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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  F21S
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  F21S
審判 全部申し立て 特174条1項  F21S
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  F21S
審判 全部申し立て 特39条先願  F21S
管理番号 1317019
異議申立番号 異議2016-700303  
総通号数 200 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2016-08-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-04-12 
確定日 2016-07-29 
異議申立件数
事件の表示 特許第5794462号発明「照明器具」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5794462号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第5794462号の請求項1に係る特許についての出願は、平成22年10月12日に特許出願した特願2010-229762号(以下、「原出願」という。)の一部を平成26年 7月 2日に新たな特許出願としたものであって、平成27年 8月21日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許に対し、特許異議申立人 西村 太一(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。

第2 本件発明
特許第5794462号(以下「本件特許」ということがある。)の請求項1に係る発明(以下「本件発明」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「【請求項1】
器具取付面に設置された配線器具に取り付けられる取付部を有する器具本体と;
前記取付部を囲むように配設された絶縁性の基板と;
前記取付部に連通する開口が略中央部に形成され、前記基板の内周側に位置するとともに前記基板よりも前記器具本体の前面側に突出するように前記器具本体に設けられた反射板と;
前記基板表面の内周側及び外周側に複数列実装され、隣接する列間において互いに周方向にずれて配置された発光素子と;
前記基板及び前記反射板を含めた前記器具本体の前面側を所定の隙間を介して離間して覆う透光性及び拡散性を備えたカバー部材と;
を具備していることを特徴とする照明器具。」

第3 特許異議申立理由の概要
1 申立人の主張の概要
(1) 本件発明は、甲第1号証に記載された発明及び周知技術(甲第2号証乃至甲第13号証)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである(以下、「異議理由1」という。)。
(2) 本件特許の発明の詳細な説明の記載には、不備がある(以下、「異議理由2」という。)。
(3) 本件発明は発明の詳細な説明に記載されていない(以下、「異議理由3」という。)。
(4) 本件発明は明確でない(以下、「異議理由4」という。)。
(5) 本件特許は、その出願当初の明細書、特許請求の範囲又は図面に記載のない事項を包含するものである(以下、「異議理由5」という。)。
(6) 本件発明は、先願である原出願と同一である(以下、「異議理由6」という。)。
(7) 本件発明は、同日出願である原出願と同一である(以下、「異議理由7」という。)。
したがって、本件特許は、特許法第29条第2項第39条第1項及び第39条第2項の規定に違反してなされたものであるから、本件特許は同法第113条第2号の規定に該当し、取り消すべきものである。また、本件特許は、特許法第36条第4項第1号第36条第6項第1号及び第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであるから、本件特許は同法第113条第4号の規定に該当し、取り消すべきものである。さらに、本件特許は特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願に対してなされたものであるから、本件特許は同法第113条第1号の規定に該当し、取り消すべきものである。

2 申立人が提出した証拠方法
甲第1号証 :特開2009-9890号公報
甲第2号証 :特開2002-270026号公報
甲第3号証 :特開2008-124008号公報
甲第4号証 :特開2002-367406号公報
甲第5号証 :特開2006-73767号公報
甲第6号証 :特開2009-9926号公報
甲第7号証 :特開2005-123557号公報
甲第8号証 :特開2004-30929号公報
甲第9号証 :特開2008-251664号公報
甲第10号証:特開2009-76326号公報
甲第11号証:特開2009-71090号公報
甲第12号証:特開2009-289709号公報
甲第13号証:特開2010-192306号公報
甲第14号証:特許第5794462号公報
甲第15号証:特開2012-84388号公報
甲第16号証:原出願に係る平成26年 7月 2日付け手続補正書
甲第17号証:特許第5804588号公報

第4 特許異議申立理由についての検討
1 異議理由1(特許法第29条第2項違反)について
(1) 甲第1号証の記載事項
甲第1号証には以下の事項が記載されている。
以下、各甲号証の(1a)等の記載事項を「摘示(1a)」などという場合がある。また下線は当審において付与した。
(1a) 「【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】本発明は、発光ダイオード等の半導体発光素子を光源とした照明装置および照明装置を用いた照明器具に関する。」

(1b) 「【0004】一方、特許文献1および2に示されるような環形蛍光ランプを光源とするシーリングライトの場合には、住宅用としてやわらかい光が好まれる。このために発光面となるグローブの輝度ムラ、特に環形蛍光ランプに伴うリング状の明るいイメージおよび中心部分に生じる暗部を抑えることから、グローブに光の拡散性が高くて透過率の低い材料を使用する。その結果、一般的に器具効率(器具光束/ランプ光束)は50%程度で低くなっている。このため、光源として発光ダイオードをそのまま使用した場合、発光面に対して発光ダイオードを万遍なく配置させても、発光ダイオード自体の輝度が高いために、グローブにイメージが発生して輝度ムラが生じ、やはりグローブに光拡散性が高く透過率の低い材料を使用せざるを得ない。

【0006】このため、近時、発光ダイオードと、光を主として平行方向に制御する長尺なコリメータレンズにより照明装置を構成し、この照明装置を器具本体の外縁部に配設し、器具本体の略中央部に向かって傾斜させた反射体と組み合わせた照明器具を開発した(特願2007-145208参照)。

【0009】このため、光源を発光ダイオード等の半導体発光素子で構成し、レンズ体と組み合わせて白色を作り出す照明装置においては、全体としての輝度ムラを低減すると共に、如何にして色ムラの発生を解消するかが重要な課題となっている。
【0010】本発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、輝度ムラを低減して器具効率を向上させることができ、かつ色ムラの発生を低減することが可能な照明装置およびこの照明装置を用いた照明器具を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】請求項1に記載の照明装置の発明は、光源となる半導体発光素子と;半導体発光素子の光出射部と対向した入射面を有する導光体と;導光体からの出射光を主として平行方向に制御するレンズ体と;を具備することを特徴とする。
【0012】本発明により、光源となる半導体発光素子と、光を主として平行方向に制御するレンズ体により、輝度ムラを低減して器具効率を向上させることができる。」

(1c) 「【0022】本発明において、照明器具は、住宅用のシーリングライト等が好適であるが、住宅用に限らず、店舗、オフィス等施設・業務用の照明器具であってもよい。形状は、流し元灯、足元灯、階段埋込灯などライン形状のものでも、さらに、円形、楕円形等の丸形、正方形や長方形等の角形、さらには6角形や8角形等の多角形状をなしていてもよく、特定の形状には限定されない。

【0026】グローブは、照明装置および反射体を覆い、透光性を有する乳白色の半透明な合成樹脂、または強化ガラス等で構成されたものが許容される。色は乳白色に限定されず、用途、雰囲気等にあわせた各種の色が許容される。形状は、丸形、角形、多角形等に構成して各種形状の照明器具を構成することが好ましい。」

(1d) 「【0033】図1?図5に示すように、本実施例の照明装置10は、光源となる半導体発光素子11、導光体12およびレンズ体13で構成する。
【0034】半導体発光素子11は、発光ダイオード(以下「LED」と称す)で構成し、LED11は、同一色、本実施形態では青色LEDチップとこの青色LEDチップにより励起される黄色蛍光体により白色を発光する高輝度、高出力の複数個のLEDからなり、この各LEDは、一方向、すなわちLEDの光軸方向に光線が主として放射される同種性能のもので構成する。
【0035】複数個のLED11は、ライン状をなす基板11a上に配置され、直線状の長さが約100mmの線状の発光モジュール15として構成し、必要な個数、本実施例では5本の発光モジュールが選択されて1本の長尺な光源体16を構成する(図2(b))。
【0036】基板11aは、図1(b)に示すように、熱伝導性の良好なアルミニウムで構成され、発光装置に必要とされる発光面積を得るために横断面がコ字状の長い凹溝11bを形成した薄い箱状をなし、その凹溝の内面を反射面となし、その表面に可視光の反射率の高い白色塗料等を塗布して形成する。さらに、凹溝の内底面に複数個のLED11をそれぞれ実装した長方形のプリント配線基板11cが重ねられて配置され、さらに凹溝内に蛍光体11dを充填する。…上記に各LED11を配置し構成された基板11aは、ヒートシンクとしてのアルミニウムからなる基体11fの凹部に嵌合され密着してボルト11gにより固着される。
【0037】導光体12は、図2(a)に示すように、一端面に光の入射面12aを他端面に出射面12bを形成した断面が長方形状の立方体をなす透明なアクリル樹脂等の合成樹脂で形成された導光板で構成する。導光体の入射面12aは、平面状に形成され、その平坦面を上記基板11aの凹溝11dに対し光が漏れないように対向させて装着する。この際、各LED11の発光中心xが導光体の入射面12aの中心に位置するように装着する。これにより各LED11の光出射部11eと導光体の入射面12aが対向して配設される。
【0038】レンズ体13は、焦点を出た光が無収差の平行光となってレンズを出るコリメータレンズで構成する。コリメータレンズ13は、長尺状をなし平滑な入射面13a、入射面の中心に第一焦点aを有する断面略楕円形状をなす出射面13b、入射面の上下部分を切り欠いて形成した断面三角形状の凹部13c、13cおよび凹部の両側に一体に形成した支持部13d、13dを一体に形成する。このコリメータレンズは、導光体12の出射面12bに対向して配設される。すなわち、導光体の出射面12bは平面状に形成され、その平坦面をコリメータレンズの入射面13aに光が漏れないように密着し装着する。…」

(1e) 「【0044】照明器具20は、器具本体21、上記構成の2台の照明装置10、反射体22およびグローブ23からなる。
【0045】器具本体21は、鉄板等の金属に白色塗装を施した一辺が約500mmの正方形をなすシャーシーとして構成され、シャーシーの略中央部には天井等の器具取付面に設置された引掛シーリングに着脱可能に設置されるアダプタ24を設ける。…
【0046】照明装置10は、2台用意され器具本体21の対向する辺の外縁部26、27に設けられた設置部28、29に1台ずつ、発光部である各LED11がそれぞれ対向するようにして器具本体21の外縁部に配設する。すなわち、器具本体21のそれぞれの設置部28、29にはシャーシーから一体に形成された支持板31が立設され、支持板に各照明装置10の基体11fを取り付けて支持する(図3(b))。」

(1f) 「【0049】反射体22は、鉄板等の金属に白色塗装を施した平板状をなし、両端部を2台のそれぞれの照明装置10における各LED11に対向させ、中間部分から器具本体の略中央部に向かって連続的に徐々に傾斜させた傾斜部22aを形成する。反射体は、器具本体21を構成するシャーシーの略中央部に、ネジ若しくはスポット溶接等の手段で固定される。
【0050】グローブ23は、透光性を有する乳白色の半透明な合成樹脂で構成し、浅い皿状の球面状をなす発光部23aと、器具本体21の外縁部26、27に対応する部分に外周部を残して上面を開口することにより形成した開口部23bとを一体に形成し、器具本体の下方から被せることにより照明装置10および反射体22を覆うように器具本体21の下面全体を囲むようにして取り付けられる。なお、グローブ23は公知の凹凸の係合手段や取付金具等の手段で器具本体の外縁部に着脱可能に取り付けられる。

【0052】上記に設置された照明器具20を点灯すると、2台の照明装置10のそれぞれのLED11が発光し、LEDから放射された光は各LED11の発光中心xがコリメータレンズ13の第一焦点aより所定の寸法cだけ片寄っているので、光が拡散せずに必要とするグローブ23側と反射体22の傾斜部22aに向かって放射され、さらに反射体で反射した光はグローブ23を内面側から照射し、部屋全体にわたり略均一な明るさで照明する。この際、2台の照明装置10が、それぞれ器具本体21の外縁部26、27に配設され、従来のように環形蛍光ランプが器具本体の中央部に存在しない。このため、ランプイメージがグローブの照射中心部に現れずに均斉度が向上する。
【0053】同時に、各LED11から放射される光は導光体12の入射面12aから導光体内に導入され、導光体内で青色LEDチップから放射される青色の光と黄色蛍光体から放射される黄色の光が混色されて白色の光となり出射面から出射され、コリメータレンズ13を介し、さらに反射体22で反射されてグローブ23の内面から照射さる。これにより、グローブ23からは色ムラのない白色の光が放射され部屋の照明を行う。」

(1g) 「【0062】角形の照明器具を構成して、照明装置10を対向する外縁部26、27に2台配設したが、各4辺に計4台の光源を配置してもよい。さらに、1辺に多数の照明装置10を連結させて、流し元灯、足元灯、階段埋込灯などライン状の照明器具を構成してもよい。さらに丸形の照明器具を構成し、発光モジュール15をリング状に連結して照明装置を構成し、器具本体21の外縁部の周囲全体にわたって配設するようにしてもよい。照明器具をペンダント形のシーリングライトを構成したが、天井直付け形のシーリングライトを構成しても、さらに店舗、オフィス等施設、業務用などの各種の照明器具を構成してもよい。」

(1h) 「【0070】図7(a)?(c)に示すように、基板11aは3列に構成され、それぞれの凹溝11bの内底面に複数個のLED11を配置し、さらに凹溝内に蛍光体11dを充填する。LED11は、青色LEDチップからなり、蛍光体11dは、この青色LEDチップにより励起される黄色蛍光体を充填する。」

(1i) 図3、4、7にはそれぞれ、以下の図が記載されている。


(2) 甲第1号証に記載された発明
ア 甲第1号証には、
(ア) 発光ダイオード等の半導体発光素子を光源とした照明器具(摘示(1a))の具体例として、照明器具20が、器具本体21、照明装置10、反射体22およびグローブ23からなること(摘示(1e)【0044】)、
(イ) シャーシーとして構成される器具本体21の略中央部には天井等の器具取付面に設置された引掛シーリングに着脱可能に設置されるアダプタ24を設けること(摘示(1e)【0045】)、
(ウ)
a 照明装置10は、角形の器具本体21の各4辺に計4台配置されること(摘示(1e)【0046】、摘示(1g)【0062】)、
b 照明装置10は、基板11a上に配置される複数個のLED11である半導体発光素子11、導光体12およびレンズ体13等から構成されるものであって(摘示(1d)【0033】?【0035】)、凹溝の内底面に複数個のLED11を実装したプリント配線基板11cが配置され、基板11aは、基体11fに固着されること(摘示(1d)【0036】)、
(エ)
a 反射体22は、端部を照明装置10のLED11に対向させ、傾斜部22aを形成すること(摘示(1f)【0049】)、
b 上記「a」及び摘示(1i)の図3より、反射体22は、器具本体21に設けられたものであり、照明装置10の内周側に位置するとともに器具本体21の前面側に突出しているといえること、
c 摘示(1i)の図4より、反射体22は、開口が略中央部に形成されていること、
(オ)
a 基板11aの3列の凹溝11bの内底面に複数個のLED11が3列配置されること(摘示(1h)【0070】、摘示(1i)図7)、
b 摘示(1d)の【0037】?【0038】及び摘示(1i)の図7より、3列配置されたLED11の光出射部に導光体12が対向して配設され、コリメータレンズ13は、導光体12に対向して配設されること、
(カ)
a グローブ23は透光性を有する乳白色の半透明な合成樹脂で構成され、照明装置10および反射体22を覆うように器具本体21の下面全体を囲むようにして取り付けられること(摘示(1f)【0050】)、
b 摘示(1i)の図3より、グローブ23の前面側と照明装置10、反射体22及び器具本体21との間には、所定の隙間が存在しているといえること、
c 上記「a」及び「b」より、グローブ23は照明装置10、反射体22及び器具本体21の前面側を所定の隙間を介して離間して覆うものであること、
が記載されている。

イ これらのことから、甲第1号証には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「器具取付面に設置された引掛シーリングに着脱可能に設置されるアダプタ24を設けた器具本体21と、
器具本体21の各4辺に計4台配置された照明装置10と、照明装置10を構成する基板11aは、凹溝の内底面に複数個のLED11を実装したプリント配線基板11cが配置され、基体11fに固着されており、
開口が略中央部に形成され、照明装置10の内周側に位置するとともに器具本体21の前面側に突出するように器具本体21に設けられた反射体22と、
基板11aに配置された3列のLED11と、
3列のLED11の光出射部に配置された導光体12と、導光体12に対向して配設されたコリメータレンズ13と、
照明装置10、反射体22及び器具本体21の前面側を所定の隙間を介して離間して覆う透光性を有する乳白色の半透明な合成樹脂で構成されたグローブ23と、
からなる照明器具。」

(3) 対比・判断
ア 本件発明と引用発明を対比する。
(ア)
a 引用発明の「器具取付面」及び「器具本体21」は本件発明の「器具取付面」及び「器具本体」にそれぞれ相当する。
b 引用発明の「引掛シーリング」は技術常識より配線器具を有するものであるから、引用発明の「引掛シーリングに着脱可能に設置されるアダプタ24」は本件発明の「配線器具に取り付けられる取付部」に相当する。
c a、bより、引用発明の「器具取付面に設置された引掛シーリングに着脱可能に設置されるアダプタ24を設けた器具本体21」は本件発明の「器具取付面に設置された配線器具に取り付けられる取付部を有する器具本体」に相当する。
(イ)
a 引用発明の「基板11a」、「プリント配線基板11c」及び「基体11f」はその機能から本件発明の「基板」に相当するものといえる。
b 引用発明の「器具本体21の各4辺に計4台配置された照明装置10」は「アダプタ」を囲むように配設されているといえるから、当該照明装置10を構成する「基板11a」、「プリント配線基板11c」及び「基体11f」も「アダプタ」を囲むように配設されていることが明らかである。
c a、bより、引用発明の「器具本体21の各4辺に計4台配置された照明装置10と、照明装置10を構成する基板11aは、凹溝の内底面に複数個のLED11を実装したプリント配線基板11cが配置され、基体11fに固着されて」いることは本件発明の「前記取付部を囲むように配設された絶縁性の基板」と、「前記取付部を囲むように配設された基板」の限度で一致する。
(ウ) 引用発明の「反射体22」はその機能からみて本件発明の「反射板」に相当する。そして上記「(イ)c」の相当関係から、引用発明の「開口が略中央部に形成され、照明装置10の内周側に位置するとともに器具本体21の前面側に突出するように器具本体21に設けられた反射体22」は本件発明の「前記取付部に連通する開口が略中央部に形成され、前記基板の内周側に位置するとともに前記基板よりも前記器具本体の前面側に突出するように前記器具本体に設けられた反射板」と、「開口が略中央部に形成され、前記基板の内周側に位置するとともに前記器具本体の前面側に突出するように前記器具本体に設けられた反射板」の限度で一致する。
(エ) 引用発明の「LED11」は本件発明の「発光素子」に相当し、また、引用発明の「基板11aに配置された3列のLED11」は本件発明の「前記基板表面の内周側及び外周側に複数列実装され、隣接する列間において互いに周方向にずれて配置された発光素子」と、「前記基板表面に複数列実装された発光素子」の限度で一致する。
(オ) 引用発明の「グローブ23」はその機能からみて本件発明の「カバー部材」に相当する。そして上記「(ア)」?「(エ)」の相当関係を鑑みれば、引用発明の「照明装置10、反射体22及び器具本体21の前面側を所定の隙間を介して離間して覆う透光性を有する乳白色の半透明な合成樹脂で構成されたグローブ23」は本件発明の「前記基板及び前記反射板を含めた前記器具本体の前面側を所定の隙間を介して離間して覆う透光性及び拡散性を備えたカバー部材」に相当する。

イ 以上によれば、本件発明と引用発明との一致点、相違点は以下のとおりである。
<一致点>
「器具取付面に設置された配線器具に取り付けられる取付部を有する器具本体と;
前記取付部を囲むように配設された基板と;
開口が略中央部に形成され、前記基板の内周側に位置するとともに前記器具本体の前面側に突出するように前記器具本体に設けられた反射板と;
前記基板表面に複数列実装された発光素子と;
前記基板及び前記反射板を含めた前記器具本体の前面側を所定の隙間を介して離間して覆う透光性及び拡散性を備えたカバー部材と;
を具備している照明器具。」

<相違点1>
本件発明においては、基板は「絶縁性」を有する構成であるのに対し、引用発明では当該構成が不明である点。
<相違点2>
本件発明においては、反射板の開口が「取付部に連通」する構成であるのに対し、引用発明ではそのような構成を有していない点。
<相違点3>
本件発明においては、反射板が「基板よりも」器具本体の前面側に突出する構成であるのに対し、引用発明では当該構成が不明である点。
<相違点4>
本件発明においては、基板表面の「内周側及び外周側」に「発光素子」を有する構成であるのに対し、引用発明ではそのような構成を有していない点。
<相違点5>
本件発明においては、発光素子が「隣接する列間において互いに周方向にずれて配置され」る構成を有しているのに対し、引用発明ではそのような構成を有していない点。

ウ 判断
(ア) 本件事案に鑑み、相違点4について判断する。
a 周知技術1の認定
照明器具の発光素子が実装される基板として、「基板表面の内周側及び外周側に発光素子を有する」ことは、例えば甲第2号証の「基板14」(【0007】、図2等)、甲第3号証の「金属板22、ベース部材51」(図21?図23等)、甲第4号証の「リング状LED基板5」(【0022】、図4等)、甲第5号証の「プリント配線基板30」(【0020】、図5等)、甲第6号証の「基板4」(【0123】、図18等)に記載されるように従来周知の技術(以下「周知技術1」という。)である。
b 引用発明に周知技術1を適用することの容易想到性
(a) 引用発明が解決しようとする課題は、「輝度ムラを低減して器具効率を向上させることができ、かつ色ムラの発生を低減すること」(摘示(1b)【0010】)であって、「光を主として平行方向に制御するレンズ体により、輝度ムラを低減して器具効率を向上させることができる。」(摘示(1b)【0012】)と記載されるように、引用発明においては、その課題解決において「光を主として平行方向に制御するレンズ体」(引用発明における「コリメータレンズ13」)を用いることが必要不可欠なものであるといえ、甲第1号証の発明の詳細な説明においても、当該レンズ体を用いなくてよい旨の示唆等は見当たらない。
(b) これに対し、周知技術1(及び周知技術1の認定の基礎となった甲第2号証?甲第6号証)は、当該レンズ体に相当する構成を有しないものであるから、引用発明に周知技術1を適用するとすれば、引用発明において基板(基板11a、プリント配線基板11c、基体11f)、発光素子(LED11)、導光体12及びコリメータレンズ13を取り除いた上で周知技術1の発光素子が実装される基板を取り付けることになるものと認められる。
(c) しかしながら、コリメータレンズ13を取り除くことは、引用発明の必須の構成を失うことになる(上記「(a)」参照)から、引用発明に周知技術1を適用することには阻害要因があるといわざるを得ない。さらに、仮に引用発明に周知技術1を適用したとしても、発光素子が下向き(グローブ23側)となることから、「発光ダイオード自体の輝度が高いために、グローブにイメージが発生して輝度ムラが生じ、やはりグローブに光拡散性が高く透過率の低い材料を使用せざるを得ない」(摘示(1b)【0004】)こととなり、「輝度ムラを低減して器具効率を向上させる」(摘示(1b)【0010】)という引用発明の目的に反する点でも阻害要因があるといえる。
c してみれば、引用発明には、周知技術1を適用することについての阻害要因があるから、引用発明において、周知技術1を適用することは当業者にとって容易であるとはいえない。

(イ)甲第12号証に記載された事項の適用について
a 相違点4の基板の配置等に関して、申立人は甲第12号証を挙げているので、以下検討する。
b 甲第12号証に記載された事項の適用について
(a) 甲第12号証には、光源ユニット3のケース3a内に基板に実装された発光素子としてのLEDチップ8を複数設け(【0013】)、光源ユニット3を下向きとする(【0023】)技術(以下、「甲第12号証の技術」という。)が記載されているものと認められる。なお、甲第12号証には、LEDチップ8に対向してレンズ8aが設けられているが、当該レンズ8aは「光を効率的に取り出すため」のものであり、引用発明の「光を主として平行方向に制御するレンズ体」に相当するものではない。
(b) よって、引用発明に甲第12号証の技術を適用するするとすれば、上記「(ア)b(b)」と同様に、引用発明において基板(基板11a、プリント配線基板11c、基体11f)、発光素子(LED11)、導光体12及びコリメータレンズ13を取り除いて第12号証の光源ユニット3を取り付けることになるから、上記「(ア)b(c)」で述べたことと同様、当該適用には阻害要因が存在する。
(c) したがって、引用発明に甲第12号証の技術を適用することは当業者にとって容易であるとはいえない。

エ まとめ
以上のとおりであるから、相違点1?3及び5について検討するまでもなく、本件発明は、引用発明、甲第2号証ないし甲第13号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

2 異議理由2(特許法第36条第4項第1号違反)について
(1) 以下、申立書に記載されたそれぞれの理由について検討する。
ア 「器具本体」との記載について
発明の詳細な説明において、他に「本体」が存在しないこと(なお、【0025】及び【0036】の「本体21」は文意から「本体1」の誤記であることが明らかである。)、及び、【0014】の「図1乃至図3において、照明器具は、本体1と、…」との記載から「本体1」と「器具本体」は同じものをいうことが明らかである。

イ 「基板21」及び「本体21」との記載について
上記「ア」でも述べたとおり、【0025】及び【0036】の「本体21」は文意から「本体1」の誤記であることが明らかである。

ウ 【0016】及び【0017】の記載について
【0016】の「…放熱性に優れたべース板の一面」との記載と【0017】の「に絶縁層が積層された金属製のべース基板を適用できる。」との記載は両者が連続した文章(「…放熱性に優れたべース板の一面に絶縁層が積層された金属製のべース基板を適用できる。」)であることが明らかである。

エ 「基板の内周側に位置するとともに前記基板よりも前記器具本体の前面側に突出するように前記器具本体に設けられた反射板」との記載について
発明の詳細な説明の【0030】には「反射板6は、図2に示すように、冷間圧延鋼板等の金属材料の平板から傾斜状の反射面61を有する円形状に形成されており、…」と記載されており、また当該段落で参照されている図2では、反射板6は基板21よりも突出していることが明らかであって、その具体的な実施態様は明確である。

オ 「互いに周方向にずれて」との記載について
発明の詳細な説明の【0019】には「内周側及び外周側の列における各LEDパッケージは、その相互が周方向において重ならないようにずれて(図4中、dで示す)配置されている。」と記載されており、「相互」は「互いに」と同じ意味の語であることを鑑みれば、「互いに周方向にずれて」との具体的構成の意味は上記【0019】の記載の意味と同じであることが明らかである。

カ 「基板及び前記反射板を含めた前記器具本体の前面側を所定の隙間を介して離間して覆う」との記載について
発明の詳細な説明の【0014】の「図1乃至図3において、照明器具は、本体1と、光源部2と、点灯装置3と、取付部4と、カバー部材5と、反射板6とを備えている。…前面側を光の照射面とし、背面側を天井面Cへの取付面としている。」、【0029】の「そして、カバー部材5は、光源部2を含めた本体1の前面側を覆うように本体1の外周縁部に取付けられる」との記載及びこれら記載で参照されている図2におけるカバー部材5と基板21、反射板6及び本体1の位置関係を鑑みれば、「基板及び前記反射板を含めた前記器具本体の前面側を所定の隙間を介して離間して覆う」ことが記載されていることが明らかである。

(2) まとめ
以上のとおりであるから、本件特許の発明の詳細な説明は、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものでない、ということはできない。

3 異議理由3(特許法第36条第6項第1号違反)について
(1) 以下、申立書に記載されたそれぞれの理由について検討する。
ア 「器具本体」との記載について
上記「2(1)ア」で述べたとおり、「器具本体」は「本体1」を指すことが明らかである。

イ 「取付部を囲むように」との記載について
【0025】には、「このように構成された光源部2は、図2及び図3に代表して示すように、基板21が取付部4の周囲に位置して」と記載されており、当該記載で参照されている図3によれば、取付部4の外周を基板21が「囲むように」配設されていることが明らかである。

ウ 「基板よりも前記器具本体の前面側に突出するように前記器具本体に設けられた」との記載について
【0030】には、反射板6が基板21よりも突出していることが記載されているといえる(上記「2(1)エ」参照)。

エ 「基板表面の内周側及び外周側に複数列実装され、隣接する列間において互いに周方向にずれて配置された」との記載について
(ア) 本件発明の解決しようとする課題は、照明器具の「構成が複雑化」すること、及び、「LEDの温度上昇」(【0007】)である。そして、その解決手段は、発光素子を「隣接する列間において互いに周方向にずれて配置させること」(【0008】)であると認められ、「発光素子の個数、列数は、特段限定されるものではない。」(【0046】)と記載されていること、及び、技術常識に鑑みても、発光素子の数が「各列同数」である場合に「のみ」効果を奏するものともいえないから、「各列同数の発光素子22を基板上に分散配置する」ことは本件発明の必須の構成要件とはいえない。
(イ) また、【0020】、【0038】、【0041】及び【0046】等の記載を鑑みれば、発光素子が「基板表面の内周側及び外周側に複数列実装され、隣接する列間において互いに周方向にずれて配置された」ことが発明の詳細な説明に記載されていることは明らかである。

オ 「基板及び前記反射板を含めた前記器具本体の前面側を所定の隙間を介して離間して覆う透光性及び拡散性を備えた」との記載について
【0029】には、「カバー部材5は、アクリル樹脂等の透光性を有し、乳白色を呈する拡散性を備えた材料から形成されており、」と記載されているから、カバー部材5が「透光性及び拡散性を備えた」ものであることが記載されている。また、その余の点も、上記「2(1)カ」で述べたとおり、発明の詳細な説明に記載されている。

(2) まとめ
以上のとおりであるから、本件発明は、発明の詳細な説明に記載したものでない、ということはできない。

4 異議理由4(特許法第36条第6項第2号違反)について
本件発明の「隣接する列間において互いに周方向にずれて配置された」との記載に関し、本件発明では、「前記基板表面の内周側及び外周側に複数列実装され、隣接する列間において互いに周方向にずれて配置された発光素子」と記載されているから、「隣接する列間」の意味は「複数列」のうちの隣接するものであることを意味することが明確であるし、「互いに周方向にずれて配置された」の意味は、周方向での位置がずれている意味であることが明確である。
そして、これらに対応する発明の詳細な説明の記載も、これらの意味と整合したものである(上記「2(1)オ」及び「3(1)エ」参照)。
以上のとおりであるから、本件発明が明確でない、ということはできない。

5 異議理由5(特許法第17条の2第3項違反)について
(1) 本件特許についての出願は、特許法第44条第1項の規定による特許出願として、原出願の一部を新たな特許出願としたものであるから、本件特許の明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「本件特許の明細書等」という。)に記載された事項は、少なくとも原出願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「原出願の当初明細書等」という。)に記載された事項である必要があるところ、本件特許の願書に最初に添付した明細書の【0008】及び特許請求の範囲における「取付部側方向及び前記基板の外側方向にそれぞれ光が照射されるように」との記載は、原出願の当初明細書等には記載されていなかったものである。
(2) よって、当該記載を削除する補正は、本件特許の明細書等に記載された事項を、原出願の当初明細書等に記載された事項とするものにすぎず、申立人の主張する新たな技術的事項の導入や新たな技術上の意義の追加がされたものということはできない。

6 異議理由6(特許法第39条第1項違反)について
(1) 申立人は、本件特許の明細書等には、原出願の当初明細書等に記載されていない事項が記載されている等の理由により、本件特許の出願日は現実の出願日とされるべきである旨主張しているから、まずこの点について検討する。

ア 申立人は、本件発明の下記(a)、(b)の事項が原出願の当初明細書等に記載されていない事項であり、また、本件特許の分割直前における原出願の明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された(c)の事項が本件特許の明細書等に記載されていないことは、当該事項を上位概念化し新たな技術的事項を導入するものである、と主張している。
(a) 「前記取付部に連通する開口が略中央部に形成され、前記基板の内周側に位置するとともに前記基板よりも前記器具本体の前面側に突出するように前記器具本体に設けられた反射板」との事項
(b) 「前記基板及び前記反射板を含めた前記器具本体の前面側を所定の隙間を介して離間して覆う透光性及び拡散性を備えたカバー部材」との事項
(c) 「取付部側である内周側と取付部から離れた側である外周側との長さが異なる絶縁性の基板」との事項

イ 上記「ア」の(a)?(c)のそれぞれの事項について検討する。
(ア) (a)の事項について
原出願の願書に最初に添付された明細書(以下、「原出願の当初明細書」という。)の【0028】には、「反射板6は、図2に示すように、冷間圧延鋼板等の金属材料の平板から傾斜状の反射面61を有する円形状に形成されており、略中央部にアダプタAを操作するための開口が形成されている。」と記載されており、当該段落で参照されている図2では、反射板6は基板21よりも突出していることが明らかである。また、開口についても、図2及び【0025】より、取付部4に連通するものであることが明らかであるから、(a)の事項は原出願の当初明細書等に記載した事項の範囲内のものといえる。
(イ) (b)の事項について
原出願の当初明細書の【0014】の「図1乃至図3において、照明器具は、本体1と、光源部2と、点灯装置3と、取付部4と、カバー部材5と、反射板6とを備えている。…前面側を光の照射面とし、背面側を天井面Cへの取付面としている。」、【0027】の「カバー部材5は、アクリル樹脂等の透光性を有し、乳白色を呈する拡散性を備えた材料から形成されており、…。そして、カバー部材5は、光源部2を含めた本体1の前面側を覆うように本体1の外周縁部に取付けられる」との記載及びこれら記載で参照されている図2におけるカバー部材5と基板21、反射板6及び本体1の位置関係を鑑みれば、(b)の事項は原出願の当初明細書等に記載した事項の範囲内のものといえる。
(ウ) (c)の事項について
a 本件特許の出願は、原出願の拒絶査定不服審判の請求と同日に行われたものであって、原出願の補正ができる期間にしたものである。よって、本件特許の明細書等の記載事項が、本件特許の分割直前における原出願の明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項に限定される理由はないから、申立人の主張は理由がない。
b 念のため、本件発明の「取付部を囲むように配設された絶縁性の基板」との事項が原出願の当初明細書等に記載した事項の範囲内のものといえるかについて検討しておく。原出願の当初明細書の【0042】には、「基板は、円形のサークル状又は六角形や八角形の多角形状に形成するのが好ましいが、この形状に限定されるものではない。要は、発光素子を円周上又は多角形の周上に配置できれば、基板の形状は格別限定されるものではない。」と記載されているから、基板の形状を「取付部側である内周側と取付部から離れた側である外周側との長さが異なる」もの以外のものとすることが、原出願の当初明細書等に記載されているといえる。そして原出願の当初明細書の【0023】には、「このように構成された光源部2は、図2及び図3に代表して示すように、基板21が取付部4の周囲に位置して」と記載されており、当該記載で参照されている図3によれば、取付部4の外周を基板21が「囲むように」配設されていることが明らかであり、【0016】には基板を絶縁性のものとすることが記載されているから、「取付部を囲むように配設された絶縁性の基板」は原出願の当初明細書等に記載した事項の範囲内のものといえる。

ウ よって、本件特許の明細書等には、原出願の明細書等に記載した事項の範囲内でない事項が記載されているとはいえない。

(2) そうすると、本件特許の出願日が現実の出願日であるという申立人の主張は採用できない。そして、特許法第44条第2項の規定により本件特許の出願日は原出願の出願日と同日であるから、本件発明と原出願に係る特許第5804588号の請求項1に係る発明(以下、「原出願発明」という。)との間で、異なった日に二以上の特許出願があったことを要件とする特許法第39条第1項の規定を適用する余地はない。

7 異議理由7(特許法第39条第2項違反)について
本件発明と原出願発明とを対比すると、原出願発明は、基板が「反射層が施され、前記取付部側である内周側と取付部から離れた側である外周側との長さが異なる」ものであって、「発光素子の実装面が下方向の照射方向になるように配設されているとともに、発光素子から出射された一部の光が反射板の反射面によって前面側に照射されるよう本体に配設されている」という構成であるのに対し、本件発明においては、そのような構成を有していない点で相違する。
そして、当該構成が周知又は自明であるとはいえないし、また、当該構成は「構成の簡素化が可能であり、放熱構造を構成しやすいものとすることができ、また、複数の発光素子から出射される光のイメージを均一化する」(甲第17号証の【0010】)という解決課題に寄与するものといえるから、本件発明と原出願発明は、同一の発明とはいえない。

第5 むすび
以上のとおり、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、本件特許は、特許法第29条第2項第39条第1項、又は第39条第2項の規定に違反してなされたものとはいえない。また、本件特許は、第36条第4項第1号第36条第6項第1号、又は、第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものでもない。さらに、本件特許は特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願に対してなされたものともいえない。
したがって、本件特許は、特許法第113条第1号、第2号、又は第4号の規定に該当するものとして取り消すことはできない。
また、他に本件特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2016-07-19 
出願番号 特願2014-136985(P2014-136985)
審決分類 P 1 651・ 537- Y (F21S)
P 1 651・ 55- Y (F21S)
P 1 651・ 121- Y (F21S)
P 1 651・ 536- Y (F21S)
P 1 651・ 4- Y (F21S)
最終処分 維持  
前審関与審査官 竹中 辰利  
特許庁審判長 和田 雄二
特許庁審判官 平田 信勝
小原 一郎
登録日 2015-08-21 
登録番号 特許第5794462号(P5794462)
権利者 東芝ライテック株式会社
発明の名称 照明器具  
代理人 熊谷 昌俊  

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