ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H04N 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 H04N |
---|---|
管理番号 | 1315186 |
審判番号 | 不服2016-4589 |
総通号数 | 199 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2016-07-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2016-03-29 |
確定日 | 2016-06-14 |
事件の表示 | 特願2015-232809「送信装置、送信方法、受信装置および受信方法」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 4月 7日出願公開、特開2016- 48955、請求項の数(8)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1.手続の経緯 本願は、平成26年4月14日に出願した特願2014-83232号の一部を、数次の分割を経て平成27年11月30日に新たな特許出願としたものであって、平成27年12月21日(起案日)付けで拒絶の理由が通知され、それに応答して平成28年1月28日付けで手続補正がなされたが、平成28年2月19日(起案日)付けで拒絶査定がなされた。 これに対し、平成28年3月29日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。 第2.本願発明 本願の請求項1ないし8に係る発明は、平成28年1月28日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。 「【請求項1】 動画像データを構成する各ピクチャの画像データを階層符号化し、低階層側のピクチャの符号化画像データを持つ基本ストリームと高階層側のピクチャの符号化画像データを持つ拡張ストリームを生成する画像符号化部を備え、 上記画像符号化部は、上記基本ストリームの各ピクチャの階層構造が変化する場合において、上記拡張ストリームに含まれるピクチャの階層を上記基本ストリームのピクチャが取り得る最大階層より大きな固定の階層とし、 上記画像符号化部で生成された上記基本ストリームおよび上記拡張ストリームを含む多重化ストリームを生成する多重化ストリーム生成部と、 上記多重化ストリームに上記基本ストリームのビットレートのレベル指定値を挿入する情報挿入部と、 上記基本ストリームのビットレートのレベル指定値が挿入された多重化ストリームを送信する送信部をさらに備える 送信装置。 【請求項2】 上記情報挿入部は、 上記多重化ストリームに上記基本ストリームおよび上記拡張ストリームを合わせたビットレートのレベル指定値をさらに挿入し、 上記送信部は、 上記基本ストリームのビットレートのレベル指定値と共に、上記基本ストリームおよび上記拡張ストリームを合わせたビットレートのレベル指定値が挿入された多重化ストリームを送信する 請求項1に記載の送信装置。 【請求項3】 上記情報挿入部は、 上記多重化ストリームに上記基本ストリームおよび上記拡張ストリームのピクチャの階層範囲情報をさらに挿入し、 上記送信部は、 上記基本ストリームのビットレートのレベル指定値と共に、上記基本ストリームおよび上記拡張ストリームのピクチャの階層範囲情報が挿入された多重化ストリームを送信する 請求項1に記載の送信装置。 【請求項4】 上記基本ストリームは60Hzの符号化画像データを持ち、上記基本ストリームおよび上記拡張ストリームは120Hzの符号化画像データを持つ 請求項1に記載の送信装置。 【請求項5】 上記拡張ストリームに含まれるピクチャの階層は1つである 請求項1に記載の送信装置。 【請求項6】 画像符号化部が、動画像データを構成する各ピクチャの画像データを階層符号化し、低階層側のピクチャの符号化画像データを持つ基本ストリームと高階層側のピクチャの符号化画像データを持つ拡張ストリームを生成する画像符号化ステップを有し、 上記画像符号化ステップでは、上記画像符号化部が、上記基本ストリームの各ピクチャの階層構造が変化する場合において、上記拡張ストリームに含まれるピクチャの階層を上記基本ストリームのピクチャが取り得る最大階層より大きな固定の階層とし、 多重化ストリーム生成部が、上記画像符号化ステップで生成された上記基本ストリームおよび上記拡張ストリームを含む多重化ストリームを生成する多重化ストリーム生成ステップと、 情報挿入部が、上記多重化ストリームに上記基本ストリームのビットレートのレベル指定値を挿入する情報挿入ステップと、 送信部が、上記基本ストリームのビットレートのレベル指定値が挿入された多重化ストリームを送信する送信ステップをさらに有する 送信方法。 【請求項7】 動画像データを構成する各ピクチャの画像データが階層符号化されて生成された、低階層側のピクチャの符号化画像データを持つ基本ストリームと高階層側のピクチャの符号化画像データを持つ拡張ストリームとを含む多重化ストリームを受信する受信部を備え、 上記基本ストリームの各ピクチャの階層構造が変化する場合において、上記拡張ストリームに含まれるピクチャの階層は上記基本ストリームのピクチャが取り得る最大階層より大きな固定の階層とされており、 上記多重化ストリームに上記基本ストリームのビットレートのレベル指定値が挿入されており、 デコード能力に応じて、上記基本ストリームに含まれる各階層のピクチャの符号化画像データのみを抽出し、あるいは上記基本ストリームに含まれる各階層のピクチャの符号化画像データおよび上記拡張ストリームに含まれる上記固定の階層のピクチャの符号化画像データの双方を抽出し、該抽出された各ピクチャの符号化画像データにデコード処理を実行する処理部をさらに備え、 上記処理部は、 上記基本ストリームに含まれる各階層のピクチャの符号化画像データとして、上記固定の階層より下位の階層のピクチャの符号化画像データを抽出する 受信装置。 【請求項8】 受信部が、動画像データを構成する各ピクチャの画像データが階層符号化されて生成された、低階層側のピクチャの符号化画像データを持つ基本ストリームと高階層側のピクチャの符号化画像データを持つ拡張ストリームとを含む多重化ストリームを受信する受信ステップを有し、 上記基本ストリームの各ピクチャの階層構造が変化する場合において、上記拡張ストリームに含まれるピクチャの階層は上記基本ストリームのピクチャが取り得る最大階層より大きな固定の階層とされており、 上記多重化ストリームに上記基本ストリームのビットレートのレベル指定値が挿入されており、 処理部が、デコード能力に応じて、上記基本ストリームに含まれる各階層のピクチャの符号化画像データのみを抽出し、あるいは上記基本ストリームに含まれる各階層のピクチャの符号化画像データおよび上記拡張ストリームに含まれる上記固定の階層のピクチャの符号化画像データの双方を抽出し、該抽出された各ピクチャの符号化画像データにデコード処理を実行する処理ステップをさらに有し、 上記処理ステップでは、 上記処理部が、上記基本ストリームに含まれる各階層のピクチャの符号化画像データとして、上記固定の階層より下位の階層のピクチャの符号化画像データを抽出する 受信方法。」 第3.原査定の理由の概要 1.本件出願の請求項7ないし8に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 2.本件出願の請求項7ないし8に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記(引用文献) 引用文献1:青木ほか,「放送・通信連携のためのMMTの運用方法の検討」,情報処理学会研究報告 オーディオビジュアル複合情報処理(AVM) 2014-AVM-084 [online],日本,情報処理学会,2014年2月14日,Vol.2014-AVM-84,No.2 請求項7,8に係る発明と、引用文献1に記載された発明とを対比すると、引用文献1には「上記基本ストリームの各ピクチャの階層構造が変化する場合において、上記拡張ストリームに含まれるピクチャの階層は上記基本ストリームのピクチャが取り得る最大階層より大きな固定の階層とされて」いることの記載がない点で、記載上、表現上の相違がある。 しかしながら、当該ピクチャの構造に対応した受信及びデコード処理は、拡張ストリームに含まれるピクチャの階層が固定の階層とされているか否かに関わらず、通常のHEVCストリームの受信及びデコード処理においてなし得る処理にほかならない。 したがって、請求項7に係る受信装置、請求項8に係る受信方法を特定する記載における、上記ピクチャの階層構造に係る表現については、請求項7に係る受信装置、請求項8に係る受信方法について、構造、機能等に差異をもたらすものでないから、相違点とすることはできない。 第4.当審の判断 1.引用文献1の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1である「放送・通信連携のためのMMTの運用方法の検討」の「4. 時間方向階層符号化へのMMTの対応」には、次に掲げる事項が記載されている。 「4.1 HEVCの時間方向階層符号化 フォーマットが7680x4320/120/Pあるいは3840x2160/120/Pの映像信号を送出した場合,それぞれ7680x4320/60/Pあるいは3840x2160/60/Pに対応した受信端末においても60Pの映像として復号・提示できることが望ましい.時間方向階層符号化をおこなったHEVCストリームの120Pサブセットから60Pサブビットストリームを分離できる構造とし,受信端末が両者を識別できるよう伝送することで,この要件に対応することが可能である.時間方向階層符号化をおこなったHEVCストリームの構造の例を図7に示す.この例では,Temporal IDが0から2までのNALユニットを60Pサブビットストリームとし,Temporal IDが3のNALユニットを120Pサブセットとする.」(4頁左欄14行?右欄4行) 「 」 「4.2 放送における120P対応 時間方向階層符号化HEVCビットストリームの伝送に関する提案の概要を図8に示す.パッケージを構成する際,60Hz復号表示用のHEVC時間方向サブビットストリームと120Hz復号表示用サブセットは,別々のアセットとする.図8では前者をアセット1,後者をアセット2として示した.別々のアセットであるため,アセット1とアセット2のAUは,別々のパケットIDのMMTPパケットで伝送されることとなる. また,120Hz復号表示用サブセットのAUを含むMPUは,それらのAUが属するGOPの60Hz復号表示用サブビットストリームのAUを含むMPUと同一のMPUシーケンス番号を付加することを提案する.時間的に関係のあるMPUを同一のMPUシーケンス番号とすることで,受信端末はこれらのアセットが同一のGOPに属するAUを含むことを容易に識別することが可能である. アセット2はアセット1に復号が依存することとなる.そのため,MPテーブルにおけるアセット2の情報を記述する記述子領域に依存関係記述子を挿入し,依存先としてアセット1のアセットIDを記述する.アセット1とアセット2が伝送されるネットワーク及びパケットIDは,MPテーブルのロケーション情報によりアセットごとに示すこととする.なお,アセット1とアセット2のいずれにもタイムスタンプ記述子を付加することとする.アセット1については,その先頭に位置するIRAP AUの提示時刻を示し,アセット2では,その先頭に位置するBピクチャの提示時刻を示すこととする. このように送出することで,120Pに対応した受信端末は120P対応のHEVCデコーダを用いて120Pの復号・提示を行うことができるだけでなく,60Pに対応した受信端末でも60P対応のHEVCデコーダで60Pの復号・提示を行うことが可能となる.」(4頁右欄5行?5頁左欄4行) 「 」 2.引用発明 上記の記載事項によれば、引用文献1には、時間方向階層符号化をおこなったHEVCストリームの構造を、受信端末において60Pサブビットストリームと120Pサブセットを識別し分離できる構造とすることが記載されており、具体的には、Temporal IDが0から2までのNALユニットを60Pサブビットストリームとし、Temporal IDが3のNALユニットを120Pサブセットとすること、120Pサブセットと60Pサブビットストリームは別々のアセットとし、別々のパケットIDのMMTPパケットで伝送されることが記載されている。 そして、このような構造の時間方向階層符号化HEVCストリームを送出することにより、60Pに対応した受信端末は60P対応のHEVCデコーダを用いて60Pの復号・提示を行うことができ、120Pに対応した受信端末は120P対応のHEVCデコーダを用いて120Pの復号・提示を行うことが可能となることが記載されている。 そして、これらの記載事項を受信端末の機能として捉えると、引用文献1には、別々のパケットIDを有する60Pサブビットストリームと120Pサブセットを含む時間方向階層符号化HEVCストリームを受信し、60Pサブビットストリームと120Pサブセットを識別して分離可能であり、60Pに対応した受信端末であれば、60P対応のHEVCデコーダを用いて60Pの復号・提示を行い、120Pに対応した受信端末であれば、120P対応のHEVCデコーダを用いて120Pの復号・提示を行う受信端末が記載されており、ここで、60Pサブビットストリームは、Temporal IDが0から2までのNALユニットからなり、120Pサブセットは、Temporal IDが3のNALユニットからなるものであることが記載されている。 以上のことから、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という)が記載されていると認められる。なお、引用発明の各構成の符号は、説明のために当審において付与したものであり、以下、構成(a)、構成(b)などと称する。 (引用発明) (a)別々のパケットIDを有する60Pサブビットストリームと120Pサブセットを含む時間方向階層符号化HEVCストリームを受信し、 (b)60Pサブビットストリームは、Temporal IDが0から2までのNALユニットからなり、120Pサブセットは、Temporal IDが3のNALユニットからなり、 (c)60Pサブビットストリームと120Pサブセットを識別して分離可能であり、60Pに対応した受信端末であれば、60P対応のHEVCデコーダを用いて60Pの復号・提示を行い、120Pに対応した受信端末であれば、120P対応のHEVCデコーダを用いて120Pの復号・提示を行う (d)受信端末。 3.請求項7に係る発明について (1)本願発明 本願の請求項7に係る発明(以下、「本願発明」という)は、次のとおりである。なお、本願発明の各構成の符号は、説明のために当審において付与したものであり、以下、構成(A)、構成(B)などと称する。 (本願発明) (A)動画像データを構成する各ピクチャの画像データが階層符号化されて生成された、低階層側のピクチャの符号化画像データを持つ基本ストリームと高階層側のピクチャの符号化画像データを持つ拡張ストリームとを含む多重化ストリームを受信する受信部を備え、 (B)上記基本ストリームの各ピクチャの階層構造が変化する場合において、上記拡張ストリームに含まれるピクチャの階層は上記基本ストリームのピクチャが取り得る最大階層より大きな固定の階層とされており、 (C)上記多重化ストリームに上記基本ストリームのビットレートのレベル指定値が挿入されており、 (D)デコード能力に応じて、上記基本ストリームに含まれる各階層のピクチャの符号化画像データのみを抽出し、あるいは上記基本ストリームに含まれる各階層のピクチャの符号化画像データおよび上記拡張ストリームに含まれる上記固定の階層のピクチャの符号化画像データの双方を抽出し、該抽出された各ピクチャの符号化画像データにデコード処理を実行する処理部をさらに備え、 (E)上記処理部は、 上記基本ストリームに含まれる各階層のピクチャの符号化画像データとして、上記固定の階層より下位の階層のピクチャの符号化画像データを抽出する (F)受信装置。 (2)対比 本願発明と引用発明とを対比する。 a.本願発明の構成(A)について 引用発明の受信端末は、構成(a)のように、別々のパケットIDを有する60Pサブビットストリームと120Pサブセットを含む時間方向階層符号化HEVCストリームを受信するものである。 ここで、引用発明の「時間方向階層符号化HEVCストリーム」に含まれる「60Pサブビットストリームと120Pサブセット」は、本願発明の「動画像データを構成する各ピクチャの画像データが階層符号化されて生成された、低階層側のピクチャの符号化画像データを持つ基本ストリームと高階層側のピクチャの符号化画像データを持つ拡張ストリーム」に相当する。そして、引用発明のHEVCストリームは、それらのサブセットを多重化した多重化ストリームといえる。 また、引用発明の受信端末は、HEVCストリームを受信するから、受信部を備えているといえる。 したがって、引用発明の構成(a)は、本願発明の構成(A)の「動画像データを構成する各ピクチャの画像データが階層符号化されて生成された、低階層側のピクチャの符号化画像データを持つ基本ストリームと高階層側のピクチャの符号化画像データを持つ拡張ストリームとを含む多重化ストリームを受信する受信部を備え」という構成と一致するものといえる。 b.本願発明の構成(B)について 引用発明は、構成(b)のように、60Pサブビットストリームは、Temporal IDが0から2までのNALユニットからなり、120Pサブセットは、Temporal IDが3のNALユニットからなるものであるが、本願発明の構成(B)のように「上記基本ストリームの各ピクチャの階層構造が変化する場合において、上記拡張ストリームに含まれるピクチャの階層は上記基本ストリームのピクチャが取り得る最大階層より大きな固定の階層とされ」ているものとは特定されていない点で本願発明と相違する。 c.本願発明の構成(C)について 引用発明は、本願発明の構成(C)のように「上記多重化ストリームに上記基本ストリームのビットレートのレベル指定値が挿入され」ているものとは特定されていない点で本願発明と相違する。 d.本願発明の構成(D)について 引用発明は、構成(c)のように、60Pサブビットストリームと120Pサブセットを識別して分離可能であり、60Pに対応した受信端末であれば、60P対応のHEVCデコーダを用いて60Pの復号・提示を行い、120Pに対応した受信端末であれば、120P対応のHEVCデコーダを用いて120Pの復号・提示を行うものである。 すなわち、引用発明は、60Pに対応したHEVCデコーダを有する受信端末であれば、60Pサブビットストリームを分離し60Pの復号・提示を行い、120Pに対応したHEVCデコーダを有する受信端末であれば、60Pサブビットストリームと120Pサブセットを用いて120Pの復号・提示を行うものである。 よって、引用発明の構成(c)は、受信端末のHEVCデコーダの能力に応じて、60Pサブビットストリームのみを抽出し、あるいは60Pサブビットストリームと120Pサブセットの双方を抽出し、該抽出されたサブセットにデコード処理を実行するものといえ、引用発明の受信端末は、そのようなデコード処理を実行する処理部を備えているものといえる。 したがって、引用発明の構成(c)は、本願発明の構成(D)と「デコード能力に応じて、上記基本ストリームに含まれる各階層のピクチャの符号化画像データのみを抽出し、あるいは上記基本ストリームに含まれる各階層のピクチャの符号化画像データおよび上記拡張ストリームに含まれる各階層のピクチャの符号化画像データの双方を抽出し、該抽出された各ピクチャの符号化画像データにデコード処理を実行する処理部をさらに備え」というものである点において一致するものといえる。 ただし、引用発明は、上述のb.において検討したとおり、「上記拡張ストリームに含まれるピクチャの階層は上記基本ストリームのピクチャが取り得る最大階層より大きな固定の階層とされ」ているものとは特定されていないことから、それに伴い、処理部において抽出する『上記拡張ストリームに含まれる各階層のピクチャの符号化画像データ』が、本願発明では「上記拡張ストリームに含まれる上記固定の階層のピクチャの符号化画像データ」であるのに対し、引用発明ではそのようなものであるとは特定されていない点で両者は相違する。 e.本願発明の構成(E)について 引用発明は、上述のb.において検討したとおり、「上記拡張ストリームに含まれるピクチャの階層は上記基本ストリームのピクチャが取り得る最大階層より大きな固定の階層とされ」ているものとは特定されていないことから、それに伴い、本願発明の構成(E)のように、上記処理部は、「上記基本ストリームに含まれる各階層のピクチャの符号化画像データとして、上記固定の階層より下位の階層のピクチャの符号化画像データを抽出する」ものとは特定されていない点で本願発明と相違する。 f.本願発明の構成(F)について 引用発明の構成(d)の受信端末は「受信装置」といえるから、引用発明の構成(d)は、本願発明の構成(F)と一致するものである。 g.以上をまとめると、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は以下のとおりである。 [一致点] 動画像データを構成する各ピクチャの画像データが階層符号化されて生成された、低階層側のピクチャの符号化画像データを持つ基本ストリームと高階層側のピクチャの符号化画像データを持つ拡張ストリームとを含む多重化ストリームを受信する受信部を備え、 デコード能力に応じて、上記基本ストリームに含まれる各階層のピクチャの符号化画像データのみを抽出し、あるいは上記基本ストリームに含まれる各階層のピクチャの符号化画像データおよび上記拡張ストリームに含まれる各階層のピクチャの符号化画像データの双方を抽出し、該抽出された各ピクチャの符号化画像データにデコード処理を実行する処理部をさらに備える、 受信装置。 [相違点1] 引用発明は、本願発明のように「上記基本ストリームの各ピクチャの階層構造が変化する場合において、上記拡張ストリームに含まれるピクチャの階層は上記基本ストリームのピクチャが取り得る最大階層より大きな固定の階層とされ」ているものとは特定されておらず、それに伴い、処理部において抽出する『上記拡張ストリームに含まれる各階層のピクチャの符号化画像データ』が、本願発明では「上記拡張ストリームに含まれる上記固定の階層のピクチャの符号化画像データ」であるのに対し、引用発明ではそのようなものであるとは特定されておらず、さらに、引用発明の処理部は、「上記基本ストリームに含まれる各階層のピクチャの符号化画像データとして、上記固定の階層より下位の階層のピクチャの符号化画像データを抽出する」ものとは特定されていない点。 [相違点2] 引用発明は、本願発明のように「上記多重化ストリームに上記基本ストリームのビットレートのレベル指定値が挿入され」ているものとは特定されていない点。 (3)相違点の判断 a.相違点1について 本願発明の「上記基本ストリームの各ピクチャの階層構造が変化する場合において、上記拡張ストリームに含まれるピクチャの階層は上記基本ストリームのピクチャが取り得る最大階層より大きな固定の階層とされ」ているという事項について確認すると、本願明細書の段落【0017】,【0018】,【図3】,【0059】?【0078】,【図12】,【図13】,【0122】?【0134】,【図20】,【図21】に記載されているように、基本ストリームが0から2の階層範囲や0から3の階層範囲を取り得るものであった場合には、拡張ストリームの階層を、基本ストリームが取り得る階層範囲より大きな4あるいは5の固定の階層とするというものである。そして、このような構造を採用する場合には、階層ギャップが生じる場合が存在することとなる。 そうすると、本願発明の受信装置は、階層符号化されたストリームに階層ギャップが存在し得ることに対応し、「上記基本ストリームの各ピクチャの階層構造が変化する場合において、上記拡張ストリームに含まれるピクチャの階層は上記基本ストリームのピクチャが取り得る最大階層より大きな固定の階層とされ」ている多重化ストリームを受信し処理することが可能な受信装置であり、上記構成に対応する特定の機能を備えた受信装置である。 一方、引用発明の受信端末は、Temporal IDが0から2までのNALユニットからなる60Pサブビットストリームと、Temporal IDが3のNALユニットからなるは120Pサブセットを受信し、それらを識別、分離、復号するものであるから、階層ギャップが存在しない階層符号化がなされたストリームを受信して処理するもののみが開示されているものであって、階層ギャップが存在し得る階層符号化がなされたストリームに対応するのか否かは不明である。 そして、本願発明は、この「上記基本ストリームの各ピクチャの階層構造が変化する場合において、上記拡張ストリームに含まれるピクチャの階層は上記基本ストリームのピクチャが取り得る最大階層より大きな固定の階層とされ」ているという構成を、サービス切り替え時における表示ミュートの発生を容易に回避することを目的として(本願明細書の段落【0005】)採用したものであるが、引用発明にはそのような技術思想は開示されておらず、引用発明において上記構成を採用する動機付けは存在しない。 よって、引用発明において相違点1に係る「上記基本ストリームの各ピクチャの階層構造が変化する場合において、上記拡張ストリームに含まれるピクチャの階層は上記基本ストリームのピクチャが取り得る最大階層より大きな固定の階層とされ」ているものとし、それに伴って、処理部において抽出する『上記拡張ストリームに含まれる各階層のピクチャの符号化画像データ』を、「上記拡張ストリームに含まれる上記固定の階層のピクチャの符号化画像データ」とし、さらに、処理部を、「上記基本ストリームに含まれる各階層のピクチャの符号化画像データとして、上記固定の階層より下位の階層のピクチャの符号化画像データを抽出する」ものとすることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。 b.相違点2について 時間方向階層符号化がなされた階層符号化データを単一のストリームとしたHEVCストリームにおいて、レベル指定値が挿入されることは周知の技術であるから、引用発明において、時間方向階層符号化HEVCストリームの単独でデコード可能な60Pサブビットストリームについて、その60Pサブビットストリームに対応するレベル指定値を多重化ストリームに挿入し、相違点2に係る「上記多重化ストリームに上記基本ストリームのビットレートのレベル指定値が挿入され」ているものとすることは、当業者が容易に想到し得ることである。 (4)まとめ 以上のとおりであるから、本願発明は、引用文献1に記載された発明と相違し、また、引用文献1に記載された発明、並びに周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 4.請求項8に係る発明、及び請求項1ないし6に係る発明について 本願の請求項8に係る発明は、請求項7の装置を方法としたものであり、上記[相違点1]に係る請求項7の「上記基本ストリームの各ピクチャの階層構造が変化する場合において、上記拡張ストリームに含まれるピクチャの階層は上記基本ストリームのピクチャが取り得る最大階層より大きな固定の階層とされ」ており、それに伴い、「上記基本ストリームに含まれる各階層のピクチャの符号化画像データとして、上記固定の階層より下位の階層のピクチャの符号化画像データを抽出する」という技術事項を含むものであるから、同様の理由により、引用文献1に記載された発明と相違し、また、引用文献1に記載された発明、並びに周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 また、請求項1ないし6に係る発明について、拒絶すべき理由を発見しない。 第5.むすび 以上のとおり、本願の請求項7ないし8に係る発明は、引用文献1に記載された発明と相違し、また、引用文献1に記載された発明、並びに周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、原査定の拒絶理由によっては拒絶すべきものとすることはできない。 また、他に本願の請求項1ないし8を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2016-05-30 |
出願番号 | 特願2015-232809(P2015-232809) |
審決分類 |
P
1
8・
113-
WY
(H04N)
P 1 8・ 121- WY (H04N) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 後藤 嘉宏 |
特許庁審判長 |
藤井 浩 |
特許庁審判官 |
戸次 一夫 清水 正一 |
発明の名称 | 送信装置、送信方法、受信装置および受信方法 |
代理人 | 澤田 俊夫 |
代理人 | 宮田 正昭 |
代理人 | 特許業務法人大同特許事務所 |
代理人 | 山田 英治 |
代理人 | 佐々木 榮二 |