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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H04J
審判 査定不服 特29条の2 取り消して特許、登録 H04J
管理番号 1316830
審判番号 不服2014-18942  
総通号数 200 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-08-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-09-22 
確定日 2016-08-02 
事件の表示 特願2012-264768「レートをとぎれなく適合させるマルチキャリア変調システムおよび方法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 3月21日出願公開、特開2013- 55698、請求項の数(16)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本件出願は,2000年3月10日(パリ条約による優先権主張外国庁受理1999年3月12日,1999年10月22日,2000年1月19日 米国)を国際出願日とする特願2000-604585号の一部を平成22年1月22日に新たな特許出願として出願した特願2010-12605号の一部を平成24年12月3日に新たな特許出願としたものであって,平成25年9月5日付けで拒絶理由が通知され,同年12月5日に意見書と手続補正書が提出され,平成26年5月13日付けで拒絶査定(以下,「原査定」という。)がされ,これに対し,同年9月22日に拒絶査定不服審判が請求され,その後,当審において平成27年7月10日付けで拒絶理由が通知され,同年11月13日に意見書と手続補正書が提出され,当審において同年12月17日付けで最後の拒絶理由が通知され,平成28年5月23日に意見書と手続補正書が提出されたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1ないし16に係る発明は,平成28年5月23日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし16に記載された事項により特定されるものと認める。
本願の請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は以下のとおりである。

「複数の遅延パスを有するマルチキャリア通信システムにおいて,少なくとも2つのアプリケーションをサポートする方法であって,
(a)現在アクティブなアプリケーションセットのうちの第1のアプリケーションを第1の遅延パスと関連させるステップと,
(b)前記現在アクティブなアプリケーションセットのうちの第2のアプリケーションを第2の遅延パスと関連させるステップと,
(c)前記現在アクティブなアプリケーションセットの変化に応答して,少なくとも1つの前記遅延パスのデータレートを,少なくとも1つの同期シンボルに基づいて,RSコーデイング,インターリービングおよびフレーミングのパラメーターを変えずにとぎれなく変更するステップと
を含む,方法。」

第3 原査定の理由について
1 原査定の理由
「この出願の下記の請求項に係る発明は,その出願の日前の特許出願であって,その出願後に特許掲載公報の発行又は出願公開がされた下記の特許出願の願書に最初に添付された明細書,特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり,しかも,この出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく,またこの出願の時において,その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので,特許法第29条の2の規定により,特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)

<理由Bについて>
請求項:1-16
先の出願:1,2
備考:
先の出願1,2(特に,段落【0010】【0011】【0015】【0016】)のそれぞれには,「全てのキャリアの成分を含む疑似ランダム信号を用いて測定したSNRに基づいて,各キャリアのビット・パワー配分を算出して,ビットパワー配分テーブルに記憶し,データの送信を行う際に該ビットパワー配分テーブルを参照して,各キャリアのビット配分とパワー配分を決定するDMTシステムにおいて,ファストチャネルで遅延が問題となるデータの通信を行い,インターリーブチャネルで遅延が問題とならないデータの通信を行う方法」の発明が記載されている。
なお,先の出願1,2に記載された発明において,送信するデータが遅延が問題となるものか否かを判断し,ファストチャネル,あるいは,インターリーブチャネルに振り分けることは,該発明を具体化する際に適宜行うことであり,格別なことでない。
よって,先の出願1,2には,請求項1-16に係る発明と同様の発明が記載されている。

拒絶の理由が新たに発見された場合には拒絶の理由が通知される。

引 用 文 献 等 一 覧
1.特願平10-288553号(特開2000-115035号)
2.特願平10-288549号(特開2000-115034号)」

2 原査定の理由の判断
(1)先願発明
原査定の拒絶の理由に引用された,本願の優先権主張の日前の他の出願であって,その優先権主張の日後に出願公開された特願平10-288553号(特開2000-115035号公報参照。以下「先願1」という。)の願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面(以下,これらを総称して「先願1明細書」という。)には,「有線伝送装置及び有線伝送方法」(発明の名称)に関して以下の事項が記載されている。

「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,有線伝送装置及び有線伝送方法に関し,特に,電話線などのメタル・ケーブルで数Mビット/秒の高速データ伝送を可能にするXDSL[X DigitalSubscriber Line (X はA,S,V 等の総称)]に適用される有線伝送装置及び有線伝送方法に関する。
【0002】
【従来の技術】近年,電話線などのメタル・ケーブルで数Mビット/秒の高速データ伝送を可能にするXDSL技術に注目が集まっている。中でも特に注目を浴びているのが,上りと下りで伝送速度が異なる非対称性がインタネットアクセスに適しているADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line) である。
【0003】このADSL装置においては,DMT(Discrete Multi-tone)と呼ばれる変復調方式を用いてデジタル信号をアナログ信号に変換して送信する。このDMT方式においては,256のキャリアにQAM(Quadrature Amplitude/Phase modulation)による変調を行い,この変調したキャリアをIDFT(Inverse DiscreteFourier Transform) を用いて多重化して送信する。受信側では,多重化された信号から各キャリアをDFT(Discrete Fourier Transform) を用いて抽出し,QAM変調された信号に復調を行うことによりデータの高速伝送を可能にする。
【0004】しかしながら,このADSL装置においては,ADSL用のケーブルがISDN用のケーブルと同一のケーブル束に含まれていると,ISDNケーブルからの影響によりADSL回線の通信速度を低下させてしまうノイズの原因が複数ある。なかでも特にADSL回線への影響が大きいのはISDN回線からの漏話雑音である。
【0005】図8を用いて,ADSL回線に隣接する回線にTCM(Time Compression Multiplex)-ISDN回線を使用した場合にADSL装置に発生する漏話雑音について説明する。図8には,ADSL回線において下り方向のデータ伝送を行っているときに,TCM-ISDN回線によるデータ伝送によりADSL装置の端末側であるATU-R(ADSL Transceiver Unit-Remote side) に発生する漏話雑音が示されている。
【0006】TCM方式のISDN回線では,1.25msec毎に上り方向と下り方向のデータ伝送を交互に行っている。ADSL回線において下り方向のデータ伝送を行っている時に,TCM-ISDN回線において上り方向のデータ伝送を行うと,TCM-ISDN回線からの減衰前の高出力の信号がADSL回線における減衰した信号に影響を及ぼし,端末ATU-R側にNEXT(Near End Cross Talk)近端漏話が発生する。また,ADSL回線において下り方向のデータ伝送を行っている時に,TCM-ISDN回線において下り方向のデータ伝送を行うと,TCM-ISD回線の信号が減衰したADSL回線の信号に影響を及ぼし,端末ATU-R側にFEXT(Far End Cross Talk) 遠端漏話が発生する。なお,同じことは中央局側の装置であるATU-C(ADSL Transceiver Unit-Center side) においても言える。
【0007】図9には上述した漏話雑音の雑音量が示されている。図9に示されるように近端漏話時の雑音量は,遠端漏話時の雑音量よりも多い。これは,TCM-ISDN回線からの減衰前の高出力の信号がADSL回線における減衰した信号に影響を及ぼすからである。この雑音量の差に注目し,近端漏話発生時と遠端漏話発生時とでデータの伝送量を切り換えて送信する方法が提案されている。この方法はデュアルビットマップ方式と呼ばれ,図9に示されるように雑音量の少ない遠端漏話の発生時にはデータ量を多く送信し,雑音量が多い近端漏話の発生時にはデータ量を少なく送信する。
【0008】このようにADSL装置においては雑音量が周期的に変化するため,上り方向と下り方向とで各キャリアのSNR(Signal to Noise Ratio)を測定し,この測定されたSNRに従ってビット配分を求めるようになっている。例えば,図10に示すように,横軸の周波数は,データの伝送に使用する各キャリアの周波数であり,各キャリアの周波数幅は4.3125KHzであって,キャリアの総数は256である。データ伝送時には,これらキャリアを夫々変調するが,この時SNRを評価してこの評価SNRに従ってビット配分を求めている。この場合のSNRの評価では,各キャリアの周波数帯域において各々のSNR値を求めている。各キャリアにはこうして定められた各ビット配分に従ってビット数の伝送を行うものである。
【0009】ここで,上述したSNRの評価方法及びビット配分及びパワー配分の算出方法の具体例を図11及び図12を参照しながら説明する。図11はADSLシステムの構成を表すブロック図である。図11に示されるように中央局としてATU-C21,端末としてATU-R22が夫々設けられている。
【0010】図12に示されるようにATU-C21側とATU-R22側には疑似ランダム信号発生部25と,SNR測定部26と,ビット・パワー配分計算部27と,ビット・パワー配分テーブル28とが夫々設けられている。
【0011】疑似ランダム信号発生部25は,全てのキャリア〔(ANSI(American National Standards Institute)標準で256)〕の成分を含む疑似ランダム信号を生成して,送信部内の逆離散フーリエ変換部10に転送する。SNR測定部26は,反対側の局から送られ,離散フーリエ変換部29にてフーリエ変換を施された疑似ランダム信号のSNRを雑音周期毎に算出する。ビット・パワー配分計算部27は,図10に示されるようにSNR測定部26にて測定された雑音周期毎のSNRの値により,各キャリアのビット配分及びパワー配分を雑音周期毎に算出する。ビット・パワー配分テーブルには,相手側のビット・パワー配分テーブルにて算出され,自局に転送されてきた各キャリアのビット・パワー配分を記憶する。データの送信を行う場合に,送信部はビット・パワー配分テーブルに記憶された各キャリアのビットテーブルとパワーテーブルとを参照しながら,各キャリアのビット配分とパワー配分を決定する。
【0012】次に,下り方向における各キャリアのビット配分とパワー配分とを求める通信例により,上記構成による一連の処理について説明する。下り方向の各キャリアのビット配分とパワー配分とを求めるために,ATU-C21は疑似ランダム信号発生部25Aから疑似ランダム信号を送信する。この疑似ランダム信号発生部からの疑似ランダム信号は送信部内の逆離散フーリエ変換部10Aに送られ,逆離散フーリエ変換部10Aから回線に出力される。この信号は,ATU-R22の受信部24Bにて受信され,受信部内のフーリエ変換部からSNR測定部26Bに送られる。
【0013】SNR測定部は,この疑似ランダム信号により近端漏話発生時のSNRと遠端漏話発生時のSNRとを求める。測定されたSNRはビット・パワー配分計算部27Bに送られ,このSNR値により図10に示されるように近端漏話発生時と遠端漏話発生時の各キャリアのビット配分とパワー配分とが算出される。
【0014】ビット・パワー配分計算部27Bにより算出された各キャリアのビット・パワー配分は送信部に送られ,送信部により回線に出力される。ATU-C21は,回線より入力したこのビット・パワー配分をビット・パワー配分テーブル28Aに記憶する。
【0015】次に,図13を参照しながら上述した方法により入手したビット・パワー配分を用いてデータの伝送を行うADSL装置の送信装置について説明する。図13に示されるように,ADSL装置の送信装置は,多重・同期調整部30と,ファスト用CRC(Cyclic Redundancy Check)処理部31,スクランブル処理及び誤り訂正部(32,35)とインタリーブ用CRC処理部34と,インタリーブ処理部36と,レートコンバータ(33,37)と,トーンオーダリング部38と,コンスタレーションエンコーダ及びゲインスケーリング部39と,逆離散フーリエ変換部40とを有して構成される。
【0016】上記構成のADSL装置の送信装置においては,動画,音声,及びリアルタイムのアプリケーションなどのように遅延が問題になる通信に適したファストチャネルと,逆に遅延にはさほど問題にはならないがバースト誤りに弱いファイル転送などデータ通信に適したインタリーブチャネルとを有している。これらのチャネルはデータ伝送の順番を入れ替えることでバースト誤りの影響を減少させるインタリーブ処理を施すかどうかに違いがある。インタリーブチャネルでは,瞬間的なノイズ(インパルス・ノイズ)が発生して,バースト誤りを起こしても,受信側でデータの順番をもとに戻すことによりバースト誤りが分散され,誤り訂正により正しいデータに戻すことができる。ただし,インタリーブ処理を施すには,データを一時蓄積するため遅延を生じる。
【0017】上記構成のADSL装置の送信装置の動作概要について説明する。上位装置から一定の伝送速度で送られてくるデータは,多重・同期調整部30によりデータをファストデータとインタリーブデータとに分離され,ファストデータはファストパス(図13に示された上側のパス)に,インタリーブデータはインタリーブパス(図13に示された下側のパス)に送られる。ファストパスでは,ファストデータに,ファスト用CRC処理部31にてCRCチェック符号が付加される。そして,スクランブル処理及び誤り訂正部32にてファストデータにスクランブル処理を施し,リードソロモン方式のエラー訂正符号が付加され,レートコンバータに入力される。また,インタリーブパスにおいても,ファストパスと同様に,インタリーブ用CRC処理部34にてCRCチェック符号が付加され,スクランブル処理及び誤り訂正部35にてスクランブル処理とエラー訂正符号の付加とが行われる。さらに,このインタリーブパスにおいては,スクランブル処理及び誤り訂正部35から出力されたデータの並び順を変更してインタリーブ処理を施し,レートコンバータ37に転送する。
【0018】レートコンバータ(33,37)は,TCM-ISDN回線がデータの伝送方向を切り換えるタイミングに同期したTTR信号によりTCM-ISDN回線からの雑音量の変化を認識し,TCM-ISDN回線からの雑音量が少ない期間では,データの伝送速度を速めるためトーンオーダリング部に伝送するデータ量を増加させる。また,TCM-ISDN回線からの雑音量が多い期間では,データの伝送速度を遅くするためトーンオーダリング部に伝送するデータ量を減少させる。
【0019】トーンオーダリング部38は,ビット・パワー配分テーブルから送られた各キャリアのビット配分情報により,各キャリアに割り当てるビット数の情報を入手し,各キャリアに割り当てるファストデータとインタリーブデータとを決める。そして,この各キャリアに割り当てられたビットが表す情報をコンスタレーションエンコーダ及びゲインスケーリング部39によりコンスタレーションの位置情報に変換し,さらに,この位置情報を表す周波数情報に変換して,逆離散フーリエ変換部に転送することで,512の時間情報となって送信される。
【0020】図14には,上述したデュアルビットマップ方式を用いてデータを伝送する場合に1シンボルに割り当てるファストデータとインタリーブデータとの割合が示されている。図14に示されるようにISDN回線からの雑音量が多い時には,シンボルに割り当てるデータ量を少なく設定し,雑音量が少ない時には,シンボルに割り当てるデータ量を多く設定するのであるが,雑音量の多い場合,少ない場合に関わらず,1シンボルに割り当てるファストデータとインタリーブデータの割合を一定としていた。」

上記記載及び図面並びにこの分野における技術常識を考慮すると,
a 先願1明細書記載の「ADSL装置」は「DMT(Discrete Multi-tone)と呼ばれる変復調方式を用いてデジタル信号をアナログ信号に変換して送信する。」(段落【0003】)ものであるから,「複数の遅延パスを有するADSL通信システム」といえる。
b 先願1明細書の【図13】に記載された「ファストパス」と「インターリーブパス」はいずれも「遅延パス」といえるが,上記「ファストパス」は「動画,音声,及びリアルタイムのアプリケーション」で用いられ,上記「インターリーブパス」は「ファイル転送などデータ通信」に適したパスである(段落【0016】)。
c 先願1明細書の「このようにADSL装置においては雑音量が周期的に変化するため,上り方向と下り方向とで各キャリアのSNR(Signal to Noise Ratio)を測定し,この測定されたSNRに従ってビット配分を求めるようになっている。・・・(中略)・・・各キャリアにはこうして定められた各ビット配分に従ってビット数の伝送を行うものである。」(段落【0008】),「図14に示されるようにISDN回線からの雑音量が多い時には,シンボルに割り当てるデータ量を少なく設定し,雑音量が少ない時には,シンボルに割り当てるデータ量を多く設定する」(段落【0020】)等の記載から,先願1明細書記載の「ADSL装置」は「ISDN回線からの雑音量に応じて各パスのデータの伝送速度を周期的に増減する」ものである。

以上を総合すれば,上記先願1明細書には,以下の発明(以下,「先願発明1」という。)が開示されていると認める。

「複数の遅延パスを有するADSL通信システムにおいて,少なくとも2つのアプリケーションをサポートする方法であって,
(a)動画,音声,及びリアルタイムのアプリケーションをファストパスと関連させるステップと,
(b)ファイル転送などデータ通信をインターリーブパスと関連させるステップと,
(c)ISDN回線からの雑音量に応じて各パスのデータの伝送速度を周期的に増減するステップと
を含む,方法。」

(3)対比
本願発明と先願発明1とを対比するに,両者は以下の点で一致ないし相違している。

(一致点)
「複数の遅延パスを有するマルチキャリア通信システムにおいて,少なくとも2つのアプリケーションをサポートする方法であって,
(a)現在アクティブなアプリケーションセットのうちの第1のアプリケーションを第1の遅延パスと関連させるステップと,
(b)前記現在アクティブなアプリケーションセットのうちの第2のアプリケーションを第2の遅延パスと関連させるステップと,
(c)少なくとも1つの前記遅延パスのデータレートをとぎれなく変更するステップと
を含む,方法。」

(相違点)
一致点の「(c)少なくとも1つの前記遅延パスのデータレートをとぎれなく変更するステップ」が,
本願発明では,「(c)前記現在アクティブなアプリケーションセットの変化に応答して,少なくとも1つの前記遅延パスのデータレートを,少なくとも1つの同期シンボルに基づいて,RSコーデイング,インターリービングおよびフレーミングのパラメーターを変えずにとぎれなく変更するステップ」であるのに対し,
先願発明1では,「(c)ISDN回線からの雑音量に応じて各パスのデータの伝送速度を周期的に増減するステップ」である点。

(4)判断
上記(相違点)につき検討する。
ADSL通信システム等のマルチキャリア通信システムにおいて,遅延パスのデータレートを変更する契機となる事象として「現在アクティブなアプリケーションセットの変化」を採用すること,また,遅延パスのデータレートを変更するタイミングの同期を「少なくとも1つの同期シンボルに基づ」く構成とすること,はいずれも周知ないしは慣用技術ということはできないから,上記相違点は課題解決のための具体化手段における微差ではない。
したがって,先願発明1は本願発明と同一と言うことはできない。

また,原査定の拒絶の理由に引用された,本願の優先権主張の日前の他の出願であって,その優先権主張の日後に出願公開された特願平10-288549号(特開2000-115034号公報参照。以下「先願2」という。)の願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面(以下,これらを総称して「先願2明細書」という。)に記載された先願発明2は先願発明1と同一であるから,先願発明2も本願発明と同一と言うことはできない。

(5)小括
本願発明は,先願明細書1に記載された発明及び先願明細書2に記載された発明と同一ではない。
よって,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。

第4 当審拒絶理由
1 当審拒絶理由
平成27年7月10日付け当審拒絶理由及び平成27年12月17日付け当審拒絶理由(最後)は,いずれも「本件出願は,特許請求の範囲の記載が不備のため,特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。」ことを拒絶の理由とするものである。

2 当審拒絶理由の判断
平成28年5月23日に提出された手続補正書による手続補正により,特許請求の範囲の記載の不備は解消された。
これにより,従属項を含め,請求項1?16に係る発明は発明の詳細な説明に記載したものとなった。
したがって,当審拒絶理由は解消した。

第5 むすび
以上のとおり,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2016-07-19 
出願番号 特願2012-264768(P2012-264768)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (H04J)
P 1 8・ 16- WY (H04J)
最終処分 成立  
前審関与審査官 大野 友輝  
特許庁審判長 大塚 良平
特許庁審判官 山中 実
新川 圭二
発明の名称 レートをとぎれなく適合させるマルチキャリア変調システムおよび方法  
代理人 杉村 憲司  
代理人 吉澤 雄郎  

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