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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  G06Q
審判 全部申し立て 1項1号公知  G06Q
審判 全部申し立て 1項2号公然実施  G06Q
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  G06Q
管理番号 1315672
異議申立番号 異議2016-700086  
総通号数 199 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2016-07-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-02-03 
確定日 2016-06-09 
異議申立件数
事件の表示 特許第5758615号発明「常時表示型医療情報表示システム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5758615号の請求項1ないし5に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第5758615号の請求項1?5に係る特許についての出願は,平成22年12月1日に特許出願され,平成27年6月12日にその特許権の設定登録がされ,その後,その特許に対し,特許異議申立人株式会社アイスライン及びアルファテック・ソリューションズ株式会社により特許異議の申立てがされたものである。

第2 本件発明
特許第5758615号の請求項1?5の特許に係る発明は,それぞれ,その特許請求の範囲の請求項1?5に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「 【請求項1】
患者のベッドサイドに配置される少なくとも1台のベッドサイド表示装置と,前記ベッドサイド表示装置と接続される表示用端末と,前記表示用端末とネットワークを介して接続される管理端末と,前記管理端末と接続される記憶装置とを備える医療情報表示システムであって;前記表示用端末は,利用者のID番号を認識する手段と,認識したID番号を前記管理端末に送信する手段と,前記管理端末から送信される医療情報を受信する手段と,受信した医療情報を前記ベッドサイド表示装置に表示する手段を備え;前記記憶装置は,管理対象としている患者についての医療情報を記憶しており;前記管理端末は,前記表示用端末から送信されるID番号を受信する手段と,受信したID番号に対応する患者について,前記記憶装置が記憶している医療情報の中から,疾患の種類や病状,四肢の自由度などに応じて,患者の移動,姿勢,排泄,食事,又は飲み物に課せられた条件又は制限に関するピクトグラム化された医療情報であって,常時表示可能とされている項目の医療情報を選択する手段と,選択した医療情報を前記表示用端末に送信する手段を備えており;さらに,前記管理端末は,管理対象としている1又は複数の患者について,前記記憶装置が記憶している医療情報の中から,患者の移動,姿勢,排泄,食事,又は飲み物に課せられた条件又は制限に関するピクトグラム化され,常時表示可能とされている項目の前記医療情報を選択して自身の表示装置に表示させる手段と,表示した前記医療情報を外部からの入力に基づいて変更する手段と,変更した医療情報を,その変更履歴とともに,前記記憶装置に記憶させる手段を備えている常時表示型医療情報表示システム。
【請求項2】
前記記憶装置は,記憶している医療情報の各項目と,常時表示の可否とを対応づける対応表を記憶しており;前記管理端末は,前記記憶装置が記憶している前記対応表を自身の表示装置に表示させる手段と,表示した前記対応表を外部からの入力に基づいて変更する手段と,変更した対応表をその変更履歴とともに前記記憶装置に記憶させる手段を備えている請求項1記載の常時表示型医療情報表示システム。
【請求項3】
前記記憶装置が,管理対象としている患者又はその関係者宛の伝言を記憶する領域を有しており;記管理端末が,前記表示用端末から利用者のID番号を受信したとき,受信したID番号に対応する患者又はその関係者宛の伝言の有無を確認する手段と,伝言がある場合には伝言がある旨を伝言有り情報として前記表示用端末に送信する手段と,前記表示用端末から伝言開示要求を受信すると前記記憶装置に記憶されている伝言を前記表示用端末に送信する手段を備え;前記表示用端末は,伝言有り情報を前記管理端末から受信する手段と,受信した伝言有り情報をベッドサイド表示装置に表示する手段と,伝言開示要求の入力を受け付ける手段と,入力された伝言開示要求を前記管理端末に送信する手段と,前記管理端末から伝言を受信するとその伝言を前記ベッドサイド表示装置に表示する手段を備えている請求項1又は2に記載の常時表示型医療情報表示システム。
【請求項4】
前記管理端末は,前記表示用端末から受信したID番号が医療スタッフのものである場合には認証情報の入力を求める信号を前記表示用端末に送信する手段と,前記表示用端末から送信される認証情報を受信する手段,受信したID番号と認証情報とに基づいて前記表示用端末の利用者が登録された正規の医療スタッフであることを認証する手段と,認証が正規に為された場合には,管理対象としている1又は複数の患者について,前記記憶装置が記憶している医療情報の中から,疾患の種類や病状,四肢の自由度などに応じて,患者の移動,姿勢,排泄,食事,又は飲み物に課せられた条件又は制限に関するピクトグラム化され,常時表示可能とされている項目の医療情報を選択して,前記表示用端末に送信する手段と,変更された医療情報を前記表示用端末から受信する手段と,受信した医療情報を,その変更履歴とともに,前記記憶装置に記憶させる手段を備え;前記表示用端末は,認証情報の入力を受け付ける手段と,入力された認証情報を前記管理端末に送信する手段と,前記管理端末から,1又は複数の患者について,前記ピクトグラム化され,常時表示可能とされている項目の医療情報を受信する手段と,受信したピクトグラム化された医療情報を前記ベッドサイド表示装置に表示する手段と,表示した前記医療情報を外部からの入力に基づいて変更する手段と,変更された医療情報を前記管理端末に送信する手段を備えている請求項1?3のいずれかに記載の常時表示型医療情報表示システム。
【請求項5】
コンピュータを,請求項1?4のいずれかに記載の常時表示型医療情報表示システムにおける前記表示用端末,又は前記管理端末として機能させるためのプログラム。」

第3 申立理由の概要
特許異議申立人株式会社アイスラインは,証拠として,株式会社アイスライン社「AICON(アイコン)」リーフレット(以下「証拠1」という。),「国際モダンホスピタルショウ2010」に株式会社ヴァイタス社がベッドサイド情報端末システムである医療看護支援ピクトグラムを出展した事実,これをメディカルアイ社が取材してそのホームページに掲載して公表した事実を証明する証明願(以下「証拠2」という。),株式会社ヴァイタスおよび株式会社アイスラインの「医療看護支援ピクトグラム」リーフレット(以下「証拠3」という。),株式会社ヴァイタスの岸慶騎が株式会社アイスラインの島澤あてに送信した電子メールを印刷したもの(以下「証拠4」という。),株式会社ヴァイタスのホームページを印刷したもの(以下「証拠5」という。),SEC青山にあてた株式会社アイスライン小塚美紀からのメールとメールに添付したファイルを印刷したもの(以下「証拠6」という。),株式会社ヴァイタスおよび株式会社アイスラインの「AICON(アイコン)」リーフレット(以下「証拠7」という。)を提出し,請求項1に係る特許は特許法第29条第1項第1号,第2号または第3号の規定に違反してなされたものであり,また,請求項1?5に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるから,請求項1?5に係る特許を取り消すべきものである旨主張している。
また,特許異議申立人アルファテック・ソリューションズ株式会社は,主たる証拠として特開2000-285181号公報(以下「証拠8」という。)及び従たる証拠として国際公開第2004/025530号(以下「証拠9」という。),AICONの紹介資料(「ベッドサイド情報端末 AICON ご紹介資料 株式会社アイスライン」という表題が付された資料(以下「証拠10」という。),特開2002-073549号公報(以下「証拠11」という。),特開平11-184956号公報(以下「証拠12」という。)を提出し,請求項1?5に係る特許は特許法第29条第2項の規定に 違反してなされたものであるから,請求項1?5に係る特許を取り消すべきものである旨主 張している。

第4 証拠の採否とその記載について
1.証拠1(株式会社アイスライン社「AICON(アイコン)」リーフレット)について
発行日の記載がなく,また,その他公知日を証明するものも提出されておらず,証拠として採用できない。
なお,当該リーフレットには,「この印刷物の内容は2010年7月現在のものです。内容は予告なく変更する場合がありますので予めご了承ください。」との記載があるが,これは印刷物の内容が2010年7月の時点のものであって,予告なく変更される場合があるとの注意書きを記載したにすぎず,発行日を示すものとはいえない。

2.証拠2(「国際モダンホスピタルショウ2010」に株式会社ヴァイタス社がベッドサイド情報端末システムである医療看護支援ピクトグラムを出展した事実,これをメディカルアイ社が取材してそのホームページに掲載して公表した事実を証明する証明願)について
株式会社メディカルアイの代表取締役黒沢次郎により,2010年7月14日乃至16日に開催された「国際モダンホスピタルショウ2010」で株式会社ヴァイタスが出展したベッドサイド情報端末システムである医療看護支援ピクトグラムを取材し,ホームページに掲載したことの証明がなされており,ホームページでの掲載日から2010年7月15日にインターネットにより公知となったものと認められる。
なお,インターネット上のホームページにより公知となった発明は以下のものである。
「ピクトグラムと呼ばれる患者情報を,常時ベッドサイドに併設したサブモニタで表示,参照することが可能なベッドサイド端末。簡単なタッチで情報を見ることが可能で,表示される患者情報は,医療情報システムとの連携により情報の更新が行われると自動で反映される機能を持っており,患者氏名,ID,入院日,手術日,バイタル情報,感染症,危険度表示,注意喚起項目や注意喚起サインなどが表示される。患者,家族,そして医療従事者間のコミュニケーションツールとして非常に有用で,円滑な療養生活支援を実現する。」

3.証拠3(株式会社ヴァイタスおよび株式会社アイスラインの「医療看護支援ピクトグラム」リーフレット)について
発行日の記載がなく,また,その他公知日を証明するものも提出されておらず,証拠として採用できない。
なお,当該リーフレットには,「この印刷物の内容は2010年7月現在のものです。内容は予告なく変更する場合がありますので予めご了承ください。」との記載があるが,これは印刷物の内容が2010年7月の時点のものであって,予告なく変更される場合があるとの注意書きを記載したにすぎず,発行日を示すものとはいえない。

4.証拠4(株式会社ヴァイタスの岸慶騎が株式会社アイスラインの島澤あてに送信した電子メールを印刷したもの)について
異議申立人は「甲第4号証は,国際モダンホスピタルショウ2010の閉会後の2010年7月27日に,ヴァイタス社の岸慶騎がアイスライン社の島澤あてに,また,ヴァイタス社の野間口取締役と曽根社長をCC扱いにして送信した電子メールの内容で,モダンホスピタルショウの結果にお礼を述べている。そして,この電子メールの中で,ヴァイタス社の岸慶騎は,「御社ピクトグラムがその後も非常に好評で・・・」と述べており,本件発明に係る医療看護支援ピクトグラムのシステムがヴァイタス社の技術ではなく,アイスライン社の技術であることを証明している。」と主張しているが,当該電子メールには技術事項を特定する記載はないから,採用することはできない。

5.証拠5(株式会社ヴァイタスのホームページを印刷したもの)について
株式会社ヴァイタスのホームページに,『「国際モダンホスピタルショウ2010」ご来場のお礼』と題して掲載されたものであり,上記2で示した証拠2が本件出願前に公知であったことを立証するものである。

6.証拠6(SEC青山にあてた株式会社アイスライン小塚美紀からのメールとメールに添付したファイルを印刷したもの)について
添付ファイルは,『ベッドサイド情報端末,「AICON(アイコン)」ご紹介資料,株式会社アイスライン』と記載された表紙からなる資料であるが,その内容には「6.システム導入費用概算」との白紙の頁も含まれていることからも,当該資料はいわゆる提案書であり,一般に提案書は顧客に合わせて変更し提示するものであることから,刊行物としての性質を有しないものである。(東京高裁平成13年(行ケ)第466号)
また,当該資料は電子メールにより特定個人宛に送付されたものであり,受信人のSEC青山に対して当該資料の内容について守秘義務上の取り決めがあったのか否かは不明であり,当該資料の内容が電子メールにより添付されて送付されたことにより直ちに公知となったとはいえない。
よって,当該証拠は採用できない。

7.証拠7(株式会社ヴァイタスおよび株式会社アイスラインの「AICON(アイコン)」リーフレット)について
発行日の記載がなく,また,その他公知日を証明するものも提出されておらず,証拠として採用できない。
なお,当該リーフレットには,「この印刷物の内容は2010年10月現在のものです。内容は予告なく変更する場合がありますので予めご了承ください。」との記載があるが,これは印刷物の内容が2010年10月の時点のものであって,予告なく変更される場合があるとの注意書きを記載したにすぎず,発行日を示すものとはいえない。

8.証拠8(特開2000-285181号公報)について
証拠8には,以下の発明が記載されている。
「入院患者のベッドサイドに配置されるベッドサイド端末10のTFT表示装置12と,TFT表示装置12と接続されるベッドサイド端末本体11と,ベッドサイド端末本体11と通信網30を介して接続されるサーバ20と,サーバ20と接続される病院医療情報データベース41とを備える,ベッドサイド端末10に医療情報が表示されるベッドサイド情報システムであって,
ベッドサイド端末本体11は,患者IDを認識し,この患者IDをサーバ20に送信し,サーバ20から送信される医療情報を受信し,受信した検索結果をTFT表示装置12に表示し,
病院医療情報データベース41は,患者の医療情報を記憶し,
サーバ20では,ベッドサイド端末本体11から送信される患者IDを受信し,受信した患者IDに対応する患者についての患者別情報の場合の検索結果であって,病院医療情報データベース41が記憶している医療情報の中から,入院患者のアクセスが許される医療情報を選択し,当該選択した医療情報をTFT表示装置12に送信し,
サーバ20では,医療スタッフの操作により,メニュー情報の内容を入院患者の容態に応じて変更することができる,
ベッドサイド情報システム。」

9.証拠9(国際公開第2004/025530号)について
証拠9には,以下の発明が記載されている。
「医療情報に追加,修正あるいは加工する場合に,管理サーバ1bに変更履歴を記憶する。」

10.証拠10(AICONの紹介資料(「ベッドサイド情報端末 AICON ご紹介資料 株式会社アイスライン」という表題が付された資料)について
当該資料は,SEC青山にあてた株式会社アイスライン小塚美紀からの2010年8月3日を送信日とする電子メールに添付された資料であり,その内容には「6.システム導入費用概算」との白紙の頁も含まれていることからも,当該資料はいわゆる提案書であり,一般に提案書は顧客に合わせて変更し提示するものであることから,刊行物としての性質を有しないものである。(東京高裁平成13年(行ケ)第466号)
また,甲第8号証の1によると,株式会社エスイーシーの青山一広が,上記2010年8月3日を送信日とする電子メールにより当該資料を受信したこと,また,当該資料について株式会社エスイーシーと株式会社アイスラインとの間に,守秘義務上の取り決めはないことを証明していることから,当該資料の内容は2010年8月3日に公知となったものと認められる。
そして,当該資料により公知となった発明は以下のものである。
「ベッドサイドに配置されるタッチパネルミニ端末のモニタに,患者の移動,姿勢,排泄,食事及び飲み物に課せられた条件事項又は制限事項を示すピクトグラムを表示する。タッチパネルミニ端末は,ベッドサイドにおいてピクトグラムを常時表示して設置される。ナースステーション端末では,自身の表示装置に,患者のピクトグラムの表示を行い,ピクトグラムに対応したチェックボックスをチェックしたりすることで,その表示の変更を行うことができる。タッチパネルミニ端末には,患者に対する伝言が表示される。」

11.証拠11(特開2002-073549号公報)について
証拠11には,以下の発明が記載されている。
「サーバー2から入院患者のベッドサイドに配置される受信装置5に,患者宛のメッセージが送信され,有効と判断されたメッセージがモニタ等の情報伝達手段8に表示される。」

12.証拠12(特開平11-184956号公報)について
証拠12には,以下の発明が記載されている。
「患者端末27の利用者が医師であることが照合できた場合には,患者端末27の画面HG6において,患者の医療情報の読み書きを行うことができる。」

第5 判断
1.特許法第29条第1項第1号,第2号または第3号について
(1)対比・判断
上記「第4」で示したように,特許異議申立人株式会社アイスラインが提出した証拠1?7のうち採用される証拠2により公知となった発明は,
「ピクトグラムと呼ばれる患者情報を,常時ベッドサイドに併設したサブモニタで表示,参照することが可能なベッドサイド端末。簡単なタッチで情報を見ることが可能で,表示される患者情報は,医療情報システムとの連携により情報の更新が行われると自動で反映される機能を持っており,患者氏名,ID,入院日,手術日,バイタル情報,感染症,危険度表示,注意喚起項目や注意喚起サインなどが表示される。患者,家族,そして医療従事者間のコミュニケーションツールとして非常に有用で,円滑な療養生活支援を実現する。」
である。
そこで,本件の請求項1に係る発明と上記証拠2により公知となった発明を比較すると,証拠2により公知となった発明は,請求項1に係る発明における「前記記憶装置が記憶している医療情報の中から,疾患の種類や病状,四肢の自由度などに応じて,患者の移動,姿勢,排泄,食事,又は飲み物に課せられた条件又は制限に関するピクトグラム化された医療情報であって,常時表示可能とされている項目の医療情報を選択する手段」,及び,「前記管理端末は,管理対象としている1又は複数の患者について,前記記憶装置が記憶している医療情報の中から,患者の移動,姿勢,排泄,食事,又は飲み物に課せられた条件又は制限に関するピクトグラム化され,常時表示可能とされている項目の前記医療情報を選択して自身の表示装置に表示させる手段と,表示した前記医療情報を外部からの入力に基づいて変更する手段と,変更した医療情報を,その変更履歴とともに,前記記憶装置に記憶させる手段」を備えていないことは明らかである。
また,仮に,採用されなかった証拠1,3,4,6,7について検討しても,上記請求項1の特に下線の構成が開示されていないことは明らかである。
したがって,本件請求項1に係る発明は,証拠1?7によって,公然知られた発明でも,公然実施された発明でも,頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるともいえないものである。
(2)まとめ
よって,特許異議申立人株式会社アイスラインによる特許異議申立ての上記理由及び証拠によっては,請求項1に係る特許を取り消すことはできない。

2.特許法第29条第2項について
(1)特許異議申立人株式会社アイスラインの申立てについて
ア.対比・判断
(ア)請求項1に係る発明について
上記「第5 1.(1)」で示したように,採用される証拠2により公知となった発明には,請求項1に係る発明における上記構成を備えていないものであるから,当該発明から当業者が容易に想到し得たものではない。
また,仮に,採用されなかった証拠1,3,4,6,7について検討しても,請求項1に係る発明における上記構成が開示されていないから,提出された証拠1?7を総合したとしても当業者が容易に想到し得たものということはできない。

(イ)請求項2?5に係る発明について
請求項2?4に係る発明は,請求項1に係る発明を更に減縮したものであり,また,請求項5に係る発明は,請求項1?4のシステムをプログラムとして請求するものであるから,上記請求項1に係る発明についての判断と同様の理由により,証拠2,または,仮に証拠1?7を総合したとしても,当業者が容易に想到し得たものではない。

イ.まとめ
よって,特許異議申立人株式会社アイスラインによる特許異議申立ての上記理由及び証拠によっては,請求項1?5に係る特許を取り消すことはできない。

(2)特許異議申立人アルファテック・ソリューションズ株式会社の申立てについて
ア.対比・判断
(ア)請求項1に係る発明について
請求項1に係る発明と証拠8の発明とを対比すると,以下の点で相違する。
[相違点1]
請求項1に係る発明では「前記記憶装置が記憶している医療情報の中から,疾患の種類や病状,四肢の自由度などに応じて,患者の移動,姿勢,排泄,食事,又は飲み物に課せられた条件又は制限に関するピクトグラム化された医療情報であって,常時表示可能とされている項目の医療情報を選択する手段」を備えているのに対し,証拠8の発明では「サーバ20では,ベッドサイド端末本体11から送信される患者IDを受信し,受信した患者IDに対応する患者についての患者別情報の場合の検索結果であって,病院医療情報データベース41が記憶している医療情報の中から,入院患者のアクセスが許される医療情報を選択し,当該選択した医療情報をTFT表示装置12に送信」するものである点。

[相違点2]
請求項1に係る発明では「前記管理端末は,管理対象としている1又は複数の患者について,前記記憶装置が記憶している医療情報の中から,患者の移動,姿勢,排泄,食事,又は飲み物に課せられた条件又は制限に関するピクトグラム化され,常時表示可能とされている項目の前記医療情報を選択して自身の表示装置に表示させる手段と,表示した前記医療情報を外部からの入力に基づいて変更する手段」を備えているのに対し,証拠8の発明では「サーバ20では,医療スタッフの操作により,メニュー情報の内容を入院患者の容態に応じて変更することができる」ものである点。

[相違点3]
請求項1に係る発明では「変更した医療情報を,その変更履歴とともに,前記記憶装置に記憶させる手段」を備えているのに対し,証拠8の発明ではそのようになっていない点。

そこで,上記相違点について検討する。
(相違点1について)
請求項1に係る発明の「常時表示可能とされている項目の医療情報を選択する」とは,常時表示可能とされている項目と常時表示不可能とされている項目が存在し,そのうち常時表示可能とされている項目の医療情報を選択するものであるのに対し,証拠8の発明の「入院患者のアクセスが許される医療情報を選択し」は,医療情報についてのアクセス権限による選択であり,両者は全く異なる技術思想である。
そして,証拠10には「ベッドサイドに配置されるタッチパネルミニ端末のモニタに,患者の移動,姿勢,排泄,食事及び飲み物に課せられた条件事項又は制限事項を示すピクトグラムを表示する。タッチパネルミニ端末は,ベッドサイドにおいてピクトグラムを常時表示して設置される。」ことが示されてはいるが,請求項1の上記「常時表示可能とされている項目の医療情報を選択する」ことについてはなんら示されていない。
したがって,証拠10によっても相違点1に係る構成が容易に想到し得たものであるとはいえない。

(相違点2について)
証拠10によれば「ナースステーション端末では,自身の表示装置に,患者のピクトグラムの表示を行い,ピクトグラムに対応したチェックボックスをチェックしたりすることで,その表示の変更を行うことができる。」ことは公知である。
しかしながら,上記「相違点1について」で示したのと同様に,上記相違点2における「常時表示可能とされている項目の前記医療情報を選択して自身の表示装置に表示させる」構成については,上記証拠10になんら示されていないことは明らかである。
したがって,証拠10によっても相違点2に係る構成が容易に想到し得たものであるとはいえない。

(相違点3について)
証拠9には「医療情報に追加,修正あるいは加工する場合に,管理サーバ1bに変更履歴を記憶する。」ことが示されている。
しかしながら,証拠9における変更履歴を記憶する医療情報とは,証拠9の第12頁第1行乃至第7行に記載されているように,臨床検査管理システムデータ,放射線科情報システムデータ,病院情報システムデータ,電子カルテシステムデータ,症例管理システム,薬歴管理システムデータ,医薬品文書データ,介護保険システムデータ及び医療関連文献データであって,改竄されることを防止する必要がある医療情報である。
これに対し,証拠8の発明における変更対象となる「メニュー情報」はそもそも医療情報ではないし,また,一般に改竄防止のために変更履歴を記憶する必要がある情報であるとも考えられないことから,証拠8の発明に,証拠9の発明を適用する動機づけがあるとはいえない。
したがって,証拠9によっても相違点3に係る構成が容易に想到し得たものであるとはいえない。

以上のことから,請求項1に係る発明は,証拠8?10の発明から当業者が容易に想到し得たものとはいえないものである。

(イ)請求項2?5に係る発明について
請求項2?4に係る発明は,請求項1に係る発明を更に減縮したものであり,また,請求項5に係る発明は,請求項1?4のシステムをプログラムとして請求するものであるから,上記請求項1に係る発明についての判断と同様の理由により,証拠8?10に記載の発明から当業者が容易に想到し得たものではない。

イ.まとめ
よって,特許異議申立人アルファテック・ソリューションズ株式会社による特許異議申立ての上記理由及び証拠によっては,請求項1?5に係る特許を取り消すことはできない。

第6 むすび
したがって,特許異議申立ての理由及び証拠によっては,請求項1?5に係る特許を取り消すことはできない。
また,他に請求項1?5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2016-06-01 
出願番号 特願2010-268235(P2010-268235)
審決分類 P 1 651・ 112- Y (G06Q)
P 1 651・ 113- Y (G06Q)
P 1 651・ 121- Y (G06Q)
P 1 651・ 111- Y (G06Q)
最終処分 維持  
前審関与審査官 阿部 潤  
特許庁審判長 手島 聖治
特許庁審判官 野崎 大進
金子 幸一
登録日 2015-06-12 
登録番号 特許第5758615号(P5758615)
権利者 株式会社ヴァイタス
発明の名称 常時表示型医療情報表示システム  
代理人 佐藤 高弘  
代理人 柳下 彰彦  
代理人 須磨 光夫  
代理人 石橋 佳之夫  
代理人 鮫島 正洋  
代理人 ▲高▼野 芳徳  
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