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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  B42F
管理番号 1314724
審判番号 無効2015-800115  
総通号数 199 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-07-29 
種別 無効の審決 
審判請求日 2015-04-23 
確定日 2016-05-09 
事件の表示 上記当事者間の特許第5216168号発明「綴具」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許第5216168号は、平成25年1月17日に出願され、同年3月8日に設定登録がなされたものである。
そして、本件無効審判請求に係る手続の経緯は、以下のとおりである。
平成27年4月23日 無効審判請求書提出
平成27年7月15日 審判事件答弁書提出
平成27年11月11日 口頭審理陳述要領書提出(被請求人)
平成27年11月16日 審判事件弁駁書提出
平成27年11月16日 上申書提出(請求人)
平成27年11月16日 口頭審理陳述要領書提出(請求人)
平成27年11月27日 口頭審理
平成27年12月10日 上申書提出(請求人)
平成27年12月11日 上申書提出(被請求人)


第2 本件特許発明
本件特許の請求項1ないし8に係る発明は、本件特許明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された次のとおりのものである(以下、それぞれ「本件特許発明1」?「本件特許発明8」という。また、これらを総称して「本件特許発明」という。)。
「【請求項1】
並べて配置された細長い一対の基板(42、44)と、これ等の基板にそれぞれ一体に支持されていて、互いに先端が整列衝合して閉リングとなる複数の半リング(20、30)と、前記基板(42、44)の裏面側にそれぞれ一体形成され、両基板の間に共通の軸線を有する複数の軸受であってそれらの間に前記半リング(20、30)が互いに整列する第1位置と整列しない第2位置との間で基板(42、44)がその長さ方向に相対移動可能なように設定された相互間隙を有する複数の軸受(14)と、前記基板(42、44)の裏面側で前記複数の軸受(14)に支承された軸(100)と、を有するルーズリーフ綴具において、
一方の前記基板に、前記半リング(20、30)の閉鎖状態で他方の基板の外縁部に係止する鈎形部(104)を設け、他方の前記基板に、前記半リング(20、30)が非整列の第2位置へ偏倚されたときに前記鈎形部(104)が落ち込んで該外縁部との係止状態から解放するロック解除溝(108)を設け、
前記両基板(42、44)を前記半リング(20、30)が整列する前記第1位置へ向けて常時付勢するコイルばね(102)を設け、さらに、
前記一方の半リング先端部(20a)には、前記軸の軸線に沿った方向に見た場合に上下方向の凹凸部を、他方の半リング先端部(20b)には前記凹凸部と相補的な上下方向の凸凹部を設けた、ルーズリーフ綴具。
【請求項2】
前記半リング(20、30)を開放させる回転方向へ常時付勢するように、コイルばね(102)の両脚部(102a、102b)を前記両基板(42、44)の内縁部にそれぞれ係合させた請求項1に記載のルーズリーフ綴具。
【請求項3】
前記基板(42、44)を前記半リング(20、30)が閉鎖する前記第1位置から前記第2位置の方向に移動させたときに前記コイルばね(102)を圧縮する側の前記基板の一端に一体に設けられた摘み部であって、他方の基板の端部を保持しかつ回転と並進を許容する案内溝(110)を有する摘み部(88)を設けた請求項1又は2に記載のルーズリーフ綴具。
【請求項4】
前記半リング(20、30)を45?90度回転できる請求項1?3のいずれか一項に記載のルーズリーフ綴具。
【請求項5】
所定の開放角度において前記両基板に回転角度を規制する部分(106)を設けた請求項4に記載のルーズリーフ綴具。
【請求項6】
前記軸は一本の軸である請求項1?5のいずれか一項に記載のルーズリーフ綴具。
【請求項7】
前記軸受(14)に支承された前記軸はその軸受を有する基板ではない方の基板に一体成型されている請求項1?6のいずれか一項に記載のルーズリーフ綴具。
【請求項8】
一対の基板と該基板に支持された複数の半リングとからなり、各基板の半リング(20a)の先端のくさび形部(111)の斜行面(115)は、他方の基板の対合する半リング(30a)の先端のくさび形部(119)の斜行面(118)と嵌合且つ衝合するように形成され、該半リング(20a)のくさび形部(111)の下面には凸部(113)と凹部(114)が形成され、この凸部(113)は対合する半リング(30a)の上面の凹部(117)に嵌合でき、凹部(114)には半リング(30a)の凸部(116)が嵌合しうるように形成され、また前記半リング(20a)のくさび形部(111)の斜行面(115)側に接して低板(112)が設けられ、その上面が対合する半リング(30a)のくさび形部(119)の底面(120)に接触できるように構成された、綴具。」


第3 請求人の主張及び証拠方法
請求人は、「特許第5216168号発明の特許請求の範囲の請求項1ないし8に係る各発明についての特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求めている。
また、無効理由の概要は以下の1ないし3のとおりであって、本件特許は無効とすべきである旨主張している。
1.本件特許発明1は、甲第1号証ないし甲第4号証に記載された発明に基づいて、出願前に、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号の規定に該当し、無効とすべきものである(以下「無効理由1」という。)。
2.本件特許発明8は、甲第1号証、甲第4号証、及び甲第5号証に記載された発明に基づいて、出願前に、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号の規定に該当し、無効とすべきものである(以下「無効理由2」という。)。
3.本件特許発明2ないし7は、甲第1号証ないし甲第4号証、甲第6号証、及び甲第7号証に記載された発明に基づいて、出願前に、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号の規定に該当し、無効とすべきものである(以下「無効理由3」という。)。

また、上記無効理由を立証するための証拠方法は、以下のとおりである。
(証拠方法)
[書証]
甲第1号証:特開2010-120367号公報
甲第2号証:特許第3383650号公報
甲第3号証:実願平5-52618号(実開平7-17578号)のCD- ROM
甲第4号証:特開2007-30320号公報
甲第5号証:特許第4300814号公報
甲第6号証:国際公開2010/047184号
甲第7号証:特開2011-224869号公報
(以上、無効審判請求書に添付して提出された。)
甲第8号証:特開2010-69862号公報
甲第9号証:米国特許第3255759号明細書
甲第10号証:特開平11-348481号公報
甲第11号証:実願昭62-189448号(実開平1-93485号)の マイクロフィルム
甲第12号証:工業教育研究会編、「図解機械用語辞典-第3版-」、第3 版、日刊工業新聞社、1998年10月23日、p160- 161
甲第13号証:(社)実践教育訓練研究協会編、「コンパクト版機械用語大 辞典」、初版、日刊工業新聞社、2000年7月25日、p 168-169
甲第14号証:藤堂明保編、「学研 漢和辞典」、初版、株式会社学習研究 社、昭和61年1月10日
甲第15号証:実願平5-52618号(実開平7-17578号)のCD -ROM
(以上、平成27年11月16日付け口頭審理陳述要領書に添付して提出された。)
なお、被請求人は、甲第1ないし15号証の成立を認めている。


第4 被請求人の主張及び証拠方法
被請求人は、「本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする」との審決を求めている。
また、上記請求人の主張に対し、概略、以下のとおり主張して、本件特許を無効とすべき理由はない旨の主張をしている。
1.無効理由1について
本件特許発明1の「一方の前記基板に、前記半リング(20、30)の閉鎖状態で他方の基板の外縁部に係止する鈎形部(104)を設け、他方の前記基板に、前記半リング(20、30)が非整列の第2位置へ偏倚されたときに前記鈎形部(104)が落ち込んで該外縁部との係止状態から解放するロック解除溝(108)を設け」との発明特定事項は、甲第1号証ないし甲第7号証のいずれにも記載も示唆もされていない。
また、本件特許発明1の「前記一方の半リング先端部(20a)には、前記軸の軸線に沿った方向に見た場合に上下方向の凹凸部を、他方の半リング先端部(20b)には前記凹凸部と相補的な上下方向の凸凹部を設けた」との発明特定事項は、甲第1号証、及び甲第4号証のいずれにも記載も示唆もされていない。
2.無効理由2について
本件特許発明の「各基板の半リング(20a)の先端のくさび形部(111)の斜行面(115)は、他方の基板の対合する半リング(30a)の先端のくさび形部(119)の斜行面(118)と嵌合且つ衝合するように形成され、該半リング(20a)のくさび形部(111)の下面には凸部(113)と凹部(114)が形成され、この凸部(113)は対合する半リング(30a)の上面の凹部(117)に嵌合でき、凹部(114)には半リング(30a)の凸部(116)が嵌合しうるように形成され、また前記半リング(20a)のくさび形部(111)の斜行面(115)側に接して低板(112)が設けられ、その上面が対合する半リング(30a)のくさび形部(119)の底面(120)に接触できるように構成された」との発明特定事項は、甲第1号証ないし甲第7号証のいずれにも記載も示唆もされていない。
3.無効理由3について
本件特許発明1は、甲第1号証ないし甲第7号証に記載された発明に対して進歩性を有することから、本件特許の請求項1を引用する本件特許発明2ないし7については検討するまでもなく、それらの先行技術発明に対して進歩性を有するものである。

また、上記無効理由に反論するための証拠方法は、以下のとおりである。
(証拠方法)
[書証]
乙第1号証:新村出編、「広辞苑」、第六版、株式会社岩波書店、2008 年1月11日、p790-791
乙第2号証:松村明編、「大辞林」、第三版、株式会社三省堂、2006年 10月27日、p708-709
(以上、審判事件答弁書に添付して提出された。)
なお、請求人は、乙第1、及び2号証の成立を認めている。


第5 主な各甲号証に記載されている事項
1.甲第1号証
甲第1号証には、以下のとおり記載されている(なお、下線は審決で付した。以下同じ。)。
(1)「【0001】
この発明は、ファイリング用の綴具に関するものであり、特に、例えばセルリング式ノート又は綴じ穴のあるリーフを綴じるファイル・バインダ類に用いられる綴具である。」
(2)「【0008】
図1は、この発明にかかる綴具を用いたノートの斜視図解図であり、図2は、この発明にかかる綴具の斜視図解図であり、(A)は全体の図で、(B)は部分的に拡大した図であり、図3は、この発明にかかる綴具の斜視図解図であり、(A)は全体の図で、(B)は部分的に拡大した図であり、(C)(D)は半割杆の図であり、図4は、第1綴具部材の斜視図解図であり、図5は、第2綴具部材の斜視図解図であり、図6は、この発明にかかる綴具を分解した状態における斜視図解図であり、図7は、閉じた状態における綴具の正面図解図であり、図8は、閉じた状態における綴具の背面図解図であり、図9は、図7A-A断面図解図であり、図10は、図7B-B断面図解図であり、図11は、開き始めた状態における綴具の正面図解図であり、図12は、開き始めた状態における綴具の背面図解図であり、図13は、開いた状態における綴具の正面図解図であり、図14は、開いた状態における綴具の背面図解図であり、図15は、図13A-A断面図解図であり、図16は、図13B-B断面図解図である。
この発明の綴具10は、複数の綴杆部12と、前記綴杆部12を連結するための連結部14と、前記綴杆部12を構成する綴杆を開閉させるときの中心となる軸部16とを備える綴具であって、綴杆部12を連結部14の長さ方向に変位させて閉じている綴杆部12を開くことができるように構成されている。
この綴具10は、主として、一般的にセルリング式ノートと称されるノートに類似したノート用として構成され、綴具10の綴杆部12に沿ってリーフ110を回転させて360度広げること、すなわち綴杆部12に綴じられたリーフ110を綴杆に沿って捲り、360度捲りかえし、閉じたときに両端にあるリーフ110の表側と裏側とが軸部16を挟んで接し合うことができるように、構成されている。
通常、綴じ穴のある筆記する用紙の表側及び裏側に該用紙よりも比較的硬質の表紙が積層されており、この明細書及び特許請求の範囲においては、リーフ110の表側及び裏側には、用紙、合成樹脂製ポケット等の表面側の表表紙の表側と裏面側の裏表紙の裏側とを含まれる。」
(3)「【0009】
前記綴杆部12を構成する綴杆は、一対の綴杆が向き合うように、前記連結部14を構成する一対の連結部14の各々にその長手方向に適宜な間隔をおいて、連結部14の外側部ないし上側部から突設され、前記綴杆部12は、前記軸部16を中心にして左右に分かれた、対称形である第1綴杆20及び第2綴杆30を備える。
前記連結部14は、前記軸部16を中心にして左右に分かれた、対称形である第1連結部50及び第2連結部60を備え、第1連結部50及び第2連結部60は、向こう側から手前側に連続して長手方向に直線状にのびる略柱状である。」
(4)「【0010】
この実施の形態においては、第1綴杆20及び第1連結部50は、第1綴具部材18Aに形成され、第2綴杆30及び第2連結部60は、第2綴具部材18Bに形成され、第1綴具部材18Aと第2綴具部材18Bとは、対称形に形成されている。」
(5)「【0011】
前記連結部14は、綴杆部12に綴じられたリーフ110を第1綴杆20及び第2綴杆30に沿って捲り、360度捲りかえし、閉じたときに両端にあるリーフ110の表側と裏側とが軸部16を挟んで接し合うことができるように、下部において第1綴杆20及び第2綴杆30の基部と近接した位置に軸部16を連設されている。
前記軸部16は、前記連結部14(第1連結部50と第2連結部60)の長手方向にのびて一対の連結部14(第1連結部50と第2連結部60と)を連結し、前記第1綴杆20の自由端20bと第2綴杆30の自由端30bとを合わせて閉鎖するとき及び第1綴杆20の自由端20bと第2綴杆30の自由端30bとを離間させるときに回転中心となり、綴杆部12に綴じられたリーフ110を第1綴杆20及び第2綴杆30に沿って捲り、360度捲りかえすことができるように構成されている。」
(6)「【0018】
前記軸部16は、シャフト部100の受け部とシャフト部100とを備える。
受け部は、第1連結部50に連設された第1受け部80と第2連結部60に連設された第2受け部90とから構成され、前記シャフト部100は、前記連結部14の長手方向に沿って、向こう側から手前側に連続してのび、第1綴具部材と第2綴具部材とを連結する。
前記第1受け部80及び第2受け部90は、前記綴杆部12及び/又は連結部14に連設され、シャフト部100を装填するための開口部(第1受け部80の開口部84及び第2受け部90の開口部94)を側面に形成され、前記半割杆20A及び半割杆30Aの先端を合わせて閉鎖するとき及び半割杆20A及び半割杆30Aの先端を離間させるときに回転中心となり、第1綴杆20及び第2綴杆30に綴じられたリーフ110を第1綴杆20及び第2綴杆30に沿って捲り、360度捲りかえすことができるように構成されている。」
(7)「【0014】
第1綴杆20を構成する半割杆20Aの先端に形成された第1綴杆の綴杆係止部22を構成する先端の第1綴杆の凸部24及びその第1綴杆の凸部24に続く第1綴杆の凹部26と、第2綴杆30を構成する半割杆30Aの第2綴杆の綴杆係止部32を構成する先端の第2綴杆の凸部34及びその先端の第2綴杆の凸部34に続く第2綴杆の凹部36とは、第1綴杆20と第2綴杆30とを閉じたとき係合するように逆方向に向けて突き出しあるいは凹み形成されている。
すなわち、第1綴杆20を構成する半割杆20Aの先端に形成された第1綴杆の綴杆係止部22を構成する第1綴杆の凸部24は、手前側に向けて突き出されている。そして、その第1綴杆の凸部24に続く第1綴杆の凹部26は、向こう側に向けて凹んでいる。半割杆30Aの先端に形成された第2綴杆の綴杆係止部32を構成する第2綴杆の凸部34は、向こう側に向けて突き出されている。そして、その先端の第2綴杆の凸部34に続く第2綴杆の凹部36は、手前側に向けて凹んでいる。
第1綴杆20と第2綴杆30とを閉じたとき係合するように、第1綴杆の凸部24及び第1綴杆の凹部26と第2綴杆の凸部34及び第2綴杆の凹部36とは、逆方向に向けて突き出しあるいは凹み形成されている。
半割杆20Aの第1綴杆の綴杆係止部22を構成する第1綴杆の凸部24と半割杆30Aの第2綴杆の綴杆係止部32を構成する第2綴杆の凸部34とは、反対方向に向けて突き出し設けられている。
また、半割杆20Aの第1綴杆の綴杆係止部22を構成する第1綴杆の凹部26と半割杆30Aの第2綴杆の綴杆係止部32を構成する第2綴杆の凹部36とは、反対方向に向けて凹み形成されている。」
(8)「【0015】
前記第1綴杆の綴杆係止部22及び第2綴杆の綴杆係止部32は、第1綴杆20及び第2綴杆30の回転方向と交差する方向に脱係しないように、第1綴杆20及び第2綴杆30の回転方向にのびる脱係防止部28及び脱係防止部38が形成されている。
脱係防止部28は、頂部側において手前側に向けて突き出る鉤鼻状係止凸部28aと、基部20a側において向こう側に向けて凹む係止凹部28bとを有し、自由端側の係止凸部28aから続いて基部20a側に係止凹部28bが形成されている。
脱係防止部38は、頂部側において向こう側に向けて突き出る鉤鼻状係止凸部38aと、基部30a側において手前側に向けて凹む係止凹部38bとを有し、自由端側の係止凸部38aから続いて基部30a側に係止凹部38bが形成されている。
第1綴杆20と第2綴杆30とを閉じたとき、脱係防止部28の係止凸部28aは脱係防止部38の係止凹部38bに嵌合され、脱係防止部38の係止凸部38aは脱係防止部28の係止凹部28bに嵌合され、係止凸部28aと係止凸部38aとは、第1綴杆20と第2綴杆30とを回転方向に引いたときに、突き当たる。
第1綴杆の綴杆係止部22の脱係防止部28は、第2綴杆の綴杆係止部32の上部に向けて突き出され、第1綴杆の綴杆係止部22と第2綴杆の綴杆係止部32とを係合したときに、第2綴杆30が上方に向けて衝撃などにより移動することを防止している。
第2綴杆の綴杆係止部32の脱係防止部38は、第1綴杆の綴杆係止部22の上部に向けて突き出され、第2綴杆の綴杆係止部22と第2綴杆の綴杆係止部32とを係合したときに、第1綴杆20が上方に向けて衝撃などにより移動することを防止している。
このように、この実施の形態においては、第1綴杆20及び第2綴杆30の頂部を指でねじることにより、第1綴具部材18Aの第1綴杆20を向こう側に移動させ且つ第2綴具部材18Bの第2綴杆30を手前側に移動させて、第1綴杆20の半割杆20Aの第1綴杆の綴杆係止部22と第2綴杆30の半割杆30Aの第2綴杆の綴杆係止部32との係合を外すことができる。
なお、閉じるときにおいては、脱係防止部28の係止凸部28aと脱係防止部38の係止凸部38aとは、突き出たり滑りながら係止凹部38b及び係止凹部28bに嵌まるように、なだらかな傾斜面が自由端から形成されている。」
(9)「【0019】
前記第1受け部80及び第2受け部90は、前記連結部14の長手方向に間欠的に形成され、半割杆20A及び半割杆30Aが前記シャフト部100を中心にして回転し且つ第1綴杆20及び第2綴杆30を開閉するときに長手方向に相対変位するように形成されている。」
(10)「【0020】
前記シャフト部100は、断面円形の棒状の金属棒である。それに対応して、前記第1受け部80及び第2受け部90は、全体が弧状で、その内側の円弧部86及び円弧部96に前記シャフト部100を装填され、且つその外側の上部において、前記半割杆20A及び半割杆30Aの張り出し方向とは反対方向に張り出すように、前記連結部14が連設されている。
この実施の形態においては、シャフト部100と第1受け部80及び第2受け部90とは別部材であり、第1受け部80は、合成樹脂により、第1綴具部材18Aと一体に形成され、第2受け部90は、合成樹脂により、第2綴具部材18Bと一体に形成されている。
そして、シャフト部100は、第1綴具部材18Aの最も向こう側の第1受け部80から、第2綴具部材18Bの最も手前側の第2受け部90に至るように、形成されている。」
(11)「【0024】
前記第1連結部50の中央あたりに存する前記第1綴具部材18Aの第1収容部82と前記第2連結部60の中央あたりに存する第2綴具部材18Bの第2収容部92との間に、前記シャフト部100の長手方向にテンション(引張力又は圧縮力)をかける弾発部材102が、圧縮された状態で介装されている。弾発部材102は、鋼線をコイル形に巻いて作られたコイルバネにより形成され、筒形のコイルバネの輪の中にシャフト部100を挿通されている。
そして、弾発部材102は、その向こう側端が第2綴具部材18Bの第2受け部90の手前側端に接し、その手前側端が第1綴具部材18Aの第1受け部80の向こう側端に接して、復元力(均一な)によって第1綴具部材18Aを手前側に押し下げ且つ第2綴具部材18Bを向こう側に押し上げるように構成されている。
而して、弾発部材102は、綴杆部12を閉じているときには、第1綴杆の綴杆係止部22と第2綴杆の綴杆係止部32とを係合させる方向に作用している。
その第1綴杆の綴杆係止部22及び第2綴杆の綴杆係止部32を指で捩ることにより、係止された第1綴杆の綴杆係止部22及び第2綴杆の綴杆係止部32を外すときには、弾発部材102の弾発力に抗して第1綴具部材18Aの第1綴杆20を向こう側に移動させ且つ第2綴具部材18Bの2綴杆30を手前側に移動させて、閉じていた第1綴杆20と第2綴杆30とを開く。」
(12)図4、5から、「第1受け部80、及び第2受け部90は複数形成されている」ことが看取できる。

上記(1)?(12)の開示事項を総合すると、甲第1号証には、以下のとおりの発明が示されていると認められる(以下「甲第1号証発明」という。)。
「セルリング式ノート又は綴じ穴のあるリーフを綴じるファイル・バインダ類に用いられる綴具であって、
綴具10は、複数の綴杆部12と、前記綴杆部12を連結するための連結部14と、前記綴杆部12を構成する綴杆を開閉させるときの中心となる軸部16とを備え、
前記綴杆部12を構成する綴杆は、一対の綴杆が向き合うように、前記連結部14を構成する一対の連結部14の各々にその長手方向に適宜な間隔をおいて、連結部14の外側部ないし上側部から突設され、前記綴杆部12は、前記軸部16を中心にして左右に分かれた、対称形である第1綴杆20及び第2綴杆30を備え、
前記連結部14は、前記軸部16を中心にして左右に分かれた、対称形である第1連結部50及び第2連結部60を備え、第1連結部50及び第2連結部60は、向こう側から手前側に連続して長手方向に直線状にのびる略柱状であり、
前記連結部14の下部において前記第1綴杆20及び前記第2綴杆30の基部と近接した位置に軸部16を連設し、
第1綴杆20及び第1連結部50は、第1綴具部材18Aに形成され、第2綴杆30及び第2連結部60は、第2綴具部材18Bに形成され、
前記軸部16は、前記連結部14(第1連結部50と第2連結部60)の長手方向にのびて一対の連結部14(第1連結部50と第2連結部60と)を連結し、前記第1綴杆20の自由端20bと第2綴杆30の自由端30bとを合わせて閉鎖するとき及び第1綴杆20の自由端20bと第2綴杆30の自由端30bとを離間させるときに回転中心となるものであって、シャフト部100の受け部とシャフト部100とを備え、
前記受け部は、第1連結部50に連設された複数の第1受け部80と第2連結部60に連設された複数の第2受け部90とから構成され、前記シャフト部100は、前記連結部14の長手方向に沿って、向こう側から手前側に連続してのび、第1綴具部材と第2綴具部材とを連結し、
前記第1受け部80及び第2受け部90は、前記連結部14の長手方向に間欠的に形成され、半割杆20A及び半割杆30Aが前記シャフト部100を中心にして回転し且つ第1綴杆20及び第2綴杆30を開閉するときに長手方向に相対変位するように形成され、
第1受け部80は、合成樹脂により、第1綴具部材18Aと一体に形成され、第2受け部90は、合成樹脂により、第2綴具部材18Bと一体に形成され、
前記第1連結部50の中央あたりに存する前記第1綴具部材18Aの第1収容部82と前記第2連結部60の中央あたりに存する第2綴具部材18Bの第2収容部92との間に、前記シャフト部100の長手方向にテンション(引張力又は圧縮力)をかける弾発部材102が、圧縮された状態で介装され、弾発部材102は、鋼線をコイル形に巻いて作られたコイルバネにより形成され、弾発部材102は、綴杆部12を閉じているときには、第1綴杆の綴杆係止部22と第2綴杆の綴杆係止部32とを係合させる方向に作用しており、
第1綴杆20を構成する半割杆20Aの先端に形成された第1綴杆の綴杆係止部22を構成する先端の第1綴杆の凸部24及びその第1綴杆の凸部24に続く第1綴杆の凹部26と、第2綴杆30を構成する半割杆30Aの第2綴杆の綴杆係止部32を構成する先端の第2綴杆の凸部34及びその先端の第2綴杆の凸部34に続く第2綴杆の凹部36とは、第1綴杆20と第2綴杆30とを閉じたとき係合するように逆方向に向けて突き出しあるいは凹み形成され、
前記第1綴杆の綴杆係止部22及び第2綴杆の綴杆係止部32は、第1綴杆20及び第2綴杆30の回転方向と交差する方向に脱係しないように、第1綴杆20及び第2綴杆30の回転方向にのびる脱係防止部28及び脱係防止部38が形成されており、
脱係防止部28は、頂部側において手前側に向けて突き出る鉤鼻状係止凸部28aと、基部20a側において向こう側に向けて凹む係止凹部28bとを有し、自由端側の係止凸部28aから続いて基部20a側に係止凹部28bが形成され、
脱係防止部38は、頂部側において向こう側に向けて突き出る鉤鼻状係止凸部38aと、基部30a側において手前側に向けて凹む係止凹部38bとを有し、自由端側の係止凸部38aから続いて基部30a側に係止凹部38bが形成され、
第1綴杆20と第2綴杆30とを閉じたとき、脱係防止部28の係止凸部28aは脱係防止部38の係止凹部38bに嵌合され、脱係防止部38の係止凸部38aは脱係防止部28の係止凹部28bに嵌合され、係止凸部28aと係止凸部38aとは、第1綴杆20と第2綴杆30とを回転方向に引いたときに、突き当たる、綴具10。」

2.甲第2号証
甲第2号証には、以下のとおり開示されている。
(1)「【請求項1】 外縁に沿って所定間隔に複数の第1綴環を起立する細長い第1基板と、前記第1基板の外縁とは反対の外縁に沿って所定間隔に複数の第2綴環を起立する第2基板とよりなり、前記第1および第2基板を互いに組み合わせることにより前記第1および第2綴環を閉鎖するようにしたルースリーフ綴具において、前記第1基板は、綴具の長手方向に沿った所定の間隔で多数個所に長手方向を横断する貫通孔と前記第1綴環側の外縁上面に所定の間隔で多数の係止凹所を有し、前記第2基板は前記貫通孔にそれぞれ嵌合する多数のピンと綴環の閉鎖位置で前記凹所にそれぞれ嵌合する多数の係止突起を有していることを特徴とする、ルースリーフ綴具。」
(2)「【0009】さらに、第1基板1は、綴具の長手方向に沿った所定の間隔(図では隣接した綴環の中央位置)で第1綴環1側の外縁上面に多数(この例では8個)の係止凹所15を有し、第2基板2は綴環3、4の閉鎖位置で凹所15にそれぞれ嵌合する多数(この例では8個)の係止突起16を有している。係止突起16は丸みのついた先端を有する。突起16は両基板1、2が互いに組み付けられた状態を保持するためのロック手段として役立つが、両基板を互いに図2?3において水平方向の離脱方向に所定のレベル以上の強さで引っ張ったときに容易に外れるように定める。」

上記(1)、及び(2)の開示事項を総合すると、甲第2号証には、以下のとおりの事項が示されていると認められる(以下「甲第2号証発明」という。)。
「外縁に沿って所定間隔に複数の第1綴環を起立する細長い第1基板と、前記第1基板の外縁とは反対の外縁に沿って所定間隔に複数の第2綴環を起立する第2基板とよりなり、前記第1および第2基板を互いに組み合わせることにより前記第1および第2綴環を閉鎖するようにしたルースリーフ綴具において、前記第1基板は、前記第1綴環側の外縁上面に所定の間隔で多数の係止凹所を有し、前記第2基板は綴環の閉鎖位置で前記凹所にそれぞれ嵌合する多数の係止突起を有しており、
突起は両基板が互いに組み付けられた状態を保持するためのロック手段であるが、両基板を互いに水平方向の離脱方向に所定のレベル以上の強さで引っ張ったときに容易に外れるように定めているルースリーフ綴具。」

3.甲第3号証
甲第3号証には、以下のとおり開示されている。
(1)「【請求項1】 所定間隔で複数の綴環を起立した細長い第1部材と、前記複数の綴環に衝合する綴環を起立した細長い第2部材とを共通の軸線で枢着したルースリーフ綴具において、前記第1部材は前記軸線に沿って所定間隔で張出部と切欠部とを有し、前記第2部材は、前記第1部材の張出部と凹入部とそれぞれ嵌合するように構成された凹入部と張出部とを有し、前記第1及び第2部材の前記共通軸線上で隣接する凹入部と張出部の対向面には、互いに弾発嵌合する突起及び凹所が形成され、また第1及び第2部材を閉鎖時に係止するために両端部に相互に係脱し得る第1及び第2のロック部とをそれぞれ有することを特徴とする、ルースリーフ綴具。」
(2)「【請求項2】 第1のロック部は第1及び第2の部材の一方の端部に突設した鈎状突起であり、第2のロックは他方の部材の端部において弾性板部とその端部に前記鈎状突起に係合する様に設けた他の係止突起からなっている、請求項1に記載の綴具。」
(3)「【0007】
第1部材11は軸線19に沿って所定間隔で張出部23と切欠部25とを有し、第2部材13は軸線21に沿って所定間隔で、張出部23と切欠部25と相補形状をなす切欠部27と張出部29とを有する。綴環15と綴環17が対応した位置に整列される時、第1部材11の張出部23はそれらに対応した位置に設けられた第2部材13の切欠部27に嵌合でき、第1部材11の切欠部25はそれらに対応した位置に設けられた第2部材13の張出部29に嵌合できる。両部材の切欠部と張出部の境界はそれぞれの軸線に直角な平面となっている。」
(4)「【0010】
次に本考案の綴具の組み込み及び使用方法を説明する。まず、第1及び第2部材11、13を図4、6のように対向整列させ、張出部23、29をそれぞれ切欠部27、25に挿入し、更に両部材11、13の軸線19、21を一致するように押圧して小突起31と凹所33に無理ばめする。こうして両部材11、13は共通軸線19、21の周りに枢動し得る。
この綴具を閉じるには単に綴環15、17を指で押してそれらの先端を互いに衝合させると、第1部材11の弾性板部39の弾性により鈎状突起41が第2部材13の係止突起43に係止する。
逆に綴環を開放するには弾性板部39を上に引き揚げると鈎状突起41は係止突起43から外れ、そのまま引き上げると綴環は開く。」

上記(1)?(4)の開示事項を総合すると、甲第3号証には、以下のとおりの発明が示されていると認められる(以下「甲第3号証発明」という。)。
「所定間隔で複数の綴環を起立した細長い第1部材と、前記複数の綴環に衝合する綴環を起立した細長い第2部材とを共通の軸線で枢着したルースリーフ綴具において、
前記第1部材は前記軸線に沿って所定間隔で張出部23と切欠部25とを有し、前記第2部材は、前記第1部材の張出部23と切欠部25とそれぞれ嵌合するように構成された切欠部27と張出部29とを有し、第1及び第2部材を閉鎖時に係止するために両端部に相互に係脱し得る第1及び第2のロック部とをそれぞれ有し、
第1のロック部は第1及び第2の部材の一方の端部に突設した鈎状突起であり、第2のロックは他方の部材の端部において弾性板部とその端部に前記鈎状突起に係合する様に設けた他の係止突起からなっており、
この綴具を閉じるには単に綴環を指で押してそれらの先端を互いに衝合させると、第1部材の弾性板部の弾性により鈎状突起が第2部材の係止突起に係止し、逆に綴環を開放するには弾性板部を上に引き揚げると鈎状突起は係止突起から外れ、そのまま引き上げると綴環は開く、ルースリーフ綴具。」

4.甲第4号証
甲第4号証には、以下のとおり開示されている。
(1)「【請求項1】
用紙の端縁部に形成された穿孔を綴じるプラスチック製バインダーであって、背骨部の長手方向両側面に複数の開閉できるリング部を一定間隔で配列したバインダーにおいて、
一つまたは複数のリング部の背骨部直交部位の外周面側に平面部を形成し、バインド処理機のバインダー保持部材に形成された平面テーブルにて前記平面部を受けることにより、規定の姿勢で保持されるように構成したことを特徴とするバインダー。」
(2)「【0026】
図10は、リング部の先端の嵌合機構を示し、(a)(c)に示すように、上方へ隆起するフック部17を設けた1/3リング部14の内周面左右両側にステップ形の段差部24を形成し、キャッチ部18を設けた1/3リング部15の外周面の左右両側には、他方の1/3リング部14の段差部24と対応する段差部25を形成して、双方の段差部24,25を重ねると一体化する相欠け継ぎ構造としている。」
(3)「【0027】
1/3リング部14のフック部17は、その左右の段差部24よりも奥へ後退した位置にあり、段差部24との間にはスリットが設けられていて、フック部17は自由に撓むことができる。」
(4)「【0028】
他方の1/3リング部15のキャッチ部18は、その後端の垂直壁にフック部17を係合させるもので、垂直壁の位置は左右の段差部25よりも奥へ後退した位置にあるが、キャッチ部18の先端は段差部25より前方へ突出している。」
(5)「【0029】
対向する一対の1/3リング部14,15を嵌合させるべく接近させると、先ず一方の1/3リング部15のキャッチ部18の先端が他方の1/3リング部14の左右の段差部24の間に入って、横方向の位置決めが行われるとともに、双方の段差部24,25が摺接して縦方向(半径方向)の位置が合い、さらに一対の1/3リング部14,15を閉じていくとフック部17の上向きの爪がキャッチ部18の後端の垂直壁に係合して両者が結合される。」
(6)図10(a)から、「フック部17、及びキャッチ部18は、くさび形である」ことが看取できる。

上記(1)?(6)の開示事項を総合すると、甲第4号証には、以下のとおりの発明が示されていると認められる(以下「甲第4号証発明」という。)。
「背骨部の長手方向両側面に複数の開閉できるリング部を一定間隔で配列したバインダーにおいて、
リング部の先端の嵌合機構であって、上方へ隆起するくさび形のフック部17を設けた1/3リング部14の内周面左右両側にステップ形の段差部24を形成し、くさび形のキャッチ部18を設けた1/3リング部15の外周面の左右両側には、他方の1/3リング部14の段差部24と対応する段差部25を形成して、双方の段差部24,25を重ねると一体化する相欠け継ぎ構造であり、
フック部17は、その左右の段差部24よりも奥へ後退した位置にあり、段差部24との間にはスリットが設けられていて、フック部17は自由に撓むことができ、
キャッチ部18は、その後端の垂直壁にフック部17を係合させるもので、垂直壁の位置は左右の段差部25よりも奥へ後退した位置にあるが、キャッチ部18の先端は段差部25より前方へ突出しており、
対向する一対の1/3リング部14,15を嵌合させるべく接近させると、先ず一方の1/3リング部15のキャッチ部18の先端が他方の1/3リング部14の左右の段差部24の間に入って、横方向の位置決めが行われるとともに、双方の段差部24,25が摺接して縦方向(半径方向)の位置が合い、さらに一対の1/3リング部14,15を閉じていくとフック部17の上向きの爪がキャッチ部18の後端の垂直壁に係合して両者が結合される、バインダー。」

5.甲第5号証
甲第5号証には、以下のとおり開示されている。
(1)「【請求項1】
背骨部と、背骨部の両側縁に一定間隔で配列された分割リング部と、分割リング部の両端に形成した嵌合手段とを備え、分割リング部の両端を嵌合させてルーズリーフ用紙を綴じる樹脂製バインダーであって、
背骨部の前面または背面のいずれかに一つまたは複数の凹部を設け、他方の面に前記凹部と嵌合対偶をなす凸部を設けて、複数のバインダーを重ねて連結できるように形成したバインダーにおいて、
上記凹部は、上記凸部に嵌合するピン穴部とピン穴部に連続し且つ凸部の外径よりも幅広の溝部からなる横長の溝であり、嵌合状態にある一対のバインダーを相互にスライドさせることによりピン穴部と凸部の嵌合を解除できるように形成したことを特徴とするバインダー。」
(2)「【0011】
図4に示すように、三つの1/3リング部の内周面には周方向の溝16が形成されており、上側1/3リング部14の先端にフック部17が設けられていて、下側1/3リング部15の先端にはフック部17が嵌合するキャッチ部18が形成されている。」
(3)「【0012】
図7は上側1/3リング部14の先端の詳細を示し、外周面先端部をステップ形に切欠いた形状の相欠き継ぎ構造としており、一段下降した段差部19の上に形成した楔形平面形状のフック部17が前方へ突出している。図8は下側1/3リング部15の先端の詳細を示し、上側1/3リング部14に対応する相欠き継ぎ構造であって、内周面先端部を切欠いて段差部20を形成し、外周側にフック部17に対応する楔形のキャッチ部18が形成されていて、キャッチ部18の内底面21にはフック部挿入時にキャッチ部18を弾性変形させてフック部17を受け入れるために周方向のすり割り22が形成されている。」

上記(1)?(3)の開示事項を総合すると、甲第5号証には、以下のとおりの発明が示されていると認められる(以下「甲第5号証発明」という。)。
「分割リング部の両端を嵌合させてルーズリーフ用紙を綴じる樹脂製バインダーであって、
上側1/3リング部14の先端にフック部17が設けられていて、下側1/3リング部15の先端にはフック部17が嵌合するキャッチ部18が形成され、
上側1/3リング部14の先端は、外周面先端部をステップ形に切欠いた形状の相欠き継ぎ構造としており、一段下降した段差部19の上に形成した楔形平面形状のフック部17が前方へ突出しており、
下側1/3リング部15の先端は、上側1/3リング部14に対応する相欠き継ぎ構造であって、内周面先端部を切欠いて段差部20を形成し、外周側にフック部17に対応する楔形のキャッチ部18が形成されていて、キャッチ部18の内底面21にはフック部挿入時にキャッチ部18を弾性変形させてフック部17を受け入れるために周方向のすり割り22が形成されている、樹脂製バインダー。」


第6 当審の判断
1.無効理由1について
(1)対比
本件特許発明1と甲第1号証発明とを対比すると、
後者における「『第1連結部50』、及び『第2連結部60』」は、その構造、機能、作用等からみて、前者における「基板(42、44)」に相当し、以下同様に、「『第1綴杆20』、及び『第2綴杆30』」は「半リング(20、30)」に、「『第1受け部80』、及び『第2受け部90』」は「軸受(14)」に、「シャフト部100」は「軸(100)」に、「セルリング式ノート又は綴じ穴のあるリーフを綴じるファイル・バインダ類に用いられる綴具」は「ルーズリーフ綴具」に、「コイルバネ」は「コイルばね(102)」に、「(第1綴杆20を構成する半割杆20Aの先端に形成された第1綴杆の)綴杆係止部22」は「一方の半リング先端部(20a)」に、「(第2綴杆30を構成する半割杆30Aの第2綴杆の)綴杆係止部32」は「他方の半リング先端部(20b)」に、それぞれ相当する。
また、後者における「第1連結部50、第2連結部60」は、軸部16を中心にして左右に分かれ、向こう側から手前側に連続して長手方向に直線状にのびる略柱状であるから、「並べて配置された細長い一対の」ものといえる。
また、後者における「第1綴杆20、及び第2綴杆30」は、連結部14(第1連結部50、第2連結部60)から突設され、第1綴杆20と第2綴杆30とを閉じたとき係合するものであって、第1綴具部材18A(第1綴杆20、第1連結部50)と第1受け部80、及び第2綴具部材18B(第2綴杆30、第2連結部60)と第2受け部90は、それぞれ一体に形成されているから、「第1連結部50、第2連結部60にそれぞれ一体に支持されていて、互いに先端が整列衝合して閉リングとなる」ものといえる。
また、後者における「軸部16」は、連結部14(第1連結部50、第2連結部60)の下部に連設され、第1綴杆20の自由端20bと第2綴杆30の自由端30bとを合わせて閉鎖するとき及び第1綴杆20の自由端20bと第2綴杆30の自由端30bとを離間させるときに回転中心となるものであって、シャフト部100の受け部(第1受け部80、第2受け部90)とシャフト部100とを備え、前記第1受け部80及び第2受け部90は、前記連結部14の長手方向に間欠的に形成され、半割杆20A及び半割杆30Aが前記シャフト部100を中心にして回転し且つ第1綴杆20及び第2綴杆30を開閉するときに長手方向に相対変位するように形成されるから、後者における「第1受け部80、第2受け部90」は、「第1連結部50、第2連結部60の裏面側にそれぞれ一体形成され、第1連結部50、及び第2連結部60の間に共通の軸線を有する複数の軸受であってそれらの間に第1綴杆20と第2綴杆30とが互いに整列する第1位置と整列しない第2位置との間で第1連結部50、及び第2連結部60がその長さ方向に相対移動可能なように設定された相互間隙を有する」ものといえ、また、「シャフト部100」は、「第1連結部50、及び第2連結部60基板の裏面側で複数の第1受け部80、及び第2受け部90に支承された」ものといえる。
また、後者における「弾発部材102」は、コイルバネにより形成され、シャフト部100の長手方向にテンション(引張力又は圧縮力)をかけており、綴杆部12を閉じているときには、第1綴杆の綴杆係止部22と第2綴杆の綴杆係止部32とを係合させる方向に作用しているから、「コイルバネ」は、「第1連結部50、及び第2連結部60を第1綴杆20、及び第2綴杆30が整列する第1位置へ向けて常時付勢する」といえる。
したがって、両者は、
「並べて配置された細長い一対の基板と、これ等の基板にそれぞれ一体に支持されていて、互いに先端が整列衝合して閉リングとなる複数の半リングと、前記基板の裏面側にそれぞれ一体形成され、両基板の間に共通の軸線を有する複数の軸受であってそれらの間に前記半リングが互いに整列する第1位置と整列しない第2位置との間で基板がその長さ方向に相対移動可能なように設定された相互間隙を有する複数の軸受と、前記基板の裏面側で前記複数の軸受に支承された軸と、を有するルーズリーフ綴具において、
前記両基板を前記半リングが整列する前記第1位置へ向けて常時付勢するコイルばねを設けた、ルーズリーフ綴具。」
の点で一致し、以下の点で相違している。
[相違点1]
本件特許発明1は、「一方の前記基板に、前記半リング(20、30)の閉鎖状態で他方の基板の外縁部に係止する鈎形部(104)を設け、他方の前記基板に、前記半リング(20、30)が非整列の第2位置へ偏倚されたときに前記鈎形部(104)が落ち込んで該外縁部との係止状態から解放するロック解除溝(108)を設け」たのに対し、甲第1号証発明は、そのようなものではない点。
[相違点2]
本件特許発明1は、「さらに、一方の半リング先端部(20a)には、軸の軸線に沿った方向に見た場合に上下方向の凹凸部を、他方の半リング先端部(20b)には前記凹凸部と相補的な上下方向の凸凹部を設けた」のに対し、甲第1号証発明は、第1綴杆20を構成する半割杆20Aの先端に形成された第1綴杆の綴杆係止部22を構成する先端の第1綴杆の凸部24及びその第1綴杆の凸部24に続く第1綴杆の凹部26と、第2綴杆30を構成する半割杆30Aの第2綴杆の綴杆係止部32を構成する先端の第2綴杆の凸部34及びその先端の第2綴杆の凸部34に続く第2綴杆の凹部36とは、第1綴杆20と第2綴杆30とを閉じたとき係合するように逆方向に向けて突き出しあるいは凹み形成され、前記第1綴杆の綴杆係止部22及び第2綴杆の綴杆係止部32は、第1綴杆20及び第2綴杆30の回転方向と交差する方向に脱係しないように、第1綴杆20及び第2綴杆30の回転方向にのびる脱係防止部28及び脱係防止部38が形成されており、脱係防止部28は、頂部側において手前側に向けて突き出る鉤鼻状係止凸部28aと、基部20a側において向こう側に向けて凹む係止凹部28bとを有し、自由端側の係止凸部28aから続いて基部20a側に係止凹部28bが形成され、脱係防止部38は、頂部側において向こう側に向けて突き出る鉤鼻状係止凸部38aと、基部30a側において手前側に向けて凹む係止凹部38bとを有し、自由端側の係止凸部38aから続いて基部30a側に係止凹部38bが形成され、第1綴杆20と第2綴杆30とを閉じたとき、脱係防止部28の係止凸部28aは脱係防止部38の係止凹部38bに嵌合され、脱係防止部38の係止凸部38aは脱係防止部28の係止凹部28bに嵌合され、係止凸部28aと係止凸部38aとは、第1綴杆20と第2綴杆30とを回転方向に引いたときに、突き当たるそのようなものである点。

(2)判断
上記相違点について以下検討する。
ア.相違点1について
甲第2号証発明は、上記「第5 2.」のとおりであって、甲第2号証発明における「『第1基板』、及び『第2基板』」は、本件特許発明1における「基板(42、44)」に、相当し、以下同様に、「『第1綴環』、及び『第2綴環』」は「半リング(20、30)」に、「係止突起」は「鈎形部(104)」に、「ルースリーフ綴具」は「ルーズリーフ綴具」に、それぞれ相当する。
また、甲第2号証発明において、係止凹所に嵌合している突起は両基板を互いに水平方向の離脱方向に所定のレベル以上の強さで引っ張ったときに容易に外れるように定めているから、「係止凹所に嵌合している突起は係止凹所から外れて係止状態から解放されるもの」であるといえる。
しかしながら、甲第2号証発明の「係止突起(鈎形部(104))」は、第1基板、及び第2基板(基板(42、44))が閉鎖状態のとき、第1基板(他方の基板)の係止凹所に係止するものであって、本件特許発明1のように「他方の基板の外縁部に係止するもの」ではなく、また、甲第2号証発明は、第1綴環、及び第2綴環(半リング(20、30))を互いに水平方向の離脱方向に引っ張ったときに「係止凹所に嵌合している突起が係止凹所から外れて係止状態から解放されるもの」であって、本件特許発明1のように「半リング(20、30)が非整列の第2位置へ偏倚されたときに鈎形部(104)が落ち込んで該外縁部との係止状態から解放するロック解除溝(108)を設けたもの」ではない。
してみると、甲第2号証発明は、上記相違点1に係る本件特許発明1の「一方の前記基板に、前記半リング(20、30)の閉鎖状態で他方の基板の外縁部に係止する」鈎形部(104)を設け、「他方の前記基板に、前記半リング(20、30)が非整列の第2位置へ偏倚されたときに前記鈎形部(104)が落ち込んで該外縁部との係止状態から解放するロック解除溝(108)を設け」たとの発明特定事項を備えるものではない。
また、甲第3号証発明は、上記「第5 3.」のとおりであって、甲第3号証発明における「『張出部23と切欠部25』、及び『切欠部27と張出部29』」は、本件特許発明1における「基板(42、44)」に、相当し、以下同様に、「綴環」は「半リング(20、30)」に、「第1のロック部」は「鈎形部(104)」に、「ルースリーフ綴具」は「ルーズリーフ綴具」に、それぞれ相当する。
また、甲第3号証発明において、綴環を開放するには弾性板部を上に引き揚げると第1のロック部の鈎状突起は第2のロック部の係止突起から外れ、そのまま引き上げると綴環は開くから、「第2のロック部の係止突起に係合している第1のロック部の鈎状突起は前記係止突起から外れて係止状態から解放されるもの」であるといえる。
しかしながら、甲第3号証発明の「第1のロック部(鈎形部(104))」は、張出部23と切欠部25、及び切欠部27と張出部29(基板(42、44))が閉鎖状態のとき、切欠部27と張出部29(他方の基板)の第2のロック部に係止するものであって、本件特許発明1のように「他方の基板の外縁部に係止するもの」ではなく、また、甲第3号証発明は、「第2のロック部の係止突起に係合している第1のロック部の鈎状突起は前記係止突起から外れて係止状態から解放されるもの」であって、本件特許発明1のように「半リング(20、30)が非整列の第2位置へ偏倚されたときに鈎形部(104)が落ち込んで該外縁部との係止状態から解放するロック解除溝(108)を設けたもの」ではない。
してみると、甲第3号証発明は、上記相違点1に係る本件特許発明1の「一方の前記基板に、前記半リング(20、30)の閉鎖状態で他方の基板の外縁部に係止する」鈎形部(104)を設け、「他方の前記基板に、前記半リング(20、30)が非整列の第2位置へ偏倚されたときに前記鈎形部(104)が落ち込んで該外縁部との係止状態から解放するロック解除溝(108)を設け」たとの発明特定事項を備えるものではない。
してみると、甲第1号証発明に甲第2号証発明、及び甲第3号証発明を適用したとしても、上記相違点1に係る本件特許発明1の発明特定事項を導き出すことはできない。
また、上記相違点1に係る本件特許発明1の発明特定事項が、当業者にとって設計事項であるとする根拠もない。
そして、本件特許発明1は、上記相違点1に係る本件特許発明1の発明特定事項を具備することにより、本件特許細書に記載の「ロック部材104とロック解除溝106との組合せのため、半リング20、30の先端が鈎形でなくても半リング同士を閉鎖状態に維持することができ、先端が一部重畳する任意の形状に形成することができる利点が得られ、成形金型の構造もより単純になる」(段落【0024】)という作用効果を奏するものである。
したがって、相違点1に係る本件特許発明1の発明特定事項は、甲第1号証発明、甲第2号証発明、及び甲第3号証発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
そして、甲第1号証発明において、他に相違点1に係る本件特許発明1の発明特定事項を備えるものとなすことを、当業者が容易に想到し得たといえる根拠も見当たらない。
よって、甲第1号証発明において、上記相違点1に係る本件特許発明1の発明特定事項を備えるものとすることについて、当業者が容易に想到し得るものではない。

イ.相違点2について
相違点2に係る本件特許発明1の発明特定事項に関して、被請求人は、「本件請求項1に係る特許発明では、図11に例示する実施形態のように、一方の半リング先端部に、基板の横断面で視て上下方向(図13の上下方向)に突出し又は窪む凹凸部を設けるとともに、他方の半リング先端部に、上記の凹凸部と相補的な凸凹部を設けるものであり、図示の実施形態では、半リングの閉鎖時に、これらの凹凸部と凸凹部が互いに整合してリングを形成します。」(平成27年11月11日付け口頭審理陳述要領書2頁22行?3頁1行)と主張する。
また、本件特許明細書には、図11に例示する実施形態に関して、「図1?13に示した実施例では両半リング20、30の先端は同一に形成され、互いに180度反転した状態で使用されると先端同士は滑らかに接触する。図9と図11は半リングの詳細を示し、先端が表裏に斜行面23を有し、それらの間に半リングの中心線に沿う垂直面25の片側に沿って斜行面23から突出する突起部26と、垂直面25の他側に沿って凹入する凹入部24から構成される。半リング20と30とは鉤形ではなく、単に接触しているだけであるので、半リング同士の滑らかな開閉が可能となる。なお突起26の先端と、凹入部24の内端は同じ丸みを有し、両半リングの衝接時にぴったりと嵌合するようになっている。また、図11に示したように半リングは基板42と44を矢印で示す縦方向に相対移動した時にずれ、逆にずれた位置から反対方向に戻すときちんと衝合する。」(段落【0017】)と記載され、図11を参酌すると、凹入部24と突起部26は、軸の軸線に向けて、「凹み」、及び「突出」している。
してみれば、本件特許明細書の図11に例示する実施形態においては「半リング(20、30)のそれぞれに設けられた『凹入部24と突起部26』、及び『突起部26と凹入部24』」は、本件特許発明1における「一方の半リング先端部(20a)に設けられた軸の軸線に沿った方向に見た場合に上下方向の凹凸部」、及び「他方の半リング先端部(20b)に設けられた凹凸部と相補的な上下方向の凸凹部」に包含されるものである。
一方、甲第1号証発明は、第1綴杆20を構成する半割杆20Aの先端に形成された第1綴杆の綴杆係止部22を構成する先端の第1綴杆の凸部24及びその第1綴杆の凸部24に続く第1綴杆の凹部26と、第2綴杆30を構成する半割杆30Aの第2綴杆の綴杆係止部32を構成する先端の第2綴杆の凸部34及びその先端の第2綴杆の凸部34に続く第2綴杆の凹部36とは、第1綴杆20と第2綴杆30とを閉じたとき係合するように逆方向に向けて突き出しあるいは凹み形成されており、図3?5を参酌すると、凹部26、36と凸部24、34は、軸部の軸線に向けて、「凹み」、及び「突出」している。
してみれば、甲第1号証発明における「凹部」、及び「凸部」と本件特許明細書の図11に例示する実施形態における「凹入部」、及び「突起部」とは、それぞれ軸(甲第1号証発明の「軸部」)の軸線に向けて、「凹み」、及び「突出」する点で、何ら変わることはない。
以上を踏まえれば、甲第1号証発明における「第1綴杆20、及び第2綴杆30のそれぞれに設けられた『凹部26と凸部24』、及び『凸部34と凹部36』」は、本件特許発明1における「一方の半リング先端部(20a)に設けられた軸の軸線に沿った方向に見た場合に上下方向の凹凸部」、及び「他方の半リング先端部(20b)に設けられた凹凸部と相補的な上下方向の凸凹部」に包含されるものである。
したがって、上記相違点2に係る本件特許発明1の発明特定事項は、甲第1号証発明に示されているから、上記相違点2は、実質的な相違点ではない。

(3)小括
よって、甲第1号証発明において、上記相違点1に係る本件特許発明1の発明特定事項を備えるものとすることが、当業者にとって容易に想到し得るものではないから、本件特許発明1についての特許は、無効理由1により無効とすることはできない。

2.無効理由2について
(1)対比
本件特許発明8と甲第1号証発明とを対比すると、
後者における「『第1連結部50』、及び『第2連結部60』」は、その構造、機能、作用等からみて、前者における「基板」に相当し、以下同様に、「『第1綴杆20』、及び『第2綴杆30』」は「半リング(20a、30b)」に、「凹部26、36」は「凹部(114)」に、「凸部24、34」は「低板(112)」に、「シャフト部100」は「軸(100)」に、「セルリング式ノート又は綴じ穴のあるリーフを綴じるファイル・バインダ類に用いられる綴具」は「綴具」に、それぞれ相当する。
また、後者における「脱係防止部28、38」と前者における「半リング(20a)の先端のくさび形部(111)」とは、「半リングの先端の自由端部」との概念で共通する。
また、後者における「脱係防止部28、38」は、第1綴杆20と第2綴杆30とを閉じたとき、脱係防止部28の係止凸部28aが脱係防止部38の係止凹部38bに嵌合され、脱係防止部38の係止凸部38aが脱係防止部28の係止凹部28bに嵌合され、係止凸部28aと係止凸部38aとは、第1綴杆20と第2綴杆30とを回転方向に引いたときに、突き当たるから、「嵌合かつ衝合するように形成されている」といえる。
また、後者は、第1綴杆20と第2綴杆30とを閉じたとき、第1綴杆20の凸部24及び凹部26と第2綴杆30の凸部34及び凹部36とが、逆方向に向けて突き出しあるいは凹み形成されて係合するから、第1綴杆20の綴杆係止部22の凸部24の上面が対合する第2綴杆30の綴杆係止部32の凹部36、すなわち鉤鼻状係止凸部38aの底面に接触し、第2綴杆30の綴杆係止部32の凸部34の上面が対合する第1綴杆20の綴杆係止部22の凹部26、すなわち鉤鼻状係止凸部28aの底面に接触しているといえる。
なお、後者における綴杆係止部22、32は、頂部側において手前側に向けて突き出る鉤鼻状係止凸部28a,38aと、基部20a、30a側において向こう側に向けて凹む係止凹部28b、38bとを有し、自由端側の係止凸部28a、38aから続いて基部20a、30a側に係止凹部28b、38bが形成されているものであって、つまり鈎形状のような凹凸の曲がりくねった形状であって、くさび形ではないから、前者における「くさび形部(111)」に相当するものではないし、同様に、後者における「綴杆係止部22と綴杆係止部32とが嵌合かつ衝合するそれぞれの面」も、前者における「くさび形部(111)の斜行面(115、118)」に相当するものではない。
また、審判請求人も認める(平成27年12月10日付け上申書5頁1?2行、5?6行)ように、後者における凸部24、34は、上記のとおり、前者における低板(112)に相当するものであるから、前者における凸部(113、116)に相当するものではない。
したがって、両者は、
「一対の基板と該基板に支持された複数の半リングとからなり、各基板の半リングの先端の自由端部は、他方の基板の対合する半リングの先端の自由端部と嵌合且つ衝合するように形成され、該半リングの自由端部の下面には凹部が形成され、また前記半リングの自由端部に接して低板が設けられ、その上面が対合する半リングの自由端部の底面に接触できるように構成された、綴具。」の点で一致し、以下の点で相違している。
[相違点3]
本件特許発明1は、各基板の半リング(20a)の先端の「くさび形部(111)の斜行面(115)は、」他方の基板の対合する半リング(30a)の先端の「くさび形部(119)の斜行面(118)」と嵌合且つ衝合するように形成され、該半リング(20a)の「くさび形部(111)の下面には凸部(113)」と凹部(114)が形成され、「この凸部(113)は対合する半リング(30a)の上面の凹部(117)に嵌合でき、」凹部(114)には「半リング(30a)の凸部(116)が嵌合しうるように形成され、」また前記半リング(20a)の「くさび形部(111)の斜行面(115)側に」接して低板(112)が設けられ、その上面が対合する半リング(30a)の「くさび形部(119)の」底面(120)に接触できるように構成されたのに対し、甲第1号証発明は、第1綴杆20を構成する半割杆20Aの先端に形成された第1綴杆の綴杆係止部22を構成する先端の第1綴杆の凸部24及びその第1綴杆の凸部24に続く第1綴杆の凹部26と、第2綴杆30を構成する半割杆30Aの第2綴杆の綴杆係止部32を構成する先端の第2綴杆の凸部34及びその先端の第2綴杆の凸部34に続く第2綴杆の凹部36とは、第1綴杆20と第2綴杆30とを閉じたとき係合するように逆方向に向けて突き出しあるいは凹み形成され、前記第1綴杆の綴杆係止部22及び第2綴杆の綴杆係止部32は、第1綴杆20及び第2綴杆30の回転方向と交差する方向に脱係しないように、第1綴杆20及び第2綴杆30の回転方向にのびる脱係防止部28及び脱係防止部38が形成されており、脱係防止部28は、頂部側において手前側に向けて突き出る鉤鼻状係止凸部28aと、基部20a側において向こう側に向けて凹む係止凹部28bとを有し、自由端側の係止凸部28aから続いて基部20a側に係止凹部28bが形成され、脱係防止部38は、頂部側において向こう側に向けて突き出る鉤鼻状係止凸部38aと、基部30a側において手前側に向けて凹む係止凹部38bとを有し、自由端側の係止凸部38aから続いて基部30a側に係止凹部38bが形成され、第1綴杆20と第2綴杆30とを閉じたとき、脱係防止部28の係止凸部28aは脱係防止部38の係止凹部38bに嵌合され、脱係防止部38の係止凸部38aは脱係防止部28の係止凹部28bに嵌合され、係止凸部28aと係止凸部38aとは、第1綴杆20と第2綴杆30とを回転方向に引いたときに、突き当たるそのようなものである点。

(2)判断
上記相違点3について以下検討する。
甲第4号証発明は、上記「第5 4.」のとおりであって、甲第4号証発明における「背骨部」は、本件特許発明1における「基板(42、44)」に、相当し、以下同様に、「『くさび形のフック部17』、及び『くさび形のキャッチ部18』」は「くさび形部(111、119)」に、「バインダー」は「綴具」に、それぞれ相当する。
また、甲第4号証発明における「『くさび形のフック部17』、及び『くさび形のキャッチ部18』」は、くさび形であるから、斜行面を備えるものであることは明からである。
そして、甲第4号証発明は、リング部同士を嵌合させる場合、先ずキャッチ部18の先端が段差部24の間に入って、横方向の位置決めが行われるとともに、双方の段差部24,25が摺接して縦方向(半径方向)の位置が合い、さらに一対のリング部14,15を閉じていくとフック部17の上向きの爪がキャッチ部18の後端の垂直壁に係合して、両者が結合されるものである。
してみると、甲第4号証発明におけるくさび形のフック部17、及びくさび形のキャッチ部18は、斜行面を備えるものではあるが、フック部17の斜行面とキャッチ部18の斜行面とが嵌合かつ衝合するものではなく、つまり本件特許発明8のように半リング(20a)の先端のくさび形部(111)の斜行面(115)は、他方の基板の対合する半リング(30a)の先端のくさび形部(119)の斜行面(118)と「嵌合且つ衝合するように形成され」るものではない。
また、甲第4号証発明は、フック部17の上向きの爪がキャッチ部18の後端の垂直壁に係合して両者が結合されるものであるから、本件特許発明8のように半リング(20a)のくさび形部(111)の「下面には凸部(113)と「凹部(114)が形成され、この凸部(113)は対合する半リング(30a)の上面の凹部(117)に嵌合でき、凹部(114)には半リング(30a)の凸部(116)が嵌合しうるように形成され」るものではない。
また、甲第4号証発明は、本件特許発明8のように「低板(112)」が設けられていないものであって、当然「半リング(20a)のくさび形部(111)の斜行面(115)側に接して低板(112)が設けられ、その上面が対合する半リング(30a)のくさび形部(119)の底面(120)に接触できるように構成され」るものではない。
したがって、甲第4号証発明は、上記相違点3に係る本件特許発明の各基板の半リング(20a)の先端のくさび形部(111)の斜行面(115)は、他方の基板の対合する半リング(30a)の先端のくさび形部(119)の斜行面(118)と「嵌合且つ衝合するように」形成され、該半リング(20a)のくさび形部(111)の「下面には凸部(113)と凹部(114)が形成され、この凸部(113)は対合する半リング(30a)の上面の凹部(117)に嵌合でき、凹部(114)には半リング(30a)の凸部(116)が嵌合しうるように形成され、」また前記半リング(20a)のくさび形部(111)の「斜行面(115)側に接して低板(112)が設けられ、その上面が対合する半リング(30a)のくさび形部(119)の」底面(120)に接触できるように構成された」との発明特定事項を備えるものではない。
なお、甲第4号証には、「図11(b)は他の実施形態を示し、バインダー41の一対の1/3リング部42,43は略対称形であって、夫々先端の半分を上向きフック部44とし、他の半分を下向きフック部45としてあり、一対の1/3リング部42,43を閉じると、対向する上向きフック部44と下向きフック部45とが係合して一対の1/3リング部42,43が結合される」(段落【0034】)と記載されるものが示されているが、上記相違点3に係る本件特許発明1の発明特定事項を備えるものではない。
また、甲第5号証発明は、上記「第5 5.」のとおりであって、甲第5号証発明における「背骨部」は、本件特許発明1における「基板」に、相当し、以下同様に、「『楔形平面形状のフック部17』、及び『楔形のキャッチ部18』」は「くさび形部(111、119)」に、「樹脂製バインダー」は「綴具」に、それぞれ相当する。
また、甲第5号証発明における「『楔形平面形状のフック部17』、及び『楔形のキャッチ部18』」は、くさび形であるから、斜行面を備えるものであることは明からである。
そして、甲第5号証発明は、リング部同士を嵌合させる場合、楔形平面形状のフック部17と楔形のキャッチ部18とを嵌合させて、両者が結合されるものであるから、楔形平面形状のフック部17の斜行面は、楔形のキャッチ部18の斜行面と嵌合且つ衝合するように形成されているといえる。
しかしながら、甲第5号証発明は、楔形平面形状のフック部17をフック部17に対応する楔形のキャッチ部18に挿入して、両者が嵌合して結合するものであるから、本件特許発明8のように半リング(20a)のくさび形部(111)の「下面には凸部(113)と凹部(114)が形成され、この凸部(113)は対合する半リング(30a)の上面の凹部(117)に嵌合でき、凹部(114)には半リング(30a)の凸部(116)が嵌合しうるように形成され」るものではない。
また、甲第5号証発明は、本件特許発明8のように「低板(112)」が設けられていないものであって、当然「半リング(20a)のくさび形部(111)の斜行面(115)側に接して低板(112)が設けられ、その上面が対合する半リング(30a)のくさび形部(119)の底面(120)に接触できるように構成され」るものではない。
したがって、甲第5号証発明は、上記相違点3に係る本件特許発明の該半リング(20a)のくさび形部(111)の「下面には凸部(113)と凹部(114)が形成され、この凸部(113)は対合する半リング(30a)の上面の凹部(117)に嵌合でき、凹部(114)には半リング(30a)の凸部(116)が嵌合しうるように形成され、」また前記半リング(20a)のくさび形部(111)の「斜行面(115)側に接して低板(112)が設けられ、その上面が対合する半リング(30a)のくさび形部(119)の」底面(120)に接触できるように構成された」との発明特定事項を備えるものではない。
してみると、甲第1号証発明に甲第4号証発明、及び甲第5号証発明を適用したとしても、上記相違点3に係る本件特許発明8の発明特定事項を導き出すことはできない。
また、上記相違点3に係る本件特許発明8の発明特定事項が、当業者にとって設計事項であるとする根拠もない。
そして、本件特許発明8は、上記相違点3に係る本件特許発明8の発明特定事項を具備することにより、本件特許細書に記載の「従来のような強い鈎形態を有する必要がないし、リングの閉鎖がスムースであ」る(段落【0022】)という作用効果を奏するものである。
したがって、相違点3に係る本件特許発明8の発明特定事項は、甲第1号証発明、甲第4号証発明、及び甲第5号証発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
そして、甲第8号証発明において、他に相違点3に係る本件特許発明8の発明特定事項を備えるものとなすことを、当業者が容易に想到し得たといえる根拠も見当たらない。
よって、甲第1号証発明において、上記相違点3に係る本件特許発明1の発明特定事項を備えるものとすることについて、当業者が容易に想到し得るものではない。

(3)小括
よって、甲第1号証発明において、上記相違点3に係る本件特許発明8の発明特定事項を備えるものとすることが、当業者にとって容易に想到し得るものではないから、本件特許発明8についての特許は、無効理由2により無効とすることはできない。

3.無効理由3について
(1)本件特許発明2?7について
本件特許発明2?7は、本件特許発明1の発明特定事項をその発明特定事項の一部とするものであって、上記「1.」のとおり、本件特許発明1が、当業者にとって容易に発明することができたものとはいえないのであるから、同様に本件特許発明2?7は、当業者が容易に発明することができたものとはいえない。

(2)小括
したがって、本件特許発明2?7についての特許は、無効理由3により無効とすることはできない。


第7 むすび
以上のとおりであるから、請求人の主張する理由及び提出した証拠方法によっては本件特許発明1ないし8についての特許を無効にすることはできない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-03-14 
結審通知日 2016-03-17 
審決日 2016-03-30 
出願番号 特願2013-6508(P2013-6508)
審決分類 P 1 113・ 121- Y (B42F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 荒井 隆一  
特許庁審判長 吉村 尚
特許庁審判官 黒瀬 雅一
山本 一
登録日 2013-03-08 
登録番号 特許第5216168号(P5216168)
発明の名称 綴具  
代理人 アクシス国際特許業務法人  
代理人 岡田 全啓  
代理人 扇谷 一  
代理人 竹中 俊夫  
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