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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  A63F
管理番号 1315455
審判番号 無効2014-800173  
総通号数 199 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-07-29 
種別 無効の審決 
審判請求日 2014-10-23 
確定日 2016-06-03 
事件の表示 上記当事者間の特許第4114938号発明「スロットマシン」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許第4114938号の出願についての手続の概要は、以下のとおりである。

平成17年 1月20日 特許出願(特願2005-13408号)
平成20年 4月25日 特許権の設定登録(請求項の数3)
平成26年10月23日 本件無効審判の請求
平成27年 1月 6日 審判事件答弁書
平成27年 2月18日 審理事項通知
平成27年 3月24日 口頭審理陳述要領書(請求人。以下「陳述要領書(請求人)」という。)
平成27年 3月24日 口頭審理陳述要領書(被請求人。以下「陳述要領書(被請求人)」という。)
平成27年 4月 7日 口頭審理

なお、平成27年4月7日の口頭審理について、調書に記載された「陳述要領」のうち請求人及び被請求人に関するものは以下の通りである。
「請求人
1 審判請求の趣旨及び理由は、審判請求書、平成27年3月24日付け口頭審理陳述要領書に記載のとおり陳述。
2 無効理由は、以下のとおりである。
(1)本件特許の請求項1に係る発明は、甲第1号証、甲第2号証に記載された発明、或いは、甲第1号証ないし甲第3号証に記載された発明に基づいて、出願前に当業者が容易に想到することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであって、本件特許は特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。
(2)本件特許の請求項2に係る発明は、甲第1号証、甲第2号証、及び甲第4号証に記載された発明、或いは、甲第1号証ないし甲第4号証に記載された発明に基づいて、出願前に当業者が容易に想到することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであって、本件特許は特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。
(3)本件特許の請求項3に係る発明は、甲第1号証、甲第2号証、甲第4号証及び甲第5号証に記載された発明、或いは、甲第1号証ないし甲第5号証に記載された発明に基づいて、出願前に当業者が容易に想到することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであって、本件特許は特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。
3 乙第1号証ないし乙第7号証の成立を認める。

被請求人
1 答弁の趣旨及び理由は、平成27年1月6日付け審判事件答弁書、同年3月24日付け口頭審理陳述要領書に記載のとおり陳述。
2 甲第1号証ないし甲第10号証の成立を認める。」

第2 本件審判事件にかかる両当事者の主張
請求人と被請求人の主張は以下のとおりである。
1 請求人の主張
(1)概要
請求人は、審判請求書において、「特許第4114938号の特許請求の範囲の請求項1から3に係る発明についての特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め、審判請求書、及び、陳述要領書(請求人)を提出した。
そして、請求人が主張する無効理由は、調書における前記「請求人 2(1)?(3)」に記載したとおりのものである。
また、証拠方法として甲第1号証?甲第10号証を提出した。

[証拠方法]
甲第1号証:特開2000-317043号公報
甲第2号証:特開2004-187812号公報
甲第3号証:特開2003-225358号公報
甲第4号証:特開2003-10409号公報
甲第5号証:特開2003-180965号公報
甲第6号証:特開平5-285259号公報
甲第9号証:特開2003-52902号公報
甲第10号証:特開2003-325751号公報

(2)審判請求書における主張
請求人は、無効理由について、審判請求書において、具体的に以下のように主張する。
ア 本件特許の請求項1に係る発明について(第31頁第15行?第37頁第18行)
本件特許の請求項1に係る発明(以下「本件発明1」という。)と、甲第1号証に記載された発明(以下「甲1発明1」という。)とを対比すると、両者は、
「1ゲームに対して所定数の賭数を設定することによりゲームが開始可能となるとともに、各々が識別可能な複数種類の識別情報を変動表示可能な可変表示装置の表示結果が導出表示されることにより1ゲームが終了し、該可変表示装置の表示結果に応じて入賞が発生可能とされたスロットマシンであって、
遊技の制御を行う遊技制御手段を備え、
該遊技制御手段は、
所定の設定操作手段の操作に基づいて、入賞の発生を許容する旨を決定する割合が異なる複数種類の許容段階のうちから、いずれかの許容段階を選択して、該許容段階を示す設定値を設定する許容段階設定手段と、
前記許容段階設定手段により設定された設定値を含む前記遊技制御手段が制御を行うためのデータを読み出し及び書き込みが可能に記憶するデータ記憶手段と、
前記スロットマシンへの電源供給が遮断しても前記データ記憶手段に記憶されている前記遊技制御手段が制御を行うためのデータを保持する保持手段と、
前記スロットマシンへの電源投入時に、前記遊技制御手段が制御を行うためのデータのうちの前記設定値が適正か否かの判定を個別に行わず、前記保持手段により保持されている前記遊技制御手段が制御を行うためのデータが前記電源遮断前のデータと一致するか否かの判定を行う記憶データ判定手段と、
前記記憶データ判定手段により前記保持手段により保持されている前記遊技制御手段が制御を行うためのデータが前記電源遮断前のデータと一致しないと判定されたときに、ゲームの進行を不能化する第1の不能化手段と、
設定値が示す許容段階に応じた割合で当該ゲームにおいて入賞の発生を許容するか否かを決定する事前決定手段と、
前記第1の不能化手段により前記ゲームの進行が不能化された状態において、前記設定操作手段の操作に基づいて前記許容段階設定手段により前記設定値が新たに設定されたことを条件に、前記ゲームの進行が不能化された状態を解除し、ゲームの進行を可能とする不能化解除手段と、を備えるスロットマシン。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
【相違点1】
本件発明1の遊技制御手段は、本件発明(1H)の「ゲームの開始操作がなされる毎に、前記データ記憶手段から前記設定値を読み出し、該読み出した設定値が、前記許容段階設定手段により設定可能な設定値の範囲内である場合に前記読み出した設定値が適正であると判定し、前記設定可能な設定値の範囲内でない場合に前記読み出した設定値が適正ではないと判定する設定値判定手段」を備えるものであるのに対し、甲1発明1の遊技制御手段は、かかる「設定値判定手段」を備えるものではない点。

【相違点2】
本件発明1の遊技制御手段が備える本件発明(1I)の「事前決定手段」は、「前記設定値判定手段により前記読み出した設定値が適正であると判定したときに、該読み出した設定値が示す許容段階に応じた割合で当該ゲームにおいて入賞の発生を許容するか否かを決定する」ものであるのに対し、甲1発明1の「事前決定手段」は、「ゲームの開始操作がなされる毎に」入賞の発生を許容するか否かを決定するものである点。

【相違点3】
本件発明1の遊技制御手段は、本件発明(1J)の「前記設定値判定手段により前記読み出した設定値が適正ではないと判定されたときに、ゲームの進行を不能化する第2の不能化手段と」を備えるものであるのに対し、甲1発明1の遊技制御手段は、かかる「第2の不能化手段」に相当する手段を備えていないものである点。

【相違点4】
本件発明1の遊技制御手段が備える本件発明(1K)の「不能化解除手段」は、「前記第1の不能化手段により前記ゲームの進行が不能化された状態においても前記第2の不能化手段により前記ゲームの進行が不能化された状態においても設定値が新たに設定されたことを条件に、ゲームの進行が不能化された状態を解除し、ゲームの進行を可能とするもの」であるのに対し、甲1発明1は「第2の不能化手段」を備えないので、その「不能化解除手段」は、「前記第2の不能化手段により前記ゲームの進行が不能化された状態においても設定値が新たに設定されたことを条件に、ゲームの進行が不能化された状態を解除し、ゲームの進行を可能とする」構成を備えないものである点。

上記相違点1?4について、以下、検討する。
(ア)相違点1について
甲2の段落【0079】には、適正判定手段230は、RAM22上の遊技情報値が適正範囲テーブル220に定めた適正範囲(「1?6」)内にあるか否かの判定を行うためのものであること、段落【0080】には、適正判定手段230による遊技情報値の判定タイミングは、スロットマシン10に電源が投入される時、スタートスイッチ50の操作時等の場合があることが記載されている。
そうすると、甲2には、スタートスイッチ50の操作時(ゲームの開始操作がなされる毎)にRAM22(データ記憶手段)から設定値を読み出し、該読み出した設定値が、ROM上の適正範囲テーブルに定められた(許容段階設定手段により設定可能な)設定値の範囲内である場合には前記読み出した設定値が適正であると判定し、前記設定可能な設定値の範囲内でない場合には前記読み出した設定値が適正でないと判定する手段を備えたスロットマシンの発明が記載されている。
そして、甲1及び甲2に記載された各発明は、スロットマシンの技術分野に属するものである点で共通し、RAM中のデータに異常が生じた場合に、異常なデータに基づいて遊技が進行されることを防止するという目的・課題において共通するものであるから、甲1発明1に甲2の前記手段を適用することには当業者に動機付けがあったことが明らかである。
したがって、相違点1に係る本件発明1の構成は、甲1発明1に甲2に記載された発明を適用することにより、当業者が容易に想到し得たものである。

(イ)相違点2について
甲2の段落【0052】によれば、メダルの投入を条件に、スタートスイッチ50を操作すると、ソフトウエアを用いない手段によって生成される乱数であるハード乱数が抽出され、このハード乱数に基づいて役に当選したかハズレかの抽選が行われることが記載されている。
そして、段落【0061】によれば、役抽選手段140は、ハード乱数抽出手段120が抽出したハード乱数と、役抽選テーブル130とを照合して、「BB当選」、「RB当選」、「第1小役当選」、「第2小役当選」、「第3小役当選」、「Replay当選」又は「ハズレ」かの判定を行うことが記載されている。
また、アで既述したように、甲2には、ゲーム開始毎に設定値を読み出し、該読み出した設定値が設定可能な範囲内であるか否かを判定する手段が記載されている。
そうすると、甲2には、読み出した設定値が設定可能な範囲内であると判定されたときに、設定値が示す許容段階に応じた割合で当該ゲームにおいて入賞の発生を許容するか否かを決定する事前決定手段が記載されている。
したがって、相違点2に係る本件発明1の構成は、甲1発明1が備えられている「事前決定手段」を甲2に記載された前記事前決定手段によって置き替えることにより、当業者であれば容易に想到し得たものである。

(ウ)相違点3について
甲2の段落【0022】によれば、「「所定の操作を条件に」とは、適正判定手段(230)による判定の結果、RAM(22)上の遊技情報値に適正範囲外のものがあったときに、リセット操作等の所定の操作を待ってから、遊技情報値を変更するという意味である。」と記載されている。換言すれば、甲2には、読み出した設定値が適正範囲外であると判定された場合は、所定の操作が行われるまでゲームの進行を不能化する手段、すなわち本件発明1の第2の不能化手段に相当する手段が記載されている。
したがって、相違点3に係る本件発明1の構成は、甲1発明1に甲2に記載された前記第2の不能化手段に相当する手段を適用することにより、当業者であれば容易に想到し得たものである。

(エ)相違点4について
甲1には、第2の不能化手段及び第2の不能化手段によりゲームの進行が不能化された状態を解除する不能化解除手段に相当する手段は記載されていない。
しかしながら、上記(ウ)に既述したとおり、「第1の不能化手段」に加え、「第2の不能化手段」を備えることは、甲1発明1に甲2に記載された前記不能化する手段を適用することにより、当業者であれば容易に想到し得たものである。
そして、ゲームの進行を不能化した状態のままではゲームの進行ができないことから、何らかの解除手段を備えることが必須であることは自明であるから、甲1発明1に、甲2に記載された前記第2の不能化手段に相当する手段を適用する際に、甲1発明1に備えられている「設定操作手段の操作に基づいて許容設定手段により設定値が新たに設定されたことを条件に、ゲームの進行が不能化された状態を解除してゲームの進行を可能とする不能化解除手段」を前記第2の不能化手段の解除手段として採用することは、当業者であれば容易に想到し得たものである。
また、甲1の段落【0048】及び【0049】には、不正等の故意のノイズによりRAMの内容が破壊された場合、段階設定値を初期値にセットすると、ホール・遊技者の双方に迷惑が掛かるため、段階設定値を再度設定させるという本件発明1と同様の目的・課題が記載されていることから、本件発明の出願時に、ゲームの公平性を図るためにゲームの進行が不能化された状態において、設定値が新たに設定されたことを条件にゲームの進行が不能化された状態を解除し、ゲームの進行を可能とする不能化解除手段を備えるスロットマシンが既に知られていることが明らかであり、この事実から見ても、甲1発明1に、甲2に記載された前記第2の不能化手段に相当する手段を適用する際に、甲1発明の目的・課題に沿って、ゲームの公平性を図るために、甲1発明1に備えられている「設定操作手段の操作に基づいて許容設定手段により設定値が新たに設定されたことを条件に、ゲームの進行が不能化された状態を解除してゲームの進行を可能とする不能化解除手段」を前記第2の不能化手段の解除手段として採用することは、当業者であれば容易に想到し得たものである。

一方、甲3の図5には、種々のRAMデータ異常エラーが生じた場合に、いずれのRAMデータ異常エラーにおいても、出玉率の設定変更を解除方法とする技術手段が記載されているところであり、種々のRAMデータ異常エラーに関して設定値を新たに設定するという共通したエラー解除方法を用いる技術手段が開示されている。
そして、甲3に示されているRAMデータ異常エラーの原因は、本件発明の第1の不能化手段及び第2の不能化手段の原因とは異なるエラー状態であるが、本件発明の第1の不能化手段及び第2の不能化手段もRAMデータ異常エラーに関する不能化手段である点について、甲3に示されているものと共通している。
そうすると、当業者であれば、甲1発明1に甲2に記載された第2の不能化手段を適用する際に、甲3に記載された技術手段を参酌すれば、第1の不能化された状態においても第2の不能化された状態においても、段階設定値を新たに設定させることを条件にゲームの進行が不能化された状態を解除するという共通したエラー解除方法を用いることに何ら困難性はない。
したがって、相違点4に係る本件発明1の構成は、甲1発明1に甲2に記載された第2の不能化手段を適用することにより、或いは、甲1発明に甲2に記載された第2の不能化手段を適用する際に、甲3に記載された技術手段を参酌することにより、当業者であれば容易に想到し得たものである。

(オ)小括
以上のとおり、本件発明1は、甲1及び甲2に記載された発明に基づいて、或いは、甲1ないし甲3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

イ 本件特許の請求項2に係る発明について(第37頁第19行?第43頁下第1行)
本件特許の請求項2に係る発明(以下「本件発明2」という。)と、甲第1号証に記載された発明(以下、「甲1発明2」という。)とを対比すると、両者は、本件発明1と甲1発明1との一致点に加えて、
「前記スロットマシンで用いられる所定の電力の状態を監視する電断検出手段を備え、
前記制御手段は、データ記憶手段に記憶されている遊技制御手段が制御を行うためのデータに基づいて破壊診断用データを算出し、該算出した破壊診断用データをデータ記憶手段に格納する電断処理を実行する電断処理手段を含み、
前記記憶データ判定手段は、前記スロットマシンへの電源投入時に、前記データ記憶手段に記憶されている前記遊技制御手段が制御を行うためのデータに基づいて破壊診断用データを算出し、該算出した破壊診断用データと前記記憶手段に記憶されている破壊診断用データとを比較し、該比較結果が一致したときに、前記保持手段により保持されている前記遊技制御手段が制御を行うためのデータが前記電源遮断前のデータと一致すると判定し、該比較結果が一致しなかったときに、前記保持手段により保持されている前記遊技制御手段が制御を行うためのデータが前記電源遮断前のデータと一致しないと判定する請求項1に記載のスロットマシン」
である点で一致し、以下の点で相違する。
【相違点5】
本件発明2の「電断検出手段」は「電力供給が断たれたことに関わる電断条件が成立しているときに前記遊技制御手段に対して電断信号を出力する」ものであるのに対し、甲1発明2の「電断検出手段」は、かかる構成を備えない点。

【相違点6】
本件発明2の電断処理手段は「前記電断検出手段から出力された前記電断信号の入力を契機に」電断処理を実行するものであるのに対し、甲1発明2の電断処理手段は、かかる契機を有しない点。

【相違点7】
本件発明2の前記遊技制御手段が制御を行うためのデータは、前記データ記憶手段の「特定領域を除く記憶領域」に記憶され、前記データに基づいて算出した破壊診断用データと比較される破壊診断用データが、前記データ記憶手段の「特定領域」に記憶されているのに対し、甲1発明2のデータ記憶手段には、「特定領域」及び「特定領域を除く記憶領域」を備えるものか否か明らかではない点。

上記相違点5?7について、以下、検討する。
(カ)相違点5について
甲4の段落【0048】によれば、電源監視手段82は、電源スイッチ80を介して供給されたAC24Vを直接読み込んで供給電圧を常時監視すること、停電の発生や電源スイッチ80のオフ操作により主電源が断たれると、電圧異常を示す「L」レベルの電圧異常信号VSをマイコン39C、46Cの最優先割込みポート「NMI(ノン・マスカブル・インタラプタ)ポート」に出力することが記載されている。
また、同じく段落【0068】及び図11によれば、DC32Vから所定の電圧まで下がると電圧異常を検出し、電圧異常を示す「L」レベルの電圧異常信号VSを出力することが示されている。
以上のことから、マイコン39C、電圧異常信号及び電源監視手段82は、それぞれ本件発明2の「遊技制御手段」(メイン制御部41)、「電断信号」(電圧低下信号)及び「電断検出手段」(電源監視用IC44)に相当する。
そうすると、甲4には、遊技機で用いられる所定の電圧を監視し、主電源が断たれたことに関する電断条件が成立しているときにマイコン39Cに対して電圧異常信号VSを出力する電源監視手段82が開示されている。
したがって、相違点5に係る本件発明2の構成は、甲1発明2に甲4に記載された上記電源監視手段を適用することにより、当業者であれば容易に想到し得たものである。

(キ)相違点6について
甲4の段落【0069】ないし【0073】及び図9によれば、電源監視手段82から出力された電圧異常を示す「L」レベルの電圧異常信号VSがマイコン39Cに供給されると、RAM39Bの遊技情報記憶部39jに記憶した記憶情報(レジスタやスタックポインタの内容、遊技者の利益状態に関する情報、払出し制御コマンド情報)のすべてに基づくチェックサムデータSCDを作成し、これを遊技情報記憶部39jの末尾アドレスに記憶するバックアップ処理が記載されている。
そうすると、甲4には、電圧異常信号VSの入力を契機に、遊技情報記憶部39jに記憶されている主制御手段50が制御を行うためのデータに基づいてチェックサムデータSCDを算出して、算出したチェックサムデータSCDを遊技情報記憶部39jの末尾アドレスに記憶するバックアップ処理が開示されている。
したがって、相違点6に係る本件発明2の構成は、甲1発明2に甲4に記載された上記バックアップ処理を適用することにより、当業者であれば容易に想到し得たものである。

(ク)相違点7について
甲4の段落【0072】及び図9によれば、記憶情報(レジスタやスタックポインタの内容、遊技者の利益状態に関する情報、払出し制御コマンド情報)のすべてに基づくチェックサムデータSCDを作成し、これを記憶する遊技情報記憶部39jの「末尾アドレス」は、本件発明2の「前記データ記憶手段の特定領域」に相当し、前記遊技情報記憶部39jのうちの前記記憶情報が記憶されている部分は、本件発明2の「前記データ記憶手段の特定領域を除く記憶領域」に相当する。
そして、同じく段落【0084】、【0085】、及び【0088】並びに図15によれば、主電源が復帰する際に、遊技情報記憶部39jに記憶されている記憶情報から作成されたチェックサムデータと遊技情報記憶部39jの末尾アドレスに記憶されているチェックサムデータSCDとを比較して、求めたチェックサムデータと既に記憶していたチェックサムデータSCDが一致しているか否かを判定する旨が開示されている。
そうすると、甲4には、遊技機の電源投入時に、遊技情報記憶部39jの末尾アドレスを除く遊技情報記憶部39jに記憶されている記憶情報値に基づいてチェックサムデータを算出し、算出したチェックサムデータと遊技情報記憶部39jの末尾アドレスに記憶されているチェックサムデータSCDとを比較し、該比較結果が一致した場合には、遊技情報記憶部39jに記憶されている記憶情報値が電源遮断前のデータと一致すると判定し、該比較結果が一致しなかったときには、遊技情報記憶部39jに記憶されている記憶情報値が電源遮断前のデータと一致しないと判定する手段が開示されている。
したがって、相違点7に係る本件発明2の構成は、甲1発明2に甲4に記載された上記手段を適用することにより、当業者であれば容易に想到し得たものである。

(ケ)小括
したがって、本件発明2は、甲1、甲2及び甲4に記載された発明に基づいて、或いは、甲1ないし甲4に記載された発明に基づいて、当業者であれば容易に想到し得たものである。

ウ 本件特許の請求項3に係る発明について(第44頁第1行?第48頁下第2行)
本件特許の請求項3に係る発明(以下「本件発明3」という。)と、甲第1号証に記載された発明(以下、「甲1発明3」という。)とを対比すると、両者は、本件発明1と甲1発明1との一致点及び/又は本件発明2と甲1発明2との一致点に加えて、
「前記遊技制御手段は、前記スロットマシンへの電源投入時に、前記設定操作手段による前記許容段階の設定操作が有効となる設定操作有効状態へ移行させるための移行操作手段の操作がなされているか否かを判定する移行操作判定手段と、
前記スロットマシンへの電源投入時において、前記移行操作判定手段により前記移行操作手段の操作がなされていると判定されたことを条件に、前記設定操作有効状態へ移行させる設定操作有効状態移行手段と、
前記移行操作判定手段により前記移行操作手段の操作がなされていると判定され、前記設定操作有効状態移行手段が前記設定操作有効状態に移行させることに伴って、データを初期化するデータ初期化手段と、を含み、
前記移行操作判定手段は、前記移行操作手段の操作がなされているか否かを判定し、
前記記憶データ判定手段は、前記保持手段により保持されている前記遊技制御手段が制御を行うためのデータが前記電源遮断前のデータと一致するか否かを判定する請求項1または2に記載のスロットマシン。」
で一致し、次の点で相違する。
【相違点8】
本件発明(3C)のデータ初期化手段は「前記スロットマシンへの電源投入時において、前記移行操作判定手段により前記移行操作手段の操作がなされていると判定され、前記設定操作有効状態移行手段 が前記設定操作有効状態に移行させることに伴って、前記データ記憶手段に記憶されているデータを初期化する」ものであるのに対して、甲1発明3の「データ初期化手段」は、移行操作判定手段により移行操作手段の操作がなされていると判定され、設定操作有効状態移行手段が設定操作有効状態に移行させるに伴って、データ記憶手段に記憶されている段階設定値を除くデータを初期化することである点。

【相違点9】
本件発明(3D)の移行操作判定手段は「前記スロットマシンへの電源投入時において、前記記憶データ判定手段が前記保持手段により保持されている前記遊技制御手段が制御を行うためのデータが前記電源遮断前のデータと一致するか否かを判定する前に、前記移行操作手段の操作がなされているか否かを判定」しているのに対して、甲1発明3の「移行操作判定手段」は、かかる構成を備えていない点。

【相違点10】
本件発明(3E)の記憶データ判定手段は「前記移行操作判定手段により前記移行操作手段の操作がなされていないと判定されたときに、前記保持手段により保持されている前記遊技制御手段が制御を行うためのデータが前記電源遮断前のデータと一致するか否かを判定」しているのに対して、甲1発明3の「記憶データ判定手段」は、かかる構成を備えていない点。

上記相違点8?10について、以下、検討する。
(コ)相違点8について
甲5の段落【0118】ないし【0120】及びに図10によれば、電源が投入されると、まず、設定キースイッチ82がONであるか否かをステップSa1において判定し、ONと判定された場合にレジスタ及びRAM212をクリアするメイン初期化処理を実行するとともに、入賞確率の設定値の変更が実施可能な設定変更処理を実行することが記載されている。
そうすると、甲5には、スロットマシンの電源投入時において、設定キースイッチ82がONであると判定され、設定変更処理に移行させることに伴って、レジスタ及びRAM212をクリアするデータ初期化手段が開示されている。
したがって、相違点8に係る本件発明3の構成は、甲1発明3に甲5に記載された上記手段を適用することにより、当業者であれば容易に想到し得たものである。

(サ)相違点9について
既述のとおり、甲5には、電源が投入されると、まず、設定キースイッチ82がONであるか否かを確認することが記載されている。
そして、段落【0124】及び【0125】並びに図10によれば、バックアップRAM領域のデータチェックは、設定キースイッチ82がOFFと判定された後に行われていることが記載されている。
そうすると、甲5には、スロットマシンの電源投入時において、バックアップRAM領域のデータチェックを行う前に、設定スイッチ82が操作されているか否かを判定する手段が開示されている。
したがって、相違点9に係る本件発明3の構成は、甲1発明3に甲5に記載された上記手段を適用することにより、当業者であれば容易に想到し得たものである。

(シ)相違点10について
既述のとおり、甲5には、設定キースイッチ82がOFFであったと判定されたときに、バックアップRAM領域のデータチェックを行う手段が記載されている。
したがって、相違点10に係る本件発明3の構成は、甲1発明3に甲5に記載された上記手段を適用することにより、当業者であれば容易に想到し得たものである。
そして、甲1及び甲5に記載された各発明は、電源が遮断され再度電源を投入する際に、電断時のデータと電源投入時のデータが一致しているか否かを判定する判定手段を備えることで共通の目的・効果を有しているから、両者を組み合わせる動機付けが存在している。

(ス)小括
したがって、本件発明3は、甲1号証、甲2号証、甲4号証及び甲5号証に記載された発明に基づいて、或いは、甲1号証ないし甲5号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到できたものである。

(3)陳述要領書(請求人)における主張
請求人は、陳述要領書(請求人)において、以下のように主張する。
エ 合議体による甲1発明の認定について
「合議体暫定認定甲1発明が、「前記スロットマシンへの電源投入時に行われるチェックサム検査により、前記バックアップ電源によって保持されている前記遊技データのチェックサムが電源遮断前のチェックサムと一致すると判定されたときに、前記段階設定値が正常か否か判定する段階設定値判定手段と、前記段階設定値判定手段により前記段階設定値が正常でないと判定されたときに、当該段階設定値を初期値にセットする手段(以下、「段階設定値判定に係る構成」と称する。)」を含めているのに対し、請求人認定甲1発明が、段階設定値判定に係る構成を含んでいない点で相違します。」(第2頁第14?21行)
また、「甲1の特許請求の範囲に記載された発明には、「段階設定値判定に係る構成」についての記載は一切存在しておりません。
そして、甲1の記載全体からみて、当業者にとって、段階設定値判定に係る構成を含まない特許請求の範囲に記載された発明が「設定値を含む遊技データのチェックサムを、バックアップ電源により保持することにより、電源投入時に、設定値に関するエラーの発生を検査することができる。」、「エラーを発見した場合に、スロットマシンの遊技を停止することができる。」、「エラーを発見した場合に、段階設定値の設定の待機待ちの状態にすることができる。」、「エラーを発見した場合に、段階設定値を手動で変更することができる。」など(段落【0052】、【0053】、【0055】?【0058】)といった効果を奏することも容易に理解できます。
すなわち、甲1の特許請求の範囲に記載された発明において、「段階設定値判定に係る構成」が必須の構成要件ではないことは明らかであります。」(第4頁下第3行?第5頁第10行)

オ 合議体による甲2発明の認定について
「合議体は、審理事項通知書4頁9行?19行で示すように、
『甲第2号証刊行物(以下「甲2」という。)には、制御装置を備え、当該制御装置は、スタートスイッチを操作すると、ストップスイッチの操作の前に、役に当選したかハズレかの抽選を行う役抽選手段(段落【0052】、【0061】等)と、スロットマシンの電源投入時、及び、スタートスイッチの操作時に、設定値が適正範囲内(1?6)である場合に設定値が適正であると判定し、当該設定値が適正範囲内でない場合に設定値を適正でないと判定する適正判定手段(段落【0079】、【0080】)と、設定値が適正でないと判定されたときに、所定のリセット操作が必要な状態とする手段(段落【0021】、【0022】、【0084】等)と、所定のリセット操作が行われると、設定値を初期化する適正変更手段(段落【0022】、【0083】、【0084】等)とを備えるスロットマシンの発明が記載されている。』と甲2に記載されている発明(以下、「合議体暫定認定甲2発明」と称する。)を認定しています。(下線は請求人が付したものである。)
一方、請求人は、甲2に記載された技術的事項より、審判請求書34頁5行?11行、同35頁4行?6行及び同頁11行?17行で示すように、甲2発明を認定(以下、「請求人認定甲2発明」と称する。)しています。
両者を対比すると、合議体暫定認定甲2発明は設定値の判定するタイミングを「スロットマシンの電源投入時、及びスタートスイッチの操作時」と認定しているのに対して、請求人認定甲2発明は設定値の判定するタイミングを後述する複数あるタイミングのうちから「スタートスイッチの操作時」を選択し認定している点で相違しており、かつ合議体暫定認定甲2発明は「所定のリセット操作が行われると、設定値を初期化する適正変更手段(以下、「適正変更手段に係る構成」と称する。)を含んでいるのに対して、請求人認定甲2発明は「適正変更手段に係る構成」を含んでいない点で相違しています。」(第7頁第10行?第8頁第7行)

(セ)請求人認定甲2発明が甲2から認定できる根拠について
「適正変更手段に係る構成を含まない請求人認定甲2発明は、当業者にとってその効果「RAMに異常がある場合には、遊技の進行を停止することにより異常がある状態で遊技者がゲームを続行するのを防止することができる。」を当然に理解することができ、特許法第2条の発明の定義に照らしても、発明であることは明らかであり、特許文献等の単一の刊行物に多様な複数の発明が記載されていることが一般的であることから、請求人が、甲2から請求人認定甲2発明を認定したことにも誤りはありません。」(第8頁第11?17行)
「ここで、本件出願時において、RAMに異常が起きた場合に遊技の進行を停止するという技術事項から奏する効果が知られていたことは言うまでもありません」(第8頁第23?25行)。

(ソ)請求人認定甲1発明に請求人認定甲2発明を適用することが当業者にとって容易に想到し得たことの根拠について
「甲1の段落【0007】には、「請求項4の発明は、エラーを発見した場合に、スロットマシンの遊技を停止することができるようにしたものである。」と記載されています。
また、甲2の段落【0022】には、「適正判定手段(230)による判定の結果、RAM(22)上の遊技情報値に適正範囲外のものがあったときに、リセット操作等の所定の操作を待ってから、遊技情報値を変更するという意味である。また、例えば、適正判定手段(230)による判定の結果、RAM(22)上の遊技情報値に適正範囲外のものがあると、まず、エラー表示手段(250)により所定のエラー表示を行い、(以下略)」と記載されています。
このように、甲1と甲2は、エラーを発見した場合に、スロットマシンの遊技を停止することができるという共通の作用・機能を備えたスロットマシンを開示する文献であります。
そして、スロットマシンにおいて、エラーを適切に発見して、遊技を適切に停止するために、関連する技術手段の適用を試みることは、当業者の通常の創作能力の発揮であるから、請求人認定甲1発明に請求人認定甲2発明の技術を適用することは、当業者にとって容易に想到し得たことです。」(第9頁第21行?第10頁第10行)

カ 合議体の質問に対する回答
(タ)甲1発明への甲2発明の適用について
「請求人はあくまでも、「5-1-1. 合議体による甲1発明の認定について」でも述べたように、「段階設定値判定に係る構成」を含まない請求人認定甲1発明を認定しているのであり、審判請求書33頁23行?37頁14行で示すように、請求人認定甲1発明に請求人認定甲2発明を加えることが容易であると主張しています。」(第11頁第7?11行)

(チ)被請求人の答弁書24?25頁(3-4-4)イにおける主張について
「被請求人が答弁書24?25頁(3-4-4)イにおいて、「甲2は、RAM上の一部のデータに異常があったときには、すべてのデータを初期化することによる不都合を回避することを課題とし、これを解決するために、異常のあったデータのみを適正範囲内に変更することを不能化の解除条件とするものであり、すべてのデータを初期化するようにすることは甲2発明の課題に反する」ので、甲1に、甲2の「第2の不能化手段」を適用するに際し、甲1の不能化解除手段を第2の不能化解除手段として採用することはできない旨を主張しております。
確かに、請求人認定甲1発明に請求人認定甲2発明を適用することにより、該適用後の発明は、RAM上のデータに異常があったときは、RAM上のデータの全てをクリアすることになり、甲2に記載された従来技術の不都合を含むことになります。
しかしながら、本件の出願時において、RAM上の一部のデータに異常があったときの解消の仕方として、リセットする際にRAM上のデータを一部クリアするのか全てをクリアするのかは・・・周知の技術であったことは明らかであり、甲2のようにRAM上のデータを一部クリアするか、甲1のように全てのデータをクリアするかは、RAMの初期化処理において当業者が適宜選択できる事項(汎用技術)に過ぎません。
また、甲2に記載された従来技術の不都合は、RAM上の一部のデータに異常があったときの解消が不可能であるほどの不都合でないことは、当業者にとって容易に理解できる程度のことであって、請求人認定甲1発明に請求人認定甲2発明を適用することを妨げるほどでないといえます。
更に、本件発明も、RAM上のデータに異常があったときはRAM上のデータの全てをクリアしており、甲2に記載された従来技術の不都合を含むものであって、この点において、格別な効果を奏するものではありません。
そして、請求人認定甲1発明に請求人認定甲2発明を適用することが当業者にとって容易に想到し得たとすることの根拠は、「5-2-3.請求人認定甲1発明に請求人認定甲2発明を適用することが当業者にとって容易に想到し得たことの根拠について」において、説示した通り、合理的な理由があります。
従いまして、RAMの初期化処理に関する甲1と甲2との課題の相違は、引用発明への適用に際して何ら阻害となり得ないというべきです。」(第11頁第22行?第12頁下第2行)

キ 被請求人の主張に対する反論
(ツ)被請求人の、答弁書6頁12行?7頁15行における『甲1には、請求人が主張するような「チェックサムが不一致と判定され、無限ループの処理を繰り返している場合、設定スイッチ40により設定された新たな段階設定値に変更されることを条件に、無限ループの処理を解除する解除手段」が開示されているとは言えない。』との主張について
「審判請求書24頁13?22行、同25頁12?24行にも記載したように、「チェックサムが不一致と判定され、無限ループの処理を繰り返している場合、設定スイッチ40により設定された新たな段階設定値に変更されることを条件に、無限ループの処理を解除する解除手段」は明らかに記載されております。
また、「5-1-2. 請求人認定甲1発明が甲1に記載されているとする根拠」でも述べたように、甲1の請求項1、4?6の目的・効果は、エラーを発見した場合はスロットマシンの遊技を停止させるとともに、段階設定値の待機待ちの状態にし、段階設定値を手動で変更することができるようにしたものであります。
さらに、甲1の段落【0047】?【0049】には、チェックサムが不一致と判定された場合に初期値をセットしない理由として、「段階設定値に初期値をセットすると、ホールの設定した数値と異なることが考えられ、その場合、ホール・遊技者の双方に迷惑が掛かることが考えられるためである。また、(3)の場合には、遊技者が不正として行うことも考えられるためである。そこで、設定スイッチ40により、段階設定値を再度、設定させるようにしたものである。」と記載されています。」(第14頁第26行?第15頁第15行)
したがって、被請求人の主張は失当であります。

(テ)答弁書8頁(3-2-1)、同16頁(3-4-1)について(1Fについて)
「請求人は、甲1発明を「段階設定値判定に係る構成」を含まずに請求人認定甲1発明として認定しているのであり、その根拠は「5-1-2. 請求人認定甲1発明が甲1に記載されているとする根拠」で述べたとおりであります。すなわち、請求人認定甲1発明は、電源投入時には遊技制御手段が制御を行うためのデータが電源遮断前のデータと一致するか否かの判定及び遊技制御手段が制御を行うためのデータのうち設定値が適正か否かの判定の双方を行うのではなく、遊技制御手段が制御を行うためのデータが電源遮断前のデータと一致するか否かの判定だけを行うものであり」ます(第17第6?14行)。
したがって、被請求人の主張は失当であります。

(ト)答弁書19頁(3-4-2)について(甲2の認定)
「甲2には、スタートスイッチの操作時に適正判定手段により設定値が適性範囲内(1?6)であるか否かを判定し、設定値が適性範囲内であった場合には、役抽選手段によってハード乱数と、各設定値毎に割り当てられた役抽選テーブルとを照合してハズレか当選かを抽選し、設定値が適性範囲外であった場合には所定の操作が行われるまでゲームの進行を不能化することが開示されていることは明らかであります。」(第18頁第20?25行)
したがって、「答弁書19頁(3-4-2)[相違点3]における被請求人の主張は、被請求人が本件出願時の技術常識を一切考慮せずに甲2に記載されている事項を判断した結果であり、失当であります。」(第18頁第26行?第19頁第1行)

(ナ)答弁書21頁(3-4-3)、同25頁(3-4-4)ウについて(甲3の適用方法について)
「被請求人が主張するように、甲3には、設定値のエラーが生じた場合の解除方法や、本件の課題であるゲームの公平性を図ることができる点についてなど何ら開示も示唆もされてはおりませんので、ゲームの公平性を図ることができるという課題にのみ限定した観点でみた場合には、甲1ないし甲3から[相違点5]に係る本件発明(1K)の構成には到達できないかもしれません。
しかし、甲3には、種々のRAMデータ異常エラーが生じた場合には共通したエラー解除手段を用いることが示されており、かかる構成により、「ある特定のRAMデータ異常エラーが生じた状態においても他のRAMデータ異常エラーが生じた状態においても、共通したエラー解除手段の操作に基づいてRAMデータ異常エラーが生じた状態を解除できる」といった効果を奏することができることは、当業者によって容易に理解できる程度のことであります。
そうすると、甲1ないし甲3に接した当業者にとって、請求人認定甲1発明に甲2に記載された第2の不能化手段を適用する際に、甲3に記載されている種々のRAMデータ異常エラーに関して設定値を新たに設定するという共通したエラー解除方法を用いることにより、ある特定のRAMデータ異常エラーが生じた状態においても他のRAMデータ異常エラーが生じた状態においても、共通したエラー解除手段の操作に基づいてRAMデータ異常エラーが生じた状態を解除できるようにするという技術思想を参酌して、甲1に記載されている不能化手段の解除手段を甲2の不能化手段の解除手段として採用することは、当業者にとって容易に想到し得たということができます。」(第20頁第1?20行)
したがって、被請求人の主張は失当であります。

(ニ)答弁書23頁(3-4-4)アについて(甲1発明1に甲2発明を適用しても本件発明(1K)の構成には到達し得ない理由1について)
「被請求人は、答弁書23頁24行?31行で示すように、
『したがって、甲1発明1に甲2に記載された前記不能化する手段を適用するに際しては、甲2の不能化手段を解除する手段としては甲2に明示されている「リセット操作」を行うことを採用するのが普通の考えであって、・・・』と主張しております。
確かに、甲2発明を「適正変更手段に係る構成」を含んだ上で認定すれば、被請求人の主張のように甲1発明に甲2に記載された前記不能化する手段を適用する際に、甲2に記載されている「リセット操作」を甲2の不能化手段の解除手段として採用することも考えられます。
しかしながら、「5-2-2.請求人認定甲2発明が甲2から認定できる根拠について」でも述べたように、請求人は甲2発明を「適正変更手段に係る構成」を含まずに請求人認定甲2発明として認定しているのであります。
そうすると、当業者であれば、遊技の進行が不能化した場合に、不能化を解除するために、関連する技術手段の適用を試みることは、当業者の通常の創作能力の発揮であるから、請求人認定甲1発明に甲2に記載された不能化する手段を適用する際に、甲1に記載されている不能化手段の解除手段を、甲2の不能化手段の解除手段として採用することは、当業者にとって容易に想到し得たことです。」(第21頁第10?26行)

2 被請求人の主張
(1)概要
被請求人は、審判事件答弁書において、「本件の審判請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求め、審判事件答弁書、及び、陳述要領書(被請求人)を提出した。
また、証拠方法として、審査過程の書類である乙第1号証?乙第7号証を提出した。

(2)審判事件答弁書における主張
被請求人は、審判事件答弁書において、具体的に以下のように主張する。
ア 本件発明1について
「甲第1号証ないし甲第3号証には本件発明1のこれら特徴を導き出すための構成は何ら開示されていないので、本件発明1は甲第1号証(以下、「甲1」という。)及び甲第2号証(以下、「甲2」という。)に記載された発明に基づいて、或いは、甲1ないし甲第3号証(以下、「甲3」という。)に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく進歩性を有するものである。」(第6頁第5?10行)
(ア)「甲1にはチェックサムが不一致と判定され、設定スイッチ40がON状態と判定された場合は、設定スイッチ40により設定された段階設定値の変更処理がなされ、通常の遊技処理へ移行することが記載されているものの、第13ステップS13における電源遮断待ちとなり無限ループで繰り返す処理を解除する方法については何ら記載がなく、甲1には、請求人が主張するような「チェックサムが不一致と判定され、無限ループの処理を繰り返している場合、設定スイッチ40により設定された新たな段階設定値に変更されることを条件に、無限ループの処理を解除する解除手段」が開示されているとは言えない。」(第7頁第7?15行)

(イ)「被請求人が主張する「甲1発明1」は、請求人が主張する「甲1発明1」から下線で示した構成を削除するものである。
「1ゲームに対して所定数のメダルを投入することによりゲームが開始可能とされ、3個のリールと、各リールを個々に回転させるための3個のモータとから構成されたリールユニット90を備えて、各リールの外周面には、複数種類の図柄が表示され、その表示結果が導出表示されることにより1ゲームが終了し、その表示結果に応じて入賞が発生するスロットマシンであって、・・・
ゲームの開始操作がなされる毎に、設定値が示す許容段階に応じた割合で当該ゲームにおいて入賞の発生を許容するか否かを決定する事前決定手段と、
チェックサムが不一致と判定され、無限ループ処理を繰り返している場合、設定スイッチ40により設定された新たな段階設定値に変更されることを条件に、無限ループ処理を解除する解除手段を備えるスロットマシン。」」(第7頁第22行?第8頁第14行)

(ウ)「「前記スロットマシンの電源投入時に、・・・前記設定値が適正か否かの判定を個別に行わず、」とは、スロットマシンの電源投入時に、設定値が適正か否かの判定を個別に行わないこと、すなわちスロットマシンの電源投入時における一連の処理として設定値が適正か否かの判定を個別に行わないという技術的意義を有するものである。
このような上記した本件発明(1F)の「前記スロットマシンの電源投入時に、・・・前記設定値が適正か否かの判定を個別に行わず、」の技術的意義は、明細書の段落【0073】の記載、及び【図8】からも明らかである。
すなわち実施例では、起動処理(スロットマシンの電源投入時に行う処理)において、設定値が適正か否かの判定を個別に行わず、保持手段により保持されている遊技制御手段が制御を行うためのデータが電源遮断前のデータと一致するか否かの判定を行うことが記載されており、それ以外の実施例は記載されていない。」(第8頁第27行?第9頁第4行)

(エ)「甲1の図2のフローチャートにも見られるように、甲1の電源投入時の一連の処理としては、スロットマシンへの電源投入時に、データが電源遮断前のデータと一致するか否かの判定(ステップS4)を行い、その後引き続き設定値が適正か否かの判定(ステップS5)を個別に行っており、RAMのチェックサムの判定及び段階設定値が正常か否かの判定の双方を行っているのであるから、甲1はスロットマシンの電源投入時の処理として設定値が適正か否かの判定を行なわず、電源遮断時から保持されているデータ全体として電源遮断時のデータと一致するか否かの判定を行うこと、すなわち本件発明(1F)の「前記スロットマシンへの電源投入時に、前記遊技制御手段が制御を行うためのデータのうちの前記設定値が適正か否かの判定を個別に行わず、前記保持手段により保持されている前記遊技制御手段が制御を行うためのデータが前記電源遮断前のデータと一致するか否かの判定を行う記憶データ判定手段と、」なる構成を何ら開示するものではない。」(第10頁下第6行?第11頁第7行)

(オ)「甲1には「チェックサムが不一致と判定され、無限ループの処理を繰り返している場合、設定スイッチ40により設定された新たな段階設定値に変更されることを条件に、無限ループの処理を解除する解除手段」なる構成は何ら開示されていないのであるから、甲1発明1には本件発明(1K)の「前記第1の不能化手段により前記ゲームの進行が不能化された状態において、前記設定操作手段の操作に基づいて前記許容段階設定手段により前記設定値が新たに設定されたことを条件に、前記ゲームの進行が不能化された状態を解除し、ゲームの進行を可能とする不能化解除手段と、を備える」なる構成は開示されていない。
したがって、本件発明1と甲1発明1の対比においては、本件発明1の上記(1K)の構成は一致点ではなく相違点とすべきである。」(第12頁第17?27行)

(カ)本件発明1と甲1発明1の相違点は以下のようになる。
「[相違点1]
本件発明1の遊技制御手段は、本件発明(1F)の「前記スロットマシンへの電源投入時に、前記遊技制御手段が制御を行うためのデータのうちの前記設定値が適正か否かの判定を個別に行わず、前記保持手段により保持されている前記遊技制御手段が制御を行うためのデータが前記電源遮断前のデータと一致するか否かの判定を行う記憶データ判定手段と、」を備えるものであるのに対し、甲1発明1の遊技制御手段は、前記スロットマシンへの電源投入時に、前記保持手段により保持されている前記遊技制御手段が制御を行うためのデータが前記電源遮断前のデータと一致するか否かの判定を行い、その後引き続き前記遊技制御手段が制御を行うためのデータのうちの前記設定値が適正か否かの判定を個別に行うデータ判定手段を備えるものである点(被請求人が新たに抽出した相違点)。

[相違点2]
本件発明1の遊技制御手段は、本件発明(1H)の「ゲームの開始操作がなされる毎に、前記データ記憶手段から前記設定値を読み出し、該読み出した設定値が、前記許容段階設定手段により設定可能な設定値の範囲内である場合に前記読み出した設定値が適正であると判定し、前記設定可能な設定値の範囲内でない場合に前記読み出した設定値が適正ではないと判定する設定値判定手段と、」を備えるものであるのに対し、甲1発明1の遊技制御手段は、かかる「設定値判定手段」を備えるものではない点(請求人が抽出した【相違点1】)。

[相違点3]
本件発明1の遊技制御手段が備える本件発明(1I)の「事前決定手段」は、「前記設定値判定手段により前記読み出した設定値が適正であると判定したときに、該読み出した設定値が示す許容段階に応じた割合で当該ゲームにおいて入賞の発生を許容するか否かを決定する」ものであるのに対し、甲1発明1の「事前決定手段」は、「ゲームの開始操作がなされる毎に」入賞の発生を許容するか否かを決定するものである点(請求人が抽出した【相違点2】)。

[相違点4]
本件発明1の遊技制御手段は、本件発明(1J)の「前記設定値判定手段により前記読み出した設定値が適正ではないと判定されたときに、ゲームの進行を不能化する第2の不能化手段と、」を備えるものであるのに対し、甲1発明1の遊技制御手段は、かかる「第2の不能化手段」に相当する手段を備えていないものである点(請求人が抽出した【相違点3】)。

[相違点5]
本件発明1の遊技制御手段は、本件発明(1K)の「前記第1の不能化手段により前記ゲームの進行が不能化された状態においても前記第2の不能化手段により前記ゲームの進行が不能化された状態においても、前記設定操作手段の操作に基づいて前記許容段階設定手段により前記設定値が新たに設定されたことを条件に、前記ゲームの進行が不能化された状態を解除し、ゲームの進行を可能とする不能化解除手段と、」を備えるものであるのに対し、甲1発明1は「第1の不能化手段」を備えるものの、その解除手段は開示されておらず、さらに甲1発明1は「第2の不能化手段」を備えていないので、その解除手段も開示されていない点(請求人が抽出した【請求項4】に被請求人が新たに抽出した相違点を加えたもの)。
(なお、[相違点1]ないし[相違点5]の下線は、請求人が抽出した【請求項1】ないし【請求項4】との差異を被請求人代理人が付したものである。)」(第14頁第6行?第15頁第19行)

(キ)「[相違点1]及び[相違点2]は関連しているので、あわせて検討する。
甲1発明1の遊技制御手段は、電源投入時に、RAMのチェックサムの判定及び段階設定値が正常か否かの判定の双方を行うため、「前記スロットマシンへの電源投入時に、前記保持手段により保持されている前記遊技制御手段が制御を行うためのデータが前記電源遮断前のデータと一致するか否かの判定を行い、その後引き続き前記遊技制御手段が制御を行うためのデータのうちの前記設定値が適正か否かの判定を個別に行うデータ判定手段を備え」ており、本件発明(1F)の「前記スロットマシンの電源投入時に、前記遊技制御手段が制御を行うためのデータのうちの前記設定値が適正か否かの判定を個別に行わず、」という特定事項とは明らかに異なるものである。
甲1発明1の遊技制御手段が「前記スロットマシンへの電源投入時に、前記保持手段により保持されている前記遊技制御手段が制御を行うためのデータが前記電源遮断前のデータと一致するか否かの判定を行い、その後引き続き前記遊技制御手段が制御を行うためのデータのうちの前記設定値が適正か否かの判定を個別に行うデータ判定手段を備え」ていることは、甲1の図2のフローチャートにおいて、スロットマシンの電源投入時にチェックサムの判定(ステップS4)を行い、その後引き続いて段階設定値が正常であるか否かの判定(ステップS5)を個別に行っていることからも明らかであり、甲1にはステップS5を省略しても良いことは何ら開示も示唆されていないのであるから、本件発明(1F)の「前記スロットマシンの電源投入時に、前記遊技制御手段が制御を行うためのデータのうちの前記設定値が適正か否かの判定を個別に行わず、」なる構成は開示も示唆もされていない。
さらに甲1は電源投入時の処理として段階設定値が正常であるか否かの判定を個別に行い、1ゲーム毎に設定値が適正であるか否かの判定を行っていないのであるから、甲1は[相違点2]に係る本件発明(1H)の構成を何ら開示していない。

また、甲2には、請求人が審判請求書第34頁第5行ないし第11行にも記載の如く、スタートスイッチ50の操作時(ゲームの開始操作がなされる毎)にRAM22(データ記憶手段)から設定値を読み出し、該読み出した設定値が、ROM上の適正範囲テーブルに定められた(許容段階設定手段により設定可能な)設定値の範囲内である場合には前記読み出した設定値が適正であると判定し、前記設定可能な設定値の範囲内でない場合には前記読み出した設定値が適正でないと判定する手段を備えたスロットマシンの発明が記載されている。
しかしながら、甲2においても、スタートスイッチ50の操作時(ゲームの開始操作がなされる毎)だけでなく、段落【0080】に「スロットマシン10に電源が投入されるとき、RAM22から遊技情報値が読み取られるとき、及びRAM22に遊技情報値が書き込まれるときに・・・適正範囲テーブル220に定められた適正範囲内にあるか否かの判定を行う。」(下線は、被請求人代理人が加筆した。)と記載されているように、スタートスイッチ50の操作時のみならず、電源投入時においても設定値の判定を個別に行う構成である。
このため、甲2にも本件発明(1F)の「前記スロットマシンの電源投入時に、前記遊技制御手段が制御を行うためのデータのうちの前記設定値が適正か否かの判定を個別に行わず、」という特定事項は何ら開示されていない。」(第16頁第13行?第17頁第20行)
「[相違点1]に係る本件発明(1F)の構成、及び[相違点2]に係る本件発明(1H)の構成を有する本件発明1は、設定値を含むデータ異常に対して、電源投入時においては、遊技制御手段が制御を行うためのデータのうちの設定値が適正か否かの判定を個別に行わず、データ全体が正常であるか否かの判定を行い、ゲームの開始操作がなされる毎(1ゲーム毎)においては、必要最低限のデータの許容段階を示すデータに絞って適正か否かの判定を行うことで、設定値を含むデータ異常を判定して適正な設定値によりゲームを進行させることができるとともに電源投入時の処理の簡素化を図りつつ、1ゲーム毎ではゲームの入賞の決定に直接的に影響する設定値のみに絞って判定を行うので負荷を軽減することができるという、甲1及び甲2に記載された発明からは予測し難い特有の効果を奏するものである。
よって、[相違点1]に係る本件発明(1F)の構成、及び[相違点2]に係る本件発明(1H)の構成を有する本件発明1は、当業者が容易に想到し得たものではない。」(第18頁第23行?第19頁第2行)

(ク)「甲2の段落【0052】にはハード乱数に基づいて役に当選したかハズレかの抽選を行う旨、同段落【0061】にはハード乱数と役抽選テーブル130とを照合して当選かハズレの抽選を行う旨しか記載されておらず、同段落【0079】、【0080】に記載されたような読み出した設定値が設定可能な範囲内であるときに、読み出した設定値が示す許容段階を用いてこれら抽選を行うことは明細書及び図面には何ら開示されていない。
したがって、「甲2には、スタートスイッチの操作時に読み出した設定値が設定可能な範囲内であると判定されたときには、設定値が示す許容段階に応じた割合で当該ゲームにおいて入賞の発生を許容するか否かを決定する事前決定手段が記載されている。」とすることはできないので、甲1発明1が備えられている「事前決定手段」に甲2の段落【0052】、【0062】、【0079】及び【0080】に記載された事項を適用したとしても、[相違点3]に係る本件発明1の構成には到達し得ない。
よって、[相違点3]に係る本件発明(1I)を有する本件発明1は、当業者が容易に想到し得たものではない。」(第19頁第11?16行)

(ケ)「甲1発明1には本件発明(1K)の「前記第1の不能化手段により前記ゲームの進行が不能化された状態において、前記設定操作手段の操作に基づいて前記許容段階設定手段により前記設定値が新たに設定されたことを条件に、前記ゲームの進行が不能化された状態を解除し、ゲームの進行を可能とする不能化解除手段と、を備える」なる構成が開示されていない。さらに、甲1発明1には、本件発明1のように、設定値を含むデータ異常に対して、電源投入時においては、データ全体が正常であるか否かを判定し、適正でないと判定された場合には第1の不能化手段により遊技の進行を不能化し、ゲームの開始操作がなされる毎(1ゲーム毎)においては、必要最低限のデータの許容段階を示すデータに絞って適正か否かの判定を行い、適正でないと判定された場合には第2の不能化手段により遊技の進行を不能化し、一方でいずれの不能化手段により不能化状態に制御された場合でも、不能化状態を解除する場合には、設定操作手段の操作に基づいて新たに許容段階が設定されるまでゲームが可能な状態に復帰できなくなるようになっており、機械により自動的に設定された許容段階など予め定められた許容段階、すなわち遊技店側で設定した許容段階とは異なる許容段階でゲームが行われてしまうようなことがなく、ゲームの公平性を図ることができる点についても何ら開示も示唆もされていない。

また、甲2の段落【0022】には「「所定の操作を条件に」とは、適正判定手段(230)による判定の結果、RAM(22)上の遊技情報値に適正範囲外のものがあったときに、リセット操作等の所定の操作を待ってから、遊技情報値を変更する意味である。」と記載されていることから、甲2ではリセット操作等が行われるまではゲームの進行は不能化されており、甲2には本件発明(1J)の「第2の不能化手段」に対応する記載はある。
しかしながら、甲2の「第2の不能化手段」を解除する手段は、リセット操作により簡単に行うものであって、本件発明(1C)に「所定の設定操作手段の操作に基づいて、入賞の発生を許容する旨を決定する割合が異なる複数種類の許容段階のうちから、いずれかの許容段階を選択して、該許容段階を示す設定値を設定する許容段階設定手段」と記載の如く、いずれかの許容段階を選択する所定の設定操作手段を用いて、本件発明(1K)の「前記設定操作手段の操作に基づいて前記許容段階設定手段により前記設定値が新たに設定されたことを条件に、前記ゲームの進行が不能化された状態を解除し、ゲームの進行を可能とする」ものではない。すなわち、甲2のリセット操作は、設定値を設定するような操作ではない上に、リセット操作後の適正変更手段240による遊技情報値の変更は、遊技店の従業員等の操作によって設定値が設定されるような設定操作手段の操作に基づいて設定値を新たに設定するような操作ではなく、段落【0085】に「また、本実施の形態では、適正変更手段240による数値の変更は、RAM22上の数値を一旦消去又はクリアした後に改めて所定の数値を書き込むことによって行われる。また、本実施の形態では、適正変更手段240による変更後の数値は、適正範囲内で遊技者にとって最も不利な数値となる。」と記載されているように、自動的に設定された所定の設定値であるため、設定値がリセット後とリセット前では同一とならず、リセット後の設定値が遊技店側で設定した設定値より低くなる場合には遊技者にとって不利益となり、一方でリセット後の設定値が遊技店側で設定した設定値より高くなる場合には遊技店にとって不利益となり、いずれにしても所定の設定値を自動的に設定することは、遊技者にとっても遊技店にとってもゲームの公平性が図ることができなくなる。
したがって、甲2においても、「第2の不能化手段により前記ゲームの進行が不能化された状態においても、前記設定操作手段の操作に基づいて前記許容段階設定手段により前記設定値が新たに設定されたことを条件に、前記ゲームの進行が不能化された状態を解除し、ゲームの進行を可能とする不能化解除手段」については何ら開示されていないし、さらに、本件発明1のように、設定値を含むデータ異常に対して、電源投入時においては、データ全体が正常であるか否かを判定し、適正でないと判定された場合には第1の不能化手段により遊技の進行を不能化し、ゲームの開始操作がなされる毎(1ゲーム毎)においては、必要最低限のデータの許容段階を示すデータに絞って適正か否かの判定を行い、適正でないと判定された場合には第2の不能化手段により遊技の進行を不能化し、一方でいずれの不能化手段により不能化状態に制御された場合でも、不能化状態を解除する場合には、設定操作手段の操作に基づいて新たに許容段階が設定されるまでゲームが可能な状態に復帰できなくなるようになっており、機械により自動的に設定された許容段階など予め定められた許容段階、すなわち遊技店側で設定した許容段階とは異なる許容段階でゲームが行われてしまうようなことがなく、ゲームの公平性を図ることができる点についても何ら開示も示唆もされていない。

さらに、甲第3号証(以下、「甲3」という。)には、図5において、RAMデータ異常エラーとして、抽選時の遊技メダル枚数チェック時に、遊技メダルの検出枚数が1?3枚以外(役物遊技中では1枚以外)の状態、割込み処理において戻り番地異常(1000H番地以降)を検出した状態、入賞判定において入賞有効ライン上に当選図柄を除く図柄の組合せが表示された状態のときに、解除方法として出玉率の設定変更(RAM初期化処理)を行うと記載されており、単にRAMデータ異常エラーが生じた場合に出玉率の設定変更を行う方法を開示しているにすぎず、甲3においても、設定値のエラーが生じた場合については何ら記載されてない。さらに、本件発明1のように、電源投入時においては、データ全体が正常であるか否かを判定し、適正でないと判定された場合には第1の不能化手段により遊技の進行を不能化し、ゲームの開始操作がなされる毎(1ゲーム毎)においては、必要最低限のデータの許容段階を示すデータに絞って適正か否かの判定を行い、適正でないと判定された場合には第2の不能化手段により遊技の進行を不能化し、一方でいずれの不能化手段により不能化状態に制御された場合でも、不能化状態を解除する場合には、設定操作手段の操作に基づいて新たに許容段階が設定されるまでゲームが可能な状態に復帰できなくなるようになっており、機械により自動的に設定された許容段階など予め定められた許容段階、すなわち遊技店側で設定した許容段階とは異なる許容段階でゲームが行われてしまうようなことがなく、ゲームの公平性を図ることができる点についても何ら開示も示唆もされていない。

ゆえに、甲1ないし甲3には、本件発明(1K)の「前記第1の不能化手段により前記ゲームの進行が不能化された状態においても前記第2の不能化手段により前記ゲームの進行が不能化された状態においても、前記設定操作手段の操作に基づいて前記許容段階設定手段により前記設定値が新たに設定されたことを条件に、前記ゲームの進行が不能化された状態を解除し、ゲームの進行を可能とする不能化解除手段」なる構成を備えていないので、甲1ないし甲3から[相違点5]に係る本件発明(1K)の構成には到達し得ない。
そして、[相違点5]に係る本件発明(1K)の構成を有する本件発明1は、設定値を含むデータ異常に対して、電源投入時においては、データ全体が正常であるか否かを判定し、適正でないと判定された場合には第1の不能化手段により遊技の進行を不能化し、ゲームの開始操作がなされる毎(1ゲーム毎)においては、必要最低限のデータの許容段階を示すデータに絞って適正か否かの判定を行い、適正でないと判定された場合には第2の不能化手段により遊技の進行を不能化し、一方でいずれの不能化手段により不能化状態に制御された場合でも、不能化状態を解除する場合には、設定操作手段の操作に基づいて新たに許容段階が設定されるまでゲームが可能な状態に復帰できなくなるようになっており、機械により自動的に設定された許容段階など予め定められた許容段階、すなわち遊技店側で設定した許容段階とは異なる許容段階でゲームが行われてしまうようなことがなく、ゲームの公平性を図ることができるという、甲1ないし甲3に記載された発明からは予測し難い特有の効果を奏する。
よって、[相違点5]に係る本件発明(1K)の構成を有する本件発明1は、当業者が容易に想到し得たものではない。」(第19頁下第1行?第22頁下第1行)

(コ)「請求人の主張は以下に詳述する如く、容易想到性の論理に飛躍があり極めて分かり難い内容となっている。
請求人は甲2の「第2の不能化手段」に関して「ゲームの進行を不能化した状態のままではゲームの進行ができないことから、何らかの解除手段を備えることが必須であることは自明であるから・・・」としているが、上記「(3-4-3)[相違点4]及び[相違点5]について」ア」でも述べた如く、甲2には「第2の不能化手段」を解除する手段としては、「リセット操作」により行うことが明示されている。
したがって、甲1発明1に甲2に記載された前記不能化する手段を適用するに際しては、甲2の不能化手段を解除する手段としては甲2に明示されている「リセット操作」を行うことを採用するのが普通の考えであって、甲1発明1に備えられている「設定操作手段の操作に基づいて許容設定手段により設定値が新たに設定されたことを条件に、ゲームの進行が不能化された状態を解除してゲームの進行を可能とする不能化解除手段」を甲2の不能化手段の解除手段として何故採用しなければならないのか、また採用することが何故容易なのか不明である。」(第23頁第16?31行)

(サ)「上記「ア」で述べた如く、甲1発明1に甲2に記載された前記不能化する手段を無理に適用しても、本件発明(1K)の構成が得られないのであり、また、甲3においても本件発明(1K)の構成が開示されていないことは、上記「(3-4-3)[相違点4]及び[相違点5]について」ア」で述べたとおりである。
したがって、甲3に記載の事項を参酌したとしても、甲1発明1と甲2から本件発明(1K)の構成になり得ないことは明らかである。」(第25頁下第7行?下第2行)

(シ)小括
「以上のとおり、本件発明1は、甲1及び甲2に記載された発明に基づいて、或いは、甲1ないし甲3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく進歩性を有するものである。」(第26頁第2?4行)

イ 本件発明2について
「請求人は審判請求書第43ページ「(9-4) 小括」において、「したがって、本件発明2は、甲1、甲2及び甲4に記載された発明に基づいて、或いは、甲1ないし甲4に記載された発明に基づいて、当業者であれば容易に想到し得たものである。」と主張している。
しかしながら、本件発明2は本件発明1に加えて、上記(2A)-(2C)の構成を有するものである。
そして、上述した如く、本件発明1は、甲1及び甲2に記載された発明に基づいて、或いは、甲1ないし甲3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく進歩性を有するものであるので、本件発明1を引用する本件発明2も進歩性を有するものである。」(第26頁第7?16行)

ウ 本件発明3について
「請求人は審判請求書第48ページ「(12-4)」において、「したがって、本件発明3は、甲1号証、甲2号証、甲4号証及び甲5号証に記載された発明に基づいて、或いは、甲1号証ないし甲5号証に記載された発明に基づいて、当業者であれば容易に想到し得たものである。」と主張している。
しかしながら、本件発明3は本件発明1、または本件発明2に加えて、上記(3A)-(3E)の構成を有するものである。
そして、上記した如く、本件発明1は、甲1及び甲2に記載された発明に基づいて、或いは、甲1ないし甲3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく進歩性を有するものであるので、本件発明1を直接または間接に引用する本件発明3も進歩性を有するものである。」(第26頁第19?28行)

(3)陳述要領書(被請求人)における主張
被請求人は、陳述要領書(被請求人)において、以下のように主張する。
エ 甲2等に記載された事項の甲1発明への適用について
「甲1発明は、スロットマシンへの電源投入時に、段階設定値が正常か否かを判定する段階設定値判定手段、及び、段階設定値判定手段により段階設定値が正常でないと判定されたときに、当該段階設定値を初期値にセットする手段を備えているのに対し、甲2発明は、ゲームの開始操作がなされる毎に、設定値が適正であるか否かを判定する設定値判定手段、及び、前記設定値判定手段により前記読み出した設定値が適正ではないと判定されたときに、ゲームの進行を不能化する第2の不能化手段を備えているものである。
甲1発明及び甲2発明を見ると、設定値の判定を甲1発明では電源投入時に行い、甲2発明ではゲームの開始操作がなされる毎に行うものであり、両者は設定値の判定を行う状況(タイミング)が全く異なるものであるばかりか、甲1発明においては電源投入時に段階設定値を含む遊技データのチェックサムの検査と段階設定値の判定と、電源投入時に段階設定値の判定を二重に行っていることからして、そもそも甲1発明はゲームの開始操作がなされる毎では段階設定値の判定を必要としないものであるから、甲1発明に甲2発明を採用することはできない。
敢えて甲1発明と甲2発明との設定値の判定を行う状況(タイミング)を無視して両者を組み合わせ、甲1発明のスロットマシンへの電源投入時に、段階設定値が正常か否かを判定する段階設定値判定手段に代えて、甲2発明のゲームの開始操作がなされる毎に、設定値が適正であるか否かを判定する設定値判定手段を採用した場合を考えたとしても、ゲームの開始操作がなされる毎に、設定値が適正であるか否かを判定する設定値判定手段を備えたスロットマシンの構成が得られるものの、さらに設定値が適正でない場合の処理として甲1発明の段階設定値を初期値にセットする方法に代えて、本件発明1の構成に至るための手段として、甲2発明のゲームの進行を不能化する方法を採用することが容易であるとは言えない。すなわち、甲1発明では、段階設定値判定手段により段階設定値が適正でないと判定された時に段階設定値を初期値にセットしているのに対し、チェックサム検査手段によりチェックサムと一致しない場合には、電源遮断待ちの無限ループに移行しており、段階設定値判定手段とチェックサム検査手段とにおける後のエラー処理を敢えて異ならせており、甲1発明において、段階設定値が適正でないと判定された時に不能化することは、記載されていないばかりか、何ら想定されていない。すなわち、甲1発明においては、チェックサム検査手段によりチェックサムと一致しない場合に、電源遮断待ちの無限ループに移行してエラー処理をしているにも関わらず、段階設定値判定手段では同じようなエラー処理ではなく、段階設定値に初期値をセットするという構成を敢えて選択しているものである。従って、甲1発明においては、甲2発明のように設定値が適正でないと判定された時にゲームの進行を不能化するような構成をとることは、何ら想定されておらず、甲1発明の段階設定値を初期値にセットするのに代えて、甲2発明のゲームの進行を不能化することを採用することは容易であるとはいえない。
仮に、敢えて甲1発明と甲2発明との設定値の判定を行う状況(タイミング)を無視して両者を組み合わせた場合、当業者は設定値が適正でない場合の処理として、甲1発明の段階設定値を初期値にセットするか、甲2発明のゲームの進行を不能化するかを選択するような構成になるにとまり、発明としては未完成のものが得られるにすぎず、相違点1にかかる甲1発明の構成に代えて、甲2発明の構成を採用することを容易とすることはできない。」(第3頁第27行?第4頁下第1行)

オ 「本件発明1における「不能化解除手段」の具体的構成に関しては、図8?図10に示すフローチャートに加えて、明細書の段落[0080]、[0081]に記載されている。
具体的には、段落[0080]に「このように起動処理においては、設定キースイッチ37がonの状態ではない場合に、電断時に計算したRAMパリティと起動時に計算したRAMパリティとを比較することで、RAMに記憶されているデータが正常か否かを判定し、RAM異常エラー処理に移行する。RAM異常エラー処理では、RAM異常エラーコードを遊技補助表示器16に表示させた後、いずれの処理も行わないループ処理に移行するので、ゲームの進行が不能化される。そして、RAMパリティが一致しなければ、割込が許可されることがないので、一度RAM異常エラー処理に移行すると、設定キースイッチ37がonの状態で起動し、割込禁止が解除されるまでは、電断しても電断割込処理は行われない。すなわち電断割込処理において新たにRAMパリティが計算されて格納されることはないので、メイン制御部41が再起動しても設定キースイッチ37がonの状態で起動した場合を除き、常にRAMパリティは一致することがないので、メイン制御部41を再起動させてもゲームを再開させることができないようになっている。」と記載されており、一度RAM異常エラー処理に移行すると、起動処理が行われたときにもRAMパリティが不一致の状態を維持することで、割込禁止が解除されるまでは新たにRAMパリティが計算されて格納されることはないようにしている。そして、段落[0081]に「そして、RAM異常エラー状態に一度移行すると、設定キースイッチ37がonの状態で起動し、設定変更処理が行われ、リセット/設定スイッチ36の操作により新たに設定値が選択・設定されるまで、ゲームの進行が不能な状態となる。すなわちRAM異常エラー状態に移行した状態では、リセット/設定スイッチ36の操作により新たに設定値が選択・設定されたことを条件に、ゲームの進行が不能な状態が解除され、ゲームを再開させることが可能となる。」と記載され、RAM異常エラー状態に移行して不能化された場合に起動されること、すなわちメイン制御部41が再起動されることで図8に示す起動処理を実行する(段落【0072】)。この場合、図8に示すように設定キースイッチ37がonの状態で起動されていないときには(Sa3)、RAMパリティが不一致の状態を維持しているため、例えば、起動信号の影響などによりRAMの値が変更されるなどしてRAMパリティが誤って一致して復帰してしまうようなことを防いでいる。一方、設定キースイッチ37がonの状態のときには(Sa3)、Sa9?Sa11を経て、図9に示す設定変更処理が実行され、設定変更処理の終了後、ゲーム制御処理に移行することでゲームが再開されることで不能化を解除している。また、図9に示す設定変更処理では、段落【0077】?【0079】に記載されているように、遊技店の従業員等の操作によって設定キースイッチ37がonの状態とされ、リセット/設定スイッチ36の操作により設定値が加算され、スタートスイッチ7の操作が検出されると設定値が確定され、設定キースイッチ37がoffの状態となった後に、図8のフローチャートに復帰し、ゲーム制御処理に移行してゲームの進行を不能化している不能化状態を解除している。
このように、本発明においては、不能化解除手段の具体的な処理が明細書に記載されている。
これに対して、甲1には、図2に「電源遮断待ち(無限ループ)(S13)」が記載されているものの、甲1には、無限ループに移行した際、無限ループの解除手段について具体的な説明が明確に記載されておらず、無限ループ後に、どのような過程を経て無限ループが解除されるのか不明である。」(第6頁下第3行?第8頁第9行)

カ 「本件発明1の「不能化解除手段」における不能化解除操作は、本件発明(1C)に記載の「いずれかの許容段階を選択する所定の設定操作手段」の操作に基づいて、許容段階設定手段により設定値が新たに設定されたことを条件に、ゲームの進行が不能化された状態を解除し、ゲームの進行を可能とするものであって、上記(3)にて具体的な構成を説明したように、遊技店の店長等ごく一部の従業員の操作によって設定値が設定されるような設定キースイッチ37及びリセット/設定スイッチ36などの設定操作手段の操作であるため、設定値が新たに設定されたことを条件に、ゲームの進行が不能化された状態を解除し、ゲームの進行を可能とするもので、設定値が初期値に変更されず、必ず店側が設定した設定値になることから、遊技者にとっても遊技店にとってもゲームの公平性を図ることができるものである。
これに対し、甲2の「リセット操作」は、遊技店の従業員であれば誰でもできるスロットマシンのリセットボタンの操作と解せられるが、このリセット操作はスロットマシンが電源ON状態のままワンアクションで簡単に行われる操作であるため、本件発明1の如く、遊技店の従業員等の操作によって設定値が設定されるような設定操作手段に基づいて設定値を新たに設定するような操作ではない。また、甲2では、段落【0086】に記載されているように、この「リセット操作」に伴って機械(適正変更手段240)が設定値を自動的に初期値の「1」に設定するものであって、甲2の「リセット操作」は、設定値を自動的に初期値に設定する操作であるため、設定値が必ずしも店側が設定した設定値とはならず、リセット後の設定値が遊技店側で設定した設定値より低くなる場合には遊技者にとって不利益となり、一方でリセット後の設定値が遊技店側で設定した設定値より高くなる場合には遊技店にとって不利益となり、いずれにしてもリセット操作で設定値を自動的に設定することは、遊技者にとっても遊技店にとってもゲームの公平性を図ることができないものである。

このように、本件発明1の「不能化解除手段」は遊技店の店長等ごく一部の従業員の操作によって設定値が新たに設定されたことを条件に、ゲームの進行が不能化された状態を解除し、ゲームの進行を可能とするもので、遊技者にとっても遊技店にとってもゲームの公平性を図ることができるものであるのに対し、甲2の「リセット操作」は遊技店の従業員であれば誰でもできるスロットマシンのリセットボタンの操作によって設定値を自動的に初期値に設定する操作であって、遊技者にとっても遊技店にとってもゲームの公平性を図ることができないものであり、両者はゲームの不能化解除を操作できる人、その不能化解除の煩わしさ、及びゲームの公平性の点において大きく異なるものである。」(第8頁第12行?第9頁第10行)

第3 本件特許発明
本件特許の請求項1?3に係る発明(以下「本件発明1?3」という。)は,本件特許の特許請求の範囲の請求項1?3に記載された事項により特定される次のとおりのものと認める。
「【請求項1】
1ゲームに対して所定数の賭数を設定することによりゲームが開始可能となるとともに、各々が識別可能な複数種類の識別情報を変動表示可能な可変表示装置の表示結果が導出表示されることにより1ゲームが終了し、該可変表示装置の表示結果に応じて入賞が発生可能とされたスロットマシンであって、
遊技の制御を行う遊技制御手段を備え、
該遊技制御手段は、
所定の設定操作手段の操作に基づいて、入賞の発生を許容する旨を決定する割合が異なる複数種類の許容段階のうちから、いずれかの許容段階を選択して、該許容段階を示す設定値を設定する許容段階設定手段と、
前記許容段階設定手段により設定された設定値を含む前記遊技制御手段が制御を行うためのデータを読み出し及び書き込みが可能に記憶するデータ記憶手段と、
前記スロットマシンへの電源供給が遮断しても前記データ記憶手段に記憶されている前記遊技制御手段が制御を行うためのデータを保持する保持手段と、
前記スロットマシンへの電源投入時に、前記遊技制御手段が制御を行うためのデータのうちの前記設定値が適正か否かの判定を個別に行わず、前記保持手段により保持されている前記遊技制御手段が制御を行うためのデータが前記電源遮断前のデータと一致するか否かの判定を行う記憶データ判定手段と、
前記記憶データ判定手段により前記保持手段により保持されている前記遊技制御手段が制御を行うためのデータが前記電源遮断前のデータと一致しないと判定されたときに、ゲームの進行を不能化する第1の不能化手段と、
ゲームの開始操作がなされる毎に、前記データ記憶手段から前記設定値を読み出し、該読み出した設定値が、前記許容段階設定手段により設定可能な設定値の範囲内である場合に前記読み出した設定値が適正であると判定し、前記設定可能な設定値の範囲内でない場合に前記読み出した設定値が適正ではないと判定する設定値判定手段と、
前記設定値判定手段により前記読み出した設定値が適正であると判定したときに、該読み出した設定値が示す許容段階に応じた割合で当該ゲームにおいて入賞の発生を許容するか否かを決定する事前決定手段と、
前記設定値判定手段により前記読み出した設定値が適正ではないと判定されたときに、ゲームの進行を不能化する第2の不能化手段と、
前記第1の不能化手段により前記ゲームの進行が不能化された状態においても前記第2の不能化手段により前記ゲームの進行が不能化された状態においても、前記設定操作手段の操作に基づいて前記許容段階設定手段により前記設定値が新たに設定されたことを条件に、前記ゲームの進行が不能化された状態を解除し、ゲームの進行を可能とする不能化解除手段と、
を備えることを特徴とするスロットマシン。

【請求項2】
前記スロットマシンで用いられる所定の電力の状態を監視し、電力供給が断たれたことに関わる電断条件が成立しているときに前記遊技制御手段に対して電断信号を出力する電断検出手段を備え、
前記遊技制御手段は、
前記電断検出手段から出力された前記電断信号の入力を契機に、前記データ記憶手段に記憶されている前記遊技制御手段が制御を行うためのデータに基づいて破壊診断用データを算出し、該算出した破壊診断用データを前記データ記憶手段の特定領域に格納する電断処理を実行する電断処理手段を含み、
前記記憶データ判定手段は、前記スロットマシンへの電源投入時に、前記データ記憶手段の特定領域を除く記憶領域に記憶されている前記遊技制御手段が制御を行うためのデータに基づいて破壊診断用データを算出し、該算出した破壊診断用データと前記データ記憶手段の特定領域に記憶されている破壊診断用データとを比較し、該比較結果が一致したときに、前記保持手段により保持されている前記遊技制御手段が制御を行うためのデータが前記電源遮断前のデータと一致すると判定し、該比較結果が一致しなかったときに、前記保持手段により保持されている前記遊技制御手段が制御を行うためのデータが前記電源遮断前のデータと一致しないと判定する
請求項1に記載のスロットマシン。

【請求項3】
前記遊技制御手段は、
前記スロットマシンへの電源投入時に、前記設定操作手段による前記許容段階の設定操作が有効となる設定操作有効状態へ移行させるための移行操作手段の操作がなされているか否かを判定する移行操作判定手段と、
前記スロットマシンへの電源投入時において、前記移行操作判定手段により前記移行操作手段の操作がなされていると判定されたことを条件に、前記設定操作有効状態へ移行させる設定操作有効状態移行手段と、
前記スロットマシンへの電源投入時において、前記移行操作判定手段により前記移行操作手段の操作がなされていると判定され、前記設定操作有効状態移行手段が前記設定操作有効状態に移行させることに伴って、前記データ記憶手段に記憶されているデータを初期化するデータ初期化手段と、
を含み、
前記移行操作判定手段は、前記スロットマシンへの電源投入時において、前記記憶データ判定手段が前記保持手段により保持されている前記遊技制御手段が制御を行うためのデ
ータが前記電源遮断前のデータと一致するか否かを判定する前に、前記移行操作手段の操作がなされているか否かを判定し、
前記記憶データ判定手段は、前記移行操作判定手段により前記移行操作手段の操作がなされていないと判定されたときに、前記保持手段により保持されている前記遊技制御手段が制御を行うためのデータが前記電源遮断前のデータと一致するか否かを判定する
請求項1または2に記載のスロットマシン。」

第4 甲各号証の記載事項
請求人の提出した甲各号証には、以下の事項が記載されている(なお、下線は当審で付した。)。
1 甲第1号証(特開2000-317043号公報)
甲第1号証には、図面とともに以下の記載がある。
ア 「【特許請求の範囲】
【請求項1】 主電源による電源の投入・遮断を行うための電源スイッチと、
遊技の難易度を段階的に設定可能な設定スイッチと、
前記電源スイッチ及び前記設定スイッチにそれぞれ接続される遊技制御装置とを備え、
前記遊技制御装置には、
前記設定スイッチにより設定された段階設定値を含む遊技データのチェックサムを作成するためのチェックサム作成手段と、
前記主電源の遮断時に、前記チェックサム作成手段より作成されたチェックサムを記憶し、この記憶した記憶データを保持するためのバックアップ電源を有する記憶手段と、
前記電源スイッチによる前記主電源の投入時に、前記チェックサム作成手段より作成されたチェックサムと、前記記憶手段から読み出した前記記憶データとの一致・不一致を検査するためのチェックサム検査手段と、
前記チェックサム検査手段による検査結果が不一致の場合に、エラー処理を実行するためのエラー処理手段とを備えていることを特徴とするスロットマシン。」

イ 「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、スロットマシンに関し、特に電源投入時に、設定値に関するエラーの発生を検査することができるようにしたものである。」

ウ 「【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記した従来のパチンコ機において採用されているチェックサムを用いたエラーのチェック方式では、スロットマシン固有の設定値に関するエラーのチェックが困難であるという問題点があった。すなわち、パチンコ機では、メモリーにバックアップ電源を持たないので、チェックサムの内容が電源遮断後、消去されてしまう。
【0004】そこで、各請求項にそれぞれ記載された各発明は、上記した従来の技術の有する問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、次の点にある。
(請求項1)すなわち、請求項1に記載の発明は、設定値を含む遊技データのチェックサムを、バックアップ電源により保持することにより、電源投入時に、設定値に関するエラーの発生を検査することができるようにしたものである。
(請求項2)請求項2に記載の発明は、上記した請求項1に記載の発明の目的に加え、次の点を目的とする。
【0005】すなわち、請求項2に記載の発明は、エラーを警告音により報知することができるようにしたものである。
(請求項3)請求項3に記載の発明は、上記した請求項1又は請求項2に記載の発明の目的に加え、次の点を目的とする。
【0006】すなわち、請求項3に記載の発明は、エラーを視覚的に報知することができるようにしたものである。
(請求項4)請求項4に記載の発明は、上記した請求項1?3のいずれか1項に記載の発明の目的に加え、次の点を目的とする。
【0007】すなわち、請求項4に記載の発明は、エラーを発見した場合に、スロットマシンの遊技を停止することがことができるようにしたものである。
(請求項5)請求項5に記載の発明は、上記した請求項1?4のいずれか1項に記載の発明の目的に加え、次の点を目的とする。
【0008】すなわち、請求項5に記載の発明は、エラーを発見した場合に、段階設定値の設定の待機待ちの状態にすることができるようにしたものである。
(請求項6)請求項6に記載の発明は、上記した請求項5項に記載の発明の目的に加え、次の点を目的とする。
【0009】すなわち、請求項6に記載の発明は、エラーを発見した場合に、段階設定値を手動で変更することができるようにしたものである。」

エ 「【0012】上記電源スイッチ(30)は、主電源(70)による電源の投入・遮断を行うためのものである。前記設定スイッチ(40)は、遊技の難易度を段階的に設定可能なものである。前記遊技制御装置(20)は、例えば図1に示すように、電源スイッチ(30)及び設定スイッチ(40)にそれぞれ接続されるものである。
【0013】第二に、遊技制御装置(20)には、例えば図1に示すように、チェックサム作成手段(210)と、記憶手段(220)と、チェックサム検査手段(230)と、エラー処理手段(240)とを備える。上記チェックサム作成手段(210)は、設定スイッチ(40)により設定された段階設定値を含む遊技データのチェックサムを作成するためのものである。」

オ 「【0024】上記スロットマシン10は、図1に示すように、遊技制御装置20を備える。上記遊技制御装置20は、図示しないが、CPUを中心に構成され、ROM、RAM、I/O等を備えている、そして、CPUは、ROMに記憶されたプログラムを読み込むことで、図1に示すように、次の手段として機能する。
(1)遊技制御手段200
(2)チェックサム作成手段210
(3)記憶手段220
(4)チェックサム検査手段230
(5)エラー処理手段240
(6)設定スイッチ判定手段250
(7)設定値変更手段260
なお、遊技制御装置20の手段は、上記した手段に限定されるものでなく、他の手段やテーブルを含んでいても良い。」

カ 「【0027】(1)リールユニット90
(2)ホッパーユニット100
(3)スピーカ110
(4)エラー表示装置120
なお、遊技制御装置20の出力段に接続されているパーツは、上記したパーツに限定されるものでなく、他のパーツを接続しても良い。
(電源スイッチ30)電源スイッチ30は、主電源70による電源の投入・遮断を行うためのものである。
(設定スイッチ40)設定スイッチ40は、遊技の難易度を段階的に設定可能なものである。
(スタートスイッチ50)スタートスイッチ50は、メダルの投入を条件に、リールユニット90の駆動をスタートさせるものである。
(ストップスイッチ60)ストップスイッチ60は、リールユニット90の駆動をスタートさせるものである。
(主電源70)主電源70は、遊技制御装置20のほか、リールユニット90、ホッパーユニット100、スピーカ110、エラー表示装置120等に電源を供給するためのものである。
【0028】なお、主電源70は、スロットマシン10の内部にあっても良いし、或いは外部にあっても良い。
(バックアップ電源80)バックアップ電源80は、遊技制御装置20の記憶手段220に電源を供給するためのものである。その結果、記憶手段220に記憶された記憶データは、主電源70の遮断後も、保持される。
(リールユニット90)リールユニット90は、図示しないが、複数、例えば3個のリールと、各リールを個々に回転させるための複数、例えば3個のモータとから構成されている。そして、各リールの外周面には、複数種類の図柄が表示されている。
(ホッパーユニット100)ホッパーユニット100は、遊技の結果にもとづいて、メダルを払い出すためのものである。
(スピーカ110)スピーカ110は、遊技の進行に合わせて、各種の効果音を発生させるものである。
(エラー表示装置120)エラー表示装置120は、エラーの発生を視覚的に表示するためのものである。
【0029】具体的には、エラー表示装置120としては、LED、ランプ、液晶等を使用できる。
(遊技制御手段200)遊技制御手段200は、通常遊技や、通常遊技の結果にもとづいて、いわゆるビッグボーナスゲームやレギュラーボーナスゲーム等の特別遊技を行わせるためのものである。
(チェックサム作成手段210)チェックサム作成手段210は、設定スイッチ40により設定された段階設定値を含む遊技データのチェックサム(check sum)を作成するためのものである。
【0030】上記チェックサムは、データが正しくやり取りされたかどうかをチェックする検出方式のひとつである。具体的には、データ列を一定の長さのブロックに区切り,そのブロック内のデータ列を足し合わせた総和を求めている。前記遊技データは、RAMに記憶され、電源遮断時の処理としてRAMのサムチェックを作成している。
(記憶手段220)記憶手段220は、主電源70の遮断時に、チェックサム作成手段210より作成されたチェックサムを記憶するためのものである。
【0031】上記主電源70の遮断時としては、例えば次のようなケースを想定している。
(1)電源スイッチ30により、主電源70が遮断された場合。
(2)例えば落雷等のように不可抗力により主電源70が遮断された場合。
(3)不正行為等により故意に主電源70が遮断された場合。
(チェックサム検査手段230)チェックサム検査手段230は、電源スイッチ30による主電源70の投入時に、チェックサム作成手段210より作成されたチェックサムと、記憶手段220から読み出した記憶データとの一致・不一致を検査するためのものである。
【0032】具体的には、チェックサム作成手段210により、電源遮断時の処理としてRAMのサムチェックを作成し、次回の電源投入時にRAMの内容が、電源遮断時の内容と一致しているかどうか、チェックサム検査手段230により確認している。サムチェックの不一致が発生する原因として、例えば次のようなケースを想定している。」

キ 「【0035】(3)遊技停止手段243
遊技停止手段243は、電源スイッチ30による主電源70の遮断待ちの状態にするためのものである。なお、エラー処理手段240の各種手段は、上記した手段に限定されるものでなく、他の手段を含んでいても良い。
(設定スイッチ判定手段250)設定スイッチ判定手段250は、設定スイッチ40のオン・オフを判定するためのものである。
(設定値変更手段260)設定値変更手段260は、設定スイッチ判定手段250より設定スイッチ40のオン状態が判定された場合に、現在の段階設定値を、当該設定スイッチ40により設定された段階設定値に変更するためのものである。
【0036】逆に、エラー処理手段240は、設定スイッチ判定手段250より設定スイッチ40のオフ状態が判定されたことを条件に、エラー処理を実行する。
(フローチャート)つぎに、図2に示すフローチャートを用いて、動作を説明する。まず、図2に示すように、電源投入後、第1ステップS1に進み、ROMデータのチェックサムを検査する。
【0037】上記電源投入は、電源スイッチ30を操作して、主電源70を投入することにより行われる。前記検査は、遊技制御装置20により実行される。前記検査後、図2に示すように、次の第2ステップS2に進み、初期化処理が行われる。前記処理は、遊技制御装置20により実行される。上記初期化処理後、図2に示すように、次の第3ステップS3に進み、RAMのチェックサムを検査する。前記検査は、チェックサム検査手段230により実行される。
【0038】上記検査後、図2に示すように、次の第4ステップS4に進み、チェックサムが一致しているか否かを判定する。前記判定も、チェックサム検査手段230により実行される。上記判定結果が、一致の場合には、図2に示すように、次の第5ステップS5に進み、段階設定値が正常か否かを判定する。前記判定は、遊技制御装置20により実行される。
【0039】上記判定結果が、正常で無い場合、すなわち異常の場合には、図2に示すように、次の第6ステップS6に進み、段階設定値の初期値がセットされる。前記セットは、遊技制御装置20により実行される。上記セット後、図2に示すように、次の第7ステップS7に進み、設定スイッチ40がON状態か否かが判定される。前記判定は、設定スイッチ判定手段250により実行される。
【0040】上記判定結果が、ON状態と判定された場合には、図2に示すように、次の第8ステップS8に進み、RAM中の段階設定値以外の全てのデータがクリアーされる。前記処理は、遊技制御装置20により実行される。上記処理後、図2に示すように、次の第9ステップS9に進み、段階設定値変更処理が行われる。前記処理は、設定値変更手段260により実行される。
【0041】すなわち、仮に先の第6ステップで、段階設定値の初期値がセットされていても、設定スイッチ40により設定された段階設定値が優先される。その結果、RAMに記憶された段階設定値の初期値が、設定スイッチ40により設定された段階設定値に変更される。以後、設定スイッチ40により設定された段階設定値により、遊技が開始される。
【0042】上記処理後、図2に示すように、次の第10ステップS10に進み、RAM中の段階設定値以外の全てのデータがクリアーされる。前記処理は、遊技制御装置20により実行される。このとき、設定スイッチ40により設定された段階設定値は、RAM中に残っている。上記処理後、図2に示すように、通常の遊技処理へ移行する。すなわち、以後、遊技制御手段200より通常遊技が開始される。
【0043】一方、先の第7ステップS7において、設定スイッチ40がON状態で無いと判定された場合、すなわちOFF状態と判定された場合には、図2に示すように、次の第10ステップS10に進み、RAM中の段階設定値以外の全てのデータがクリアーされる。すなわち、第6ステップでセットされた段階設定値の初期値が有効となり、以後、初期値により遊技が開始される。
【0044】また、先の第4ステップS4において、チェックサムの不一致が判定された場合には、図2に示すように、次の第11ステップS11に進み、設定スイッチ40がON状態か否かが判定される。前記判定は、設定スイッチ判定手段250により実行される。上記判定結果が、ON状態と判定された場合には、図2に示すように、第11ステップS11から第8ステップS8に進み、以後、設定スイッチ40により設定された段階設定値により、遊技が開始される。
【0045】これに対し、第11ステップS7において、設定スイッチ40がON状態で無いと判定された場合、すなわちOFF状態と判定された場合には、図2に示すように、次の第12ステップS12に進み、電源投入時のエラー処理が行われる。前記処理は、エラー処理手段240により実行される。具体的には、警告音発生手段241により、スピーカ110を通じて警告音を発生させる。また、エラー表示手段242により、エラー表示装置120にエラーの発生を視覚的に表示させる。
【0046】上記処理後、図2に示すように、次の第13ステップS13に進み、電源遮断待ちとなる。前記処理は、エラー処理手段240により実行される。具体的には、遊技停止手段243により、電源スイッチ30による主電源70の遮断待ちの状態にし、電源スイッチ30による主電源70が遮断されない限り、当該処理を無限ループで繰り返す。」

上記記載事項ア?キによると、甲第1号証には次の発明(以下「甲第1発明」という。)が記載されていると認められる。
「メダルの投入を条件に、スタートスイッチ50の操作によりリールユニット90の駆動をスタートさせ、
各リールの外周面に複数種類の図柄が表示された回転可能なリールユニット90に遊技の結果を表示し、
遊技の結果にもとづいて、メダルを払い出すスロットマシンであって、
遊技制御装置20を備え、
遊技制御装置20は、
通常遊技や、通常遊技の結果にもとづいて、いわゆるビッグボーナスゲームやレギュラーボーナスゲーム等の特別遊技を行わせるための遊技制御手段200と、
現在の段階設定値を、遊技の難易度を段階的に設定可能な設定スイッチ40により設定された段階設定値に変更する設定値変更手段260と、
遊技制御装置20のほか、リールユニット90、ホッパーユニット100、スピーカ110、エラー表示装置120等に電源を供給する主電源70の遮断時に、チェックサム作成手段210より作成された、段階設定値を含む遊技データのチェックサムと遊技データとを記憶する記憶手段220と、
記憶手段220に電源を供給することにより、記憶手段220に記憶された記憶データを、主電源70の遮断後も保持するバックアップ電源80と、
次回の電源投入時に、チェックサム作成手段210により作成された、記憶手段220に記憶された段階設定値を含む遊技データのチェックサム(check sum)が、電源遮断時の内容と一致しているかどうかを確認するチェックサム検査手段230と、
を備え、
チェックサム検査手段230により実行される判定結果が一致する場合に、段階設定値が正常か否かを判定し、判定結果が正常で無い場合には段階設定値の初期値をセットし、
チェックサム検査手段230により実行される判定結果が一致しない場合に、
設定スイッチ40がOFF状態と判定されると、エラー処理手段240により電源投入時のエラー処理を行い、エラー処理後、遊技停止手段243により、電源スイッチ30による主電源70の遮断待ちの状態にし、電源スイッチ30による主電源70が遮断されない限り、当該処理を無限ループで繰り返し、
設定スイッチ40がON状態と判定されると、設定スイッチ40により設定された段階設定値により、遊技を開始する
スロットマシン。」

2 甲第2号証(特開2004-187812号公報)
甲第2号証には、図面とともに以下の記載がある。
ク 「【特許請求の範囲】
【請求項1】
CPU、RAM、及びROMを備えた制御装置によって遊技の制御を行うスロットマシンであって、
前記RAMには、遊技の制御に係る数値である遊技情報値が複数記憶され、
前記ROMには、遊技情報値の適正範囲を定めた適正範囲テーブルが記憶され、
前記制御装置は、RAM上の遊技情報値がROM上の適正範囲テーブルに定めた適正範囲内にあるか否かの判定を行うための適正判定手段と、適正判定手段による判定結果に基づいてRAM上の遊技情報値を変更するための適正変更手段とを備え、
前記適正変更手段は、適正判定手段による判定の結果、RAM上の遊技情報値に適正範囲外のものがあったときに、少なくともその適正範囲外の遊技情報値を適正範囲内の所定の数値に変更することを特徴とするスロットマシン。」

ケ 「【0008】
(請求項1)
そこで、請求項1記載の発明は、RAM上の遊技情報値に適正範囲外のものがあったときに、少なくともその適正範囲外の遊技情報値を適正範囲内の所定の数値に変更することにより、すべての遊技情報値を初期化することにより生じる種々の不都合を回避するようにしたスロットマシンを提供することを目的とする。」

コ 「【0010】
(請求項3)
また、請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の発明の目的に加え、RAMから遊技情報値が読み取られるときに、RAM上の遊技情報値が適正範囲内か否かの判定を行うことにより、RAM上の遊技情報値が適正範囲内か否かの判定が遊技中に定期的に行われるようにして、適正な遊技情報値に基づいて遊技の制御が行われるようにしたスロットマシンを提供することを目的とする。」

サ 「【0013】
【課題を解決するための手段】
(請求項1)
請求項1記載の発明は、CPU(21)、RAM(22)、及びROM(23)を備えた制御装置(20)によって遊技の制御を行うスロットマシン(10)であって、前記RAM(22)には、遊技の制御に係る数値である遊技情報値が複数記憶され、前記ROM(23)には、遊技情報値の適正範囲を定めた適正範囲テーブル(220)が記憶され、前記制御装置(20)は、RAM(22)上の遊技情報値がROM(23)上の適正範囲テーブル(220)に定めた適正範囲内にあるか否かの判定を行うための適正判定手段(230)と、適正判定手段(230)による判定結果に基づいてRAM(22)上の遊技情報値を変更するための適正変更手段(240)とを備え、前記適正変更手段(240)は、適正判定手段(230)による判定の結果、RAM(22)上の遊技情報値に適正範囲外のものがあったときに、少なくともその適正範囲外の遊技情報値を適正範囲内の所定の数値に変更することを特徴とする。
【0014】
ここで、「遊技情報値」とは、遊技の制御に係る数値をいう。遊技情報値としては、例えば、出球率の設定値や、メダルの投入枚数や、メダルのクレジット枚数や、ソフトウエアを用いた手段によって生成される乱数であるソフト乱数などがある。また、遊技情報値としては、上記したものの他に、例えば、特定導入遊技当選(BB当選)の持ち越し数を示すBBストック数や、有効な入賞ラインの数を示す有効ライン数や、遊技状態を示す遊技状態値や、特定導入遊技(BBゲーム)中の特定遊技(RBゲーム)の回数を示すBB中RB回数や、BBゲーム中の一般遊技の回数を示すBB中一般遊技回数などもある。これらの遊技情報値は、RAM(22)に記憶される。また、これらの遊技情報値は、所定の操作や遊技の進行等に応じて適正範囲内で書き換えられる。例えば、設定値は、所定の設定変更操作により「1?6」の範囲内で書き換えられ、また、メダルのクレジット枚数は、クレジットメダルの投入と払い出しとに応じて「0?50」の範囲内で書き換えられる。そして、スロットマシン(10)における遊技の制御は、これらの遊技情報値に基づいて行われる。
【0015】
また、「適正範囲テーブル(220)」は、遊技情報値の適正範囲を定めたものである。この適正範囲テーブル(220)は、ROM(23)に記憶されている。また、適正範囲テーブル(220)には、例えば、設定値の適正範囲を「1?6」とし、クレジット枚数の適正範囲を「0?50」とする旨を定めることができる。また、「適正判定手段(230)」は、RAM(22)上の遊技情報値がROM(23)上の適正範囲テーブル(220)に定めた適正範囲内にあるか否かの判定を行うためのものである。
【0016】
例えば、ROM(23)上の適正範囲テーブル(220)に、メダルのクレジット枚数の適正範囲が「0?50」と定められているとする。このような場合、RAM(22)上のメダルのクレジット枚数が「30」であれば、適正判定手段(230)は、RAM(22)上のメダルのクレジット枚数が適正範囲内にあると判定し、RAM(22)上のメダルのクレジット枚数が「60」であれば、適正判定手段(230)は、RAM(22)上のメダルのクレジット枚数が適正範囲外にあると判定する。
【0017】
また、「判定」は、例えば、スロットマシン(10)の電源の投入時に行うようにしてもよく、また、遊技が行われる毎に行うようにしてもよく、また、所定時間(例えば5分)毎に行うようにしてもよく、また、RAM(22)へのアクセス時に行うようにしてもよい。
また、「RAM(22)へのアクセス時」とは、RAM(22)から遊技情報値が読み取られるときや、RAM(22)に遊技情報値が書き込まれるときなどを意味するものである。また、RAM(22)から遊技情報値が読み取られるときとしては、例えば、スタートスイッチ(50)の操作時などがある。
【0018】
また、「適正変更手段(240)」は、適正判定手段(230)による判定結果に基づいてRAM(22)上の遊技情報値を変更するためのものである。
ここで、遊技情報値は、上述したように、所定の操作や遊技の進行等に応じて適正範囲内で書き換えられるものであるが、例えば、誤作動や不正等のために、適正範囲外に書き換えられてしまうことがある。そこで、この適正変更手段(240)が、誤作動や不正等のために適正範囲外に書き換えられてしまった遊技情報値を、適正範囲内の所定の数値に直すのである。すなわち、この適正変更手段(240)は、RAM(22)上の遊技情報値を初期化するのである。
【0019】
本発明では、適正変更手段(240)は、適正判定手段(230)による判定の結果、RAM(22)上の遊技情報値に適正範囲外のものがあったときに、少なくともその適正範囲外の遊技情報値を適正範囲内の所定の数値に変更する。
例えば、適正判定手段(230)による判定の結果、RAM(22)上のメダルのクレジット枚数が適正範囲外であったときに、適正変更手段(240)は、メダルのクレジット枚数のみを適正範囲内の所定の数値に変更することができるし、また、メダルのクレジット枚数の他に、有効ライン数などを適正範囲内の所定の数値に変更することもできる。
【0020】
また、例えば、適正判定手段(230)による判定の結果、RAM(22)上のメダルのクレジット枚数と設定値とが適正範囲外であったときに、適正変更手段(240)は、これら2つの数値のみを適正範囲内の所定の数値に変更することができるし、また、これら2つの数値の他に、有効ライン数などを適正範囲内の所定の数値に変更することもできる。
【0021】
また、「変更」は、例えば、適正判定手段(230)による判定の結果、RAM(22)上の遊技情報値に適正範囲外のものがあったときに、直ちに行うようにしてもよく、また、所定の操作を条件に行うようにしてもよい。
また、「直ちに」とは、適正判定手段(230)による判定の結果、RAM(22)上の遊技情報値に適正範囲外のものがあったときに、リセット操作等の所定の操作を待たずに、すぐに、遊技情報値を変更するという意味である。
【0022】
また、「所定の操作を条件に」とは、適正判定手段(230)による判定の結果、RAM(22)上の遊技情報値に適正範囲外のものがあったときに、リセット操作等の所定の操作を待ってから、遊技情報値を変更するという意味である。
また、例えば、適正判定手段(230)による判定の結果、RAM(22)上の遊技情報値に適正範囲外のものがあると、まず、エラー表示手段(250)により所定のエラー表示を行い、その後に、遊技店の店員等により所定のリセット操作が行われると、適正変更手段(240)が遊技情報値を変更するようにしてもよい。
【0023】
また、「変更」は、例えば、RAM(22)上の遊技情報値を一旦消去又はクリアした後に改めて所定の数値を書き込むことにより行ってもよく、また、消去又はクリアせずに所定の数値を上書きすることにより行ってもよい。
また、「変更後の数値」は、例えば、適正範囲内の最小値にしてもよく、また、適正範囲内の中間値にしてもよく、また、適正範囲内の最大値にしてもよい。
【0024】
また、適正判定手段(230)、及び適正変更手段(240)は、例えば、CPU(21)に所定のプログラムを実行させることによって形成することができる。
本発明によれば、RAM(22)上の遊技情報値に適正範囲外のものがあると、少なくともその適正範囲外の遊技情報値が適正範囲内の所定の数値に変更される。このため、すべての遊技情報値が初期化されることにより生じる種々の不都合を回避できるのである。」

シ 「【0035】
例えば、メダルのクレジット枚数の適正範囲が「0?50」と定められているスロットマシン(10)においては、メダルのクレジット枚数「0」が遊技者にとって最も不利であるから、適正変更手段(240)による変更後の数値は、メダルのクレジット枚数については「0」となる。
また、例えば、設定値の適正範囲が「1?6」と定められ、設定値「1」が遊技者にとって最も不利とされ、設定値が大きくなるに従って遊技者に有利になり、設定値「6」が遊技者にとって最も有利とされているスロットマシン(10)においては、適正変更手段(240)による変更後の数値は、設定値については「1」となる。」

ス 「【0038】
(スロットマシン10)
スロットマシン10は、図2に示すように、前面に開口部を有する箱型の筐体70を備え、また、筐体70の前面には、開口部を塞ぐ前扉71を備え、また、筐体70の内部には、3個の回転リール40を横並びに設けたリールユニット30を備え、また、前扉71のほぼ中央には、3個の回転リール40を見るための図柄表示窓72を備えている。」

セ 「【0041】
また、前扉71の下部には、払出口80が設けられ、また、払出口80の下方には、受け皿90が設けられている。
また、筐体70の内部には、スロットマシン10を制御するための制御装置20が備えられている。
(制御装置20)
制御装置20は、スロットマシン10を制御するためのものである。
【0042】
この制御装置20は、CPU21、RAM22、ROM23、ハード乱数生成手段110、及びI/Oなどを備えている。
また、この制御装置20の入力手段としては、図1に示すように、投入スイッチ73、ベットスイッチ74、精算スイッチ75、スタートスイッチ50、及びストップスイッチ60などが接続されている。」

ソ 「【0044】
(ROM23)
ROM23には、例えば、役抽選テーブル130や、停止テーブル150や、サブ抽選テーブル200や、適正範囲テーブル220や、所定のプログラムなどが記憶されている。
(CPU21)
CPU21は、ROM23に記憶された所定のプログラムを実行することにより、遊技制御手段100、ハード乱数抽出手段120、役抽選手段140、停止制御手段160、入賞判定手段170、ソフト乱数生成手段180、ソフト乱数抽出手段190、サブ抽選手段210、適正判定手段230、適正変更手段240、及びエラー表示手段250などとして機能する。」

タ 「【0052】
(遊技制御手段100)
遊技制御手段100は、遊技を制御するためのものである。
ここで、スロットマシン10での遊技について説明する。
メダルを投入すると、メダルの投入枚数に応じた本数の入賞ラインが有効になる。また、メダルの投入には、投入口からのメダルの投入と、ベットスイッチ74の操作によるクレジットメダルの投入とがある。また、メダルの投入を条件に、スタートスイッチ50を操作すると、ソフトウエアを用いない手段によって生成される乱数であるハード乱数が抽出され、このハード乱数に基づいて、役に当選したかハズレかの抽選が行われる。また、この抽選とほぼ同時に、3個すべての回転リール40の回転が開始する。その後に、3個のストップスイッチ60のうちの1個を操作すると、当該ストップスイッチ60に対応した回転リール40の回転が停止する。そして、3個すべてのストップスイッチ60を操作し終えると、3個すべての回転リール40の回転が停止する。このとき、有効な入賞ライン上に所定の図柄が所定の配列で揃うと、入賞となり、入賞態様に応じた枚数のメダルが払い出される。また、メダルの払い出しには、払出口80からのメダルの払い出しと、クレジットによるメダルの払い出しとがある。また、メダルの払い出しに代えて、あるいはメダルの払い出しとともに、遊技者に対して所定の利益が付与されることもある。」

チ 「【0061】
(役抽選手段140)
役抽選手段140は、ハード乱数抽出手段120が抽出したハード乱数と、役抽選テーブル130とを照合して、当選かハズレかの抽選を行うためのものである。
本実施の形態では、役抽選手段140は、ハード乱数抽出手段120が抽出したハード乱数と、役抽選テーブル130とを照合して、「BB当選」か、「RB当選」か、「第1小役当選」か、「第2小役当選」か、「第3小役当選」か、「Replay当選」か、あるいは「ハズレ」かの判定を行う。」

ツ 「【0078】
なお、サブ抽選手段210は、例えば、「アシストタイム遊技」や「押し順ナビ遊技」を開始するか否かの抽選を行ったり、あるいは「リプレイタイム遊技」を終了するか否かの抽選を行うこともできる。
(適正範囲テーブル220)
適正範囲テーブル220は、遊技情報値の適正範囲を定めたものである。
【0079】
この適正範囲テーブル220は、ROM23に記憶されている。
また、本実施の形態では、適正範囲テーブル220には、例えば、設定値の適正範囲を「1?6」とし、メダルの投入枚数の適正範囲を「0?3」とし、メダルのクレジット枚数の適正範囲を「0?50」とする旨などが定められている。
(適正判定手段230)
適正判定手段230は、RAM22上の遊技情報値がROM23上の適正範囲テーブル220に定めた適正範囲内にあるか否かの判定を行うためのものである。
【0080】
本実施の形態では、適正判定手段230は、スロットマシン10に電源が投入されるとき、RAM22から遊技情報値が読み取られるとき、及びRAM22に遊技情報値が書き込まれるときに、RAM22上の遊技情報値がROM23上の適正範囲テーブル220に定めた適正範囲内にあるか否かの判定を行う。
また、RAM22から遊技情報値が読み取られるときとしては、例えば、スタートスイッチ50の操作時などがある。
【0081】
また、この適正判定手段230は、例えば、RAM22上の設定値が「3」であれば、RAM22上の設定値は適正範囲内にあると判定し、RAM22上の設定値が「10」であれば、RAM22上の設定値は適正範囲外にあると判定する。
また、この適正判定手段230は、例えば、RAM22上のメダルのクレジット枚数が「30」であれば、RAM22上のメダルのクレジット枚数は適正範囲内にあると判定し、RAM22上のメダルのクレジット枚数が「60」であれば、RAM22上のメダルのクレジット枚数は適正範囲外にあると判定する。
【0082】
(エラー表示手段250)
エラー表示手段250は、適正判定手段230による判定の結果、RAM22上の遊技情報値に適正範囲外のものがあったときに、所定のエラー表示を行うためのものである。
本実施の形態では、エラー表示手段250は、適正判定手段230による判定の結果、RAM22上の遊技情報値に適正範囲外のものがあったときに、液晶ディスプレイ79に「ERROR」の文字を点滅表示する。
【0083】
(適正変更手段240)
適正変更手段240は、適正判定手段230による判定結果に基づいてRAM22上の遊技情報値を変更するためのものである。
本実施の形態では、適正変更手段240は、適正判定手段230による判定の結果、RAM22上の遊技情報値に適正範囲外のものがあったときに、ソフト乱数以外の遊技情報値を適正範囲内の所定の数値に変更する。すなわち、この適正変更手段240は、ソフト乱数以外の遊技情報値を初期化するのである。
【0084】
また、本実施の形態では、適正変更手段240による数値の変更は、遊技店の店員等による所定のリセット操作を条件に行われる。
具体的には、本実施の形態では、適正判定手段230による判定の結果、RAM22上の遊技情報値に適正範囲外のものがあると、まず、エラー表示手段250により所定のエラー表示が行われ、その後に、遊技店の店員等により所定のリセット操作が行われると、適正変更手段240がソフト乱数以外の遊技情報値を変更するのである。
【0085】
また、本実施の形態では、適正変更手段240による数値の変更は、RAM22上の数値を一旦消去又はクリアした後に改めて所定の数値を書き込むことによって行われる。
また、本実施の形態では、適正変更手段240による変更後の数値は、適正範囲内で遊技者にとって最も不利な数値となる。
【0086】
ここで、本実施の形態では、メダルのクレジット枚数の適正範囲が「0?50」と定められている。このため、メダルのクレジット枚数「0」が遊技者にとって最も不利となるので、適正変更手段240による変更後の数値は、メダルのクレジット枚数については「0」となる。
また、本実施の形態では、設定値の適正範囲が「1?6」と定められ、設定値「1」が遊技者にとって最も不利とされ、設定値が大きくなるに従って遊技者に有利になり、設定値「6」が遊技者にとって最も有利とされている。このため、適正変更手段240による変更後の数値は、設定値については「1」となる。」

上記記載事項ク?ツによると、甲第2号証には次の発明(以下「甲第2発明」という。)が記載されていると認められる。
「CPU、RAM、及びROMを備えた制御装置によって遊技の制御を行うスロットマシンであって、
RAMには、遊技の制御に係る数値である、遊技情報値(出球率の設定値を含む)が複数記憶され、
ROMには、遊技情報値(出球率の設定値を含む)の適正範囲を定めた適正範囲テーブルが記憶され、例えば、出球率の設定値の適正範囲は「1?6」と定められており、
制御装置は、
遊技を制御するための遊技制御手段100と、
RAM上の遊技情報値(出球率の設定値を含む)がROM上の適正範囲テーブルに定めた適正範囲内にあるか否かの判定を行う適正判定手段230と、
適正判定手段による判定結果に基づいてRAM上の遊技情報値(出球率の設定値を含む)を変更するための適正変更手段240と
を備え、
遊技制御手段100は、メダルの投入を条件に、スタートスイッチ50を操作すると、ハード乱数に基づいて、役に当選したかハズレかの抽選を行い、3個すべての回転リール40の回転が停止し、有効な入賞ライン上に所定の図柄が所定の配列で揃うと、入賞となり、入賞態様に応じた枚数のメダルを払い出し、
「判定」は、スロットマシン(10)の電源の投入時、また、スタートスイッチ(50)の操作時に行われ、
適正変更手段240は、適正判定手段による判定の結果、RAM上の遊技情報値(出球率の設定値を含む)に適正範囲外のものがあったときに、遊技店の店員等による所定のリセット操作を待ってから、その適正範囲外の遊技情報値(出球率の設定値を含む)を適正範囲内の所定の数値に変更、すなわち、遊技情報値(出球率の設定値を含む)を初期化し、
スタートスイッチ(50)の操作時に、RAM上の遊技情報値(出球率の設定値を含む)が適正範囲内か否かの判定を行うことにより、RAM上の遊技情報値(出球率の設定値を含む)が適正範囲内か否かの判定が遊技中に定期的に行われるようにして、適正な遊技情報値(出球率の設定値を含む)に基づいて遊技の制御が行われるようにした
スロットマシン。」

3 甲第3号証(特開2003-225358号公報)
甲第3号証には、図面とともに以下の記載がある。
「抽選時の遊技メダル枚数チェック時に遊技メダルの検出枚数が1?3枚以外の状態、割り込み処理において戻り番地の異常を検出した状態、または、入賞判定において入賞有効ライン上に当選図柄を除く図柄の組合せが表示された状態のいずれかの状態になったときに、RAMデータ異常エラーを表示するとともに、出玉率の設定変更、すなわちRAM初期化処理によってRAMデータ異常エラーを解除する」(【図5】)。

4 甲第4号証(特開2003-10409号公報)
甲第4号証には、スロットマシンで用いられる供給電圧の状態を監視し、停電や主電源のオフ操作によって電圧異常が検出されたときに主制御基板に対して電圧異常信号を出力する電源監視手段を備え(段落【0011】、【0048】等)、主制御基板は、電源監視手段から出力された電圧異常信号が入力されると、RAM39Bに記憶されている遊技者の利益状態に関する情報に基づいてチェックサムデータを作成し、作成した前記チェックサムデータをRAM39Bの末尾アドレスに格納するバックアップ処理を実行するバックアップ処理手段を含む(段落【0070】、【0071】等)スロットマシンの発明(以下、「甲第4発明」という。)について記載されている。

5 甲第5号証(特開2003-180965号公報)
甲第5号証には、スロットマシンへの電源投入時において、設定キースイッチがonであるか否かを確認し、設定キースイッチがonであった場合に、遊技制御基板のRAMをクリアするメイン初期化処理手段(段落【0118】?【0120】等)と、RAMにおけるバックアップRAM領域のパリティチェックの前に設定キースイッチ82がonであるか否かを確認し、設定キースイッチ82がonでない場合に、パリティチェックを行う手段(段落【0124】、【0125】等)を備えるスロットマシンの発明(以下、「甲第5発明」という。)について記載されている。

6 甲第6号証:特開平5-285259号公報、名称「遊技機」

7 甲第9号証:特開2003-52902号公報、名称「スロットマシン」

8 甲第10号証:特開2003-325751号公報、名称「スロットマシン」

第5 本件審判請求についての判断(29条2項)
1 本件発明1について(無効理由(1)について)
(1)対比
本件発明1と甲第1発明とを対比する。(甲第1発明、本件発明1をそれぞれ、「前者」、「後者」という。)。
前者の「メダルの投入を条件に、スタートスイッチ50の操作によりリールユニット90の駆動をスタートさせ」ることと、後者の「1ゲームに対して所定数の賭数を設定することによりゲームが開始可能となる」こととを対比する。
前者の「メダルの投入」は、1ゲーム毎に行われることが当業者にとって明らかであるから、後者の「1ゲームに対して所定数の賭数を設定する」ことに相当する。
そして、前者の「リールユニット90の駆動をスタートさせ」ることは、後者の「ゲームが開始可能となる」ことに相当する。
したがって、前者の「メダルの投入を条件に、スタートスイッチ50の操作によりリールユニット90の駆動をスタートさせ」ることは、後者の「1ゲームに対して所定数の賭数を設定することによりゲームが開始可能となる」ことに相当する。

前者の「各リールの外周面に複数種類の図柄が表示された回転可能なリールユニット90に遊技の結果を表示」することと、後者の「各々が識別可能な複数種類の識別情報を変動表示可能な可変表示装置の表示結果が導出表示されることにより1ゲームが終了」することとを対比する。
前者の「複数種類の図柄」、「リールユニット90」は、それぞれ、後者の「複数種類の識別情報」、「可変表示装置」に相当する。
そして、前者の「遊技の結果を導出表示」することは、メダルの投入により開始されるゲームが、遊技の結果が表示されることによって終了するものであるから、後者の「表示結果が導出表示されることにより1ゲームが終了」ことに相当する。
したがって、前者の「各リールの外周面に複数種類の図柄が表示された回転可能なリールユニット90に遊技の結果を導出表示」することは、後者の「各々が識別可能な複数種類の識別情報を変動表示可能な可変表示装置の表示結果が導出表示されることにより1ゲームが終了」することに相当する。

前者の「遊技の結果にもとづいて、メダルを払い出すスロットマシン」と、後者の「可変表示装置の表示結果に応じて入賞が発生可能とされたスロットマシン」とを対比する。
前者において、「メダルを払い出す」ことは、遊技の結果が「入賞」となったときに行われることは当業者にとって明らかであるから、前者の「遊技の結果にもとづいて、メダルを払い出すスロットマシン」は、後者の「可変表示装置の表示結果に応じて入賞が発生可能とされたスロットマシン」に相当する。

前者の「現在の段階設定値を、遊技の難易度を段階的に設定可能な設定スイッチ40により設定された段階設定値に変更する設定値変更手段260」と、後者の「所定の設定操作手段の操作に基づいて、入賞の発生を許容する旨を決定する割合が異なる複数種類の許容段階のうちから、いずれかの許容段階を選択して、該許容段階を示す設定値を設定する許容段階設定手段」とを対比する。
前者の「遊技の難易度」を「変更」することは、後者の「入賞の発生を許容する旨を決定する割合が異なる」ことを前提とするものである。
したがって、前者の「遊技の難易度」を示す「段階設定値」を設定スイッチ40により変更可能とする「設定値変更手段260」は、後者の「許容段階設定手段」に相当する。

前者の「遊技制御装置20」は、遊技の制御を行う装置であるから、後者の「遊技の制御を行う遊技制御手段」に相当する。

前者の「チェックサム作成手段210より作成された、段階設定値を含む遊技データのチェックサムと遊技データとを記憶する記憶手段220」と、後者の「許容段階設定手段により設定された設定値を含む遊技制御手段が制御を行うためのデータを読み出し及び書き込みが可能に記憶するデータ記憶手段」とを対比する。
前者の「段階設定値」、「段階設定値を含む遊技データのチェックサムと遊技データ」は、それぞれ、後者の「許容段階設定手段により設定された設定値」、「遊技制御手段が制御を行うためのデータ」に相当する。
したがって、前者の「チェックサム作成手段210より作成された、段階設定値を含む遊技データのチェックサムと遊技データとを記憶する記憶手段220」は、後者の「許容段階設定手段により設定された設定値を含む遊技制御手段が制御を行うためのデータを読み出し及び書き込みが可能に記憶するデータ記憶手段」に相当する。

前者の「記憶手段220に電源を供給することにより、記憶手段220に記憶された記憶データを、主電源70の遮断後も保持するバックアップ電源80」は、「主電源70」が、「遊技制御装置20のほか、リールユニット90、ホッパーユニット100、スピーカ110、エラー表示装置120等」から構成されるスロットマシン本体に電源を供給するものであるから、後者の「スロットマシンへの電源供給が遮断してもデータ記憶手段に記憶されている遊技制御手段が制御を行うためのデータを保持する保持手段」に相当する。

前者の「次回の電源投入時に、チェックサム作成手段210により作成された、記憶手段220に記憶された段階設定値を含む遊技データのチェックサム(check sum)が、電源遮断時の内容と一致しているかどうかを確認するチェックサム検査手段230」を備え、「チェックサム検査手段230により実行される判定結果が一致する場合に、段階設定値が正常か否かを判定」することと、後者の「スロットマシンへの電源投入時に、遊技制御手段が制御を行うためのデータのうちの設定値が適正か否かの判定を個別に行わず、保持手段により保持されている遊技制御手段が制御を行うためのデータが電源遮断前のデータと一致するか否かの判定を行う記憶データ判定手段」とを対比する。
前者において、「段階設定値を含む遊技データのチェックサム(check sum)」は、「遊技データ」に含まれる概念である。また、前者では、段階設定値が正常か否かについての判定を個別に行うものである。
したがって、両者は、「スロットマシンへの電源投入時に」「保持手段により保持されている遊技制御手段が制御を行うためのデータが電源遮断前のデータと一致するか否かの判定を行う記憶データ判定手段」である点で共通する。

前者の「チェックサム検査手段230により実行される判定結果が一致しない場合に、設定スイッチ40がOFF状態と判定されると、エラー処理手段240により電源投入時のエラー処理を行い、エラー処理後、遊技停止手段243により、電源スイッチ30による主電源70の遮断待ちの状態にし、電源スイッチ30による主電源70が遮断されない限り、当該処理を無限ループで繰り返」すことと、後者の「記憶データ判定手段により保持手段により保持されている遊技制御手段が制御を行うためのデータが電源遮断前のデータと一致しないと判定されたときに、ゲームの進行を不能化する第1の不能化手段」とを対比する。
前者の「チェックサム検査手段230により実行される判定結果が一致しない場合に」、「電源スイッチ30による主電源70の遮断待ちの状態にし、電源スイッチ30による主電源70が遮断されない限り、当該処理を無限ループで繰り返」すことは、それぞれ、後者の「記憶データ判定手段により保持手段により保持されている遊技制御手段が制御を行うためのデータが電源遮断前のデータと一致しないと判定されたとき」、「ゲームの進行を不能化する」ことに相当する。
したがって、前者の「チェックサム検査手段230により実行される判定結果が一致しない場合に、設定スイッチ40がOFF状態と判定されると、エラー処理手段240により電源投入時のエラー処理を行い、エラー処理後、遊技停止手段243により、電源スイッチ30による主電源70の遮断待ちの状態にし、電源スイッチ30による主電源70が遮断されない限り、当該処理を無限ループで繰り返」すことは、後者の「記憶データ判定手段により保持手段により保持されている遊技制御手段が制御を行うためのデータが電源遮断前のデータと一致しないと判定されたときに、ゲームの進行を不能化する第1の不能化手段」に相当する。

前者の「通常遊技の結果にもとづいて、いわゆるビッグボーナスゲームやレギュラーボーナスゲーム等の特別遊技を行わせるための遊技制御手段200」と、後者の「設定値判定手段により読み出した設定値が適正であると判定したときに、該読み出した設定値が示す許容段階に応じた割合で当該ゲームにおいて入賞の発生を許容するか否かを決定する事前決定手段」とを対比する。
スロットマシンに関して、メダルの払い出しが可能となるか否かを事前に決定することは技術常識であるから、前者において、メダルの払い出しが行われる遊技の結果を許容するか否かを事前に決定する手段を備えることは自明の事項である。
したがって、両者は、「ゲームにおいて入賞の発生を許容するか否かを決定する事前決定手段」で共通する。

前者の「チェックサム検査手段230により実行される判定結果が一致しない場合に」「設定スイッチ40がON状態と判定されると、設定スイッチ40により設定された段階設定値により、遊技を開始する」ことと、後者の「第1の不能化手段によりゲームの進行が不能化された状態においても第2の不能化手段によりゲームの進行が不能化された状態においても、設定操作手段の操作に基づいて許容段階設定手段により前記設定値が新たに設定されたことを条件に、ゲームの進行が不能化された状態を解除し、ゲームの進行を可能とする不能化解除手段」とを対比する。
前者の「チェックサムの不一致が判定された場合」には、上記において検討したように、エラー処理手段240により、ゲームの進行が不能化されることから、前者の「チェックサムの不一致が判定された場合」は、後者の「第1の不能化手段によりゲームの進行が不能化された状態」に相当する。
そして、前者の「設定スイッチ40により設定された段階設定値」、「遊技が開始される」ことは、それぞれ、後者の「設定操作手段の操作に基づいて許容段階設定手段により」「新たに設定された」「設定値」、「ゲームの進行を可能とする」ことに相当する。
したがって、両者は、「第1の不能化手段によりゲームの進行が不能化された状態において、設定操作手段の操作に基づいて許容段階設定手段により前記設定値が新たに設定されたことを条件に、ゲームの進行が不能化された状態を解除し、ゲームの進行を可能とする不能化解除手段」で共通する。

ゆえに、両者は、
「1ゲームに対して所定数の賭数を設定することによりゲームが開始可能となるとともに、各々が識別可能な複数種類の識別情報を変動表示可能な可変表示装置の表示結果が導出表示されることにより1ゲームが終了し、該可変表示装置の表示結果に応じて入賞が発生可能とされたスロットマシンであって、
遊技の制御を行う遊技制御手段を備え、
該遊技制御手段は、
所定の設定操作手段の操作に基づいて、入賞の発生を許容する旨を決定する割合が異なる複数種類の許容段階のうちから、いずれかの許容段階を選択して、該許容段階を示す設定値を設定する許容段階設定手段と、
前記許容段階設定手段により設定された設定値を含む前記遊技制御手段が制御を行うためのデータを読み出し及び書き込みが可能に記憶するデータ記憶手段と、
前記スロットマシンへの電源供給が遮断しても前記データ記憶手段に記憶されている前記遊技制御手段が制御を行うためのデータを保持する保持手段と、
前記スロットマシンへの電源投入時に、記憶データの判定を行う記憶データ判定手段と、
前記記憶データ判定手段により前記保持手段により保持されている前記遊技制御手段が制御を行うためのデータが前記電源遮断前のデータと一致しないと判定されたときに、ゲームの進行を不能化する第1の不能化手段と、
ゲームにおいて入賞の発生を許容するか否かを決定する事前決定手段と、
前記第1の不能化手段により前記ゲームの進行が不能化された状態において、前記設定操作手段の操作に基づいて前記許容段階設定手段により前記設定値が新たに設定されたことを条件に、前記ゲームの進行が不能化された状態を解除し、ゲームの進行を可能とする不能化解除手段と、
を備えるスロットマシン。」の点で一致し、

次の点で相違する。
[相違点1]
スロットマシンへの電源投入時に、保持手段により保持されている遊技制御手段が制御を行うためのデータが電源遮断前のデータと一致するか否かの判定を行う記憶データ判定手段に関して、
本件発明1は、遊技制御手段が制御を行うためのデータのうちの設定値が適正か否かの判定を個別に行わないのに対して、
甲第1発明は、チェックサム検査手段230により実行される判定結果が一致する場合には、当該判定に加えて、段階設定値が正常か否かの判定についても行う点。

[相違点2]
本件発明1は、ゲームの開始操作がなされる毎に、データ記憶手段から設定値を読み出し、該読み出した設定値が、許容段階設定手段により設定可能な設定値の範囲内である場合に読み出した設定値が適正であると判定し、設定可能な設定値の範囲内でない場合に読み出した設定値が適正ではないと判定する設定値判定手段、及び、設定値判定手段により読み出した設定値が適正ではないと判定されたときに、ゲームの進行を不能化する第2の不能化手段を備えるが、
甲第1発明は、「次回の電源投入時に、チェックサム作成手段210により作成された、記憶手段220に記憶された段階設定値を含む遊技データのチェックサム(check sum)が、電源遮断時の内容と」「一致する場合に、段階設定値が正常か否かを判定し、判定結果が正常で無い場合には段階設定値の初期値をセット」する点。

[相違点3]
ゲームにおいて入賞の発生を許容するか否かを決定する事前決定手段に関して、
本件発明1は、設定値判定手段により読み出した設定値が適正であると判定したときに、該読み出した設定値が示す許容段階に応じた割合で当該ゲームにおいて入賞の発生を許容するか否かを決定する事前決定手段を備えるが、
甲第1発明は、当該発明特定事項を具備するか否か不明である点。

[相違点4]
不能化解除手段に関して、
本件発明1は、第1の不能化手段によりゲームの進行が不能化された状態においても第2の不能化手段によりゲームの進行が不能化された状態においても、設定操作手段の操作に基づいて許容段階設定手段により設定値が新たに設定されたことを条件に、ゲームの進行が不能化された状態を解除し、ゲームの進行を可能とするが、
甲第1発明は、第1の不能化手段によりゲームの進行が不能化された状態において、設定操作手段の操作に基づいて許容段階設定手段により設定値が新たに設定されたことを条件に、ゲームの進行が不能化された状態を解除し、ゲームの進行を可能とするが、第2の不能化手段を備えないため、第2の不能化手段によりゲームの進行が不能化された状態においては、設定操作手段の操作に基づいて許容段階設定手段により設定値が新たに設定されたことを条件に、ゲームの進行が不能化された状態を解除し、ゲームの進行を可能とする構成を具備しない点。

なお、平成27年2月18日付け審理事項通知書において、上記相違点1について合議体は一致点と認定していた。
しかしながら、口頭審理における両当事者の主張を踏まえて、合議体においては、電源投入時における「制御を行うためのデータ」に異常があるか否かの判定とに関する技術が、技術的に関連の深いまとまりのある技術単位であることを考慮して、本件発明1と甲第1発明とを対比し直した。
その結果、上記相違点1を新たに相違点として抽出したものである。

(2)判断
ア 相違点1について
相違点1に関して、請求人は、相違点1を一致点と認定し、被請求人は、相違点1を相違点として認定している(前記 第2 2(2)ア(カ)を参照。)。
そして、スロットマシンへの電源投入時に、保持手段により保持されている遊技制御手段が制御を行うためのデータが電源遮断前のデータと一致するか否かの判定を行う記憶データ判定手段について、当該判定を行うことを前提とするものにおいて、遊技制御手段が制御を行うためのデータのうち、設定値について、当該設定値が適正か否かの判定を個別に行なわないことは、被請求人も主張するように(前記 第2 2(2)ア(キ)を参照。)、甲第2号証及び甲第3号証のいずれにも記載されていない。
また、本件発明1は、上記相違点1に係る本件発明1の構成を備えることにより、審判事件答弁書において被請求人が主張する「設定値を含むデータ異常に対して、電源投入時においては、遊技制御手段が制御を行うためのデータのうちの設定値が適正か否かの判定を個別に行わず、データ全体が正常であるか否かの判定を行い、ゲームの開始操作がなされる毎(1ゲーム毎)においては、必要最低限のデータの許容段階を示すデータに絞って適正か否かの判定を行うことで、設定値を含むデータ異常を判定して適正な設定値によりゲームを進行させることができるとともに電源投入時の処理の簡素化を図りつつ、1ゲーム毎ではゲームの入賞の決定に直接的に影響する設定値のみに絞って判定を行うので負荷を軽減することができる」(前記第2 2(2)ア(キ))という、甲第2発明及び甲第3号証に記載された技術事項から予測することのできない効果を奏するものと認められる。
したがって、甲第1発明において、上記相違点1に係る本件発明1が備える構成とすることは、甲第2号証?甲第10号証に記載された事項を考慮しても当業者が容易に想到し得たものではない。

イ 相違点2について
請求人は、相違点2を設定値判定手段に関する相違点1と第2の不能化手段に関する相違点3とに分離し、前者については、甲1発明に甲2発明を適用することにより、当業者が容易に想到し得たものである旨主張し(前記第2 1(2)ア(ア))、後者についても同様に、、甲1発明に甲2に記載された発明を適用することにより、当業者が容易に想到し得たものである旨主張する(前記第2 1(2)ア(ウ))。
これに対して、被請求人は、本件発明1の設定値判定手段に関する点は、甲第2号証には開示されていないこと(前記第2 2(2)ア(キ))、また、本件発明1の第2の不能化手段には、甲第2号証の「リセット操作」が対応するが、甲第2号証の「リセット操作」は、本件発明1のように不能化を解除する点まで考慮したものではない旨主張する(前記第2 2(2)ア(ケ))。

そこで検討するに、甲第2発明は、「スタートスイッチ(50)の操作時」に「RAM上の遊技情報値(出球率の設定値を含む)がROM上の適正範囲テーブルに定めた適正範囲内にあるか否かの判定を行う適正判定手段230」を備えるものであり、「スタートスイッチ(50)」がゲームの開始毎に操作されることは明らかであるから、上記相違点2に係る本願発明1のうち、設定値判定手段に関する構成を備えるものである。
また、甲第2発明の「適正変更手段240」は、「適正判定手段による判定の結果、RAM上の遊技情報値(出球率の設定値を含む)に適正範囲外のものがあったときに、遊技店の店員等による所定のリセット操作を待ってから、その適正範囲外の遊技情報値(出球率の設定値を含む)を適正範囲内の所定の数値に変更」するものである。
ここで、「遊技店の店員等による所定のリセット操作を待ってから」とは、遊技店の店員等によるリセット操作が行われるまで次の遊技処理に進まないこと、すなわち、遊技の進行を不能化することを意味する。
したがって、甲第2発明は、上記相違点2に係る本願発明1のうち、第2の不能化手段に関する構成を備えるものである。

そして、甲第1発明は、「電源投入時に、設定値に関するエラーの発生を検査することができるように」することを解決しようとする課題とするものであり(前記第4 1を参照。)。
また、甲第2発明は、「RAM上の遊技情報値に適正範囲外のものがあったときに」「すべての遊技情報値を初期化することにより生じる種々の不都合を回避するようにしたスロットマシンを提供する」ことを目的とするものである。そして、甲第2発明において、「遊技情報値」には、出球率の設定値が含まれることから、甲第2発明が、設定値が適正範囲外のものであるか否かを検査するものであることは、当業者にとって明らかである。
このように、甲第1発明と甲第2発明とは、遊技機という同一の技術分野に属する発明であると共に、設定値に関するエラーの発生を検査することができるという共通の課題を解決するものといえる。

ところで、甲第1発明は、チェックサム検査手段230により実行される判定結果が一致しない場合には、設定スイッチ40がOFF状態と判定されると、エラー処理手段240により、電源スイッチ30による主電源70が遮断されない限り、エラー処理を無限ループで繰り返すが、チェックサム検査手段230により実行される判定結果が一致する場合には、段階設定値が正常か否かを判定し、判定結果が正常で無い場合には段階設定値として段階設定値の初期値をセットするものである。
このように、甲第1発明では、電源投入時に、チェックサム検査手段230により実行される判定結果が一致しない場合におけるエラー解除処理と、チェックサム検査手段230により実行される判定結果が一致するが、段階設定値の判定結果が正常で無い場合におけるエラー解除処理とを異ならせるものである。
そして、甲第1号証には、段階設定値の判定結果が正常で無い場合に、段階設定値として初期値をセットする実施例しか記載されておらず、チェックサム検査手段230により実行される判定結果が一致しない場合と同様に、主電源70が遮断されない限り、当該処理を無限ループで繰り返すことは記載も示唆もされていない。
したがって、甲第1発明に甲第2発明を適用して、段階設定値の判定結果が正常で無い場合に、ゲームの進行を不能化する第2の不能化手段を備えることに、動機付けがない。
ゆえに、請求人が主張する周知の技術事項(甲第9号証?甲第10号証)を考慮したとしても、甲第1発明に甲第2発明を適用して、上記相違点2に係る本件発明1が備える構成とすることは、甲第3号証?甲第10号証に記載された事項を考慮しても当業者が容易に想到し得たことではない。

ウ 相違点3について
請求人は、相違点3について、甲1発明1の「事前決定手段」を甲第2号証に記載された事前決定手段によって置き替えることにより、当業者が容易に想到し得たものである旨主張し(前記第2 1(2)ア(イ))する。
これに対して、被請求人は、甲第2号証には、本件発明1の「事前決定手段」は開示されていない旨主張する(前記第2 2(2)ア(ク))。

そこで検討するに、甲第2発明は、「RAM上の遊技情報値(出球率の設定値を含む)が適正範囲内か否かの判定が遊技中に定期的に行われるようにして、適正な遊技情報値(出球率の設定値を含む)に基づいて遊技の制御が行われるようにした」ものであって、「出球率の設定値」は、適正範囲である「1?6」のうちのいずれかから設定され、「遊技制御手段100は、メダルの投入を条件に、スタートスイッチ50を操作すると、ハード乱数に基づいて、役に当選したかハズレかの抽選を行い、3個すべての回転リール40の回転が停止し、有効な入賞ライン上に所定の図柄が所定の配列で揃うと、入賞となり、入賞態様に応じた枚数のメダルを払い出」すものである。
すなわち、甲第2発明は、適正範囲内の適正な「出球率の設定値」に基づいて、役に当選したかハズレかの抽選を行い、入賞態様を決定するものであるから、上記相違点3に係る本件発明1の構成を備えるものである。
上記イにおいて検討したように、甲第1発明と甲第2発明とは、遊技機という同一の技術分野に属する発明であると共に、設定値に関するエラーの発生を検査することができるという共通の課題を解決するものである。
したがって、甲第1発明の事前決定手段に甲第2発明を適用して、上記相違点3に係る本件発明1が備える構成とすることは、当業者が容易になし得たものである。

エ 相違点4について
相違点4に関して、請求人は、「甲1発明1に、甲2に記載された前記第2の不能化手段に相当する手段を適用する際に、甲1発明の目的・課題に沿って、ゲームの公平性を図るために、甲1発明1に備えられている「設定操作手段の操作に基づいて許容設定手段により設定値が新たに設定されたことを条件に、ゲームの進行が不能化された状態を解除してゲームの進行を可能とする不能化解除手段」を前記第2の不能化手段の解除手段として採用することは、当業者であれば容易に想到し得たものである。」(前記第2 1(2)ア(エ)、審判請求書第36頁第17?23行を参照。)と主張し、また、「当業者であれば、甲1発明1に甲2に記載された第2の不能化手段を適用する際に、甲3に記載された技術手段を参酌すれば、第1の不能化された状態においても第2の不能化された状態においても、段階設定値を新たに設定させることを条件にゲームの進行が不能化された状態を解除するという共通したエラー解除方法を用いることに何ら困難性はない。」(前記第2 1(2)ア(エ)、審判請求書第37頁第6?10行を参照。)と主張する。
これに対して、被請求人は、甲第1号証ないし甲第3号証には、本件発明1の「第2の不能化解除手段」について開示されていない旨主張する(前記第2 2(2)ア(ケ))。

そこで検討するに、甲第2発明の「適正変更手段240」は、「適正判定手段による判定の結果、RAM上の遊技情報値(出球率の設定値を含む)に適正範囲外のものがあったとき」に、「適正範囲外の遊技情報値(出球率の設定値を含む)を適正範囲内の所定の数値に変更、すなわち、遊技情報値(出球率の設定値を含む)を初期化」するものである。
ここで、初期化に関して、甲2号証には、「「変更後の数値」は、例えば、適正範囲内の最小値にしてもよく、また、適正範囲内の中間値にしてもよく、また、適正範囲内の最大値にしてもよい。」(段落【0023】)こと、「本発明によれば、RAM(22)上の遊技情報値に適正範囲外のものがあると、少なくともその適正範囲外の遊技情報値が適正範囲内の所定の数値に変更される。このため、すべての遊技情報値が初期化されることにより生じる種々の不都合を回避できる」(段落【0024】)ことが記載されている。
これら甲第2号証の記載によると、甲第2発明は、上記イにおいて検討したように、本件発明1における「第2の不能化手段」を具備するものである。一方、RAM上の遊技情報値に適正範囲外のものがあり、リセット操作が行われた際に、RAMの初期化により、出球率の設定値が予め定められた「所定の数値」に自動的に変更されるものである。
したがって、甲第2発明は、本件発明1における従来技術(本件特許明細書の段落【0004】?【0006】)と同様の構成を有するものであり、本件発明1?3の課題を解決するものではない。
しかも、甲第2号証には、RAM上の遊技情報値に適正範囲外のものがあり、リセット操作が行われた際に、任意の出球率の設定値を設定操作手段の操作に基づいて設定することは記載も示唆もされていない。
したがって、甲第2発明は、上記相違点4に係る本件発明1の「第2の不能化手段によりゲームの進行が不能化された状態においても、設定操作手段の操作に基づいて許容段階設定手段により設定値が新たに設定されたことを条件に、ゲームの進行が不能化された状態を解除し、ゲームの進行を可能とする」構成を備えないものである。

ここで、相違点4に関する、審判請求書における請求人の上記「甲1発明1に、甲2に記載された前記第2の不能化手段に相当する手段を適用する際に、甲1発明の目的・課題に沿って、ゲームの公平性を図るために、甲1発明1に備えられている「設定操作手段の操作に基づいて許容設定手段により設定値が新たに設定されたことを条件に、ゲームの進行が不能化された状態を解除してゲームの進行を可能とする不能化解除手段」を前記第2の不能化手段の解除手段として採用することは、当業者であれば容易に想到し得たものである。」(前記第2 1(2)ア(エ)、審判請求書第36頁第17?23行を参照。)という主張について検討する。
上記イにおいて検討したように、そもそも、甲第1発明に、甲第2発明における「第2の不能化手段」に相当する手段を適用することに動機付けがない。
また、甲第1発明においては、「段階設定値」についての「判定結果が正常で無い場合には段階設定値の初期値をセット」するものであり、甲第2発明においても、遊技情報値に適正範囲外のものがあると、遊技情報値である「出球率の設定値」を初期化するものであって、共に、任意の「出球率の設定値」を操作に基づいて設定できるものではないことから、ゲームの公平性を図ることができるものではない。したがって、請求人が主張するゲームの公平性を図るという効果を奏することは、甲第1発明における「チェックサム検査手段230により実行される判定結果が一致しない場合」のエラー解除手段に対して該当するとしても、甲第1発明における「段階設定値」、及び、甲第2発明におけ「出球率の設定値」にエラーが発生した場合のエラー解除手段に対して該当するものではない。
さらに、請求人は、一方で、甲第1発明における「段階設定値」に、第2の不能化手段として部分的に甲第2発明の「出球率の設定値」に関する技術を適用することは、当業者が容易になし得たものであると主張し、他方で、甲第2発明の「出球率の設定値」に関する技術とされた甲第1発明における「段階設定値」に、さらに、甲第1発明における「段階設定値の初期値をセット」するエラー処理とは異なる、甲第1発明における「チェックサム」に関するエラー処理を適用することは、当業者が容易になし得たものであると主張するが、これらの適用に関して、十分な動機付けがなされているものと認めることはできない。
これらのことからみて、上記請求人の主張は採用できない。

また、相違点4に関する、審判請求書における請求人の上記「当業者であれば、甲1発明1に甲2に記載された第2の不能化手段を適用する際に、甲3に記載された技術手段を参酌すれば、第1の不能化された状態においても第2の不能化された状態においても、段階設定値を新たに設定させることを条件にゲームの進行が不能化された状態を解除するという共通したエラー解除方法を用いることに何ら困難性はない。」(前記第2 1(1)エ、審判請求書第37頁第6?10行を参照。)という主張について検討する。
甲第3号証には、遊技機の異常エラーの解除方法について記載されている。しかしながら、甲第3号証において発生するエラー(抽選時の遊技メダル枚数チェック時に遊技メダルの検出枚数が1?3枚以外の状態、割り込み処理において戻り番地の異常を検出した状態、または、入賞判定において入賞有効ライン上に当選図柄を除く図柄の組合せが表示された状態のいずれかの状態になったとき)は、本件発明1の「設定値判定手段」から「読み出した設定値が適正ではない」というエラーとは別種類のものである。
また、甲第3号証に記載された技術事項である、エラー解除処理として行われる、RAM初期化処理による出玉率の設定変更は、本件発明1における「ゲームの進行を不能化する第2の不能化手段」とは、異なる解除手段であり、ゲームの公平性を図るための手段でもない。したがって、甲第3号証に示された技術事項は、上記相違点4に係る本願発明1の「第2の不能化手段によりゲームの進行が不能化された状態においても、設定操作手段の操作に基づいて許容段階設定手段により設定値が新たに設定されたことを条件に、ゲームの進行が不能化された状態を解除し、ゲームの進行を可能とする」構成を備えないものである。
さらに、請求人が主張するように、甲第3号証から「ゲームの進行が不能化された状態を解除するという共通したエラー解除方法」を抽出することができたとしても、甲第1発明における「段階設定値の初期値をセット」するエラー処理に、甲第2発明の第2の不能化手段を適用する際に、第2の不能化解除手段として、甲第1発明における「チェックサム」に関するエラー解除手段を適用することができることの示唆までなされてはいない。

以上を踏まえると、甲第1発明に甲第2発明、あるいは、甲第1発明に甲第2発明及び甲3号証に示された技術事項を適用して、上記相違点4に係る本願発明1の構成に到達することは、当業者が容易に想到し得たものではない。

なお、合議体が審決において相違点1を認定した理由は、前述したとおり(前記第5 1(1))であるが、仮に、相違点1が相違点でないとした場合について検討する。
この場合においても、上記において検討したように、甲第1発明、甲第2発明、及び、甲第3号証に記載された技術事項に基づいて、少なくとも、甲第1発明において、上記相違点2に係る本件発明1の「設定値判定手段により読み出した設定値が適正ではないと判定されたときに、ゲームの進行を不能化する第2の不能化手段」を備えること、及び、上記相違点4に係る本件発明1の「第2の不能化手段によりゲームの進行が不能化された状態においても、設定操作手段の操作に基づいて許容段階設定手段により設定値が新たに設定されたことを条件に、ゲームの進行が不能化された状態を解除し、ゲームの進行を可能とする」構成を備えることは、当業者が容易になし得たものであるとはいえない。
したがって、甲第1発明に甲第2発明、あるいは、甲第1発明に甲第2発明及び甲3号証に記載された技術事項を適用して、上記相違点4に係る本件発明1の構成を備えることは、当業者が容易に想到し得たものではない。

オ 小括
以上のように、相違点3に係る本件発明1は、甲第1発明、甲第2発明に基づいて当業者が容易になし得たものであるが、相違点1、2、4に係る本件発明1は、甲第1発明、甲第2発明に基づいて、或いは、甲第1発明、甲第2発明、及び、甲第3号証に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものといえない。
さらに、甲第6号証、甲第9号証、及び、甲第10号証に記載された技術事項を考慮してみても、本件発明1は、甲第1発明、甲第2発明、及び、甲第6、9?10号証に記載された技術事項に基づいて、或いは、甲第1発明、甲第2発明、及び、甲第3、6、9?10号証に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものといえない。

2 本件発明2ないし本件発明3について(無効理由(2)(3)について)
本件発明2は、本件発明1に「前記スロットマシンで用いられる所定の電力の状態を監視し、電力供給が断たれたことに関わる電断条件が成立しているときに前記遊技制御手段に対して電断信号を出力する電断検出手段を備え、前記遊技制御手段は、前記電断検出手段から出力された前記電断信号の入力を契機に、前記データ記憶手段に記憶されている前記遊技制御手段が制御を行うためのデータに基づいて破壊診断用データを算出し、該算出した破壊診断用データを前記データ記憶手段の特定領域に格納する電断処理を実行する電断処理手段を含み、前記記憶データ判定手段は、前記スロットマシンへの電源投入時に、前記データ記憶手段の特定領域を除く記憶領域に記憶されている前記遊技制御手段が制御を行うためのデータに基づいて破壊診断用データを算出し、該算出した破壊診断用データと前記データ記憶手段の特定領域に記憶されている破壊診断用データとを比較し、該比較結果が一致したときに、前記保持手段により保持されている前記遊技制御手段が制御を行うためのデータが前記電源遮断前のデータと一致すると判定し、該比較結果が一致しなかったときに、前記保持手段により保持されている前記遊技制御手段が制御を行うためのデータが前記電源遮断前のデータと一致しないと判定する」という発明特定事項を付加したものである。
また、本件発明3は、本件発明1または本件発明2に「前記遊技制御手段は、前記スロットマシンへの電源投入時に、前記設定操作手段による前記許容段階の設定操作が有効となる設定操作有効状態へ移行させるための移行操作手段の操作がなされているか否かを判定する移行操作判定手段と、前記スロットマシンへの電源投入時において、前記移行操作判定手段により前記移行操作手段の操作がなされていると判定されたことを条件に、前記設定操作有効状態へ移行させる設定操作有効状態移行手段と、前記スロットマシンへの電源投入時において、前記移行操作判定手段により前記移行操作手段の操作がなされていると判定され、前記設定操作有効状態移行手段が前記設定操作有効状態に移行させることに伴って、前記データ記憶手段に記憶されているデータを初期化するデータ初期化手段と、を含み、前記移行操作判定手段は、前記スロットマシンへの電源投入時において、前記記憶データ判定手段が前記保持手段により保持されている前記遊技制御手段が制御を行うためのデータが前記電源遮断前のデータと一致するか否かを判定する前に、前記移行操作手段の操作がなされているか否かを判定し、前記記憶データ判定手段は、前記移行操作判定手段により前記移行操作手段の操作がなされていないと判定されたときに、前記保持手段により保持されている前記遊技制御手段が制御を行うためのデータが前記電源遮断前のデータと一致するか否かを判定する」という発明特定事項を付加したものである。

そうすると、本件発明1が、上記1において検討したように当業者が容易に発明をすることができたものともいえないのであるから、本件発明1に上記各発明特定事項を付加した本件発明2及び本件発明3も、同様に、甲第1発明、甲第2発明、甲第4発明、及び、甲第5発明に基づいて、或いは、甲第1発明、甲第2発明、甲第3号証に記載された技術事項、甲第4発明、及び、甲第5発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものといえない。
さらに、甲第6号証、甲第9号証、及び、甲第10号証に示された技術事項を考慮してみても、本件発明2及び3は、甲第1発明、甲第2発明、甲第4発明、及び、甲第5発明、及び、甲第6、9?10号証に記載された技術事項に基づいて、或いは、甲第1発明、甲第2発明、甲第4発明、甲第5発明、及び、及び、甲第3、6、9?10号証に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものといえない。

第6 むすび
以上のとおり、本件発明1ないし3に係る特許については、請求人の主張する理由及び提示した証拠方法によっては無効とすることはできない。

審判に関する費用については,特許法第169条第2項の規定において準用する民事訴訟法第61条の規定により,全額を請求人が負担すべきものとする。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-05-27 
結審通知日 2015-05-29 
審決日 2015-06-11 
出願番号 特願2005-13408(P2005-13408)
審決分類 P 1 113・ 121- Y (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小林 英司  
特許庁審判長 本郷 徹
特許庁審判官 瀬津 太朗
長崎 洋一
登録日 2008-04-25 
登録番号 特許第4114938号(P4114938)
発明の名称 スロットマシン  
代理人 渡辺 敏章  
代理人 重信 和男  
代理人 関谷 三男  
代理人 溝渕 良一  
代理人 平木 祐輔  
代理人 今村 健一  
代理人 堅田 多恵子  
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