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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 G01N
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01N
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G01N
管理番号 1316939
審判番号 不服2015-8330  
総通号数 200 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-08-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-05-07 
確定日 2016-07-14 
事件の表示 特願2013- 77045「位相測定用システムと方法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 8月 8日出願公開、特開2013-152243〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成16年6月18日(パリ条約による優先権主張2003年6月19日,米国(US),2004年4月13日,米国(US))に出願した特願2006-517372号の一部を新たな特許出願として,平成25年4月2日に出願したものであって,平成26年1月15日付けで拒絶理由が通知され,同年7月28日に手続補正がなされ,同年12月26日付けで拒絶査定がなされ,平成27年5月7日に拒絶査定不服審判の請求がなされ,同時に手続補正(以下,「本件補正」という。)がなされたものである。

第2 本件補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
1 補正後の本願発明(下線は補正箇所を示す。)
本件補正により,補正前の特許請求の範囲の請求項1は,
「 【請求項1】
物質の位相画像化のための光変調システムに於いて,
物質に光学的に連結された光源と,
空間光変調器が空間光変調器に投射される光の一部に位相変換を適用するように物質からの光を空間光変調器に接続する光学システムと,
該空間光変調器からの光を受ける画像検出器であって,受光した光は第1空間周波数及び第2空間周波数を有し,該画像検出器が物質の定量的位相画像を検出するように第1空間周波数が第2空間周波数を干渉する,該画像検出器と
を具備することを特徴とする光変調システム。」
と補正された。

本件補正は,補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「位相変調器に投射される光の空間周波数を変調するように物質からの光を位相変調器に接続する光学システム」を「空間光変調器が空間光変調器に投射される光の一部に位相変換を適用するように物質からの光を空間光変調器に接続する光学システム」と,「位相変調器」を,「空間光変調器」と訂正すると共に文章を整え,同じく補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「物質の定量的位相画像を検出するように第1空間周波数及び第2空間周波数を有する該位相変調器からの光を受ける画像検出器」を「該空間光変調器からの光を受ける画像検出器であって,受光した光は第1空間周波数及び第2空間周波数を有し,該画像検出器が物質の定量的位相画像を検出するように第1空間周波数が第2空間周波数を干渉する,該画像検出器」と「画像検出器」が「第1空間周波数及び第2空間周波数を有する」「光を受ける」態様を,「画像検出器が物質の定量的位相画像を検出するように」「干渉する」と限定した補正を含むものである。
したがって,本件補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前(以下,「平成18年法改正前」という。)の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものを含む。
そこで,本件補正後の前記請求項1に係る発明(以下「補正発明」という。)が,特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2 引用刊行物およびその記載事項(下線は当審で付与した。)
(1)本願の原出願の優先権主張日前に頒布され,原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特開2003-121749号公報(以下,「刊行物1」という。)には,「顕微鏡」について,図面とともに次の事項が記載されている。

(1-ア)
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は顕微鏡に係り,特に,汎用性を有する顕微鏡装置として,観察物体からの光束に対して変調を行う変調光学系,及び変調光学系を備えた顕微鏡に関する。」

(1-イ)
「【0019】以上のように,従来の技術による顕微鏡装置では,汎用性を出すために導入した可変の瞳変調素子による各種パラメータの設定を,広範囲な種々の観察対象に対して最適に行うことが非常に困難であり,それが実用化の大きな課題の一つとなっている。
【0020】本発明は,上記の事情に鑑みてなされたもので,広範囲な種々の観察対象に対して,簡便かつ正確に高画質の最適な画像が得られる汎用性を有する顕微鏡装置としての顕微鏡を提供することを目的とする。」

(1-ウ)
「【0047】(第1の実施形態)図1は,本発明の第1の実施形態による顕微鏡装置の構成を示すブロック図である。
【0048】すなわち,本発明の第1の実施形態による顕微鏡装置は,図1に示すように,観察物体の情報を読み出すための光束を発生させ,当該光束を観察物体に照射するための照明手段1と,当該光束に少なくとも位相,強度あるいは偏光方向のいずれかの変調を加える照明光変調手段2と,観察物体の情報を読み出した光束が観察物体の像を形成するための対物レンズ3及び結像レンズ5と,観察物体の像を撮像するための撮像手段6と,前記対物レンズ3の瞳面近傍に配置され少なくとも位相,強度あるいは偏光方向のいずれかの変調を行う瞳変調手段4と,前記撮像手段6で獲得された観察画像を表示するための表示手段7と,前記撮像手段6で獲得された観察画像のデータをもとに当該観察画像が最適な(解像度や忠実度(fidelity)が良好な)画質になるように照明光変調手段2と瞳変調手段4の変調量を決定し,これらの手段2,4に決定した変調量をフィードバックするための画像解析手段8及びパラメータ決定手段9とで構成される。」

(1-エ)
「【0100】(第2実施例)図5は,本発明の第1の実施形態の第2実施例による汎用顕微鏡装置の構成を示すブロック図である。
【0101】すなわち,本発明の第1の実施形態の第2実施例による汎用顕微鏡装置は,図5に示すように,前述した第1の実施形態の第1の実施例と比較して,照明手段1の光源11をハロゲンランプに変更し,かつ図示していないコントローラ及びドライバを接続しパラメータ決定手段9からの信号により,その強度が可変になるようにした点,照明レンズの構成を変更した点,瞳変調手段4として反射型で電気アドレス型で強度変調と位相変調の両方が可能な液晶空間光変調素子43を配置し,それに伴って偏光ビームスプリッタ42を対物レンズ3と対物レンズの瞳面P間に配置した点,さらには表示手段7として,コンピュータのCRTとは別に液晶ディスプレイ72を設けた点,及び画像解析手段8で解析する量及びパラメ一タ決定手段9の関数形が異なる点が変更されているが,その他は同様である。
【0102】図5に示すように,光源11としてのハロゲンランプからの光束は,照明レンズ14を経て,透過型で電気アドレス型で強度変調型の液晶空間光変調素子21に達する。
【0103】この際,ハロゲンランプの像が液晶空間光変調素子21で結像されるように照明レンズ14が配置されている。
【0104】この液晶空間光変調素子21に結像した光束は,当該素子21によって変調され,その前側焦平面が光源11の結像面つまり液晶空間光変調素子21変調面とほぼ一致するように配置された照明レンズ15を透過し,観察物体Obに入射する。
【0105】本照明手段1は,言わばケーラー照明の構成になっている。
【0106】観察物体Obに入射した光束は,観察物体Obの情報を読み出し,対物レンズ3に入射する。
【0107】この対物レンズ3に入射した光束は,偏光ビームスプリッタ42を透過し,対物レンズの瞳面Pに観察物体Obのフーリェ像を形成する。
【0108】この対物レンズ3の瞳面Pの近傍には,強度と位相の両方の変調が可能な反射型で電気アドレス型の液晶空間光変調素子43が配置されている。
【0109】なお,この液晶空間光変調素子43は,図6に示すように電気アドレス型で透過型で強度変調型の液晶からなる強度変調部431と,電気アドレス型で反射型で位相を変調する液晶からなる位相変調部432との二つの変調部を組み合わせたもので,特定の偏光方向の光束について,その位相と強度の変調が可能なものである。
【0110】この液晶空間光変調素子43で反射して,さらに偏光ビームスプリッタ42で反射した光束は強度と位相の変調が行われた光束となり,その前側焦平面が瞳面Pとほぼ一致するように配置された結像レンズ5を透過し,変調された結果の画像が撮像手段であるCCDカメラ61の撮像面に結像し撮像される。
【0111】本実施例では,一例として,位相差顕微鏡と同様の処理を行う場合を示す。
【0112】まず,照明変調用の液晶空間光変調素子21には,図7の(a)に示すようなリング状のパターンが表示される(図中,白抜き部分が透過率1の部分,黒塗り部分が透過率0の部分)。
【0113】一方,瞳変調用の液晶空間光変調素子43では,観察物体が無い場合には,空間光変調素子21に表示したパターンと相似のパターンが結像するが,光束が結像する部分(図中の斜線部分)の透過率を若干低く,その他の部分(図中の白抜き部分)は透過率が1となるように,つまり図7の(b)に示すようなリング状のパターンに強度変調部431で変調が行われる。
【0114】さらに,強度変調部431の光束が結像している部分と対応する部分(図中の斜線部分)の位相がπ/2だけ遅れるように,つまり図7の(c)に示すようなリング状のパターンに位相変調部432で位相の変調が行われる。
【0115】本実施例では,以上のように処理することによって,通常の位相差顕微鏡と同様の処理が可能となる。」


図5


図7


上記(1-ア)?(1-エ)の記載事項と,図5,7を参照し,整理すると,上記刊行物1には,次の発明が記載されていると認められる。
「観察物体の情報を読み出すための光束を発生させ,当該光束を観察物体に照射するためのハロゲンランプ光源11を用いる照明手段1と,
光束に少なくとも位相,強度あるいは偏光方向のいずれかの変調を加える照明光変調手段2と,
観察物体の情報を読み出した光束が観察物体の像を形成するための対物レンズ3及び結像レンズ5と,
対物レンズ3と対物レンズ3の瞳面P間に配置した偏光ビームスプリッタ42と,
瞳変調手段4として対物レンズ3の瞳面Pの近傍に配置した電気アドレス型で透過型で強度変調型の液晶からなる強度変調部431と,電気アドレス型で反射型で位相を変調する液晶からなる位相変調部432との二つの変調部を組み合わせたものである強度変調と位相変調の両方が可能な反射型で電気アドレス型の液晶空間光変調素子43と,
観察物体の像を撮像するための撮像手段6とで構成され,
対物レンズ3の瞳面Pに観察物体のフーリェ像を形成し,瞳変調用の液晶空間光変調素子43では,光束が結像するリング状の部分の透過率を若干低く,その他の部分は透過率が1となるように,リング状のパターンに強度変調部431で変調が行われ,さらに,強度変調部431の光束が結像しているリング状の部分と対応する部分の位相がπ/2だけ遅れるように,リング状のパターンに位相変調部432で位相の変調が行われ,
このように,液晶空間光変調素子43で反射して,さらに偏光ビームスプリッタ42で反射した光束は,その前側焦平面が対物レンズ3の瞳面Pとほぼ一致するように配置された結像レンズ5を透過し,変調された結果の画像が撮像手段6であるCCDカメラ61の撮像面に結像し撮像される位相差顕微鏡と同様の処理が可能となる汎用顕微鏡装置。」(以下,「引用発明」という。)

3 対比・判断

ア 引用発明の「観察物体」は,補正発明の「物質」に相当することは明らかである。
そして,一般に位相差顕微鏡は,物質の位相差を光学系を介して画像化するものであるところ,引用発明の「汎用顕微鏡装置」は,光学系を介して「位相差顕微鏡と同様の処理が可能となる」ものであるから,引用発明の「汎用顕微鏡装置」は,物質の位相画像化のための光変調システムといえる。
したがって,引用発明の「位相差顕微鏡と同様の処理が可能となる汎用顕微鏡装置」は,補正発明の「物質の位相画像化のための光変調システム」に相当する。

イ 引用発明の「光源11」は,「観察物体の情報を読み出すための光束を発生させ,当該光束を観察物体に照射する」のであるから,補正発明の「物質に光学的に連結された光源」に相当する。


(ウー1)引用発明の「液晶空間光変調素子43」は,「強度変調と位相変調の両方が可能な反射型で電気アドレス型」のものであり,「強度変調部431の光束が結像しているリング状の部分と対応する部分の位相がπ/2だけ遅れるように,リング状のパターンに位相変調部432で位相の変調が行われ」るから,投射される光の一部に位相変換を適用するといえる。
そうすると,引用発明の「液晶空間光変調素子43」は,補正発明の「投射される光の一部に位相変換を適用する」「空間光変調器」に相当する。

(ウ-2)引用発明の「対物レンズ3及び結像レンズ5」は,「観察物体の情報を読み出した光束が観察物体の像を形成するため」のものであるから光学システムである。
そして,引用発明の「対物レンズ3」は,その「瞳面Pの近傍に」「瞳変調手段4として」「液晶空間光変調素子43」を配置しているのであるから,物質からの光を液晶空間光変調素子43に接続しているといえる。
そうすると,上記(ウー1)に鑑みると,引用発明の「対物レンズ3」は,補正発明の「物質からの光を空間光変調器に接続する光学システム」に相当する。

(ウ-3)上記(ウー1),(ウ-2)より,引用発明の「観察物体の情報を読み出した光束が観察物体の像を形成するための対物レンズ3」と「瞳変調手段4として対物レンズ3の瞳面Pの近傍に配置した」「強度変調と位相変調の両方が可能な反射型で電気アドレス型の液晶空間光変調素子43」は,補正発明の「空間光変調器が空間光変調器に投射される光の一部に位相変換を適用するように物質からの光を空間光変調器に接続する光学システム」に相当する。



(エー1)引用発明の「撮像手段6」は,「液晶空間光変調素子43で反射して,さらに偏光ビームスプリッタ42で反射した光束は,その前側焦平面が対物レンズ3の瞳面Pとほぼ一致するように配置された結像レンズ5を透過し,変調された結果の画像が撮像手段6であるCCDカメラ61の撮像面に結像し撮像される」のであり,CCDカメラは光の強度を検出できるデバイスであるから,「液晶空間光変調素子43」からの光を受け,定量的に検出することは自明である。
したがって,引用発明の「液晶空間光変調素子43で反射して,さらに偏光ビームスプリッタ42で反射した光束」が「撮像面に結像」する「撮像手段6」は,補正発明の「空間光変調器からの光を受ける画像検出器」であって,受光した光を定量的検出するものといえる。

(エー2)引用発明の「液晶空間光変調素子43」では,「光束が結像するリング状の部分の透過率を若干低く,その他の部分は透過率が1となるように,リング状のパターンに強度変調部431で変調が行われ,さらに,強度変調部431の光束が結像している部分と対応する部分の位相がπ/2だけ遅れるように,リング状のパターンに位相変調部432で位相の変調が行われ」るのであるから,「液晶空間光変調素子43」からの反射光は,「光束が結像する」「リング状の部分」と,「リングの内側部分」で異なる変調がされている。
また,「対物レンズ3の瞳面Pに観察物体のフーリェ像を形成し」ており,「液晶空間光変調素子43」は対物レンズ3の瞳面Pの近傍に配置しているので,フーリエ変換面といえる。
そうすると,引用発明の,「光束が結像する」「リング状の部分」と,「リングの内側部分」は,異なる空間周波数成分の領域であり,それぞれ,第1空間周波数及び第2空間周波数を有するといえる。

(エー3)引用発明は「液晶空間光変調素子43で反射して,さらに偏光ビームスプリッタ42で反射した光束は,その前側焦平面が対物レンズ3の瞳面Pとほぼ一致するように配置された結像レンズ5を透過し,変調された結果の画像が撮像手段6であるCCDカメラ61の撮像面に結像」するのであるから,引用発明の「撮像手段6であるCCDカメラ61の撮像面」では第1空間周波数及び第2空間周波数が重なっている。
本願明細書の「【0270】・・・空間的光変調器(SLM)1216・・・。該SLM1216上の中央領域1217は,・・・,該全入射ビーム1220を反射する。該入射ビーム1220の該中央ゾーンは,・・・,低空間周波波(low spatial frequency waves)に対応する。外方境界は高周波数ビーム成分の通路1224を図解し,
・・・
【0273】図52で図解する様に,干渉する低周波及び高周波の場は同じビームの成分であり,かくして共通の光路を共有する。」との記載より,同じビームの成分である低周波及び高周波の場で共通の光路を共有するものは干渉するといえる。
そうすると,上記(エー2)のように引用発明の第1空間周波数及び第2空間周波数は,同じ「観察物体の情報を読み出した光束」の成分であり,「撮像手段6であるCCDカメラ61の撮像面」では重なって焦点を結んでいるので共通の光路を共有しており,本願明細書の記載に倣えば,干渉するといえる。
引用発明の「光束が結像する」「リング状の部分」からの光束と「リングの内側部分」からの光束が干渉することは,図5で,瞳面Pの外側部からの光束と瞳面Pの中央部からの光束とが,CCD61上の各点でそれぞれ交わっていることからも支持されるといえる。

(エー4)上記(エー1)?(エー3)より,引用発明の「観察物体の像を撮像するための撮像手段6」であって「瞳変調用の液晶空間光変調素子43では,光束が結像するリング状の部分の透過率を若干低く,その他の部分は透過率が1となるように,リング状のパターンに強度変調部431で変調が行われ,さらに,強度変調部431の光束が結像している部分と対応する部分の位相がπ/2だけ遅れるように,リング状のパターンに位相変調部432で位相の変調が行われ,
このように,液晶空間光変調素子43で反射して,さらに偏光ビームスプリッタ42で反射した光束は,その前側焦平面が対物レンズ3の瞳面Pとほぼ一致するように配置された結像レンズ5を透過し,変調された結果の画像が撮像手段6であるCCDカメラ61の撮像面に結像し撮像される」「撮像手段6」は,補正発明の「該空間光変調器からの光を受ける画像検出器であって,受光した光は第1空間周波数及び第2空間周波数を有し,該画像検出器が物質の定量的位相画像を検出するように第1空間周波数が第2空間周波数を干渉する,該画像検出器」に相当する。

そうすると,両者は,
(一致点)
「物質の位相画像化のための光変調システムに於いて,
物質に光学的に連結された光源と,
空間光変調器が空間光変調器に投射される光の一部に位相変換を適用するように物質からの光を空間光変調器に接続する光学システムと,
該空間光変調器からの光を受ける画像検出器であって,受光した光は第1空間周波数及び第2空間周波数を有し,該画像検出器が物質の定量的位相画像を検出するように第1空間周波数が第2空間周波数を干渉する,該画像検出器と
を具備することを特徴とする光変調システム。」である点で一致し,相違点はない。
仮に相違点があったとしても,補正発明は,引用発明,および周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるというべきである。

(3)したがって,補正発明は,引用発明であるから,特許法第29条第1項第3号の規定に該当し,特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
または,補正発明は,引用発明,および周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるというべきであり,特許法第29条第2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4 まとめ
以上のとおりであるから,本件補正は,平成18年法改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので,同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により,却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は,上記のとおり却下されたので,本願の請求項1?35に係る発明は,平成26年7月28日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?35に記載された事項により特定されたものであって,その請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,次のとおりであると認める。
「 【請求項1】
物質の位相画像化のための光変調システムに於いて,
物質に光学的に連結された光源と,
位相変調器に投射される光の空間周波数を変調するように物質からの光を位相変調器に接続する光学システムと,
物質の定量的位相画像を検出するように第1空間周波数及び第2空間周波数を有する該位相変調器からの光を受ける画像検出器と,
を具備することを特徴とする光変調システム。」

2 引用刊行物およびその記載事項
本願出願前に頒布された刊行物1およびその記載事項は,上記「第2 2」に記載したとおりである。

3 当審の判断
本願発明は,補正発明の「空間光変調器が空間光変調器に投射される光の一部に位相変換を適用するように物質からの光を空間光変調器に接続する光学システム」について,「位相変調器に投射される光の空間周波数を変調するように物質からの光を位相変調器に接続する光学システム」と,補正発明の「位相変調器」を,「空間光変調器」と元に戻すと共に,整えた文章を元に戻し,補正発明の「該空間光変調器からの光を受ける画像検出器であって,受光した光は第1空間周波数及び第2空間周波数を有し,該画像検出器が物質の定量的位相画像を検出するように第1空間周波数が第2空間周波数を干渉する,該画像検出器」について,「物質の定量的位相画像を検出するように第1空間周波数及び第2空間周波数を有する該位相変調器からの光を受ける画像検出器」と,「画像検出器」が「第1空間周波数及び第2空間周波数を有する」「光を受ける」態様を,「画像検出器が物質の定量的位相画像を検出するように」「干渉する」と限定した補正を元に戻したものに相当する。
そうすると,実質的に本願発明の構成要件を全て含む補正発明が,上記「第2 3」において検討したとおり,引用発明であるから,または,引用発明,および周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるというべきであるから,本願発明も,同様の理由により,引用発明であるというべきである,または,引用発明,および周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるというべきである。

第4 まとめ
以上のとおり,本願発明は,特許法第29条第1項第3号の規定に該当し,または,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができないから,その他の請求項について言及するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-02-10 
結審通知日 2016-02-17 
審決日 2016-03-02 
出願番号 特願2013-77045(P2013-77045)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G01N)
P 1 8・ 575- Z (G01N)
P 1 8・ 113- Z (G01N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 波多江 進  
特許庁審判長 郡山 順
特許庁審判官 ▲高▼見 重雄
信田 昌男
発明の名称 位相測定用システムと方法  
代理人 特許業務法人小田島特許事務所  

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