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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1314820
審判番号 不服2015-5915  
総通号数 199 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-07-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-03-31 
確定日 2016-05-17 
事件の表示 特願2013-119578「マスクに与えられている構造を基板上に転写するための装置」拒絶査定不服審判事件〔平成25年10月24日出願公開、特開2013-219381〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成20年5月13日に出願した特願2008-126363号(優先権主張 2007年(平成19年)5月14日、独国)の一部を平成25年6月6日に新たな特許出願としたものであって、平成26年4月2日付けで拒絶理由が通知され、同年10月7日付けで意見書及び手続補正書が提出され、同年11月21日付けで拒絶査定がされ、これに対し、平成27年3月31日付けで拒絶査定不服審判の請求がされたものである。

2.本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成26年10月7日付けの手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。
「マスク(2)に与えられている構造を基板(3)上に転写するための装置(1)であり、
‐前記マスク(2)の一部分の一様な照射のための少なくとも一つの照射装置(9)と、
‐X軸及び該X軸に垂直なY軸によって画定されるマスク平面(8)内に前記マスク(2)を保持するためのマスク保持装置(7)と、
‐前記構造を前記基板(3)上にマッピングするために、前記照射装置(9)の反対側の前記マスク(2)と前記基板(3)との間に配置されている少なくとも一つのレンズ装置(6)と、
‐前記マスク平面(8)に平行な基板平面(5)内に前記基板(3)を保持するために、前記レンズ装置(6)から或る距離を隔てて配置されている基板保持装置(4)と、
‐X軸及び/又はY軸に沿って、前記マスク平面(8)及び前記基板平面(5)に対して相対的に、前記照射装置(9)及び前記レンズ装置(6)を平行に同期移動させるための手段とを備え、
前記レンズ装置(6)に、少なくとも1つの絞りが備えられており、
前記照射装置(9)が複数のLED(12)を含み、各々の前記LED(12)は制御ユニット(10)に接続され、前記制御ユニット(10)は、エネルギー的に一様な照射ストリップ(13)が前記マスク(2)上に形成されるように、前記LED(12)への電流供給、従って照射エネルギーを制御することを特徴とする装置(1)。」

3.引用例
(1)引用例の記載事項
ア 引用例
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布された特開昭63-131515号公報(以下、「引用例」という。)には、「露光装置」(発明の名称)について、次の事項が記載されている(下線は当審が付与した。以下、同じ。)。
(引1)「〔産業上の利用分野〕
本発明は電子部品のフォトリソグラフィの工程で用いられている露光装置、特にフォトマスクと試料とを離して配置し、そのフォトマスクと試料との間にレンズ郡を設けた露光装置に関する。」(1頁左下欄18行?右下欄2行)
(引2)「〔従来の技術〕
従来、この種の露光装置は第3図に示すようにフォトレジストが塗布された試料1.該試料1に転写すべきパターンが描かれたフォトマスク3,紫外線の照射源4.フォトマスク上のパターンを試料表面に結像させるレンズ群2の全てを固定して、試料1の全域を一度に露光しており、大型の試料を露光する場合には当然のことながら使用するレンズも大型なものになっていた。
〔発明が解決しようとする問題点〕
上述した露光装置は大口径のレンズを用いていたためにレンズの歪率が大きくなり、その結果試料表面に転写されるパターンの精度が著しく低下するという欠点がある。
本発明の目的は試料表面に転写されるパターンの精度を向上する露光装置を提供することにある。
〔発明の従来技術に対する相違点〕
上述した従来の大型のレンズを用いた一括露光方法を用いた露光装置に対し、本発明は容易に製作できる性能の良い小型のレンズを用いたレンズ群と紫外線の照射源とを移動させて試料の全域を露光するという独創的内容を有する。
〔問題点を解決するための手段〕
本発明は数μm?十数μmの厚さのフォトレジストを表面に形成した矩形状の試料と、透明な硝子板又はプラスチックフィルムの一面に該試料に転写すべきパターンを形成したフォトマスクと、該試料と該フォトマスクとの間に位置し、該フォトマスクのパターンを該試料表面に結像させるレンズ群と、水銀灯、キセノンランプ等の光源と、該光源からの光を平行にするレンズとを内部に備え、その光を該フォトマスク、該レンズ郡を通して試料に照射する照射源と、該照射源と該レンズ群とをフォトマスク表面に平行に移動させる駆動機構とを備えたことを特徴とする露光装置である。
〔実施例〕
次に、本発明の一実施例について図面を参照して説明する。
第1図は本発明の一実施例の外観図であり、第2図は本発明の特徴である試料、レンズ群、フォトマスク、照射源の位置を示す図である。
表面に数μm?十数μmの厚さのフォトレジストが塗布された試料1の上方には該試料1に転写すべきパターンが形成されたフォトマスク3があり、該試料1と該フォトマスク3との間には、該フォトマスク3のパターンを試料1表面で結像する位置にレンズ群2が取付けられている。又、フォトマスク3の上方には、内部に水銀灯、キセノンランプ等の光源及び該光源からの光を平行にするレンズとを備えた紫外線の照射源4が有り、この照射源4は前述のレンズ群2と固定されている。
このレンズ群2と照射源4は下部に設けられた駆動機構5によってフォトマスク3の面に平行に移動する構造になっている。
実施例において、照射源4をフォトマスク3の端面より外側に移動させておいてから、フォトマスク3と試料1との位置を顕微鏡等で合せた後、照射源4から紫外線aを照射すると共に駆動機構5によってレンズ群2と照射源4とをフォトマスク3の一端から他端に向けてb方向に移動させる。この際、照射された紫外線aはフォトマスク3を通過し、レンズ群2で光路を修正された後、試料1の表面でフォトマスク3のパターンを結像して該パターンを転写して行く。
又露光量の制御はレンズ群2と照射源4の移動速度で行う。従って、フォトレジストが厚い場合には移動速度を遅くし、逆に薄い場合には移動速度を速くすることで最適な露光量を得ることができる。
〔発明の効果〕
以上説明したように本発明は照射源とレンズ郡を移動させることにより、歪率等の優れた小型のレンズ群で、矩形状の大型の試料を露光でき、結果としてレンズ群の性能に起因する解像度を著しく向上できる効果を有するものである。」(1頁右下欄3行?2頁左下欄17行)
(引3)第1図

(引4)第2図


イ 周知例
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布された特開2007-26517号公報(以下、「周知例」という。)には、「紫外線照射装置」(発明の名称)について、次の事項が記載されている。
(周1)「【0002】
紫外線照射装置から出射される、365nmを中心とした波長300nm?400nmの範囲の紫外線を、該波長に感度を有する接着剤、塗料、インク、レジスト等に照射して、硬化または乾燥させる、また逆に、溶融または軟化させるなど、さまざまな処理が行なわれている。以下このような処理を総称して光処理と呼ぶ。
【0003】
上記のような光処理において、例えば、シート状の長い被処理物の全面に塗布された光硬化型の保護膜を硬化させるような場合、図4に示すように、被処理物100の幅に対応する長さの細長い線状の光照射領域200を形成し、被処理物100を図中矢印で示す方向に移動させながら、被処理物100全体に紫外線を照射するということが行なわれている。
【0004】
従来、上記のような細長い線状の光照射領域を形成する紫外線光源としては、被処理物の幅に相当する長さを持つ、棒状の紫外線ランプ、例えば高圧水銀ランプやメタルハライドランプが使用されていた。
(周2)「【0011】
本発明においては、上記課題を次のようにして解決する。
紫外線を照射する紫外線照射部と、該紫外線照射部に電力を供給する電源部と、該電源部に制御信号を供給する制御部とを備え、回転する被処理物に対して紫外線を照射する紫外線照射装置において、紫外線照射部には、プリント基板に線状に並べて実装された複数の紫外線発光ダイオードが設けられる。」
(周3)「【0034】
図3に、紫外線照射装置の電源制御部20の構成を示す。
電源制御部20は、紫外線照射部10のUV-LED11に電力を供給する電源部21と、電源部21を制御する制御部22、制御部22に光処理のための紫外線強度や照射時間といった各種パラメータを入力する入力部23、制御部22に接続され入力した各種パラメータや装置の動作状況を表示する表示部24とから構成されている。
【0035】
電源部21は、光照射部10の複数のUV-LED11に対して一つずつ設けられた複数の電源212から構成され、各UV-LED11に独立して電力を供給する。
制御部22は、入力部23から入力されたパラメータに基づいて、各電源212を個別に制御することにより、各UV-LED11に供給される電力を独立して変化させ、各紫外線照射部10から照射される光照射領域200の紫外線の強度を部分的に調整する。」

(2)引用発明の認定
ア 「実施例」の「露光装置」において、「照射源4をフォトマスク3の端面より外側に移動させておいてから、フォトマスク3と試料1との位置を顕微鏡等で合せた後、照射源4から紫外線aを照射すると共に駆動機構5によってレンズ群2と照射源4とをフォトマスク3の一端から他端に向けてb方向に移動させる。この際、照射された紫外線aはフォトマスク3を通過し、レンズ群2で光路を修正された後、試料1の表面でフォトマスク3のパターンを結像して該パターンを転写して行く。」((引2)、2頁右上欄17行?左下欄26行)という記載における「b方向」は、「フォトマスク3の一端から他端に向」かう方向であり、しかも、「矩形状」の「試料1」の一端から他端に向かう方向であることは明らかであるから、引用発明の認定においては、便宜的に、その方向を直交座標系のX軸の方向と定めることができる。
そして、「試料1」は「矩形状」であるから、「試料1」の平面は、該X軸及び該X軸に垂直なY軸によって画定されるということができる。
また、「試料1の表面でフォトマスク3のパターンを結像して該パターンを転写して行く」際には、「レンズ群2」の焦点距離が変わるとか、「該X軸及び該X軸に垂直なY軸によって画定される」平面に垂直なZ軸に沿って、「レンズ群2」が移動するとか、といったことは想定されていないのであるから、「試料1」の平面と「フォトマスク3」の平面とは、平行であるということができ、「フォトマスク3」の平面は、「試料1」と同様に、該X軸及び該X軸に垂直なY軸によって画定されるということができる。
そして、該「露光装置」は、「レンズ群2と照射源4は下部に設けられた駆動機構5によってフォトマスク3の面に平行に移動」していきながら、「試料1の表面でフォトマスク3のパターンを結像して該パターンを転写して行く」のであるから、「該パターンを転写して行く」際には、「試料1」と「フォトマスク3」の位置やそれらの平面は、動かないように保持されていることは明らかである(以下、「試料1」の平面を「試料平面」、「フォトマスク3」の平面を「フォトマスク平面」と呼ぶ。)。
そうすると、該「露光装置」は、「フォトマスク3」をX軸及び該X軸に垂直なY軸によって画定されるフォトマスク平面内に保持する装置と、「試料1」をフォトマスク平面に平行な試料平面内に保持する装置を有していることは明らかである。

イ そうすると、引用例の「実施例」には、
「試料1に転写すべきパターンが形成されたフォトマスク3のパターンを、表面に数μm?十数μmの厚さのフォトレジストが塗布された試料1に転写する露光装置において、
フォトマスク3をX軸及び該X軸に垂直なY軸によって画定されるフォトマスク平面内に保持する装置と、
試料1をフォトマスク平面に平行な試料平面内に保持する装置と、
フォトマスク3のパターンを試料1表面で結像する位置に取り付けられたレンズ群2と、
レンズ群2とレンズ群2に固定された照射源4とを、フォトマスク3の面に平行に、X軸方向に移動させる駆動機構5と、
内部に水銀灯、キセノンランプ等の光源及び該光源からの光を平行にするレンズとを備えた紫外線の照射源4と、
試料1の上方には、フォトマスク3があり、
試料1とフォトマスク3との間には、レンズ群2があり、
フォトマスク3の上方には、照射源4があり、
照射源4はレンズ群2と固定されており、
照射源4をフォトマスク3の端面より外側に移動させておいてから、フォトマスク3と試料1との位置を顕微鏡等で合せた後、照射源4から紫外線aを照射すると共に駆動機構5によってレンズ群2と照射源4とをフォトマスク3の一端から他端に向けて移動させ、この際、照射された紫外線aはフォトマスク3を通過し、レンズ群2で光路を修正された後、試料1の表面でフォトマスク3のパターンを結像して該パターンを転写して行く露光装置。」(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

(3)周知例の記載事項
周知例には、被処理物全体に紫外線を照射する場合に、細長い線状の紫外線照射領域を形成し、被処理物と紫外線照射領域とを相対的に移動させて、被処理物全体に紫外線を照射すること、細長い線状の紫外線照射領域を形成する光源として、棒状の高圧水銀ランプやメタルハライドランプの紫外線ランプに代えて、プリント基板に線状に並べて実装された複数の紫外線発光ダイオードを用いること、及び、複数の紫外線発光ダイオードに電力を供給する電源部に、制御信号を供給する制御部を設け、各紫外線発光ダイオードに供給される電力を独立に制御することが開示されていると認められる。

4.対比・判断
(1)対比
本願発明と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「フォトマスク3」及び「試料1」は、本願発明の「マスク(2)」及び「基板(3)」にそれぞれ相当し、引用発明の「試料1に転写すべきパターン」は、本願発明の「マスク(2)に与えられている構造」に相当する。
そして、引用発明の「試料1に転写すべきパターンが形成されたフォトマスク3のパターンを、表面に数μm?十数μmの厚さのフォトレジストが塗布された試料1に転写する露光装置」は、本願発明の「マスク(2)に与えられている構造を基板(3)上に転写するための装置(1)」に相当する。

イ 引用発明は、「試料1に転写すべきパターンが形成されたフォトマスク3のパターンを、表面に数μm?十数μmの厚さのフォトレジストが塗布された試料1に転写する露光装置」において、「照射源4から紫外線aを照射すると共に」「レンズ群2と照射源4とをフォトマスク3の一端から他端に向けて移動させ」て「転写して行く」のであるから、「照射源4」からの「紫外線a」は、「フォトマスク3」の「一部分」に照射され、しかも、その「一部分」に対しては「一様な照射」が行われていることは明らかである。
そうすると、引用発明の「内部に水銀灯、キセノンランプ等の光源及び該光源からの光を平行にするレンズとを備えた紫外線の照射源4」は、本願発明の「マスク(2)の一部分の一様な照射のための少なくとも一つの照射装置(9)」に相当する。

ウ 引用発明では、「試料1とフォトマスク3との間には、レンズ群2があ」ることから、引用発明の「フォトマスク3をX軸及び該X軸に垂直なY軸によって画定されるフォトマスク平面内に保持する装置」は、「レンズ群2」からある距離を隔てて配置されていることは明らかであって、該「フォトマスク3をX軸及び該X軸に垂直なY軸によって画定されるフォトマスク平面内に保持する装置」は、本願発明の「X軸及び該X軸に垂直なY軸によって画定されるマスク平面(8)内に前記マスク(2)を保持するためのマスク保持装置(7)」に相当する。

エ 引用発明の「試料1の表面でフォトマスク3のパターンを結像」することは、本願発明の「構造を基板の上にマッピングする」ことに相当する。
そして、引用発明の「レンズ群2」は、この「結像」のために用いられていることは明らかであり、「フォトマスク3」は、「レンズ群2」と「照射源4」との間に配置されているから、「レンズ群2」は、「照射源4」の反対側にあるということができる。
そうすると、引用発明の「試料1とフォトマスク3との間」の「レンズ群2」は、本願発明の「前記構造を前記基板(3)上にマッピングするために、前記照射装置(9)の反対側の前記マスク(2)と前記基板(3)との間に配置されている少なくとも一つのレンズ装置(6)」に相当する。

オ 引用発明の「試料1をフォトマスク平面に平行な試料平面内に保持する装置」は、「レンズ群2」とある距離を隔てて配置されていることは明らかであるから、該装置は、本願発明の「マスク平面(8)に平行な基板平面(5)内に基板(3)を保持するために、レンズ装置(6)から或る距離を隔てて配置されている基板保持装置(4)」に相当する。

カ 引用発明の「照射源4」は「レンズ群2」に固定されていることから、「レンズ群2とレンズ群2に固定された照射源4とを、フォトマスク3の面に平行に、X軸方向に移動させる駆動機構5」は、「照射源4」と「レンズ群2」とを、フォトマスク平面及び試料平面に、平行に同期移動させるものであることは明らかであって、本願発明の「X軸及び/又はY軸に沿って、前記マスク平面(8)及び前記基板平面(5)に対して相対的に、前記照射装置(9)及び前記レンズ装置(6)を平行に同期移動させるための手段」に相当する。

キ そうすると、本願発明と引用発明とは、
「マスク(2)に与えられている構造を基板(3)上に転写するための装置(1)であり、
‐前記マスク(2)の一部分の一様な照射のための少なくとも一つの照射装置(9)と、
‐X軸及び該X軸に垂直なY軸によって画定されるマスク平面(8)内に前記マスク(2)を保持するためのマスク保持装置(7)と、
‐前記構造を前記基板(3)上にマッピングするために、前記照射装置(9)の反対側の前記マスク(2)と前記基板(3)との間に配置されている少なくとも一つのレンズ装置(6)と、
‐前記マスク平面(8)に平行な基板平面(5)内に前記基板(3)を保持するために、前記レンズ装置(6)から或る距離を隔てて配置されている基板保持装置(4)と、
‐X軸及び/又はY軸に沿って、前記マスク平面(8)及び前記基板平面(5)に対して相対的に、前記照射装置(9)及び前記レンズ装置(6)を平行に同期移動させるための手段とを備えた装置(1)。」である点で一致し、次の相違点1、2で相違が認められる。

(相違点1)
「レンズ装置(6)」について、本願発明は、「少なくとも1つの絞りが備えられて」いるのに対し、引用発明の「レンズ群2」に絞りが備えられているかどうかは不明な点。
(相違点2)
「照射装置(9)」について、本願発明は、「複数のLED(12)を含み、各々の前記LED(12)は制御ユニット(10)に接続され、前記制御ユニット(10)は、エネルギー的に一様な照射ストリップ(13)が前記マスク(2)上に形成されるように、前記LED(12)への電流供給、従って照射エネルギーを制御する」のに対し、引用発明の「照射源4」は、「内部に水銀灯、キセノンランプ等の光源及び該光源からの光を平行にするレンズとを備えた紫外線の照射源4」であって、「複数のLED」ではなく、「フォトマスク3」上にどのような形状の照射が行われているか不明であって、照射源4の照射エネルギーが制御されているかどうかは規定されていない点。

ここで、相違点について検討する。
(相違点1について)
「レンズ群2」の絞りは、光量の制御や不要な光の除去などのために、必要に応じて適宜設けられるものである。
そうすると、引用発明の「レンズ群2」に絞りを設けることは、当業者が容易に想到し得たことである。
(相違点2について)
本願発明の「照射ストリップ(13)」について、「ストリップ」に「(金属などの)薄板。細長い片。帯鋼。[株式会社岩波書店 広辞苑第六版]」という意味があることから、「照射ストリップ(13)」は、照射領域が「細長い線状」となるものを包含すると解されるところ、引用発明のように、紫外線照射領域と被処理物とを相対的に移動して、被処理物全体に紫外線照射を行う装置において、「細長い線状」の照射領域を用いること、光源に複数の紫外線発光ダイオード(LED)を用いること、及び、複数のLEDに電力を供給する電源部に制御部を設けて、各LEDに供給される電力を独立に制御することは、周知例に示されるように本願の優先日前に当業者にとって周知の事項である。
そして、引用発明の「水銀灯、キセノンランプ等の光源」は、周知例に記載されたようなLEDを排除するものではなく、しかも、フォトマスク3に対してはエネルギー的に一様な紫外線照射が行われることが望ましいことは明らかであるから、周知技術に基いて、引用発明の「水銀灯、キセノンランプ等の光源」として、複数のLEDを用いて、しかも、エネルギー的に一様な照射がされるように、複数のLEDに電力を供給する電源部に制御部を設けて、LEDの電力の制御を行うこと、すなわち、制御ユニットを用いて、各々のLEDを制御ユニットに接続し、前記制御ユニットは、エネルギー的に一様な照射ストリップがフォトマスク3上に形成されるように、LEDへの電流供給、従って照射エネルギーを制御することは、当業者が容易に想到し得たことである。

5.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項について検討するまでもなく拒絶されるべきである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-12-14 
結審通知日 2015-12-21 
審決日 2016-01-06 
出願番号 特願2013-119578(P2013-119578)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 佐野 浩樹  
特許庁審判長 伊藤 昌哉
特許庁審判官 井口 猶二
川端 修
発明の名称 マスクに与えられている構造を基板上に転写するための装置  
代理人 高橋 佳大  
代理人 久野 琢也  
代理人 アインゼル・フェリックス=ラインハルト  

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