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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  C22F
審判 全部無効 1項3号刊行物記載  C22F
審判 全部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C22F
審判 全部無効 特36条4項詳細な説明の記載不備  C22F
管理番号 1314762
審判番号 無効2015-800001  
総通号数 199 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-07-29 
種別 無効の審決 
審判請求日 2014-12-26 
確定日 2016-05-09 
事件の表示 上記当事者間の特許第3030338号発明「高強度難燃性マグネシウム合金の製造方法」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1.手続の経緯
本件特許第3030338号の請求項1?4に係る発明は、平成10年10月 5日に特許出願され、平成12年 2月10日にその特許の設定登録がなされたものである。
これに対し、藤沢昭太郎から平成26年12月26日付けで請求項1?4に係る発明の特許について無効審判の請求がなされたところ、その後の手続の経緯は、おおむね次のとおりである。

答弁書: 平成27年 4月 2日
口頭審理陳述要領書(請求人): 平成27年 6月29日
口頭審理陳述要領書(被請求人): 平成27年 6月29日
口頭審理陳述要領書(請求人): 平成27年 7月13日(差出日)
口頭審理陳述要領書(被請求人): 平成27年 7月13日(差出日)
第1回口頭審理: 平成27年 7月13日
上申書(請求人): 平成27年 8月10日
上申書(被請求人): 平成27年 9月14日
回答書(被請求人): 平成27年11月 5日
上申書(請求人): 平成27年11月25日

第2.本件特許発明
本件無効審判請求の対象となった請求項1?4に係る発明(以下、それぞれ「本件特許発明1?4」、総称するときは「本件特許発明」ということがある。)は、特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

【請求項1】 結晶粒界にカルシウム含有金属間化合物を有する、カルシウム1?10重量%及びアルミニウムを含む難燃性マグネシウム合金を塑性加工処理して該金属間化合物を微細に破砕し、分散させることを特徴とする高強度難燃性マグネシウム合金の製造方法。
【請求項2】 カルシウム1?10重量%を含む難燃性マグネシウム合金を融解し、これにカルシウムの重量の2倍を越えない量のアルミニウムを添加し、冷却して結晶粒界に金属間化合物を生成させたのち、塑性加工処理して該金属間化合物を微細に破砕し、分散させることを特徴とする高強度難燃性マグネシウム合金の製造方法。
【請求項3】 マグネシウム合金を融解し、これに、カルシウムをそれとマグネシウム合金の合計量当り1?10重量%、アルミニウムをカルシウムの重量の2倍を越えない量それぞれ添加し、冷却して結晶粒界に金属間化合物を生成させたのち、塑性加工処理して該金属間化合物を微細に破砕し、分散させることを特徴とする高強度難燃性マグネシウム合金の製造方法。
【請求項4】 押出し又は圧延により塑性加工処理する請求項1、2又は3記載の高強度難燃性マグネシウム合金の製造方法。

第3.請求人の主張と証拠方法
1.請求人の主張
請求人は、証拠方法として甲第1?4号証、参考文献1?9を提出し、審判請求書、口頭審理(平成27年6月29日付け及び同年7月13日差し出しの口頭審理陳述要領書、第1回口頭審理調書を含む。)、及び2通の上申書において、主張したことを整理すると、おおむね次のとおり主張している。
(1)無効理由1
ア 本件特許発明1?4には、押出により塑性加工処理する場合があり、かつ、カルシウムの含有量が1?5重量%のときは、
本件特許発明1?4は、甲第1号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであり、それら発明の特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。
イ 本件特許発明1?4のカルシウムの含有量が5重量%を超えて10重量%のときは、請求項4における塑性加工処理が押出し、圧延のいずれであっても、
本件特許発明1?4は、甲第1号証に記載された発明に、甲第2号証から甲第4号証に記載された発明を組合わせることによって、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、それら発明の特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。
(2)無効理由2
本件特許に係る特許出願は、特許法第36条第4項第1号及び同法同条第6項第1号の規定を満たしておらず、本件特許発明1?4に係る特許は同法123条第1項第4号に該当し無効とすべきものであると主張している。

2.甲号証及び参考文献の記載事項・視認事項
甲号証と参考文献には、それぞれ、次の事項が記載され、見て取れる。

(1)甲第1号証:特公平5-34411号公報
(ア)「1 改良された機械的特性、特に少なくとも290MPaの破壊荷重と少なくとも5%の破壊伸びとを有するマグネシウム合金の経済的製造方法であつて、Al2?9重量%、Ca0.5?5重量%、及びZn、Mn、希土類のうち少なくとも1つを含み(Znは4重量%以下、Mnは1重量%以下、希土類は4重量%以下)、主不純物としてSi<0.6重量%、Cu<0.2重量%、Fe<0.1重量%、Ni<0.01重量%、残余はマグネシウムの組成を有するインゴツトを、噴霧により密集的に堆積し、堆積中の冷却速度を10K/sec?10^(3)K/secとして形成する段階と、該インゴツトを200?350℃での熱間変形により圧密化処理して前記マグネシウム合金を得る段階とを含むことを特徴とする方法。」(特許請求の範囲の請求項1)
(イ)「8 3?25μm、好ましくは5?15μmの粒径のマグネシウムの均質マトリクスと、粒界に優先的に析出した5μm未満の粒径のMg_(17)Al_(12)、Al_(2)Ca、又は、希土類が存在する場合にはMg-希土類、又はAl-希土類型の金属間化合物の粒子とから構成されることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の方法により得られる合金。」(特許請求の範囲の請求項8)
(ウ)「従来技術の説明
慣用鋳造、押し出し(drawing、焼戻し硬化)及び場合により焼鈍し処理により得られるマグネシウムをベースとする市販の合金(例えばASTM規格によるAZ91型、または仏国規格NF A02-003によるGA9型)の機械的特性を改良することが検討された。機械的特性を改良するためには、合金を溶融させ、例えば十分冷却したドラム上に溶融合金を流下することにより非常に迅速に冷却し、その後例えば押し出しにより圧密化(consolidation、強化)する段階を含む迅速凝固法を使用することが知られている。この型の方法は特に大規模で実施するには困難且つ複雑であり、合金が高価になる。
慣用鋳造、押し出し及び場合により焼鈍しにより得られるジルコニウムを含有するZK60(ASTM規格)型の合金を使用することにより良好な機械的特性を得ることも知られているが、このような元素を使用するとやはり費用がかかる。
従来方法に鑑みて、本発明者らはより簡単で、したがつてより経済的であり、慣用鋳造により得られるマグネシウムをベースとする合金の特性(特に機械的特性及び耐食性)を明白に改良することが可能な手段又は方法を使用できるように鋭意研究した。
発明の目的
以上の事実に鑑み、本発明者らは改良された機械的特性(特に290MPa以上、より望ましくは少なくとも330MPaの破壊強さと、少なくとも5%の破壊伸びや非常に良好な耐食性とを兼備した特性)を有するマグネシウムをベースとする合金の経済的製造方法を実現するべく研究した。」(2頁左欄24行?同頁右欄11行)
(エ)「 本発明によると、合金は常にカルシウムとアルミニウムを含有する。
これらの2元素の各々は固体状態でマグネシウムに比較的可溶性である。一方、合金中にこれらの元素が同時に存在すると一般に粒界及びマトリクス中に金属間化合物Al_(2)Caが析出し、この析出は上記特性の改良に関与する。」(2頁右欄31?37行)
(オ)「 本発明の方法は、Ar、He又はN_(2)のような中性ガスを使用して溶融合金を高圧下に微細な液滴状で噴霧(容射)し、次に、一般に固体の合金、又は他の任意の金属(例えばステンレス)から形成される冷却基板上に該液滴を送り、該基板上に凝集させ、閉じた小さい細孔をなお含むが密集且つ密着性の堆積層を形成する。得られたインゴツトは制御された形状を有するビレツト、管、プレート等の形態である。この型の操作は一般に「噴霧堆積(Spray Deposition)」として知られている。
・・・
本発明の方法によると、凝固速度は、10K/sec.を著しく下回る慣用製造方法(例えば型成形、慣用鋳造等)よりも迅速である。」(3頁左欄7?35行)
(カ)「このため、本発明によると、微細粒子等軸構造を有する密集的固体生成物が塊状で得られる。
こうして得られたインゴツトを200?350℃での熱間変形、好ましくは押し出し及び/又は鍛造及びHIP(熱間静水圧プレス)により加工する。特筆すべき点として、このような合金は優れた機械的特性を維持しながら350℃に達する高温で加工することができる点が挙げられる。このような熱安定性は多くの利点があり、特に本発明により得られる良好な機械的特性を維持しながら高い押し出し速度、高い押し出し比を利用することができる。
・・・。
本発明により得られた合金は好ましくは3?25μmの粒径を有しており且つ粒界に優先的に析出した金属間化合物の粒子を含む均質構造を有する。」(3頁左欄36行?同頁右欄15行)
(キ)「実施例 1
種々の合金組成を使用し、溶融後にアルゴン又は窒素を用いて噴霧し、600mmの間隔でステンレス収集基板上に堆積させ、直径150mmのビレツトを形成した。堆積工程の間600mmの距離を一定に維持し、収集基板を軸の周囲の回転運動で駆動した。アトマイザは収集基板の回転軸について揺動する。冷却速度は約10^(2)K/sec.であつた。
ガス流量は約3.1Nm^(3)/Kg、液体流量は約3?4Kg/min.とし、各試験で同一とした。
得られたビレツトを次に押し出し比20及びラム進行速度1mm/sec.で300℃にて押し出しにより圧密化した。
第1表は得られた結果を示す。
・・・。
UTSは破壊荷重を表し、MPaで表した。」(4頁左欄9行?同頁右欄10行)
(ク)


表中、試験番号1?5は本発明を示し、試験番号6及び7は本発明外の結果を示す。」(4頁第1表と同頁左欄下から6?7行)

(2)甲第2号証:特開平6-25790号公報
(ア)「【請求項1】 アルミニウム2?10重量%及びカルシウム1.4?10重量%を含有し、Ca/Alの比が0.7以上であり、残部がマグネシウムと不可避の不純物からなることを特徴とする室温及び高温強度に優れたマグネシウム合金。」(特許請求の範囲)
(イ)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は室温及び高温強度に優れたマグネシウム合金に関し、より詳しくは自動車エンジン部品などの軽量化において要請されている473K程度までの高温でも十分な強度を有するマグネシウム合金に関する。」
(ウ)「【0011】本発明の室温及び高温強度に優れたマグネシウム合金においては、カルシウムは高温強度の向上に有効な元素である。しかしカルシウムの添加量が1.4重量%未満の場合及びCa/Alの比が0.7未満の場合にはその合金の高温強度が不十分である。またカルシウム添加量の増加に伴って高温強度は向上するが、コスト高になる。コスト面を考慮するとカルシウムを10重量%を越えて添加してもメリットがない。Ca/Alの比を0.7以上にするとマグネシウム合金中に晶出する析出物の組織形態が変化し、Mg-Ca化合物が晶出して優れた高温強度特性を示すようになる。従って、本発明の室温及び高温強度に優れたマグネシウム合金においてはカルシウム添加量を1.4?10重量%、好ましくは2?8重量%とし、Ca/Alの比を0.7以上、好ましくは0.75以上とする。」

(3)甲第3号証:特開平6-158192号公報
(ア)「【0013】本発明において、アルカリ土類金属の添加量は多い方が難燃性が大きくなるが、耐食性が低下するので、それを回復させるための防錆向上性金属も添加するのがよい。添加するアルカリ土類金属はCa、Ba又はSrであるが、入手のしやすさからCaが最も望ましい。アルカリ土類金属の含有量は、防食性の要求がそれほど強くない用途で、単に融体の難燃性を期待する場合には、全体の0.1重量%以上5重量%以下、好ましくは0.4重量%以上3重量%以下である。耐食性の要求の強い用途の場合、融体の難燃性を達成するためのアルカリ土類金属とともに防錆向上性金属も添加する。防錆向上性金属を添加すればアルカリ土類金属の含有率が上昇しても耐食性低下の影響が少なくなる。この場合にはアルカリ土類金属は0.1重量%以上10重量%以下、好ましくは8重量%以下、特に好ましくは5重量%以下である。10重量%以上を添加する必要はない。コストや元のマグネシウムやマグネシウム合金から特性をできるだけ変化させないためにもアルカリ土類金属の添加量は少ない方が望ましい。」

(4)甲第4号証:特開平9-272945号公報
(ア)「【請求項1】アルミニウム2?6重量%及びカルシウム0.5?4重量%を含有し、残部がマグネシウムと不可避の不純物からなり、Ca/Al比が0.8以下のマグネシウム合金から成形された成形部材であり、耐クリープ性に優れる耐熱マグネシウム合金成形部材。
・・・
【請求項6】 アルミニウム2?6重量%及びカルシウム0.5?4重量%を含有し、残部がマグネシウムと不可避の不純物からなり、固相と液相が混在する液相線以下の温度での半溶融射出成形によって優れた耐クリープ性が得られる耐熱マグネシウム合金。」(特許請求の範囲)
(イ)「【0011】また、本発明では、上記マグネシウム合金成形部品の成形に用いる合金素材として、アルミニウム2?6重量%及びカルシウム0.5?4重量%を含有し、残部がマグネシウムと不可避の不純物、好ましくは更に0.15重量%以下のSrを含有してなり、要すれば、Ca/Al比が0.8以下、好ましくはCa/Al比が0.6以下に調整された、半溶融射出成形によって優れた耐クリープ性を確保しつつ、成形性、伸び性に優れる耐熱マグネシウム合金を提供しようとするものでもある。」
(ウ)「【0020】実施例1?7及び比較例1?5
低周波炉に鉄ルツボを設置し、SF_(6)ガス1%(残はドライエア)を溶湯表面に流動させながら実施例および比較例の成分の合金を溶製した。これらの合金を板上に鋳造し、フライス加工にて3?5mm径のペレットを製造し、これらを原料として上記成形機を用いて、半溶融成形を行った。」
(エ)「実施例3の合金組成から成形された部材の平均結晶粒径と引張強度との関係を示すグラフである」図9をみると、平均結晶粒径が小さくなると引張強度が高くなることが見て取れる。

(5)参考文献1:特開平8-134614号公報
(ア)「【0012】
【表1】

【0013】実施例1及び比較例1のデータから明らかなように、熱間押出し加工の施されていない鋳造したままの鋳塊試験片は超塑性を持たず、また高温での伸びも小さい。また、実施例1?6のデータから明らかなように、熱間押出し加工により室温及び高温での引張強度が向上すると同時に伸びも向上し、更に773Kで220%以上の超塑性伸びが、10^(-2)/sの高歪み速度で達成される。」

(6)参考文献2:特願2006-040013号の平成22年 1月12日付け拒絶理由通知書

(7)参考文献3:特願2006-348534号の平成25年 1月11日付け拒絶理由通知書

(8)参考文献4:特願2008-500622号の平成23年12月12日付け拒絶理由通知書

(9)参考文献5:特願2008-521795号の平成24年 7月18日付け拒絶理由通知書

(10)参考文献6:生産研究 45巻4号(1993年4月)、299?302頁
(ア)「3. 押出し材の特性
3.1 押出し加圧力
オスプレイ法により製造された素材より,下記寸法のビレットを削り出し,押出し実験を行った。押出し前のビレット温度は,変形抵抗および液相成分の体積含有率の測定結果を考慮して,480℃,500℃,535℃とした。加熱は,ビレットを装填したコンテナごと行い,ビレット先端に取り付けた熱電対の出力が所定の温度になって10分間保持した後,押出した,ビレット寸法は,直径40mm,高さ50mmであり,ダイス半角15°,押出し比11(製品直径12mm)のコニカルダイスを使用した。
図5に押出し加圧力の測定値を示す。これより,図2の庄縮変形抵抗曲線と同様に,温度の上昇とともに,特にビレットが半溶融状態に入ると,押出し加圧力(荷重)が下降し,押出し易くなることがわかる。逆に,押出し温度が480℃程度まで下がると,押出し加圧力が著しく増大し,押出し比を大きくすることが次第に困難になるものと考えられる。

3.2 引張り強度
引張り試験片は,JIS金属材料引張試験片14A号に対応しており,つかみ部直径8mm,平行部直径6.5mm,平行部長さ35.75mmである。試験速度は,4mm/minである。
図6に測定した応用-ひずみ線図,表1に破断応力と破断ひずみの値を示す。図に示された応力-ひずみ線図より,押出し前の素材に比べて押出し材の方が破断応力,破断ひずみ,ともに増大していることがわかる。この理由としては, (1)素材の組織が押出しによって展伸されかつ微細化されたこと,(2)図7の組織写真が示すように,素材に内在した空孔欠陥が押出しにより閉鎖されたこと,(3)押出し後の冷却が水冷であるため,急冷による硬化が発生したこと,などが考えられる。」(300頁右欄6行?302頁左欄2行)
(イ)「押出し材の組織写真(エッチング:3規定NaOH水溶液30秒)」である図7をみると、金属間化合物が破砕されるような大きな結晶粒の変形を見て取れない。

(11)参考文献7:松原英一郎他、「金属材料組織学」、株式会社朝倉書店(2013年 8月20日 初版第4刷)、22?23頁、160?161頁
(ア)「金属・合金を塑性加工(塑性変形)する」(160頁本文1行)
(イ)「加工硬化(work hardening)とは,転位同士が相互作用するために生じる現象である。先に述べたように,金属材料を塑性変形すると,変形量(ひずみ量)とともに転位の数が増加し,硬さが増大する。これをひずみ硬化(strain hardening)と呼ぶ。細粒硬化(fine grain hardening)とは,次節で述べる結晶粒界と転位との相互作用により生じる。金属材料では一般に細粒化して粒界の密度が増えるほど,硬さが増大する。これを粒界硬化(grain boundary hardening)と呼ぶ。」(23頁9?15行)

(12)参考文献8:田中和明、「図解入門 最新金属の基本がわかる事典」、株式会社秀和システム(2015年 7月 1日 第1版第1刷)、目次、86?87頁
(ア)「第9章 金属の型創成
・・・
9-2 押し出し成形-塑性加工<2>」(9頁)
*当審注:<2>は丸付き数字の2を表す。
(イ)「 引張強さは、金属の重要な性質です。金属を引っ張ると弾性変形と塑性変形が起こります。弾性変形は引張り力をなくした場合に元の形に戻る変形です。塑性変形は、引張り力をなくしても永久変形していて元に戻らない変形です。」(87頁1?3行)

(13)参考文献9:軽金属、Vol.38、No12、807?810頁
(ア)「5.まとめ
・・・
(4)・・・押出し比が高くなると結晶粒は全体的に微細化し、析出物も細かく分散する。」(810頁左欄下から14行?同頁右欄末行)

第4.被請求人の主張の概要と証拠方法
1.被請求人の主張の概要
被請求人は、乙第1?4号証並びに参考文献a及び9-1を提出し、答弁書、口頭審理(平成27年6月29日付け及び同年7月13日差し出しの口頭審理陳述要領書、第1回口頭審理調書を含む。)、上申書、回答書において、請求人の主張する理由及び証拠によっては本件特許発明1?4に係る特許を無効とすることはできないと主張している。

2.乙号証及び参考文献の記載事項・視認事項
乙号証及び参考文献には、それぞれ、次の事項が記載されており、見て取れる。

(1)乙第1号証:特許庁、「審査基準」(平成23年)、第I部 第1章 3頁

(2)乙第2号証:Transactions of Nonferrous Metals Society of China、17(2007)、238?243頁
(ア)「With 80% reduction, the grain size is much smaller than that of the as-deposited AZ91 alloy, as shown in Fig.3(a).
当審訳:図3(a)に示されるように、80%の減面加工をすると、結晶粒径はAZ91合金の堆積した状態に比してとても小さくなる。」(240頁左欄33?35行)

(3)乙第3号証:特開平6-65669号公報
(ア)「【0007】
【作用】LDC(liquid dynamic compaction)プロセスとは、例えば溶湯より溶滴流を形成してその溶滴流を所定の速度で落下させ、下方に設置されたコレクタ内における溶滴の衝突、溶着および再凝固による堆積作用によって多孔性金属塊を得る方法であって、このプロセスにはオスプレイ(Osprey)プロセス、VADER(vacuum arc double electrode remelting) プロセス等が含まれる。
【0008】LDCプロセスによれば、溶滴の再凝固が急速に行われるので、金属間化合物がデンドライト状に晶出することがない。また多孔性金属塊は溶滴の集合物であるから、その金属塊における金属間化合物の分散が均一となる。このような金属塊に塑性加工を施すと、製品の高密度化が達成される。
【0009】前記耐熱Mg合金は前記のような方法によって得られたものであるから、それに含有される金属間化合物は微細であり、その分散も均一となる。また前記合金元素AEとMgよりなる微細金属間化合物は低比重で、且つ高融点である。その上、合金元素AEの含有範囲、したがって微細金属間化合物の含有範囲が拡張されているので、耐熱Mg合金に対する要求耐熱強度を容易に満たすことが可能である。」
(イ)「【0016】純度99.99%のMgインゴットおよび純度99.7%のSiフレークをArガス雰囲気下で高周波溶解し、次いでCu製金型を用いて鋳込作業を行うことにより、Si含有量を0.5?25.0重量%の範囲で調節された複数のMg合金組成の素材を溶製した。
【0017】各素材を用いてオスプレイプロセスを行うことにより、直径50mm、長さ60mmの多孔性中間体を製造した。オスプレイプロセスの条件は、溶湯温度750℃、N_(2) ガスの圧力5kgf/cm^(2 )、ノズルおよびコレクタ(または堆積物)間の距離30mm、冷却速度5×10^(2 )℃/sec に設定された。
【0018】各中間体の外周部に切削加工を施して直径を40mmに仕上げ、その中間体に押出し温度350℃、押出し比16の条件下で熱間押出し加工を施して直径10mmの丸棒状をなすMg-Si系合金(1)?(10)を得た。」

(4)乙第4号証:Science Portal、第18回「実用的マグネシウム素形材技術開発」(http://scineceportal.jst.go.jp/columns/technofront/20130809_01.html)

(5)参考文献a:Synthesiology Vol.2、No.2(2009年6月)、127?136頁

(6)参考文献9-1:軽金属、Vol.39、No2(1989)、129?135頁

第5.当審の判断
1.無効理由1について
(1)甲第1号証に記載された発明
ア 甲第1号証の(ア)に記載の方法によって得られた合金が同(イ)に記載されたものであるから、該(ア)に記載の方法は、
「・・・少なくとも290MPaの破壊荷重・・・を有するマグネシウム合金の・・・製造方法であつて、
Al2?9重量%、Ca0.5?5重量%・・・を含み・・・残余はマグネシウムの組成を有するインゴツトを、噴霧により密集的に堆積し、堆積中の冷却速度を10K/sec?10^(3)K/secとして形成する段階と、該インゴツトを200?350℃での熱間変形により圧密化処理して前記マグネシウム合金を得る段階とを含み、
3?25μm・・・の粒径のマグネシウムの均質マトリクスと、粒界に優先的に析出した5μm未満の粒径のMg_(17)Al_(12)、Al_(2)Ca・・・の金属間化合物の粒子とから構成されるマグネシウム合金の製造方法」
ということができる。
イ そこで、このアでみた製造法を本件特許発明1の記載ぶりに則して整理すると、甲第1号証には、
「Ca0.5?5重量%及びAl2?9重量%を含み残余はマグネシウムの組成を有するインゴツトを、噴霧により密集的に堆積し、堆積中の冷却速度を10K/sec?10^(3)K/secとして形成する段階と、該インゴツトを200?350℃での熱間変形により圧密化処理して前記マグネシウム合金を得る段階とを含み、
3?25μmの粒径のマグネシウムの均質マトリクスと、粒界に優先的に析出した5μm未満の粒径のMg_(17)Al_(12)、Al_(2)Caの金属間化合物の粒子とから構成される、少なくとも290MPaの破壊荷重を有するマグネシウム合金の製造方法。」の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。

(2)本件特許発明1について
ア 本件特許発明1と甲1発明とを対比する。
イ 甲1発明の「マグネシウム合金」は、カルシウムとアルミニウムを含むから、「難燃性」ということができ、カルシウムの含有量は、本件特許発明1と「1?5重量%」の範囲で一致している。
ウ 甲1発明の「マグネシウム合金」は、「少なくとも290MPaの破壊荷重を有」し、甲第1号証の(キ)及び(ク)をみると、「UTS」、すなわち、「破壊荷重」が、本発明である第1表の試験番号1?5では、382、423、365、480、422MPaである。
一方、本件特許発明1の「高強度」は、本件特許明細書に明確に定義されていないが、本件特許明細書の【0016】?【0018】に記載された実施例1?3をみると、破断強度が高いと推定され(このことは、被請求人の平成26年 6月29日付けの口頭審理陳述要領書の1頁下から12?15行の記載と整合する。)、それらの破断強度は、368、376、410MPaである。
ここで、破壊荷重は破断強度のこととみてよいから、甲1発明のマグネシウム合金は本件特許発明1のマグネシウム合金と同等の破断強度をもっているとみることができる。
そうすると、甲1発明の「マグネシウム合金」は、「高強度」ということができる。
エ 甲1発明の「インゴット」は、「噴霧により密集的に堆積し、堆積中の冷却速度を10K/sec?10^(3)K/secとして形成する」するものである。
オ これに対して、本件特許発明1の「結晶粒界にカルシウム含有金属間化合物を有する、カルシウム1?10重量%及びアルミニウムを含む難燃性マグネシウム合金」はどのように形成されたものか、本件特許明細書の記載をみてみる。
本件特許明細書の
「【0002】
【従来の技術】・・・。
【0003】本発明者らは、先にマグネシウム又は前記マグネシウム合金にカルシウムを添加することにより、難燃性マグネシウム合金を製造しうること、そしてこのマグネシウム合金を金型及び砂型などにより鋳造したものは、カルシウムを添加しないマグネシウム合金とほぼ同等の機械的強度を示すことを見出した。
【0004】しかしながら、このカルシウムを添加した難燃性マグネシウム合金は、さらに機械的強度を高くしようとして熱処理を行うと、カルシウムを含まないマグネシウム合金の熱処理をした場合よりも機械的強度がむしろ低下するという欠点がある。この際、熱処理温度を高くし、難燃性マグネシウム合金中の結晶粒界に生成する金属間化合物を均一に固溶、析出させ、強度を高めようとしても、該難燃性マグネシウム合金の熱処理温度の上限では、結晶粒界の金属間化合物をマグネシウム基地中に固溶できず、また、長時間の熱処理を行っても、金属間化合物をほとんど固溶させることができない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、このような事情のもとで、機械的強度の向上したカルシウムを含有する難燃性マグネシウム合金を効率よく製造する方法を提供することを目的としてなされたものである。」
との記載によれば、本件特許発明1の上記「マグネシウム合金」は、本件特許発明1の発明特定事項として明記されていないものの、「金型及び砂型などにより鋳造したもの」であることは明かである。
そうすると、甲1発明の「インゴット」は、本件特許発明1の「マグネシウム合金」と「マグネシウム合金鋳造物」である点で一致している。
カ 甲第1号証の(エ)の記載をみると、甲1発明は圧密加工前に粒界に金属間化合物が存在すると推認される。
キ 甲1発明の「圧密化処理」は、本件特許発明1の「塑性加工処理」と「処理」である点で一致している。
ク 以上の検討を踏まえると、両者は、
「結晶粒界にカルシウム含有金属間化合物を有する、カルシウム0.5?5重量%及びアルミニウムを含む難燃性マグネシウム合金鋳造物を処理する高強度難燃性マグネシウム合金の製造方法。」である点で一致し、次の点で相違している。
相違点1:「マグネシウム合金鋳造物」につき、本件特許発明1では、「金型及び砂型などにより鋳造したもの」であるのに対して、甲1発明では、「噴霧により密集的に堆積し、堆積中の冷却速度を10K/sec?10^(3)K/secとして形成」したものであり、
さらに、
「処理」につき、本件特許発明1では、「塑性加工処理して該金属間化合物を微細に破砕し、分散させる」のに対して、甲1発明では、「200?350℃での熱間変形により圧密化処理」している点
ケ そこで、この相違点1について検討する。
コ 「マグネシウム合金鋳造物」について
コ-1 甲1発明の「噴霧により密集的に堆積し、堆積中の冷却速度を10K/sec?10^(3)K/secとして形成」したものとはどのようなものかみてみると、甲第1号証の(オ)の記載によれば、「閉じた小さい細孔をなお含むが密集且つ密着性の堆積層」であるということができ、「金型及び砂型などにより鋳造したもの」とは異なるものであることは明かである。
コ-2 すなわち、甲1発明と本件特許発明1とでは製造される「マグネシウム合金鋳造物」が異なるから、「マグネシウム合金鋳造物」において、上記相違点1は実質的なものである。
サ 「処理」について
サ-1 本件特許発明1の「塑性加工処理して該金属間化合物を微細に破砕し、分散させること」について検討する。
本件特許明細書には、
「【0013】
【発明の効果】本発明によれば、結晶粒界にカルシウム含有金属間化合物を有する所定難燃性マグネシウム合金を、押出し又は圧延加工などの塑性加工処理することにより、結晶粒界の金属間化合物が破砕され、破砕粒子が均一に分散することにより、機械的強度が向上する。・・・。」と記載され、
「難燃性マグネシウム合金を塑性加工処理しない場合の組織の1例を示す顕微鏡写真図」である図1に関する「図1・・・から分かるように、網目状の金属間化合物が観察される。」(【0015】)、
「難燃性マグネシウム合金を塑性加工処理した場合の組織の1例を示す顕微鏡写真図」である図2に関する「図2・・・から分かるように・・・結晶粒界の金属間化合物が微細に破砕され、粒子分散効果が発揮されている。」(【0016】)との記載がある。
また、上記図2をみると、金属間化合物が平行に並んでいることが見て取れ、この平行に並ぶ金属間化合物となるために、塑性加工処理によって結晶粒の大きな変形や破壊が起こったことが推認される。
そうすると、本件特許発明1の「塑性加工処理して該金属間化合物を微細に破砕し、分散させること」とは、「塑性加工処理して、結晶粒の大きな変形や破壊が起こり、金属間化合物が微細に破砕し、破砕粒子が均一に分散させること」であるといえる。
サ-2 これに対して、甲1発明は、「インゴツトを200?350℃での熱間変形により」「圧密化処理して3?25μmの粒径のマグネシウムの均質マトリクスと、粒界に優先的に析出した5μm未満の粒径のMg_(17)Al_(12)、Al_(2)Caの金属間化合物の粒子とから構成される」マグネシウム合金を製造するものであるから、結晶粒の大きな変形や破壊が起こり、金属間化合物が均一に存在しているとは直ちにいえない。
サ-3 よって、甲1発明の「圧密化処理」は、本件特許発明1の「塑性加工処理」とは異なるものであって、「処理」においても、上記相違点1は実質的なものである。
サ-3-1 甲第1号証に教示された圧密化処理条件によって、金属間化合物が微細に破砕し分散しないことは、次の点からみても妥当である。
甲第1号証の(キ)には、圧密化処理の条件として、「押し出し比20、300℃にて押し出しにより圧密化」というものが記載されている。
上記コ-1で検討したように、甲1発明の「噴霧により密集的に堆積し、堆積中の冷却速度を10K/sec?10^(3)K/secとして形成」したものは「閉じた小さい細孔をなお含むが密集且つ密着性の堆積層」である。
ここで、乙第3号証の(ア)によれば、噴霧鋳造法の一形態であるLCDプロセスにより製造された金属塊に塑性加工を施すと高密度化が達成され、同(イ)によれば、高密度化を達成する該塑性加工条件の一例として、押出し温度350℃、押出し比16が示されている。
また、参考文献6には、その(ア)に、押出し実験の押出し比11、温度480、500、535℃の押出加工がなされたこと、押出しにより「(1)素材の組織が押出しによって展伸されかつ微細化されたこと,(2)図7の組織写真が示すように,素材に内在した空孔欠陥が押出しにより閉鎖されたこと」と記載され、同(イ)で視認したように「押出し材の組織写真(・・・)」である図7をみると、金属間化合物が破砕されるような大きな結晶粒の変形は見て取れない。
すなわち、上記「押し出し比20、300℃にて押し出しにより圧密化」という圧密処理の条件では、密度が高くなることはあっても金属間化合物が破砕されることはないといえる。
サ-3-2 なお、仮に、甲1発明の「圧密化処理」によって、金属間化合物が微細に破砕され分散しているとすれば、上記クで述べたように、処理対象の「マグネシウム合金鋳造物」がそもそも異なるにもかかわらず、「処理」によって同じ組織のものを得ているのだから、甲1発明の「圧密化処理」は、本件特許発明1の「塑性加工処理」と同じではないことは明らかである。
シ 次に、甲1発明が上記相違点1に係る本件特許発明1の発明特定事項を備えることが容易であるか否かについて検討する。
ス 「マグネシウム合金鋳造物」について
ス-1 甲第1号証の(ウ)には、「 従来方法に鑑みて、本発明者らはより簡単で、したがつてより経済的であり、慣用鋳造により得られるマグネシウムをベースとする合金の特性(特に機械的特性及び耐食性)を明白に改良することが可能な手段又は方法を使用できるように鋭意研究した。」と記載されており、慣用鋳造法で得られる合金の特性を改良するとの技術思想が開示され、甲第1号証では、この慣用鋳造に代わって噴霧鋳造が用いられている。
ス-2 ここで、慣用鋳造とはどのようなものか甲第1号証には明記されていないが、従来からある鋳造法、すなわち、金型及び砂型などによる鋳造法とみることができる。このことは、甲第1号証に係る特許出願のパテントファミリーである米国特許明細書5073207号をみると、「conventional casting」の訳が甲第1号証の慣用鋳造といえることからも明かである。
ス-3 そうすると、甲第1号証は、金型及び砂型などによる鋳造法を改良する技術思想を前提としているから、金型及び砂型などによる鋳造法を用いるとの技術思想はなく、甲1発明におけるマグネシウム合金を「噴霧により密集的に堆積し、堆積中の冷却速度を10K/sec?10^(3)K/secとして形成する」ことに代えて「金型及び砂型などにより鋳造したもの」とする動機付けはない。また、甲第2?4号証及び参考資料1?9のいずれにも、この動機付けになるものは見当たらない。
セ 「処理について」
セ-1 甲第1号証の(ウ)には、発明の目的が「特に290MPa以上、より望ましくは少なくとも330MPaの破壊強さと、少なくとも5%の破壊伸びや非常に良好な耐食性とを兼備した特性」を得ることであると記載され、甲1発明によってこの目的は達成されているのであるから、甲第1号証には、更に破壊強さを高めようとする動機付けはなく、圧密化処理に代えて金属間化合物を微細に破砕し、分散させるとの技術思想を導出するものは見当たらない。
また、甲第2?4号証及び参考資料1?9のいずれにも、圧密化処理に代えて金属間化合物を微細に破砕し、分散させるとの技術思想を導出するものは見当たらない。
ソ そして、上記相違点1についての判断は、本件特許発明1の塑性加工手段やカルシウムの含有量によって左右されるものではない。
タ よって、本件特許発明1は、特許法29条第1項第3号に該当する発明でもないし、同法同条第2項の規定により特許を受けることができない発明でもない。

(3)本件特許発明2及び3について
ア 本件特許発明2及び3は、共に、「マグネシウム合金を融解し・・・冷却して結晶粒界に金属間化合物を生成させたのち、塑性加工処理して該金属間化合物を微細に破砕し、分散させる」という発明特定事項を有している。
イ この発明特定事項における「マグネシウム合金を融解し・・・冷却して」とは、上記(2)オで検討したように、「金型及び砂型などにより鋳造したもの」ということができる。
ウ そこで、上記(2)(カ)及び(キ)を踏まえて、本件特許発明2及び3と甲1発明とを、それぞれ、対比すると、本件特許発明2及び3は、共に、少なくとも、
「マグネシウム合金鋳造物」につき、本件特許発明2及び3では、「金型及び砂型などにより鋳造したもの」であるのに対して、甲1発明では、「噴霧により密集的に堆積し、堆積中の冷却速度を10K/sec?10^(3)K/secとして形成」したものであり、
さらに、
「処理」につき、本件特許発明2及び3では、「塑性加工処理して該金属間化合物を微細に破砕し、分散させる」のに対して、甲1発明では、「200?350℃での熱間変形により圧密化処理」している点
で相違している。
エ そこで、検討すると、この相違点は、本件特許発明1と甲1発明との相違点1に他ならないから、その判断は上記(2)の相違点1と同じである。
オ よって、本件特許発明2及び3は、特許法29条第1項第3号に該当する発明でもないし、同法同条第2項の規定により特許を受けることができない発明でもない。

(4)本件特許発明4について
ア 本件特許発明4は、その発明特定事項として、「請求項1、2又は3記載の高強度難燃性マグネシウム合金の製造方法」を有するから、上記(2)及び(3)で検討したように、甲1発明と対比すると、少なくとも、両者は、相違点1で相違している。
イ よって、本件特許発明4は、特許法29条第1項第3号に該当する発明でもないし、同法同条第2項の規定により特許を受けることができない発明でもない。

(5)小括
よって、無効理由1によって、本件特許発明1?4についての特許を無効とすることはできない。

2.無効理由2について
(1)請求人の主張
請求人は、以下の点を主張し、本件特許に係る特許出願は特許法第36条第4項第1号及び同法同条第6項第1号の規定を満たしておらず、本件特許発明1?4に係る特許は同法123条第1項第4号に該当し無効とすべきものであると主張している。

(1-1)本件特許発明1?2に対して
(ア)本件特許発明1、2の発明特定事項である「カルシウム1?10重量%及びアルミニウムを含む難燃性マグネシウム合金」について、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、具体的な組成として「カルシウムを2又は6重量%及びアルミニウムを含む難燃性マグネシウム合金」のみが示されているだけで、境界領域の実施例がなく、【0009】の記載を考慮しても、カルシウムの上記含有量によって難燃効果及び物性の向上を示す根拠がないし、
カルシウムの含有量について、願書に最初に添付された明細書(以下、「当初明細書」という。)の【0009】では、0.1?15重量%とされていたが、本件特許明細書の【0009】では、0.5?10重量%とされており、実験成績証明書等が提出されず、含有量の範囲が変更されたことは、含有量範囲自体に技術的な根拠がないことといえるから、
カルシウム含有量が発明の特徴の一つである本件特許発明1、2の開示として発明の詳細な説明の記載は不十分であり、発明の詳細な説明に記載された事項を特許請求の範囲まで拡張できない。

(1-2)本件特許発明1に対して
(イ)本件特許発明1の発明特定事項である「カルシウム1?10重量%及びアルミニウムを含む難燃性マグネシウム合金を塑性加工処理して該金属間化合物を微細に破砕し、分散させること」について、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、「カルシウムを2重量%及びアルミニウムを含む難燃性マグネシウム合金」に押出加工をしたときについてのみ、金属間化合物が微細に破砕され分散されている状況が示されているだけであって、その他の組成の難燃性マグネシウム合金については示されておらず、「カルシウム1?2未満重量%又は2超?10重量%及びアルミニウムを含む難燃性マグネシウム合金」において、塑性加工により金属間化合物が微細に破砕され分散されるかは定かでなく、発明の詳細な説明に記載された事項を特許請求の範囲まで拡張できない。

(1-3)本件特許発明2?3に対して
(ウ)本件特許発明2、3の発明特定事項「カルシウムの重量の2倍を超えない量のアルミニウムを添加する」ことについて、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、カルシウムの重量%の0倍と1.35倍のアルミニウムを添加した実施例のみが記載されているだけであり、【0012】の記載を考慮しても、アルミニウムの含有によって物性等の向上を示す根拠が不明であり、発明の詳細な説明に記載された事項を特許請求の範囲まで拡張できない。

(1-4)本件特許発明2に対して
(エ)本件特許発明2の発明特定事項である「カルシウム1?10重量%を含む難燃性マグネシウム合金を融解し、これにカルシウムの重量の2倍を越えない量のアルミニウムを添加し、冷却して結晶粒界に金属間化合物を生成させたのち、塑性加工処理して該金属間化合物を微細に破砕し、分散させること」について、本件特許明細書の発明の詳細な説明には記載されていない。

(1-5) 本件特許発明3に対して
(オ)本件特許発明3の発明特定事項である「マグネシウム合金を融解し、これに、カルシウムをそれとマグネシウム合金の合計量当り1?10重量%・・・添加」することについて、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、具体的な組成として「カルシウムを2又は6重量%及びアルミニウムを含む難燃性マグネシウム合金」のみであって、境界領域の実施例がなく、【0009】の記載を考慮しても、カルシウムの上記含有量によって難燃効果及び物性の向上を示す根拠がないし、
カルシウムの含有量について、願書に最初に添付された明細書(以下、「当初明細書」という。)の【0009】では、0.1?15重量%とされていたが、本件特許明細書の【0009】では、0.5?10重量%とされており、実験成績証明書等が提出されず、顔料の範囲が変更されたことは、含有範囲自体に根拠がないことといえるから、
カルシウム含有量が発明の特徴の一つである本件特許発明3の開示として発明の詳細な説明の記載は不十分であり、発明の詳細な説明に記載された事項を特許請求の範囲まで拡張できない。
(カ)本件特許発明3の発明特定事項である「マグネシウム合金を融解し、これに、カルシウムをそれとマグネシウム合金の合計量当り1?10重量%、アルミニウムをカルシウムの重量の2倍を越えない量それぞれ添加し、冷却して結晶粒界に金属間化合物を生成させたのち、塑性加工処理して該金属間化合物を微細に破砕し、分散させること」について、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、「カルシウムを2重量%及びアルミニウムを含む難燃性マグネシウム合金」に押出加工をしたときについてのみ、金属間化合物が微細に破砕され分散されている状況が示されており、その他の組成の難燃性マグネシウム合金については示されておらず、その他の組成である「カルシウム1?2未満重量%又は2超?10重量%及びアルミニウムを含む難燃性マグネシウム合金を融解し、アルミニウムをカルシウムの重量の2倍を越えない量それぞれ添加し、冷却して結晶粒界に金属間化合物を生成させたのち、塑性加工処理して該金属間化合物を微細に破砕し、分散させる」において、塑性加工により金属間化合物が微細に破砕され分散されるかは定かでなく、発明の詳細な説明に記載された事項を特許請求の範囲まで拡張できない。

(1-6)本件特許発明4に対して
(キ)本件特許発明4の発明特定事項である「圧延により塑性加工する」ことについて、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、圧延加工の温度のみ記載されているが、圧延条件の違いによって得られるマグネシウム合金の機械的強度等は異なるから温度条件の他に、例えば圧下率等の条件が必要であって、圧延条件が十分に記載されておらず、どのような圧延条件で圧延をするのか、当業者に過度の試行錯誤を強いることになっているし、【0010】の記載を考慮しても「圧延により塑性加工する」ことが本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載されているとはいえない。

(2)判断
(2-1)上記(ア)及び(オ)について
ア 本件特許発明1及び2の発明特定事項である「カルシウム1?10重量%及びアルミニウムを含む難燃性マグネシウム合金」及び本件特許発明3の発明特定事項である「マグネシウム合金を融解し、これに、カルシウムをそれとマグネシウム合金の合計量当り1?10重量%・・・添加」することの技術的意義を検討する。
イ 本件特許明細書には次の記載がある。
「【0002】
【従来の技術】マグネシウムやその合金は種々の用途に用いられており、特にマグネシウム合金は、実用金属として最も軽量である上、切削性や塑性加工が良好で、かつ強度/密度比が高いことから、航空機材料、自動車材料、家電製品材料、工具材料などとして用いられている。そして、このマグネシウム合金としては、例えばMg-Al系、Mg-Mn系、Mg-Zn系、Mg-Al-Zn系、Mg-Zn-Zr系などが知られている。
【0003】本発明者らは、先にマグネシウム又は前記マグネシウム合金にカルシウムを添加することにより、難燃性マグネシウム合金を製造しうること、そしてこのマグネシウム合金を金型及び砂型などにより鋳造したものは、カルシウムを添加しないマグネシウム合金とほぼ同等の機械的強度を示すことを見出した。
【0004】しかしながら、このカルシウムを添加した難燃性マグネシウム合金は、さらに機械的強度を高くしようとして熱処理を行うと、カルシウムを含まないマグネシウム合金の熱処理をした場合よりも機械的強度がむしろ低下するという欠点がある。この際、熱処理温度を高くし、難燃性マグネシウム合金中の結晶粒界に生成する金属間化合物を均一に固溶、析出させ、強度を高めようとしても、該難燃性マグネシウム合金の熱処理温度の上限では、結晶粒界の金属間化合物をマグネシウム基地中に固溶できず、また、長時間の熱処理を行っても、金属間化合物をほとんど固溶させることができない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、このような事情のもとで、機械的強度の向上したカルシウムを含有する難燃性マグネシウム合金を効率よく製造する方法を提供することを目的としてなされたものである。
・・・
【0008】
【発明の実施の形態】本発明方法において塑性加工処理されるマグネシウム合金としては、カルシウム1?10重量%及びアルミニウムを含む難燃性マグネシウム合金や、カルシウム1?10重量%を含む難燃性マグネシウム合金を融解し、これにカルシウムの重量の2倍を越えない量のアルミニウムを添加して調製されたものや、マグネシウム合金を融解し、これに、カルシウムをそれとマグネシウム合金の合計量当り1?10重量%、アルミニウムをカルシウムの重量の2倍を越えない量それぞれ添加して調製されたものなどが挙げられる。このカルシウムを含む難燃性マグネシウム合金としては、例えばカルシウムを上記割合で含有するマグネシウム、マグネシウム-アルミニウム、マグネシウム-マンガン、マグネシウム-亜鉛、マグネシウム-アルミニウム-亜鉛、マグネシウム-亜鉛-ジルコニウムなどの合金が挙げられる。
【0009】難燃性マグネシウム合金において、カルシウムの含有量は、難燃性及び他の物性のバランスなどの面から、1?10重量%の範囲である。この量が1重量%未満では難燃効果が充分に発揮されないし、10重量%を超えるとその他の物性が低下する。」
ウ これらの記載によれば、本件特許発明は、Mg-Al系合金、Mg-Al-Zn系合金等のマグネシウム合金にカルシウムを添加することで難燃性マグネシウムを製造できるとの前提に立って、その機械的強度の向上したカルシウムを含む難燃性マグネシウム合金を製造する方法ということができる。
ここで、Mg-Al系合金、Mg-Al-Zn系合金、例えば、AM60、AZ91等のマグネシウム合金においてカルシウムを添加することで難燃性マグネシウム合金を製造できることは、例えば、特開平6-58671号公報、特開平6-49552号公報、国際公開93/15238号に記載されているように確かに公知である。
また、【0009】において、カルシウムの含有量について「難燃性及び他の物性のバランスなどの面から、1?10重量%の範囲である」と記載され、この「他の物性」とは、【0004】の記載から見て「機械的強度」のことと解される。
なお、被請求人は、平成27年6月29日付けの口頭審理陳述要領書において、この「他の物性」に「引張試験における破断強度」が含まれる旨の主張をしており、上記解釈はこの主張と一致している。
エ そうすると、AM60、AZ91等の具体的な組成のMg-Al系合金、Mg-Al-Zn系合金等のマグネシウム合金にカルシウムを添加することにより難燃性マグネシウムを製造できることが既に知られているのだから、発明の詳細な説明に、わざわざ、カルシウムの含有量により難燃性を発現するか否かの境界領域の実施例を示すまでのことはない。そして、機械的強度を向上させるために、カルシウムを2又は6重量%及びアルミニウムを含む難燃性マグネシウム合金において、カルシウムを1?10重量%含有させる理由は【0009】に開示され、しかもその開示内容を客観的に裏付けるカルシウムが2と6重量%及びアルミニウムを含む難燃性マグネシウム合金が実施例として示されているのだから、上記(ア)及び(カ)について、本件特許発明1?4を実施するための開示として発明の詳細な説明の記載は十分であって、特許請求の範囲の記載まで発明の詳細な説明を拡張ないし一般化できないとまではいえない。
オ ここで、【0009】の補正についてみておくと、
本件特許明細書の【0009】の記載は、願書に最初に添付された明細書(以下、「当初明細書」という。)の発明の詳細な説明の【0009】である、
「【0009】
この難燃性マグネシウム合金において、カルシウムの含有量が0.1重量%未満では難燃効果が充分に発揮されないし、15重量%を超えるとその他の物性が低下する。難燃性及び他の物性のバランスなどの面から、このカルシウムの好ましい含有量は0.5?12重量%の範囲であり、特に1?10重量%の範囲が好適である。」
から、
「【0009】難燃性マグネシウム合金において、カルシウムの含有量は、難燃性及び他の物性のバランスなどの面から、1?10重量%の範囲である。この量が1重量%未満では難燃効果が充分に発揮されないし、10重量%を超えるとその他の物性が低下する。」と補正された。
イ この補正により、カルシウムの含有量は、「0.1?15重量%」から「1?10重量%」へと変更されたが、この変更は、当初明細書の【0009】に望ましいとされたカルシウムの含有範囲へ単に変更されただけであり、この変更によりカルシウムの含有量の根拠が変更されるものではない。
カ よって、請求人の上記(ア)及び(オ)の主張は採用できない。

(2-2)上記(イ)、(エ)及び(カ)について
ア 金属間化合物を微細に破砕し、分散させることについて検討する。
イ 本件特許明細書には次の記載がある。
「【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、カルシウムを含有する難燃性マグネシウム合金の機械的強度の向上について鋭意研究を重ねた結果、結晶粒界にカルシウム含有金属間化合物を有する所定カルシウム含量のアルミニウム含有難燃性マグネシウム合金を塑性加工処理することにより、意外にも結晶粒界の金属間化合物が微細に破砕され、均一に分散して機械的強度が向上すること、また、該マグネシウム合金として所定合金の融解時にアルミニウムあるいはさらにカルシウムを添加して得たものを用いることにより、さらに機械的強度が向上することを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
・・・
【0012】この塑性加工処理により、結晶粒界の金属間化合物が破砕され、この破砕粒子が均一に分散するため、機械的強度が向上する。この際、金属間化合物の析出を効果的に行うために、カルシウム含有難燃性マグネシウム合金に対し、融解時にアルミニウムを添加し、冷却後塑性加工処理するのが有利である。また、これと同様のことは、実施例にも示すように、マグネシウム合金を融解し、これに前記したような難燃性マグネシウム合金組成含量に相当する量のカルシウムとともにアルミニウムを添加し、冷却後塑性加工処理することによっても達成される。このような場合、機械的強度の向上効果の点から、アルミニウムの添加量は、カルシウム含有量の2倍を越えない量特に1.35倍に相当する量が好ましい。このようにして、高強度難燃性マグネシウム合金が効率よく得られる。
【0013】
【発明の効果】本発明によれば、結晶粒界にカルシウム含有金属間化合物を有する所定難燃性マグネシウム合金を、押出し又は圧延加工などの塑性加工処理することにより、結晶粒界の金属間化合物が破砕され、破砕粒子が均一に分散することにより、機械的強度が向上する。また、本発明によれば、カルシウム含有難燃性マグネシウム合金の融解時にアルミニウムを添加するかあるいはマグネシウム合金の融解時にカルシウム及びアルミニウムを添加し、冷却後、塑性加工処理することにより、さらに機械的強度が向上する。
・・・
【0016】実施例1
比較例と同様にして、マグネシウム合金を溶解し、これに全重量に基づきカルシウム2重量%を添加し、難燃性マグネシウム合金を作製したのち、室温の金型に鋳造した。次いで、これを外径40mmの円柱状に切削加工し、押出し温度400℃、押出比19で押出し、塑性加工処理した。この塑性加工処理したものを旋盤で切削加工して試験片を作製し、引張り試験を行った。その結果、破断強度は368MPaであり、塑性加工処理前(比較例)の約2倍の破断強度となり、塑性加工処理による効果が大きいことが分かった。図2に、この押出し材料の顕微鏡写真を示す。この図2から分かるように、比較例の組織とは異なり、結晶粒界の金属間化合物が微細に破砕され、粒子分散効果が発揮されている。」
ウ これらの記載によれば、カルシウムを含有する難燃性マグネシウム合金の機械的強度の向上は、【0006】の「結晶粒界の金属間化合物が微細に破砕され、均一に分散して機械的強度が向上すること、また、該マグネシウム合金として所定合金の融解時にアルミニウムあるいはさらにカルシウムを添加して得たものを用いることにより、さらに機械的強度が向上する」との知見に基づくものであって、カルシウムの含有量は難燃性をもたらして粒界に金属間化合物が析出すればよい含有量であって、この粒界に析出した金属間化合物が塑性加工により微細に破砕され均一に分散することによるとの開示があるといえ、
【0016】と図2には、確かに、カルシウムを含有する難燃性マグネシウム合金において、金属間化合物が微細に破砕され分散することにより機械的強度(破断強度)が向上することが明記されている。
エ そうすると、「カルシウム1?2未満重量%又は2超?10重量%及びアルミニウムを含む難燃性マグネシウム合金」や「カルシウム1?10重量%を含む難燃性マグネシウム合金を融解し、これにカルシウムの重量の2倍を越えない量のアルミニウムを添加し」た難燃性マグネシウム合金においても、粒界に析出した金属間化合物が微細に破砕され分散することにより機械的強度(破断強度)が向上することは明らかである。
オ よって、請求人の上記(イ)、(エ)及び(カ)の主張は採用できない。

(2-3)上記(ウ)について
ア 本件特許明細書の【0012】には、アルミニウムの含有量に関し、「機械的強度の向上効果の点から、アルミニウムの添加量は、カルシウム含有量の2倍を越えない量特に1.35倍に相当する量が好ましい」との記載があり、アルミニウムの含有量について技術的な意義の説明がされている。
イ さらに、同【0017】の実施例2及び【0018】の実施例3に関する記載をみると、それぞれ、カルシウム含有量の1.35倍に相当する量のアルミニウムを添加することにより機械的強度が向上していることが確かに示されている。
ウ そうすると、本件特許明細書の発明の詳細な説明に本件特許発明2?4は十分に裏付けられており、発明の詳細な説明の記載は、当業者ならば、これら発明を実施できるように十分に記載されている。
エ よって、請求人の上記(ウ)の主張は採用できない。

(2-5)上記(キ)について
ア 上記(2-2)でみたように、本件特許発明1?4は、塑性加工により、結晶粒界の金属間化合物が微細に破砕され、分散して機械的強度が向上しているといえる。
イ そうすると、塑性加工の条件は、結晶粒界の金属間化合物が微細に破砕され、分散するように決定すればよいのだから、当業者であれば、本件特許明細書の【0016】に記載されている「押出し温度400℃、押出比19」という押出加工の条件を参考にすれば、塑性加工手段として圧延を選択しても、その加工条件である圧延条件は過度の試行錯誤をすることなしに適宜決定し得ることである。
ウ よって、請求人の上記(キ)の主張は採用できない。

(3)小括
よって、無効理由2によって、本件特許発明1?4についての特許を無効とすることはできない。

第6.むすび
以上のとおり、本件特許発明1?4についての特許は、請求人の主張する理由によっては、無効とすることができない。
また、審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人の負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-02-29 
結審通知日 2016-03-02 
審決日 2016-03-31 
出願番号 特願平10-299076
審決分類 P 1 113・ 113- Y (C22F)
P 1 113・ 536- Y (C22F)
P 1 113・ 121- Y (C22F)
P 1 113・ 537- Y (C22F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 河野 一夫  
特許庁審判長 鈴木 正紀
特許庁審判官 木村 孔一
小川 進
登録日 2000-02-10 
登録番号 特許第3030338号(P3030338)
発明の名称 高強度難燃性マグネシウム合金の製造方法  
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