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審決分類 |
審判 一部申し立て 1項3号刊行物記載 H01F 審判 一部申し立て 2項進歩性 H01F 審判 一部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 H01F 審判 一部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備 H01F |
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管理番号 | 1315674 |
異議申立番号 | 異議2015-700336 |
総通号数 | 199 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2016-07-29 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2015-12-22 |
確定日 | 2016-06-07 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第5739093号発明「希土類磁石とその製造方法および磁石複合部材」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第5739093号の請求項9、10、1ないし4に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本件特許第5739093号に係る出願は、平成21年9月10日に出願され、平成27年5月1日にその発明について特許の設定登録がなされたものであって、手続の概要は以下のとおりである。 特許異議申立(請求項1ないし4、9、10 松崎隆) :平成27年12月22日 取消理由通知 :平成28年 2月18日(起案日) 意見書 :平成28年 4月22日 第2 通知した取消理由の概要 1.本件特許の下記の請求項に係る発明は、本件特許の出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。 記 請求項9、10に対して刊行物1、2 刊行物1:特開2002-327255号公報 刊行物2:特開2006-41507号公報 2.本件特許は、明細書又は特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1、2号及び第4項第1号に規定する要件を満たしていない。 (1)請求項1、10の「粒径が1?500nm」について Nd-Fe-B系磁性合金のうち代表的なNd2Fe14B合金の結晶格子は1.22nmであって、これよりも小さい粒径を含んでいる。同請求項に係る発明は、実施できないものを含んでおり、明確であるとはいえない(第6項第2号)。また、発明の詳細な説明は、当業者が同請求項に係る発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるともいえない(第4項第1号)。同請求項を引用する請求項2ないし4、9についても同様である。 (2)請求項10の「粒界部の幅が1?10nm」及び「被包」について 明細書に「粒界部の幅」の定義がなく、同請求項に係る発明は、明確であるとはいえない(第6項第2号)。 また、粒界部の幅の下限値1nmでは、数原子程度の幅となり、「包む」状態にあるか疑わしく、同請求項に係る発明は、明確であるとはいえない(第6項第2号)。 (3)請求項1の「希土類磁石の製造方法」について 発明の詳細な説明には、希土類磁石の製造方法について、薄膜磁石の場合しか具体的な記載がなく、薄膜磁石のみならずいわゆるバルク磁石の製造方法をも含むと解される同請求項に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものであるとはいえない(第6項第1号)。また、発明の詳細な説明は、当業者が同請求項に係る発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるともいえない(第4項第1号)。同請求項を引用する請求項2ないし4、9についても同様である。 (4)請求項10の「希土類磁石」について (3)と同様に、同請求項に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものであるとはいえない(第6項第1号)。また、発明の詳細な説明は、当業者が同請求項に係る発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるともいえない(第4項第1号)。 第3 通知した取消理由1について 1.本件特許発明 本件特許の請求項9、10に係る発明(以下、「本件特許発明9」、「本件特許発明10」という。)は、特許請求の範囲の請求項9、10に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。 「 【請求項1】 ネオジム(Nd)と鉄(Fe)とホウ素(B)の合金であるNd-Fe-B系磁性合金の表面に該磁性合金の共晶点よりも低温で液相を生じ得る浸透材を付着させる付着工程と、 該付着工程後に加熱して該磁性合金の結晶粒の粒界へ該浸透材を浸透拡散させる浸透工程とを備え、 粒径が1?500nmである該結晶粒が、銅(Cu)とNdの合金であるNd-Cu合金からなる該浸透材の構成元素で被包されてなる希土類磁石が得られることを特徴とする希土類磁石の製造方法。 【請求項2】 前記付着工程は、前記浸透材からなる単一原料または組合わせた全体組成が該浸透材の組成となる複数原料を、ターゲットとしてスパッタリングするスパッタリング工程である請求項1に記載の希土類磁石の製造方法。 【請求項3】 前記磁性合金は、全体を100原子%としたときに8?30原子%のNdと4?20原子%のBと残部であるFeとからなる請求項1または2に記載の希土類磁石の製造方法。 【請求項4】 前記浸透工程の加熱温度は、350?625℃である請求項1?3のいずれかに記載の希土類磁石の製造方法。 【請求項5】 さらに、基材の表面上に前記磁性合金からなる磁性層を形成する磁性層形成工程を備え、 前記付着工程は、該磁性層上に前記浸透材からなる浸透層を形成する浸透層形成工程である請求項1?4のいずれかに記載の希土類磁石の製造方法。 【請求項6】 前記磁性層の厚さ(t1)に対する前記浸透層の厚さ(t2)の層厚比(t2/t1)は0.1以下である請求項5に記載の希土類磁石の製造方法。 【請求項7】 さらに、前記磁性層形成工程前に、前記基材の表面上に前記磁性層の配向結晶面と整合的な結晶構造を有する下地層を形成する下地層形成工程を備える請求項5または6に記載の希土類磁石の製造方法。 【請求項8】 さらに、前記浸透工程後に、前記磁性層の酸化を抑制する保護層を形成する保護層形成工程を備える請求項5?7のいずれかに記載の希土類磁石の製造方法。 【請求項9】 請求項1?8のいずれかに記載の製造方法により得られたことを特徴とする希土類磁石。 【請求項10】 NdとFeとBの合金であるNd-Fe-B系磁性合金からなり粒径が1?500nmである結晶粒と、 該該磁性合金の共晶点よりも低温で液相を生じ得る、CuとNdの合金であるNd-Cu合金からなる浸透材の構成元素によって該結晶粒を被包する粒界部とからなり、 粒界部の幅が1?10nmであることを特徴とする希土類磁石。」 2.刊行物 刊行物1(甲第2号証)には、「焼結磁石」について、図面と共に、以下の記載がある。(下線は当審で付加した。) (1)「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、Nd_(2)Fe_(14)B系組成をもつ希土類焼結磁石に関する。」 (2)「【0004】 【発明が解決しようとする課題】本発明は、最大エネルギー積の高いNd_(2)Fe_(14)B系焼結磁石を提供することを目的とする。」 (3)「【0005】 【課題を解決するための手段】このような目的は、下記(1)?(7)の本発明により達成される。 (1) R(Rは、希土類元素の少なくとも1種であり、Ndおよび/またはPrが必須元素として含まれる)、Cu、FeおよびBを含有し、R含有量が11.7?13.5モル%、Cu含有量が0.01?0.1モル%、B含有量が5?7モル%、残部が実質的にFeであり、最大エネルギー積が400kJ/m^(3)以上である焼結磁石。 (2) R含有量が12.2?13.5モル%である上記(1)の焼結磁石。 (3) Feの一部がCoで置換され、Co含有量が1.6モル%以下である上記(1)または(2)の焼結磁石。 (4) Feの一部がCoで置換され、Co含有量が0.8モル%以下である上記(1)または(2)の焼結磁石。 (5) 相対密度が99.0%以上である上記(1)?(4)のいずれかの焼結磁石。 (6) 酸素含有量が3000ppm以下である上記(1)?(5)のいずれかの焼結磁石。 (7) 隣り合う2つの結晶粒の境界に存在する2結晶粒界と、隣り合う3以上の結晶粒の境界に存在する多結晶粒界とについて組成分析を行い、前記各結晶粒界において、元素R量に対するCu量の比Cu/Rを求め、2結晶粒界におけるCu/RをC_(2)で表し、多結晶粒界におけるCu/RをC_(M)で表したとき、 C_(M)/C_(2)≦0.7 である上記(1)?(6)のいずれかの焼結磁石。」 (4)「【0014】R含有量の少ない焼結磁石を製造する場合、三重点等の多結晶粒界には、R含有量の多い磁石と同様にRリッチ相が十分に形成されるが、薄い2結晶粒界にRリッチ相を均一に形成することは困難である。そのため、高い保磁力を得ることが難しい。しかし、Cuを添加した場合には、Cuに富む(R-Cu)リッチ相が形成され、この(R-Cu)リッチ相は、R_(2)Fe_(14)B結晶粒を濡らしやすいため、2結晶粒界に優先的に析出し、多結晶粒界には析出しにくいと考えられる。その結果、本発明の磁石では、2結晶粒界に均一に(R-Cu)リッチ相が形成され、これによってR_(2)Fe_(14)B結晶粒が被覆されるため、保磁力が顕著に向上し、かつ、保磁力のばらつきが減少すると考えられる。」 (5)「【0026】ここで、2結晶粒界および多結晶粒界について説明する。図4に、Nd_(2)Fe_(14)B系焼結磁石の透過型電子顕微鏡写真を示す。図4において2結晶粒界は、短いライン(Line 1)が横断している結晶粒界であり、Nd_(2)Fe_(14)B相(phase)からなる2つの結晶粒に挟まれた領域である。2結晶粒界の厚さは、通常、10nm以下である。一方、多結晶粒界は、長いライン(Line 2)が横断している結晶粒界であり、3つの結晶粒に挟まれた三重点である。ただし、三重点に限らず、4以上の結晶粒の間に存在する結晶粒界も、本明細書における多結晶粒界に包含される。」 (6)「【0032】まず、合金を鋳造し、インゴットを得る。得られたインゴットを、ディスクミル等により10?100μm程度の粒径まで粗粉砕し、次いで、ジェットミル等により0.5?5μm程度の粒径まで微粉砕する。得られた粉末を、好ましくは磁場中にて成形する。この場合、磁場強度は800kA/m以上、成形圧力は10?500MPa程度であることが好ましい。成形には、一軸加圧またはCIPなどの等方加圧のいずれを用いてもよい。得られた成形体を、1000?1200℃で0.1?100時間焼結する。焼結は、複数回行ってもよい。焼結は、真空中またはArガス等の不活性ガス雰囲気中で行うことが好ましい。」 上記摘示事項及び図面の記載から以下のことがいえる。 (a)刊行物1には、Nd_(2)Fe_(14)B系組成をもつ希土類焼結磁石が記載されている(摘示事項(1))。 (b)Rは、希土類元素の少なくとも1種であり、Ndおよび/またはPrが必須元素として含まれる(摘示事項(3))。2結晶粒界に均一に(R-Cu)リッチ相が形成され、これによってR_(2)Fe_(14)B結晶粒が被覆される(摘示事項(4))。ここで、RがNdである場合、2結晶粒界に均一に(Nd-Cu)リッチ相が形成され、これによってNd_(2)Fe_(14)B結晶粒が被覆されることになる。 (c)2結晶粒界の厚さは、通常、10nm以下である(摘示事項(5))。 (d)鋳造した合金インゴットを粉砕して得た合金粉末の粒径は、0.5?5μm程度である(摘示事項(6))。 以上を総合勘案すると、刊行物1には、次の発明(以下「刊行物1発明」という。)が記載されているものと認める。 「Nd_(2)Fe_(14)B系組成をもつ希土類焼結磁石であって、 2結晶粒界に均一に(Nd-Cu)リッチ相が形成され、これによってNd_(2)Fe_(14)B結晶粒が被覆され、 2結晶粒界の厚さは、通常、10nm以下であり、 鋳造した合金インゴットを粉砕して得た合金粉末の粒径は、0.5?5μm程度である希土類焼結磁石。」 3.対比 そこで、本件特許発明10と刊行物1発明とを対比する。 本件特許発明10は、「希土類磁石」という物の発明であるが、「該該磁性合金の共晶点よりも低温で液相を生じ得る、CuとNdの合金であるNd-Cu合金からなる浸透材の構成元素によって該結晶粒を被包する粒界部」との記載は、製造方法によって生産物を特定しようとするものであり、該記載を、最終的に得られた生産物自体、すなわち「CuとNdによって該結晶粒を被包する粒界部」、を意味しているものと解釈する。 (1)結晶粒 本件特許発明10と刊行物1発明とは、「NdとFeとBの合金であるNd-Fe-B系磁性合金からなる結晶粒」を有する点で一致する。 刊行物1発明は、鋳造した合金インゴットを粉砕して得た合金粉末の粒径が、0.5?5μm程度であるものの、焼結磁石を構成する結晶粒の粒径は特定されていない。 したがって、「結晶粒の粒径」について、本件特許発明10は、「1?500nmである」のに対し、刊行物1発明は、特定されていない点で相違する。 (2)粒界部 本件特許発明10と刊行物1発明とは、「CuとNdによって該結晶粒を被包する粒界部」を有する点で一致する。 (3)粒界部の幅 「粒界部の幅」について、本件特許発明10は、「1?10nmである」のに対し、刊行物1発明は、「通常、10nm以下であり」、下限値が明示的には特定されていない点で文言上は一致しない。しかしながら、本件特許発明10の下限値は、実施可能と思われる最小値を示したに過ぎないと考えられるから、「粒界部の幅」について、両者は実質的に一致するといえる。 (4)希土類磁石 本件特許発明10と刊行物1発明とは、「希土類磁石」である点で一致する。 そうすると、本件特許発明10と刊行物1発明とは、次の点で一致する。 <一致点> 「NdとFeとBの合金であるNd-Fe-B系磁性合金からなる結晶粒と、 CuとNdによって該結晶粒を被包する粒界部とからなり、 粒界部の幅が1?10nmであることを特徴とする希土類磁石。」の点。 そして、次の点で相違する。 <相違点> 「結晶粒の粒径」について、本件特許発明10は、「1?500nmである」のに対し、刊行物1発明は、特定されていない点。 4.判断 そこで、上記相違点について検討する。 刊行物1発明において、鋳造した合金インゴットを粉砕して得た合金粉末の粒径から、焼結磁石を構成する結晶粒の粒径を特定することはできないから、上記相違点が実質的なものではないとはいえない。 したがって、本件特許発明10は、刊行物1に記載された発明とはいえない。 また、刊行物2(甲第3号証)は、刊行物1を公開公報とする出願の分割出願の公開公報であって、刊行物2には、刊行物1と実質的に同じ内容しか記載されていない。 したがって、本件特許発明10は、刊行物1発明と同様に、刊行物2に記載された発明と上記相違点において相違し、該相違点は実質的なものではないとはいえないから、刊行物2に記載された発明とはいえない。 本件特許発明9は、「希土類磁石」という物の発明であるが、「請求項1?8のいずれかに記載の製造方法により得られた」との記載は、製造方法の発明を引用することによって生産物を特定しようとするものであり、該記載を、最終的に得られた生産物自体、すなわち「ネオジム(Nd)と鉄(Fe)とホウ素(B)の合金であるNd-Fe-B系磁性合金の、粒径が1?500nmである結晶粒が、銅(Cu)とNdで被包されてなる希土類磁石」(請求項1を引用する場合)、を意味しているものと解釈する。 すると、本件特許発明9(請求項2ないし8は、請求項1を直接もしくは間接に引用するから、請求項2ないし8を引用する場合を含む)も、本件特許発明10と同様に、「粒径が1?500nmである結晶粒」と特定されているから、刊行物1、2に記載された発明とはいえない。 5.むすび 以上のとおりであるから、本件特許の請求項9、10に係る発明は、刊行物1、2に記載された発明とはいえない。 第4 通知した取消理由2について 1.請求項1、10の「粒径が1?500nm」について 請求項1、10の結晶粒の粒径の下限値は、実施可能と思われる最小値を示したに過ぎないと考えられる。また、図3に示された試料の磁性層の厚さや、図4に示された試料のEDX写真像から、粒径が数nm?20nm程度の結晶粒からなる希土類磁石を実際に製造できたと認められる。 したがって、結晶粒の粒径の数値範囲の下限値に近いごく一部について希土類磁石を実際には製造できないとしても、そのことを理由に、発明が明確でないとも、発明の詳細な説明が、当業者が発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものでないともいえない。請求項1を引用する請求項2ないし4、9についても同様である。 2.請求項10の「粒界部の幅が1?10nm」及び「被包」について (1)「粒界部の幅」について 隣接する結晶粒間に作用する磁気的な相互作用は、3つ以上の結晶粒に挟まれた領域である多結晶粒界よりも薄い、2つの結晶粒に挟まれた領域である2結晶粒界の幅の影響を受ける。 したがって、請求項10の「粒界部の幅」は、技術常識からして、2結晶粒界の幅であると解され、明細書に「粒界部の幅」の定義がないことを理由に、発明が明確でないとはいえない。 (2)「被包」について 請求項10の粒界部に存在するCuは、Nd-Cu合金が液相で粒界部に連続的に浸透した結果、存在するものであると考えられるから、粒界部の幅が狭くても、結晶粒を被包していると考えられる。 したがって、「粒界部の幅」の下限値が小さいことを理由に、発明が明確でないとはいえない。 3.請求項1の「希土類磁石の製造方法」について 明細書の【0011】には、膜状の希土類磁石のほかに、バルク状のものも記載されている。また、【0026】には、層状(膜状)の希土類磁石を例にとって製造方法を説明することが記載されている。請求項1の「希土類磁石の製造方法」は、付着工程と浸透工程とを備えるものであるが、いずれの工程も、明細書に記載された、層状(膜状)の希土類磁石の製造方法における付着工程と浸透工程との説明を参照すれば、バルク状の希土類磁石について、当業者が実施をすることができる。 したがって、層状(膜状)の希土類磁石を例にとって製造方法が説明されていることを理由に、発明が明確でないとも、発明の詳細な説明が、当業者が発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものでないともいえない。請求項1を引用する請求項2ないし4、9についても同様である。 4.請求項10の「希土類磁石」について 3.と同様に、発明が明確でないとも、発明の詳細な説明が、当業者が発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものでないともいえない。 第5 特許異議申立人が主張するその他の取消理由について 特許異議申立人は、本件特許の請求項1ないし4、9、10に係る発明は、甲第1ないし6号証の記載に基づいて、当業者が容易に発明をすることができた旨主張する。 しかしながら、甲第2号証(刊行物1)、甲第3号証(刊行物2)には、「結晶粒の粒径」について、「1?500nmである」ことが記載されていない。また、甲第4号証は、「温間加工磁石」に関するものであって、その結晶粒径を、甲第2、3号証の「焼結磁石」に適用することはできない。 したがって、本件特許の請求項1ないし4、9、10に係る発明は、甲第1ないし6号証の記載に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 第6 むすび 以上のとおりであるから、通知した取消理由によっては、請求項1ないし4、9、10に係る発明の特許を取り消すことはできない。 また、ほかに請求項1ないし4、9、10に係る発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
異議決定日 | 2016-05-27 |
出願番号 | 特願2009-209672(P2009-209672) |
審決分類 |
P
1
652・
121-
Y
(H01F)
P 1 652・ 113- Y (H01F) P 1 652・ 536- Y (H01F) P 1 652・ 537- Y (H01F) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 中野 浩昌 |
特許庁審判長 |
井上 信一 |
特許庁審判官 |
関谷 隆一 酒井 朋広 |
登録日 | 2015-05-01 |
登録番号 | 特許第5739093号(P5739093) |
権利者 | 嶋 敏之 株式会社豊田中央研究所 国立大学法人東北大学 トヨタ自動車株式会社 |
発明の名称 | 希土類磁石とその製造方法および磁石複合部材 |
代理人 | 森岡 正往 |
代理人 | 森岡 正往 |
代理人 | 森岡 正往 |
代理人 | 森岡 正往 |