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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  A61K
審判 全部無効 1項3号刊行物記載  A61K
管理番号 1315965
審判番号 無効2014-800115  
総通号数 200 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-08-26 
種別 無効の審決 
審判請求日 2014-07-04 
確定日 2016-05-09 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第5553522号発明「経口投与用医薬組成物」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 特許第5553522号の請求項1,3,5に係る発明についての審判請求は,却下する。 特許第5553522号の請求項2,4,6に係る発明についての審判請求は,成り立たない。 審判の費用は,その2分の1を請求人の負担とし,2分の1を被請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許第5553522号の特許請求の範囲の請求項1?6に係る発明についての出願(以下,「本件特許出願」という。)は,平成21年3月31日に特願2009-86945号として出願され,平成26年6月6日に特許権の設定登録がなされた。
これに対して,請求人 沢井製薬株式会社は,平成26年 7月4日付け審判請求書によって,上記請求項1?6に係る発明の特許を無効にすることについて,本件特許無効審判を請求した。
以後の手続の経緯は次のとおりである。
平成26年 9月30日付け 答弁書(被請求人)
同年 同月同日付け 訂正請求書
平成27年 1月22日付け 審理事項通知書(当審)
同年 2月23日付け 口頭審理陳述要領書(被請求人)
同年 2月24日付け 口頭審理陳述要領書(請求人)
同年 3月10日 第1回口頭審理
同年 3月17日 上申書(被請求人)

第2 本件特許発明
1.訂正事項
本件訂正請求の内容は,本件特許の設定登録時の特許請求の範囲(以下,「特許請求の範囲」という。),明細書(以下,「特許明細書」という。)を,各々,同訂正請求書に添付した特許請求の範囲(以下,「訂正特許請求の範囲」という。),明細書(以下,「訂正明細書」という。)のとおりに訂正しようとするものである。
すなわち,以下の特許請求の範囲
「【請求項1】
(a)テガフール、(b)ギメラシル及び(c)オテラシルカリウムをモル比1:0.4:1で有効成分として含み、テガフール量に対して2?10質量倍のマンニトール、乳糖、トレハロース及びマルトースから選択される1種又は2種以上の糖類を賦形剤として含有する経口投与用医薬組成物(ただし、乳糖と結晶セルロースを含むもの、及び乳糖とコーンスターチを含むものを除く)。
【請求項2】
糖類が、マンニトール、トレハロース及びマルトースから選択される1種又は2種以上である請求項1に記載の経口投与用医薬組成物。
【請求項3】
テガフール量に対して2?10質量倍のマンニトール、乳糖、トレハロース及びマルトースから選択される1種又は2種以上の糖類よりなる、(a)テガフール、(b)ギメラシル及び(c)オテラシルカリウムをモル比1:0.4:1で有効成分として含む経口投与用医薬組成物中における当該有効成分の類縁物質の生成を抑制する剤。
【請求項4】
糖類が、マンニトール、トレハロース及びマルトースから選択される1種又は2種以上である請求項3に記載の類縁物質の生成を抑制する剤。
【請求項5】
(a)テガフール、(b)ギメラシル及び(c)オテラシルカリウムをモル比1:0.4:1で有効成分として含む経口投与用医薬組成物に、テガフール量に対して2?10質量倍のマンニトール、乳糖、トレハロース及びマルトースから選択される1種又は2種以上の糖類を含有せしめることを特徴とする当該有効成分の類縁物質の生成を抑制する方法。
【請求項6】
糖類が、マンニトール、トレハロース及びマルトースから選択される1種又は2種以上である請求項5に記載の類縁物質の生成を抑制する方法。」

を,下記の訂正特許請求の範囲のとおり訂正するとともに,当該訂正に対応する明細書の記載事項を合わせて訂正することを求めるものである。

「【請求項1】
(削除)
【請求項2】
(a)テガフール、(b)ギメラシル及び(c)オテラシルカリウムをモル比1:0.4:1で有効成分として含み、テガフール量に対して2?10質量倍のマンニトール、トレハロース及びマルトースから選択される1種又は2種以上の糖類を賦形剤として含有する経口投与用医薬組成物(ただし,乳糖と結晶セルロースを含むもの、及び乳糖とコーンスターチを含むものを除く)。
【請求項3】
(削除)
【請求項4】
テガフール量に対して2?10質量倍のマンニトール、トレハロース及びマルトースから選択される1種又は2種以上の糖類よりなる、(a)テガフール、(b)ギメラシル及び(c)オテラシルカリウムをモル比1:0.4:1で有効成分として含む経口投与用医薬組成物中における当該有効成分の類縁物質の生成を抑制する剤。
【請求項5】
(削除)
【請求項6】
(a)テガフール、(b)ギメラシル及び(c)オテラシルカリウムをモル比1:0.4:1で有効成分として含む経口投与用医薬組成物に、テガフール量に対して2?10質量倍のマンニトール、トレハロース及びマルトースから選択される1種又は2種以上の糖類を含有せしめることを特徴とする当該有効成分の類縁物質の生成を抑制する方法。」

2.訂正の可否に対する判断
2-1 特許請求の範囲の訂正について
(1)「特許請求の範囲」の請求項1,3,5の訂正について
この訂正は,請求項の削除を求めるものであるから,特許法第134条の2第1項ただし書第1号に規定する,特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり,また,特許法第134条の2第9項で準用する第126条第6項の規定に適合するものである。

(2)「特許請求の範囲」の請求項2,4,6の訂正について
この訂正は,上記(1)-1の訂正に伴い,削除される請求項1,3,5の記載を引用する請求項2,4,6を,各々,対応する請求項の記載を引用しない形式で記載することを求めるものであるから,特許法第134条の2第1項ただし書第4号に規定する,他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
また,この訂正は,願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてするものであり,特許請求の範囲を実質上拡張又は変更するものでもない。

2-2 「特許明細書」の訂正について
「特許明細書」の訂正は,いずれも,「特許請求の範囲」の訂正に伴い,対応する明細書の記載を訂正することを求めるものである。
「特許請求の範囲」の訂正については,上記(1)記載のとおりであるから,「特許明細書」の訂正は,願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてするものであり,特許請求の範囲を実質上拡張又は変更するものでもない。

2-3 訂正の可否について
したがって,平成26年9月30日付けの訂正は,特許法第134条の2第1項第1号,もしくは第3号に掲げる事項を目的とし,かつ,同条第9項の規定によって準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものであるので,当該訂正を認める。

3.本件特許発明
上記のとおり,平成26年9月30日付けの訂正請求は,適法になされたものであるから,本件特許に係る発明は,訂正特許請求の範囲に記載された事項により特定される以下のとおりのものと認める。

「【請求項1】
(削除)
【請求項2】
(a)テガフール、(b)ギメラシル及び(c)オテラシルカリウムをモル比1:0.4:1で有効成分として含み、テガフール量に対して2?10質量倍のマンニトール、トレハロース及びマルトースから選択される1種又は2種以上の糖類を賦形剤として含有する経口投与用医薬組成物(ただし,乳糖と結晶セルロースを含むもの、及び乳糖とコーンスターチを含むものを除く)。
【請求項3】
(削除)
【請求項4】
テガフール量に対して2?10質量倍のマンニトール、トレハロース及びマルトースから選択される1種又は2種以上の糖類よりなる、(a)テガフール、(b)ギメラシル及び(c)オテラシルカリウムをモル比1:0.4:1で有効成分として含む経口投与用医薬組成物中における当該有効成分の類縁物質の生成を抑制する剤。
【請求項5】
(削除)
【請求項6】
(a)テガフール、(b)ギメラシル及び(c)オテラシルカリウムをモル比1:0.4:1で有効成分として含む経口投与用医薬組成物に、テガフール量に対して2?10質量倍のマンニトール、トレハロース及びマルトースから選択される1種又は2種以上の糖類を含有せしめることを特徴とする当該有効成分の類縁物質の生成を抑制する方法。」

第3 当事者の主張,及び,提出した証拠方法
1.請求人の主張する無効理由,及び,提出した証拠方法
請求人は,「特許第5553522号発明の特許請求の範囲の請求項1?6に記載された発明についての特許を無効とする,審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め,以下の(1)?(3)の無効理由により無効とされるべきであると主張し,証拠方法として,甲第1?23号証を提出している。
なお,以下にあっては,訂正特許請求の範囲に記載された請求項1?6に係る発明を,各々「本件特許発明1」?「本件特許発明6」,あるいは総称して,単に「本件特許発明」という。

1-1 無効理由
(新規性欠如について)
(1)無効理由(1)
本件特許発明1,3,5は,その出願日(平成21年(2009年)3月31日)より前に頒布された甲第1号証に記載された発明(以下「引用発明1」という。)と同一の発明であるから,特許法29条1項3号に規定する発明に該当し,特許を受けることができないものである。

(2)無効理由(2)
本件特許発明1,3,5は,その出願前に日本国内において販売された被請求人の「ティーエスワンカプセル20」及び「ティーエスワンカプセル25」に係る発明(以下「引用発明2」という。)と同一の発明であるから,特許法29条1項2号に規定する発明に該当し,特許を受けることができないものである。

(進歩性欠如について)
(3)無効理由(3)-1
本件特許発明2,4,6は,引用発明1と,甲第3号証,甲第9号証,甲第12号証,甲第13号証,甲第16号証ないし甲第20号証に記載された周知技術ないし技術常識に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものである。

(4)無効理由(3)-2
本件特許発明2,4,6は,引用発明2と,甲第3号証,甲第9号証,甲第12号証,甲第13号証,甲第16号証ないし甲第20号証に記載された周知技術ないし技術常識に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものである。


よって,本件特許は,特許法第123条第1項第2号に該当し,無効とすべきものである。

1-2 請求人が提出した証拠方法
甲第1号証:「ティーエスワンカプセル20」及び「ティーエスワンカプセル25」の添付文書(第22版)、大鵬薬品工業株式会社、2008年6月改訂
甲第2号証:仲井由宣編、「医薬品の開発11巻 製剤の単位操作と機械」、廣川書店、平成元年11月10日、p. 105-107
甲第3号証:一番ヶ瀬尚ら編、「医薬品の開発12巻 製剤素材〔I〕」、廣川書店、平成2年10月15日、p. 156-160、168-171、215-227
甲第4号証:「サリペックスLAカプセル20mg」及び「サリペックスLAカプセル40mg」の添付文書(第2版)、日医工株式会社、2008年8月改訂
甲第5号証:「ジアイナミックス」の添付文書(第6版)、鶴原製薬株式会社、2008年2月改訂
甲第6号証:「エーデシン・C」の添付文書(第4版)、鶴原製薬株式会社、2007年4月改訂
甲第7号証:土屋晴嗣ら編、「現代薬学シリーズ13 薬剤学」、朝倉書店、1991年6月30日、p. 73-74、108
甲第8号証:塩路雄作著、「固形製剤の製造技術」、シーエムシー出版、2003年1月27日、p. 30
甲第9号証:渡辺善照ら編、「標準薬剤学?医療の担い手としての薬剤師をめざして?改訂第2版」、南江堂、2007年5月10日、p. 143-147
甲第10号証:後藤茂監修、「パワーブック物理薬剤学・製剤学」、廣川書店、平成14年10月20日、p. 340-341
甲第11号証:一番ケ瀬尚編、「製剤学」、廣川書店、昭和52年2月25日、p.282-283
甲第12号証:三嶋基弘ら編、「臨床製剤学(改訂第2版)」、南江堂、2007年3月15日、p. 124-126
甲第13号証:日本医薬品添加剤協会訳編、「改訂 医薬品添加物ハンドブック」、薬事日報社、2007年2月28日、p. 471-475、936-941
甲第14号証:及川倫徳作成の2014年7月1日付け研究報告書
甲第15号証:「ティーエスワンカプセル20・25」のインタビューフォーム(第14版)、大鵬薬品工業株式会社、2008年7月改訂
甲第16号証:佐川賢一監修、「第5版 錠剤・カプセル剤粉砕ハンドブック」、じほう、平成20年7月30日、p. 2-3、214-215
甲第17号証:早川幸男編著、「糖アルコールの基礎知識 改訂増補版」、食品化学新聞社、2006年6月1日、p. 121-129
甲第18号証:薬科学大辞典編集委員会編、「廣川薬科学大辞典」、廣川書店、昭和58年4月15日、p. 1391-1392
甲第19号証:月刊フードケミカル、1999年9月、p.38-41
甲第20号証:竹内洋文監修、「医薬品製剤化方略と新技術」、シーエムシー出版、2007年3月31日、p. 323-325
甲第21号証: 「ティーエスワン配合カプセルT20」ほかのインタビューフォーム(改訂第16版)、大鵬薬品工業株式会社、2009年9月改訂
甲第22号証:「ティーエスワン配合カプセルT20」ほかの添付文書(第24版)、大鵬薬品工業株式会社、2009年9月改訂
甲第23号証:「医療用配合剤及びヘパリン製剤(注射剤)の販売名命名並びに注射剤に添付されている溶解液の表示の取り扱いについて」、厚生労働省医薬食品局審査管理課長ら、平成20年9月22日

2.被請求人の主張
被請求人が提出した答弁書によれば,被請求人は,「本件審判の請求は成り立たない,審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求め,上記請求人の主張する無効理由は,いずれも理由がない旨主張するとともに,平成26年9月30日付け訂正請求書を提出して訂正を求めた。なお,被請求人は証拠を提出しなかった。

第4 甲第1?23号証の記載事項
甲各号証には,各々,以下の事項が記載されている。

「甲第1号証」
1(a)「ティーエスワンカプセル20」及び「ティーエスワンカプセル25」は,各々,成分として,「テガフール 20mg,ギメラシル5.8mg,オテラシルカリウム19.6mg」及び「テガフール 25mg,ギメラシル7.25mg,オテラシルカリウム24.5mg」を含有し,また,添加物として,各々,「乳糖水和物,ステアリン酸マグネシウム,ゼラチン,ラウリル硫酸ナトリウム,酸化チタン」及び「乳糖水和物,ステアリン酸マグネシウム,ゼラチン,ラウリル硫酸ナトリウム,酸化チタン,黄色5号」を含有しており,その性状は,各々,「白色の粉末及び粒を含む白色の不透明硬カプセル剤」及び「白色の粉末及び粒を含むキャップがだいだい色,ボディが白色の不透明硬カプセル剤」であって,その重量は,各々,「約179mg」,「約214mg」であり,4号カプセルの外形のものである,と記載されている。(p1 組成・性状の項)
1(b)「通常,成人には,・・・経口投与し,」(p1 用法・用量の項)
1(c)テガフール,ギメラシル,オテラシルカリウムの分子量が,各々,200.17,145.54,195.17である,と記載されている。(p6 有効成分に関する理化学的知見)
1(d)「ティーエスワンカプセル20」及び「ティーエスワンカプセル25」は,1999年3月に薬価収載,販売開始がされ,また,2007年8月に効能追加がされた旨が記載されている。(p1 右上の表)

「甲第2号証」
2(a)「硬カプセル剤は,一端が円筒形に丸く閉じた硬カプセルボディに薬剤を充填した後,ボディよりやや直径の大きい硬カプセルキャップを嵌め込み(以下,嵌合という),必要に応じて嵌合部にゼラチン溶液を帯状に塗布,乾燥して封緘し,製造される。硬カプセル剤の充填物としては,主薬または主薬に適当な賦形剤などの添加剤を均等に混和した粉末状のもの,または適当な方法で粒状としたもの,若しくは粒状としたものに腸溶性や持続性を与えるために適当なコーティング剤で剤皮を施したものがある。」(p105 4.1 硬カプセル剤の特徴 1?6行)
2(b)表4.1に,硬カプセルの重量とボディの容積,とのタイトルの下,4号数の硬カプセルが,重量40.0mgである,と記載されている。(p107 表4.1)。

「甲第3号証」
3(a)表2.1 主要固形製剤における期待される賦形剤の機能に,剤型がカプセル剤である場合の,製造における期待機能として,散剤,顆粒剤における機能のほか,流動性,充填性の向上(注12:空カプセルへの粉体充填の均一性の向上,滑沢剤の効果も大である。),カプセル充填機への粉体の付着防止(注13:滑沢剤の効果も大である),と記載されている。(p158 表2.1)
3(b)「賦形剤のなかで特に乳糖,トウモロコシデンプン,結晶セルロースが最も多く用いられ,逆にこれらの賦形剤を一種も配合されない固形製剤はまれである。これらの賦形剤は単品で使用されるケースは少なく,多くは乳糖とトウモロコシデンプン,乳糖と結晶セルロース,あるいは乳糖とトウロモコシデンプンと結晶セルロースなど併せて使用される。これらの賦形剤の組合せでは目的を達せられない場合,表2.2に示す賦形剤から選択されて用いられる。」(p159 5?9行)
3(c)「乳糖は固形製剤の賦形剤として最も多く利用される。・・・乳糖は賦形剤として多くの利点を有する。これらを列挙すると,(丸1)吸湿性が小さい(図2.1参照)。(丸2)各種の主薬との反応性が比較的少ない。(丸3)水に対する溶解度は大きくないが,崩壊性,主薬の溶出にはよい効果が期待できる。・・・などがあげられる。」(p159 A.乳糖 1?12行)
3(d) 図2.1 糖及び糖アルコール系賦形剤の吸湿性に,粉末乳糖,結晶乳糖,造粒乳糖,及びマンニットの吸水率は,いずれも相対湿度80%,90?100%において,0%である旨が記載されている。(p159 A.乳糖の項 1?5行,p160 図2.1)
3(e)表2.6 滑沢剤の分類に,ステアリン酸金属塩(Ca塩,Mg塩)の使用の範囲が,Lubricantsとして0.5?2%,Anti-adherentsとして0.2?1%である,と記載されている。(p169 表2.6,)
3(f)「粉体の物性に及ぼす滑沢剤の効果が多くの研究から明らかにされている。滑沢剤の粉体の流動性に及ぼす影響が安息角,オリフィスからの粉体の流出速度をパラメータとして研究されている。安息角が極小となる滑沢剤量が存在することが明らかにされ,またオリフィスからの流出速度が極大となる滑沢剤量が存在した。これら極大,極小を与える滑沢剤量は滑沢剤の種類によって異なるが,1%の添加量を越えるものはなかった。」(p171 B.滑沢効果の測定及び滑沢剤の作用機構の項 1?5行)
3(g)「硬カプセル・・・に使用される主要な素材はカプセル剤皮の基剤であるゼラチンであるが,このほか必要に応じ・・・色素または酸化チタンなどの着色剤・遮光剤・・・を添加することができる。」(p215 2.1.6カプセル(硬・軟)用材料(可塑剤,遮光剤などを含む)の項 1?4行)
3(h)「製品の識別のし易さ(着色及び空カプセルへの印刷)・・などを目的として,着色剤や遮光剤が使用される。最も多く使用されているのは水不溶性の酸化チタンであり,白色の着色剤及び遮光剤として添加される。・・・そのほか,着色剤には水溶性の食用タール色素(食用赤色2号,3号;黄色4号,5号・・・)・・・が用いられる。」(p226 2.1.6 C.着色剤・遮光剤の項 1?6行)
3(i)「硬カプセルは(丸1)ステンレス製のピンをゼラチン溶液に浸したのち,引き上げてから乾燥し,(丸2)成型されたゼラチンカプセルのボディー(胴部)をピンから抜き取り,(丸3)・・・(丸1)の工程でゼラチン溶液がピンに均一に付着するように,そして(丸2)の工程でゼラチンフィルムが容易に抜き取れるように,初めにピン表面に離型剤が塗布される。米国薬局方にはラウリル硫酸ナトリウムの適量濃度の残存が認められている。」(p227 2.1.6 E.そのほか a)離型剤の項 1?7行)

「甲第4号証」
4(a)「カプセル本体にゼラチン,ラウリル硫酸ナトリウム,酸化チタンを含有する。」(p1 組成・性状の項 1.組成)
4(b)「サリペックスLAカプセル20mgおよびサリペックスLAカプセル40mgは白色の硬カプセル剤である。」(p1 組成・性状の項 2.製剤の性状)

「甲第5号証」
5(a)添加物として,乳糖水和物,ステアリン酸マグネシウム,及びカプセル本体中に黄色5号,赤色3号,青色1号,ラウリル硫酸ナトリウム,ゼラチン,酸化チタンを含有することが記載されている。(p1 組成・性状の項 組成)
5(b)「ジアイナミックスは重量約300mgの頭部赤色不透明,胴部肌色不透明な3号硬カプセル剤で内容物は淡紅色の粉末である。」(p1 組成・性状の項 製剤の性状)

「甲第6号証]
6(a)「カプセル本体に黄色4号(タートラジン),黄色5号,赤色3号,青色1号,ラウリル硫酸ナトリウム,ゼラチン,酸化チタンを含有する。」(p1 組成・性状の項 組成)
6(b)「エーデシン・Cは上部淡茶色不透明,下部淡黄色不透明,重量約265mgの3号硬カプセル剤で,内容物は白色の粉末である。」(p1 組成・性状の項 製剤の性状)

「甲第7号証]
7(a)「硬カプセル剤は,円筒型のゼラチン製のボディに医薬品(液状,懸濁状,粉末状または顆粒状)を充填したのち,キャップをはめこみ,硬カプセル剤とする。」
表4・8 硬カプセルの重量とボディの容積に,4号数の硬カプセルの重量が40.0mgである旨が記載されている。(p74 4.剤形各論 f.カプセル剤 3)カプセル剤の種類と製造方法)
7(b)「流動化特性において優れた滑沢剤としては,タルク,軽質無水ケイ酸,含水二酸化ケイ素などがあるが・・・臼内での滑性付与や抗付着特性をもつ滑沢剤としてはステアリン酸の金属塩(マグネシウム,カルシウム,アルミニウム)がある。これらのなかで特にマグネシウム塩は少量(0.5?1%)の添加で良好な滑沢性を示す。」(p108 5.製剤学 4)滑沢剤)

「甲第8号証]
8(a)表2・4 硬カプセルの重量とボディの容積に,4号数の硬カプセルの重量が40.0mgである旨が記載されている。(p30 2.5 硬カプセル)

「甲第9号証」
9(a)「基本的には増量剤であるので,配合割合の大きい添加剤である。・・・硬カプセル剤の場合は 崩壊性,主薬の溶出性向上,強度の付与,個々の重量の均一性の確保があげられる。」(p144 3.添加剤 a.賦形剤 1?4行)
9(b)「圧縮打錠時,カプセルへの顆粒などの充てん時の直前に,粉体の流動性,成型性,付着性などを改善するために,少量添加,混合される。」(p144 3.添加剤 d.滑沢剤 1,2行)
9(c)固形製剤に使用される添加剤に,賦形剤の代表例として,乳糖が,吸湿性が少ない,主薬との反応性も小さい,白色度が高いなどの理由で,賦形剤としてもっとも多用される旨が,また,滑沢剤の代表例として,ステアリン酸マグネシウムが記載されている。(p145 表31 固形製剤に使用される添加剤 賦形剤の項 代表例及び注の欄,p146 表31つづき 滑沢剤の項 代表例の欄)

「甲第10号証」
10(a)「粉体の流動性を高め,錠剤の製造時の臼や杵への付着を防ぐために加える。主にステアリン酸やそのマグネシウム,カルシウム塩,タルク,硬化油やマクロゴールが用いられる。粉体の流動性改善には至適濃度が存在し,また,高濃度に加えると薬物の溶出を遅らせることがあるため,添加濃度は通常1%以下である。」(p341 4.1.1 固形製剤に用いられる添加剤 D 滑沢剤 lubricants)

「甲第11号証」
11(a)表2.5 滑沢剤の特性評価に,滑沢剤 ステアリン酸塩の添加濃度が1%以下である旨が記載されている」(p283)

「甲第12号証」
12(a)「賦形剤は,剤形を作る際に有効成分だけでは十分な「かさ」を得られない場合に,医薬品の形を作ったり,増量したり,希釈して取り扱いやすくするために添加される。・・・カプセル剤などではカプセルへの充てん性の改善などの働きを持つ。・・・乳糖は,吸湿性が小さい,甘味が強くない,有効成分との配合変化が比較的少ないなどの点から,固形製剤の賦形剤として最もよく用いられている。」(p124 g 固形製剤に用いられる添加剤 1)賦形剤)
12(b)「カプセル剤や錠剤の製造工程で,カプセルへの充てんや,打錠の際,粉体の流動性,充てん性の改善,付着防止などを目的として添加される。」(p125 g 固形製剤に用いられる添加剤 4)滑沢剤,流動化剤)
12(c)表2-7に,lubricants(滑りの改善)として,ステアリン酸マグネシウム(0.25?2.5%)が記載されている。(p126)

「甲第13号証」
13(a)「ステアリン酸マグネシウムは化粧品,食品,製剤に広く使われている。主として,0.25?5.0%の濃度でカプセルや錠剤製造において滑沢剤として使われている。」(p471 ステアリン酸マグネシウム 7.製剤への適用と技術)
13(b)「ステアリン酸マグネシウムは,その疎水性のため固形製剤からの溶出を遅らせることがある。したがって,本品はできるだけ低濃度で用いることが望ましい。カプセルの溶出性もまた製剤中のステアリン酸マグネシウムの量と混合時間に敏感である。多量のステアリン酸マグネシウムの影響,及び長時間の混合による影響でカプセルの殻が溶解した後に分解しない疎水性粉末層が形成される。」(p473 ステアリン酸マグネシウム 18.特記事項)
13(c)「賦形剤,凍結乾燥剤の賦形剤,甘味剤,錠剤及びカプセル剤の賦形剤,浸透圧調節剤。」(p936 マンニトール 6.用途分類)
13(d)「マンニトールは医薬品製剤及び食品に広く用いられている。医薬品製剤では主として錠剤処方の賦形剤(10-90%w/w)として用いられるが,その場合本品は吸湿性がなく,またこのために水分の影響を受け易い医薬成分に使用できることがあるなどの点で特に有用である。」(p936 マンニトール 7.医薬品製造への応用)

「甲第14号証」
14(a)ティーエスワン配合カプセルT20,ティーエスワン配合カプセルT25(大鵬薬品工業,使用期限2012.04)について,示差屈折測定法に従ってなされた試験において,その2カプセル平均乳糖水和物量が,各々,93.08mg/カプセル,115.63mg/カプセルであった旨が記載されている。(試験結果の欄)

「甲第15号証」
15(a)「使用期限:3年(安定性試験結果に基づく)」(p141 X.取り扱い上の注意等に関する項目 1.有効期間又は使用期限)

「甲第16号証」
16(a)ティーエスワンカプセル20(大鵬薬品),20mg(テガフール相当量[硬カプセル]),条件付きで粉砕又は開封が可,テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム,TS-1,ランクB(抗悪性腫瘍剤の院内取り扱い指針)。25℃・75%RHで14日保存条件下において,重量および含量に変化なし。ただし高温,高湿度とならないよう十分注意。
ティーエスワンカプセル25(大鵬薬品)については,25mg(テガフール相当量[硬カプセル])である点を除き,上記ティーエスワンカプセル20(大鵬薬品)に同じ。(p214,215)

「甲第17号証」
17(a)「マンニトールは,表3に示すように臨界相対湿度が高く,ほとんど吸湿性を示さない糖アルコールである。」(p124 4.理化学的特性 4.1非吸湿性)

「甲第18号証」
18(a)「横軸に相対湿度,縦軸にその湿度における吸湿量をとって,水溶性薬物の吸湿平衡図を画いてみると,水溶性薬品では低湿度では全く吸湿が起こらず,ある湿度以上で急激な吸湿量増大が起こる場合がある。このような変化の起こる相対湿度を臨界相対湿度と呼ぶ。臨界比湿度ともいう,臨界相対湿度の高いものは吸湿しにくく,低いものは吸湿しやすい。」(p1391,1392 臨界相対湿度)

「甲第19号証」
19(a)「○医薬品添加物:マンニトールは風味のよさ,高い物理的化学的安定性,非還元性,非吸湿性といった特徴を有しているため,乾燥した製剤に理想的な材料である。」(p39 医薬品での応用 3?6行)
19(b)「マンニトールのもっとも顕著な特徴は,著しく低い吸湿性と著しく高い化学的安定性である。」(p40 特性 下から2行?最下行)
19(c)図2 吸湿性および安定性に,20℃におけるマンニトールの吸湿等温度を締示すグラフ(縦軸:吸湿量,横軸:相対湿度)が記載されている。

「甲第20号証」
20(a)表1に,D-マンニトールの臨界比湿度%(37℃)が98以上であることが記載されている。(p323 6 固形製剤添加剤としての糖アルコール 6.2 糖アルコールの種類 6.2.1 マンニトール 表1 各糖アルコールの性質)
20(b)「マンニトールは低吸湿性を活かした散剤・錠剤などの賦形剤,また浸透圧性利尿剤,緑内障用薬,注射液として使用されている。」(p324 6 固形製剤添加剤としての糖アルコール 6.2 糖アルコールの種類 6.2.1 マンニトール)
20(c)「表1に37℃における臨界比湿度を示した。固形製剤に使用するためには,賦形剤の吸湿安定性は非常に重要である,乳糖並みの吸湿安定性を求める場合にはマンニトールが適する」(p325 6 固形製剤添加剤としての糖アルコール 6.3 糖アルコールの固形製剤への利用 6.3.1 吸湿安定性)

「甲第21号証」
21(a)「・・・1999年1月にカプセル(ティーエスワンカプセル20及び同25)の製造承認を取得した。・・・2009年6月12日にカプセル剤(ティーエスワン配合カプセルT20及び同T25 の販売名変更が代替承認された。」(I.概要に関する項目 1.開発の経緯)
21(b)「・ティーエスワン配合カプセルT20(販売名変更による)[注1],承認年月日:2009年6月12日,承認番号:22100AMX00886000,[注1]旧販売名:ティーエスワンカプセル20,承認年月日:1999年1月25日」(X.管理的事項に関する項目 10.製造販売承認年月及び承認番号);・ティーエスワン配合カプセルT25(販売名変更による)[注2],承認年月日:2009年6月12日,承認番号:22100AMX00887000,[注2]旧販売名:ティーエスワンカプセル25,承認年月日:1999年1月25日」(X.管理的事項に関する項目 10.製造販売承認年月及び承認番号)

「甲第22号証」
22(a)「(ティーエスワンカプセル20からティーエスワン配合カプセルT20に,ティーエスワンカプセル25からティーエスワン配合カプセルT25に名称変更)」(p1 右上)

「甲第23号証」
23(a)「・・医療用配合剤において配合剤であることに気づかず,誤って重複または過量に投与されることを防ぐための対策・・・について「医薬品・医療機器等対策部会」の下に設置した「医薬品類似性ワーキンググループ」において具体的な対策の検討を行い,医薬品・医療機器等対策部会の意見等も踏まえて,「医療用配合剤の販売名命名の取扱い」(別添1)・・・を取りまとめました。」(p1 5?12行)
23(b)「1.目的 医療用配合剤について,配合剤であることに気づかず,誤って 重複または過量に投与されるおそれを防ぐための対策として,販売名に,「配合剤」である旨を明記するなど販売名を命名する際の事項等を規定する。・・・5.剤型(1)原則として,医療用配合剤とわかるように,錠剤であれば「配合錠」,顆粒剤であれば「配合顆粒」等とすること。」(別添1 医療用配合剤の販売名命名の取扱い)

第5 当審の判断
1.無効理由(1),(2)について
請求項1,3,5を削除することを求める訂正を含む,平成26年9月30日付け訂正請求は前記第2に記載されたとおり認容され,その結果,本件特許発明は,前記第2に記載のとおりとなった。
一方,無効理由(1),(2)は,本件特許発明1,3,5に係る特許発明が,本件出願前に頒布された刊行物である甲第1号証に記載された発明に該当するか,あるいは甲第1証に記載されている「ティーエスワンカプセル20」及び「ティーエスワンカプセル25」と同一の発明であるから,特許を受けることができない,というものである。
しかし,上記訂正が認容された結果,本件特許には,もはや上記無効理由(1),(2)の請求対象である本件特許発明1,3,5は存在しないのであるから,該発明に対して無効審判を請求すべき余地はない。
よって,本件無効理由(1),(2)についてする無効審判の請求は,不適法な請求であり,その補正をすることができないものであるから,特許法第135条の規定により却下すべきものである。

2.無効理由(3)-1について
2-1 甲第1号証に記載された発明
(1)甲第1号証について
甲第1号証は,「ティーエスワンカプセル20」及び「ティーエスワンカプセル25」の添付文書(第22版)であって,本件出願日である2009年3月31日より前の,2008年6月に改訂されたものであるから(摘記事項1(d)),特許法第29条第1項第3号の「出願前に頒布された刊行物」に該当するものである。

(2)甲第1号証記載の「ティーエスワンカプセル20」及び「ティーエスワンカプセル25」の添加物について
(2)-1 カプセル本体について
甲第1号証に記載される,「ティーエスワンカプセル20」及び「ティーエスワンカプセル25」は,各々,成分として,「テガフール 20mg,ギメラシル5.8mg,オテラシルカリウム19.6mg」及び「テガフール 25mg,ギメラシル7.25mg,オテラシルカリウム24.5mg」を含有し,また,添加物として,各々,「乳糖水和物,ステアリン酸マグネシウム,ゼラチン,ラウリル硫酸ナトリウム,酸化チタン」及び「乳糖水和物,ステアリン酸マグネシウム,ゼラチン,ラウリル硫酸ナトリウム,酸化チタン,黄色5号」を含有する白色の粉末及び粒を含む硬カプセル剤であって,その重量は,各々,「約179mg」,「約214mg」であり,4号カプセルの外形のものである(摘記事項1(a))。
上記添加物の含有量や添加目的について,甲第1号証には明示の記載はない。
しかし,「ティーエスワンカプセル20」及び「ティーエスワンカプセル25」は,いずれも硬カプセル剤である(摘記事項1(a))。そして,硬カプセル剤とは,円筒形の硬カプセルボディに医薬品を充填したのち,硬カプセルキャップを嵌め込み製造されるものであることは,本件出願時の技術常識である(必要なら,摘記事項2(a)参照)。
ここで,本件出願当時,硬カプセル剤の充填物としては,主薬または主薬に適当な賦形剤などの添加剤を均等に混和した粉末状のものなどがあることが知られている(摘記事項2(a))。一方,硬カプセルボディ及びキャップ(以下,「カプセル本体」という。)を構成する材料として,カプセル剤皮の基剤であるゼラチンのほか(摘記事項3(g)),製品の識別し易さなどのため(摘記事項3(h)),必要に応じて,着色剤・遮光剤などを添加することができるとされており(摘記事項3(g)),例えば,酸化チタンが白色の着色剤及び遮光剤として,また,食用タール色素(食用赤色2号,3号;黄色4号,5号)などが着色剤として用いられることも知られていた(摘記事項3(h))。
そして,カプセル本体は,その製造過程において,離型剤としてラウリル硫酸ナトリウムが用いられており,ラウリル硫酸の適量濃度の残存は認められているところである(摘記事項3(i))。
また,実際に,カプセル本体に,ゼラチンに加えて,ラウリル硫酸ナトリウム,酸化チタンや黄色5号などの着色剤を含有する,カプセル本体が着色されている,製造承認硬カプセル剤が存在しているところである(甲第4?6号証)。
そうすると,甲第1号証記載の添加剤のうち,ゼラチン,ラウリル硫酸ナトリウム,及び酸化チタンは,また,カプセル25にあっては,さらに黄色5号は,カプセル本体を構成するものと認めることができる。

そして,甲第1号証には,「ティーエスワンカプセル20」及び「ティーエスワンカプセル25」においては,4号カプセルの外形をした硬カプセル剤である旨が記載されている(摘記事項1(a))。ここで,4号とは,一般に,硬カプセルの大きさを数値化したものであり,4号数の硬カプセルの重量が40.0mgであることは本件出願当時の技術常識であるといえる(必要なら,摘記事項2(b),7(a),8(a))。
そうすると,甲第1号証において用いられている4号カプセルの重量もまた40.0mgであると認められる。

以上のとおりであるから,甲第1号証記載のカプセル本体は,カプセル20にあっては,ゼラチン,ラウリル硫酸ナトリウム,及び酸化チタンを,また,カプセル25にあっては,上記に加えて黄色5号を含有しており,重量40.0mgのものであると認められる。

(2)-2 カプセル充填物について
次に,甲第1号証記載の,「ティーエスワンカプセル20」,及び「ティーエスワンカプセル25」のカプセル充填物について検討する。
甲第1号証記載のカプセル本体については,前記(2)-1において検討のとおりであるから,カプセル充填物は,成分のほか,カプセル本体を構成する前記以外の添加物である,乳糖水和物,ステアリン酸マグネシウムを含有するものと認める。
ステアリン酸マグネシウムが滑沢剤として,固形製剤の製造工程において添加されることは,たとえば,3(e),7(b),9(b),(c),10(a),12(b),(c),13(a)に記載されるように,本件出願時の技術常識であり,固形製剤の一種であるカプセル剤の製造時における添加物であることもまた,たとえば,9(b),(c),12(b),(c),13(a)に記載があるように,本件出願時の技術常識である。
ところで,ステアリン酸マグネシウムの量について,たとえば,「Lubicantsとして0.5?2%,Anti-adherentsとして0.2?1%である」(3(e))とか,「lubricants(滑りの改善)として,ステアリン酸マグネシウム(0.25?2.5%)」(12(c)),「0.25?5.0%の濃度で」使われる(13(a))旨の記載がある。そして,ステアリン酸マグネシウムが疎水性であり,固形製剤からの溶出を遅らせることから,できるだけ低濃度で用いることが望ましい(13(b))とか,「少量,添加,混合される」(9(b)),とされており,また,滑沢剤の粉体の流動性に及ぼす影響のパラメータである安息角が極小となるか,オリフィスからの流出速度が極大となる滑沢剤量は,その種類を問わず1%の添加量を超えるものはなかった(3(f))との記載があるように,本件出願時の技術常識に照らせば,カプセル剤中のステアリン酸マグネシウムの量は,通常,多くて,5.0%で添加されるものと推認できる。そして,その下限値は,ステアリン酸マグネシウムが添加されているのであるから,理論上,0%より多い量であると認められる。
そうすると,これを,甲第1号証記載の,重量「約179mg」の「ティーエスワンカプセル20」,及び重量「約214mg」の「ティーエスワンカプセル25」に当てはめると,その上限値を5.0%とした場合,ステアリン酸マグネシウムの量は,各々,約0?6.95mg,約0?8.7mgになる。
そして,カプセル充填物を構成する添加物は,上記のとおり,乳糖水和物,ステアリン酸マグネシウムであり,また,それら添加物の合計含有量は,甲第1号証記載の,重量「約179mg」の「ティーエスワンカプセル20」,及び重量「約214mg」の「ティーエスワンカプセル25」から,成分とカプセル本体を除いた重量に相当するといえるから,各々,約179-40.0-(20+5.8+19.6)=約93.6mg,約214-40.0-(25+7.25+24.5)=約117.25mgとなる。
そうすると,「ティーエスワンカプセル20」,「ティーエスワンカプセル25」の乳糖水和物の量は,各々,約93.6-(0?6.95)=約93.6?86.65 mg,約117.25-(0?8.7)=約117.25?108.55mgとなる。

(3)甲第1号証に記載された発明
以上のとおり,甲第1号証の記載事項と本件出願時の技術常識から,甲第1号証には,以下の発明が記載されていると認められる。

「テガフール20mg,ギメラシル5.8mg及びオテラシルカリウム19.6mgを有効成分として含み,乳糖水和物を約86.65mg?約93.6mgの範囲で,ステアリン酸マグネシウムを約0?6.95mgの範囲で含有する硬カプセル剤」,
及び,
「テガフール25mg,ギメラシル7.25mg及びオテラシルカリウム24.5mgを有効成分として含み,乳糖水和物を約108.55mg?約117.25mgの範囲で,ステアリン酸マグネシウムを約0?8.7mgの範囲で含有する硬カプセル剤」

以下,上記2つの発明を総称して「引用発明1」と,又は,それらを区別して,順に,「引用発明1(20)」,「引用発明1(25)」という。

2-2 本件発明と引用発明1との対比,判断
(1)本件発明2について
本件発明2と引用発明1とを対比する。

引用発明1の「硬カプセル剤」は,1(b)で摘記したとおり,経口投与されるものであり,医薬品として製造承認されたものであるから,「硬カプセル剤」のカプセル充填物は,本件発明2の「経口投与用医薬組成物」に相当する。
引用発明1の「テガフール,ギメラシル,オテラシルカリウム」の分子量は,各々,200.17,145.54,195.17であるから(摘記事項1(c)),各成分を有効数字2桁で計算してモル比で表現すると,各々,「20mg÷200.17=0.10mmol,5.8mg÷145.54=0.040mmol,19.6mg÷195.17=0.10mmol」,「25mg÷200.17=0.12mmol,7.25mg÷145.54=0.050mmol,24.5mg÷195.17=0.13mmol」となる。よって,引用発明1(20),引用発明(25)中の三成分のモル比を,有効数字1桁で計算すると,それらはともに,「1:0.4:1」となる。
また,本件明細書には,「本発明において,「賦形剤」とは,製剤としての剤型を保つために有効成分以外で製剤中に最も多く含まれる添加剤を指す。」(段落0006)と記載されている。一方,引用発明1における各成分の含有量は上記のとおりであり,乳糖水和物が最も多く含まれている有効成分以外の成分であるから,引用発明1の乳糖水和物は,本件発明2の「賦形剤」に相当する糖類である。
そして,引用発明1には,結晶セルロースもコーンスターチも含まれていない。

よって,本件発明2と引用発明1とは,「(a)テガフール、(b)ギメラシル及び(c)オテラシルカリウムをモル比1:0.4:1で有効成分として含み、糖類を賦形剤として含有する経口投与用医薬組成物」である点で一致し,
本件発明2が,賦形剤として,「テガフール量に対して2?10質量倍のマンニトール、トレハロース及びマルトースから選択される1種又は2種以上の糖類」を含有し,「(ただし,乳糖と結晶セルロースを含むもの、及び乳糖とコーンスターチを含むものを除く)」と規定しているのに対し,
引用発明1(20)は,「乳糖水和物を約86.65mg?約93.6mgの範囲で」,また,引用発明1(25)は,乳糖水和物を約108.55mg?約117.25mgの範囲で」含有すると規定している点で相違する。

以下、上記相違点について検討する。

甲第3号証の,賦形剤のなかで特に乳糖,トウモロコシデンプン,結晶セルロースが最も多く用いられる旨の記載(3(c)),甲第9号証の,乳糖が賦形剤として最も多用される旨の記載(9(c)),また,甲第12号証の,固形製剤の賦形剤として最もよく用いられている旨の記載(12(a))にみられるように,乳糖は,固形製剤において最も多く用いられる賦形剤であることは本件出願当時にすでに広く知られているところである。そして,乳糖については,吸湿性が小さいことや主薬との反応性が少ないことなどがその利点として知られている(3(c),9(c),12(a))。
そうすると,上記のとおり,本件発明2の賦形剤に相当する,乳糖水和物が用いられている引用発明1のカプセル充填物にあっても,吸湿性が小さいことが予想されるところであり,実際,甲第16号証以外に,それら引用発明1のカプセル充填物の吸湿安定性について言及した証拠は提出されていない。
そして,甲第16号証には,ティーエスワンカプセル20(大鵬薬品),20mg(テガフール相当量[硬カプセル])の粉砕又は開封の可能性について,条件付きで粉砕又は開封が可能であることや,25℃・75%RHで14日保存条件下において,重量および含量に変化がなかったことが記載されており,ここに示された高湿度条件下における加速試験結果から,カプセル充填物,すなわち,テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウムからなる有効成分に,さらに乳糖水和物を含有する配合物が,ただちに水分の影響を受けやすく,吸湿安定性がないとまではいえない。もっとも,同甲第16号証には,高温,高湿度とならないよう十分注意する旨の記載が添えられているが,この記載は,吸湿安定性がないことを指摘する記載であるというよりむしろ,医薬品において一般に起こりうる高湿度下における有効成分の分解に留意すべき旨を確認的に記したもの、と理解するのが自然である。
ところで,甲第3号証には,賦形剤として,乳糖,トウモロコシデンプン,結晶セルロースが最も多く用いられるとの上記記載のほか,多くは,それらのうち2種を併せて使用されることが,また,これらの賦形剤を一種も配合されない固形製剤は逆にまれであることが記載されており,それらの賦形剤の組合せでは目的を達せられない場合、表2.2に示す賦形剤から選択されて用いられる旨が記載されている(3(b))。ここで,目的を達せられない,とは,甲第3号証の記載に照らせば,剤型がカプセル剤である場合には,賦形剤に期待される,3(a)に摘示した種々の機能を達成し得ないことをいうものと解される。
しかし,上記検討のとおり,カプセル充填物,すなわち,テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウムからなる有効成分に,さらに乳糖水和物を配合した組成物が,甲第3号証に記載される機能を達成し得ないことはもちろんのこと、達成しえない可能性があることを窺わせる証拠は何ら提出されていないから,そもそも,乳糖水和物に代えて,同甲号証の表2.2に記載されているマンニットなどを用いるべきとする課題があるとは認められない。
請求人は,甲第16号証の,高温,高湿度とならないよう十分注意する旨の記載を,引用発明1のカプセル充填物が吸湿性の点で不安定であることをいうものと捉え,一般に,湿度の影響を受けやすい医薬成分に対しては,吸湿性の少ない賦形剤を用いるのが有利であることが知られているとして,吸湿性の少ないマンニトールを賦形剤として用いる動機付けが存在する旨主張する。
たしかに,本件出願当時,マンニトールは,吸湿性の少ない賦形剤として広く知られていたものであるし(3(d),13(c),17(a),19(a),(b),20(a),(b)),吸湿性が低い賦形剤は、水分の影響を受けやすい医薬成分に対する賦形剤として優れていることも知られていた(13(d))。
しかし,引用発明1のカプセル充填物が,高湿度条件下、不安定である、との認識があったといえないことは上記のとおりである。また,甲第16号証に記載されているのは,テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウムからなる有効成分に,さらに乳糖水和物を配合した組成物であって,そもそも,甲第16号証の記載からは,テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウムからなる有効成分が,水分の影響を受けやすい医薬有効成分であるといえるものでもない。そうすると,上記有効成分へ乳糖水和物を添加した目的は不明であるから,たとえ,乳糖が吸収性が低い物質であるとしても,該成分の添加により水分の影響を解決できたものと提出された証拠からいえるものではない。
また,マンニトールの吸湿安定性の程度は,乳糖と同等と理解されていたものである(3(d),20(c))。
以上のことから,仮に,甲第16号証の上記記載箇所が請求人の解釈したとおりの意であるとすると,甲第1号証記載の組成物の賦形剤である乳糖水和物を,乳糖水和物と同程度の吸湿安定性を有するにすぎないマンニトールに代えたとしても,得られる組成物の吸湿性は,せいぜい,乳糖水和物と同程度のもの,すなわち,吸湿安定性が得られることはない,と当業者は理解するものといえるから,そもそも乳糖水和物をマンニトールに代える動機付けがあるとはいえず,上記請求人の主張を受け入れることはできない。

そして,本件明細書には,マンニトール,トレハロース,マルトースを賦形剤として用いた場合に,60℃ 75%R.H.で10日間保存した後,生成した,テガフール,ギメラシル,オテラシルカリウムと賦形剤以外のピーク面積から有効成分面積をもとに類縁物質量を算出した総和である総類縁物質量は,他の糖類を賦形剤として用いた場合と比べて,極めて少ないことが記載されている。
本件明細書中,類縁物質とは,「テガフール、ギメラシル、オテラシルカリウム及び賦形剤を含む医薬添加剤以外の物」(段落0018)をいうとされている。
一方,臨界相対湿度とは,甲第18号証に記載されるとおり,急激な吸湿量増大が起こる相対湿度をいうから,類縁物質量が賦形剤の吸湿性に左右されるというのであれば,臨界相対湿度が上記保存時の相対湿度である75%より大きな糖類を用いた場合には,賦形剤が急激に吸湿することはないし,また,有効成分についても,上記検討のとおり,水分の影響を受けやすいというものでもないから,上記した相対湿度が75%より大きな糖類を用いた場合には類縁物質量の増加にそれほど大きな違いはないとの結果が得られるものと予測されるが,類縁物質量に関する本件明細書の記載(表1)からはそのような結果を読み取ることはできないのであって,表1記載の結果は,引用文献1の記載から予測しえない効果が記載されていると認められる。

(2)本件発明4について
本件発明4は,「テガフール量に対して2?10質量倍のマンニトール、乳糖、トレハロース及びマルトースから選択される1種又は2種以上の糖類よりなる、(a)テガフール、(b)ギメラシル及び(c)オテラシルカリウムをモル比1:0.4:1で有効成分として含む経口投与用医薬組成物中における当該有効成分の類縁物質の生成を抑制する剤。」である。
本件発明4と引用発明1とを対比する。

引用発明1の「硬カプセル剤」のカプセル充填物が,本件発明4の「経口投与用医薬組成物」に相当すること,引用発明1の「テガフール,ギメラシル,オテラシルカリウム」のモル比が,「1:0.4:1」となることは,前記(1)本件発明2について、の項に記載のとおりである。

よって,本件発明4と引用発明1とは,「糖類よりなる,(a)テガフール、(b)ギメラシル及び(c)オテラシルカリウムをモル比1:0.4:1で有効成分として含む経口投与用医薬組成物中における剤」の点で一致し,以下の点で相違する。

相違点1
本件発明4が,糖類について,「テガフール量に対して2?10質量倍のマンニトール、トレハロース及びマルトースから選択される1種又は2種以上の糖類」と規定しているのに対し,引用発明1(20)は,「乳糖水和物を約86.65mg?約93.6mgの範囲で」,また,引用発明1(25)は,乳糖水和物を約108.55mg?約117.25mgの範囲で」含有すると規定している点

相違点2
本件発明4が,剤の用途について,「当該有効成分の類縁物質の生成を抑制する剤」と規定しているのに対し,引用発明1には,なんら規定されていない点

以下,上記相違点について検討する。

相違点1について
上記相違点1は,前記(1)で指摘した相違点と同じであり,同様に判断されるから,改めて検討するまでもなく,当業者が,引用文献1に記載された発明と,甲第3号証,甲第9号証,甲第12号証,甲第13号証,甲第16号証ないし甲第20号証に記載された周知技術ないし技術常識に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

相違点2
念のために,相違点2について検討しても,以下のとおり,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
本件明細書中,類縁物質とは,「テガフール、ギメラシル、オテラシルカリウム及び賦形剤を含む医薬添加剤以外のものを言い、特に当該3つの有効成分の構造的類縁化合物のことを指す」(段落0018)とされているから,請求項4の「有効成分の類縁物質の生成を抑制する剤」との規定は,「有効成分の構造的類縁化合物の生成を抑制する剤」と言い換えることができる。
ところで,甲第1号証には,テガフール、ギメラシル、オテラシルカリウムとを組み合わせた組成物が,有効成分の類縁物質を生成することや乳糖水和物を添加したことにより有効成分の類縁物質の生成を抑制することができたことについての記載はない。また,甲第16号証をはじめとする,請求人が提示したその他の甲各号証をみても上記と同様,何らの記載もみあたらない。よって,引用発明1が,類縁物質の生成が抑制されたものであるか否かは,いずれの甲号証の記載からも不明である。
よって,相違点2については,請求人が提示したいずれの証拠をみても,当業者が容易に想到し得たとすることはできない。
請求人は,口頭審理陳述要領書において,本件明細書の,「加湿条件下でも安定であり経口投与可能なテガフール、ギメラシル、オテラシルカリウム含有経口投与用医薬組成物を提供することにある。」との記載(段落0005),「加湿条件下でも製剤の安定性が確保されるため、類縁物質の生成を抑制することができる。」との記載(段落0007)があることを指摘した上で,本件発明の課題は,加湿条件下での安定性の確保であり,また,類縁物質とは,有効成分及び医薬添加剤以外の物質を指すものとされているから,類縁物質の生成を抑制するとは,要するに製剤の安定性を向上させることと同義であるとの前提に基づいて,甲第16号証には加湿条件下でのテガフール、ギメラシル及びオテラシルカリウムの配合剤について加湿条件下における安定性に問題があることを当然に理解することから、本件特許発明の有効成分について加湿条件下での安定性に問題があることは公知であったといえると主張する。
請求人の主張によれば,テガフール、ギメラシル、オテラシルカリウムとを組み合わせた組成物に対する水分の影響を抑制することに応じて,類縁物質の生成を抑制することができるとの関係が成立するものと予想される。しかし,両者がそのような相関関係にあると必ずしもいえないことを本件明細書の表1の記載から確認できることは前記(1)に記載のとおりである。
表1の記載されている試験結果は,前記(1)に記載したとおり,マンニトール,トレハロース,マルトースを賦形剤として用いた場合に,60℃ 75%R.H.で10日間保存した後,生成した,テガフール,ギメラシル,オテラシルカリウムと賦形剤以外のピーク面積から有効成分面積をもとに類縁物質量を算出した総和である総類縁物質量に関する値であるから,本件明細書には,有効成分の構造的類縁化合物の生成のみに関するものではないものの,他の糖類を賦形剤として用いた場合と比べて,極めて少ない旨を示す試験結果が記載されているといえる。そして,表1の値がすべて有効成分の構造類縁化合物の生成に基づくものであるとしても,他の糖類を用いた場合に比べてその類縁物質量は極めて少ないものであることにかわりはない。
以上のとおりであるから,請求人の主張は上記判断を左右するものではない。

(3)本件発明6について
本件発明6は、「(a)テガフール、(b)ギメラシル及び(c)オテラシルカリウムをモル比1:0.4:1で有効成分として含む経口投与用医薬組成物に、テガフール量に対して2?10質量倍のマンニトール、トレハロース及びマルトースから選択される1種又は2種以上の糖類を含有せしめることを特徴とする当該有効成分の類縁物質の生成を抑制する方法。」である。

本件発明6と引用発明1とを対比する。

引用発明1は,前記(1)本件発明2について、の項に記載のとおり,

「テガフール20mg,ギメラシル5.8mg及びオテラシルカリウム19.6mgを有効成分として含み,乳糖水和物を約86.65mg?約93.6mgの範囲で,ステアリン酸マグネシウムを約0?6.95mgの範囲で含有する硬カプセル剤」,
及び,
「テガフール25mg,ギメラシル7.25mg及びオテラシルカリウム24.5mgを有効成分として含み,乳糖水和物を約108.55mg?約117.25mgの範囲で,ステアリン酸マグネシウムを約0?8.7mgの範囲で含有する硬カプセル剤」
である。

そして,引用発明1において,テガフール,ギメラシル及びオテラシルカリウムは,医薬組成物であって,硬カプセル剤を構成する有効成分とされているから,また,上記引用発明1を「硬カプセル剤」という物としてではなく、その物を得る方法として捉えると,以下のように表現することができる。

「テガフール20mg,ギメラシル5.8mg及びオテラシルカリウム19.6mgを有効成分として含む硬カプセル剤を構成する医薬組成物に,乳糖水和物を約86.65mg?約93.6mgの範囲で,ステアリン酸マグネシウムを約0?6.95mgの範囲で含有せしめる方法」,
及び,
「テガフール25mg,ギメラシル7.25mg及びオテラシルカリウム24.5mgを有効成分として含む硬カプセル剤を構成する医薬組成物に,乳糖水和物を約108.55mg?約117.25mgの範囲で,ステアリン酸マグネシウムを約0?8.7mgの範囲で含有せしめる方法」
である。

以下、上記2つの発明を総称して「引用発明1-1」と,又は,それらを区別して,順に,「引用発明1-1(20)」,「引用発明1-1(25)」という。

本件発明6は,「(a)テガフール、(b)ギメラシル及び(c)オテラシルカリウムをモル比1:0.4:1で有効成分として含む組成物」を「経口投与用医薬組成物」と規定しているから,引用発明1の「テガフール,ギメラシル及びオテラシルカリウムを有効成分として含む硬カプセル剤を構成する医薬組成物は,本件発明6の「経口投与用医薬組成物」に相当する。
また,引用発明1の「テガフール,ギメラシル,オテラシルカリウム」のモル比が,「1:0.4:1」となることは,前記(1)に記載のとおりである。
そして,本件発明6においては,ステアリン酸マグネシウムについてなんら規定がなされていないことから,引用発明1-1がステアリン酸マグネシウムを含有せしめると規定している点は相違点とならない。

以上のことから,本件発明6と引用発明1-1とは,「a)テガフール、(b)ギメラシル及び(c)オテラシルカリウムをモル比1:0.4:1で有効成分として含む経口投与用医薬組成物に、糖類を含有せしめる方法」の点で一致し,以下の点で相違する。

相違点1
本件発明6が,糖類について,「テガフール量に対して2?10質量倍のマンニトール、トレハロース及びマルトースから選択される1種又は2種以上の糖類」と規定しているのに対し,引用発明1-1(20)は,「乳糖水和物を約86.65mg?約93.6mgの範囲で」,また,引用発明1-1(25)は,乳糖水和物を約108.55mg?約117.25mgの範囲で」含有すると規定している点

相違点2
本件発明6が,方法の用途について,「当該有効成分の類縁物質の生成を抑制する方法」と規定しているのに対し,引用発明1-1には,なんら規定されていない点

以下,上記相違点について検討する。

相違点1について
上記相違点1は,前記(1)で指摘した相違点と同じであり,同様に判断されるから,改めて検討するまでもなく,当業者が,引用文献1に記載された発明と,甲第3号証,甲第9号証,甲第12号証,甲第13号証,甲第16号証ないし甲第20号証に記載された周知技術ないし技術常識に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

相違点2について
相違点2については,前記(2)で指摘した本件発明4と引用発明1との相違点2が「有効成分の類縁物質の生成を抑制する剤」であるのに対し,本件発明6では「当該有効成分の類縁物質の生成を抑制する方法」と,物であるか方法であるかの表現上の違いはあるが,その用途の点では実質的に異なるところはなく,同様に判断することができるものであるから,改めて検討するまでもなく,前記(2)の相違点2において検討したとおり,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

3.無効理由(3)-2について
3-1 「ティーエスワンカプセル20」,「ティーエスワンカプセル25」
(1)「ティーエスワンカプセル20」,「ティーエスワンカプセル25」が出願前に販売されていた事実
甲第1号証は,「ティーエスワンカプセル20」及び「ティーエスワンカプセル25」の添付文書(第22版)であって,本件出願日である2009年3月31日より前の,2008年6月に改訂されたものである(摘記事項1(d))。
ところで,薬事法は,医薬品は,これに添付する文書等(以下,「添付文書」)に,当該医薬品に関する所定の事項(「添付文書等記載事項」)を記載すべきことを規定する(同法第52条)。そして,医薬品の製造販売の慣行に照らせば,上記添付文書が改訂された2008年6月に,同添付文書記載の医薬品が販売されていたものと推認することができ,また,これを否定する証拠も見当たらないことから,甲第1号証に記載されている「ティーエスワンカプセル20」,「ティーエスワンカプセル25」は,本件出願前に,日本国内において公然実施された発明であるといえる。

(2)「ティーエスワンカプセル20」,「ティーエスワンカプセル25」の成分
(2)-1 テガフール,ギメラシル及びオテラシルカリウム
甲第1号証には,「ティーエスワンカプセル20」,「ティーエスワンカプセル25」1カプセル中に,テガフール,ギメラシル及びオテラシルカリウムが,各々,順に,20mg,5.8mg,19.6mg;25mg,7.25mg,24.5mg含まれていることが記載されている。
一方,乳糖水和物について,その含有量について明示の記載はない。
ところで,請求人は,「ティーエスワン配合カプセルT20およびT25(大鵬薬品工業)の製剤中の乳糖水和物量の評価」とのタイトルの下,「ティーエスワン配合カプセルT20」,「ティーエスワン配合カプセルT25」を試験サンプルとして,該サンプル中に含有される乳糖水和物量についての測定結果を,各々2つのサンプルの測定値の平均値を記した甲第14号証を提出している。
ここで用いられている試験サンプルは,「ティーエスワン配合カプセルT20」,「ティーエスワン配合カプセルT25」であって,本願出願前に販売されたと認められる,甲第1号証記載の「ティーエスワンカプセル20」,「ティーエスワンカプセル25」とはその名称が異なり,両者が同一の医薬品であると認めることはできない。
しかし,甲第21号証の摘記事項21(a)及び21(b),並びに甲第22号証の摘記事項22(a)の記載によれば,「ティーエスワンカプセル20」は「ティーエスワン配合カプセルT20」に,また,「ティーエスワンカプセル25」は「ティーエスワン配合カプセルT25」に名称変更されたものであると理解することができるから,両者は,その名称が異なるが同一の医薬品であるといえる。なお,そのような名称変更は,医療用配合剤であることを誤認することがないようにするために,許認可機関からの要請に応じてなされたものであることが甲第23号証の記載内容(摘記事項23(a)(b))から認めることができるものである。 そこで,甲第14号証に記載された「ティーエスワン配合カプセルT20」,「ティーエスワン配合カプセルT25」の乳糖水和物量は,「ティーエスワンカプセル20」,「ティーエスワンカプセル25」の乳糖水和物量に等しいものであるといえる。
そして,甲第14号証には,「ティーエスワン配合カプセルT20」,「ティーエスワン配合カプセルT25」の乳糖水和物測定値の平均値が,各々,93.08mg,115.63mgであることが記載されている(摘記事項14(a))。
以上のことから,本願出願日前に,以下のとおりの「ティーエスワンカプセル20」,「ティーエスワンカプセル25」が日本国内において販売されていたものと認める。

「テガフール20mg,ギメラシル5.8mg及びオテラシルカリウム19.6mgを有効成分として含み,乳糖水和物を93.08mg含有する硬カプセル剤」、
及び、
「テガフール25mg,ギメラシル7.2mg及びオテラシルカリウム24.5mgを有効成分として含み,乳糖水和物を115.63mg含有する硬カプセル剤」」

以下,上記2つの発明を総称して「引用発明2」と,又は,それらを区別して,順に,「引用発明2(20)」,「引用発明2(25)」という。

3-2 本件発明と引用発明2との対比,判断
(1)本件発明2について
本件発明2と引用発明2とを対比する。

引用発明2の「硬カプセル剤」が本件発明2の「経口投与用医薬組成物」に相当すること,また,引用発明2(20),引用発明2(25)中の三成分のモル比は,引用発明1(20),引用発明1(25)中のそれと同様,有効数字1桁で計算すると,ともに,「1:0.4:1」となることは,前記2-2に記載のとおりである。

よって,本件発明2と引用発明2とは,「(a)テガフール、(b)ギメラシル及び(c)オテラシルカリウムをモル比1:0.4:1で有効成分として含み、糖類を賦形剤として含有する経口投与用医薬組成物」である点で一致し,
本件発明2が,賦形剤として,「テガフール量に対して2?10質量倍のマンニトール、トレハロース及びマルトースから選択される1種又は2種以上の糖類」を含有し,「(ただし,乳糖と結晶セルロースを含むもの、及び乳糖とコーンスターチを含むものを除く)」と規定しているのに対し,
引用発明2(20)は,「乳糖水和物を93.08mg」,また,引用発明2(25)は,乳糖水和物を115.63mg」含有すると規定している点で相違する。
そして,上記相違点は,乳糖水和物の含有量の点で本件発明2と引用発明1との相違点と異なるが,引用発明2の数値は引用発明1の数値範囲に包含されるものであり,前記2-2(1)において,相違点について検討したのと同様の理由により,当業者が容易に想到し得たものと認めることはできない。

(2)本件発明4について
本件発明4と引用発明2とを対比する。

引用発明2の「硬カプセル剤」が本件発明2の「経口投与用医薬組成物」に相当すること,また,引用発明2(20),引用発明(25)中の三成分のモル比が,有効数字1桁で計算すると,ともに,「1:0.4:1」となることは,前記(1)に記載のとおりである。

よって,本件発明4と引用発明2とは,「糖類よりなる,(a)テガフール、(b)ギメラシル及び(c)オテラシルカリウムをモル比1:0.4:1で有効成分として含む経口投与用医薬組成物中における剤」の点で一致し,以下の点で相違する。

相違点1
本件発明4が,糖類について,「テガフール量に対して2?10質量倍のマンニトール、トレハロース及びマルトースから選択される1種又は2種以上の糖類」と規定しているのに対し,引用発明2(20)は,「乳糖水和物を93.08mg」,また,引用発明2(25)は,乳糖水和物を115.63mg」含有すると規定している点

相違点2
本件発明4が,剤の用途について,「当該有効成分の類縁物質の生成を抑制する剤」と規定しているのに対し,引用発明2には,なんら規定されていない点

上記相違点1は,前記(1)の相違点についての検討と,また,上記相違点2は,前記2-2(2)の相違点2についての検討と同様の理由により,当業者が容易に想到し得たものと認めることはできない。

(3)本件発明6について
本件発明6と引用発明2とを対比する。

上記引用発明2を「硬カプセル剤」という物としてではなく、その物を得る方法として捉えると,以下のように表現することができる。

「テガフール20mg,ギメラシル5.8mg及びオテラシルカリウム19.6mgを有効成分として含む硬カプセル剤を構成する医薬組成物に,乳糖水和物を93.08mgの範囲で含有せしめる方法」,
及び,
「テガフール25mg,ギメラシル7.25mg及びオテラシルカリウム24.5mgを有効成分として含む硬カプセル剤を構成する医薬組成物に,乳糖水和物を115.63mgの範囲で含有せしめる方法」
である。

以下、上記2つの発明を総称して「引用発明2-1」と,又は,それらを区別して,順に,「引用発明2-1(20)」,「引用発明2-1(25)」という。

そうすると,本件発明6と引用発明2-1との一致点,相違点2は,本件発明6と引用発明1-1との一致点,相違点2と同じであり,また,相違点1は以下のとおりである。

相違点1
本件発明6が,糖類について,「テガフール量に対して2?10質量倍のマンニトール、トレハロース及びマルトースから選択される1種又は2種以上の糖類」と規定しているのに対し,引用発明2(20)は,「乳糖水和物を93.08mg」,また,引用発明2(25)は,乳糖水和物を約115.63mg」含有すると規定している点

上記相違点1は,乳糖水和物の含有量の点で本件発明2と引用発明1-1との相違点と異なるが,引用発明2-1の数値は引用発明1-1の数値範囲に包含されるものである。よって,前記2-2(3)の相違点1についての検討と同様の理由により,当業者が容易に想到し得たものと認めることはできない。

第6 むすび
以上のとおりであるから,無効理由(1),(2)についてする無効審判の請求は,不適法な請求であり,その補正をすることができないものであるから,特許法第135条の規定により却下すべきものである。
また,無効理由(3)によっては,本件特許発明2,4,6の特許は,無効にすべきものとはいえないし,また他に同特許を無効とするべき理由を発見しない。

審判に関する費用については,特許法第169条第2項で準用する民事訴訟法第61条の規定により,その2分の1を請求人の負担とし,2分の1を被請求人の負担とする。
よって,結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
経口投与用医薬組成物
【技術分野】
【0001】
本発明は、テガフール、ギメラシル及びオテラシルカリウムを含有する経口投与用医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
テガフール、ギメラシル及びオテラシルカリウム配合剤は、フルオロウラシル(5-FU)のプロドラッグであるテガフールに5-FUの分解阻害剤であるギメラシル及びリン酸化阻害剤であるオテラシルカリウムを配合することで、抗腫瘍効果を高めながら消化器毒性を軽減するという特徴を有する抗腫瘍剤であり、経口投与可能な癌化学療法剤として、臨床現場で広く用いられている(特許文献1)。
【0003】
現在、テガフール、ギメラシル及びオテラシルカリウム配合剤はテガフール:ギメラシル:オテラシルカリウムのモル比が1:0.4:1の含有量にて「ティーエスワンカプセル」の名称でカプセル剤のみが販売されているが、その包装形態はPTP包装したカプセル剤をアルミ袋に装填する防湿包装となっている。
一方、医療現場では誤飲防止や服薬コンプライアンスを向上させるため、種々の薬剤を1回服用分毎に包装する一包化を進めており、防湿包装がなくても安定な製剤が望まれている。また、防湿包装が不要になることで包装開封の手間がなくなる、包剤ゴミがなくなるといったメリットが生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許2614164号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者は、前記テガフール、ギメラシル及びオテラシルカリウムについても他の薬剤との一包化を進めるべく、湿度安定性を評価したところ、当該有効成分を含有する組成物は加湿条件下で分解しやすく、類縁物質が多く生成することが判明した。
従って、本発明の目的は、加湿条件下でも安定であり経口投与可能なテガフール、ギメラシル及びオテラシルカリウム含有経口投与用医薬組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は上記課題を解決すべく、種々の賦形剤を用いて経口投与可能なテガフール、ギメラシル及びオテラシルカリウム含有製剤の製造を試みた。
その結果、使用する賦形剤により、当該製剤中の有効成分の安定性が異なることが判明した。
そこで、上記課題を解決するために更に検討した結果、特定の性質を有する糖類を賦形剤として用いることにより、当該製剤中の有効成分の類縁物質の生成量を抑制できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、(a)テガフール、(b)ギメラシル及び(c)オテラシルカリウムを有効成分として含み、25℃における臨界相対湿度が95%以上である糖類を賦形剤として含有する経口投与用医薬組成物を提供するものである。
また、本発明は、25℃における臨界相対湿度が95%以上である糖類よりなる、(a)テガフール、(b)ギメラシル及び(c)オテラシルカリウムを有効成分とする経口投与用医薬組成物中における当該有効成分の類縁物質生成抑制剤を提供するものである。
さらに、本発明は、(a)テガフール、(b)ギメラシル及び(c)オテラシルカリウムを有効成分とする経口投与用医薬組成物に、25℃における臨界相対湿度が95%以上である糖類を含有せしめることを特徴とする当該有効成分の類縁物質の生成を抑制する方法を提供するものである。
本発明において、「賦形剤」とは、製剤としての剤形を保つために有効成分以外で製剤中に最も多く含まれる添加剤を指す。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、加湿条件下でも製剤の安定性が確保されるため、類縁物質の生成を抑制することができるとともに防湿包装が不要となる。そのため、臨床現場で進められている一包化に対応可能な、テガフール、ギメラシル及びオテラシルカリウム含有経口投与用製剤が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
テガフール、ギメラシル及びオテラシルカリウムを有効成分として含有する医薬組成物は、携帯でき随時投与が可能であるという観点から、経口投与可能な剤形が好ましく、さらに製剤の安定性面から固形製剤が好ましい。また、これら有効成分のモル比がそれぞれ1:0.4:1である組成物が好ましい。
【0009】
本発明の経口投与用医薬組成物は、上記有効成分に25℃における臨界相対湿度が95%以上である糖類を賦形剤として含有するものである。
ここで、「25℃における臨界相対湿度が95%以上である」とは、25℃における相対湿度が95%以下ではほとんど吸湿しないことを言う。
【0010】
本発明における糖類は25℃における臨界相対湿度が95%以上である糖類であれば特に制限はなく、そのような糖類としては、例えば単糖類、オリゴ糖等を挙げることができる。
なお、これらの糖類は単独で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0011】
本発明における糖類のうちでも、前記有効成分の安定性の観点から特に糖アルコール又は二糖類が好ましく、更にマンニトール、乳糖、トレハロース又はマルトースが好ましく、マンニトール、トレハロース又はマルトースが最も好ましい。
【0012】
本発明における経口投与用医薬組成物の剤形は、固形製剤であれば特に限定されるものではないが、例えば、錠剤、顆粒剤、散剤及び細粒剤等を挙げることができる。なお、錠剤にはチュアブル錠、トローチ剤、ドロップ剤や口腔内で速やかに溶解、崩壊し、水なしでも服用できる組成物を含み、また用時溶解して用いる発泡錠も含む。顆粒剤、散剤及び細粒剤には、用時溶解して用いるドライシロップ剤を含み、また、口腔内で速やかに溶解、崩壊し、水なしでも服用できる粉粒状物を含む。
【0013】
本発明の経口投与用医薬組成物には、先に記した糖類の他に本発明の効果を妨げない範囲で、一般に用いられる種々の製剤添加物を含んでいても良い。製剤添加物としては、一般に用いられるものであれば特に制限はなく、例えば、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、着色剤、着香剤、及び矯味剤等を挙げることができる。
【0014】
崩壊剤としては、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルメロース、クロスポビドン、カルメロースカルシウム及びクロスカルメロースナトリウム等を挙げることができる。結合剤としては、ヒドロキシプロピルセルロース、ピプロメロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等を挙げることができる。滑沢剤としては、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク及びショ糖脂肪酸エステル等を挙げることができる。着色剤としては、食用黄色5号色素、食用赤色2号色素、食用青色2号色素、食用レーキ色素、黄色三二酸化鉄及び酸化チタン等を挙げることができる。着香剤としては、オレンジ、レモン各種香料等を挙げることができる。矯味剤としては、L-メントール、カンフル、ハッカ等を挙げることができる。
【0015】
本発明の経口投与用医薬組成物における有効成分であるテガフール、ギメラシル及びオテラシルカリウムの含有量は、剤型、投与計画等により変わり、特に限定されず適宜選択すればよいが、いずれも通常製剤中の有効成分量を1?70質量%程度とするのが好ましい。
本発明の経口投与用医薬組成物における25℃における臨界相対湿度が95%以上である糖類の含有量は、本発明の経口投与用医薬組成物の有効成分の安定性の点から、テガフール量に対して、0.5?50質量倍、更に1?25質量倍、特に2?10質量倍であるのが好ましい。
また先に記した賦形剤中、本発明における25℃における臨界相対湿度が95%以上である糖類が占める割合は有効成分の安定性の点から、全賦形剤量の50?100質量%であるのが好ましく、更に割合が70?100質量%の範囲が特に好ましい。
【0016】
本発明経口投与用医薬組成物中において、有効成分の安定性の点から、前記糖類と有効成分とは均一に混合して配合されているのが好ましい。従って、前記糖類と有効成分とは、均一に混合して配合できる工程で配合して製剤化するのが好ましい。すなわち、有効成分と前記糖類とは、予め均一に混合して製剤化することが好ましい。
【0017】
本発明の経口投与用医薬組成物は、公知の経口投与製剤の製造方法により製することができる。例えば、固形製剤の造粒方法としては、流動層造粒法、撹拌造粒法、転動流動造粒法、押し出し造粒法、噴霧造粒法及び破砕造粒法等を用いることができる。
【0018】
本発明によれば、前記糖類を配合することにより、テガフール、ギメラシル及びオテラシルカリウムを有効成分とする経口投与用医薬組成物を製造した際に発生する可能性がある当該有効成分の類縁物質の生成を抑制することができる。ここで、当該類縁物質とは、テガフール、ギメラシル、オテラシルカリウム及び賦形剤を含む医薬添加剤以外のものを言い、特に当該3つの有効成分の構造的類縁化合物のことを指す。具体的にはある一定条件下でデガフール、ギメラシル、オテラシルカリウム及び賦形剤を含む医薬添加剤を含有する組成物を保存した後、日本薬局方一般試験法物理学的試験法収載液体クロマトグラフィー法により測定したときに検出される当該経口投与用医薬組成物の上記3有効成分及び賦形剤を含む医薬添加剤以外の物質である。
【実施例】
【0019】
以下に、実施例、比較例及び試験例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0020】
実施例1
テガフール25.00g、ギメラシル7.25g、オテラシルカリウム24.50gをポリ袋中で1分間混合した。目開き500μmの篩で全量篩過した後、再度ポリ袋中で1分間混合した。
この混合品1.13gとマンニトール1.13gを乳鉢中で混合し、散剤を得た。なお、この製剤中において賦形剤中に糖類が占める割合は100%である。
【0021】
実施例2-3及び比較例1-5
実施例1と同様の方法に従って、表1に示す糖類を表1に記載の量で用いて散剤を得た。
【0022】
試験例1
水分吸着測定装置(DVS-1、Surface Measurement Systems Ltd.)を用い、表1に示した糖類の25℃における臨界相対湿度を測定した。
【0023】
試験例2
実施例1-3及び比較例1-5で得られた散剤を60℃ 75%R.H.で10日間保存した後、生成する類縁物質量を日本薬局方一般試験法物理学的試験法収載液体クロマトグラフィー法により測定した。なお,総類縁物質量とはテガフール、ギメラシル及びオテラシルカリウムと賦形剤以外のピークを類縁物質ピークとし、このピーク面積から有効成分面積をもとに類縁物質量を算出した総和をいう。
【0024】
【表1】

【0025】
表1の結果から明らかなように25℃における臨界相対湿度が95%以上である糖類を用いた実施例1-3の総類縁物質量は極めて少なく、非常に安定であった。一方、25℃における臨界相対湿度が95%よりも低い糖類を用いた比較例1-4の総類縁物質量は極めて多く、安定な製剤とは言い難かった。また、25℃における臨界相対湿度がない糖類を用いた比較例5の総類縁物質量は比較例1-4と比較すれば少ないものの、実施例1-3と比較すると多かった。
【0026】
以上の結果より、25℃における臨界相対湿度が95%以上である糖類を用いることで60℃ 75%R.H.といった非常に過酷な条件下でも高い安定性を有する製剤が得られることが判明した。加湿条件下でも製剤の安定性が確保されるため防湿包装が不要となり、臨床現場で進められている一包化に対応可能な、テガフール、ギメラシル及びオテラシルカリウム配合経口投与製剤が得られる。
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(削除)
【請求項2】
(a)テガフール、(b)ギメラシル及び(c)オテラシルカリウムをモル比1:0.4:1で有効成分として含み、テガフール量に対して2?10質量倍のマンニトール、トレハロース及びマルトースから選択される1種又は2種以上の糖類を賦形剤として含有する経口投与用医薬組成物(ただし、乳糖と結晶セルロースを含むもの、及び乳糖とコーンスターチを含むものを除く)。
【請求項3】
(削除)
【請求項4】
テガフール量に対して2?10質量倍のマンニトール、トレハロース及びマルトースから選択される1種又は2種以上の糖類よりなる、(a)テガフール、(b)ギメラシル及び(c)オテラシルカリウムをモル比1:0.4:1で有効成分として含む経口投与用医薬組成物中における当該有効成分の類縁物質の生成を抑制する剤。
【請求項5】
(削除)
【請求項6】
(a)テガフール、(b)ギメラシル及び(c)オテラシルカリウムをモル比1:0.4:1で有効成分として含む経口投与用医薬組成物に、テガフール量に対して2?10質量倍のマンニトール、トレハロース及びマルトースから選択される1種又は2種以上の糖類を含有せしめることを特徴とする当該有効成分の類縁物質の生成を抑制する方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2015-09-30 
結審通知日 2015-10-08 
審決日 2016-03-28 
出願番号 特願2009-86945(P2009-86945)
審決分類 P 1 113・ 121- YA (A61K)
P 1 113・ 113- YA (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中尾 忍  
特許庁審判長 内田 淳子
特許庁審判官 村上 騎見高
穴吹 智子
登録日 2014-06-06 
登録番号 特許第5553522号(P5553522)
発明の名称 経口投与用医薬組成物  
代理人 特許業務法人アルガ特許事務所  
代理人 高野 登志雄  
代理人 山本 博人  
代理人 村田 正樹  
代理人 村田 正樹  
代理人 高野 登志雄  
代理人 特許業務法人アルガ特許事務所  
代理人 中嶋 俊夫  
代理人 中嶋 俊夫  
代理人 松葉 栄治  
代理人 山本 博人  
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