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審決分類 審判 査定不服 発明同一 取り消して特許、登録 A61B
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 A61B
管理番号 1317314
審判番号 不服2015-8403  
総通号数 201 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-09-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-05-07 
確定日 2016-08-09 
事件の表示 特願2013-506699「検査開口部を備えた医療用X線撮影装置」拒絶査定不服審判事件〔平成23年11月 3日国際公開、WO2011/135187、平成25年 6月20日国内公表、特表2013-524965、請求項の数(10)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成23年4月28日(パリ条約による優先権主張 平成22年4月29日、フィンランド)を国際出願日とする出願であって、平成26年7月23日付けで拒絶理由が通知され、同年10月28日付けで意見書及び手続補正書が提出され、同年12月26日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)され、これに対し、平成27年5月7日に拒絶査定不服審判が請求され、それと同時に手続補正書が提出され、その後、当審において平成28年3月23日付けで拒絶理由(以下「当審拒絶理由」という。)が通知され、同年6月20日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1ないし10に係る発明は、平成28年6月20日付けの手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載された事項により特定されるものと認められ、そのうち、独立項である請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は以下のとおりのものである。
「【請求項1】
医療用X線撮影装置であって、
- 撮影手段を支持している実質的に環状の構造(2)を支持する支持構造部(1)であって、前記撮影手段が放射線源(21)および画像情報の受信器(22)を含んでおり、前記撮影手段が、前記撮影手段を支持している前記実質的に環状の構造(2)の中に、実質的に互いに対向する側に配置されており、前記撮影手段を支持している前記環状の構造(2)の中で移動可能である、支持構造部(1)、
を含んでおり、
- 前記装置が、前記撮影手段を支持している前記環状の構造(2)において、検査開口部(4)を含んでおり、前記検査開口部(4)の中で、撮影される被検体を撮影のために位置決めすることができ、
- 前記装置において、前記撮影手段を支持している前記実質的に環状の構造(2)が、少なくとも垂直方向に、前記支持構造部(1)に対して可動にされており、その一方で、実質的に水平方向に延在し且つ前記環状の構造(2)をその半径方向に沿って横断する軸線を中心に旋回可能にされている、
医療用X線撮影装置において、
前記撮影手段を支持している前記実質的に環状の構造(2)が実質的に環状の外側カバー(3)を含んでおり、
前記検査開口部(4)が、その大部分においては実質的に円弧形状にされているが、延長部を備えており、前記延長部が占める領域内では、前記円弧の中心から前記検査開口部(4)の縁部までの距離が、実質的に円弧形状である前記検査開口部(4)の前記大部分においてよりも長い、
ことを特徴とする、撮影装置。」

第3 原査定の理由について
1 原査定の理由の概要
PCT/US2011/000596(当審注:当該国際出願は指定国に日本を含み、特願2013-503740号として外国語特許出願され、国内書面提出期間に翻訳文が提出されたものであるので、特願2013-503740号を以下「先願」という。)は、米国特許仮出願61/322516号に基づく優先権の主張を伴う外国語特許出願であって、本願の出願後に国際公開(WO2011/126555号)がされたものである。本願請求項1?9に係る発明は、先願の国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲または図面と、上記米国特許仮出願の明細書または図面とに共通して記載された発明と同一である。
よって、本願請求項1?9に係る発明は、その出願の日前の外国語特許出願であって、その出願後に国際公開がされた外国語特許出願の国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の外国語特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記外国語特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない(同法第184条の13参照)というものである。

2 原査定の理由の判断
(1)本願及び先願の優先権について
本願は、上記第1の手続の経緯で記載したように、平成22年4月29日(以下「本願優先日」という。)を出願日とするフィンランド特許出願20100181号(以下「基礎出願」という。)を基礎とするパリ条約による優先権主張を伴ったものであり、本願に添付されている図面は図1、図2、図3a及び図3bは、基礎出願に添付されているFig.1、Fig.2、Fig.3a及びFig.3bと同じであり、本願の当初の特許請求の範囲の記載は、基礎出願の特許請求の範囲の記載と対応しており、本願の明細書の記載は、基礎出願の明細書と、記載形式の違いはあるとは言え、記載されている技術内容は同じである。してみれば、原査定で特許を受けることができないとされた請求項1?9に係る発明は、その基礎出願の出願書類全体に記載された事項の範囲内のものといえることから、パリ条約における優先権主張の効果が認められるものである。
一方、先願については、平成23年3月31日を出願日とする米国特許出願13/076705号、平成22年12月14日を出願日とする米国特許仮出願61/422679号、平成22年4月30日を出願日とする米国特許出願12/771250号及び平成22年4月9日を出願日とする米国特許仮出願61/322516号を基礎とするパリ条約による優先権主張を伴ったものであり、このうち、本願優先日より前に出願されたものは米国特許仮出願61/322516号のみである。
したがって、本願請求項1?9に係る発明が特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないかどうかの判断は、原査定の理由で指摘しているとおり、本願請求項1?9に係る発明が、先願の国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲または図面と、米国特許仮出願61/322516号の明細書または図面とに共通して記載された発明であるかどうかによって判断される。

(2)米国特許仮出願61/322516号の記載事項
米国特許仮出願61/322516号(以下「先願基礎出願」という。)の明細書は、以下のとおり(全文摘記)である。なお、以下の引用発明の認定に関連する箇所の当審訳に下線を付した。
「 Cone Beam CT Apparatus for Medical Imaging
The apparatus provides cone beam(CB) computed tomography(CT) imaging. The appratus is particulary suited the imaging of the foot and/or ankle of a patient. Obstruction by the foot prevents a full 360 degree CBCT scan, but orbital scan is possible using the ankle/foot imaging apparatus of the present invention.
The ankle/foot imaging apparatus is employed with a CBCT scanner. Such a CBCT scanner provides an orbit of a x-ray source and detector on concentric axes of different lengths. Figure 1 shows one embodiment in a raised position.
In use, the patient's ankle is preferably centered about the axis of rotation of the CBCT source and detector. Figure 2 shows a top down view with the position of the ankle and foot shown.
Figure 3 shows the location of a radiation source and detector that orbit the patient's ankle/foot at different radii, shows as R1 and R2 in the figure. A hood or other covering is generally used. The Figure 3 view is top down with the covers shown in outline.
The ankle/foot imaging apparatus can be used by a patient in a standing position (Figure 2), including with weight/load applied or without an applied weight/load, sitting(Figure 4), prone or in an extended leg position(Figure 5). The body of the CBCT scanner is rotatable to orient the scanning path. The body of the CBCT scanner can rotate and/or translate (e.g.,height adjustment) to better position the patient.
Figure 6,7, and 8 show a rotation mechanism that causes the CBCT's source and detector to orbit the ankle/foot at appropriate radii at the beginning of the scan, mid-scan, and end of the scan.
The ankle/foot imaging apparatus can be integral to a CBCT scanner or configured as an insert or module for a CBCT scanner.
As shown in Figure 9, the ankle/foot imaging apparatus can be implemented as a removable insert for a CBCT scanning system. The insert covers the detector path and properly terminates the detector orbit for foot imaging. The source could be provided in the outer shell that is not removed. An interlocking means or mechanism known to those skilled in the art can be provided to secure the insert and/or indicate whether or not the insert is secured and/or correctly positioned.」
(当審訳: 医療撮影のためのコーンビームCT装置
この装置は、コームビーム(CB)コンピュータ断層(CT)撮影を提供する。この装置は、とりわけ、患者の足及び/又は足首の撮影に適している。足の障害は360°のCBCTのスキャンを妨げるが、この発明の足首/足の撮影装置を使うことにより、軌道スキャンを可能とする。
足首/足の撮影装置は、CBCTスキャナーを伴う。このようなCBCTスキャナーは、異なる長さの同心的な軸の上にあるX線源と検出器の軌道を提供する。図1は、上昇させた位置における一例を示す。
使用する際に、患者の足首は、CBCTのX線源と検出器の回動の軸の中心に位置されることが好ましい。図2は、足首と足の位置を示す上から下への図を示す。
図3は、患者の足首/足を異なる半径で回動するX線源と検出器の位置を示しており、それらは図においてR1とR2で示される。フード又は他のカバーが一般に用いられる。図3は、カバーを伴った上から下への概観を示す。
足首/足の撮影装置は、患者によって立つポジション(図2)、体重を掛ける掛けないに拘わらず、座るポジション(図4)、屈むあるいは足を伸ばすポジション(図5)として使われる。CBCTスキャナーの本体は、スキャンする軌道の方向に合わせて回転する。CBCTスキャナーの本体は、患者のよりよいポジションのために、回転及び/又は移動(例えば高さの調節)することができる。
図6、7及び8は、CBCTのX線源と検出器を、スキャンの最初、中間、終わりの適切な半径の位置で足首/足を回動させる回動のメカニズムが示されている。
足首/足の撮影装置は、CBCTスキャナーと統合されるか、CBCTスキャナーに対する挿入部材又はモジュールとして組み立てられる。
図9に示されるように、足首/足の撮影装置は、CBCTスキャンシステムに対して、取り外し可能か挿入部材が実装される。挿入部材は、検出器の軌道をカバーし、足の撮影のために検出器の軌道を適切に終わらせる。X線源は、取り外しできない外側のシェルに取り付けられる。当業者において知られている互いに固定する手段又は機構が、挿入部材を固定し、及び/又は、挿入部材が固定されているかどうかを示す、及び/又は、正しい位置に固定するために、提供される。)
そして、FIG.1、FIG.2、FIG.3、FIG.4、FIG.5、FIG.6、FIG.7、FIG.8及びFIG.9の図面が添付されており、そのうち、FIG.2及びFIG.9を抜粋すると以下のとおりである。

上記FIG.2及びFIG.9から、以下の事項が見て取れる。
FIG.2には、CBCTスキャナーに検査開口部があり、その検査開口部の中で撮影される足、足首を撮影のために位置決めすることが示されている。そして、検査開口部の形状は、その大部分においては実質的に円弧形状にされているが、延長部を備えており、前記延長部が占める領域内では、前記円弧の中心から前記検査開口部の縁部までの距離が、実質的に円弧形状である前記検査開口部の前記大部分においてよりも長いことが示されている。
FIG.9には、CBCTスキャナーが支持構造部に支持されていることが記載されている。
FIG.2及びFIG.9には、CBCTスキャナーがフード又は他のカバーで覆われていることが示されている。

(3)引用発明について
ア 上記先願基礎出願に添付されている上記FIG.1、FIG.2、FIG.3、FIG.4、FIG.5、FIG.6、FIG.7、FIG.8及びFIG.9は、不鮮明なものがあるものの、それぞれ順に、先願の国際出願日における国際出願の図面FIG.28、FIG.21、FIG.22、FIG.26、FIG.27、FIG.23、FIG.24、FIG.25及びFIG.20と同じであり、先願基礎出願の上記明細書の記載内容についても、先願の国際出願日における国際出願の明細書及び請求の範囲に記載されている内容に含まれるものである。
してみれば、上記(2)で記載されている先願基礎出願の記載事項から認定する発明は、先願の国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲または図面に記載されているといえる。
イ 上記先願基礎出願の記載事項を総合すると、以下の発明が記載されていると認められる。
「足首/足のコームビーム(CB)コンピュータ断層(CT)撮影撮影装置であって、
異なる長さの同心的な軸の上にあるX線源と検出器の軌道を提供するCBCTスキャナーを伴い、
CBCTスキャナーは、スキャンする軌道の方向に合わせて回転し、患者のよりよいポジションのために、回転及び/又は移動(例えば高さの調節)することができ、
CBCTスキャナーはフード又は他のカバーで覆われており、
CBCTスキャナーには検査開口部があり、その検査開口部の中で撮影される足、足首を撮影のために位置決めすることができ、そして、検査開口部の形状は、その大部分においては実質的に円弧形状にされているが、延長部を備えており、前記延長部が占める領域内では、前記円弧の中心から前記検査開口部の縁部までの距離が、実質的に円弧形状である前記検査開口部の前記大部分においてよりも長いものである、装置。」(以下「引用発明」という。)

(4)本願発明と引用発明との対比
ア 引用発明の「足首/足のコームビーム(CB)コンピュータ断層(CT)撮影撮影装置」は、本願発明の「医療用X線撮影装置」に相当する。

イ 引用発明の「X線源」及び「検出器」は、本願発明の「放射線源(21)」及び「画像情報の受信器(22)」に相当し、また、引用発明のそれら両者は、本願発明の「撮影手段」に相当する。

ウ 引用発明の「異なる長さの同心的な軸の上にあるX線源と検出器の軌道を提供する」「CBCTスキャナー」は、「X線源」と「検出器」があるから、本願発明の「撮影手段」がある「構造(2)」に相当する。そして、引用発明の「CBCTスキャナー」の中で「X線源」と「検出器」が実質的に互いに対向する側に配置され移動可能であることから、引用発明の「異なる長さの同心的な軸の上にあるX線源と検出器の軌道を提供する」「CBCTスキャナー」は、本願発明の「撮影手段が」「実質的に互いに対向する側に配置されており」「移動可能である」「構造(2)」に相当する。

エ 引用発明の「CBCTスキャナーに検査開口部があり、その検査開口部の中で撮影される足、足首を撮影のために位置決めする」ことは、本願発明の「撮影手段を支持している前記構造(2)において、検査開口部(4)を含んでおり、前記検査開口部(4)の中で、撮影される被検体を撮影のために位置決めすることができ」ることに相当する。

オ 引用発明の「CBCTスキャナーは、スキャンする軌道の方向に合わせて回転し、患者のよりよいポジションのために、回転及び/又は移動(例えば高さの調節)することができ」ることは、本願発明の「撮影手段を支持している前記実質的に環状の構造(2)が、少なくとも垂直方向に、前記支持構造部(1)に対して可動にされており、その一方で、実質的に水平方向に延在し且つ前記環状の構造(2)をその半径方向に沿って横断する軸線を中心に旋回可能にされている」ことに相当する。

カ 引用発明の「CBCTスキャナー」の「フード又は他のカバー」は、本願発明の「撮影手段を支持している」「構造(2)が」「含む」「実質的に環状の外側カバー(3)」に相当する。

キ 引用発明の「その大部分においては実質的に円弧形状にされているが、延長部を備えており、前記延長部が占める領域内では、前記円弧の中心から前記検査開口部の縁部までの距離が、実質的に円弧形状である前記検査開口部の前記大部分においてよりも長いものである」「検査開口部」は、本願発明の「その大部分においては実質的に円弧形状にされているが、延長部を備えており、前記延長部が占める領域内では、前記円弧の中心から前記検査開口部(4)の縁部までの距離が、実質的に円弧形状である前記検査開口部(4)の前記大部分においてよりも長い」「検査開口部(4)」に相当する。

ク してみれば、本願発明と引用発明とは、
(一致点)
「医療用X線撮影装置であって、
- 撮影手段がある構造を支持する支持構造部であって、前記撮影手段が放射線源)および画像情報の受信器を含んでおり、前記撮影手段が、前記撮影手段がある構造の中に、実質的に互いに対向する側に配置されており、前記撮影手段がある構造の中で移動可能である、支持構造部、
を含んでおり、
- 前記装置が、前記撮影手段がある構造において、検査開口部を含んでおり、前記検査開口部の中で、撮影される被検体を撮影のために位置決めすることができ、
- 前記装置において、前記撮影手段がある構造が、少なくとも垂直方向に、前記支持構造部に対して可動にされており、その一方で、実質的に水平方向に延在し且つ前記構造をその半径方向に沿って横断する軸線を中心に旋回可能にされている、
医療用X線撮影装置において、
前記撮影手段がある構造が実質的に環状の外側カバーを含んでおり、
前記検査開口部が、その大部分においては実質的に円弧形状にされているが、延長部を備えており、前記延長部が占める領域内では、前記円弧の中心から前記検査開口部の縁部までの距離が、実質的に円弧形状である前記検査開口部の前記大部分においてよりも長い、
撮影装置。」の点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点)
撮影手段がある構造について、本願発明は、撮影手段を「支持している実質的に環状の」構造であるのに対し、引用発明では、X線源及び検出器を「支持している実質的に環状の」構造であるかどうか不明である点。

(5)相違点に対する判断
上記相違点について検討するに、本願発明の撮影手段を「支持している実質的に環状の」構造は、その環状の構造自体で撮影手段を支持するものであり、引用発明のCBCTスキャナには、X線源及び検出器を「支持している」「実質的に環状の構造」に相当するものがあるとはいえず、この構造上の差異は当業者において設計上の微差ともいえない。

なお、本願発明の「撮影手段を支持している実質的に環状の構造」の一例として、本願明細書では「本発明による装置の基本構造によると、撮影手段(すなわち放射線源(21)および画像情報の受信器(22))は、これら撮影手段を支持している実質的に環状の構造(2)の中に配置されており、検査開口部(4)の実質的に対向する側において、環状の構造(2)の中の曲線経路に沿って移動可能である。当然ながら、検査開口部(4)の縁部とO型アーム(2)の外側カバー(3)との間の距離(またはO型アームの環状部の半径方向の寸法)は、この経路が可能であるだけの十分な大きさでなければならない。図2は、本発明の1つの可能な実施形態を示しており、この実施形態は、O型アーム(2)の中に配置された環状支持部(20)を含んでおり、環状支持部(20)には、実質的に対向する側に、放射線源(21)および画像情報の受信器(22)が配置されている。撮影手段を支持している支持部(20)は、アクチュエータ(23)および伝達ベルト(24)によって構造(2)の中で回転可能であるようにされている。」(【0021】)と記載され、図2として以下の図が添付されている。

これらの記載から、本願発明の「撮影手段を支持している実質的に環状の構造」が具体的にどのようなものであるか理解でき、このような構造とすることにより、上記明細書に記載されている「環状の構造(2)の中の曲線経路に沿って移動可能」となり、「アクチュエータ(23)および伝達ベルト(24)によって構造(2)の中で回転可能」となるようになるものであることが理解されるものである。

(6)小括
したがって、本願発明は、引用発明と同一であるとはいえないことから、本願発明が特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないとはいえない。
また、本願請求項2?9に係る発明は、本願発明をさらに限定したものであるから、同様に、引用発明と同一であるとはいえず、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないとはいえない。
よって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。

第4 当審拒絶理由について
1 当審拒絶理由の概要
本願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備であり、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

(1)平成27年5月7日付け手続補正書の請求項1に「環状の構造(2)の半径方向の断面の水平方向の対角線に実質的に平行な軸線を中心に旋回可能にされている」と記載されているが、「環状の構造(2)」が、どのように旋回することを特定しようとしているのか明確でない。
(2)平成27年5月7日付け手続補正書の請求項10の「15cmのオーダーまたはそれより大きく」及び「50cmのオーダーまたはそれ以下である」における「オーダー」との記載は明確でない。

2 当審拒絶理由の判断
上記(1)の指摘については、平成28年6月20日付け手続補正書によって、請求項1の上記指摘箇所を「環状の構造(2)が、少なくとも垂直方向に、前記支持構造部(1)に対して可動にされており、その一方で、実質的に水平方向に延在し且つ前記環状の構造(2)をその半径方向に沿って横断する軸線を中心に旋回可能にされている」(下線部が指摘に対応するところ)と補正されたことにより、明確となった。
また、上記指摘(2)については、平成28年6月20日付け手続補正書によって、請求項10の「オーダー」との記載を削除する補正を行ったことにより、明確となった。
よって、当審拒絶理由は解消した。

第5 むすび
以上のとおり、原査定の理由及び当審の拒絶の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2016-07-27 
出願番号 特願2013-506699(P2013-506699)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (A61B)
P 1 8・ 161- WY (A61B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 伊藤 昭治  
特許庁審判長 郡山 順
特許庁審判官 ▲高▼見 重雄
三崎 仁
発明の名称 検査開口部を備えた医療用X線撮影装置  
代理人 鷲田 公一  

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