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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G09C
管理番号 1315438
審判番号 不服2014-22061  
総通号数 199 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-07-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-10-30 
確定日 2016-06-10 
事件の表示 特願2010-103542「暗号化装置および暗号化方法」拒絶査定不服審判事件〔平成23年11月17日出願公開,特開2011-232604〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成22年4月28日に特許出願され,その後の主な手続は,以下のとおりである。
審査請求(提出日) 平成25年 3月12日
拒絶理由(起案日) 平成26年 2月25日(同年2月28日発送)
意見書(提出日) 平成26年 4月28日
手続補正(提出日) 平成26年 4月28日
拒絶査定(起案日) 平成26年 7月28日(同年7月30日発送)
審判請求(提出日) 平成26年10月30日
手続補正(提出日) 平成26年10月30日
前置報告(作成日) 平成26年11月20日
補正却下(起案日) 平成27年10月27日(同年11月9日発送)
拒絶理由(起案日) 平成27年10月27日(同年10月28日発送)
意見書(提出日) 平成27年12月25日
手続補正(提出日) 平成27年12月25日

第2 本願発明
本願発明は,上記平成27年12月25日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲,明細書及び図面の記載からみて,その特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものと認める。
「暗号化の対象となる平文文書の入力を受け付ける手段と,
前記平文文書を暗号化対象部分平文と暗号化非対象部分平文とに区分し,前記暗号化対象部分平文を所定の暗号化アルゴリズムにより暗号化して部分暗号文を作成し,前記平文文書中の前記暗号化対象部分平文を前記部分暗号文に置き換えることにより置換文書を作成する概要可読暗号化手段と,
前記置換文書を前記平文文書に対応する暗号文書として出力する手段と,を備え,
前記概要可読暗号化手段は,暗号化対象部分平文と暗号化非対象部分平文とが交互に配されるように,前記区分を行い,
前記暗号化対象部分平文は,第一の規則で定められた文字数からなり,
前記暗号化非対象部分平文は,第二の規則で定められた文字数からなる,暗号化装置。」

第3 引用文献
1 本願の出願日前に頒布または電子通信回線を通して公衆に利用可能とされた特開2000-132543号公報(以下,「引用文献1」という。)には,関連図面とともに,以下の技術的事項が記載されている。
(下線は,参考のために当審で付与したものである。)

A 「【要約】【課題】 秘密を要する文書情報の短時間で且つ適切な処理を可能とし,秘密文書情報における秘密部分を明確にするとともに,秘密文書情報の提供側による適正な秘密管理を可能とする。
【解決手段】 文書情報中で秘密とすべき領域を,領域指定部12により指定する。暗号化処理部13により,該指定領域の部分文書情報を暗号化して暗号化情報を得る。管理情報生成部14により,指定領域のアドレス情報及び暗号化に係るキー情報を管理テーブルに格納し,管理情報を生成する。管理情報生成部14は,暗号化処理部13により文書情報の本文中の対象領域すなわち指定領域を暗号化情報で置換して,管理情報と共に伝送し又は記憶させる。
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は,文書情報を処理するシステムに係り,特に暗号処理を効果的に利用して文書情報の適切な秘匿性の維持管理を実現する文書処理システム,方法及び記録媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】現代においては,種々の業務を遂行するにあたり,各種文書情報が主要な役割を果たすことが少なくない。すなわち,多くの業務において,企画・立案,検討・評価,詳細説明,内容確認,修正・改訂,提示・報告・通信及び具体化等,あらゆる段階において文書情報が用いられる。したがって,公に開示すべき内容のみからなる文書情報に限らず,秘密に属する内容を含む文書情報も頻繁に用いられる。
【0003】秘密に属する内容を含む文書情報の守秘のため,すなわち秘密情報を守るためには,当該文書情報を暗号化して取り扱うのが一般的である。暗号化した情報は,そのままでは,意味不明の情報であり,特定の鍵を保持する者のみが情報を復号して,その実体を解読することができ,復号のための鍵を持たない者は意味不明のまま解読することはできない。この暗号化の技術自体は,鍵を持たずに内容を復号・解読したり,鍵を推定したりする方法が見出されてしまうと,暗号として成立しなくなってしまうため,随時,種々の技術が提案され利用されている。
【0004】ところで,従来,記述内容に秘密情報を含む文書情報を,特定の関係者のみに閲覧させ,該関係者以外には見られないようにするために,関係者のみが復号・解読できるようにして,当該文書情報全体を暗号化することが行われている。この場合,特定の関係者のみが,解読できるようにするため,当該特定関係者に復号のための鍵を予め与えておくか,あるいは特定の関係者のみが復号のための鍵を入手できるようにしておいて,暗号化した文書情報を該特定関係者に提供する。
【0005】すなわち,特定関係者は,受け取った暗号化文書情報を,復号鍵を用いて解読することができる。しかし,文書情報の実体を知ることができても,復号鍵を入手できない第三者は,仮に暗号化文書情報を入手しても,鍵を取得することができないため,解読することはできない。従って,当該文書情報の実体を知ることはできない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】従来は,上述のように,秘密情報を含む文書情報を,暗号化して取り扱う場合には,当該文書情報全体を暗号化していた。これは,暗号化及び復号は,文書情報を格納したファイル等を単位として行うことを前提としており,文書情報の部分的な暗号処理に係る技術は確立していなかったためである。」

B 「【0042】次に,上述したこの発明の実施の形態による文書処理システムの動作について,図4及び図5に示すフローチャートを参照して説明する。まず,文書作成時の文書作成処理の流れを図4に示す。まず,ユーザは,操作端末105及び入出力部103を介して暗号化部101,つまり暗号化部1,の文書作成部11により,処理の対象とする文書を入力し,所要の文書を作成する(ステップS11)。次に,ユーザが入力し作成した該文書情報中で秘密とすべき領域を,領域指定部12により,ユーザが選定し,指定する(ステップS12)。
【0043】暗号化処理部13により,該指定領域の部分文書情報を暗号化して暗号化情報を得る(ステップS13)。そして,管理情報生成部14により,指定領域のアドレス情報及び暗号化に係るキー情報を管理テーブルに格納し,管理情報を生成する(ステップS14)。最後に,管理情報生成部14は,暗号化処理部13により文書情報の本文中の対象領域すなわち指定領域を暗号化情報で置換して,管理情報と共に伝送し又は記憶させる(ステップS15)。
【0044】文書表示時の文書表示処理の流れを図5に示す。まず,復号部102,つまり復号部2の復号処理部22は,受信し又は読出した暗号化情報を含む文書情報の管理情報を抽出して管理情報処理部23に供給する。そして復号処理部22は,該管理情報処理部23から与えられる管理テーブルのキー情報の内容及び復号鍵供給部21に予め設定され,又は操作端末105及び入出力部103を介して閲覧者により入力された復号鍵に基づいて該文書情報の暗号化情報部分を復号化する(ステップS21)。
【0045】次に管理情報処理部23の管理テーブルにおけるアドレス情報に基づき,復号処理部22は,対象領域,つまり指定領域の暗号化情報を復号し解読した部分文書情報に置換する(ステップS22)。そして,管理情報処理部23の制御に基づき,編集禁止処理部24は,指定領域の部分文書情報のコピー又はペースト等の編集操作を禁止して(ステップS23),表示処理部25によりディスプレイ画面に表示する(ステップS24)。
【0046】上述したように,文書情報中で守秘が必要な部分のみを暗号化し,そのため,文書情報中の守秘部分の位置を管理するための管理情報を付加する。文書情報を閲覧する時には暗号化されている部分を復号して表示に供する。その場合においても,暗号化されていた部分に関してはコピー又はペースト等の編集処理を禁止して,守秘部分を流出できないようにする。
【0047】このようにして,文書情報が漏洩した場合においても,真に秘密な部分の情報については,暗号化により保護して漏洩しないようにする。また,文書情報中の守秘部分を指定して編集禁止処理を施すことにより,コピー又はペ?スト等の編集操作による文書中の秘密情報の漏洩をも防止する。
【0048】したがって,暗号化/復号の対象を,必要部分のみに制限することができるため,処理時間を効果的に縮減することができる。また,復号し,解読した後の文書情報についても,文書情報の指定部分については秘密か否かを管理しているため,真に守秘すべき部分のコピー又はペースト等の編集を防止することができ,秘密情報の漏洩/流出を効果的に防止することができる。
【0049】なお,上述したこの発明の実施の形態は,例えば社内文書管理システム等に適用することができ,社内文書管理システムに適用した場合の処理は次のようになる。文書作成者は,上述した文書作成処理に従って新しい文書を入力し,その文書情報中で秘密とするべき領域を指定する。この発明の文書処理システムを含む社内文書管理システムは,指定された領域を暗号化し,当該領域の暗号化前の部分文書情報を暗号化情報に置き換えることにょって,秘密を要しない部分の文書情報に関しては平文のまま,そして秘密を要する部分に関しては暗号化した文書情報を生成する。
【0050】この文書情報を他人が閲覧しようとする場合には,暗号化されている部分を解読しようと試みる。このとき,ユーザに復号するための鍵を要求し,入力された鍵を用いて復号を行う。そして,復号が成功した場合には復号後の文書を表示し,復号に失敗した場合には,該当領域が暗号化されている旨の表示を行う。」

2 引用発明の認定
引用文献1に記載されている事項を検討する。

ア 上記A「【発明の属する技術分野】この発明は,文書情報を処理するシステムに係り,特に暗号処理を効果的に利用して文書情報の適切な秘匿性の維持管理を実現する文書処理システム,方法及び記録媒体に関する。」との記載から,引用文献1には“文書情報の部分的な暗号化処理を効果的に利用して文書情報の適切な秘匿性の維持管理を実現する文書処理システム”が記載されていると認められる。

イ 上記B「文書作成部11により,処理の対象とする文書を入力し,所要の文書を作成する(ステップS11)。」との記載から,引用文献1には“処理対象の文書を入力する文書作成部”が記載されていると認められる。

ウ 上記B「ユーザが入力し作成した該文書情報中で秘密とすべき領域を,領域指定部12により,ユーザが選定し,指定する(ステップS12)。」との記載から,引用文献1には“文書情報中で秘密とすべき領域を指定する領域指定部”が記載されていると認められる。

エ 上記B「暗号化処理部13により,該指定領域の部分文書情報を暗号化して暗号化情報を得る(ステップS13)」との記載から,引用文献1には“指定領域の部分文書を暗号化して暗号化情報を得る暗号化処理部”が記載されていると認められる。

オ 上記B「管理情報生成部14により,指定領域のアドレス情報及び暗号化に係るキー情報を管理テーブルに格納し,管理情報を生成する(ステップS14)。最後に,管理情報生成部14は,暗号化処理部13により文書情報の本文中の対象領域すなわち指定領域を暗号化情報で置換して,管理情報と共に伝送し又は記憶させる(ステップS15)」との記載から,引用文献1には“指定領域のアドレス情報及び暗号キー情報等の管理情報を生成し,暗号処理部により文書情報の本文中の指定領域を暗号化情報で置換”する“管理情報生成部”が記載されていると認められる。

カ 上記B「管理情報生成部14は,暗号化処理部13により文書情報の本文中の対象領域すなわち指定領域を暗号化情報で置換して,管理情報と共に伝送し又は記憶させる(ステップS15)」との記載から,管理情報生成部は,文書情報の本文中の指定領域を暗号化情報で置換したものを管理情報と共に伝送し又は記憶させているといえるので,引用文献1には“文書情報の本文中の指定領域を暗号化情報で置換したものを伝送し又は記憶”させる“管理情報生成部”が記載されていると認められる。

キ 上記ア乃至カに検討した事項を踏まえると,引用文献1には,次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「文書情報の部分的な暗号化処理を効果的に利用して文書情報の適切な秘匿性の維持管理を実現する文書処理システムであって,
処理対象の文書を入力する文書作成部と,
文書情報中で秘密とすべき領域を指定する領域指定部と,
指定領域部の部分文書を暗号化して暗号化情報を得る暗号化処理部と,
指定領域のアドレス情報及び暗号キー情報等の管理情報を生成し,
暗号処理部により文書情報の本文中の指定領域を暗号化情報で置換し,
文書情報の本文中の指定領域を暗号化情報で置換したものを伝送し又は記憶させる管理情報生成部と,
を備える文書処理システム。」

3 本願の出願日前に既に頒布または電気通信回線を通して公衆に利用可能とされた特開平9-62175号公報(以下,「引用文献2」という。)には,関連図面とともに,以下の技術的事項が記載されている。(下線は,参考のため当審で付与したものである。)

C 「【0015】図2に示すようにワードプロセッサ装置は,CPU15に対して,ROM16,RAM17,プリンター部12,キーボード部13,さらに表示駆動回路14を介してLCD表示部11が接続された構成となっている。
【0016】CPU15はROM16に記憶されているプログラムの内容に基づいて上記した各部の制御を行うものであり,例えばキーボード部13から入力された文字情報を一旦,RAM17に格納するとともに,必要に応じて表示駆動回路14に表示データを転送してLCD表示部11にて文字を表示する。さらにCPU15はキーボード部13より印刷命令を受信すると,RAM17に記憶された内容に対して印刷文字処理を施した後,プリンター部12にそのデータを転送して用紙に印字する。
【0017】以下に本実施形態の動作を図3及び図4のフローチャートに基づいて説明する。この実施形態は入力した文字または文章(歌詞や英文,通常の文章等)を部分的に隠蔽処理して表示し,この表示画面を参照して使用者が暗記学習するものである。
【0018】まず,隠蔽処理が設定された後,通常のワードプロセッサの操作と同じ要領で暗記したい文字を含む文字列を,ステップS1において,キーボード部13を介して順に入力していくと,入力された文字は順次RAM17に記憶される(ステップS2)。ここでこのときの入力フォーマットに関して述べると,文章を暗記したい場合は特別なフォーマットの指定なしで暗記したい文章を通常の文章作成時と同様に入力するが,単語を暗記する場合は図5に示すようなフォーマットで文字を入力するものとする。すなわち,出題文字列“踏襲”を初めに入力した後,第1の識別データであるカンマデータC(,)を入力しそれで区切り,次に隠蔽すべき文字列“とうしゅう”を入力した後で,第2の識別データである改行データPを入力する。以下,“感慨”,“鯔背”,“罵倒”,“矛盾”についても同様にして入力する。
【0019】次にステップS3で暗記モードの設定を行う。このモードは使用者がキーボード部13中の暗記キー13fを押し下げすることによって設定される。暗記モードが設定された後,LCD表示部11には図6のような表示がなされるので,使用者はこの表示を見ながらキーボード部13中のカーソルキー13aを用いて“文章の暗記”と,“単語の暗記”のうちいずれかを選択する(ステップS4)。ここで,“文章の暗記”が選択された場合は予め定められた文字数の文字を隠蔽することによって文章用文字に対する隠蔽処理を行なう(ステップS5)。すなわち,ステップS1で図7(A)に示すような文章が入力されたとすると,各行の文章の頭の文字(スペースも含む)から4文字分カウントし,それ以後の5つの文字を予め定められた文字数の文字として隠蔽する。この隠蔽はROM16内に予め記憶されている隠蔽用の米記号rを読み出し,その米記号を文章用の5つの文字の代わりに表示することにより行なう。このようにして各行毎の文字列に隠蔽処理を施す。この場合,隠蔽された各行毎の米記号rの中央部には,その先頭行から順次番号の「01」乃至「n」を振るものとする。これによって,図7(B)に示すような表示となる。ここでは各行の初めのスペースも1文字としてカウントし,かつ各行の初めについては4文字に満たなくともカンマデータc(,)がある場合はそこで出題文字列の終わりとみなし,カンマデータc(,)の直後の文字列に対する隠蔽処理を行う。また,4文字数えて5文字目の先頭がカンマデータc(,)等の句読点の場合は1文字カウントを後ろにずらすものとする。」

D【図7】



4 本願の出願日前に頒布または電子通信回線を通して公衆に利用可能とされた特開2003-117224号公報(以下,「引用文献3」という。)には,関連図面とともに,以下の技術的事項が記載されている。(下線は,参考のために当審で付与したものである。)

E 「【0015】プログラムメモリ9には,CPU回路1のプログラムが記憶されている。ワークメモリ10は,CPU回路1の作業領域として用いられる。
【0016】図2は,CPU回路1のプログラムのサブルーチンを示すフローチャートであり,メインルーチン(図示せず)から呼び出されてスタートする。プログラムがスタートすると,まずステップS1で,現在の解析率を求める。ここでの解析率は,文字情報を解読する容易さ(程度)のことであり,ゲームを始めたばかりの段階では,解析率を小さくする。ゲームがかなり進行している段階では,解析率を大きくする。ステップS2では,伝達する文字情報の文字数を調べる。
【0017】ステップS3では,文章(伝達する文字情報)を調べて重み付けをする。重み付けの方法は,文字種に応じて重みを変える方法と文章中の位置に応じて重みを変える方法とがある。以下,図3を参照しながら詳細に説明する。図3は,ステップS3の処理を説明するフローチャートである。【0018】文字種に応じて重みを変える方法は,例えば漢字を5点,仮名を1点の重みにする方法である。この方法で文章「私が欲しいのは,電卓だよ。分かった?」を重み付けすると,「5151111,5511。5111?」となる(図3のステップS12?ステップS15を参照)。
【0019】文章中の位置に応じて重みを変える第1の方法は,文頭と文末のおける重みを軽くして,予め文字数に応じて用意しておいた「001123444433110」の重みに設定する方法である。この方法で文章「私が欲しいのは,電卓だよ。分かった?」を重み付けすると,「0011234,4443。3110?」となる。文頭と文末のおける重みを軽くする理由は,重要な単語が文頭や文末に出現する頻度が少ないからである。
【0020】図3のステップS16は,文章中の位置に応じて重みを変える第2の方法を示している。この例では,位置による重みは,n/2-lとして計算される。ここで,nは文章の文字数,mは重みを計算する文字の文頭からの位置,lは変数であり,l=|n/2-m|として計算される。
【0021】上述した2つの重みを変える方法を併用することも可能である。例えば2つの重みを加算して重みを変えても良い。この方法で文章「私が欲しいのは,電卓だよ。分かった?」を重み付けすると,「5162345,9954。8221?」となる。図3のフローチャートは,上述した2つの重みを変える方法を併用する場合で,かつ文章中の位置に応じて重みを変える第2の方法を採用したときを例にして説明している。
【0022】図2に戻って,ステップS4では,解析率と文字数から暗号化(隠し文字化)する文字数を求める。暗号化(隠し文字化)する文字数は,全体の文字数×(100%-解析率)で求められる。即ち,解析率(容易さ)が100の場合は暗号化(隠し文字化)する文字数はゼロであり,解析率(容易さ)がゼロの場合は伝達する文字情報の全文字が暗号化(隠し文字化)される。
【0023】ステップS5では,ステップS3で求めた文字数だけ,ステップS4で求めた重みの大きい順に暗号化(隠し文字化)を行う。ステップS3で求めた文字数が5で,ステップS4で求めた重みが「5151111,5511。5111?」の場合には,文章「私が欲しいのは,電卓だよ。分かった?」は「◎が●しいのは,★☆だよ。△かった?」に変換(隠し文字化)される。なお,暗号化(隠し文字化)する文字数よりも同じ重みの文字が多い場合には,ランダムに暗号化(隠し文字化)するか否かを決定するようにして良い。ステップS5の処理が終了した時点でプログラムは終了し,メインルーチン(図示せず)に戻る。」

第4 対比
本願発明と引用発明を対比する。
ク 引用発明における「文書情報の部分的な暗号化処理を効果的に利用して文書情報の適切な秘匿性の維持管理を実現する文書処理システム」は,本願発明における「暗号化装置」に相当する。

ケ 引用発明における「処理対象の文書を入力する文書作成部」は,本願発明における「暗号化の対象となる平文文書の入力を受け付ける手段」に相当する。

コ 引用発明における「文書情報中で秘密とすべき領域を指定する領域指定部」は,秘密とすべき領域を指定することが,秘密とすべき領域とそれ以外の領域とを区分しているといえるので,本願発明の「前記平文文書を暗号化対象部分平文と暗号化非対象部分平文とに区分」することに相当する。

サ 引用発明における「指定領域部の部分文書を暗号化して暗号化情報を得る暗号化処理部」は,部分文書を暗号化して暗号化情報を得るために,何らかの暗号化アルゴリズムを用いて暗号文を作成していることは明らかであるので,本願発明における「前記暗号化対象部分平文を所定の暗号化アルゴリズムにより暗号化して部分暗号文を作成」に相当する。

シ 引用発明における「指定領域のアドレス情報及び暗号キー情報等の管理情報を生成し,暗号処理部により文書情報の本文中の指定領域を暗号化情報で置換」することは,文書情報の本文中の指定領域を平文から暗号化情報に置換して文書情報を作成しているといえるので,本願発明における「前記平文文書中の前記暗号化対象部分平文を前記部分暗号文に置き換えることにより置換文書を作成」することに相当する。

ス 引用発明の「文書情報の本文中の指定領域を暗号化情報で置換したもの」は,本願発明の「置換文書を平文文書に対応する暗号文書」に対応し,引用発明の「伝送し又は記憶させる」ことは,「管理情報生成部」から「復号処理部」へ「出力」するといえるので,本願発明の「出力する」ことに相当する。そうすると,引用発明における「文書情報の本文中の指定領域を暗号化情報で置換したものを伝送し又は記憶させる管理情報生成部」は,本願発明における「置換文書を平文文書に対応する暗号文書として出力する手段」に相当する。

セ 以上から,本願発明と引用発明とは,以下の点で一致し,また,以下の点で相違する。

<一致点>
暗号化の対象となる平文文書の入力を受け付ける手段と,
前記平文文書を暗号化対象部分平文と暗号化非対象部分平文とに区分し,前記暗号化対象部分平文を所定の暗号化アルゴリズムにより暗号化して部分暗号文を作成し,前記平文文書中の前記暗号化対象部分平文を前記部分暗号文に置き換えることにより置換文書を作成する概要可読暗号化手段と,
前記置換文書を前記平文文書に対応する暗号文書として出力する手段と,
を備える暗号化装置。

<相違点1>
本願発明では「前記概要可読暗号化手段は,暗号化対象部分平文と暗号化非対象部分平文とが交互に配されるように,前記区分を行い」と特定しているのに対し,引用発明では「置換文書」と「平文書」とが交互に配させるような特定がされていない点。

<相違点2>
本願発明では「前記暗号化対象部分平文は,第一の規則で定められた文字数からなり,前記暗号化非対象部分平文は,第二の規則で定められた文字数からなる」と特定されているのに対して,引用発明では「置換文書」と「平文書」との区分を文字数で特定していない点。

第5 当審の判断
1 相違点1及び相違点2について
引用文献2(上記C又はD参照)には,文章を部分的に隠蔽する技術において,図7(A)の文章が入力され,各行の頭の文字から4文字分をカウントし,それ以降の5つの文字を予め定めれた文字数の文字として隠避し,各行毎に隠蔽処理を施し,図7(B)に示すように隠蔽された文字を平文のままの文字と合わせて表示することが記載されており,平文のままカウントする文字と,それ以降,定められた文字数の文字として隠蔽する文字とは区分していることから,文章の部分的な隠蔽処理に関して,平文のままの文字と隠蔽された文字とが交互に配されるように区分すること,及び予め定められた第一文字数の文字を隠蔽処理し,予め定められた第2の文字数の文字を平文のままと区分して処理することは周知技術である。
また,引用文献3(上記E参照)には,「解析率と文字数から暗号化(隠し文字化)する文字数を求める。(中略)ステップS3で求めた文字数だけ,ステップS4で求めた重みの大きい順に暗号化(隠し文字化)を行う。(中略)文章「私が欲しいのは,電卓だよ。分かった?」は「◎が●しいのは,★☆だよ。△かった?」に変換(隠し文字化)される。」と記載されていることから,文章を部分的に隠蔽するという技術において,「暗号化(隠し文字化)」することは常套手段であり,「暗号化(隠し文字化)」するために「暗号化装置」を用いることに格別の困難性がない。
すなわち,引用発明の「文書情報の部分的な暗号化処理」に当該周知技術を適用して,「置換文書」と「平文文書」とを,交互に配されるように区分すること,及び前記暗号化対象部分平文は,第一の規則で定められた文字数からなり,前記暗号化非対象部分平文は,第二の規則で定められた文字数からなるとすることは,当業者が容易になし得ることである。

2 小括
上記で検討したごとく,相違点1及び2に係る構成は,引用発明から当業者であれば適宜実施し得るものであり,そして,本願発明の奏する効果は,引用発明及び当該技術分野の周知技術の奏する効果から予測される範囲内のものに過ぎず,格別顕著なものということはできない。
したがって,本願発明は,上記引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易にすることができたものであり,特許法第29条第2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができない。

3 請求人の主張について
請求人は平成27年12月25日付け意見書において,
『従って,このような引用発明の課題と関係ない”復号鍵を入手できない第三者は暗号化文書情報を解読できない”との従来技術の説明を,「文書情報の部分的な暗号処理に係る技術は確立していなかったためである。」という引用発明の課題と強引に関連づけて,『引用文献1には「復号鍵を持たない者も暗号化した文書情報の実体を知ることができるために文書情報の部分的な暗号化処理」に関する技術が記載されている。』のように認定することは甚だ不適当であり,本願発明の課題である「暗号化により文書の内容の隠蔽を図りつつ,暗号化した後であっても,文書の概要を把握することができる暗号化装置及び方法を提供する」との記載を読んだ上での,いわゆる後知恵の認定と言わざるを得ません。
以上のように,拒絶理由通知における引用発明の認定は適当でないことから,本願発明と引用発明との一致点や相違点の認定,それらに基づく本願発明が容易に想到できたとの結論もまた適当でなく,従って,本願発明は拒絶理由1を有さないものと思料いたします。』と主張している。

請求人の主張を参酌し,検討する。
意見書での指摘事項を踏まえ,引用発明の認定は「第3 引用文献」「2 引用発明の認定」で検討したとおりである。
引用文献1(上記A参照)には「【発明が解決しようとする課題】従来は,上述のように,秘密情報を含む文書情報を,暗号化して取り扱う場合には,当該文書情報全体を暗号化していた。これは,暗号化及び復号は,文書情報を格納したファイル等を単位として行うことを前提としており,文書情報の部分的な暗号処理に係る技術は確立していなかったためである。」と記載されていることから,引用発明の「文書情報の部分的な暗号処理」は,文書情報の全体を暗号化していたものを部分的に暗号化するようにしたものである。
ここで,引用発明の「文書情報の部分的な暗号化処理」において,「暗号化する部分」と「暗号化されない部分」があることは明らかであり,「暗号化する部分」と「暗号化されない部分」を如何に決め如何に用いるのかは当業者が適宜なし得ることである。
また,上記「第5 当審の判断」「1 相違点1及び相違点2について」で検討したとおり,引用発明の「文書情報の部分的な暗号化処理」に引用文献2の周知技術を適用することは,格別の困難性がなく,本願発明と同様の作用効果が得られることは明らかである。
更に,本願発明の「暗号化装置」において,請求人の主張する「暗号化により文書の内容の隠蔽を図りつつ,暗号化した後であっても,文書の概要を把握することができる暗号化装置及び方法」という態様について,「暗号化アルゴリズム」を含めた暗号化するための具体的な技術的事項が特定されておらず,従来技術の組み合わせに過ぎない。
そうすると,請求人の主張を参酌しても,本願発明及び引用発明の認定,並びに一致点及び相違点の認定,それらに基づく進歩性の判断に誤りは無い。よって,請求人の主張は採用できない。

第6 むずび
以上のとおり,本願の請求項1に係る発明は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができるものでないから,その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-04-05 
結審通知日 2016-04-06 
審決日 2016-04-28 
出願番号 特願2010-103542(P2010-103542)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G09C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 青木 重徳  
特許庁審判長 辻本 泰隆
特許庁審判官 高木 進
石井 茂和
発明の名称 暗号化装置および暗号化方法  
代理人 江口 昭彦  
代理人 内藤 和彦  
代理人 稲葉 良幸  
代理人 大貫 敏史  
代理人 土屋 徹雄  
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