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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G01D
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01D
管理番号 1316699
審判番号 不服2015-12074  
総通号数 200 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-08-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-06-25 
確定日 2016-07-07 
事件の表示 特願2011- 43826「表示装置組付構造及び表示装置組付方法」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 9月20日出願公開、特開2012-181089〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成23年3月1日の出願であって、平成26年10月8日付けの拒絶理由の通知に対し、平成26年11月19日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされたが、平成27年4月30日付けで拒絶査定がなされ、これに対して平成27年6月25日に審判請求がなされるとともに手続補正がなされたものである。

第2 平成27年6月25日にされた手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]
平成27年6月25日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]

1 本件補正

本件補正は、特許請求の範囲の請求項1について、本件補正前に、
「【請求項1】
環状の周辺壁を有するケースと、前記ケースの前面側に配置された文字板と、前記文字板上で可動する指針部材と、前記ケース内に設けられて前記指針部材を駆動する内機とを備えたメータ本体部に、液晶表示器を組み付ける表示装置組付構造であって、
前記周辺壁には、前記内機と前記文字板との間に前記液晶表示器を挿脱可能な表示器挿入開口が形成されており、
前記表示器挿入開口の開口縁部には、
前記ケース内へ前記液晶表示器を案内するガイド手段と、
前記ケース内に挿入された前記液晶表示器を固定する固定手段と、
が設けられており、
前記ガイド手段は、前記液晶表示器の一方の端部を挟んでガイドする一対の突部と、前記液晶表示器の他方の端部を挟んでガイドする他の一対の突部とを備えて構成されており、前記一対の突部の間隔を、前記表示器挿入開口の出入口近辺で他の部分よりも広くしてあり、
前記固定手段は、前記表示器挿入開口の出入口近辺で、前記ケース内に挿入された前記液晶表示器を固定するように構成されていることを特徴とする表示装置組付構造。」
とあったところを、

「【請求項1】
環状の周辺壁を有するケースと、前記ケースの前面側に配置された文字板と、前記文字板上で可動する指針部材と、前記ケース内に設けられて前記指針部材を駆動する内機とを備えたメータ本体部に、液晶表示器を組み付ける表示装置組付構造であって、
前記周辺壁には、前記内機と前記文字板との間に前記液晶表示器を挿脱可能な表示器挿入開口が形成されており、
前記表示器挿入開口の開口縁部には、
前記ケース内へ前記液晶表示器を案内するガイド手段と、
前記ケース内に挿入された前記液晶表示器を固定する固定手段と、
が設けられており、
前記ガイド手段は、前記液晶表示器の一方の端部を挟んでガイドする一対の突部と、前記液晶表示器の他方の端部を挟んでガイドする他の一対の突部とを備えて構成されており、前記ケース内へ挿入された前記液晶表示器が前記内機と前記文字盤との間で傾斜しないように前記液晶表示器を支持し、前記一対の突部の間隔を、前記表示器挿入開口の出入口近辺で他の部分よりも広くしてあり、
前記固定手段は、前記表示器挿入開口の出入口近辺で、前記ケース内に挿入された前記液晶表示器を固定するように構成されていることを特徴とする表示装置組付構造。」
とすることを含むものである(下線は補正箇所を示す。)。

本件補正について検討する。

本件補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「ガイド手段」について、「前記ケース内へ挿入された前記液晶表示器が前記内機と前記文字盤との間で傾斜しないように前記液晶表示器を支持し」と限定を付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか否か)について以下に検討する。

2 引用例、周知例及びその記載事項

(1)原査定の拒絶の理由で引用された、本願の出願日前に頒布された刊行物である、特開2006-98160号公報(平成18年4月13日出願公開。以下、「引用例1」という。)には、図面とともに、次の記載がある。(なお、下線は当審で付した。)

a「【技術分野】
【0001】
本発明は、計器組付構造に関し、特に自動車用計器の組み立てに好適な計器組付構造に関する。」

b「【0007】
本発明は、上述した従来の問題点に鑑み、計器における各部品の組付性の向上を図った計器組付構造を提供することを目的としている。」

c「【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の発明は、表示器と、目盛板と、前記表示器および前記目盛板を支持するケースを備える計器において、前記ケースは、開口部と、該開口部の開口方向に対してほぼ直交する方向から該開口部内に連通するように形成された挿入口とを有し、前記表示器は、前記挿入口に挿入され、その表示画面が前記開口部中に位置しかつ前記開口部の開口方向に向かうように前記ケースで支持され、前記目盛板は、その外周側に形成され、指針により指示される目盛を表示するためのメータ意匠と、前記メータ意匠より内側に形成された開口部とを有し、前記表示器の前面側において前記開口部の内周が前記表示器の表示画面を取り囲むように、前記ケースで支持されることを特徴とする。」

d「【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の計器組付構造について、図面に基づいて説明する。図1は、本発明の最良の形態に係る計器組付構造を含む車両用コンビネーションメータを示す分解斜視図、図2は指針の斜視図、図3は目盛板アッシーの分解斜視図、図4はLCDアッシーの分解斜視図、図5はコンビネーションメータの正面図、図6は図5におけるI-I線部分断面図である。
【0021】
車両用コンビネーションメータ1は、車両の走行速度を示すスピードメータ2と、車両のエンジン回転数を示すタコメータ3とを有する2眼メータとして構成されている。車両用コンビネーションメータ1は、主な構成部品として、表ガラス4と、見返し板5と、指針6および7と、目盛板アッシー8および9と、LCD(液晶ディスプレイ)アッシー10および11と、ケース12と、メインPCB(印刷回路基板)アッシー13と、カバー14と、メータリング15および16と、ターンハウジング17とを含む。
【0022】
ケース12は、ほぼ円形の開口部12a,12bと、それぞれ、開口部12a,12b内に開口方向に対してほぼ直交する方向から連通するように形成されたほぼ四角形の挿入口12c,12d(図1では示されていないが、図7参照)とを有する。」

e「【0024】
指針6は、ムーブメント18の回転軸18aに取り付けられる基部61と、基部61より延出する指針部62と、基部61から指針部62と反対の方向に延出したほぼT字形のバランス部63とからなる。指針部62は、基部61より回転軸15aとほぼ直交する方向へ延出する第1指針部62a、第1指針部62aより回転軸15aとほぼ平行な方向に延出する第2指針部62b、第2指針部62bより第1指針部62aと逆方向に延出する第3指針部62c、第3指針部62cより第2指針部62bとほぼ同一方向に延出する第4指針部62d、および第4指針部62dより第1指針部62aとほぼ同一方向に延出し、目盛板84の目盛を指示する第5指針部62eを有する。つまり、指針62は、ほぼS字形に形成されている。」

f「【0030】
図6に示すように、スピードメータ2は、さらに、LCD106の背面側のメインPCBアッシー13上に配置されたステッパモータ等からなるムーブメント18を含む。ムーブメント18の回転軸18aには、指針6の基部61が打ち込まれて固定されている。LCD106を含むLCDアッシー10は、指針6の第1指針部62aと第3指針部62cの間に位置するように配置されている。目盛板84を含む目盛板アッシー8は、指針6の第3指針部62cと第5指針部62eの間に位置するように配置されている。」

g「【0033】
次に、図9に示すように、LCDアッシー10をケース12の側部に設けた挿入口12cへ横方向から挿入し、固定する。挿入口12cは、ケース12の外壁側から、開口部12aの開口方向に対してほぼ直交する方向から開口部12a内に連通するように形成されている。
【0034】
図10は、LCDアッシー10のケース12への固定の仕方をケース12の裏面側から示す図である。図10(A)に示すように、ケース12には、LCDアッシー10を挿入できる幅と高さを有するほぼ四角形の挿入口12cが形成されている。挿入口12cを構成する内壁における両側の側壁には、この側壁より挿入口12cの内側に突出する棚状に一体形成された係合部12dが設けられている。また、挿入口12cの上壁(図8(A)では、下に見える壁)には、上壁と同一平面をなす表面を有すると共に、開口部12aの内壁から突出して円弧状の外周を有する支持片12eが一体形成されている。また、挿入口12cの上壁には、上壁より下がる段部になるように形成された止め部12fと、係合溝12gが形成されている。さらに、挿入口12cの両側の側壁に近い場所の上壁には、ケース12の表側まで貫通する2個のネジ穴12hが形成されている。
【0035】
そこで、図10(B)に示すように、LCDアッシー10を挿入口12cへ横方向から挿入すると、LCDアッシー10は、ベゼル107の表面が挿入口12cの上壁および支持片12eの上をスライドしかつホルダー101の係合片101aが係合部12dに係合しながら、開口部12a中へ移動する。そして、LCD106の表示画面が開口部12aのほぼ中央に位置する場所まで移動すると、ストッパ101bが止め部12fに当接してLCDアッシー10の移動が停止すると共に、係合爪101cが係合溝12gに係合する。
【0036】
その後、LCDアッシー10は、図9に示すように、この位置でケース12の表側よりネジ穴12hにねじ込まれるネジ19によって、ケース12に固定される。次に、LCD PCBアッシー12のコネクタ102aとLCD106のコネクタ106aを、それぞれ、メインPCBアッシー13に実装されたコネクタ13aおよび13bにはめ込むと共に、LCD106のFPC(フレキシブルプリント基板)106bをメインPCBアッシー13に実装されたコネクタ13cにロックする。このようにして固定されたLCDアッシー10は、LCD106の表示画面がケース12の開口部12aのほぼ中央に位置すると共に、挿入方向の先端側が指針6の第1指針部62aと第3指針部62cの間に位置するように配置されたことになる。」

h「【0044】
また、ムーブメント18がLCD106の背面側にあっても、従来のように目盛板にスリットを設けることなく、指針6の第5指針部62eが、LCD106より正面側に配置された目盛板84上のメータ意匠84bの目盛を指示することができ、意匠性の向上を図ることができる。」

i 図1には、ケース12の周囲に環状の外壁が設けられていることが示されている。

j 図3には、文字が付された目盛板84が示されている。

ア 上記a(【0001】)の記載から、引用例1に記載された技術は、「計器組付構造」に関するものであり、上記b(【0007】)の記載から、計器における各部品の組付性の向上を図った計器組付構造を提供することを課題としたものである。

イ 上記dの「【0020】・・・計器組付構造を含む車両用コンビネーションメータ・・・【0021】車両用コンビネーションメータ1は、車両の走行速度を示すスピードメータ2と、車両のエンジン回転数を示すタコメータ3とを有する2眼メータとして構成されている。車両用コンビネーションメータ1は、主な構成部品として、・・・針6および7と、目盛板アッシー8および9と、LCD(液晶ディスプレイ)アッシー10および11と、ケース12・・・とを含む。」、上記gの「【0033】・・・ケース12の外壁側から」の記載、及び上記iのケース12の周囲に環状の外壁が設けられていることの記載から、
引用例1には、「計器組付構造を含む車両用コンビネーションメータであって、車両用コンビネーションメータ1は、車両の走行速度を示すスピードメータ2と、車両のエンジン回転数を示すタコメータ3とを有する2眼メータとして構成され、車両用コンビネーションメータ1は、主な構成部品として、指針6および7と、目盛板アッシー8および9と、LCD(液晶ディスプレイ)アッシー10および11と、環状の外壁を有するケース12とを含む」ことが記載されている。

ウ 上記e(【0024】)の記載から、引用例1には、「指針6は、ムーブメント18の回転軸18aに取り付けられる基部61と、目盛板84の目盛を指示する第5指針部62eを有する」ことが記載されている。

エ 上記f(【0030】)の記載から、引用例1には、「スピードメータ2は、LCD106の背面側のメインPCBアッシー13上に配置されたステッパモータ等からなるムーブメント18を含み、ムーブメント18の回転軸18aには、指針6の基部61が打ち込まれて固定されている」ことが記載されている。

オ 上記gの「【0033】・・・挿入口12cは、ケース12の外壁側から、・・・形成されている。」、上記gの「【0034】・・・ケース12には、LCDアッシー10を挿入できる幅と高さを有するほぼ四角形の挿入口12cが形成されている。」との記載から、
引用例1には、「ケース12の外壁には、LCDアッシー10を挿入できる幅と高さを有するほぼ四角形の挿入口12cが形成されている」ことが記載されている。

カ 上記g(【0034】)の記載から、引用例1には、「挿入口12cを構成する内壁における両側の側壁には、この側壁より挿入口12cの内側に突出する棚状に一体形成された係合部12dが設けられている」ことが記載されている。

キ 上記g(【0034】)の記載から、引用例1には、「挿入口12cの両側の側壁に近い場所の上壁には、ケース12の表側まで貫通する2個のネジ穴12hが形成されている」ことが記載されている。

ク 上記g(【0035】)の記載から、引用例1には、「LCDアッシー10は、ホルダー101の係合片101aが係合部12dに係合しながら、開口部12a中へ移動する」ことが記載されている。

ケ 上記g(【0036】)の記載から、引用例1には、「LCDアッシー10は、この位置でケース12の表側よりネジ穴12hにねじ込まれるネジ19によって、ケース12に固定される」ことが記載されている。

コ 上記h(【0044】)及び上記jの記載から、引用例1には、「ムーブメント18がLCD106の背面側にあって、文字付きの目盛板84がLCD106より正面側に配置された」が記載されている。

したがって、上記引用例1に記載された事項、図面の記載、及び上記アないしコを総合すると、引用例1には、次の事項が記載されている(以下、「引用発明」という。)

「車両用コンビネーションメータ1は、車両の走行速度を示すスピードメータ2と、車両のエンジン回転数を示すタコメータ3とを有する2眼メータとして構成され、車両用コンビネーションメータ1は、主な構成部品として、指針6および7と、目盛板アッシー8および9と、LCD(液晶ディスプレイ)アッシー10および11と、環状の外壁を有するケース12とを含み、
指針6は、ムーブメント18の回転軸18aに取り付けられる基部61と、目盛板84の目盛を指示する第5指針部62eを有し、
スピードメータ2は、LCD106の背面側のメインPCBアッシー13上に配置されたステッパモータ等からなるムーブメント18を含み、ムーブメント18の回転軸18aには、指針6の基部61が打ち込まれて固定されており、
ケース12の外壁には、LCDアッシー10を挿入できる幅と高さを有するほぼ四角形の挿入口12cが形成され、
挿入口12cを構成する内壁における両側の側壁には、この側壁より挿入口12cの内側に突出する棚状に一体形成された係合部12dが設けられており、
挿入口12cの両側の側壁に近い場所の上壁には、ケース12の表側まで貫通する2個のネジ穴12hが形成されている、
LCDアッシー10は、ホルダー101の係合片101aが係合部12dに係合しながら、開口部12a中へ移動し、
LCDアッシー10は、この位置でケース12の表側よりネジ穴12hにねじ込まれるネジ19によって、ケース12に固定され、
ムーブメント18がLCD106の背面側にあって、文字付きの目盛板84がLCD106より正面側に配置された、
計器組付構造。」

(2)原査定の拒絶の理由で引用された、本願の出願日前に頒布された刊行物である、特開平10-170316号公報(平成10年6月26日出願公開。以下、「引用例2」という。)には、図面とともに、次の記載がある(なお、下線は当審で付した。)。

「【0024】
図1には、測定管(図示しない)と、この測定管内に配置された、流れ方向で運動可能な浮子(図示しない)と、この浮子に結合された永久磁石(図示しない)とを備えた浮子型の流量計に用いられる測定器具ハウジング1が示されている。浮子に結合された永久磁石の運動に従動する、回転可能に支承された従動磁石は図1にはやはり図示されていないが、測定器具ハウジング1のハウジング底部2に配置されている。この従動磁石の詳細な構成に関しては、前で既に説明したドイツ連邦共和国特許出願公開第19639060号明細書に記載されている。本発明による測定器具ハウジング1の図1に示した第1実施例では、測定器具ハウジング1の内部に配置された、従動磁石の運動を変換する表示装置が、従動磁石に結合された指針軸3に配置された指針4として形成されている。図示の実施例では、指針軸3が支承ブシュ5内に支承されている。本発明によれば、測定器具ハウジング1が、機械的な機能ユニットおよび/または電気的な機能ユニットを保持した挿入エレメント9,10のための3つの挿入ガイド6,7,8を有している。
【0025】
本発明による測定器具ハウジング1の図1に示した第1実施例では、ハウジング底部2に、従動磁石の運動を電気的な信号に変換する送信機11が係止されている。
【0026】
図1に示した第1実施例では、第1の挿入エレメント9がスケールキャリヤとして形成されている。この第1の挿入エレメント9は指針軸3のための切欠きを有している。第1の挿入エレメント9にプリントされたスケール目盛り12には、スリット13が並設されている。このスリット13を通じて、最大領域もしくは最小領域を表示する閾値指針14,15の端部が目に見えるようになっている。閾値指針14,15は公知先行技術に基づき知られているように、最大領域および最小領域をマーキングするために働く。このような最大領域および最小領域内では、実際の流量値が臨界的となり、修正を必要とする。スケールキャリヤとして形成された第1の挿入エレメント9は測定器具ハウジング1に設けられた最上位の挿入ガイド6に挿入される。この最上位の挿入ガイド6は下側の2つの挿入ガイド7,8とは異なっている。なぜならば、この最上位の挿入ガイド6はカバー(図示しない)を通じて直接に目に見えてしまうので、見栄え好く形成されていることが望ましいからである。
【0027】
図1に示した第1実施例では、最下位の挿入ガイド8に第2の挿入エレメント10が挿入可能となる。この第2の挿入エレメント10は各1つの閾値指針14,15を有する2つの閾値指針装置16,17を保持している。」

「【0032】
図3には、本発明による測定器具ハウジング26の第2実施例が示されている。この第2実施例では、3つの挿入ガイド27,28,29が全て、側壁30,31に設けられたスリットとして形成されている。それに対して、図1に示した第1実施例における下側の2つの挿入ガイド7,8は側壁に装着されたプラスチックレールから成っている。また、図3に示した第2実施例では、機械的な機能ユニットおよび/または電気的な機能ユニットを保持した第3の挿入エレメント32が挿入されている。挿入エレメント10,32と送信機11もしくは外部の電圧供給装置との間の電気的な接続は、電気的な差込み結合部またはねじ込み結合部33,34,35を介して保証される。」

上記記載から、次の事項が記載されているということができる。

「測定器具ハウジング1が、指針軸3(【0024】)、スケール目盛り12の第1の挿入エレメント9(【0026】)、2つの閾値指針装置16,17を保持している第2の挿入エレメント10(【0027】)を備え、
測定器具ハウジング1が、挿入エレメント9,10のための3つの挿入ガイド6,7,8を有しており(【0024】)、
最下位の挿入ガイド8に第2の挿入エレメント10が挿入可能となり(【0027】)、
下側の2つの挿入ガイド7,8は側壁に装着されたプラスチックレールから成る(【0032】)、
測定器具ハウジング。」

したがって、引用例2には、次の技術が記載されているということができる。
「測定器具ハウジング、すなわちケースに挿入エレメントのための挿入ガイドを設ける技術」

(3)原査定の備考において引用された、本願の出願日前に頒布された刊行物である、特開2007-227824号公報(平成19年9月6日出願公開。以下、「周知例1」という。)には、図面とともに、次の記載がある(なお、下線は当審で付した。)。

a「【0015】
図1に示すように、ケース本体1は、略直方体の形状をしている。また、ケース本体1は、1つの面が開口し、内部に基板を収容できる空間を有している。基板は、この開口部分から挿入され、ケース本体1内部に収容される。
【0016】
また、図3は、ケース本体1を開口の方向から見た断面図である。図1及び図3に示すように、前記ケース本体1は、対向する2つの内側面3に基板の移動を案内する案内部4を備えている。また、ケース本体1は、基板を挿入する方向の終端面5に基板を挟持して保持する保持部6と、基板と係合して支持する支持部7とを備えている。
【0017】
前記案内部4は、基板の移動を案内するものであり、ケース本体1の両側面3に、基板の挿入方向に延設されている。案内部4は、基板の厚さよりも広い間隔で設けられており、この溝の部分で基板を案内するようになっている。したがって、基板は、その端部が案内部4の溝に入ることで溝に案内されながら移動することになる。
【0018】
この案内部4の溝の深さは基板を案内可能な程度に設けられていればよい。また、基板の厚さ方向における溝の幅は、基板の厚さよりも大きくなっており、さらに、溝の幅がケース本体1の開口部分から終端面5付近に向かうに従って狭くなっている。このように、開口部分における溝の幅を広くすることにより、基板の挿入が容易になる。」

b 図1には、案内部4が一対の突部を備え、一対の突部により溝を形成していることが示されている。

上記記載から、次の事項が記載されているということができる。

「ケース本体1は、1つの面が開口し、内部に基板を収容できる空間を有しており、基板は、この開口部分から挿入され(上記a【0015】)、
前記ケース本体1は、対向する2つの内側面3に基板の移動を案内する案内部4を備えているおり(上記a【0016】)、
前記案内部4が一対の突部を備え、一対の突部により溝を形成し(上記b(図1))、
前記案内部4は、基板の移動を案内するものであり、ケース本体1の両側面3に、基板の挿入方向に延設されており、案内部4は、基板の厚さよりも広い間隔で設けられており、この溝の部分で基板を案内するようになっており(上記a【0017】)、
基板の厚さ方向における溝の幅は、基板の厚さよりも大きくなっており、さらに、溝の幅がケース本体1の開口部分から終端面5付近に向かうに従って狭くなっており(上記a【0018】)、
基板の挿入が容易である(上記a【0018】)、
ケース本体。」

そして、「前記案内部4が一対の突部を備え、一対の突部により溝を形成し、前記案内部4は、基板の移動を案内する」ものであるから、案内部は、基板の端部を挟んでガイドする一対の突部を有し、
「前記案内部4は、・・・ケース本体1の両側面3に、基板の挿入方向に延設されて」いるので、案内部は、基板の一方の端部を挟んでガイドする一対の突部と、基板の他方の端部を挟んでガイドする他の一対の突部を備え、
「ケース本体1は、1つの面が開口し・・・基板は、この開口部分から挿入され」「溝の幅がケース本体1の開口部分から終端面5付近に向かうに従って狭くなっている」ので、一対の突部の間隔を、基板挿入開口の出入口近辺で他の部分より広くしてあるから、
周知例1には、
「案内部を、基板の一方の端部を挟んでガイドする一対の突部と、基板の他方の端部を挟んでガイドする他の一対の突部を備えて構成し、一対の突部の間隔を、基板挿入開口の出入口近辺で他の部分より広くしてある、ケース本体。」
が記載されているということができる。

3 対比

本願補正発明と引用発明を対比する。

(1)
a 引用発明の「車両用コンビネーションメータ1は、主な構成部品として、指針6および7と、目盛板アッシー8および9と、LCD(液晶ディスプレイ)アッシー10および11と、環状の外壁を有するケース12とを含」むので、環状の外壁を有するケース12と、目盛板アッシー8と、指針6とを備えた車両用コンビネーションメータに、LCDアッシーを組み付けている。

b 引用発明は「文字付きの目盛板84がLCD106より正面側に配置され」ているので、文字付きの目盛板84が、ケースの前面に配置され、
引用発明は「指針6は、ムーブメント18の回転軸18aに取り付けられる基部61と、目盛板84の目盛を指示する第5指針部62eを有し」ているので、指針6が、目盛板84上で可動し、
引用発明は「車両用コンビネーションメータ1は、車両の走行速度を示すスピードメータ2と、車両のエンジン回転数を示すタコメータ3とを有する2眼メータとして構成され」、「スピードメータ2は、LCD106の背面側のメインPCBアッシー13上に配置されたステッパモータ等からなるムーブメント18を含み、ムーブメント18の回転軸18aには、指針6の基部61が打ち込まれて固定されて」いるので、車両用コンビネーションメータ1は、指針6を駆動するムーブメント18を備える。

c 引用発明は「計器組付構造を含む車両用コンビネーションメータで」あって、上記aを踏まえると、車両用コンビネーションメータ1に、LCDアッシーを組み付ける表示装置組付構造と捉えることができる。

d 上記a?cから、引用発明は、「環状の外壁を有するケース12」と、「ケース12の前面に配置された文字付きの目盛板84」と、「目盛板84上で可動する指針6」と、「ケース12内に設けられて指針6を駆動するムーブメント18」とを備えた車両用コンビネーション「メータ」に、「LCDアッシー」を組み付ける表示装置組付構造であるといえ、
本願補正発明の「環状の周辺壁を有するケース」と、「前記ケースの前面側に配置された文字板」と、「前記文字板上で可動する指針部材」と、「前記ケース内に設けられて前記指針部材を駆動する内機」とを備えた「メータ本体部」に、「液晶表示器」を組み付ける表示装置組付構造に相当する。

(2)引用発明は「ムーブメント18がLCD106の背面側にあって、文字付きの目盛板84がLCD106より正面側に配置され」ているので、ムーブメント18と目盛板84の間にLCD106が取り付けてあり、引用発明の「ケース12の外壁には、LCDアッシー10を挿入できる幅と高さを有するほぼ四角形の挿入口12cが形成され」ることは、
本願補正発明の「前記周辺壁には、前記内機と前記文字板との間に前記液晶表示器を挿脱可能な表示器挿入開口が形成されて」いることに相当する。

(3)引用発明の「挿入口12cの両側の側壁に近い場所の上壁には、ケース12の表側まで貫通する2個のネジ穴12hが形成されて」おり、「LCDアッシー10は、この位置でケース12の表側よりネジ穴12hにねじ込まれるネジ19によって、ケース12に固定され」ていることは、
本願補正発明の「前記表示器挿入開口の開口縁部には、前記ケース内に挿入された前記液晶表示器を固定する固定手段が設けられており、前記固定手段は、前記表示器挿入開口の出入口近辺で、前記ケース内に挿入された前記液晶表示器を固定するように構成されている」ことに相当する。

(4)引用発明の「車両用コンビネーションメータ1は、主な構成部品として、指針6および7と、目盛板アッシー8および9と、LCD(液晶ディスプレイ)アッシー10および11と、環状の外壁を有するケース12とを含」むものであり、これらを組付けるものであるから、引用発明の「計器組付構造」は、
本願補正発明の「表示装置組付構造」に相当する。

すると、本願補正発明と引用発明とは、次の<一致点>及び<相違点>を有する。

<一致点>
「環状の周辺壁を有するケースと、前記ケースの前面側に配置された文字板と、前記文字板上で可動する指針部材と、前記ケース内に設けられて前記指針部材を駆動する内機とを備えたメータ本体部に、液晶表示器を組み付ける表示装置組付構造であって、
前記周辺壁には、前記内機と前記文字板との間に前記液晶表示器を挿脱可能な表示器挿入開口が形成されており、
前記表示器挿入開口の開口縁部には、
前記ケース内に挿入された前記液晶表示器を固定する固定手段と、
が設けられており、
前記固定手段は、前記表示器挿入開口の出入口近辺で、前記ケース内に挿入された前記液晶表示器を固定するように構成されていることを特徴とする表示装置組付構造。」

<相違点>
(ア)本願補正発明は、「前記ケース内へ前記液晶表示器を案内するガイド手段」が設けられているのに対して、引用発明は、このような特定がない点。

(イ)本願補正発明は、「前記ガイド手段が、前記液晶表示器の一方の端部を挟んでガイドする一対の突部と、前記液晶表示器の他方の端部を挟んでガイドする他の一対の突部とを備えて構成されており、前記ケース内へ挿入された前記液晶表示器が前記内機と前記文字盤との間で傾斜しないように前記液晶表示器を支持し、前記一対の突部の間隔を、前記表示器挿入開口の出入口近辺で他の部分よりも広くして」あるのに対して、引用発明は、このようなガイド手段について特定がない点。

4 判断

<相違点>(ア)について
引用例2には、測定器具ハウジング、すなわちケースに挿入エレメントのための挿入ガイドを設ける技術が記載されている(上記2(2))。
そして、引用発明は「挿入口12cを構成する内壁における両側の側壁には、この側壁より挿入口12cの内側に突出する棚状に一体形成された係合部12dが設けられており・・・ LCDアッシー10は、ホルダー101の係合片101aが係合部12dに係合しながら、開口部12a中へ移動し」とあるように、
LCDアッシー10が係合部12dに係合しながら、開口部12a中へ移動すること、すなわち、LCDアッシー10を挿入する際に、係合部により何らかの案内を行うことが示唆されている。
加えて、部材をスライドさせて開口に挿入するにあたり、ガイド部材を設けることはよく知られた事項であるから、引用発明に、引用例2記載の挿入ガイドを設ける技術を適用し、ケース内へより確実に液晶表示器を案内するようにすることは、当業者が容易になし得る事項である。

したがって、本願補正発明の<相違点>(ア)に係る構成とすることは格別なことではない。

<相違点>(イ)について
一般に、案内部を、基板の一方の端部を挟んでガイドする一対の突部と、基板の他方の端部を挟んでガイドする他の一対の突部を備えて構成し、一対の突部の間隔を、基板挿入開口の出入口近辺で他の部分より広くすることは、周知技術である(周知例1、上記2(3))。
したがって、引用発明に引用例2記載の挿入ガイドを適用するにあたり、前記周知技術を用いて、液晶表示器の一方の端部を挟んでガイドする一対の突部と、前記液晶表示器の他方の端部を挟んでガイドする他の一対の突部とを備えて構成されており、前記一対の突部の間隔を、前記表示器挿入開口の出入口近辺で他の部分よりも広くしてある構造を採用することは、当業者が適宜なし得る事項である。
また、引用発明の目盛板84,LCD106、ムーブメント18を互いに平行することは、見栄えの点からも、当業者が普通に採用する事項であるから、ケース内へ挿入された液晶表示器が内機と文字盤との間で傾斜しないように前記液晶表示器を支持することに格別の困難性を有しない。

さらに、引用発明は「挿入口12cの両側の側壁に近い場所の上壁には、ケース12の表側まで貫通する2個のネジ穴12hが形成されている・・・ LCDアッシー10は、この位置でケース12の表側よりネジ穴12hにねじ込まれるネジ19によって、ケース12に固定され」るものであって、引用発明に引用例2記載の挿入ガイドを適用した組付構造においては、固定手段を構成するネジによって液晶表示器はがたつくことなく固定されるということができる。

したがって、本願補正発明の<相違点>(イ)に係る構成とすることは格別なことではない。

そして、上記相違点を総合的に判断しても、本願補正発明が奏する効果は引用発明、引用例2に記載された技術及び周知技術から当業者が十分に予測できたものであって格別なものとはいえない。

したがって、本願補正発明は、引用発明、引用例2に記載された技術及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。

5 本件補正についてのむすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について

1 本願発明

平成27年6月25日にされた手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記「第2 [理由] 1」の本件補正前の「請求項1」として記載したとおりのものである。

2 引用例

原査定の拒絶の理由及び備考で、引用された引用例及びその記載事項は、上記「第2 [理由] 2 引用例、周知例及びその記載事項」に記載したとおりである。

3 対比・判断

本願発明は、本願補正発明から、上記「第2 [理由] 1 本件補正」で検討した本件補正に係る限定を削除するものである。
そうすると、本願発明の特定事項を全て含み、更に他の特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が前記「第2 [理由] 4 判断」に示したとおり、引用発明、引用例2に記載された技術及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明、引用例2に記載された技術及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 むすび

以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その余の請求項に論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-04-21 
結審通知日 2016-05-10 
審決日 2016-05-23 
出願番号 特願2011-43826(P2011-43826)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G01D)
P 1 8・ 575- Z (G01D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 櫻井 仁  
特許庁審判長 酒井 伸芳
特許庁審判官 須原 宏光
清水 稔
発明の名称 表示装置組付構造及び表示装置組付方法  
代理人 三好 秀和  

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