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審決分類 審判 査定不服 特174条1項 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G09G
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G09G
管理番号 1317355
審判番号 不服2015-11058  
総通号数 201 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-09-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-06-10 
確定日 2016-07-21 
事件の表示 特願2013- 94153「表示装置、表示方法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年10月10日出願公開、特開2013-210643〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

特許出願: 平成25年4月26日
(特願2007-16406号(平成19年1月26日出願)の分割出願)
拒絶査定: 平成27年3月2日(送達日:同年同月10日)
拒絶査定不服審判の請求: 平成27年6月10日
手続補正: 平成27年6月10日
拒絶理由通知: 平成28年2月26日
(以下、「当審拒絶理由」という。発送日:同年3月1日)
手続補正: 平成28年4月11日(以下、「本件補正」という。)
意見書: 平成28年4月11日(以下、「本件意見書」という。)


第2 本願発明
本願の請求項1ないし8に係る発明は、本件補正によって補正された明細書、特許請求の範囲、及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明は次のとおりである。

「使用者の目の前方に位置するように配置された表示画面により画像表示を行うとともに、透過率可変の液晶シャッタにより透過率を変化させることのできる表示手段と、
上記表示手段において画像表示を実行させる際、上記表示画面の一部領域を画像表示領域とし、上記画像表示領域以外を透明もしくは半透明となる透過率に上記液晶シャッタを制御し、上記画像表示領域の透過率を、上記画像表示領域以外とは異なる透過率となるように上記液晶シャッタを制御して、上記画像表示領域に画像表示を実行させる制御手段と、
使用者の身体状況としての使用者情報を生体センサによる生体情報から検出する使用者情報検出手段と、
を備え、
上記制御手段は、上記使用者情報検出手段で検出された使用者情報によるアプリケーションプログラムの起動を制御するとともに、起動する上記アプリケーションプログラムの種類に応じた、上記画像表示領域の位置、サイズ及び透過率に制御し、該透過率に対しては上記身体状況としての使用者情報に応じた透過率になるように制御がなされる
表示装置。」(以下「本願発明」という。)


第3 当審拒絶理由
これに対し、当審拒絶理由の概要は、本願の請求項1ないし8に係る発明は、本願の原出願の前に頒布された刊行物である特開2005-172851号公報(発明の名称:画像表示装置、出願人:ソニー株式会社、公開日:平成17年6月30日、以下、「引用例」という。)に記載された発明、及び本願の原出願の前に頒布された刊行物である特表2006-516772号公報(以下、「周知例」という。)に記載されている周知技術などに基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。


第4 引用例記載の事項・引用発明
これに対して引用例には、「ヘッドマウントディスプレイと称される画像表示装置」(【0002】)に関し、次の事項(a)ないし(d)が図面とともに記載されている。

(a)
「【0002】
従来からヘッドマウントディスプレイと称される画像表示装置が使用されている。
このような画像表示装置は、ユーザーの頭部または顔面に装着される装着部と、装着部に支持され装着部がユーザーに装着された状態でユーザーの視野内に配置されるスクリーンと、入力映像信号に基づいてスクリーンに画像を表示する画像表示手段とを備えており、前記スクリーンとして液晶パネルを用いたもの(例えば特許文献1参照)やホログラフィックオプティカルエレメントを用いたもの(例えば特許文献2参照)が提案されている。
・・・」

(b)
「【0007】
次に本発明の実施例1について図面を参照して説明する。
・・・
図1、図2に示すように、画像表示装置10は、装着部12、表示ユニット14、複数のカメラ20、ヘッドホン21、コントローラ22などを備えている。
・・・」

(c)
「【0011】
次に、図4を参照してコントローラ22の構成について説明する。
コントローラ22は、中央制御部2202(特許請求の範囲の制御手段に相当)、RAM2204、インターフェース部2206、音声処理部2208、操作部2209、GPSセンサ2210、歩行センサ2212、イーサーネット用インターフェース2214などを備えている。
インターフェース部2206は、外部機器(テレビチューナー、DVDプレーヤー、ビデオプレーヤーなど)30から供給される外部供給映像信号および外部供給音声信号を入力する入力機能と、カメラ20からの周囲映像信号やマイク33からの音声信号を記録装置(レコーダー)32に出力する出力機能とを備える。
・・・
GPSセンサ部2210は、GPS(Global Positionig System)における衛星からの電波を受信することにより画像表示装置10が存在している地球上の位置を測位し、その測位データ(位置情報)を生成する機能を有している。
・・・
中央制御部2202は、各カメラ20から供給される周囲映像信号を入力し画像処理を
行なう機能、操作部2209の操作に基づいてLCD1408に映像信号を供給する機能、音声処理部2208を制御する機能、GPSセンサ2210および歩行センサ2212からの検知信号を処理する機能、イーサーネット用インターフェース2214を介して外部の情報処理装置との間でデータ通信を行なう機能などを有している。
更に詳しく説明すると、中央制御部2202は、外部機器30から供給される外部供給映像信号と、各カメラ20から供給される周囲映像信号との双方に基づいて入力映像信号を生成してLCD1408に供給することによって、前記外部供給映像信号による第1の画像と、前記周囲映像信号信号による第2の画像とをスクリーン15に表示させる制御手段を構成している。
・・・」

(d)
「【0016】
次に本発明の実施例3について説明する。
実施例3は、ユーザーUが周囲の状況を確認する必要が生じた場合に、図3に示す液晶
シャッター1413および凹面ハーフミラー1412を介して外界の様子を視認すると同時にスクリーン15に表示された縮小画像をも視認できるようにしている。
実施例3の液晶シャッター1413は、中央制御部2202の制御により、その濃淡、すなわち光の透過率を変えることができるように構成されている。そのため、透過率を変えることで、液晶シャッター1413を透過する外部の像と、スクリーン15による画像とのコントラスト比を変えることができる。また、この液晶シャッター1413は、その全域にわたって均一に光の透過率を変えるのではなく、複数に分割した領域の透過率の制御を各領域毎に独立して行なえるように構成されている。
次に、実施例3の画像表示装置10の作用効果について説明する。
図9(A)は液晶シャッター1413が透過状態あるいは半透過状態でスクリーン15に前記外部供給映像信号による第1の画像が表示されている様子を示す。この場合には、液晶シャッター1413および凹面ハーフミラー1412を介して外界画像102が視認され、該外界画像102の中央箇所(視界中央)に第1の画像104が重ね合わされた状態で表示されている。
このような表示状態では、外界画像102および第1の画像104の様子を細部まで同時に観察することは甚だ困難であり、一般に二重に表示された映像の一方を意識的に集中して観察した場合には、他方の映像の認識力は著しく低下することが知られている。
したがって、外界画像102を細部まで観察する必要が生じた際には、図9(B)に示すようにスクリーン15による第1の画像104の表示を一時的に停止することで外界画像102のみを視認できるようにすることができる。
また、図9(C)に示すように、第1の画像104をユーザーUの視野の端に縮小表示するように構成すれば、外界画像102の観察に支障が生じないようにするとともに、視線を縮小表示した第1の画像104へ移動することでその画像の概容を認識することができる。なお、ユーザーUの視野については次に詳述する。
縮小表示する第1の画像104は、その背景に外界画像102が透過したシースルー状態で表示されてもよいが、液晶シャッター1413により縮小表示する第1の画像104の領域を部分的に不透過とするか、あるいは、透過率を低下させることで第1の画像104を見やすくすることができる。
また、これとは逆に、バックライト1406およびLCD1408を制御することによって縮小表示する第1の画像104の輝度を下げることにより、背景の外界画像102を見やすくすることもできる。
図9(B)、(C)に示すように、ユーザーUが外界画像102を容易に視認できるようにすれば、ユーザーUが周囲の状況を容易に確認する上で有利であり、また、ユーザーUが画像表示装置10を頭部に装着したままで外界画像102の観察に支障なく歩行することが可能となる。
・・・
【実施例4】
【0018】
次に本発明の実施例4について説明する。
実施例4は、ユーザーUの視線検出を用いて前記通常表示状態と前記縮小または非表示状態との切り替え動作を行なうようにしている。
図13は実施例4における画像表示装置10の構成を簡素化して示す構成図である。
図13に示すように、ユーザーUに臨むハーフミラー1410の箇所に視線検出センサ1416が設けられており、該視線検出センサ1416はユーザーUの視線がハーフミラー1410のどの領域を指向しているか、言い換えればユーザーUがどの領域を注視しているかを検出し、検出している領域を示す注視領域データをコントローラ22(中央制御部2202)に供給するように構成されている。このような視線検出の方法は、カメラシステムのファインダーを覗いた際にファインダー内のどこを注視しているかを認識する方法として従来公知である。
また、液晶シャッターからなる液晶シャッター1413の外面に明るさセンサ1418(例えば光センサ、フォトダイオード)が設けられており、該明るさセンサ1418は外界の明るさを検出し明るさを示す明るさ検出信号を中央制御部2202に供給するように構成されている。
また、液晶シャッタードライバ1413Aは、中央制御部2202の指令により液晶液晶シャッター1413の透過率及び該液晶シャッター1413の動作範囲(透過率を調整する範囲)を調節するように構成されている。
中央制御部2202が液晶シャッター1413の動作範囲を調整することにより、縮小表示する第1の画像104の部分にだけシャッターをかける(透過率を低下させる)ことで第1の画像104の視認性を上げることができるように構成されている。
また、中央制御部2202が明るさセンサ1418で検知した明るさに応じて液晶シャッタードライバ1413Aを介して液晶シャッター1413の透過率を自動的に調節することにより、ユーザーUが外界画像102と第1の画像104とを融合して見られるようにこれらの明るさの比率を適当な範囲に保つことができるように構成されている。
また、図15に示すように、前記縮小または非表示状態では、スクリーン15のうちユーザーUの視野の端に、再表示操作領域106を示すアイコン108が表示されるように構成されており、中央制御部2202は、視線検出センサ1416によってユーザーUが非歩行時にアイコン108、すなわち再表示操作領域106を所定時間注視したことが検知されると、スクリーン15を、前記縮小または非表示状態から前記通常表示状態に切り替えるように、言い換えると第1の画像104を拡大表示するように構成されている。
【0019】
次に、図14のフローチャートを参照して実施例4の動作について説明する。
中央制御部2202は、歩行センサ2212の検知信号に基づいてユーザーUが歩行しているか否かを監視している(ステップS10)。
歩行が検知されなければ、視線検出センサ1416によってユーザーUがアイコン108、すなわち再表示操作領域106を所定時間注視したか否か、すなわち画像拡大要求の有無を判定する(ステップS12)。画像拡大要求が無ければステップS10に戻り、画像拡大要求が有れば前記通常表示状態であるか否か、すなわち第1の画像104が拡大表示中であるか否かを判定する(ステップS14)。拡大表示中であればステップS10に戻り、拡大表示中でなければ、第1の画像104をスクリーン15に拡大表示する(ステップS16)。
また、ステップS10で歩行が検知された場合には、第1の画像104が拡大表示中であるか否かを判定し(ステップS18)、拡大表示中であればスクリーン15を前記縮小または非表示状態にし(ステップS20)、拡大表示中でなければステップS10に戻る。
したがって、実施例4によれば、ユーザーUの視線検出を用いて前記通常表示状態と前記縮小または非表示状態との切り替え動作を行なうので、ユーザーUがスイッチを操作すること無く切り替え動作を行なうことができ操作性を向上させる上で有利となる。
さらに、ユーザーUが歩行中の場合には第1の画像104の拡大表示を停止し、拡大要求も受け付けないので、ユーザーUの歩行時には外界画像102の視認性を確保することができる。
なお、再表示操作領域106をアイコン108で示す代りに縮小表示されている第1の画像104で示すようにしてもよい。」

上記記載(a)ないし(d)、及び図面の第1?4,9,13図の記載から、引用例には、次の発明が記載されていると認められる。(対応する段落を【 】括弧で示す。)

「ユーザーの視野内に配置されるスクリーンに画像を表示し【0002】、液晶シャッターの透過率を変えることで、液晶シャッターを透過する外部の像と、スクリーンによる画像とのコントラスト比を変えることができる【0016】表示ユニット【0007】と、
液晶シャッターが透過状態あるいは半透過状態でスクリーンに外部供給映像信号による第1の画像が表示され、第1の画像をユーザーの視野の端に縮小表示し、液晶シャッターにより第1の画像の領域を部分的に不透過とするか、あるいは、透過率を低下させる【0016】コントローラ【0011】と、
視線検出センサ【0018】と、
が設けられており、
コントローラの中央制御部は、視線検出センサによってユーザーが再表示操作領域を所定時間注視したことが検知されると、スクリーンを、縮小または非表示状態から通常表示状態に切替えるように、言い換えると第1の画像を拡大表示する【0011,0018】
画像表示装置【0002】。」(以下「引用発明」という。)


第5 対比
本願発明と引用発明とを、主たる構成要件毎に、順次対比する。
まず、引用発明における「ユーザーの視野内に配置されるスクリーン」は、本願発明における「使用者の目の前方に位置するように配置された表示画面」に相当し、また引用発明において「液晶シャッターの透過率を変えることで、液晶シャッターを透過する外部の像と、スクリーンによる画像とのコントラスト比を変えることができる」ことは、本願発明において「透過率可変の液晶シャッタにより透過率を変化させることのできる」ことに相当するから、引用発明における「ユーザーの視野内に配置されるスクリーンに画像を表示し、液晶シャッターの透過率を変えることで、液晶シャッターを透過する外部の像と、スクリーンによる画像とのコントラスト比を変えることができる表示ユニット」は、本願発明における「使用者の目の前方に位置するように配置された表示画面により画像表示を行うとともに、透過率可変の液晶シャッタにより透過率を変化させることのできる表示手段」に相当する。
また、引用発明は「液晶シャッターが透過状態あるいは半透過状態でスクリーンに外部供給映像信号による第1の画像が表示され、第1の画像をユーザーの視野の端に縮小表示し、液晶シャッターにより第1の画像の領域を部分的に不透過とするか、あるいは、透過率を低下させる」ものであり、この「第1の画像の領域」が、本願発明の「画像表示領域」に相当するから、引用発明における「液晶シャッターが透過状態あるいは半透過状態でスクリーンに外部供給映像信号による第1の画像が表示され、第1の画像をユーザーの視野の端に縮小表示し、液晶シャッターにより第1の画像の領域を部分的に不透過とするか、あるいは、透過率を低下させるコントローラ」は、本願発明における「上記表示手段において画像表示を実行させる際、上記表示画面の一部領域を画像表示領域とし、上記画像表示領域以外を透明もしくは半透明となる透過率に上記液晶シャッタを制御し、上記画像表示領域の透過率を、上記画像表示領域以外とは異なる透過率となるように上記液晶シャッタを制御して、上記画像表示領域に画像表示を実行させる制御手段」に相当する。
次に、引用発明の「視線検出センサ」が、本願発明の「使用者の身体状況としての使用者情報を生体センサによる生体情報から検出する使用者情報検出手段」に相当することは、本願明細書(段落【0037】)において「目の動き(視線方向の変化やまばたき)」が、生体センサにより検出され操作入力として認識される情報として例示されていることからも明らかといえる。
また、引用発明の「コントローラの中央制御部」は、「視線検出センサによってユーザーが再表示操作領域を所定時間注視したことが検知されると、スクリーンを、縮小または非表示状態から通常表示状態に切替えるように、言い換えると第1の画像を拡大表示する」ものであって、かつ第1の画像が表示される場合には、その領域を部分的に不透過とするか、あるいは、透過率を低下させる制御がなされるのであるから、視線検出センサによって不透過あるいは透過率を低下させる領域が変更されているといえる。そうすると、引用発明において「コントローラの中央制御部」が、「視線検出センサによってユーザーが再表示操作領域を所定時間注視したことが検知されると、スクリーンを、縮小または非表示状態から通常表示状態に切替えるように、言い換えると第1の画像を拡大表示する」ことは、本願発明において「制御手段」が、「該透過率に対しては上記身体状況としての使用者情報に応じた透過率になるように制御がなされる」ことに相当する。
そして、引用発明の「画像表示装置」は、本願発明の「表示装置」に相当する。

してみると、両者の一致点及び相違点は、以下のとおりである。

(一致点)
「使用者の目の前方に位置するように配置された表示画面により画像表示を行うとともに、透過率可変の液晶シャッタにより透過率を変化させることのできる表示手段と、
上記表示手段において画像表示を実行させる際、上記表示画面の一部領域を画像表示領域とし、上記画像表示領域以外を透明もしくは半透明となる透過率に上記液晶シャッタを制御し、上記画像表示領域の透過率を、上記画像表示領域以外とは異なる透過率となるように上記液晶シャッタを制御して、上記画像表示領域に画像表示を実行させる制御手段と、
使用者の身体状況としての使用者情報を生体センサによる生体情報から検出する使用者情報検出手段と、
を備え、
上記制御手段は、該透過率に対しては上記身体状況としての使用者情報に応じた透過率になるように制御がなされる
表示装置。」

(相違点1)
本願発明においては、制御手段が「使用者情報検出手段で検出された使用者情報によるアプリケーションプログラムの起動を制御する」とされているのに対し、引用発明においては「起動」の制御が視線検出センサの検知により行われるか否か不明である点。

(相違点2)
本願発明においては、制御手段が「起動する上記アプリケーションプログラムの種類に応じた、上記画像表示領域の位置、サイズ及び透過率に制御」するとされているのに対し、引用発明においてはそのような制御が行われるとはされていない点。

第6 判断
上記相違点1について検討する。
当審拒絶理由で引用した周知例において、
「【請求項1】
ユーザの目のビデオ画像を獲得するためのカメラ手段と、
前記カメラ手段に接続されており、前記カメラ手段の相対的な物理的位置を固定するための、支持手段と、
前記カメラ手段に接続されており、前記ユーザの目のビデオ画像を受け入れ、前記ビデオ画像をディジタル画像に変換するための、ビデオディジタル化手段と、
前記ビデオディジタル化手段に電気的に接続されており、さらに、中央処理装置、メモリ、ビデオディスプレイスクリーン、視標追跡インタフェース、および前記メモリ内に格納された計算機可読のプログラムコード手段を含む、コンピュータ手段とを、備える、ユーザの視線の注視点を追跡する視標追跡システムにおいて、
前記コード手段がさらに、ディジタル画像内で前記ユーザの目の中心を決定するための、第1の命令手段と、前記ディスプレイスクリーン上の注視点に前記ユーザの目の決定された中心を関連づけるための、第2の命令手段と、
前記関連づけられたデータを受け入れ、かつ実質的に前記注視点に重なり合う前記ディスプレイスクリーン上の位置に、ディスプレイスクリーンポインタを置くための、第3の命令手段と、
目の動きによって作動するディスプレイスクリーンメニューを前記ユーザに提供するための、第4の命令手段と、
前記ディジタル画像用のRGB画素強度閾値を選択するための、第5の命令手段と、
前記RGB閾値を識別子として使用して前記ディジタル画素データを第1および第2のグループとして2つの別々のバイナリグループに識別するための、第6の命令手段と、
前記識別した画素データおよび前記支持手段の軸方向の位置に従って実質的に前記目の中心の位置を決定するための、第7の命令手段とを備え、
それによって、前記視標追跡システムが、前記ユーザの視線の前記注視点で、ポインタを前記ビデオスクリーン上に位置を定め、コンピュータプログラム可能な活動を選択するための目の動きによる起動方法を前記ユーザに提供する、視標追跡システム。」
と記載されているように、目の動きを用いたプログラムの起動操作は周知(以下、「周知技術1」という。)である。周知技術1と同様に視線による操作制御を含む引用発明にこれを適用し、視線検出センサによる表示状態の切替えを、プログラムの起動を伴うものとすることは、当業者が容易に想到し得たものである。
また、引用発明に周知技術1を採用することにより、格別の作用効果が奏されるものでもない。

次に、上記相違点2について検討する。
本件意見書において、
「[4]拒絶理由が解消した理由
・・・
すなわち、新請求項1の表示装置は、「制御手段は、使用者情報検出手段で検出された使用者情報によるアプリケーションプログラムの起動を制御するとともに、起動するアプリケーションプログラムの種類に応じた、画像表示領域の位置、サイズ及び透過率に制御し、透過率に対しては身体状況としての使用者情報に応じた透過率になるように制御がなされる」という構成を有しております。
かかる構成を有する表示装置にあっては、例えば或るアプリケーションプログラムが起動された場合は画像表示領域の透過率を0%、他の或るアプリケーションプログラムが起動された場合は画像表示領域の透過率を20%、というように、アプリケーションプログラムの種類に応じて透過率を変更することができます。このように、ユーザの挙動や状況に応じて画像表示領域の透過率を設定又は可変調整することで、ユーザが望む透過率を容易に実現でき、その結果視認性に優れ、かつ使用性の良好な表示装置を実現できます。」
と主張されていることからみて、本願発明における「起動するアプリケーションプログラムの種類に応じた」制御とは、個別のアプリケーションプログラムごとに対応する制御を指すものと解される。しかしながら、引用発明において「第1の画像をユーザーの視野の端に縮小表示し、液晶シャッターにより第1の画像の領域を部分的に不透過とするか、あるいは、透過率を低下させるコントローラ」を駆動するプログラムを考えると、「ユーザーの視野の端」とされる位置、「縮小表示」のサイズ、及び「透過率」について、プログラムの起動時に使用者による入力操作が行われることは技術常識からみて考え難く、少なくともこれらについてデフォルトとなる値が特定されていることは明らかといえる。そして、引用発明における、それらデフォルト値による第1の画像の表示を行う制御が、本願発明における「起動する上記アプリケーションプログラムの種類に応じた、上記画像表示領域の位置、サイズ及び透過率に制御」することに相当する。したがって、上記相違点2は実質的な相違点ではない。
なお、仮に本願発明における「起動するアプリケーションプログラムの種類に応じた」制御が、アプリケーションプログラムのカテゴリー(例えば、ブラウザソフトウエアや文書作成ソフトウエア、動画表示ソフトウエアなど)に応じたものであるとしても、そのようなアプリケーションプログラムの用途によって表示ウィンドウの位置、サイズ、透過率といった表示態様を適切なものに制御する(例えば、文書作成ソフトウエアにおいて重要な情報の表示位置は中央とするなど。)ことは、特に例を引くまでもなく、コンピュータ一般の画面表示制御において周知慣用なものに過ぎないのであって、これを引用発明に採用することは、当業者が容易に想到し得たものである。
そして、上記相違点を総合的に判断しても、本願発明が奏する効果は、引用発明及び周知技術から当業者が十分に予想できたものであって、格別なものとはいえない。


第7 むすび
したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
以上のとおりであるから、他の請求項に係る発明について審理するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-05-19 
結審通知日 2016-05-24 
審決日 2016-06-07 
出願番号 特願2013-94153(P2013-94153)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G09G)
P 1 8・ 55- WZ (G09G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 橋本 直明  
特許庁審判長 酒井 伸芳
特許庁審判官 清水 稔
中塚 直樹
発明の名称 表示装置、表示方法  
代理人 中川 裕人  
代理人 鈴木 伸夫  
代理人 岩田 雅信  
代理人 脇 篤夫  

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