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審決分類 |
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 A63F 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F |
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管理番号 | 1316692 |
審判番号 | 不服2015-9533 |
総通号数 | 200 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2016-08-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2015-05-22 |
確定日 | 2016-07-07 |
事件の表示 | 特願2012- 33381号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 9月 2日出願公開、特開2013-169245号〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成24年2月17日の出願であって、平成26年3月12日付けで拒絶理由通知がなされ、平成26年5月16日付けで手続補正がなされたが、平成27年2月26日付けで拒絶査定がなされ、これに対し平成27年5月22日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、これと同時に手続補正がなされたものである。 第2 平成27年5月22日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成27年5月22日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1.補正の概要 平成27年5月22日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の請求項1の記載の補正を含む補正であり、特許請求の範囲の請求項1は、 補正前(平成26年5月16日付け手続補正)の 「【請求項1】 可変表示の開始条件が成立したことにもとづいて識別情報の可変表示を行い、識別情報の表示結果として特定表示結果が導出表示されたときに遊技者にとって有利な特定遊技状態に制御する遊技機であって、 可変入賞装置を開放状態に制御する可変入賞装置制御手段と、 未だ前記開始条件が成立していない可変表示について、保留記憶として記憶する保留記憶手段と、 前記開始条件が成立したときに、前記保留記憶手段に記憶されている保留記憶にもとづいて、前記特定表示結果にするか否かを決定する開始条件成立時決定手段と、 前記特定表示結果となるか否かを、前記開始条件成立時決定手段による決定前に判定する開始条件成立前判定手段と、 前記可変入賞装置が開放状態に制御されること、または識別情報の可変表示において識別情報の表示結果が前記特定表示結果になる可能性を報知する所定演出を実行する所定演出実行手段と、 前記開始条件成立前判定手段による判定にもとづいて、当該判定の対象となった識別情報の可変表示が実行される前に特定予告演出を実行するか否かを決定する特定予告演出決定手段と、 前記特定予告演出決定手段の決定にもとづいて前記特定予告演出を実行する特定予告演 出実行手段とを備え、 前記所定演出実行手段は、前記特定予告演出が実行されたときには、該特定予告演出が実行されないときに比べて、高い割合で前記所定演出を実行し、 前記可変入賞装置制御手段は、前記可変入賞装置が開放状態に制御されることの報知の開始後に発射された遊技媒体が入賞可能に前記可変入賞装置を開放状態に制御可能である ことを特徴とする遊技機。」 から、 補正後(本件補正:平成27年5月22日付けの手続補正)の 「【請求項1】 可変表示の開始条件が成立したことにもとづいて識別情報の可変表示を行い、識別情報の表示結果として特定表示結果が導出表示されたときに遊技者にとって有利な特定遊技状態に制御する遊技機であって、 可変入賞装置を開放状態に制御する可変入賞装置制御手段と、 未だ前記開始条件が成立していない可変表示について、保留記憶として記憶する保留記憶手段と、 前記開始条件が成立したときに、前記保留記憶手段に記憶されている保留記憶にもとづいて、前記特定表示結果にするか否かを決定する開始条件成立時決定手段と、 前記特定表示結果となるか否かを、前記開始条件成立時決定手段による決定前に判定する開始条件成立前判定手段と、 前記可変入賞装置が開放状態に制御されること、および識別情報の可変表示において識別情報の表示結果が前記特定表示結果になる可能性を報知可能な所定演出を実行する所定演出実行手段と、 前記開始条件成立前判定手段による判定にもとづいて、当該判定の対象となった識別情報の可変表示が実行される前に特定予告演出を実行するか否かを決定する特定予告演出決定手段と、 前記特定予告演出決定手段の決定にもとづいて前記特定予告演出を実行する特定予告演出実行手段とを備え、 前記所定演出実行手段は、前記特定予告演出が実行されたときには、該特定予告演出が実行されないときに比べて、高い割合で前記所定演出を実行し、 前記可変入賞装置制御手段は、前記可変入賞装置が開放状態に制御されることの報知の開始後に発射された遊技媒体が入賞可能に前記可変入賞装置を開放状態に制御可能である ことを特徴とする遊技機。」 へ補正された(下線部は補正箇所を示す)。 2.補正の適否 本件補正は、所定演出を実行する所定演出実行手段について、補正前の「前記可変入賞装置が開放状態に制御されること、または識別情報の可変表示において識別情報の表示結果が前記特定表示結果になる可能性を報知する所定演出を実行する所定演出実行手段」を補正後の「前記可変入賞装置が開放状態に制御されること、および識別情報の可変表示において識別情報の表示結果が前記特定表示結果になる可能性を報知可能な所定演出を実行する所定演出実行手段」としたもので、これにより、「前記可変入賞装置が開放状態に制御されること」と「識別情報の可変表示において識別情報の表示結果が前記特定表示結果になる可能性」のいずれかのみを報知するとの解釈の余地があったところ、「前記可変入賞装置が開放状態に制御されること」と「識別情報の可変表示において識別情報の表示結果が前記特定表示結果になる可能性」のいずれとも報知可能なものであることが明確となったものと認められる。 そして、請求人が審判請求書の3.(1)において「なお、上記の補正は、・・・1つの共通の演出態様の所定演出で「可変入賞装置が開放状態に制御されること」および「特定表示結果になる可能性」の両方を報知可能であることを明確にすべく行ったものである。」と主張しているとおり、本件補正は、明りょうでない記載の釈明にあたる。 よって、本件補正は、特許法17条の2第5項4号の明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。 さらに、本件補正は、新規事項を追加するものではない。 3.独立特許要件 補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本件補正発明」という。)が特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるか否か(特許法17の2第6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか否か)を検討する。 (1)本件補正発明 本件補正発明は、上記1に記載したとおりのものである。 (2)刊行物 (2-1)刊行物1 原査定の拒絶理由において提示された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2010-115325号公報(以下、「刊行物1」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている(下線は審決にて付した。以下、同じ。)。 ア 「【0001】 本発明は、遊技者にとって有利な特定遊技状態に制御するパチンコ遊技機等の遊技機に関する。」 イ 「【0030】 遊技盤6における下部の左側には、各々が識別可能な複数種類の識別情報としての第1特別図柄を変動表示する第1特別図柄表示器(第1変動表示部)8aが設けられている。この実施の形態では、第1特別図柄表示器8aは、「1」?「8」の8種類の数字を変動表示可能な簡易で小型の表示器(たとえば7セグメントLED)で実現されている。すなわち、第1特別図柄表示器8aは、「1」?「8」の数字(または、記号)を変動表示するように構成されている。遊技盤6における下部の右側には、各々が識別可能な複数種類の識別情報としての第2特別図柄を変動表示する第2特別図柄表示器(第2変動表示部)8bが設けられている。第2特別図柄表示器8bは、「1」?「8」の8種類の数字を変動表示可能な簡易で小型の表示器(たとえば7セグメントLED)で実現されている。すなわち、第2特別図柄表示器8bは、「1」?「8」の数字(または、記号)を変動表示するように構成されている。・・・ 【0033】 第1特別図柄または第2特別図柄の変動表示は、変動表示の実行条件である第1始動条件(遊技球が第1始動入賞口13に入賞したこと)または第2始動条件(遊技球が第2始動入賞口14に入賞したこと)が成立した後、変動表示の開始を許容する開始条件(たとえば、大当り遊技中でなくかつ先に始動入賞した保留記憶に起因する変動表示が終了しているとき)が成立したことに基づいて開始され、変動表示時間が経過すると表示結果(停止図柄)を導出表示する。すなわち、変動表示の実行条件は、遊技球が第1始動入賞口13または第2始動入賞口14に入賞したことにより成立する。なお、始動条件は、始動領域に入賞することにより成立するものに限らず、始動領域を通過することにより成立するものであってもよい。また、変動表示の開始を許容する開始条件は、大当り遊技中でなくかつ先に始動入賞した保留記憶に起因する変動表示が終了することにより成立する。実行条件は成立しているが開始条件が成立していない保留記憶、すなわち遊技球が第1始動入賞口13または第2始動入賞口14に入賞したが未だ変動表示の開始を許容する開始条件が成立していない保留記憶に関するデータは、開始条件が成立するまで保留記憶データとして保留して記憶される。具体的に、保留記憶データは、後述する遊技制御用マイクロコンピュータ560のRAM55の所定領域に記憶される。」 ウ 「【0039】 また、第1始動入賞口(第1始動口)13を有する入賞装置の下方には、遊技球が入賞可能な第2始動入賞口(第2始動口)14を有する可変入賞球装置15が設けられている。第2始動入賞口14に入賞した遊技球は、遊技盤6の背面に導かれ、第2始動口スイッチ14aによって検出される。可変入賞球装置15は、ソレノイド16によって開状態とされる。可変入賞球装置15が開状態になることによって、遊技球が第2始動入賞口14に入賞可能になり(始動入賞し易くなり)、遊技者にとって有利な状態(第1状態)になる。可変入賞球装置15が開状態になっている状態では、第1始動入賞口13よりも、第2始動入賞口14に遊技球が入賞しやすい。また、可変入賞球装置15が閉状態になっている状態は、遊技者にとって不利な状態(第2状態)であり、遊技球が第2始動入賞口14に入賞しない。したがって、可変入賞球装置15が閉状態になっている状態では、第2始動入賞口14よりも、第1始動入賞口13に遊技球が入賞しやすい。なお、可変入賞球装置15が閉状態になっている状態において、入賞はしづらいものの、入賞することは可能である(すなわち、遊技球が入賞しにくい)ように構成されていてもよい。」 エ 「【0048】 また、図1に示すように、可変入賞球装置15の下方には、特別可変入賞球装置20が設けられている。特別可変入賞球装置20は開閉板を備え、第1特別図柄表示器8aに特定表示結果(大当り図柄)が導出表示されたときと、第2特別図柄表示器8bに特定表示結果(大当り図柄)が導出表示されたときに生起する特定遊技状態(大当り遊技状態)においてソレノイド21によって開閉板が開放状態に制御されることによって、入賞領域となる大入賞口が開放状態になる。大入賞口に入賞した遊技球はカウントスイッチ23で検出される。」 オ 「【0062】 また、ゲートスイッチ32a、第1始動口スイッチ13a、第2始動口スイッチ14a、カウントスイッチ23、入賞口スイッチ29a,30a,33a,39aからの検出信号を遊技制御用マイクロコンピュータ560に与える入力ドライバ回路58も主基板31に搭載されている。また、可変入賞球装置15を開閉するソレノイド16、および大入賞口を形成する特別可変入賞球装置20を開閉するソレノイド21を遊技制御用マイクロコンピュータ560からの指令にしたがって駆動する出力回路59も主基板31に搭載されている。」 カ 「【0178】 特定変動パターンにより変動表示が実行されなかったときよりも、特定変動パターンにより変動表示が実行されたときの方が、大当りとなる信頼度が高くなるように判定値数が設定されている。言い換えると、特定変動パターンは、識別情報の表示結果が非特定表示結果となるときよりも特定表示結果となるときの方が実行される割合が高くなるように変動パターン種別判定値が割振られている。その結果、特定変動パターンにより変動表示が実行されなかったときよりも、特定変動パターンにより変動表示が実行されたときの方が、遊技者に大当りに対する期待感を抱かせることができる。 」 キ 「【0190】 図12は、遊技制御用マイクロコンピュータ560が送信する演出制御コマンドの内容の一例を示す説明図である。図12に示す例において、コマンド80XX(H)は、特別図柄の変動表示に対応して演出表示装置9において変動表示される演出図柄の変動パターンを指定する演出制御コマンド(変動パターンコマンド)である(それぞれ変動パターンXXに対応)。言い換えると、図9?図11に示されたテーブルを用いて決定され得る変動パターンのそれぞれに対して一意な変動パターンコマンドが予め設定されている。なお、「(H)」は16進数であることを示す。また、変動パターンを指定する演出制御コマンドは、変動開始を指定するためのコマンドでもある。したがって、演出制御用マイクロコンピュータ100は、コマンド80XX(H)を受信すると、第1飾り図柄表示器9aまたは第2飾り図柄表示器9bにおいて飾り図柄変動表示を開始するように制御し、演出表示装置9において演出図柄の変動表示を開始するように制御する。・・・ 【0200】 コマンドC0XX(H)は、上位バイト(MODE)である「C0」により第1始動入賞があったことを指定し、下位バイト(EXT)である「XX」により先読み判定結果を指定する演出制御コマンド(第1始動入賞指定コマンド)である。コマンドC1XX(H)は、上位バイト(MODE)である「C1」により第2始動入賞があったことを指定し、下位バイト(EXT)である「XX」により先読み判定結果を指定する演出制御コマンド(第2始動入賞指定コマンド)である。第1始動入賞指定コマンドと第2始動入賞指定コマンドとを、始動入賞指定コマンドと総称することがある。図13に示すように、始動入賞指定コマンドの下位バイトにより、当りの種類および変動パターン種別などの情報を含む先読み判定結果を特定することができる。」 ク 「【0201】 先読みとは、始動入賞時に抽出されている乱数値に基づいて変動開始時に当り判定や変動パターン設定を行なう前、すなわち、始動入賞が発生したときに抽出した乱数値が当該始動入賞に基づき変動が開始されるタイミングでどのように決定されるかを事前に判定することをいう。また、先読み判定結果とは、先読みによって得た判定結果をいう。本実施の形態では、始動入賞時に抽出した乱数の値に基づいて、始動入賞時に早々と、当り判定、リーチ判定および変動パターン種別を先読みして先読み判定結果を得るための制御が実行される。先読み判定結果は、始動入賞指定コマンドの下位バイトである「XX」により判定結果が特定されるように構成されている。本実施の形態においては、後述するように当該始動入賞指定コマンドに基づき、当該始動入賞による変動表示開始前の段階から予告が実行される。」 ケ 「【0206】 たとえば、遊技制御用マイクロコンピュータ560は、有効な始動入賞に基づいて保留表示を行なう場合に、始動入賞指定コマンドを演出制御用マイクロコンピュータ100に送信する。なお、遊技制御用マイクロコンピュータ560は、始動入賞時に前述した先読みを行なった場合には、当該先読み判定結果に応じた始動入賞指定コマンドを送信する。・・・ 【0210】 演出制御用マイクロコンピュータ100では、当該始動入賞指定コマンドに基づき、保留表示するための処理、先読み予告を実行するか否かを判定するための処理などを行なう。先読み予告とは、先読み判定結果に関する情報を、当該始動入賞に起因する変動表示開始前の段階から、複数回の変動表示に亘り連続して予告報知する演出をいう。」 コ 「【0213】 特別図柄通常処理(S302):特別図柄プロセスフラグの値が0であるときに実行される。遊技制御用マイクロコンピュータ560は、特別図柄の変動表示が開始できる状態になると、保留記憶数バッファに記憶される数値データの記憶数(合計保留記憶数)を確認する。保留記憶数バッファに記憶される数値データの記憶数は合計保留記憶数カウンタのカウント値により確認できる。また、合計保留記憶数カウンタのカウント値が0でなければ、第1特別図柄または第2特別図柄の変動表示の表示結果を大当りとするか否かや小当りとするか否かを決定する。大当りとする場合には大当りフラグをセットする。また、小当りとする場合には小当りフラグをセットする。そして、内部状態(特別図柄プロセスフラグ)をS303に応じた値(この例では1)に更新する。なお、大当りフラグや小当りフラグは、大当り遊技または小当り遊技が終了するときにリセットされる。・・・ 【0250】 CPU56は、RAM55において、特別図柄ポインタが示す方の保留記憶数=1に対応する保存領域に格納されている各乱数値を読出してRAM55の乱数バッファ領域に格納する(S55)。具体的には、CPU56は、特別図柄ポインタが「第1」を示している場合には、第1保留記憶数バッファにおける第1保留記憶数=1に対応する保存領域に格納されている各乱数値を読出してRAM55の乱数バッファ領域に格納する。また、CPU56は、特別図柄ポインタが「第2」を示している場合には、第2保留記憶数バッファにおける第2保留記憶数=1に対応する保存領域に格納されている各乱数値を読出してRAM55の乱数バッファ領域に格納する。・・・ 【0256】 次いで、CPU56は、乱数バッファ領域からランダムR(大当り判定用乱数)を読出し、当り判定を実行する(S61、S62)。当り判定では、遊技状態に応じて予め決められている大当り判定値(図7(A)、(B)参照)と大当り判定用乱数とを比較し、それらが一致したら大当りまたは小当りとすることに決定する処理を実行する。なお、変動開始時における当り判定では、現在の遊技状態に対応する判定値が用いられる。このため、先読み時において当りでないと判定されたときであっても変動開始時において当りと判定される場合が生じ得る。その結果、前述した先読み予告が行なわれていないときであっても、当りになることに対し遊技者に期待感を抱かせることができる。」 サ 「【0392】 図40の先読み予告実行決定用テーブルは、15R大当り以外のときよりも15R大当りであるときの方が高い割合で先読み予告が実行されるように、また、非特定変動パターン種別のときよりも特定変動パターン種別であるときの方が高い割合で先読み予告が実行されるように、それぞれ判定値が設定されている。これにより、先読み予告が実行されたときには、先読み予告が実行されなかったときよりも、15R大当りになることおよび特定変動パターンになることに対する期待感を遊技者に抱かせることができる。」 シ 「【0415】 演出制御用CPU101は、S519の処理を実行したら、プロセスデータ1の内容(表示制御実行データ1、ランプ制御実行データ1、音番号データ1、可動部材制御データ1)にしたがって演出装置(演出用部品としての演出表示装置9、演出用部品としての各種ランプ、演出用部品としてのスピーカ27、および演出用部品としての可動部材78)の制御を開始する(S520)。たとえば、表示制御実行データにしたがって、演出表示装置9において変動パターンに応じた画像(演出図柄を含む。)を表示させるために、VDP109に指令を出力する。また、各種ランプを点灯/消灯制御を行なわせるために、ランプドライバ基板35に対して制御信号(ランプ制御実行データ)を出力する。また、スピーカ27からの音声出力を行なわせるために、音声出力基板70に対して制御信号(音番号データ)を出力する。また、可動部材制御データにしたがって、可動部材78を動作させるための駆動信号を出力する。」 ス 「【0558】 (11) 図39、図45、および図47で説明したように、先読み予告やチャンス目予告を実行するか否かが、遊技制御用マイクロコンピュータ560から送信されるコマンドに基づいて、演出制御用マイクロコンピュータ100により決定される。このため、遊技制御用マイクロコンピュータ560が先読み予告やチャンス目予告を実行するか否かの決定を行なう場合と比較して、遊技制御用マイクロコンピュータ560の制御負担を軽減することができる。 【0559】 (12) 遊技制御用マイクロコンピュータ560より始動入賞指定コマンドを送信することにより、図39で示すように、演出制御用マイクロコンピュータ100により保留表示するための処理が行なわれるとともに先読み予告を実行するための処理が行なわれる。このため、遊技制御用マイクロコンピュータ560は、保留表示するためのコマンドと別に、先読み予告を実行するためのコマンドを送信する必要がない。このため、遊技制御用マイクロコンピュータ560から送信するコマンド数を増大させることなく、演出制御用マイクロコンピュータ100により保留表示させるとともに先読み予告を実行させることができる。」 セ 上記コの段落【0213】の「特別図柄の変動表示が開始できる状態になると、・・・第1特別図柄または第2特別図柄の変動表示の表示結果を大当りとするか否かや小当りとするか否かを決定する。」との記載、上記コの段落【0250】の「CPU56は、RAM55において、特別図柄ポインタが示す方の保留記憶数=1に対応する保存領域に格納されている各乱数値を読出してRAM55の乱数バッファ領域に格納する」との記載及び上記コの段落【0256】の「CPU56は、乱数バッファ領域からランダムR(大当り判定用乱数)を読出し、当り判定を実行する」との記載から、刊行物1には、「特別図柄の変動表示が開始できる状態になると、RAM55の保存領域に格納されているランダムR(大当り判定用乱数)を読出し、特別図柄の変動表示の表示結果を大当りとするか否かを決定するCPU56」が記載されていると認められる。 ソ 上記キの段落【0190】、【0200】の記載及び図12を参照すると、遊技制御用マイクロコンピュータ560から送信される演出制御コマンドには先読み判定結果を指定する始動入賞指定コマンドが含まれており、技術常識を勘案すると、先読み判定を実行するのは遊技制御用マイクロコンピュータ560であると認められる。 タ 上記スの段落【0415】の「演出制御用CPU101は、・・・演出表示装置9において変動パターンに応じた画像(演出図柄を含む。)を表示させるために、VDP109に指令を出力する。」との記載より、演出表示装置9での変動表示は演出制御用CPU101により実行されていると認められ、これより、上記カの段落【0178】に記載の「識別情報の表示結果が非特定表示結果となるときよりも特定表示結果となるときの方が実行される割合が高い特定変動パターンによる変動表示」も演出制御用CPU101により実行されていると認められるので、段落【0178】、【0415】の記載から、刊行物1には、「識別情報の表示結果が特定表示結果となるときの方が実行される割合が高い特定変動パターンにより変動表示を実行する演出制御用CPU101」が記載されていると認められる。 チ 上記スの段落【0558】の「先読み予告・・・を実行するか否かが、・・・演出制御用マイクロコンピュータ100により決定される。」との記載から、上記サの段落【0392】の先読み予告の実行を決定するのは演出制御用マイクロコンピュータと認められるので、段落【0392】、【0558】の記載から、刊行物1には、「演出制御用マイクロコンピュータ100は、非特定変動パターン種別のときよりも特定変動パターン種別であるときの方が高い割合で先読み予告を実行し、これにより、先読み予告が実行されたときには、先読み予告が実行されなかったときよりも、特定変動パターンになることに対する期待感を遊技者に抱かせ」ることが記載されていると認められる。 ツ 上記ア?スの記載事項、上記セ?チの認定事項から、刊行物1には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「変動表示の開始条件が成立したことにもとづいて識別情報(特別図柄)の変動表示を行い、識別情報(特別図柄)の表示結果として特定表示結果が導出表示されたときに特定遊技状態(大当り遊技状態)が生起する遊技機であって、 可変入賞球装置15を開状態とする遊技制御用マイクロコンピュータ560と、 未だ変動表示の開始条件が成立していない保留記憶に関するデータを保留記憶データとして記憶する遊技制御用マイクロコンピュータ560のRAM55と、 特別図柄の変動表示が開始できる状態になると、RAM55の保存領域に格納されているランダムR(大当り判定用乱数)を読出し、特別図柄の変動表示の表示結果を大当りとするか否かを決定するCPU56と、 変動開始時に当り判定や変動パターン設定を行う前である始動入賞時に、当り判定を実行する遊技制御用マイクロコンピュータ560と、 識別情報の表示結果が非特定表示結果なるときよりも特定表示結果となるときの方が実行される割合が高い特定変動パターンにより変動表示を実行する演出制御用CPU101と、 変動開始時に当り判定や変動パターン設定を行う前である始動入賞時の判定による判定結果が特定された始動入賞指定コマンドにもとづいて、当該始動入賞に起因する変動表示開始前の段階から、先読み予告をするか否か判定する演出制御用マイクロコンピュータ100と、 演出制御用マイクロコンピュータ100による先読み予告を実行するか否かの決定にもとづいて先読み予告を実行する演出制御用マイクロコンピュータ100とを備え、 演出制御用マイクロコンピュータ100は、非特定変動パターン種別のときよりも特定変動パターン種別であるときの方が高い割合で先読み予告を実行し、これにより、先読み予告が実行されたときには、先読み予告が実行されなかったときよりも、特定変動パターンになることに対する期待感を遊技者に抱かせる、遊技機。」 (2-2)刊行物2 原査定の拒絶理由において提示された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2011-212294号公報(以下、「刊行物2」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている(下線は審決にて付した。以下、同じ。)。 ア 「【0022】 また、第1始動口6の下方には、第1入賞ゲート9及び第2入賞ゲート10から一連の入賞経路が形成されている第2始動口7が設けられている。第2始動口7は可変、すなわち、第2始動口制御装置70によって入賞可能な状態と入賞不可能な状態とに切り換えられる。第2始動口制御装置70は可動片70bを具備しており、可動片70bは所定条件が成立する場合にのみ作動する。すなわち、通常は(所定条件が成立する以外は)、停止している(未作動の)可動片70bによって第2始動口7への入賞経路が断たれており、第2始動口は入賞不可能な状態に制御される。一方、所定条件が成立すると可動片70bが作動することによって、第2始動口7への入賞経路が形成されて第2始動口7は入賞可能な状態になる。なお、ここでの所定条件とは、上述した普通図柄の抽選において、当たりに当選することである。第2始動口7にも、遊技球の入球を検出する第2始動口検出センサ7aが設けられており、この検出センサ7aが遊技球の入球を検出すると、第2特別図柄の抽選が行われる。なお、検出センサ7aが遊技球の入球を検出した場合にも、所定の賞球(例えば3個の遊技球)が払い出される。」 イ 「【0116】 ステップS600において、メインCPU101aは、遊技に関する情報を外部信号として遊技情報表示装置700等の外部装置に出力するための外部信号出力制御データ、第2始動口開閉ソレノイド70c及び大入賞口開閉ソレノイド80cを駆動させるための駆動制御データ(始動口開閉ソレノイド駆動データ及び大入賞口開閉ソレノイド駆動データ)、及び、図柄表示装置19、20、21や保留数表示装置22、23、24に所定の図柄を表示させるための表示制御データ(特別図柄表示データ、普通図柄表示データ、特別図柄保留表示データ、普通図柄保留表示データ)のデータ作成処理を行う。 」 ウ 「【0364】 サブCPU102aは、ステップS3003において普図演出待機フラグをOFFし、ステップS3004において、普図演出確定コマンド仮セット領域に仮セットしている普図演出確定コマンドをサブRAM102cの送信バッファにセットし、ステップS3005において当該普図演出時間を第2演出タイマカウンタにセットし、当該普図演出開始判定処理を終了する。なお、サブRAM102cの送信バッファにセットされた普図演出確定コマンドがランプ制御基板104及び画像制御基板105に送信されることによる画像出力装置13、音声出力装置14等からなる演出装置によって普図演出が実行される。普図演出については後述する。・・・ 【0371】 普図演出が開始されると、最初に普図演出が実行されることを気付かせるための(注意を引き付かせるための)準備的な演出(以下、「普図導入演出」という)が行われる。本実施の形態では、図53(a)?図53(b)に示すように、画像出力装置13の画面の右側上部に表示されている串に刺さった団子が揺動すると共に、所定のキャラクターが画面の右側下部に出現し、画面の中央下部に表示されているルーレットに向かって移動する。そして、図53(c)に示すように、所定のキャラクターがルーレットに到着すると、当該所定のキャラクターから「団子マークが止まれば団子チャンスタイムだよ!」という吹き出しが表示され、普通図柄抽選の概要が簡単に説明される。 【0372】 その後、所定のキャラクターがルーレットに吸い込まれると共に、図54(a)に示すように、ルーレットの回胴部(ドラム)が変動(回転)する。そして、普通図柄の停止表示と同時に、当該普通図柄抽選の結果に対応した演出図柄が停止表示される。ここで、停止表示される演出図柄は2種類である。すなわち、ハズレに対応する演出図柄(図54(b)参照)、又は、当たりに対応する演出図柄(図54(c)参照)のいずれかが停止表示される。本実施の形態では、当たりは2種類(当たり1及び当たり2)あるが、普図演出では当たりの種類まで報知されない。これは、上述したように、普通図柄抽選で当たりに当選しても、いずれの当たりに当選したのか判別困難な状態にすることで、遊技者の緊張感を持たせて、遊技の興趣を高めるためである。このように、遊技者に緊張感を持たすことができるのは、当たりの種類によって遊技者が享受する利益の度合いが異なるからである。いずれによせ、当該普図演出において当該普通図柄抽選で当たりに当選したことが確定するということは、第2始動口7のロング開放の可能性が残っているということであるので、遊技者のロング開放に対する期待は持続される。」 エ 「【0376】 次に、図52及び図55(a)を用いて、ロング開放演出について説明する。上述したように本実施の形態では、ロング開放演出は、ロング開放予告演出とロング開放中演出とで構成されている。ロング開放予告演出は、特別保証期間が開始されてからロング開放が行われるまでの間に行われる。その内容としては、画像出力装置13の画面の所定領域において、「ロング開放まであと○秒」とロング開放を予告する表示がなされ、○の部分には実際にロング開放が開始されるまでの時間(秒数)が、3・2・1とカウントダウンされる。さらに、特別保証期間は、ロング開放予告が開始されるのと同時に開始され、それから遊技球を発射しても第2始動口7に到達容易な時間に設定されている。このように、遊技者がロング開放の機会を逃し難くなっている。一方、ロング開放中演出は、図55(a)に示すように、ロング開放中に行われる。その内容としては、画像出力装置13の画面の所定領域において、「団子チャンスタイム!電チューが開放中だよ!」とロング開放中であることを示唆する表示がなされる。」 オ 上記ウの段落【0376】には、「特別保証期間は、ロング開放予告が開始されるのと同時に開始され、それから遊技球を発射しても第2始動口7に到達容易な時間に設定されている。このように、遊技者がロング開放の機会を逃し難くなっている。」と記載されているので、ロング開放予告の開始後に発射された遊技球が第2始動口7に入賞可能にロング開放を行うものと認められる。ここで、上記アの段落【0022】及び上記イの段落【0116】より、第2始動口7の開放の制御はCPU101aにより行われる。したがって、刊行物2には、CPU101aは、ロング開放予告の開始後に発射された遊技球が第2始動口7に入賞可能に第2始動口7の可動片70bを制御可能であることが記載されていると認められる。 カ 上記ア?エの記載事項、上記オの認定事項から、刊行物2には以下の技術事項が記載されていると認められる。 「普通図柄の抽選において当たりに当選すると、第2始動口7へ入賞可能な状態となるように可動片70bを作動させるメインCPU101aと、 普通図柄抽選の結果に対応した演出図柄の停止表示を行う普図導入演出を実行するサブCPU102aとを備え、 CPU101aは、ロング開放予告の開始後に発射された遊技球が第2始動口7に入賞可能に第2始動口7の可動片70bを制御可能である、遊技機。」 (3)対比 本件補正発明と引用発明とを対比する。請求人は審判請求書で本件補正発明を(a)?(i)に分説しているので、それに対応して対比する。 (a)引用発明の「変動表示」、「特定遊技状態(大当り遊技状態)」は、本件補正発明の「可変表示」、「遊技者にとって有利な特定遊技状態」に相当することは明らかである。 また、引用発明の「可変入賞球装置15」は本件補正発明の「可変入賞装置」に相当し、そして、引用発明の「マイクロコンピュータ560」は、「可変入賞球装置15」を制御する制御手段である。 したがって、引用発明の「変動表示の開始条件が成立したことにもとづいて識別情報(特別図柄)の変動表示を行い、識別情報(特別図柄)の表示結果として特定表示結果が導出表示されたときに特定遊技状態(大当り遊技状態)が生起する遊技機」は、本件補正発明の「可変表示の開始条件が成立したことにもとづいて識別情報の可変表示を行い、識別情報の表示結果として特定表示結果が導出表示されたときに遊技者にとって有利な特定遊技状態に制御する遊技機」に相当する。 また、引用発明の「可変入賞球装置15を開状態に制御するマイクロコンピュータ560」は、本件補正発明の「可変入賞装置を開放状態に制御する可変入賞装置制御手段」に相当する。 (b)引用発明の「変動表示」は本件補正発明の「可変表示」に相当するので、引用発明の「保留記憶」は、「可変表示」についてのものといえる。また、引用発明の「保留記憶データ」は本件補正発明の「保留記憶」に相当する。ここで、引用発明の「遊技制御用マイクロコンピュータ560のRAM55」は、保留記憶に関するデータを記憶する記憶手段である。 したがって、引用発明の「未だ変動表示の開始条件が成立していない保留記憶に関するデータを保留記憶データとして記憶する遊技制御用マイクロコンピュータ560のRAM55」は、本件補正発明の「未だ開始条件が成立していない可変表示について、保留記憶として記憶する保留記憶手段」に相当する。 (c)本件補正発明の「前記開始条件」とは、「識別情報の可変表示の開始条件」のことであるから、引用発明の「特別図柄の変動表示が開始できる状態になる」ことは、本件補正発明の「開始条件が成立したとき」に相当する。また、引用発明の「ランダムR(大当り判定用乱数)」は、RAM55の保存領域に格納されており、特別図柄の変動表示が開始できる状態になると読出されるのであるから、本件補正発明の「保留記憶」に相当することは明らかである。 したがって、引用発明の「特別図柄の変動表示が開始できる状態になると、RAM55の保存領域に格納されているランダムR(大当り判定用乱数)を読出し、特別図柄の変動表示の表示結果を大当りとするか否かを決定するCPU56」は、本件補正発明の「前記開始条件が成立したときに、前記保留記憶手段に記憶されている保留記憶にもとづいて、前記特定表示結果にするか否かを決定する開始条件成立時決定手段」に相当する。 (d)引用発明の「変動開始時」は、変動表示の開始条件が成立した時と同じタイミングであるので、本件補正発明の「開始条件成立時」に相当する。また、本件補正発明の「前記開始条件成立時決定手段による決定」とは、特定表示結果にするか否かの決定を意味するので、引用発明の「当り判定や変動パターン設定を行う」のうち、「当り判定を行う」ことは、本件補正発明の「前記開始条件成立時決定手段による決定」に相当する。以上より、引用発明の「変動開始時に当り判定や変動パターン設定を行う前(である始動入賞時)」は、本件補正発明の「前記開始条件成立時決定手段による決定前」に相当する。 したがって、引用発明の「変動開始時に当り判定や変動パターン設定を行う前である始動入賞時に、当り判定を実行する遊技制御用マイクロコンピュータ560」は、本件補正発明の「前記特定表示結果となるか否かを、前記開始条件成立時決定手段による決定前に判定する開始条件成立前判定手段」に相当する。 (e)引用発明の「識別情報の表示結果が非特定表示結果なるときよりも特定表示結果となるときの方が実行される割合が高い特定変動パターンにより変動表示を実行する演出制御用CPU101」と、 本件補正発明の「前記可変入賞装置が開放状態に制御されること、および識別情報の可変表示において識別情報の表示結果が前記特定表示結果になる可能性を報知可能な所定演出を実行する所定演出実行手段」とを対比する。 引用発明において、「特定変動パターン」による変動表示は、識別情報の表示結果が非特定表示結果なるときよりも特定表示結果となるときの方が実行される割合が高いので、「特定変動パターン」による変動表示を実行することにより、特定表示結果となる可能性が高いことを報知可能である。したがって、引用発明の「特定変動パターン」による変動表示は、本件補正発明の「識別情報の表示結果が前記特定表示結果になる可能性を報知可能な所定演出」に相当する。 よって、引用発明の「識別情報の表示結果が非特定表示結果なるときよりも特定表示結果となるときの方が実行される割合が高い特定変動パターンにより変動表示を実行する演出制御用CPU101」は、本件補正発明の上記「および」以下の構成である「識別情報の可変表示において識別情報の表示結果が前記特定表示結果になる可能性を報知可能な所定演出を実行する所定演出実行手段」に相当する。 (f)引用発明の「変動開始時に当り判定や変動パターン設定を行う前である始動入賞時の判定」は、本件補正発明の「前記開始条件成立前判定手段による判定」に相当する(上記(d)の説明を参照されたい。)。また、引用発明の「先読み予告」は、本件補正発明の「特定予告演出」に相当し、引用発明の「当該始動入賞に起因する変動表示開始前の段階から、先読み予告をする」は、本件補正発明の「当該判定の対象となった識別情報の可変表示が実行される前に特定予告演出を実行する」に相当する。ここで、引用発明において「変動開始時に当り判定や変動パターン設定を行う前である始動入賞時の判定による判定結果が特定された始動入賞指定コマンドにもとづいて」とは、結局は、「変動開始時に当り判定や変動パターン設定を行う前である始動入賞時の判定」にもとづくことを意味する。 したがって、引用発明の「変動開始時に当り判定や変動パターン設定を行う前である始動入賞時の判定による判定結果が特定された始動入賞指定コマンドにもとづいて、当該始動入賞に起因する変動表示開始前の段階から、先読み予告をするか否か判定する演出制御用マイクロコンピュータ100」は、本件補正発明の「前記開始条件成立前判定手段による判定にもとづいて、当該判定の対象となった識別情報の可変表示が実行される前に特定予告演出を実行するか否かを決定する特定予告演出決定手段」に相当する。 (g)引用発明の「先読み予告」は、本件補正発明の「特定予告演出」に相当する。また、本件補正発明の「前記特定予告演出決定手段の決定」とは、「特定予告演出」を実行するか否かの決定であることは明らかである。 したがって、引用発明の「先読み予告を実行するか否かの決定にもとづいて先読み予告を実行する演出制御用マイクロコンピュータ100」は、本件補正発明の「前記特定予告演出決定手段の決定にもとづいて前記特定予告演出を実行する特定予告演出実行手段」に相当する。 (h)引用発明の「演出制御用マイクロコンピュータ100は、非特定変動パターン種別のときよりも特定変動パターン種別であるときの方が高い割合で先読み予告を実行し、これにより、先読み予告が実行されたときには、先読み予告が実行されなかったときよりも、特定変動パターンになることに対する期待感を遊技者に抱かせる」と、 本件補正発明の「前記所定演出実行手段は、前記特定予告演出が実行されたときには、該特定予告演出が実行されないときに比べて、高い割合で前記所定演出を実行し」とを対比する。 引用発明の「特定変動パターン」による変動表示、「先読み予告」は、本件補正発明の「所定演出」、「特定予告演出」に相当する。ここで、引用発明において、「非特定変動パターン種別のときよりも特定変動パターン種別であるときの方が高い割合で先読み予告を実行」することは、「これにより、先読み予告が実行されたときには、先読み予告が実行されなかったときよりも、特定変動パターンになることに対する期待感を遊技者に抱かせる」との記載から、「先読み予告が実行されたときには、先読み予告が実行されなかったときよりも、高い割合で特定変動パターンによる変動表示を実行」することを意味することは明らかである。また、演出制御用マイクロコンピュータ100は、演出を実行する実行手段であるので、本件補正発明の「所定演出実行手段」の機能を含んでいる。 したがって、引用発明の「演出制御用マイクロコンピュータ100は、非特定変動パターン種別のときよりも特定変動パターン種別であるときの方が高い割合で先読み予告を実行し、これにより、先読み予告が実行されたときには、先読み予告が実行されなかったときよりも、特定変動パターンになることに対する期待感を遊技者に抱かせる」は、本件補正発明の「前記所定演出実行手段は、前記特定予告演出が実行されたときには、該特定予告演出が実行されないときに比べて、高い割合で前記所定演出を実行し」に相当する。 上記(a)?(h)より、本件補正発明と引用発明とは以下の点で一致している。 「可変表示の開始条件が成立したことにもとづいて識別情報の可変表示を行い、識別情報の表示結果として特定表示結果が導出表示されたときに遊技者にとって有利な特定遊技状態に制御する遊技機であって、 可変入賞装置を開放状態に制御する可変入賞装置制御手段と、 未だ前記開始条件が成立していない可変表示について、保留記憶として記憶する保留記憶手段と、 前記開始条件が成立したときに、前記保留記憶手段に記憶されている保留記憶にもとづいて、前記特定表示結果にするか否かを決定する開始条件成立時決定手段と、 前記特定表示結果となるか否かを、前記開始条件成立時決定手段による決定前に判定する開始条件成立前判定手段と、 識別情報の可変表示において識別情報の表示結果が前記特定表示結果になる可能性を報知可能な所定演出を実行する所定演出実行手段と、 前記開始条件成立前判定手段による判定にもとづいて、当該判定の対象となった識別情報の可変表示が実行される前に特定予告演出を実行するか否かを決定する特定予告演出決定手段と、 前記特定予告演出決定手段の決定にもとづいて前記特定予告演出を実行する特定予告演出実行手段とを備え、 前記所定演出実行手段は、前記特定予告演出が実行されたときには、該特定予告演出が実行されないときに比べて、高い割合で前記所定演出を実行する、 遊技機。」 そして、本件補正発明と引用発明は、以下の点で相違している。 (相違点1) 所定演出について、本件補正発明は、「可変入賞装置が開放状態に制御されること」、および「識別情報の可変表示において識別情報の表示結果が前記特定表示結果になる可能性」を報知可能としたのに対し、引用発明は、「識別情報の可変表示において識別情報の表示結果が前記特定表示結果になる可能性」を報知可能であるが、「可変入賞装置が開放状態に制御されること」の報知については特定されていない点。 (相違点2) 可変入賞装置制御手段について、本件補正発明は、「可変入賞装置が開放状態に制御されることの報知の開始後に発射された遊技媒体が入賞可能に前記可変入賞装置を開放状態に制御可能である」のに対し、引用発明は、このような特定はなされていない点。 (4)当審の判断 (4-1)相違点について ア 相違点1 刊行物2には、上記(2-2)のとおり、「普通図柄の抽選において当たりに当選すると、第2始動口7へ入賞可能な状態となるように可動片70bが作動させる」ことが記載されており、「第2始動口7」及び「可動片70b」は「可変入賞装置」である。また、刊行物2には、「普通図柄抽選の結果に対応した演出図柄の停止表示を行う普図導入演出」が記載されており、普通図柄抽選の結果が当りであれば可動片70bが作動するので、「普通図柄抽選の結果に対応した演出図柄の停止表示を行う普図導入演出」により、可変入賞装置が開放状態に制御されることを報知可能である。したがって、刊行物2の「普図導入演出」は「所定演出」といえるので、刊行物2には、「可変入賞装置が開放状態に制御されることを報知可能な所定演出を実行する」ことが記載されているといえる。 そして、引用発明に、「普通図柄表示器10」における停止図柄が所定の図柄(当り図柄)である場合に、可変入賞装置(可変入賞球装置15)が開状態になることを報知するため、「普通図柄表示器10」における表示に加えて、刊行物2に記載の所定演出(普図導入演出)を適用して、前記相違点1に係る本件補正発明の構成とすることは、引用発明と刊行物2の課題の共通性を考慮すれば、当業者が容易に想到し得たことである。 したがって、引用発明に刊行物2に記載の技術事項を適用して、前記相違点1に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。 イ 相違点2 刊行物2には、上記(2-2)に示したとおり、「CPU101aは、ロング開放予告の開始後に発射された遊技球が第2始動口7に入賞可能に第2始動口7の可動片70bを制御可能である」ことが記載されている。ここで、刊行物2に記載の「ロング開放予告」を行うことは、「第2始動口7に入賞可能に第2始動口7の可動片70bが開放状態に制御されること」、すなわち、「可変入賞装置が開放状態に制御されること」の報知を行うことを意味する。したがって、刊行物2には、「可変入賞装置制御手段は、可変入賞装置が開放状態に制御されることの報知の開始後に発射された遊技媒体が入賞可能に前記可変入賞装置を開放状態に制御可能である」ことが記載されているといえる。 そして、引用発明の可変入賞装置(可変入賞球装置15)の制御手段において、刊行物2に記載の上記技術事項を適用し、前記相違点2に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。 (4-2)請求人の主張について 請求人は、平成27年5月22日付けの審判請求書において、「請求項1に関して、本願発明と引用文献に記載された発明とを比較すると、引用文献1,2に記載された発明を組み合わせたとしても、少なくとも、上記の(h:所定演出実行手段が、特定予告演出が実行されたときには、該特定予告演出が実行されないときに比べて、高い割合で所定演出を実行すること)の構成要素が存在しない。 本願発明では、前提として、上記の(e:可変入賞装置が開放状態に制御されること、および識別情報の可変表示において識別情報の表示結果が特定表示結果になる可能性を報知可能な所定演出を実行する所定演出実行手段を備えること)の構成要素を備えることによって、可変入賞装置が開放状態に制御されることの報知と特定表示結果になる可能性の報知との2種類の報知を可能な所定演出を実行する。そして、そのような前提の下、本願の補正後の請求項1に係る発明は、上記の(h)の構成要素を備えることによって、特定予告演出が実行されたときには、該特定予告演出が実行されないときに比べて、高い割合で所定演出を実行する。」(第5頁第14?23行)旨主張している。 当該主張について検討するに、本件補正発明は、「可変入賞装置が開放状態に制御されること、および識別情報の可変表示において識別情報の表示結果が特定表示結果になる可能性を報知可能な所定演出を実行する所定演出実行手段を備え」、「所定演出実行手段が、特定予告演出が実行されたときには、該特定予告演出が実行されないときに比べて、高い割合で前記所定演出を実行する」ものである。そして、「可変入賞装置が開放状態に制御されること」を報知する演出を「A演出」、「識別情報の可変表示において識別情報の表示結果が特定表示結果になる可能性」を報知する演出を「B演出」とすると、本件補正発明は、「所定演出」として「A演出」と「B演出」の両方を実行可能であるが、「特定予告演出が実行されたときには、該特定予告演出が実行されないときに比べて、高い割合で前記所定演出を実行する」における「前記所定演出」は「A演出」又は「B演出」を指すものと解せられる。 したがって、請求項1の記載によれば、本件補正発明は、所定演出として「A演出」および「B演出」を実行可能とし、特定予告演出が実行されたときには、該特定予告演出が実行されないときに比べて、高い割合で「A演出」又は「B演出」の前記所定演出を実行するものである。 そうすると、特定予告演出が実行されるときには、該特定予告演出が実行されないときに比べて、所定演出(B演出)を高い割合で実行することは、上記(3)の(e)、(h)で示したとおり、引用発明の構成に含まれている。 よって、引用発明は、本件補正発明と、「所定演出実行手段が、特定予告演出が実行されたときには、該特定予告演出が実行されないときに比べて、高い割合で所定演出を実行する」との構成において、差異はない。 以上より、請求人の主張は採用できない。 (4-3)小括 本件補正発明の効果は、引用発明及び刊行物2に記載された事項から予測される範囲内のものにすぎず、格別なものではない。 したがって、上記(4-1)において検討したように、本件補正発明は、当業者が引用発明及び刊行物2に記載された技術事項に基づいて容易に発明をすることができたものである。 4.むすび 以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明 本件補正(平成27年5月22日付け手続補正)は、上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成26年5月16日付けの手続補正書により補正された、上記第2の1において特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。 1.刊行物 原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1(前記刊行物1)及び引用文献2(前記刊行物2)の記載事項は、前記第2の3(2)に記載したとおりである。そして、引用文献1には、前記第2の3(2)で認定した「引用発明」が記載されている。 2.対比・判断 本願発明は、本件補正発明の「前記可変入賞装置が開放状態に制御されること、および識別情報の可変表示において識別情報の表示結果が前記特定表示結果になる可能性を報知可能な所定演出を実行する所定演出実行手段」との構成を、「前記可変入賞装置が開放状態に制御されること、または識別情報の可変表示において識別情報の表示結果が前記特定表示結果になる可能性を報知する所定演出を実行する所定演出実行手段」との構成としたものである。 そこで、本願発明と引用発明とを対比すると、本件補正発明と引用発明との相違点のうち、相違点1については、前記第2の3(3)(e)で検討したとおり、引用発明は、「識別情報の可変表示において識別情報の表示結果が前記特定表示結果になる可能性を報知可能な所定演出」を行うものであるから、本願発明の「前記可変入賞装置が開放状態に制御されること、または識別情報の可変表示において識別情報の表示結果が前記特定表示結果になる可能性を報知する所定演出を実行する所定演出実行手段」との構成を備えているといえる。 したがって、本願発明と引用発明とは、本件補正発明と引用発明との相違点のうち、相違点2でのみ相違しているが、当該相違点については、前記第2の(4-1)で検討したとおり、刊行物2に記載されており、本願発明は、引用発明及び刊行物2に記載された事項より、当業者が容易に想到し得たものである。 3.むすび 以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。したがって、その余の請求項については検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2016-05-09 |
結審通知日 | 2016-05-10 |
審決日 | 2016-05-24 |
出願番号 | 特願2012-33381(P2012-33381) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(A63F)
P 1 8・ 572- Z (A63F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 福田 知喜 |
特許庁審判長 |
本郷 徹 |
特許庁審判官 |
齋藤 智也 長崎 洋一 |
発明の名称 | 遊技機 |
代理人 | 岩壁 冬樹 |
代理人 | 塩川 誠人 |
代理人 | 眞野 修二 |