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審決分類 |
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 B02B |
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管理番号 | 1316996 |
異議申立番号 | 異議2016-700111 |
総通号数 | 200 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2016-08-26 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2016-02-10 |
確定日 | 2016-07-06 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第5776827号発明「籾摺選別機」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第5776827号の請求項1に係る特許を維持する。 |
理由 |
1.手続の経緯 特許第5776827号の請求項1に係る特許(以下「本件特許」という。)についての出願は、平成23年6月28日に出願された特願2011-142628号(以下「原出願」という。)の一部を平成26年8月1日に新たな特許出願(特願2014-157835号)としたものであって、平成27年7月17日に特許の設定登録がされ、その後、その特許に対し、特許異議申立人株式会社サタケ(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。 2.本件発明 特許第5776827号の請求項1の特許に係る発明(以下「本件特許発明」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。 3.申立理由の概要 申立人は、以下の証拠を提示して、「本件特許に係る出願は、二以上の発明を包含する特許出願の一部を新たな特許出願とするもの(分割出願)であるが、本件特許に係る出願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項は、原出願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「原明細書等」という。)に記載した事項の範囲内のものではないから、本件特許に係る出願は、原出願の時にしたものとみなすことができず、その出願日は、現実に出願された日である。そして、本件特許発明は、本件特許に係る出願の前に頒布された原出願の公開公報(甲第3号証)に記載された発明であるので、その特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号の規定により、取り消すべきものである。」(特許異議申立書1?2頁)旨、主張している。 〔証拠方法〕 甲第1号証:特願2014-157835号(本件特許に係る出願)の 願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲及び図面 甲第2号証:特願2011-142628号(原出願)の願書に最初に 添付された明細書、特許請求の範囲及び図面 甲第3号証:特開2013-10054号公報 甲第4号証:特開2009-119394号公報 甲第5号証:特開2009-66575号公報 4.分割要件について ア 申立人は、分割要件について、「本件特許発明の『第一の選別体』、『第二の選別体』は、原明細書等ではそれぞれ『目抜孔を形成した受部多孔板』、『選別部多孔板』であったところ、『第一の選別体』、『第二の選別体』では、『目抜孔を形成した受部多孔板』以外、『選別部多孔板』以外の態様も含まれることになり、本願明細書及び本願特許請求の範囲に記載された事項は、原明細書等に記載された事項の範囲内ではない。」(特許異議申立書8?9頁)と主張しているので、当該「第一の選別体」、「第二の選別体」が、原明細書等に記載された事項の範囲内であるか、について検討する。 イ なお、特許出願の分割は、以下の(要件1)ないし(要件3)が満たされる必要があるとされている。 (要件1) 原出願の分割直前の明細書等に記載された発明の全部が分割出願の請求項に係る発明とされたものでないこと。 (要件2) 分割出願の明細書等に記載された事項が、原出願の出願当初の明細書等に記載された事項の範囲内であること。 (要件3) 分割出願の明細書等に記載された事項が、原出願の分割直前の明細書等に記載された事項の範囲内であること。 ただし、原出願の明細書等について補正をすることができる時期に特許出願の分割がなされた場合は、(要件2)が満たされれば、(要件3)も満たされることとする。 ウ 要件1について 原出願の分割直前の明細書等に記載された発明の全部が、本件特許発明とされたものでないことは明らかである。 エ 要件2について (ア)原明細書等において、本願発明の「第一の選別体」、「第2の選別体」に対応する「受部多孔板」、「選別部多孔板」の機能・構造に関し、原明細書等には、 「【請求項1】 穀粒を比重選別する多段構成の揺動選別板(11)と、その上部で籾摺装置(2)から供給調節部(3c)を介して受けた混合米を各揺動選別板(11)に分配供給する分配用受部(12)とを備える籾摺選別機において、 上記分配用受部(12)には、混合米を受けて長径異物の通過を規制する目抜孔を形成した受部多孔板(71)を設け、その排出端に臨んで長径異物を側方に排出するための側部排出口(72)を形成し、上記受部多孔板(71)の排出端から側部排出口(72)までの間に混合米を漏下して上記揺動選別板(11)に供給する選別部多孔板(73)を設けたことを特徴とする籾摺選別機。」、 「【0006】 請求項1に係る発明は、穀粒を比重選別する多段構成の揺動選別板(11)と、その上部で籾摺装置(2)から供給調節部(3c)を介して受けた混合米を各揺動選別板(11)に分配供給する分配用受部(12)とを備える籾摺選別機において、上記分配用受部(12)には、混合米を受けて長径異物の通過を規制する目抜孔を形成した受部多孔板(71)を設け、その排出端に臨んで長径異物を側方に排出するための側部排出口(72)を形成し、上記受部多孔板(71)の排出端から側部排出口(72)までの間に混合米を漏下して上記揺動選別板(11)に供給する選別部多孔板(73)を設けたことを特徴とする。」、 「【発明の効果】 【0012】 請求項1に係る発明により、受けた混合米は受部多孔板を漏下して分配用受部から各揺動選別板に分配供給され、また、混合米中の長径異物は受部多孔板の側方揺動によりその側方の終端側に選別移動され、選別部多孔板により混合米を漏下して揺動選別板に供給しながら側部排出口から機外に排出されるので、受部多孔板と選別部多孔板とによる簡易な構成により、藁屑等の長径異物に混入する混合米のロスを抑えつつ、異物を分離排出することができる。」、 「【0039】 (混合米分配部) 分配用受部12には、図13の部分矢視図を含む透視正面図に示すように、供給調節部である混合米タンク3cから混合米を受けて長径異物Dを分離するための目抜孔71aを形成した受部多孔板71を横姿勢に設け、その排出端に臨んで長径異物Dを側方に排出するための側部排出口72を形成するとともに、受部多孔板71の排出端から側部排出口72までの間に混合米を漏下して揺動選別板11に供給する目抜孔73aを形成した選別部多孔板73を設ける。目抜孔73aは少なくとも受部多孔板71の排出端側に全幅に亘って形成する。分配用受部12の揺下側には流量調節用の均し弁74を設ける。 【0040】 上記構成の受部多孔板71は、混合米タンク3cから受けた混合米を揺動動作によって下方の混合米流下板12aに漏下することによって各揺動選別板11に分配供給し、また、受部多孔板71に残留された混合米中の長径異物Dは側方揺動によってその側方の終端側に移動される。この長径異物Dは更に選別部多孔板73に移動され、長径異物Dに混じる混合米を漏下して最上段の揺動選別板11に供給しながら側部排出口72から排出される。したがって、受部多孔板71と選別部多孔板73とによる簡易な構成により、藁屑等の長径異物Dに混入する混合米のロスを抑えつつ、滞留なしに異物Dを順次排出することができる。」との記載がある。 (イ)上記(ア)の記載によれば、当初明細書等には、「受部多孔板」として、「混合米を受けて長径異物を分離するための目抜孔を形成した」ものが、「選別部多孔板」として、「移動され」た「長径異物に混じる混合米を漏下」する「目抜孔を形成した」ものが記載されているものの、その他の構造の「受部多孔板」、「選別部多孔板」は記載されていない。 (ウ)これに対し、本願発明の「第一の選別体」、「第二の選別体」は、その特許請求の範囲の記載によれば、それぞれ「混合米を漏下させて」「長径異物を移送する」もの、「長径異物に混じる混合米を漏下させ」るもの、との限定はあるものの、混合米を漏下させるための構造として、原明細書等に記載された「目抜孔」を形成したものに限定されていないから、本願発明の「第一の選別体」、「第二の選別体」は、それぞれ「目抜孔」を形成した以外のものも含み、原明細書等に記載された「受部多孔板」、「選別部多孔板」を上位概念化したものである。 (エ)しかしながら、本願発明の「第一の選別体」、「第二の選別体」は、原明細書等に記載された「受部多孔板」、「選別部多孔板」と同様に、「混合米を漏下させて」「長径異物」と分離するものであって、混合米は漏下するが長径異物は漏下しない程度の大きさの貫通する構造を備えることで共通しているところ、当該大きさの貫通する構造について、原明細書等には目抜孔に限る理由は記載されておらず、また、籾摺機等の選別体において、従来より、目抜孔以外の構造のものも慣用的に用いられている(申立人が提出した甲第4号証又は甲第5号証参照。)。 また、目抜孔以外の構造を採用したとしても、目抜孔を採用したものと比較して、混合米と長径異物の分離において格別の作用・効果を奏するものとも認められず、仮に、両者の作用・効果に差異があったとしても、当業者に良く知られた程度の微差に過ぎない。 したがって、原明細書等において、「目抜孔を形成」することは任意付加的な事項であるから、当該「目抜孔を形成」したものに限定されない本件特許発明の「第一の選別体」、「第二の選別体」は、新たな技術上の意義が追加されないものであって、新たな技術的事項を導入するものとは認められない。 (オ)以上のことから、原明細書等には、「目抜孔を形成」したもののみが記載されているとしても、「目抜孔を形成」したものに限定されない本願発明の「第一の選別体」、「第二の選別体」は、原明細書等に記載された事項の範囲内のものである。 オ 要件3について 本件特許に係る出願は、原出願が拒絶理由通知を最初に受ける前、つまり、原出願が補正ができる時期になされている。そして、上記エのとおり、要件2を満たしていることから、要件3も満たしてる。 カ 上記ウないしオのとおり、本願特許に係る出願は、分割要件を満たしており、原出願の出願日に出願したものとみなされる。 キ なお、申立人は、分割要件違反の判断基準として、「原出願に係る明細書、特許請求の範囲又は図面に、分割後の発明の技術的事項のすべてが、その発明の属する技術分野における通常の技術的知識を有する者においてこれを正確に理解し、かつ、容易に実施することができる程度に記載されているか否か(基準1)、分割後の発明で新たに含まれることとなった事項が、原出願に係る明細書、特許請求の範囲又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するか否か(基準2)」(特許異議申立書4頁)、と主張しているが、上記ウないしオで説示したとおり、本件特許に係る出願は、分割の実体的要件を満たしているから、申立人の主張は採用することはできない。 5.同一性について 上記4で検討したとおり、本件特許に係る出願は、分割要件を満たしているから、原出願の出願日に出願されたものとみなされ、よって、本件特許発明は、原出願の公開公報である甲第3号証に記載された発明ということはできない。 6.むすび 以上のとおりであるから、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、本件特許を取り消すことはできない。 また、他に本件特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2016-06-24 |
出願番号 | 特願2014-157835(P2014-157835) |
審決分類 |
P
1
651・
113-
Y
(B02B)
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最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 植野 孝郎 |
特許庁審判長 |
赤木 啓二 |
特許庁審判官 |
小野 忠悦 住田 秀弘 |
登録日 | 2015-07-17 |
登録番号 | 特許第5776827号(P5776827) |
権利者 | 井関農機株式会社 |
発明の名称 | 籾摺選別機 |
代理人 | あいわ特許業務法人 |