌疾患、循環器病、感染症、(感染性)ウイルス性疾患、自己免疫疾患、(単)遺伝子疾患、および/またはアレルギーから選択される疾病の処置および/または予防における治療用複合化RNA。」

補正後:
「【請求項1】
1つ以上のオリゴペプチドと複合化された少なくとも1つのRNA(分子)を包含する免疫活性化複合化一本鎖RNAであって、
上記RNAと上記オリゴペプチドとが、これらの分子の非共有的な相互作用によって連結しており
上記1つのRNA(分子)の、上記1つ以上のオリゴペプチドに対する窒素/リン酸塩比(N/P比)が、0.5?50の範囲内にあって、
上記オリゴペプチドは8?15アミノ酸の長さであり、かつ以下の実験式
(Arg)l;(Lys)m;(His)n;(Orn)o;(Xaa)x (式I)によって表され、
上記実験式において、
l+m+n+o+x=8?15であり、かつl、m、n、およびoは、それぞれ独立して、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、および15から選択された任意の数値であり、Arg、Lys、His、およびOrnの総含有量が、上記オリゴペプチドの全てのアミノ酸の少なくとも50%に相当するように規定され;
Xaaは、Arg、Lys、His、およびOrn以外の天然アミノ酸または非天然アミノ酸から選択された任意のアミノ酸であり;さらに
xは、0、1、2、3、4、5、6、7、および8から選択された任意の数値であり、Xaaの総含有量が、上記オリゴペプチドの全アミノ酸の50%を超えないように規定され、
上記複合化一本鎖RNAの少なくとも1つのRNA(分子)、対、上記1つ以上のオリゴペプチドのモル比が、1:250以上であり、
腫瘍または癌疾患、循環器病、感染症、(感染性)ウイルス性疾患、自己免疫疾患、(単)遺伝子疾患、および/またはアレルギーから選択される疾病の処置および/または予防における治療用複合化RNA。」(下線部は、補正箇所を示す。)

2.補正の適否
本件補正は、補正前の請求項1の発明特定事項である「1つ以上のオリゴペプチドと複合化された少なくとも1つのRNA(分子)」を、「少なくとも1つのRNA(分子)、対、上記1つ以上のオリゴペプチドのモル比が、1:250以上」と、複合体の構成成分の複合比を具体的に限定するものであるから、本件補正は、補正前の請求項に記載された発明を特定するために必要な事項を限定するものであり、また、補正前後の請求項1に記載された発明は、産業上の利用分野及び解決しようとする課題を同一とするから、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(1)本願補正発明
本願補正発明は、上記1.に「補正後」として記載したとおりのものである。

(2)引用例の記載事項
原査定の拒絶理由において引用文献8として引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である国際公開第2006/046978号(以下「引用例1」という。)には、以下の事項が記載されている(英語で記載されているため、日本語訳で摘記する。また、下線は当審で付与した。)。

ア.「29.単離されたカチオン性ペプチドとRNAの非共有結合複合体からなる組成物。
43.前記RNAがmRNA、アンチセンスRNA、RNAi、増幅されたRNAやリボザイムから選択される、請求項29または30の組成物。
45.前記RNAが1以上の腫瘍細胞や病原体から単離される、請求項29または30の組成物。」(特許請求の範囲)

イ.「実施例1
ヒーラ細胞へのカチオン性ペプチドを介したGFP-RNAの導入
Port-2(AntP: RQIKIWFQNRRMKWKK; SEQ ID N0:3)、Port-3 (HIV Tat: GRKKRRQRRRPPQ; SEQ ID NO:29)、またはPort-4 (Port-3 dimer:CGRKKRRQRRRPPQGRKKRRQRRRPPQ; SEQ ID NO:30)カチオン性ペプチドが、ヒーラ細胞に緑色蛍光タンパク質(GFP)をコードするRNAを導入するために使用される。Portカチオン性ペプチドとRNAの複合比は、100:1?1:1の範囲である。Portカチオン性ペプチドとRNAの複合比は、RNA分子数へのペプチド分子数の割合として、分子間の電荷比によって算出される。Portペプチドは、所望の割合で適切な濃度にPBS中に希釈される。Portペプチド100μlは、RNA100μl(20μg/ml)と混合され、室温にて30分間培養されることで複合体を形成する。接着ヒーラ細胞は、4mlPBSで洗浄される。200μlのPort:RNA複合体が、洗浄された細胞に滴下され、続いて400μlの無血清培地(DMEM)が滴下される。Port:RNA複合体溶液で被覆された細胞は、37℃で1時間培養され、1mlの完全ヒーラ培地(10%FBS添加のDMEM)が細胞に添加される。細胞は37℃で一昼夜培養され、トリプシン消化処理により採取され、フローサイトメトリーで緑色蛍光タンパク質の発現を測定した。」(実施例1)

ウ.「カチオン性ペプチド-RNA複合体
本発明はさらに、カチオン性ペプチドとRNAの単離された非共有結合複合体からなる組成物を提供する。正電荷を持つカチオン性ペプチドと負電荷を持つRNAは、イオン結合を介して非共有結合複合体を形成する。本発明のカチオン性ペプチド-RNA複合体は、一つのカチオン性ペプチドと複数のRNA、複数のカチオン性ペプチドと一つのRNA、一つのカチオン性ペプチドと一つのRNAで形成される複合体を包含する。カチオン性ペプチドの長さ、配列、電荷は、RNAの長さ、配列、及び、それらの濃度と同様に、カチオン性ペプチドとRNAの比を決定するための関連要因である。効率的な複合体形成や導入のために、カチオン性ペプチドとRNAの比や濃度を最適化することは当業者にとって容易である。好ましい比は、RNA分子に対してカチオン性ペプチドが1-100である。」(23頁25行?24頁5行)

エ.「本発明のカチオン性ペプチドとRNAの複合体は、未成熟樹状細胞と成熟樹状細胞のような免疫系の抗原提示細胞の変換のために特に利用される。」(第6頁1行?3行)

オ.「抗原提示細胞(APC)との用語は、1以上の抗原を、免疫系の特異的エフェクタ細胞によって認識される抗原-MHC複合体として提示し、それによって、存在する抗原に対して効果的な細胞性免疫反応を誘導することができる細胞集団のことをいう。」(第6頁下から4行?最下行)

引用例1の記載事項ア.、イ.から、引用例1には、以下の発明が記載されていると認められる。
「Port-3 (HIV Tat: GRKKRRQRRRPPQ; SEQ ID NO:29)カチオン性ペプチドと緑色蛍光タンパク質をコードするRNAの非共有結合複合体であって、Portカチオン性ペプチドとRNAの複合比は、100:1?1:1の範囲である複合体。」(以下、「引用発明」という。)

(3)対比
本願補正発明(以下、「前者」という。)と引用発明(以下、「後者」という。)とを対比する。
後者における「Port-3 (HIV Tat: GRKKRRQRRRPPQ; SEQ ID NO:29)カチオン性ペプチド」は、13個のアミノ酸からなり、そのうちの6個がR(Arg)、2個がK(Lys)で、合計8個が塩基性アミノ酸であるから、前者の「オリゴペプチド」の特定事項である「以下の実験式
(Arg)l;(Lys)m;(His)n;(Orn)o;(Xaa)x (式I)によって表され、
上記実験式において、
l+m+n+o+x=8?15であり、かつl、m、n、およびoは、それぞれ独立して、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、および15から選択された任意の数値であり、Arg、Lys、His、およびOrnの総含有量が、上記オリゴペプチドの全てのアミノ酸の少なくとも50%に相当するように規定され;
Xaaは、Arg、Lys、His、およびOrn以外の天然アミノ酸または非天然アミノ酸から選択された任意のアミノ酸であり;さらに
xは、0、1、2、3、4、5、6、7、および8から選択された任意の数値であり、Xaaの総含有量が、上記オリゴペプチドの全アミノ酸の50%を超えないように規定され、」を満たすものである。
また、後者における「緑色蛍光タンパク質をコードするRNA」は、緑色蛍光タンパク質の一本鎖RNAであるmRNAに相当し、当該mRNAの残基数が700残基程度であることは本願優先日当時の技術常識である(必要なら、Gene、vol.111、pp.229-233(1992)のFig.2.を参照)。
してみれば、後者において「1つのRNA(分子)の、上記1つ以上のオリゴペプチドに対する窒素/リン酸塩比(N/P比)が、0.5?50の範囲内」であることは、特定されていないが、後者の「複合体」には、RNAのリン酸基と非共有結合する、カチオン性ペプチドにおける塩基性アミノ酸の側鎖の窒素は、ペプチド1分子当たり8個存在するから、窒素/リン酸塩比(N/P比)は、カチオン性ペプチドとRNAの複合比が「100:1」である場合、1.14(=8×100/700)となる。

そうすると、両者の一致点、相違点は以下のとおりである。

一致点:
「1つ以上のオリゴペプチドと複合化された少なくとも1つのRNA(分子)を包含する複合化一本鎖RNAであって、
上記RNAと上記オリゴペプチドとが、これらの分子の非共有的な相互作用によって連結しており
上記オリゴペプチドは13アミノ酸の長さであり、かつ以下の実験式
(Arg)l;(Lys)m;(His)n;(Orn)o;(Xaa)x (式I)によって表され、
上記実験式において、
l+m+n+o+x=13であり、かつlは6、mは2、n、およびoは0であり、Arg、Lys、His、およびOrnの総含有量が、上記オリゴペプチドの全てのアミノ酸の少なくとも50%に相当するように規定され;
Xaaは、Arg、Lys、His、およびOrn以外の天然アミノ酸または非天然アミノ酸から選択された任意のアミノ酸であり;さらに
xは5であり、Xaaの総含有量が、上記オリゴペプチドの全アミノ酸の50%を超えないように規定される複合化RNA。」

相違点:
(1)「複合化一本鎖RNA」が、前者においては「免疫活性化」との性質を有し、「腫瘍または癌疾患、循環器病、感染症、(感染性)ウイルス性疾患、自己免疫疾患、(単)遺伝子疾患、および/またはアレルギーから選択される疾病の処置および/または予防における治療用」に用いるものであることが特定されているのに対し、後者においては、緑色蛍光タンパク質をコードするものである点。
(2)複合体の「1つのRNA(分子)の、1つ以上のオリゴペプチドに対する窒素/リン酸塩比(N/P比)が、前者においては、0.5?50の範囲内」であるのに対し、後者においては、1.14であり、また、複合体の構成成分の複合比が、前者においては、「複合化一本鎖RNAの少なくとも1つのRNA(分子)、対、上記1つ以上のオリゴペプチドのモル比が、1:250以上」であるのに対し、後者においては、100:1?1:1の範囲である点。

(4)判断
(4-1)相違点(1)について
引用例1には、「RNAが1以上の腫瘍細胞や病原体から単離される」との記載があり(記載事項ア.)、また、樹状細胞に抗原を提示させるために引用発明を使用すること(記載事項エ.)、抗原提示細胞(APC)は、細胞性免疫反応を誘導することができる細胞集団であること(記載事項オ.)が記載されていることから、腫瘍または癌疾患、感染症治療、(感染性)ウイルス性疾患などの処置、予防に有用な樹状細胞ワクチンを製造するために、引用発明の緑色蛍光タンパク質をコードするRNAに代えて、腫瘍細胞や病原体由来のmRNAを用いて、複合化一本鎖RNAを得ることは当業者が容易に想到することである。このようにして得られた複合化一本鎖RNAは、樹状細胞に細胞性免疫反応を誘導させる性質、つまり、「免疫活性化」との性質を有するものである。

(4-2)相違点(2)について
引用例1の記載事項ウ.の記載に基づき、複合体の効率的な複合体形成や導入のために、「複合化一本鎖RNAの少なくとも1つのRNA(分子)、対、上記1つ以上のオリゴペプチドのモル比」を最適化し、1:250以上とすること、複合体のカチオン性ペプチドの正電荷とRNAの負電荷のバランスに着目して、複合体の「1つのRNA(分子)の、1つ以上のオリゴペプチドに対する窒素/リン酸塩比(N/P比)」のようなパラメータを設定、最適化し、0.5?50の範囲内とすることは当業者が適宜行うことであり、本願明細書をみても、そのような数値限定をすることの臨界的意義は認められない。

(5)審判請求人の主張について
審判請求人は、平成25年6月19日付けの審判請求書において、
「また、引用文献8は、細胞に導入させる複合体に関する文献です。これに対し本願発明は、例えば生得の免疫反応を誘引するための、TLR受容体の受容体の結合に関するものです。このように引用文献8と本願請求項1に係る発明とは、目的が全く異なります。」(第13頁21行?24行)、と主張する。

しかし、上記(4)(4-1)に記載したとおり、引用発明は細胞性免疫反応を誘導するものである。一方、本願補正発明が有する性質は、「生得の免疫反応を誘引する」等の限定を付すことなく、単に「免疫活性化」と特定されるものであるから、細胞性免疫反応の誘導をも包含するものである。
してみれば、引用文献8(引用例1)と本願請求項1に係る発明は、目的が全く異なるということはできないから、審判請求人の主張は採用し得ない。

(6)むすび
以上検討したところによれば、本願補正発明は、引用例1に記載された発明、及び本願優先日当時の技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
よって、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1.本願発明
平成25年6月19日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成24年11月28日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「【請求項1】
1つ以上のオリゴペプチドと複合化された少なくとも1つのRNA(分子)を包含する免疫活性化複合化一本鎖RNAであって、
上記RNAと上記オリゴペプチドとが、これらの分子の非共有的な相互作用によって連結しており
上記1つのRNA(分子)の、上記1つ以上のオリゴペプチドに対する窒素/リン酸塩比(N/P比)が、0.5?50の範囲内にあって、
上記オリゴペプチドは8?15アミノ酸の長さであり、かつ以下の実験式
(Arg)l;(Lys)m;(His)n;(Orn)o;(Xaa)x (式I)によって表され、
上記実験式において、
l+m+n+o+x=8?15であり、かつl、m、n、およびoは、それぞれ独立して、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、および15から選択された任意の数値であり、Arg、Lys、His、およびOrnの総含有量が、上記オリゴペプチドの全てのアミノ酸の少なくとも50%に相当するように規定され;
Xaaは、Arg、Lys、His、およびOrn以外の天然アミノ酸または非天然アミノ酸から選択された任意のアミノ酸であり;さらに
xは、0、1、2、3、4、5、6、7、および8から選択された任意の数値であり、Xaaの総含有量が、上記オリゴペプチドの全アミノ酸の50%を超えないように規定された、
腫瘍または癌疾患、循環器病、感染症、(感染性)ウイルス性疾患、自己免疫疾患、(単)遺伝子疾患、および/またはアレルギーから選択される疾病の処置および/または予防における治療用複合化RNA。」(以下、「本願発明」という。)

2.引用例
原査定の拒絶理由で引用された引用例、及びそれらの記載事項は、前記第2 2.(2)に記載したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は、前記第2 2.で検討した本願補正発明が、「少なくとも1つのRNA(分子)、対、上記1つ以上のオリゴペプチドのモル比が、1:250以上」と、複合体の構成成分の複合比を具体的に限定するものであるのに対し、そのような特定がされていないものである。
そうすると、本願発明の特定事項を全て含み、さらに他の特定事項にて限定したものに相当する本願補正発明が、前記第2 2.に記載したとおり、引用例1に記載された発明、及び本願優先日当時の技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
よって、本願発明は、引用例1に記載された発明、及び本願優先日当時の技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

第4 まとめ
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、その余の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-10-02 
結審通知日 2014-10-07 
審決日 2014-10-20 
出願番号 特願2010-523324(P2010-523324)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (C12N)
P 1 8・ 121- Z (C12N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 白井 美香保伊藤 良子  
特許庁審判長 今村 玲英子
特許庁審判官 植原 克典
高堀 栄二
発明の名称 トランスフェクションおよび免疫活性化のためのRNAの複合化  
代理人 特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK  

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