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審決分類 |
審判 査定不服 発明同一 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G09G 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G09G 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G09G 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G09G |
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管理番号 | 1316581 |
審判番号 | 不服2014-21088 |
総通号数 | 200 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2016-08-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2014-10-17 |
確定日 | 2016-06-29 |
事件の表示 | 特願2012-274608「LCDフレアの軽減」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 4月25日出願公開、特開2013- 77020〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1 手続の経緯 この審判事件に関する出願(以下、「本願」という。)は、2009年(平成21年)1月6日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2008年1月9日(以下、「優先日」という。)、アメリカ合衆国)を国際出願日とする特願2010-542311号の一部を平成24年12月17日に新たな特許出願としたものであって、平成25年10月21日付け(発送:同年同月29日)で拒絶理由を通知したところ、平成26年4月25日付けで特許請求の範囲及び明細書についての補正がなされ、同年6月12日(送達:同年同月17日)で拒絶査定がなされ、これに対し、同年10月17日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に特許請求の範囲及び明細書についての補正がなされたものである。 その後、当審より平成27年5月27日付け(発送:同年6月2日)で拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)を通知したところ、同年11月30日付けで意見書が提出されるとともに、同日付けで特許請求の範囲についての補正がなされたものである。 2 原査定の拒絶理由及び当審拒絶理由 原査定の拒絶理由の一つは、本願の特許請求の範囲に記載の請求項1ないし15に係る発明は、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2007-322882号公報(発明の名称:表示装置および表示制御方法、出願人:ソニー株式会社、公開日:平成19年12月13日、以下、「引用例1」という。)に記載された発明に基づいて、本願の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。 当審拒絶理由は、本願は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない、というものであり、また、各請求項に係る発明が明確でないため、原査定で引用された引用例に記載された発明との対比ができないから、特許法第29条第1項第3号、同2項及び第29条の2の原査定の拒絶の理由は、留保する、というものである。 3 本願発明 本願の請求項1?13に係る発明は、平成27年11月30日付け手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1?13に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明は、次のとおりである。 「 観察者によって見られるべきイメージを投影するように構成された二重変調装置を駆動する方法であって、 第1の変調光を生成するように構成された第1の変調システムのために、所望のイメージデータに基づいて第1の駆動信号を計算すること、 前記観察者によって見られるべき前記イメージを生成するように前記第1の変調光をさらに変調するように構成された第2の変調システムのために、前記イメージデータに基づいて第2の駆動信号を計算すること、 前記第1の駆動信号および前記第2の駆動信号のうちの少なくとも一つを、前記観察者によって見られるべき前記イメージの比較的暗い領域において高輝度部分を囲むスカート効果を取り除くように調整すること、 前記第1の駆動信号および前記第2の駆動信号のうちの少なくとも一つを、スカート効果を取り除いた前記イメージの高輝度部分に人為的なグレアを付与するように調整することを備え、 前記人為的なグレアは、円形状のグレアを含むベーリンググレアを含み、 前記人為的なグレアによって、前記観察者に対してバックライトの形状が隠される、方法。」(以下、「本願発明」という。) 4 引用例に記載の事項・引用発明 (1)記載事項 引用例1には、次の事項アないしウが図面とともに記載されている。なお、下線は、当審で付与した。 ア 「【請求項6】 所定の表示領域を分割した複数の領域ごとに個別に配置された複数の光源を有するバックライトと、前記表示領域に対応する複数の画素を有し、画素単位で前記光源からの光の透過率を変更するパネルと、画像信号を所定の関数に従って変換する変換手段と、前記複数の光源の発光輝度を、前記変換手段により変換された前記画像信号に応じて個別に設定するとともに、個別に設定された前記複数の光源の発光輝度に対応して、前記画素の光の透過率を設定する制御手段とを備え、前記画像信号に対応する画像を前記表示領域に表示する表示装置の表示制御方法において、 前記画像信号を所定の関数に従って変換し、 前記複数の光源の発光輝度を、変換された前記画像信号に応じて個別に設定し、 前記光の透過率と前記画像の表示輝度との関係を表す表示輝度特性に基づいて、個別に設定された前記複数の光源の発光輝度に対応する前記画素の光の透過率を設定する ステップを含み、 前記表示輝度特性は、所定の光の透過率以下の前記画像の表示輝度が、0以外の値で、かつ、前記複数の光源の発光輝度を同一に設定したときの基準表示輝度特性よりも低い値となっている 表示制御方法。」 イ 「【0082】 図8乃至図10を参照して、基準表示輝度特性f_(1)(図5)で表される設定階調変換テーブルと、表示輝度特性f_(1)’(図7)で表されるダイナミックレンジ対応設定階調変換テーブルによる効果の違いについて説明する。 【0083】 図8は、図3の液晶表示装置1が、基準表示輝度特性f_(1)(図5)で表される設定階調変換テーブルに従って、図2に示した原画像P1’を処理した結果を示している。 【0084】 図8Aは、図2と同様の原画像P1’を示している。図8乃至図10では、図8Aの原画像P1’のうちの横方向の点線上の複数画素からなる領域(以下、対象領域という)の輝度について考える。 【0085】 図8Bは、原画像P1’の対象領域の輝度である原画像輝度を示している。即ち、図8Bに示すように、原画像P1’の領域R2’の原画像輝度は0で、領域R1’の原画像輝度は30となっている。 【0086】 図8Cは、対象領域に対するバックライト12の光源BL_(ij)による発光輝度を示している。なお、ここでは、説明を簡単にするため、原画像P1’の領域R1’の中央(中心)に光源BL_(ij)が位置するものとする。 【0087】 図8Dは、対象領域に対する液晶補正輝度を示している。原画像輝度が0のときの液晶補正輝度は、図5の基準表示輝度特性f_(1)の設定階調0のときに相当し、約1.0nitとなる。 【0088】 図8Eは、図8Cのバックライト12の発光輝度と図8Dの液晶補正輝度とが合成されてなる表示輝度を示している。即ち、各画素の表示輝度は、バックライト12の発光輝度×液晶補正輝度で表される。 【0089】 図8Eに示される表示輝度では、原画像P1’の領域R1’と領域R2’の境界が明確に区別されている。また、原画像P1’の最も暗い部分である領域R2’の表示輝度は、図5の基準表示輝度特性f_(1)のオフセットOFFSETと同一の約1.0nitとなっている。なお、原画像P1’の原画像輝度0に対応する、表示輝度の最も暗いレベルを、以下では、最低輝度レベルという。」 ウ 「【0090】 図9は、図5の液晶表示装置101が、表示輝度特性f_(1)’(図7)で表されるダイナミックレンジ対応設定階調変換テーブルに従って、図2に示した原画像P1’を処理した結果を示している。 【0091】 図9A乃至図9Cは、図8A乃至図8Cとそれぞれ同様であり、その説明は省略する。 【0092】 図9Dは、図8Dと同様の、対象領域に対する液晶補正輝度を示している。原画像輝度が0のときの液晶補正輝度は、図7の表示輝度特性f_(1)’の設定階調0のときに相当し、約0.5nitとなる。 【0093】 その結果、図9Eに示されるように、原画像P1’の領域R1’に対応する表示輝度は、図8Eにおける場合と同程度のままで、最低輝度レベルは、一点鎖線で示されている基準表示輝度特性f_(1)を用いたときの最低輝度レベルより低く(黒く)なっている。即ち、黒いレベルがより黒く表示されるようになり、表示輝度のダイナミックレンジが拡大されている。 【0094】 従って、図5の液晶表示装置101によれば、図3の液晶表示装置1に比べて、表示輝度のダイナミックレンジを拡大させることができる。 【0095】 なお、表示輝度特性f_(1)’におけるオフセットOFFSETを小さい値に設定すればするほど、最低輝度レベルを0に近づけることができ、表示輝度のダイナミックレンジを拡大させることができるが、オフセットOFFSETは、0以外の値とする。 【0096】 仮に、表示輝度特性f_(1)’におけるオフセットOFFSETを0とした場合の処理結果を図10に示す。 【0097】 表示輝度特性f_(1)’におけるオフセットOFFSETを0とした場合、原画像輝度0のときは、L_peakが0なので式(1)のγ_(ij)も0となり、S_data’=0、即ち、図10Dに示されるように液晶補正輝度が0となる。その結果、図10Cの斜線部のバックライト12の発光輝度が、図10Eに示されるように、そのまま表示輝度として現れる。 【0098】 即ち、原画像P1’の領域R2’のうち、領域R1’の周辺の画素が、領域R1’の輝度に引っ張られるように明るくなってしまい、表示輝度特性f_(1)’におけるオフセットOFFSETを0とした場合、最低輝度レベルを最も低くすることができるものの、黒ムラが発生する。 【0099】 これに対して、図9に示したように、表示輝度特性f_(1)’におけるオフセットOFFSETを0.5とした場合には、黒ムラは発生しにくい。 【0100】 従って、メモリ121が記憶するダイナミックレンジ拡大対応設定階調変換テーブルを、図7に示したように、オフセットOFFSETが0以外で、所定の設定階調以下(図7では、約50以下)の表示輝度が基準表示輝度特性f_(1)と比べて低い値に設定されている表示輝度特性f_(1)’に対応させることによって、黒ムラを抑制しつつ、表示輝度のダイナミックレンジを拡大させることができる。」 また、図9A及びCには、 「バックライトの発光輝度は楕円形状の領域R1’の中央(中心)を最高輝度とし、輝度0に向かう裾野を有する山型の発光輝度分布を有し」ていることが図示されている。 図9Dには、 「液晶補正輝度は、領域R1’の中央(中心)で下に凸となり、領域R1’から離れるにしたがい一旦下降し、その後緩やかに増加し平坦となる分布を有し」ていることが図示されている。 図9Eには、「表示輝度は、領域R1’内では一定であり、領域R1’から離れるにしたがい一旦下降し、その後緩やかに平坦となる分布を有し」ていることが図示されている。 上記ア(【請求項6】)には、 「 所定の表示領域を分割した複数の領域ごとに個別に配置された複数の光源を有するバックライトと、前記表示領域に対応する複数の画素を有し、画素単位で前記光源からの光の透過率を変更するパネルと、画像信号を所定の関数に従って変換する変換手段と、前記複数の光源の発光輝度を、前記変換手段により変換された前記画像信号に応じて個別に設定するとともに、個別に設定された前記複数の光源の発光輝度に対応して、前記画素の光の透過率を設定する制御手段とを備え、前記画像信号に対応する画像を前記表示領域に表示する表示装置の表示制御方法において、 前記画像信号を所定の関数に従って変換し、 前記複数の光源の発光輝度を、変換された前記画像信号に応じて個別に設定し、 前記光の透過率と前記画像の表示輝度との関係を表す表示輝度特性に基づいて、個別に設定された前記複数の光源の発光輝度に対応する前記画素の光の透過率を設定する ステップを含み、 前記表示輝度特性は、所定の光の透過率以下の前記画像の表示輝度が、0以外の値で、かつ、前記複数の光源の発光輝度を同一に設定したときの基準表示輝度特性よりも低い値となっている 表示制御方法。」との技術事項が記載されている。 上記イ(【0086】、【0091】)の記載、図8C及び図9Cから、 「対象領域に対するバックライト12の光源BL_(ij)による発光輝度は、光源BL_(ij)が位置する原画像P1’の楕円形状の領域R1’の中央(中心)を最高輝度とし、輝度0に向かう裾野を有する山型の発光輝度分布を有し」ているとの技術事項が読み取れる。 上記ウ(【0092】)の記載、及び図9Dから、 「液晶補正輝度は、光源BL_(ij)が位置する領域R1’の中央(中心)で下に凸となり、領域R1’から離れるにしたがい一旦下降し、その後緩やかに増加し平坦となる分布を有し」ているとの技術事項が読み取れる。 上記ウ(【0093】)の記載、及び図9Eから、 「表示輝度は、領域R1’内では一定であり、領域R1’から離れるにしたがい一旦下降し、その後緩やかに平坦となる分布を有し」ているとの技術事項が読み取れる。 (2) 引用発明 上記技術事項を総合勘案すると、引用例1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。 「 所定の表示領域を分割した複数の領域ごとに個別に配置された複数の光源を有するバックライトと、前記表示領域に対応する複数の画素を有し、画素単位で前記光源からの光の透過率を変更するパネルと、画像信号を所定の関数に従って変換する変換手段と、前記複数の光源の発光輝度を、前記変換手段により変換された前記画像信号に応じて個別に設定するとともに、個別に設定された前記複数の光源の発光輝度に対応して、前記画素の光の透過率を設定する制御手段とを備え、前記画像信号に対応する画像を前記表示領域に表示する表示装置の表示制御方法において、 前記画像信号を所定の関数に従って変換し、 前記複数の光源の発光輝度を、変換された前記画像信号に応じて個別に設定し、 前記光の透過率と前記画像の表示輝度との関係を表す表示輝度特性に基づいて、個別に設定された前記複数の光源の発光輝度に対応する前記画素の光の透過率を設定する ステップを含み、 前記表示輝度特性は、所定の光の透過率以下の前記画像の表示輝度が、0以外の値で、かつ、前記複数の光源の発光輝度を同一に設定したときの基準表示輝度特性よりも低い値となっており、 対象領域に対するバックライト12の光源BL_(ij)による発光輝度は、光源BL_(ij)が位置する原画像P1’の楕円形状の領域R1’の中央(中心)を最高輝度とし、輝度0に向かう裾野を有する山型の発光輝度分布を有し、 液晶補正輝度は、光源BL_(ij)が位置する領域R1’の中央(中心)で下に凸となり、領域R1’から離れるにしたがい一旦下降し、その後緩やかに増加し平坦となる分布を有し、 表示輝度は、領域R1’内では一定であり、領域R1’から離れるにしたがい一旦下降し、その後緩やかに平坦となる分布を有する、 表示制御方法。」 5 対比 (1) 本願発明と引用発明を対比する。 ア 引用発明の「所定の表示領域を分割した複数の領域ごとに個別に配置された複数の光源を有するバックライトと、前記表示領域に対応する複数の画素を有し、画素単位で前記光源からの光の透過率を変更するパネルと、画像信号を所定の関数に従って変換する変換手段と、前記複数の光源の発光輝度を、前記変換手段により変換された前記画像信号に応じて個別に設定するとともに、個別に設定された前記複数の光源の発光輝度に対応して、前記画素の光の透過率を設定する制御手段とを備え、前記画像信号に対応する画像を前記表示領域に表示する表示装置の表示制御方法」は、本願発明の「観察者によって見られるべきイメージを投影するように構成された二重変調装置を駆動する方法」に相当する。 イ 引用発明の「前記画像信号を所定の関数に従って変換し、前記複数の光源の発光輝度を、変換された前記画像信号に応じて個別に設定」することは、本願発明の「第1の変調光を生成するように構成された第1の変調システムのために、所望のイメージデータに基づいて第1の駆動信号を計算すること」に相当する。 ウ 引用発明の「前記光の透過率と前記画像の表示輝度との関係を表す表示輝度特性に基づいて、個別に設定された前記複数の光源の発光輝度に対応する前記画素の光の透過率を設定する」ことは、本願発明の「前記観察者によって見られるべき前記イメージを生成するように前記第1の変調光をさらに変調するように構成された第2の変調システムのために、前記イメージデータに基づいて第2の駆動信号を計算すること」に相当する。 エ 引用発明において、「対象領域に対するバックライト12の光源BL_(ij)による発光輝度は、光源BL_(ij)が位置する原画像P1’の楕円形状の領域R1’の中央(中心)を最高輝度とし、輝度0に向かう裾野を有する山型の発光輝度分布を有し」ている。ここで、引用発明の「輝度0に向かう裾野」の発光輝度分布は、高輝度部分を囲むスカートであるといえる。そして、引用発明において、「輝度0に向かう裾野」の発光輝度分布は、「領域R1’から離れるにしたがい一旦下降し、その後緩やかに増加し平坦となる分布を有」する「液晶補正輝度」によって、「領域R1’内では一定であり、領域R1’から離れるにしたがい一旦下降し、その後緩やかに平坦となる分布を有」する「表示輝度」になり、「輝度0に向かう裾野」の発光輝度分布は、「領域R1’から離れるにしたがい一旦下降」するから、本願発明のようにスカート効果を取り除いているといえる。 よって、引用発明の「前記光の透過率と前記画像の表示輝度との関係を表す表示輝度特性に基づいて、個別に設定された前記複数の光源の発光輝度に対応する前記画素の光の透過率を設定する」ことは、前記「液晶補正輝度」に設定することであり、本願発明の「前記第1の駆動信号および前記第2の駆動信号のうちの少なくとも一つを、前記観察者によって見られるべき前記イメージの比較的暗い領域において高輝度部分を囲むスカート効果を取り除くように調整すること」に相当する。 オ 引用発明において、前記「液晶補正輝度」のように「画素の光の透過率を設定する」ことによって、「表示輝度は、領域R1’内では一定」となるものである。ここで、輝度が一定な領域R1’は、楕円形状のグレアとして表示されるものであるから、引用発明の「画素の光の透過率を設定する」ことは、本願発明の「前記第1の駆動信号および前記第2の駆動信号のうちの少なくとも一つを、スカート効果を取り除いた前記イメージの高輝度部分に人為的なグレアを付与するように調整すること」に相当し、そして、円形は楕円の一形態であるから、引用発明における輝度が一定な楕円形状の領域R1’の表示と、本願発明の「前記人為的なグレアは、円形状のグレアを含むベーリンググレアを含」むことは、共に、「前記人為的なグレアは、楕円形状のグレアを含むベーリンググレアを含」む点で共通する。 カ 引用発明において、「光源BL_(ij)が位置する原画像P1’の楕円形状の領域R1’の中央(中心)を最高輝度」が、「光源BL_(ij)が位置する領域R1’の中央(中心)で下に凸とな」る「液晶補正輝度」により低減され、「表示輝度は、領域R1’内では一定」となっている。つまり、光源BL_(ij)が位置する領域R1’の中央(中心)を含む領域R1’内では輝度が一定となっていることから、輝度の違いによっては光源の位置が識別できないことを意味する。 よって、引用発明の輝度が一定な領域R1’の表示は、本願発明の「前記人為的なグレアによって、前記観察者に対してバックライトの形状が隠される」表示に相当するといえる。 (2) したがって、本願発明と引用発明は、次の点で一致する。 「 観察者によって見られるべきイメージを投影するように構成された二重変調装置を駆動する方法であって、 第1の変調光を生成するように構成された第1の変調システムのために、所望のイメージデータに基づいて第1の駆動信号を計算すること、 前記観察者によって見られるべき前記イメージを生成するように前記第1の変調光をさらに変調するように構成された第2の変調システムのために、前記イメージデータに基づいて第2の駆動信号を計算すること、 前記第1の駆動信号および前記第2の駆動信号のうちの少なくとも一つを、前記観察者によって見られるべき前記イメージの比較的暗い領域において高輝度部分を囲むスカート効果を取り除くように調整すること、 前記第1の駆動信号および前記第2の駆動信号のうちの少なくとも一つを、スカート効果を取り除いた前記イメージの高輝度部分に人為的なグレアを付与するように調整することを備え、 前記人為的なグレアは、楕円形状のグレアを含むベーリンググレアを含み、 前記人為的なグレアによって、前記観察者に対してバックライトの形状が隠される、方法。」 (3) そして、以下の点で相違する。 本願発明は、円形状のグレアであるのに対し、引用発明は、グレアに相当する領域R1’の形状が楕円形状である点。 (以下、「相違点」という。) 6 判断 以下、相違点について検討する。 引用発明において、グレアに相当する領域R1’の形状が楕円形状であるのは、引用発明のバックライトの「所定の表示領域を分割した複数の領域ごとに個別に配置された複数の光源」の形状に起因するものである(引用例1図1B参照。)。 そして、バックライトの光源をどのような形状にするかは、当業者が適宜設定し得る事項であり、発光輝度分布が円形状となる光源は、一般的な光源であるから、引用発明において、発光輝度分布が円形状となる一般的な光源を採用し、相違点に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。 そして、相違点を勘案しても、本願発明の奏する作用効果は、引用発明の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものと言うことはできない。 したがって、本願発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に想到し得ることである。 7 むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願の他の請求項に係る発明について審理するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2016-01-29 |
結審通知日 | 2016-02-02 |
審決日 | 2016-02-15 |
出願番号 | 特願2012-274608(P2012-274608) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(G09G)
P 1 8・ 113- WZ (G09G) P 1 8・ 161- WZ (G09G) P 1 8・ 537- WZ (G09G) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 中村 直行 |
特許庁審判長 |
中塚 直樹 |
特許庁審判官 |
森 竜介 樋口 信宏 |
発明の名称 | LCDフレアの軽減 |
代理人 | 恩田 誠 |
代理人 | 恩田 博宣 |
代理人 | 本田 淳 |