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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C04B
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C04B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C04B
審判 査定不服 特174条1項 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C04B
管理番号 1316426
審判番号 不服2014-10230  
総通号数 200 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-08-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-06-02 
確定日 2016-06-22 
事件の表示 特願2006-545751「半導体材料処理装置におけるイットリアでコーティングされたセラミック部品及びその部品を製造する方法」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 7月14日国際公開、WO2005/062758、平成19年 6月28日国内公表、特表2007-516921〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯

本願は、平成16年12月 9日(パリ条約による優先権主張:平成15年12月18日、米国)を国際出願日とする出願であって、原審にて、平成25年 7月31日付けで通知された拒絶理由により、平成26年 1月30日付けで拒絶査定がされ、同年 6月 2日付けでこの査定を不服とする本件審判が請求されると同時に手続補正がされ、当審にて、平成27年 5月19日付けで前記手続補正について補正の却下の決定をして拒絶理由が通知され、これに対し同年 8月24日付けで誤訳訂正書が提出されたものである。

第2.本願発明

本願の請求項1,12,20に係る発明(以下、「本願発明1,12,20」という。)について、上記誤訳訂正書により補正された特許請求の範囲の請求項1,12,20には、次のとおり記載されている。

【請求項1】
半導体材料処理装置におけるイットリアでコーティングされたセラミック部品であって、
セラミック材料を含む焼結された基板と、
前記基板が未焼結のときに前記未焼結の基板の少なくとも1表面にサーマルスプレーされた第1イットリア含有コーティングと、
前記セラミック材料とイットリアとを含む多相酸化物を前記基板と前記第1イットリア含有コーティングとの界面に具備し、前記未焼結の基板と前記未焼結の基板にサーマルスプレーされた前記第1イットリア含有コーティングとを一緒に焼結する工程により形成された結合層と、を備え、
(i)前記第1イットリア含有コーティングは、プラズマ調整処理によって処理され、一緒に焼結された後に露出している表面に付着したイットリアのパーティクルを減少させた、露出している表面を含み、あるいは、
(ii)前記セラミック部品は、焼結された前記第1イットリア含有コーティングの上に形成されて前記露出している表面に付着したイットリアのパーティクルを覆うサーマルスプレーされた状態の第2イットリア含有コーティングをさらに備え、
前記(i)では、前記第1イットリア含有コーティングは、20%以下の多孔性を有し、95%から100%の立方晶の結晶構造を有し、
前記(ii)では、前記第1イットリア含有コーティング及び前記第2イットリア含有コーティングは、20%以下の多孔性を有し、95%から100%の立方晶の結晶構造を有する、
ことを特徴とするセラミック部品。

【請求項12】
半導体材料処理装置におけるイットリアでコーティングされたセラミック部品の製造方法であって、
未焼結体の基板の少なくとも1表面に対して、未焼結の第1イットリア含有コーティングをサーマルスプレーする第1サーマルスプレー工程と、
サーマルスプレーされた状態の前記未焼結の第1イットリア含有コーティングと前記未焼結体の基板とを一緒に焼結して、前記セラミック材料とイットリアとを含む多相酸化物を該焼結された前記基板と前記第1イットリア含有コーティングとの界面に具備する結合層を形成させる工程と、
前記第1イットリア含有コーティングの上に第2イットリア含有コーティングをサーマルスプレーする第2サーマルスプレー工程と、を含み、
前記第1イットリア含有コーティング及び前記第2イットリア含有コーティングは、20%以下の多孔性を有し、95%から100%の立方晶の結晶構造を有する、
ことを特徴とする製造方法。

【請求項20】
半導体材料処理チャンバーにおけるイットリアでコーティングされたセラミック部品の製造方法であって、
セラミック材料を含む未焼結体の基板を準備する工程と、
前記未焼結体の基板の少なくとも1表面に第1イットリア含有コーティングをサーマルスプレーする工程と、
前記未焼結体の基板と、サーマルスプレーされた状態の前記第1イットリア含有コーティングとを一緒に焼結し、前記セラミック材料とイットリアとを含む多相酸化物を該焼結された前記基板と前記第1イットリア含有コーティングとの界面に具備する結合層を形成する工程と、
付随的に、前記第1イットリア含有コーティングの露出している表面をプラズマ調整処理によって処理して、一緒に焼結された後に前記露出している表面に付着したイットリアのパーティクルを減少させる工程と、
焼結された前記第1イットリア含有コーティングの上に第2イットリア含有コーティングをサーマルスプレーして、一緒に焼結された後に前記露出している表面に付着したイットリアのパーティクルを覆う工程と、
を含み、
前記第1イットリア含有コーティング及び前記第2イットリア含有コーティングは、20%以下の多孔性を有し、95%から100%の立方晶の結晶構造を有する、
ことを特徴とする製造方法。

第3.当審及び原査定の拒絶理由

当審の拒絶理由の一つは、要するに、
「補正は、【請求項20】(審決注:補正前【請求項21】)に、プラズマ調整処理工程の後に第2サーマルスプレー工程を行うことが記載されている点で、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、まとめて「当初明細書」という。)に記載した事項の範囲内においてするものでないから、特許法第17条の2第3項の規定する要件を満たしていない。」
というもの(以下、「新規事項追加」という。)であり、
他の一つは、要するに、
「【0022】に記載された接着強度は、技術常識を考慮しても、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されたものではないから、発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。」
というもの(以下、「実施可能要件違反」という。)であり、
他の一つは、要するに、
「未焼結体にサーマルスプレーをすることを特定する本願発明12が、発明の詳細な説明に記載した発明であるといえないから、特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。」
というもの(以下、「サポート要件違反」という。)である。

そして原査定の拒絶理由の一つは、要するに、
「本願発明1は、その優先権の基礎とされた先の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、
特開2002-1865号公報(以下、「引用例1」という。)
国際公開第02/03427号(以下、「引用例2」という。)
に記載された発明に基いて、その優先権の基礎とされた先の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」
というもの(以下、「進歩性要件違反」という。)である。

第4.新規事項追加について

(1)明細書又は図面に記載した事項とは、当業者によって、明細書又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項であり、補正が、このようにして導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであるときは、当該補正は明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてするものということができるとされている(知財高判平20.5.30、平18(行ケ)第10563号)。
そこで、補正後の請求項20に記載された技術的事項と当初明細書のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係について検討する。

(2)【請求項20】には、次の記載がある(下線は、当審にて付記)。

「前記未焼結体の基板と、サーマルスプレーされた状態の前記第1イットリア含有コーティングとを一緒に焼結し、前記セラミック材料とイットリアとを含む多相酸化物を該焼結された前記基板と前記第1イットリア含有コーティングとの界面に具備する結合層を形成する工程と、
付随的に、前記第1イットリア含有コーティングの露出している表面をプラズマ調整処理によって処理して、一緒に焼結された後に前記露出している表面に付着したイットリアのパーティクルを減少させる工程と、
焼結された前記第1イットリア含有コーティングの上に第2イットリア含有コーティングをサーマルスプレーして、一緒に焼結された後に前記露出している表面に付着したイットリアのパーティクルを覆う工程と、
を含み、・・・」

この記載は、セラミック部品の製造方法に係る発明である本願発明20において、共焼結工程後、プラズマ調整処理工程と第2イットリア含有コーティング工程を続けて行うことを技術的事項として特定するものと認められる。

(3)これに対し、当初明細書には、プラズマ調整処理工程や第2イットリア含有コーティング工程について、次のとおり記載されている(下線は、当審にて付記)。

【0003】
半導体材料処理装置においてイットリアでコーティングされたセラミック部品の別の好適な実施形態は、セラミック材料を含む基板;サーマルスプレーされた最初のイットリア含有コーティング;セラミック材料とイットリアとの多相酸化物を基板と最初のイットリア含有コーティングとの界面に備える結合層を備える。結合層は、基板と一緒に焼結されて形成され、サーマルスプレーされて最初のコーティングを施される。別の好適な実施形態では、イットリアコーティングがコーティングされた露出している表面は、プラズマ調整処理によって処理され、一緒に焼結された後に露出している表面に付着するパーティクルを減少させる。さらに別の好適な実施形態では、サーマルスプレーされた第2のイットリア含有コーティングが、第2のイットリア含有コーティングの上で焼結され、イットリアのパーティクルを覆うようになる。

【0018】
・・・。好適な実施形態では、一緒に焼結された部品の基板70上で形成されたイットリア含有コーティング80の露出している表面82は、露出している表面に付着したイットリアの付着パーティクルを減少させるように、プラズマ調整処理によって処理される。・・・
【0019】
イットリアでコーティングされたセラミック部品165の別の好適な実施形態は、図2に示される。この実施形態では、イットリア含有基板70の露出された表面82上のイットリアのパーティクルは、少なくとも1つの追加的なイットリア含有コーティング90を基板70の上にあるイットリア含有コーティング80にサーマルスプレーすることにより被覆される。外側のイットリア含有コーティング90は、下層であるイットリア含有コーティング80の露出している表面82上のイットリアのパーティクルを覆うのに十分な厚みを有し、部品165がプラズマチャンバーに設置されるとき、イットリアのパーティクルがプラズマにさらされないようにする。

【請求項20】
前記基板と、サーマルスプレーされた状態の第1イットリア含有コーティングとを一緒に焼結し、前記セラミック材料とイットリアとを含む多相酸化物を前記基板と前記第1イットリア含有コーティングとの界面に具備する結合層を形成する焼結工程をさらに備えた
ことを特徴とする請求項19に記載の製造方法。
【請求項21】
前記焼結工程の後に、前記第1イットリア含有コーティングの上に第2イットリア含有コーティングをサーマルスプレーする第2サーマルスプレー工程をさらに備えた
ことを特徴とする請求項20に記載の製造方法。
【請求項22】
前記焼結工程の後に、プラズマ調整処理によって前記第1イットリア含有コーティングの露出している表面を処理して、一緒に焼結された後に露出している表面に付着するイットリアのパーティクルを減少させるプラズマ調整処理工程をさらに備えた
ことを特徴とする請求項20に記載の製造方法。

【請求項30】
半導体材料処理チャンバーにおけるイットリアでコーティングされたセラミック部品の製造方法であって、
・・・
前記基板と、サーマルスプレーされた状態の前記第1イットリア含有コーティングとを一緒に焼結し、前記セラミック材料とイットリアとを含む多相酸化物を前記基板と前記第1イットリア含有コーティングとの界面に具備する結合層を形成する工程と、
(i)前記第1イットリア含有コーティングの露出された表面をプラズマ調整処理によって処理して、一緒に焼結された後に前記露出している表面に付着するパーティクルを減少させる工程、あるいは、
(ii)焼結された前記第1イットリア含有コーティングの上に第2イットリア含有コーティングをサーマルスプレーして、一緒に焼結された後に前記露出している表面に付着したイットリアのパーティクルを覆う工程と、
を備えたことを特徴とする製造方法。

(4)以上の記載はいずれも、共焼結工程後に、プラズマ調整処理工程、あるいは、第2イットリア含有コーティング工程の一方を、それぞれ異なる態様として実施することを説明したものと認められ、両者を併用することを意味する記載はない。そして、技術的にも、パーティクルを覆う第2イットリアコーティングをする場合、プラズマ調整処理によりパーティクルを減少させる必要はなく、両者を併用することが技術常識に照らして当初明細書に記載されていたともいえない。
してみると、共焼結工程後に、プラズマ調整処理工程と第2イットリア含有コーティング工程を続けて行うという補正後の請求項20に記載された技術的事項は、当業者によって、当初明細書のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものといえる。

第5.実施可能要件違反について

(1)物の発明における発明の実施とは、その物を生産、使用等をする行為をいうから(特許法第2条第3項第1号)、物の発明については、明細書にその物を製造する方法についての具体的な記載が必要であるが、そのような記載がなくても明細書及び図面の記載並びに出願当時の技術常識に基づき当業者がその物を製造することができるのであれば、実施可能要件を満たすということができるとされている(知財高判平25.4.11、平24(行ケ)第10299号)。
そこで、物の発明である本願発明1について、発明の詳細な説明にその物を製造する方法についての具体的な記載があるか、そのような記載がなくても発明の詳細な説明の記載及び出願当時の技術常識に基づき当業者がその物を製造することができるかについて検討する。

(2)発明の詳細な説明には、本願発明1の物を製造する方法について、実施例等の具体的な記載はないが、好適な実施形態について、【0012】【0016】【0022】に次の記載がある(下線は、当審にて付記)。

「・・・基板70のセラミック材料は、例えば、化学量論な及び非化学量論なアルミナ(Al2O3)、石英、酸化ジルコニウム、炭化シリコン(SiC)、窒化シリコン(Si3N4)、炭化ほう素(B4C)、窒化ほう素(BN)、窒化アルミニウム、又はそれらの混合物を含んでもよい。好適な実施形態では、セラミック材料はアルミナである。」

「・・・結合層74は、適用されたイットリア含有コーティング80の基板70へのボンディング強度を高める。・・・基板70とイットリア含有コーティング80との間で形成された結合層74の組成と構造とは、基板のセラミック材料に依存している。例えば、基板がアルミナである実施形態では、結合層は、3Y2O3- 5Al2O3及び/又はY2O3-Al2O3などのようなイットリア及びアルミナを含む多相酸化物構造を含んでも良い。・・・」

「・・・好適な実施形態では、イットリア含有コーティング80は、予め基板及び/又は成形中間層を粗くせずに、基板70に対する適切な密着性を確保する。その結果、追加的な工程を省くことができる。イットリア含有コーティング80は、下層の基板70に対する高い接着強度を有する。好ましくは、イットリア含有コーティングは、およそ200ksi(1,379.3MPa)からおよそ400ksi(2,758.6MPa)の張力の接着強度がある。」

以上のとおり、発明の詳細な説明には、本願発明1の好適な実施形態として、基板をアルミナとし、3Y_(2)O_(3)-5Al_(2)O_(3)を結合層とするイットリア含有コーティングをすれば、コーティングと基板の接着強度が1,379.3MPa以上となる物が製造できることが記載されている。
そこで、これらの記載と本願出願当時の技術常識に基づき当業者がこの物を製造することができるかについて検討する。

(3)後述する先行技術文献の引用例1には、アルミナ基板にイットリアを溶射してYAG(=3Y_(2)O_(3)-5Al_(2)O_(3))を反応層(=結合層)として形成した実施例において、測定された剥離強度(=接着強度)が、23?34MPaにすぎないこと(摘示1-7)が記載されている。この記載は、基板材料や結合層の開示だけでは、当業者は上記実施形態の物を製造することができないことを裏付けるものといえる。
さらに、溶射被膜の接着強度は、通常、基板と同一材料からなる二つの円柱を、溶射皮膜と該皮膜より強力な接着剤を介して接合した試験片を作成し、これを引張試験機に取付けて測定する(要すればASTM C633参照)から、円柱を構成する基板材料の引張強度を超える接着強度を測定することは、原理的にできないのが技術常識であるが、アルミナの引張強度は110?150MPa程度(要すれば、「低温工学」Vol.36 No.11(1998)p.718等参照)にすぎない。これによると、上記実施形態の物は、そもそも本願出願当時の技術常識に反するものといえる。
したがって、発明の詳細な説明の記載及び本願出願当時の技術常識に基づき当業者が上記実施形態の物を製造することができるとはいえないから、本願の発明の詳細な説明の記載は、実施可能要件を充足しない。

第6.サポート要件違反について

(1)特許請求の範囲の記載が、明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものとされている(知財高判平17.11.11、平成17年(行ケ)10042号)。
そこで、本願発明12が、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かについて検討する。

(2)発明の詳細な説明には、【0001】に「・・・そのような処理チャンバーの中のプロセスガスとプラズマとの腐食性、およびチャンバーで処理される基板のパーティクル及び/又は金属による汚染を最小にしたいという要求のために、その装置のプラズマにさらされる部品は、そのようなガス及びプラズマに耐浸食性と耐腐食性があることが望ましい。」と記載されている(下線は、当審にて付記)から、セラミック部品の製造方法に係る本願発明12の課題とは、プラズマ耐食性を備えたセラミック部品を製造することであると認められる。
一方、【請求項12】には、「未焼結体の基板の少なくとも1表面に対して、未焼結の第1イットリア含有コーティングをサーマルスプレーする」ことが記載され、これに関し、平成24年1月20日付けの手続補正により補正された発明の詳細な説明の【0013】には、「イットリアでコーティングされたセラミック部品65の基板70は、例えば、セラミック材料のスラリーを準備して、締固め技術やスリップキャスティングなどによりスラリーから必要な形で未焼結体を形成することによって製造することができる。・・・」と記載されている(下線は、当審にて付記)から、本願発明12は、セラミック材料のスラリーを締固めやスリップキャスティングした状態の未焼結体(すなわち、「グリーン」)にサーマルスプレーをする工程を有するものと認められる。

(3)そこで、未焼結体にサーマルスプレーをする工程を有するセラミック部品の製造方法が、当業者が、プラズマ耐食性があるセラミック部品を製造することができると認識できる範囲のものであるかについて検討する。
まず、発明の詳細な説明では、「第5.(2)」で述べたように、セラミック部品を製造する方法について、実施例等の具体的な記載がないから、製造されたセラミック部品のプラズマ耐食性の具体的な開示もない。
次に、本願出願時の技術常識を考慮するに、例えば、先行技術文献(特開昭63-33504号公報2頁左上欄12?17行)には、粉末成形体(グリーン)に溶射をすると、割れが発生することが記載されている。
してみると、未焼結体(=グリーン)にサーマルスプレー(=溶射)をする工程を経て製造されたセラミック部品が、発明の詳細な説明にその記載や示唆がなくとも出願時の技術常識に照らし当業者がプラズマ耐食性を有するものと認識できるとはいえない。
したがって、本願発明12は、当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるとはいえないから、本願の特許請求の範囲の記載は、サポート要件を充足しない。

なお、具体的な開示をしなくとも、未焼結体の溶射を経てプラズマ耐食性を有するセラミック部品が製造できるのであれば、以下のとおり、原査定の拒絶理由が解消しない。

第7.進歩性要件違反について

原査定の拒絶理由に対する反論の根拠であった接着強度の数値限定(平成26年 1月15日付け意見書の「4.(2)」参照)が、補正により各請求項から削除されたので、進歩性要件違反についても検討する。

1.引用例の記載

引用例1

摘示1-1(【0004】-【0006】)
「【発明が解決しようとする課題】このため、半導体製造装置用チャンバーの壁面が腐食され、パーティクルが発生し、このパーティクルがウエハー上に落下するという問題がある。こうなると、絶縁不良や導通不良の現象が生じて、半導体不良の原因となる。このため、チャンバーやドームの壁面からのウエハーへのパーティクルの移行を防止する技術が望まれている。
チャンバーやドームをアルミナ等のセラミックスによって形成し、この表面に耐蝕膜を被覆する技術は知られている。この場合には、しかし、前記したパーティクルの発生や落下を防止するだけでなく、耐蝕膜が剥離しにくいことが必須であり、特に腐食物質に接触する環境下で熱サイクルを多数回加えた後においても耐蝕膜が剥離せず、チャンバーやドームの表面に強固に付着していることが必須である。
本発明の課題は、アルミナからなる基体と、この基体上に形成されている膜との積層体であって、膜が基体から剥離しにくく、特には腐食物質に接触した後においても膜が剥離しにくいような積層体を提供することである。」

摘示1-2(【0008】-【0013】)
「【課題を解決するための手段】本発明は、アルミナからなる基体と、この基体上に形成されているイットリウム化合物膜との積層体であって、基体とイットリウム化合物膜との界面にアルミナとイットリウム化合物との反応生成物が存在することを特徴とする。
本発明者は、後述するような特定の製造方法によってアルミナ基体上にイットリウム化合物膜を形成した場合に、条件によっては両者の界面に沿って、アルミナとイットリウム化合物との反応生成物が生成することを発見した。そして、こうした反応生成物が生成した場合には、例えば800℃と室温との間で熱サイクルを加えた後にも、イットリウム化合物膜が剥離しないことを見出し、本発明に到達した。
この反応生成物は、通常は基体とイットリウム化合物との界面に沿って層状に生成し、中間層を構成している。
・・・
前記反応生成物は、好ましくはイットリアとアルミナとの複合酸化物からなる結晶相を含んでいる。この複合酸化物の種類は限定されないが、例えば以下のものである。
・・・
イットリウム化合物膜を構成するイットリウム化合物としては、イットリア、イットリアを含む固溶体(ジルコニア-イットリア固溶体、希土類酸化物-イットリア固溶体)、・・・等を例示できる。・・・特にイットリア単体またはフッ化イットリウムが好ましい。」

摘示1-3(【0020】)
「本発明の積層体を製造するためには、基体またはその前駆体の上にイットリウム化合物膜を溶射して溶射膜を形成し、この溶射膜を熱処理する。」

摘示1-4(【0021】)
「基体は、焼結後の緻密質アルミナからなっていてよいが、アルミナの多孔質焼結体であってもよい。また、別の基材の上にアルミナを含有するペースト層ないし塗布層を形成し、後の熱処理によってこのペースト層や塗布層を焼結させることによって、アルミナ基体を形成することができる。基体の形状も特に限定はなく、板状、膜状等であってよい。」

摘示1-5(【0025】)
「溶射膜を形成した後に、溶射膜と基体またはその前駆体を熱処理することによって、少なくとも溶射膜を更に焼結させ、溶射膜中の気孔を消滅または減少させる。中間層を生成させる上で、熱処理温度は1300℃以上が好ましい。熱処理温度の上限は、1800℃以下であることが好ましい。熱処理時間は、1時間以上が好ましい。」

摘示1-6(【0051】)
「(表面)1?3μm径のイットリア粒子が焼結した構造をとっていた(図4)。X線回折装置より、イットリア膜の結晶相を分析した。膜の上方からX線を入射させた。立方晶系(cubic )のY_(2 )O_(3 )が検出された。非加熱処理品(比較例1)の回折ピークの半値幅(FWHM)に比べ、熱処理をした膜表面のピークの半値幅は小さかった。これは1600℃で熱処理をすることにより、膜であるイットリアの結晶性が上がったことを示している。・・・」

摘示1-7(【表2】【表3】)

引用例2

摘示2-1(請求項15)
「A method of plasma conditioning a shaped surface of a ceramic part of a semiconductor processing chamber, the method comprising treating the shaped surface to reduce particles thereon by contacting the shaped surface with a high intensity plasma.」
(当審訳:「半導体処理用チャンバのセラミック部品の成形面のプラズマ調整方法であって、該方法は、該成形面上のパーティクルを減少させるために、高強度のプラズマを成形面に接触させることによって、成形面を処理することを含む。)

2.引用発明の認定

引用例1には、半導体製造装置のチャンバーを形成するセラミックスについて、アルミナ基体の表面に膜を被覆した積層体とすること(摘示1-1)、当該膜をイットリウム化合物、特にイットリアにして、特定の製造方法により基体と膜との界面に両者の反応生成物であるイットリアとアルミナとの複合酸化物の結晶相を含む中間層を生成すること(摘示1-2)、該製造方法が、基体またはその前駆体上にイットリウム化合物膜を溶射し、この溶射膜を熱処理するものであり(摘示1-3)、熱処理によって少なくとも溶射膜は焼結し中間層を生成すること(摘示1-5)が、それぞれ記載されている。
してみると、引用例1には、半導体製造装置のセラミックスチャンバーについて、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「半導体製造装置におけるイットリアで被覆されたセラミックスチャンバーであって、
アルミナ基体と、
前記基体またはその前駆体の上に溶射して形成されたイットリア溶射膜と、
前記アルミナとイットリアとの複合酸化物を前記基体と前記イットリア溶射膜との界面に含み、少なくとも溶射膜を焼結する熱処理により形成された中間層を有するセラミックスチャンバー。」

3.発明の対比

本願発明1と引用発明とを対比すると、引用発明の「半導体製造装置」が本願発明1の「半導体材料処理装置」に相当し、以下、「被覆」が「コーティング」、「セラミックチャンバー」が「セラミック部品」、「アルミナ」が「セラミック材料」、「基体(または前駆体)」が「基板」、「溶射」が「サーマルスプレー」、「イットリア溶射膜」が「第1イットリア含有コーティング」、「複合酸化物」が「多相酸化物」、「熱処理」が「工程」、「中間層」が「結合層」にそれぞれ相当する。
したがって、本願発明1のうち、
「半導体材料処理装置におけるイットリアでコーティングされたセラミック部品であって、
セラミック材料を含む基板と、
前記基板の少なくとも1表面にサーマルスプレーされた第1イットリア含有コーティングと、
前記セラミック材料とイットリアとを含む多相酸化物を前記基板と前記第1イットリア含有コーティングとの界面に具備し、前記基板にサーマルスプレーされた前記第1イットリア含有コーティングを焼結する工程により形成された結合層とを備えるセラミック部品。」
の点は、引用発明と一致し、次の点で両者は相違する。

相違点1:本願発明1の基板が、「焼結された」ものであり、該基板が「未焼結のときに」サーマルスプレーされ、サーマルスプレーされた第1イットリア含有コーティングと「一緒に」焼結されるのに対し、引用発明の基体または前駆体の詳細が不明な点。

相違点2:本願発明1が、「(i)前記第1イットリア含有コーティングは、プラズマ調整処理によって処理され、一緒に焼結された後に露出している表面に付着したイットリアのパーティクルを減少させた、露出している表面を含み、あるいは、(ii)前記セラミック部品は、焼結された前記第1イットリア含有コーティングの上に形成されて前記露出している表面に付着したイットリアのパーティクルを覆うサーマルスプレーされた状態の第2イットリア含有コーティングをさらに備え」るのに対し、引用発明は、イットリア溶射膜に、プラズマ調整処理も、第2イットリア含有コーティングもなされていない点。

相違点3:本願発明1が、「前記(i)では、前記第1イットリア含有コーティングは、20%以下の多孔性を有し、95%から100%の立方晶の結晶構造を有し、前記(ii)では、前記第1イットリア含有コーティング及び前記第2イットリア含有コーティングは、20%以下の多孔性を有し、95%から100%の立方晶の結晶構造を有する」のに対し、引用発明のイットリア溶射膜の気孔率や結晶割合が不明な点。

4.相違点の判断

相違点1について
引用発明の基体または前駆体について、引用例1には、焼結された緻密質や多孔質アルミナを基体とするほかに、別の基材の上にアルミナを含有する塗布層を形成し、後の熱処理によって焼結させて基体とすること(摘示1-4)が記載されており、この熱処理とは、溶射後に溶射膜を焼結する熱処理を意味すると認められる(摘示1-3,1-5)。
してみると、引用発明の基体も最終的に「焼結された」ものであり、また、前駆体とは、該基体が焼結前の塗布層の状態、すなわち「未焼結のとき」を意味し、さらに、この前駆体(塗布層)が、溶射膜と「一緒に」焼結されるものと認められる。
したがって、引用発明において前駆体を使用した場合に、相違点1は実質的な差異にはならない。

相違点2について
(i)のプラズマ調整処理について、本願明細書の【0018】には引用例2の優先権の基礎出願が引用されており、この引用例2には、半導体処理用チャンバのセラミック部品の成形面上のパーティクルを減少させるために、該成形面に高強度のプラズマを接触させること(摘示2-1)が記載されている。
してみると、引用発明のセラミックチャンバーも、パーティクルの発生防止を課題としている(摘示1-1)から、引用発明において、成形面を構成する熱処理後のイットリア溶射膜に、引用例2に記載されたプラズマ調製処理を施すこと、すなわち、相違点2に係る本願発明1の(i)の構成を採用することは、共通の課題の解決を目的として、当業者が容易になし得たことである。

相違点3について
相違点2に合わせて、(i)のプラズマ調整処理をする場合について検討する。
引用例1には、引用発明について、熱処理によってイットリア溶射膜中の気孔が消滅又は減少し(摘示1-5)、立方晶の結晶性が向上すること(摘示1-6)が記載され、その実施例において、膜の結晶相が「Cubic-Y_(2)O_(2)(立方晶)」であったことも記載されている。
してみると、相違点3は、実質的な差異でないか、少なくとも当業者にとって設計的事項の範囲内のものといえる。

なお、請求項1から削除された接着強度については、「第5.(3)」にて検討したとおり、技術常識に反し、当業者が実施可能なものでないから、これを本願発明1が当然に有する効果としても参酌することはできない。
したがって、本願発明1に、引用例1,2の記載から予期し得ない効果は見いだせない。

5.まとめ

したがって、本願発明1は、引用例1、2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第8.むすび

以上のとおり、本願は、補正が、特許法第17条の2第3項の規定する要件を満たしておらず、発明の詳細な説明及び特許請求の範囲の記載が、同法第36条第4項第1号及び同条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。また、本願発明1は、同法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-01-21 
結審通知日 2016-01-26 
審決日 2016-02-08 
出願番号 特願2006-545751(P2006-545751)
審決分類 P 1 8・ 55- WZ (C04B)
P 1 8・ 536- WZ (C04B)
P 1 8・ 121- WZ (C04B)
P 1 8・ 537- WZ (C04B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 武石 卓小川 武  
特許庁審判長 真々田 忠博
特許庁審判官 大橋 賢一
中澤 登
発明の名称 半導体材料処理装置におけるイットリアでコーティングされたセラミック部品及びその部品を製造する方法  
代理人 特許業務法人明成国際特許事務所  
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