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審決分類 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 G11B
審判 査定不服 発明同一 特許、登録しない。 G11B
管理番号 1315003
審判番号 不服2014-26189  
総通号数 199 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-07-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-12-22 
確定日 2016-05-18 
事件の表示 特願2013- 3622「デジタル創作物の流通と使用を制御する方法および装置」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 5月16日出願公開、特開2013- 93096〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成13年8月2日(パリ条約に基づく優先権主張 平成12年8月16日 欧州(EP))に出願した特願2002-520226号の一部を平成23年2月14日に出願した特願2011-29040号の一部を平成25年1月11日に特願2013-3622号として新たな特許出願をしたものであって、平成25年4月30日付けで拒絶理由が通知され、同年8月5日付けで手続補正がなされ、同年10月7日付けで拒絶理由が通知され、平成26年1月14日付けで手続補正がなされ、同年1月31日付けで拒絶理由が通知され、同年8月12日付けで手続補正がなされたが、当該手続補正について、同年8月25日付けで補正の却下の決定がなされるとともに、同日付で拒絶査定がなされ、これに対し、平成26年12月22日に拒絶査定不服の審判が請求されるとともに、手続補正がなされたものである。

第2 補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成26年12月22日付けの手続補正を却下する。

[理由]
(1)補正後の本願発明

平成26年12月22日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)のうち、特許請求の範囲の請求項1,9,11について、
本件補正前には、
「【請求項1】
デジタル創作物の流通と使用を制御するための方法であって、
a)使用権を行使するために満足しなければならない1つ以上の条件を定義する使用権情報を前記デジタル創作物に添付するステップと、
b)当該デジタル創作物とそれに添付された使用権情報を記録担体に格納するステップと、
c)当該デジタル創作物が使用されるたびに、当該添付された使用権情報を更新するステップと、
d)前記使用権情報が、当該使用権が行使されてしまったことを示す場合は、当該デジタル創作物の使用を拒絶するステップと
を含む方法において、
前記使用権情報が、暗号化されていない形式で前記記録担体上に格納され、
前記使用権情報が変化したとき、前記記録担体上に設けられた隠しチャネルに格納されていてかつ当該使用権情報を確認するために使用される隠し情報が変化することを特徴とする方法。」

「【請求項9】
デジタル創作物と、使用権を行使するために満足しなければならない1つ以上の条件を定義する使用権情報とを格納する記録担体であって、
前記使用権情報が、暗号化されていない形式で前記記録担体上に格納され、
当該記録担体が、市販の再生装置ではアクセスすることができない隠しチャネルであり、かつその中に、隠し情報が格納され、当該使用権情報を確認するために使われ、かつ当該使用権情報が変化したときに変更される隠しチャネル、を含むことを特徴とする記録担体。」

「【請求項11】
デジタル創作物の流通と使用を制御する装置であって、当該装置が、
a) 当該デジタル創作物と、使用権を行使するために満足しなければならない1つ以上の条件を定義する添付された使用権情報とを、記録担体に書き込む書き込み手段と、
b) 前記デジタル創作物の使用があるたびに、前記添付された使用権情報を更新する更新手段と、
c) 前記更新された使用権情報が、前記使用権は行使されてしまったことを示す場合には、当該デジタル創作物の使用を拒絶する制御手段とを含み、
d) 前記使用権情報が、暗号化されていない形式で格納され、
e) 当該更新手段が、当該使用権情報が変化したときに、前記記録担体上に設けられた隠しチャネルに格納されていて、かつ当該使用権情報を確認するために使用される隠し情報を、変更するように構成されていることを特徴とする装置。」

とあったものを、

「【請求項1】
デジタル創作物の流通と使用を制御するための方法であって、
a)使用権を行使するために満足しなければならない1つ以上の条件を定義する使用権情報を前記デジタル創作物に添付するステップと、
b)当該デジタル創作物とそれに添付された使用権情報を記録担体に格納するステップと、
c)当該デジタル創作物が使用されるたびに、当該添付された使用権情報を更新するステップと、
d)前記使用権情報が、当該使用権が行使されてしまったことを示す場合は、当該デジタル創作物の使用を拒絶するステップと
を含む方法において、
前記使用権情報が、暗号化されていない形式で前記記録担体上に格納され、
前記使用権情報が変化したとき、前記記録担体上に設けられた隠しチャネルに格納されていてかつ当該使用権情報を確認するために使用される隠し情報がランダムに変更される、ことを特徴とする方法。」

「【請求項9】
デジタル創作物と、使用権を行使するために満足しなければならない1つ以上の条件を定義する使用権情報とを格納する記録担体であって、
前記使用権情報が、暗号化されていない形式で前記記録担体上に格納され、
当該記録担体が、市販の再生装置ではアクセスすることができない隠しチャネルであり、かつその中に、隠し情報が格納され、当該使用権情報を確認するために使われ、かつ当該使用権情報が変化したときにランダムに変更される隠しチャネル、を含むことを特徴とする記録担体。」

「【請求項11】
デジタル創作物の流通と使用を制御する装置であって、当該装置が、
a) 当該デジタル創作物と、使用権を行使するために満足しなければならない1つ以上の条件を定義する添付された使用権情報とを、記録担体に書き込む書き込み手段と、
b) 前記デジタル創作物の使用があるたびに、前記添付された使用権情報を更新する更新手段と、
c) 前記更新された使用権情報が、前記使用権は行使されてしまったことを示す場合には、当該デジタル創作物の使用を拒絶する制御手段とを含み、
d) 前記使用権情報が、暗号化されていない形式で格納され、
e) 当該更新手段が、当該使用権情報が変化したときに、前記記録担体上に設けられた隠しチャネルに格納されていて、かつ当該使用権情報を確認するために使用される隠し情報を、ランダムに変更するように構成されていることを特徴とする装置。」

と補正するものである。

(2)新規事項の追加について
本件補正は、補正前の請求項1に、「前記使用権情報が変化したとき、前記記録担体上に設けられた隠しチャネルに格納されていてかつ当該使用権情報を確認するために使用される隠し情報が変化することを特徴とする方法」とあったものを、補正後の請求項1において、「前記使用権情報が変化したとき、前記記録担体上に設けられた隠しチャネルに格納されていてかつ当該使用権情報を確認するために使用される隠し情報がランダムに変更される、ことを特徴とする方法」とすることを含む補正である。以下、この変更された事項(以下「補正事項」という。)について検討する。
審判請求人は、補正事項について「請求項1、9、11における補正は、本願明細書の段落番号0017『これに代えて、別の有利な開発によれば、隠し情報を、使用権情報を解読するために使用されるキーとすることが出来る。この場合、使用権情報が変化したときに、キーはランダムに変更され、使用権情報は、その変更されたキーを使って再暗号化される。変更されたキーを使って元の使用権情報を解読することはできないので、使用権情報の古いバージョンの復元は、機能しないであろう』(下線は強調を示します)等の記載に基づき、当初明細書等に記載された事項の範囲内にあり、限定的減宿を目的としています。」と主張している。
しかしながら、段落【0017】には、使用権情報が変化したときに、使用権情報を暗号化・解読するための「キーをランダムに変更する」ことは記載されているものの、使用権情報が暗号化されていない形式で記録担体上に格納されている場合に、使用権情報を確認するために使用される「隠し情報(チェックサム)をランダムに変更する」ことは記載されていない。また、明細書の他の段落を参照しても、使用権情報が変化したときにチェックサムをランダムに変更することは記載されておらず、さらに、出願時の技術常識に照らしても、使用権情報が変化したときにチェックサムをランダムに変更することが当初明細書の記載から自明とは言えない。
したがって、補正事項は、明細書及び図面の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものといえるから、明細書及び図面に記載された事項の範囲内においてなされたものではなく、特許法第17条の2第3項に規定に違反するものであるから、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について

平成26年12月22日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし28に係る発明は、平成26年1月14日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし28に記載された事項により特定されるものであるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。

「【請求項1】
デジタル創作物の流通と使用を制御するための方法であって、
a)使用権を行使するために満足しなければならない1つ以上の条件を定義する使用権情報を前記デジタル創作物に添付するステップと、
b)当該デジタル創作物とそれに添付された使用権情報を記録担体に格納するステップと、
c)当該デジタル創作物が使用されるたびに、当該添付された使用権情報を更新するステップと、
d)前記使用権情報が、当該使用権が行使されてしまったことを示す場合は、当該デジタル創作物の使用を拒絶するステップと
を含む方法において、
前記使用権情報が、暗号化されていない形式で前記記録担体上に格納され、
前記使用権情報が変化したとき、前記記録担体上に設けられた隠しチャネルに格納されていてかつ当該使用権情報を確認するために使用される隠し情報が変化することを特徴とする方法。」

(1)先願発明
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先権主張の日前の他の出願であって、その優先権主張の日後に出願公開された特願平11-141697号(特開2000-330870号公報参照。以下「先願」という。)の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、これらを総称して「先願明細書」という。)には、「コンテンツ処理システムおよびコンテンツ保護方法」について、図面とともに以下の事項が記載されている。なお、下線は当審で付与した。

ア.「【0007】本発明は上述の事情に鑑みてなされたものであり、DVD-RAMなどの記録メディアにコンテンツを記録した場合でもそのコンテンツを不正使用から保護できるようにし、デジタルコンテンツの利用と保護の両立を図ることが可能なコンテンツ処理システムおよびコンテンツ保護方法を提供することを目的とする。」

イ.「【0016】記録メディア(A)116の秘匿エリアには、その記録メディアに固有のメディアキー(MKA )が予め記憶されているROM領域と、後述のGI(Governance Information)テーブルから作成されたGIチェックサムデータを格納するためのGIチェックサム領域とが設けられている。記録メディア(B)117についても同様の構成である。メディアキーは各記録メディアに固有であれば良く、シリアル番号や製造番号、他の様々な識別情報を利用することができる。
【0017】GIテーブルとは、保護対象の各コンテンツ毎にその再生、コピー、移動の可否、およびコピー可能回数、移動可能回数などを規定したコピー制御情報を含む統制情報である。GIチェックサムデータはGIテーブルの内容の改竄を検出するための改変検出用コードデータであり、GIテーブルの値から算出される。GIチェックサムデータの代わりにGIテーブルのハッシュ値を用いることもできる。GIテーブルの「コピー可能回数」の値は、コピーが実行される度に-1減算される。このようにGIテーブルの値が更新される度に、その更新に合わせて、GIチェックサムデータの値も更新される。このため、GIチェックサム領域は書き換え可能な領域から構成されている。」

ウ.「【0023】このように再生/コピー/移動の可否はGIによって制御されるので、コンテンツ保護のためには、GIを改竄から保護することが重要となる。しかし、GIは記録されるコンテンツの数だけ存在するので、そのデータサイズは比較的大きい。そこで、本実施形態では、GIそのものではなく、そのGIからチェックサムデータを生成し、それを安全な秘匿エリアに記録するようにしている。もちろん、GIそのものを秘匿エリアに記録するような制御を行っても良い。」

エ.「【0025】DVD-RAMメディア115を用いてコンテンツの記録、再生、コピー、移動などを行う場合、セキュアマネージャ112は、DVD-RAMメディア115上のリードインエリア、セクタ代替エリア、リードアウトエリアなど、ファイルシステム113からはアクセスできない領域を秘匿エリアとして割り当て、そこに重要な情報を論理的に秘匿化して記録する。秘匿エリアにはGIチェックサムデータが記録されるが、この場合、GIチェックサムデータは、コンテンツキー(Kc)と同様に、DVD-RAMメディア115固有のメディアキー(MKS )を用いて暗号化されて記録される。また、メディアキー(MKS )については、メディアキー(MKS )そのものをDVD-RAMメディア115上に記録するのではなく、その要素となる情報、つまり、DVD-RAMメディア115固有のメディアID、および特定の秘密アルゴリズムで作成された秘密データをDVD-RAMメディア115上に記録しておき、セキュアマネージャ112がそれらメディアIDおよび秘密データからメディアキー(MKS )を作成するようにすることによって、秘匿化を行う。」

オ.「【0028】DVD-RAMメディア115のデータエリアには、次のデータが格納される。
【0029】
・Kc[Content]: コンテンツキーKcと称される秘密鍵によって暗号化されたコンテンツ
・GI: コピー制御情報を含む統制情報
・MKS [Kc]: DVD-RAMメディア115固有のメディアキー(MKS )によって暗号化されたコンテンツキー
また、GIのチェックサムデータは、前述したように、メディアキー(MKS)によって暗号化された後に、DVD-RAMメディア115上のリードインエリア、セクタ代替エリア、リードアウトエリアなど、ファイルシステム113からはアクセスできない領域に記録される。」

カ.「【0043】この後、セキュアマネージャ112は、Kc[Content]、MKS [Kc]、GIを、ファイルシステム113、さらにはATAPIドライバなどを通して、DVD-RAMドライブ114に送り、DVD-RAMメディア115のデータエリアに書き込む。」

キ.「【0050】(ステップ4): セキュアマネージャ112は、アプリケーションプログラム111などから指定された再生対象の暗号化されたコンテンツ(Kc[Content])と、それに対応するMKS[Kc]、およびGIを、ファイルシステム113、さらにはATAPIドライバなどを介して、DVD-RAMメディア115から取得する。」

ク.「【0052】「コピー」図6はコンテンツコピー時の動作の流れを示している。ここでは、DVD-RAMメディア115に記録されているコンテンツを記録メディア(A)116にコピーする場合を例示する。
(中略)
【0057】(ステップ4): セキュアマネージャ112は、アプリケーションプログラム111などから指定されたコピー対象の暗号化されたコンテンツ((Kc[Content])と、それに対応するMKS [Kc]、およびGIを、ファイルシステム113、さらにはATAPIドライバなどを介して、DVD-RAMメディア115から取得する。
【0058】セキュアマネージャ112は、GIからチェックサムを算出し、その算出したチェックサムと、DVD-RAMメディア115の秘匿エリアから取得したGI_CSとを比較する。不一致の場合には、DVD-RAMメディア115のGIが悪意を持つユーザによって書き替えられた恐れがあるため、コピー処理はこの時点で中止する。一致した場合には、DVD-RAMメディア115から読み取ったGIを参照して、コピー対象のコンテンツがコピー可能なコンテンツであるか否かを調べる。「コピー不可」または「コピー可能回数=零」の場合には、コピー処理はこの時点で中止する。コピーが許されたコンテンツであれば、セキュアマネージャ112は、次のステップ5以降の処理に進む。」

ケ.「【0065】「移動」DVD-RAMメディア115に記録されているコンテンツを記録メディア(A)116に移動する場合は、図6のコピー処理と基本的に同じ手順で処理が行われるが、ステップ9の代わりにDVD-RAMメディア115の秘匿エリアの内容を削除する処理が行われ、また図6のステップ10の代わりにDVD-RAMメディア115のKc[Content]、MKS [Kc]、およびGIを削除する処理が行われる、点がコピー処理とは異なる。また、移動の場合は、コピー可能回数に対するGIの更新は行われず、移動可能回数が規定されている場合を除き、GIは更新されずに移動先の記録メディア(A)116に書き込まれることになる。」

・上記ア及びウによれば、先願明細書には、コンテンツのコピーを制御するコンテンツ保護方法について記載されている。

・上記イによれば、コンテンツのコピー可能回数を規定したGIテーブルがコンテンツ毎に設けられ、上記カ、キ及びケによれば、コンテンツを記録、再生、削除する際にGIテーブルの記録、再生、削除を行うことが記載されている。

・上記オによれば、DVD-RAM115にコンテンツとGIテーブルを格納することが記載されており、上記イによれば、GIテーブルにはコンテンツのコピー可能回数が規定されているから、DVD-RAM115にコンテンツのコピー可能回数を格納することが記載されている。

・上記イ(段落【0017】)によれば、コピーが実行される度にコピー可能回数を更新することが記載されている。

・上記クによれば、コピー可能回数が零の場合にはコピー処理を中止することが記載されている。

・上記オ及び図1によれば、コンテンツ、GI(すなわち、GIテーブル)、コンテンツキーKcをDVD-RAMメディア115に格納する際に、コンテンツ及びコンテンツキーKcを暗号化することは記載されているが、GIテーブルを暗号化することは記載されていないから、実質的にGIテーブルを暗号化せずにDVD-RAMメディア115に格納することが記載されていると言える。そして、上記イによれば、GIテーブルにはコンテンツのコピー可能回数が規定されるから、上記イ、オ及び図1によれば、コンテンツのコピー可能回数を暗号化していない状態でDVD-RAM115に格納することが記載されている。

・上記イ(段落【0017】)によれば、GIチェックサムデータはGIテーブルの内容の改竄を検出するための改変検出用コードデータであること、GIテーブルの値が更新される度に、GIチェックサムデータの値も更新されることが記載されている。ここで、GIテーブルにはコンテンツのコピー可能回数が規定されているから、GIチェックサムデータを用いてコピー可能回数の改竄を検出することができる。よって、上記イ(段落【0017】)によれば、コピー可能回数が変化したときに、コピー可能回数の改竄を検出するために用いられるGIチェックサムデータが変化することが記載されている。

・上記エ及びオによれば、GIチェックサムデータは秘匿エリアに記録され、当該秘匿エリアは重要な情報を論理的に秘匿化して記録するエリアであることが記載されている。

したがって、先願明細書には、以下の発明(以下「先願発明」という。)が記載されている。

「コンテンツのコピーを制御するコンテンツ保護方法であって、
コンテンツのコピー可能回数を規定したGIテーブルがコンテンツ毎に設けられ、コンテンツを記録、再生、削除する際にGIテーブルの記録、再生、削除を行い、
コンテンツと当該コンテンツのコピー可能回数をDVD-RAMメディア115に格納し、
コンテンツのコピーが実行される度に、当該コンテンツのコピー可能回数を更新し、
コンテンツのコピー可能回数が零の場合には当該コンテンツのコピー処理は中止され、
コピー可能回数は、暗号化されていない形式でDVD-RAMメディア115上に格納され、
コピー可能回数が変化したとき、DVD-RAMメディア115上に設けられた秘匿エリアに格納されていて、コピー可能回数の改竄を検出するために用いられるGIチェックサムデータが変化し、
前記秘匿エリアは、重要な情報を論理的に秘匿化して記録するエリアであることを特徴とするコンテンツ保護方法。」

(2)対比・判断
本願発明と先願発明とを対比する。

a.先願発明の「コンテンツ」は、本願発明の「デジタル創作物」に相当する。また、本願の段落【0005】における記載「米国特許US-A 5,629,980は、デジタル化権または使用権が、購入と共に取得される、請求項1および13の前文で定義されるような、デジタル創作物の流通と使用を制御する方法および装置を開示する。この使用権により、インターネット上で購入し、ダウンロードし、かつ記録可能型光ディスク上にスクランブルされた形式で格納させた音楽トラック(楽曲)を使用する範囲が、制限される。これらのデジタル化権は、使用規定または使用権とも呼ばれる。例えば、購入者は、個人的な使用のためには3部までのコピーを作ることが許可されるが、4回目のコピーは拒絶されるであろう。」、段落【0035】における記載「購入された使用権が消費(すなわち、コピーまたは演奏操作)によって変化が生じるたびに、ドライブコントローラ21は、対応する制御信号を、キーロッカー更新暗号化ユニット22に供給する。」を参酌すると、本願発明における「流通」や「使用」とは「コピー」を意味するから、先願発明の「コピーを制御する」は、本願発明の「流通と使用を制御する」に相当する。よって、先願発明の「コンテンツのコピーを制御するコンテンツ保護方法であって」は、本願発明の「デジタル創作物の流通と使用を制御するための方法であって」に相当する。

b.先願発明の「コンテンツのコピー可能回数」は、本願発明の「使用権を行使するために満足しなければならない1つ以上の条件を定義する使用権情報」に相当する。また、先願発明においてコピー可能回数を規定したGIテーブルはコンテンツ毎に割り当てられ、コンテンツを記録、再生、削除する際にGIテーブルも記録、再生、削除されるから、先願発明においてコピー可能回数はコンテンツに添付されているといえる。よって、先願発明の「コンテンツのコピー可能回数を規定したGIテーブルがコンテンツ毎に設け」ることは、本願発明の「a)使用権を行使するために満足しなければならない1つ以上の条件を定義する使用権情報を前記デジタル創作物に添付」することに相当する。

c.先願発明の「DVD-RAMメディア115」は、本願発明の「記録担体」に相当する。よって、先願発明の「コンテンツと当該コンテンツのコピー可能回数をDVD-RAM115メディアに格納」することは、本願発明の「b)当該デジタル創作物とそれに添付された使用権情報を記録担体に格納」することに相当する。

d.先願発明の「コンテンツのコピーが実行される度に、当該コンテンツのコピー可能回数を更新」は、本願発明の「c)当該デジタル創作物が使用されるたびに、当該添付された使用権情報を更新」に相当する。

e.先願発明の「コンテンツのコピー可能回数が零の場合」は、本願発明の「前記使用権情報が、当該使用権が行使されてしまったことを示す場合」に相当し、先願発明の「当該コンテンツのコピー処理は中止」は、本願発明の「当該デジタル創作物の使用を拒絶」に相当する。よって、先願発明の「コンテンツのコピー可能回数が零の場合には当該コンテンツのコピー処理は中止」は、本願発明の「d)前記使用権情報が、当該使用権が行使されてしまったことを示す場合は、当該デジタル創作物の使用を拒絶」に相当する。

f.先願発明の「コピー可能回数は、暗号化されていない形式でDVD-RAMメディア115上に格納され」は、本願発明の「前記使用権情報が、暗号化されていない形式で前記記録担体上に格納され」に相当する。

g.先願発明の「コピー可能回数の改竄を検出」することは、本願発明の「使用権情報を確認」することに相当する。また、先願発明の「秘匿エリア」は、重要な情報を論理的に秘匿化して記録するエリアであり、本願発明の「隠しチャネル」に相当する。そして、先願発明の「GIチェックサムデータ」は、秘匿エリアに記録されたものであるから、本願発明の「隠し情報」に相当する。よって、先願発明の「コピー可能回数が変化したとき、DVD-RAMメディア115上に設けられた秘匿エリアに格納されていて、コピー可能回数の改竄を検出するために用いられるGIチェックサムデータが変化」は、本願発明の「前記使用権情報が変化したとき、前記記録担体上に設けられた隠しチャネルに格納されていてかつ当該使用権情報を確認するために使用される隠し情報が変化」に相当する。

以上をまとめると、先願発明と本願発明は、
「デジタル創作物の流通と使用を制御するための方法であって、
a)使用権を行使するために満足しなければならない1つ以上の条件を定義する使用権情報を前記デジタル創作物に添付するステップと、
b)当該デジタル創作物とそれに添付された使用権情報を記録担体に格納するステップと、
c)当該デジタル創作物が使用されるたびに、当該添付された使用権情報を更新するステップと、
d)前記使用権情報が、当該使用権が行使されてしまったことを示す場合は、当該デジタル創作物の使用を拒絶するステップと
を含む方法において、
前記使用権情報が、暗号化されていない形式で前記記録担体上に格納され、
前記使用権情報が変化したとき、前記記録担体上に設けられた隠しチャネルに格納されていてかつ当該使用権情報を確認するために使用される隠し情報が変化することを特徴とする方法。」
の発明である点で一致し、両者の間に相違するところがない。

よって、請求項1に係る発明は、先願発明と同一であり、しかも、請求項1に係る発明の発明者が先願発明に係る発明者と同一ではなく、また、本願の出願の時点において、その出願人が先願の出願人と同一でもないから、請求項1に係る発明は特許法第29条の2の規定により特許を受けることができない。

(3)むすび
以上のとおり、請求項1に係る発明は、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができない。したがって、その余の請求項について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-12-04 
結審通知日 2015-12-15 
審決日 2016-01-05 
出願番号 特願2013-3622(P2013-3622)
審決分類 P 1 8・ 561- Z (G11B)
P 1 8・ 161- Z (G11B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 堀 洋介  
特許庁審判長 酒井 朋広
特許庁審判官 ゆずりは 広行
関谷 隆一
発明の名称 デジタル創作物の流通と使用を制御する方法および装置  
代理人 伊東 忠彦  
代理人 大貫 進介  
代理人 伊東 忠重  

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