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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G03B
管理番号 1315388
審判番号 不服2015-10352  
総通号数 199 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-07-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-06-03 
確定日 2016-06-21 
事件の表示 特願2014- 39798「写真シール作成装置および写真シール作成方法」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 9月10日出願公開,特開2015-163924,請求項の数(9)〕について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は,特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本件出願は,平成26年2月28日の出願であって,平成26年7月16日付けで拒絶理由が通知され,同年9月22日に意見書及び手続補正書が提出され,同年10月30日付けで拒絶理由が通知され,平成27年1月5日に意見書及び手続補正書が提出されたところ,平成27年1月5日提出の手続補正書による補正が平成27年2月27日付けで却下されるとともに同日付けで拒絶査定がされ,これに対し,平成27年6月3日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正がされたものである。

第2 平成27年6月3日提出の手続補正書による補正の適否
1 補正の内容
平成27年6月3日提出の手続補正書による補正(以下,「本件補正」という。)は,平成26年9月22日提出の手続補正書による補正(以下,「本件補正前」という。)の特許請求の範囲及び明細書についてするものであって,そのうち特許請求の範囲の請求項1についての補正は,本件補正前の請求項1が次の(1)のとおりであったものを,次の(2)のとおりに補正するものであり((1)及び(2)における下線は補正箇所を示す。)当該請求項1についての本件補正は,次の(3)の補正事項からなる。

(1) 本件補正前の請求項1
「【請求項1】
複数の利用者を被写体として複数回撮影し,第1および第2の撮影画像を取得する撮影手段と,
前記第1の撮影画像における前記利用者それぞれの目を含む目領域に,目の形状を異ならせる複数種類の画像処理を施すことで,前記利用者毎に,目の形状がそれぞれ異なる複数の被写体画像を生成する画像処理手段と,
前記利用者毎の複数の前記被写体画像が,前記利用者毎に区分された領域に配置されて構成される選択画面を表示する表示手段と
を備え,
前記画像処理手段は,前記選択画面において選択された前記利用者毎の前記被写体画像に施された前記画像処理を,前記第2の撮影画像における前記利用者それぞれの前記目領域に施す
写真シール作成装置。」

(2) 本件補正後の請求項1
「【請求項1】
複数の利用者を被写体として複数回撮影し,第1および第2の撮影画像を取得する撮影手段と,
前記第1の撮影画像における前記利用者それぞれの目を含む目領域に,目の形状を異ならせる複数種類の画像処理を施すことで,前記利用者毎に,目の形状がそれぞれ異なる複数の被写体画像を生成する画像処理手段と,
前記利用者毎の複数の前記被写体画像が,前記利用者毎に区分された領域に配置されて構成される選択画面を表示する表示手段と
を備え,
前記画像処理手段は,前記選択画面において選択された前記利用者毎の前記被写体画像に施された前記画像処理を,前記第2の撮影画像における前記利用者それぞれの前記目領域に施し,前記第2の撮影画像において片目をつぶっている前記利用者の前記目領域には前記画像処理を施さない
写真シール作成装置。」

(3) 補正事項
本件補正前の請求項1に「前記選択画面において選択された前記利用者毎の前記被写体画像に施された前記画像処理を,前記第2の撮影画像における前記利用者それぞれの前記目領域に施す」とあるのを,「前記選択画面において選択された前記利用者毎の前記被写体画像に施された前記画像処理を,前記第2の撮影画像における前記利用者それぞれの前記目領域に施し,前記第2の撮影画像において片目をつぶっている前記利用者の前記目領域には前記画像処理を施さない」に補正する。

2 新規事項の追加の有無について
前記1(3)の補正事項における限定は,本願の願書に最初に添付した明細書(以下,願書に最初に添付した明細書を「当初明細書」といい,願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲及び図面を総称して「当初明細書等」という。)の【0289】?【0292】等に記載されている。したがって,当該補正事項は当初明細書等に記載された事項の範囲内においてするものである。

3 補正の目的について
前記1(3)の補正事項は,本件補正前の請求項1について,その発明特定事項である「画像処理手段」が行う「画像処理」の内容を限定するものであって,本件補正の前後で当該請求項1に係る発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一であると認められるから,特許法17条の2第5項2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

4 独立特許要件について
前記3で述べたように,請求項1についての本件補正は,特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから,本件補正後の請求項1に係る発明(以下,「本件補正発明」という。)について,特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について検討する。

(1) 本件補正発明
本件補正発明は,前記1(2)にて本件補正後の請求項1として記載したとおりのものである。
(2) 引用例
ア 特開2013-17127号公報
(ア) 原査定の拒絶の理由に引用された特開2013-17127号公報(以下,「引用文献1」という。)は,本願の出願前に頒布された刊行物であって,当該引用文献1には,次の記載がある。

a 「【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用者の撮影を行う撮影手段と,前記撮影手段により取得される撮影画像を含む合成画像を写真として出力する出力手段とを備える自動写真作成装置であって,
前記利用者による操作入力を受け付ける入力手段と,
表示手段と,
前記撮影手段により一回目の撮影画像を取得した後,当該一回目の撮影画像に含まれる前記利用者の像の少なくとも一部における色または形状の少なくとも一方の変更を行うためのパラメータの値に対する予め定められた複数の候補値それぞれに基づき変更が行われた複数の撮影画像を前記表示手段に表示するとともに,前記複数の候補値から1つを選択し前記パラメータの値とする操作入力を受け付け,全てのパラメータの値が確定された後,前記撮影手段により二回目以降に取得される撮影画像に対して,前記確定された全てのパラメータの値に応じて前記変更を行う画像変更手段と
を備え,
前記出力手段は,前記確定された全てのパラメータの値に応じて前記変更が行われた撮影画像を1つ以上含む1つ以上の合成画像を出力することを特徴とする,自動写真作成装置。」

b 「【技術分野】
【0001】
本発明は,自動写真作成装置,自動写真作成方法およびプログラムに関し,さらに詳しくは,利用者をカメラで撮影し,その撮影画像に基づき生成される合成画像を写真等として出力する自動写真作成装置,自動写真作成方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来,利用者をカメラで撮影し,その撮影画像を写真シールや写真カード等として出力する遊戯用写真作成装置が知られている。このような遊戯用写真作成装置は,遊戯性または娯楽性が高いことから,撮影画像と合成すべき画像を,利用者の嗜好に応じて,予め用意された多種多様な背景画像および前景画像から選択したり,タッチペンを用いて利用者が自由に描いたりできるように構成されているものが多い。利用者によるこのような操作は,撮影画像に対してなされるため,「落書き」と呼ばれる。
【0003】
また,このような遊戯用写真作成装置において落書き対象となる撮影画像は,通常複数回の撮影により得られる複数枚(例えば6枚)の中から,さらに複数枚(例えば4枚)が選択されることが多い。このような撮影画像に対しては,落書きが行われる前に(または落書き中に)予め定められた態様の補正が行われることが多い。例えば,撮影画像に含まれる利用者の像の一部の色(例えば肌や目の色)を変更したり,当該像の一部の形(例えば目や顔の形)を変更したりする補正が行われることがある。例えば,特開2010-50501号公報には,利用者の指示に基づくことなく自動的に撮影画像における利用者の顔の輪郭を小さくする小顔処理が行われる構成が記載されている。」

c 「【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで,上記特開2010-50501号公報に記載されている小顔処理のように利用者の指示を受け付けることなく行うことが可能な補正処理もあるが,例えば肌や目の色など,利用者の像に対する補正の内容によっては,利用者の指示を受け付けることによりその嗜好に応じた補正を行うことが適切な場合がある。この場合には,補正の内容や程度を利用者が選択可能なように表示し,利用者による選択操作を受け付けることになる。
【0006】
しかし,遊戯用写真作成装置では,利用者のプレイ時間(撮影から落書きを経て写真出力するまでの時間)に制限を設けることが多い。そのため,上記補正内容等の選択操作は,利用者にとって直感的に素早くできることが好ましく,かつ限られた撮影時間内にできるだけ多くの写真を撮影できることが好ましい。
【0007】
そこで,本発明では,限られた時間内に多くの撮影画像を取得することができ,かつ利用者が撮影画像に対する補正を直感的に素早く行うことができる自動写真作成装置,自動写真作成方法およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の或る局面は,利用者の撮影を行い,撮影により取得される撮影画像を含む合成画像を写真として出力し,利用者による操作入力を受け付け,画像を表示するものである。
撮影により一回目の撮影画像を取得した後,当該一回目の撮影画像に含まれる利用者の像の少なくとも一部における色または形状の少なくとも一方の変更を行うためのパラメータの値に対する予め定められた複数の候補値それぞれに基づき変更が行われた複数の撮影画像を表示するとともに,複数の候補値から1つを選択しパラメータの値とする操作入力を受け付け,全てのパラメータの値が確定された後,撮影により二回目以降に取得される撮影画像に対して,確定された全てのパラメータの値に応じて変更を行う。そして,確定された全てのパラメータの値に応じて変更が行われた撮影画像を1つ以上含む1つ以上の合成画像を出力する。
【0009】
・・・(省略)・・・
【発明の効果】
【0010】
上記本発明の或る局面によれば,一回目の撮影画像に含まれる利用者の像の変更を行うためのパラメータの値に対する予め定められた複数の候補値それぞれに基づき変更が行われた複数の撮影画像を表示するとともに,複数の候補値から1つを選択しパラメータの値とする操作入力を受け付け,一回目の撮影画像に対して確定されたパラメータの値に応じて変更を行い,撮影により二回目以降に取得される撮影画像に対して,確定されたパラメータの値に応じて変更を行うので,全体として限られた時間内に取得される撮影画像を多くすることができ,かつあらかじめ定められた複数の候補値に応じた態様で補正された補正撮影画像が表示されるので,利用者が撮影画像に対する補正を直感的に(したがって素早く)行うことができる。」

d 「【0046】
<3.1 撮影処理>
図7は,本実施形態における撮影処理の手順を示すフローチャートである。この遊戯用写真作成装置が使用されていない時(プレイが行われていない時)には,撮影操作用タッチパネル20にはデモ画像が表示されている。デモ画像の表示中に利用者がコイン投入口26にコインを投入すると,プレイが開始される(ステップS110)。」

【図7】


e 「【0047】
続いてステップS120において,第1の制御部70は,利用者が望む態様で撮影画像が補正されるように,初回撮影時において撮影画像の補正態様を利用者に選択させる処理(初回撮影処理)を行う。この初回撮影処理は,特徴的な構成であるため,詳しく後述する。この処理では,初回撮影時における撮影画像を,ユーザの補正確認するためだけのサンプル用撮影画像として取得してもよいし,落書き対象の画像として取得してもよい。初回撮影時における撮影画像を落書き対象の画像として取得することで,より多くの編集対象画像を得ることができる。
【0048】
上記初回撮影処理が終了すると,次回以降を自動で撮影するか手動で撮影するかを選択し,自動で撮影する場合には撮影用テーマの選択が行われる。この場合,第1の制御部70は,予め用意された複数の撮影用テーマの中から1つ以上の撮影用テーマを利用者に選択させるための画面を撮影操作用タッチパネル20に表示し,利用者による選択操作を受け付ける。そして,第1の制御部70は,利用者の選択操作に基づいて選択情報を取得し,選択された撮影用テーマに基づいて,撮影の際に使用するフレームと背景との組み合わせを決定する。また手動で撮影する場合は,上記フレームと背景とを利用者が自由に決定する。
【0049】
次にステップS130において,第1の制御部70は,図5に示すような操作画面を撮影操作用タッチパネル20に表示する。なお前述したように,リアルタイムプレビュー領域201には,撮影画像に対してリアルタイムでクロマキー合成された背景画像が表示されるが,このクロマキー合成表示処理は,一般的にはクロマキーマスクを作成する処理と,背景画像を合成する処理とを含む。クロマキーマスクとは,例えば周知の合成マスク(アルファチャネル)であって,対象となる撮影画像のうちのキー色(ここでは青色または緑色)を有する領域,すなわち撮影室2の背面の像が占める領域を透明とし,それ以外の領域を非透明とするためのデータである。この合成マスクは一般的には対象となる画像の画素毎に0(完全透明)または255(完全非透明)の透過度を示す値αが設定される。このようなクロマキーマスクを使用することにより,撮影画像の非透明領域(α=255)に相当する背景画像の領域は隠され(マスクされ),その透明領域(α=0)に相当する背景画像の領域は見えるように合成される。そのため,あたかも対象となる撮影画像の非透明領域の部分が切り取られ,切り取られた当該部分が上記背景画像に対して貼り付けられたような合成画像が得られる。このようにして得られる合成画像は,撮影操作用タッチパネル20に表示される。なお,ここでの撮影画像は実際には撮影画像として保存される(高解像度の)静止画データではなく,リアルタイム表示を行うためのスルー画像データである。このスルー画像データは,撮影処理全体の開始時点から終了時点まで(S100?S170),カメラ10から(広義の撮影画像として)連続的に取得される。このようなクロマキー処理によって遊戯性の高い写真作成を行うことができる。」

【図5】


f 「【0050】
その後,ステップS140に進み,1セット3回の撮影が行われるべき撮影タイミングであるか否かが判定され,撮影タイミングでない場合(ステップS140においてNoの場合)には撮影タイミングとなるまで上記操作画面表示が繰り返され(S140→S130→S140),撮影タイミングである場合(ステップS140においてYesの場合)には,ステップS150における撮影処理に進む。
【0051】
ステップS150における撮影処理では,前述したように数秒程度の予め決められた時間の経過後にカメラ10の撮影方向に閃光が放たれ,カメラ10によって取得された撮影画像データが第1の制御部70のメモリに格納される。
【0052】
次に,ステップS160において,ステップS150において得られた撮影画像に対して,ステップS120において利用者に選択され確定された初回撮影時における撮影画像の補正態様で補正を行い,この補正された撮影画像に対してステップS130において得られる背景画像をクロマキー合成した合成画像,すなわちステップS130においてなされる処理と同様のクロマキー合成処理(厳密には低解像度のスルー画像を上記背景画像にクロマキー合成するのではなく,高解像度の静止画像である撮影画像を上記背景画像にクロマキー合成する処理)により生成される合成画像が,落書き対象画像として撮影操作用タッチパネル20に表示される。
【0053】
なお,補正された初回撮影画像も落書き対象画像として表示する場合もあるが,具体的にはこの初回撮影画像に対して所定の背景画像をクロマキー合成した合成画像を生成し,生成された合成画像が落書き対象画像として表示される。もちろん初回撮影画像に対してのみクロマキー合成が行われない構成であってもよい。
【0054】
続いて,ステップS170において,第1の制御部70は,予め定められた枚数(セット数)の撮影が終了したか否かを判定する。判定の結果,当該枚数の撮影が終了していればステップS160に進み,当該枚数の撮影が終了していなければステップS110に戻る。なお,実際には撮影のための制限時間(例えば3分)が設けられており,制限時間よりも(或る程度)早く予定枚数の撮影が終了した場合には,さらに所定枚数だけ撮影が行われる(ボーナスショットと呼ばれる)。
【0055】
ステップS180では,複数の落書き対象画像の中から実際の落書き対象となる画像の(利用者による)選択が行われる。具体的には,第1の制御部70は,落書きおよび印刷に使用する画像を利用者に選択させるために,落書き対象画像の一覧を撮影操作用タッチパネル20に表示し,利用者による選択操作を受け付ける。そして,第1の制御部70は,利用者によって選択された画像を実際の(最終的な)落書き対象画像とする。なお前述したように,選択される対象としての落書き対象画像として,初回撮影処理において撮影された初回撮影画像を含むようにすることもできるので,この場合,落書き対象画像としての撮影画像を限られた撮影時間内で多く取得することができる。
【0056】
このステップS180における処理が終了すると,ステップS190の処理に進む。ステップS190では,案内画面の表示が行われる。具体的には,第1の制御部70は,利用者を編集ユニット4のいずれか(4aまたは4b)に導くための画面を撮影操作用タッチパネル20に表示する。これにより,撮影処理が終了する。なお,本実施形態では,上記ステップS120における初回撮影処理の内容に特徴を有するが,この点については図9を参照して後述するものとし,続く落書き編集処理の内容について説明する。」

g 「【0061】
<3.3 初回撮影処理>
図9は,本実施形態における初回撮影処理の手順を示すフローチャートである。図9に示すステップS121において,第1の制御部70は,通常の撮影とは異なる初回撮影のための説明画面を撮影操作用タッチパネル20に表示する。」

【図9】


h 「【0062】
図10は,初回撮影のための説明画面例を示す図である。この図10に示されるように,利用者の嗜好に合わせた画質(ここでは後述する目の形や濃さ,顔の輪郭や,肌質などの画像補正態様)を設定するため,初回撮影が行われることが撮影操作用タッチパネル20に表示される。また,上記撮影の他,撮影操作用タッチパネル20にはOKボタン205が表示されており,利用者がこのOKボタン205を押下する操作(具体的には当該位置を指などで触れる操作)を行うことにより,次の操作画面に遷移する。なお,図10に示すように,これから通常の撮影とは異なる初回撮影が行われることを利用者に対して告知することが望ましいが,このような告知は省略することもできる。また,後述する撮影用の操作画面例との関係で,図10に示す説明画面に代えて,またはその後に表示される図示されない画面において,利用者の数を質問する説明文とともに,利用者の数を入力する操作を受け付ける構成であってもよい。」

【図10】


i 「【0063】
続いてステップS122において,第1の制御部70は,図11に示すような,通常の撮影とは異なる初回撮影のための撮影用の操作画面(撮影画面)を撮影操作用タッチパネル20に表示する。」

【図11】


j 「【0064】
図11は,初回撮影のための撮影画面例を示す図である。図11に示されるように,撮影操作用タッチパネル20には,通常撮影時と同様の(ここではやや大きい)リアルタイムプレビュー領域201と,このリアルタイムプレビュー領域201内に固定的に(予め定められた位置に)表示される顔位置ガイド206と,OKボタン205とが表示される。この顔位置ガイド206は,通常撮影時には表示されず,また通常撮影時よりも顔が大きく写るように表示されるべき位置が定められている。この顔位置ガイド206が表示されると,この枠内に顔が入るように,かつ枠一杯に顔が写るように,利用者は自然と顔の位置を移動させるので,後述する補正を行う際に好適な撮影画像が得られる。
【0065】
このような顔位置ガイド206は,証明用写真撮影装置には設けられることがある。しかし,遊戯用写真作成装置には設けられることがない。遊戯用途に使用する場合には,利用者の自由な撮影が望まれるため,顔位置ガイド206は不要であるばかりか,遊戯性を低下させる場合もあるからである。しかし,本実施形態における初回撮影時には,利用者の自由な撮影よりも顔が大きく写るような撮影が行われることが重要であるため,このように顔位置ガイド206を設けることが好ましい。もちろん,顔位置ガイド206が省略される構成であってもよいが,そのような構成においても,正面を向いて撮影するように,さらには顔が大きく写るようカメラ10に近づいて撮影するように,告知文を表示したり,音声による案内を行う構成が好ましい。
【0066】
また,図11に示される顔位置ガイド206は,2人の利用者によって使用されることが予定されている形状となっているが,利用者の人数は例えば前述したように図10に示す操作画面内またはその前後で利用者の操作入力を受け付けることにより決定される。したがって,利用者が1人または3人以上である場合には,顔位置ガイド206は,決定された利用者の数に応じて,予め定められた当該数の利用者によって使用されることが予定されている形状で表示される。
【0067】
このようにして利用者の撮影準備が整った後,撮影操作用タッチパネル20に表示されるOKボタン205を押下する操作が行われると撮影が行われる。すなわち,図9に示される以下のような処理が行われる。
【0068】
まずステップS123において,第1の制御部70は,撮影タイミングであるか否か(ここでは上記OKボタン205が押下されたか否か)が判定され,撮影タイミングでない場合(ステップS123においてNoの場合),撮影タイミングとなるまで上記操作画面表示が繰り返され(S123→S122→S123),撮影タイミングである場合(ステップS123においてYesの場合),ステップS124における撮影処理に進む。
【0069】
ステップS124における撮影処理では,通常撮影と同様に数秒程度の予め決められた時間の経過後にカメラ10の撮影方向に閃光が放たれ,カメラ10によって取得された撮影画像データが第1の制御部70のメモリに格納される。
【0070】
続いて,ステップS125では,撮影画像の補正態様を決定するための後述する選択受付画面が撮影操作用タッチパネル20に表示され,ステップS126では,表示された選択受付画面に基づく利用者による操作入力の受付が行われる。このような選択受付画面および当該画面に対する入力例を図12および図13を参照して詳しく説明する。
【0071】
図12は,利用者による操作入力前の選択受付画面例を示す図であり,図13は,利用者による操作入力後の選択受付画面例を示す図である。まず,利用者による操作入力が行われる前の初期的な選択受付画面として,図12に示されるように,撮影操作用タッチパネル20には,上記ステップS124において撮影された初回撮影時の撮影画像に対する初期補正画像211と,補正態様を選択するための複数の補正態様決定ボタン207と,次の画面に遷移するためのOKボタン205とが表示される。なお,初期補正画像211は,後述するように,初回撮影時の撮影画像とは異なる画像となっている。」

【図12】


【図13】


k 「【0072】
ここで補正態様は,図12に示されるように4種類が設定されており,目の形(具体的には,目の大きさや,つり目やたれ目などの形状等,およそ目の輪郭形状に関連する要素)と,目の濃さ(具体的には,目の色や,瞳の大きさ等,およそ目の内部形状や色彩に関連する要素)と,輪郭(具体的には,顎や頬などの特徴的な部分を含む顔の外縁形状や,髪型,髪の毛の色などに関連する要素)と,肌質(具体的には,肌の色や明るさ,ぼかし具合など,およそ肌の見え方に関連する要素)とが選択可能に表示されている。なお,このような補正は,画像の色彩または形状の少なくとも一方に対する,周知のまたは適宜の変更手法または変形手法を用いることにより,容易に実現することができる。また,これらの補正態様は例示であって周知のあらゆる補正態様を適用可能である。これら4つの補正態様は,それぞれAからDまでの4つの典型的な状態(以下「設定状態」という)が補正態様決定ボタン207によって選択可能に表示されている。なお,図12では,これらの設定状態はAからDまでの記号によって表示されているが,このような記号に代えて設定状態を示す説明文や,補正の程度を示す数字などであってもよい。また,スライダー(バー)などを使用することにより,無段階に変化する量を入力可能に表示されてもよく,これらの種類や,数,入力態様などには特に限定はない。よって,周知の様々な入力インタフェースを使用可能である。このように,或る(種類の)補正態様における補正の状態を設定するための上記設定状態を以下では「パラメータ」とも呼び,このパラメータに設定される数値や記号などの情報を以下では「パラメータの値」とも呼ぶ。
【0073】
また,これらの補正態様の設定状態(パラメータ)には初期値が設定されており,図12に示されるように,オススメと表題が付された点線で囲まれており,「B」と表記された複数の補正態様決定ボタン207に対応する設定状態がそれぞれの補正態様の初期値として設定されている。なお,図中に付された斜線は,当該補正態様決定ボタン207が選択状態(具体的には押下され暗い色に変化して表示されている状態)であることを表している。もちろん,初期的な選択状態であることが示されていればどのような表示態様であってもよい。
【0074】
このように上記4つの補正態様において,ここではそれぞれ「B」の表記に対応する設定状態が初期的に設定されている。初期補正画像211は,初回撮影時の撮影画像に対して,これら4つの補正態様における設定状態で補正された結果得られる画像である。すなわち,初回撮影時の撮影画像に対して,目の形,目の濃さ,輪郭,および肌質を設定状態「B」(の値であるパラメータ)で補正,具体的には輪郭形状等の変形や画素色の変更などが行われる。このような補正処理は,上記ステップS127において行われる。
【0075】
なお,このような初期的な設定状態は,多くの利用者が(統計的に)好むような補正態様に基づき設定されることが多いが,必ず初期的に何らかの補正態様を設定する必要はなく,初期補正画像211が補正されていない初回撮影時の撮影画像と同一のものであってもよい。ただし,初期的な設定状態がたとえ当該利用者の嗜好に反する場合であっても,(初期的な設定状態に応じた)何らかの補正が行われていることにより,利用者が好む補正態様に変化させやすくなることも考えられ,また初期的な補正によって意外性などの遊戯性が増大することもあるため,何らかの補正態様を設定する構成が好ましい。
【0076】
このような初期的な設定状態は,利用者によって適宜の補正態様決定ボタン207が押下されることにより変化し,例えば図13に示すような設定状態に変化させることができる。この場合,補正態様決定ボタン207は,4つの補正態様において同時に押下されることはあまりなく,1つずつ押下されるのが通常であるため,実際には1つの補正態様決定ボタン207が押下されることにより1つの補正態様が変化し,補正態様が(1つ)変化する度に,図13に示す(決定された当該補正態様で)補正された補正画像212が表示される。例えば,図12に示される初期状態から,対応する補正態様決定ボタン207を押下することにより,目の形を設定状態Aに設定すれば,補正画像212は,初期補正画像211に対して目の形が設定状態Aに設定された補正態様に変更した状態で表示され,その後,さらに対応する補正態様決定ボタン207を押下することにより,輪郭を設定状態Cに設定すれば,補正画像212は,初期補正画像211に対して目の形が補正された補正画像212に対して,さらに輪郭が設定状態Cに設定された補正態様に変更された補正画像212が表示される。続いて,さらに対応する補正態様決定ボタン207を押下することにより,肌質を設定状態Aに設定すれば,同様にさらに肌質が設定状態Aに設定された補正態様に変更した補正画像212が表示される。そうして,補正態様の設定状態が決定すれば,図13に示すOKボタン205が押下され,補正態様の設定状態の決定が終了し(パラメータの値を確定し),初回撮影処理が終了する。したがって,OKボタン205が押下されるまで,同一種類の補正態様の設定状態を決定する(ここでは4つの)補正態様決定ボタン207を試みに押す(例えば1回ずつ全部を押してみる)ことにより,どのように補正されるかを,補正画像212を見ることにより,容易に判断することができる。
【0077】
以上のような設定状態の入力および反映は,図9に示すステップS126,S127において行われる。すなわちステップS127では,上記ステップS126において受け付けられた撮影画像の補正態様を示す操作入力に応じて,撮影画像に対する補正処理が行われ,補正された撮影画像が直ちに表示される。
【0078】
続いて,ステップS128では,補正態様の設定状態(を示す補正態様決定ボタン207)の選択が終了したか否かが判定される。具体的には,図12または図13に示すOKボタン205が押下されることにより選択が終了したか否かが判定される。選択が終了した場合(ステップS128においてYesの場合),図7に示す処理の流れに戻り,選択が終了した場合(ステップS128においてNoの場合),処理はステップS125の処理に戻り,上記選択が終了するまで上記処理が繰り返される(S128→S125→…→S128)。なお,OKボタン205が押されてなくとも,選択受け付け画面(図12参照)が表示されてから所定時間が経過すると,補正態様の設定状態の決定が終了し,初回撮影処理が終了するようにしてもよい。
【0079】
以上のように図7に示す初回撮影処理(S120)が終了すると,所定枚数の撮影が終了するまで2回目以降の撮影および落書き画像の生成が繰り返され(S130→S140→…→S170→S130),落書き対象画像が選択され(S180),撮影処理が終了する。その後の落書き処理および出力処理についても前述したとおりである。
【0080】
なおステップS160において,前述したように,補正された初回撮影画像と所定の背景画像が合成され,落書き対象画像として表示する場合は,上記ステップS127(およびステップS125)において表示される補正撮影画像に代えて,この補正撮影画像に対して所定の背景画像をクロマキー合成した合成画像を生成し,生成された合成画像が表示される構成であってもよい。」

l 「【0081】
<4.変形例>
<4.1 第1の変形例>
上記実施形態では,図12および図13に示すように,複数種類(ここでは4つ)の補正態様の設定状態を複数(ここでは合計16個の)の補正態様決定ボタン207を押下することにより決定する構成であるが,1種類ずつ順番に補正態様の設定状態を決定するなど,どのような方式または態様で補正態様の設定状態を決定してもよい。
【0082】
また,上記実施形態では,図12および図13に示すように,補正態様の設定状態が変更される毎に,変更された設定状態を(重畳的に)反映した補正態様で補正された1つの補正画像212を表示する構成であるが,或る補正態様における(選択されるべき候補である)複数の設定状態をそれぞれ反映した複数の補正画像を表示する図14に示すような構成であってもよい。
【0083】
図14は,複数の設定状態をそれぞれ反映した複数の補正画像を表示する選択受付画面例を示す図である。図14に示されるように,この撮影操作用タッチパネル20には,初回撮影時の撮影画像に対して,或る補正態様(ここでは目の形)における(ここでは4つの)設定状態をそれぞれ反映した4つの補正画像213と,当該4つの補正画像213の設定状態に対応する4つの補正態様決定ボタン207と,次の画面に遷移するためのOKボタン205とが表示される。」

【図14】


m 「【0084】
このように各補正態様決定ボタン207に対応する設定状態で補正した補正画像213が全て表示されているので,上記実施形態のように一度押してみるなどして補正結果を確認することなく,補正結果を直感的に判断することができる。そうして当該補正態様の設定状態が決定すると,利用者はOKボタン205を押下することにより,次の補正態様を決定する選択受付画面に移行する。
【0085】
なお,このOKボタン205を省略し,補正態様決定ボタン207のいずれかが押下されることにより,次の選択受付画面に移行する構成であってもよい。また,OKボタン205に代えて,またはこれとともに,前の補正態様の選択受付画面に戻る「戻るボタン」が備えられる構成であってもよい。
【0086】
さらに,ここでは1種類の補正態様における選択可能な4つの設定状態が表示されているが,このような表示は一例であって,複数(例えば4つ)の補正態様における複数(例えば16)の補正態様決定ボタン207および対応する補正画像213を表示するなど,表示される設定状態や補正画像の数には特に限定はない。また,次の選択受付画面において表示される補正画像は,現在までに選択された補正態様の設定状態を重畳的に反映していてもよいし,当該画面において選択されるべき設定状態(の候補)のみを反映していてもよい。
【0087】
また,各補正態様決定ボタン207を省略する代わりに,当該各補正態様決定ボタン207の機能を兼ねる補正画像213を設けることもできる。これに加え,OKボタン205を省略する場合には,OKボタン205の機能をさらに有する補正画像213を備えればよい。」

(イ) 前記(ア)a(【請求項1】)に記載されるように,引用文献1には,次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されている。

「 利用者の撮影を行う撮影手段と,前記撮影手段により取得される撮影画像を含む合成画像を写真として出力する出力手段とを備える自動写真作成装置であって,
前記利用者による操作入力を受け付ける入力手段と,
表示手段と,
前記撮影手段により一回目の撮影画像を取得した後,当該一回目の撮影画像に含まれる前記利用者の像の少なくとも一部における色または形状の少なくとも一方の変更を行うためのパラメータの値に対する予め定められた複数の候補値それぞれに基づき変更が行われた複数の撮影画像を前記表示手段に表示するとともに,前記複数の候補値から1つを選択し前記パラメータの値とする操作入力を受け付け,全てのパラメータの値が確定された後,前記撮影手段により二回目以降に取得される撮影画像に対して,前記確定された全てのパラメータの値に応じて前記変更を行う画像変更手段と
を備え,
前記出力手段は,前記確定された全てのパラメータの値に応じて前記変更が行われた撮影画像を1つ以上含む1つ以上の合成画像を出力することを特徴とする,自動写真作成装置。」

イ 特開2012-95730号公報
原査定の拒絶の理由に引用された特開2012-95730号公報(以下,「引用文献2」という。)は,本願の出願前に頒布された刊行物であって,当該引用文献2には,次の記載がある。

a 「【技術分野】
【0001】
本発明は,画像処理装置および画像処理方法に関し,特に顔画像の補正を行う画像処理装置および画像処理方法に関する。」

b 「【0062】
<画像処理フロー>
以下に,デジタルカメラ1におけるメーキャップ処理の流れについて説明する。
【0063】
利用者は,指示入力装置2を介して,例えば撮像されて画像記憶装置4に記憶されている画像の中から,処理対象の画像を選択する。また,利用者は,指示入力装置2を介して,処理対象の画像に施すメーキャップの種類(アイライン,アイシャドウ,および/または頬紅等)と,各メーキャップの形状と,各メーキャップ色とを,複数の候補の中から選択する。指示入力装置2は,メーキャップの種類,メーキャップの形状,およびメーキャップ色を示す情報を含むメーキャップ処理の指示を,画像処理装置6の画像取得部11に出力する。
【0064】
図7は,画像処理装置6におけるメーキャップ処理の流れを示すフローチャートである。」

【図7】



c 「【0068】
適否判定部14は,これらの検出された顔の特徴の位置に基づき,該顔画像がメーキャップ処理を行うのに適しているか否かを判定する(S4)。例えば,適否判定部14は,複数の顔画像サンプルから目,鼻,口等の顔の器官の各特徴の周辺の輝度分布の特徴をあらかじめ学習して作成した顔モデルを記憶しておく。適否判定部14は,顔モデルと,検出された顔画像とを比較することにより,顔画像の検出された特徴の信頼度および顔の向きを特定する。
・・・(中略)・・・
【0072】
また,検出した目の輪郭から,目が閉じられていると判断できる場合,適切にメーキャップ処理を行うことができない可能性があるため,適否判定部14は,該顔画像はメーキャップ処理を行うのに適していないと判定する。
・・・(中略)・・・
【0076】
なお,メーキャップ処理を行うことができるか否かの判定において,メーキャップの種類(アイライン,アイシャドウ,頬紅等)によって判定基準が異なっていてもよい。
【0077】
メーキャップ処理を行うのに適していないと判定された場合(S4でNo),該顔画像に対する処理は終了する。」

(3) 対比
ア 引用発明の「一回目の撮影画像」,「二回目以降に取得される撮影画像」,「画像変更手段」,「表示手段」及び「自動写真作成装置」 は,本件補正発明の「第1の撮影画像」,「第2の撮影画像」,「画像処理手段」及び「写真シール作成装置」に相当する。また,引用文献1全体の記載内容からみて,前記d?mに摘記した技術事項は,いずれも,引用発明の一実施形態又は変形例に関する事項である。

イ 引用発明の「一回目の撮影画像」に関して,引用文献1の段落【0066】には,「利用者が1人または3人以上である場合には,顔位置ガイド206は,決定された利用者の数に応じて,予め定められた当該数の利用者によって使用されることが予定されている形状で表示される。」と記載されている。この記載から明らかなように,引用発明の「利用者」とは,複数の利用者が想定されていることは明らかである(このことは,図5等からも直ちに見て取れる。)。したがって,引用発明の「撮影手段」は,本件補正発明の「複数の利用者を被写体として複数回撮影し,第1および第2の撮影画像を取得する撮影手段」の要件を満たす。

ウ 引用発明の「一回目の撮影画像に含まれる前記利用者の像の少なくとも一部における色または形状の少なくとも一方の変更を行うためのパラメータの値に対する予め定められた複数の候補値それぞれに基づき変更が行われた複数の撮影画像を前記表示手段に表示する」点に関して,引用文献1の段落【0083】には,「初回撮影時の撮影画像に対して,或る補正態様(ここでは目の形)における(ここでは4つの)設定状態をそれぞれ反映した4つの補正画像213」 と記載されている。したがって,引用発明の「利用者像の少なくとも一部における色または形状」に,「目の形」が含まれることは明らかであり,引用発明の「利用者像の少なくとも一部における色または形状」は,本件補正発明の「目の形状」に相当する。また,引用発明は,「利用者像の少なくとも一部における色または形状の少なくとも一方の変更」を行うのであって,前記「利用者像の少なくとも一部における色または形状」として「目の形」を含むのであるから,第1の撮影画像に「目を含む領域」があること及び「利用者像の少なくとも一部における色または形状の少なくとも一方の変更」は「目を含む領域」においてなされることは明らかである。
そして,引用発明の「画像変更手段」は,「一回目の撮影画像に含まれる前記利用者像の少なくとも一部における色または形状の少なくとも一方の変更を行うためのパラメータの値に対する予め定められた複数の候補値それぞれに基づき変更が行われた複数の撮影画像を前記表示手段に表示」するのであるから,引用発明の「画像変更手段」は,「第1の撮影画像における利用者」の「目を含む領域」に,「目の形状を異ならせる複数種類の画像処理を施すこと」で,前記「利用者」の「目の形状がそれぞれ異なる複数の被写体画像を生成する」点において,本件補正発明と一致している。

エ 引用発明の「表示手段」は,画像変更手段によって変更された「当該一回目の撮影画像に含まれる前記利用者の像の少なくとも一部における色または形状の少なくとも一方の変更を行うためのパラメータの値に対する予め定められた複数の候補値それぞれに基づき変更が行われた複数の撮影画像」を表示するための手段であるから,引用発明の「表示手段」は,「利用者」の「複数の前記被写体画像」が「配置されて構成される選択画面を表示する」点において,本件補正発明と一致している(このことは,引用文献1の図14からも直ちに見て取れる。)。

オ 引用発明の「画像変更手段」は,「前記複数の候補値から1つを選択し前記パラメータの値とする操作入力を受け付け,全てのパラメータの値が確定された後,前記撮影手段により二回目以降に取得される撮影画像に対して,前記確定された全てのパラメータの値に応じて前記変更を行う」のであるから,引用発明の「画像変更手段」は,本件補正発明の「前記画像処理手段は,上記ウの点を考慮すれば,前記選択画面において選択された前記利用者」の「前記被写体画像に施された前記画像処理を,前記第2の撮影画像における前記利用者それぞれの前記目領域に施す」「画像変更手段」の要件を満たす。

カ 前記アないしオから,本件補正発明と引用発明は,

「【請求項1】
複数の利用者を被写体として複数回撮影し,第1および第2の撮影画像を取得する撮影手段と,
前記第1の撮影画像における前記利用者それぞれの目を含む目領域に,目の形状を異ならせる複数種類の画像処理を施すことで,前記利用者に,目の形状が異なる複数の被写体画像を生成する画像処理手段と,
前記利用者の複数の前記被写体画像が配置されて構成される選択画面を表示する表示手段と
を備え,
前記画像処理手段は,前記選択画面において選択された前記利用者の前記被写体画像に施された前記画像処理を,前記第2の撮影画像における前記利用者それぞれの前記目領域に施す 写真シール作成装置。」
である点で一致し,次の点で相違する。

相違点1:本件補正発明の画像処理手段は,利用者毎に,目の形状がそれぞれ異なる複数の被写体画像を生成するのに対し,引用発明は,そのような構成を採用していない点。

相違点2:本件補正発明の表示手段は,利用者毎の複数の被写体画像が,前記利用者毎に区分された領域に配置されて構成されるのに対し,引用発明の表示手段は,そのような構成を採用していない点。

相違点3:本件補正発明は,第2の撮影画像において片目をつぶっている利用者の目領域には画像処理を施さないのに対し,引用発明では,そのような構成を採用していない点。

(4) 判断
ア 相違点1及び2について
まず,相違点1及び2について検討する。
引用文献1の図12?14,その他引用文献1の他の記載を検討してみても,引用発明の表示手段において,撮影画像を,利用者毎に区分された領域に配置することは想定されていない。そして,引用文献1では,利用者が複数いる場合において,前記利用者像の少なくとも一部における色または形状の少なくとも一方を変更する際に,それぞれの利用者毎に色または形状を変更することは,記載も示唆もされていない。
なお,段落【0098】には,「また,上述の落書き編集を行う際に,確定されたパラメータの値に応じて変更された複数の落書き対象画像のうちの1つ以上を,確定されたパラメータの値に応じて変更される前の元の状態に個別に(例えば目の形などの補正態様毎に)または一括して戻すことが可能な構成であってもよい。・・・(中略)・・・なお,複数の落書き対象画像を元の状態に戻す等の上記処理を行う際には,当該複数の落書き対象画像すべてを一括して変更するようにしてもよいし,対象となる落書き対象画像を指定して変更するようにしてもよい。また,落書き対象画像に含まれる利用者ごとに変更を行う構成であってもよい。」と記載されており,上記「利用者ごとに変更を行う」との記載は,一見すると,利用者ごとに目の形状の変更を行うことを示唆しているようにもみえる。しかし,段落【0098】は,上記のとおり,「複数の落書き対象画像を元に戻す等」の処理を行う際にどのように行うかについて記載されているのであって,一回目の撮影画像における複数の利用者の像のそれぞれが,(同一の表示画面内において)利用者毎に区分された領域に配置されて構成されること(そして,それぞれの利用者像に別々の画像変更を行うこと)を示唆する記載ではない。
したがって,相違点1及び相違点2に係る本件補正発明が,引用発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

イ 相違点3について
相違点3に係る本件補正発明の構成は,引用文献1には記載も示唆もされていない。また,「撮影画像において利用者がウインクをしている(片目をつぶっている)場合,・・・つぶっている目に対して目形状変更処理が施されると,その目の形状が,利用者の意図しない不自然な形状になるおそれがある。」(本件出願の発明の詳細な説明の段落【0289】)という課題(以下「ウインクの課題」という。)についても,引用文献1には記載も示唆もされていない。
ところで,引用文献2は,顔画像の補正を行う画像処理に関する発明が記載され,その一態様として,段落【0072】には,「検出した目の輪郭から,目が閉じられていると判断できる場合,適切にメーキャップ処理を行うことができない可能性があるため,適否判定部14は,該顔画像はメーキャップ処理を行うのに適していないと判定する。」と記載されている。
しかし,引用文献2の上記記載事項は,あくまでメーキャップ処理に関する技術として開示されているものであり,本件補正発明や引用発明のような「写真シール作成装置」とは,技術分野が異なるものである。また,引用文献2に記載されている事項は,目の形状自体は変化させるものではなく,上記のように,メーキャップ処理を行う際の課題を解決しようとするものであり,前記ウインクの課題とは相違する。
そうしてみると,(A)引用文献1と引用文献2は,その属する技術分野が相違するから,引用発明の技術分野における当業者(以下「当業者」という。)は,引用文献2に記載された技術を心得ておらず,(B)また,引用文献1には,前記ウインクの課題が記載も示唆もされていないから,引用発明に接した当業者といえども課題を手がかりにして引用文献2に至ることはなく,(C)そもそも,課題が相違するからには,仮に当業者が引用文献2に接したとしても,引用発明と組み合わせようとしないというべきである。
してみれば,相違点3に係る本件補正発明が,引用発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

(5) 独立特許要件のまとめ
よって,請求項1についての本件補正は,特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に適合する。

5 請求項1以外を対象とする本件補正について
請求項1以外を対象とする本件補正についても,特許法17条の2第3項ないし6項に違反するところはない。

6 むすび
本件補正は,特許法17条の2第3項ないし6項の規定に適合する。

第3 本願発明
本件補正は前記第2のとおり,特許法17条の2第3項ないし6項の規定に適合するから,本願の請求項1ないし9に係る発明は,本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された事項により特定されるとおりのものである。

そして,本願については,原査定の拒絶理由を検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることはできない。

また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2016-06-08 
出願番号 特願2014-39798(P2014-39798)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G03B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 辻本 寛司  
特許庁審判長 樋口 信宏
特許庁審判官 藤原 敬士
道祖土 新吾
発明の名称 写真シール作成装置および写真シール作成方法  
代理人 稲本 義雄  
代理人 西川 孝  

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