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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B66B
管理番号 1317365
審判番号 不服2015-17184  
総通号数 201 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-09-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-09-18 
確定日 2016-07-21 
事件の表示 特願2013-546854「エレベータの操作ボタン、及びエレベータの操作ボタンの製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 6月 6日国際公開、WO2013/080270〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2011年11月28日を国際出願日とする出願であって、平成25年10月24日に特許法第184条の5第1項に規定する国内書面が提出され、平成26年10月27日付けで拒絶理由が通知され、平成27年1月8日に意見書及び手続補正書が提出され、同年7月9日付けで拒絶査定がされ、同年9月18日に拒絶査定不服審判の請求がされ、その後、当審において平成28年2月8日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)が通知され、同年4月7日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 本願発明
本願の特許請求の範囲の請求項1ないし5に係る発明は、平成28年4月7日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲並びに国際出願時の明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりである。

「【請求項1】
エレベータ利用者により操作されるエレベータの操作ボタンであって、
表板部と、上記表板部の外周部から裏側へ突出する側板部とを有する金属製のボタンキャップ、
上記ボタンキャップの裏面のうち、上記表板部の裏面にのみ設けられた接着層、及び
上記ボタンキャップの裏面に設けられ、上記接着層を介して上記ボタンキャップと一体になっている樹脂製の成形体
を備え、
上記ボタンキャップを構成する金属及び上記成形体を構成する樹脂のそれぞれに対する上記接着層の結合力は、上記成形体がインサート成形により上記ボタンキャップと直接一体化された場合の、上記ボタンキャップを構成する金属に対する上記成形体の結合力よりも高くなっているエレベータの操作ボタン。」

第3 引用文献の記載等
1 引用文献1の記載等
(1)引用文献1の記載
当審拒絶理由で引用され、本願の国際出願日前に日本国内において頒布された刊行物である特開2002-133966号公報(以下、「引用文献1」という。)には、「プッシュボタン」に関して、図面とともにおおむね次の記載(以下、「記載1a」という。)がある。

1a 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電話機、自動販売機、自動券売機、エレベータ、コンピュータのキーボードなどに用いられるプッシュボタンに関するものである。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】従来、電話機、自動販売機、自動券売機、エレベータ、コンピュータのキーボードなどに用いられるプッシュボタンは、ABS樹脂からなるプラスチックにより形成されており、その頂面に、記号や数字あるいは文字等の表示部を焼き付けや印刷にて形成するか、あるいはその色調を異ならせることにより識別性をもたせるようになっていた。
・・・(略)・・・
【0006】実開平2-16531号全文明細書には、図3(a)(b)に示すように、表示部15に合致する打ち抜き部14を備えた箱型状の金属製キャップ13に、合成樹脂からなる基体12をインサート成形することにより、金属製キャップ13の打ち抜き部14から基体12の一部を露出させて表示部15を形成したプッシュボタン11が開示されている。
・・・(略)・・・
【0008】しかしながら、図3(a)(b)に示すプッシュボタン11は、合成樹脂の基体12と金属のキャップ13の二層構造であることから、気候の変化が激しい環境下に曝された場合、基体12とキャップ13とが変形によりガタ付き、キャップ13が剥離する恐れがあった。しかも、二層構造であるために、その分製作コストが高くなるといった不都合もあった。」(段落【0001】ないし【0008】)

(2)引用文献1の図面
引用文献1には、図3として、次の図が記載されている。

(3)引用文献1の記載事項
記載1a及び図面の記載から、引用文献1には、次の事項(以下、順に、「記載事項1b」ないし「記載事項1e」という。)が記載されていると認める。

1b 記載1aの「本発明は、電話機、自動販売機、自動券売機、エレベータ、コンピュータのキーボードなどに用いられるプッシュボタンに関するものである。」(段落【0001】)及び「金属製キャップ13の打ち抜き部14から基体12の一部を露出させて表示部15を形成したプッシュボタン11が開示されている。」(段落【0006】)並びに図面によると、引用文献1には、エレベータのプッシュボタン11が記載されている。

1c 記載1aの「金属製キャップ13の打ち抜き部14から基体12の一部を露出させて表示部15を形成したプッシュボタン11が開示されている。」(段落【0006】)及び図面を記載事項1bとあわせてみると、引用文献1には、金属製キャップ13が記載されている。

1d 記載1a並びに記載事項1b及び1cを考慮すると、図3(特に、図3(b)における右上から左下へ向かうハッチングが施された部分を参照。)から、引用文献1に記載された金属製キャップ13は、表板部相当部分(便宜上、このように表現する。)と、上記表板部相当部分の外周部から裏側へ突出する側板部相当部分(便宜上、このように表現する。)とを有することが看取される。

1e 記載1aの「実開平2-16531号全文明細書には、図3(a)(b)に示すように、表示部15に合致する打ち抜き部14を備えた箱型状の金属製キャップ13に、合成樹脂からなる基体12をインサート成形することにより、金属製キャップ13の打ち抜き部14から基体12の一部を露出させて表示部15を形成したプッシュボタン11が開示されている。」(段落【0006】)及び図面を記載事項1bないし1dとあわせてみると、引用文献1には、金属製キャップ13の裏面に設けられた合成樹脂からなる基体12が記載されている。

(4)引用発明
記載1a、記載事項1bないし1e及び図面を整理すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認める。

「エレベータのプッシュボタン11であって、
表板部相当部分と、上記表板部相当部分の外周部から裏側へ突出する側板部相当部分とを有する金属製キャップ13、
上記金属製キャップ13の裏面に設けられた合成樹脂からなる基体12
を備えているエレベータのプッシュボタン11。」

2 引用文献2の記載等
当審拒絶理由で引用され、本願の国際出願日前に日本国内において頒布された刊行物である特開平1-301216号公報(以下、「引用文献2」という。)には、「ウレタン樹脂と金属との一体成形物およびその製造方法」に関して、図面とともにおおむね次の記載(以下、まとめて「引用文献2の記載」という。なお、下線は当審で付したものである。他の文献についても同様。)がある。

・「従来、熱可塑性ポリウレタン樹脂に金属をインサートする射出成形では、熱可塑性ポリウレタン樹脂を金属に完全に接着することが困難であった」(第1ページ右下欄第14ないし16行)

・「そこでこの発明の目的は、成形後のポリウレタン樹脂層に変色、物性低下等が生じることがなく、しかも射出成形が容易で、かつフラットな金属被着体表面であっても、完全一体的に接着できるウレタン樹脂と金属との一体成形物およびその製造方法を提供しようとするものである。」(第2ページ左上欄末行ないし右上欄第5行)

・「[作用]
以上の通り本発明は、下塗り形成されたフェノール/ブチラール系の接着層を有する金属被着体表面と、熱可塑性ポリウレタン樹脂層間に、一定の低残量の遊離イソシアネートの含むイソシアネート系接着剤を用いた接着層を介在させる構成なので、成形過程で当該遊離イソシアネートが隣接層に移行し、各層間を強固に接着するため、たとえフラットな金属表面でも、一体成形物が得られるとともに、必要以上の高温で焼付け硬化しなくてもよいので、熱可塑性ポリウレタン樹脂層の変質変色等が起こらず、物性保持面で良好である。またポリウレタン樹脂は透湿性を有するため、室温多湿の環境下に置くだけで、遊離イソシアネートは反応することから、接着剤をあらかじめ焼付けたり、射出成形前の金具等の余熱は不要であり可塑性ポリウレタン樹脂を射出成形した後でも完全一体化でき、かかる点で射出成形がきわめて容易となる。
[実施例]
第1図は本発明に係る一体成形物を示す断面図で、1は表面がフラットな金属被着体、2はフェノール/ブチラール系の接着層、3は熱可塑性ポリウレタン樹脂層であり、フェノール/ブチラール系の接着層2と熱可塑性ポリウレタン樹脂層3間に、イソシアネート系の接着層4が形成されている。
本実施例では、金属被着体1として、外径24mm、内径21mm、長さ92mmの軟鋼パイプ(SS41)を使用した。
ところで本発明の一体成形物を得るために、本実施例ではまず、当該金属被着体1表面を6号の砂でサンドブラスト処理した後、トリクレン洗浄し、フェノール/ブチラール系の接着層2を形成するため、ヒューソンケミカル社製ケムロック218(商品名)の下塗り用接着剤を1回塗布した。続いてこの下塗り用接着剤を室温で乾燥後、遊離イソシアネート残量が約4%であるイソシアネート系接着剤を1回塗布して室温で乾燥した。次にこの2層の接着剤が塗布された金属バイブに対して、武田バーデッシュウレタン株式会社製のエラストラン(商品名)を2.5mm厚に射出成形した。これを湿度R・H70%、室温25℃雰囲気中に24時間放置後、100℃、2時間加熱して反応させ、続いて自然放冷した。」(第3ページ左下欄第5行ないし第4ページ左上欄第9行)

・引用文献2には、次の図面が記載されている。

3 引用文献3の記載等
当審拒絶理由で引用され、本願の国際出願日前に日本国内において頒布された刊行物である特開2009-73088号公報(以下、「引用文献3」という。)には、「インサート成形体およびインサート成形体の製造方法」に関して、図面とともにおおむね次の記載(以下、まとめて「引用文献3の記載」という。)がある。

・「【0001】
本発明は、インサート成形体およびインサート成形体の製造方法に関し、特に、金属からなるインサート部材と接着剤層とが強固に接合されたインサート成形体およびインサート成形体の製造方法に関する。
・・・(略)・・・
【0007】
しかしながら、特許文献1および特許文献2に記載の技術では、樹脂部材を成形する前に、金属からなるインサート部材の被接着面に対して加工を施す必要があり、手間がかかっていた。すなわち、特許文献1に記載の技術では、アルミニウム材の表面に陽極酸化皮膜を形成しなければならないし、特許文献2に記載の技術では、金属部品表面をケミカルエッチングしなければならない。
この問題を解決するためには、金属からなるインサート部材の被接着面に対して加工を施さない方法が考えられるが、特許文献1および特許文献2に記載の技術では、金属からなるインサート部材の被接着面に対して加工を施さないと、金属部材と樹脂部材との接合力が十分に得られなかった。このため、特許文献1や特許文献2に記載の技術では、生産性を向上させることは困難であった。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、生産性に優れ、しかも、金属からなるインサート部材と樹脂部材とが強固に接合されたインサート成形体およびインサート成形体の製造方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】」(段落【0001】ないし【0008】)

・「【0015】
以下、本発明に係るインサート成形体およびインサート成形体の製造方法について例を挙げて詳細に説明する。
図1は、本実施形態のインサート成形体の一例を示した断面図である。また、図2は、図1に示すインサート成形体の製造方法の一例を説明するための概略工程図である。
本実施形態のインサート成形体1は、図1に示すように、断面視コ字形のインサート部材2の被接着面2aに、接着剤層4を介して樹脂層3が形成されてなるものである。
【0016】
インサート部材2は、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼などの鉄系合金、銅、銅合金等の金属からなるものであり、軽量で耐食性に優れたアルミニウムやアルミニウム合金あるいは耐久性および強度に優れたステンレス鋼などの鉄系合金が好ましく用いられる。
・・・(略)・・・
【0018】
接着剤層4は、図1に示すように、インサート部材2側に設けられた第1の接着剤層4aと、樹脂層3側に設けられた第2の接着剤層4bとからなる。
・・・(略)・・・
【0019】
図1に示すインサート成形体を製造するには、まず、インサート部材2の被接着面2aに、第1の接着剤層4aとなる第1の接着剤を塗布して乾燥させることにより、第1の接着剤層4aを形成する。ここで用いる第1の接着剤は、エポキシ樹脂を含む樹脂と、メチルイソブチルケトンやトリメチルベンゼン(1,3.5-トリメチルベンゼン)、芳香族炭化水素溶剤などから選ばれた少なくとも1種以上の溶剤とを含むものである。
・・・(略)・・・
【0020】
次いで、第1の接着剤層4a上に、第2の接着剤層4bとなる第2の接着剤を塗布して乾燥させることにより、第2の接着剤層4bを形成する。ここで用いる第2の接着剤は、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ビニル系樹脂から選ばれた少なくとも1種以上の樹脂と、シクロヘキサノンや3-メトキシ-3-メチルブチルアセテート、芳香族混合炭化水素(石油ナフサ)、イソホロン、トルエンなどから選ばれた少なくとも1種以上の溶剤とを含むものである。また、第2の接着剤層4bの厚みは、例えば1?30μmとすることが好ましい。
なお、第2の接着剤層4bを形成するための乾燥は、常温で行なってもよいが、第2の接着剤層4b中に溶剤が残留していると樹脂層3との接着性が低下するので、例えば、70℃?80℃の温度で30分?1時間程度行なうことにより、完全に乾燥させることが好ましい。
このことにより、図2(a)に示すように、インサート部材2の被接着面2aに第1の接着剤層4aと第2の接着剤層4bとがこの順で形成された接着剤層4が得られる(接着剤層形成工程)。
【0021】
続いて、図2(a)および図2(b)に示す金型5を用意する。ここで使用される金型5は、図2(a)および図2(b)に示すように、下型5aと、樹脂を注入するための注入口6aを備えた上型5bとからなるものである。金型5は、図2(b)に示すように、下型5aと上型5bとを閉じたときのキャビティ6内の形状が、インサート成形体1の形状に対応する形状とされているものである。
次に、図2(a)に示すように、接着剤層4の形成されている部分が金型5に注入される樹脂に接し、接着剤層4の形成されていない部分が下型5aのキャビティ6の内面に接触するように、接着剤層4の形成されたインサート部材2をキャビティ6内に配置し、下型5aと上型5bとを閉じる。
【0022】
続いて、注入口6aからキャビティ6内に、樹脂層3となる溶融された樹脂を供給して硬化させることにより、インサート部材2の被接着面2aに接着剤層4を介して樹脂からなる樹脂層3を成形接着する(成形工程)。
その後、このようにして得られたインサート成形体1を、金型5から取り出す。」(段落【0015】ないし【0022】)

・引用文献3には、図1及び2として、次の図面が記載されている。

4 引用文献4の記載等
当審拒絶理由で引用され、本願の国際出願日前に日本国内において頒布された刊行物である再公表特許第2007/058351号(発行日:平成21年5月7日)(以下、「引用文献4」という。)には、「樹脂製保持器及び転がり軸受」に関して、図面とともにおおむね次の記載(以下、まとめて「引用文献4の記載」という。)がある。

・「【0050】
本実施形態の玉軸受210は、図11に示すように、外輪211と内輪212との間に転動体としての複数の玉213が配設された深溝玉軸受であり、複数の玉213は本実施形態の玉軸受用冠型保持器214を介して円周方向に略等間隔で転動可能に保持されている。
玉軸受用冠型保持器214は、合成樹脂からなり、図12に示すように、円環状の主部221と、この主部221の軸方向端面に円周方向に所定の間隔を存して複数配置され、軸方向に突出する弾性片222と、を備え、この弾性片222の間に転動体である玉213を転動可能に保持するポケット部223が形成される。そして、玉軸受用冠型保持器214の主部221には、補強リング224が埋設されている。なお、補強リング224は、合成樹脂(例えば、ナイロン46等)の射出成形時に成形型内にインサートされる。」(段落【0050】)

・「【0075】
本実施形態の玉軸受用冠型保持器は、接着剤を半硬化状態で焼き付けた補強リング(金属板)をコアにして、玉軸受用冠型保持器の合成樹脂のインサート成形を行った後、二次加熱によって接着剤を完全に硬化させて補強リングと玉軸受用冠型保持器の主部とを一体に接着接合することで、製造される。また、補強リングの材質は、特に限定するものではなく、例えば、炭素鋼板(SPCC,SECC等)、ステンレス鋼板、各種のメッキ鋼板、表面処理鋼板等を例示することができる。接着剤の防錆性が十分でない場合、調質処理等を施す際に錆びやすい環境に曝される場合、あるいは種々の都合で錆に対しての配慮が必要な場合には、ステンレス鋼板、メッキ鋼板、表面処理鋼板を使用することが好ましい。なお、本実施形態の製造方法では、二次加熱によって接着剤を硬化させているが、接着剤を半硬化状態で焼き付けた補強リングをコアにして、玉軸受用冠型保持器の合成樹脂をインサート成形する工程のみで、二次加熱をせずに接着剤を硬化させてもよい。
・・・(略)・・・
【0079】
接着剤は、玉軸受用冠型保持器の合成樹脂と補強リングとの接着強度を確保するために、補強リングの接着対象面の全面に塗布することが好ましい。ただし、十分に接着強度が維持されるのであれば、接着剤塗布の作業性やコスト等を考慮して、必要な箇所にのみ、部分的に塗布する構成としてもよい。一方、補強リングの全表面に接着剤を塗布した場合は、表面に形成された接着剤層が、金属板の酸化や腐食を抑制するという効果も得られる。」(段落【0075】ないし【0079】)

・引用文献4には、図11及び12として、次の図面が記載されている。

第4 対比
本願発明と引用発明を対比する。

引用発明における「エレベータのプッシュボタン11」は、エレベータ利用者により操作されるものであることは明らかであるから、その機能、構成及び技術的意義からみて、本願発明における「エレベータ利用者により操作されるエレベータの操作ボタン」に相当する。
また、引用発明における「表板部相当部分」は、その機能、構成及び技術的意義からみて、本願発明における「表板部」に相当し、以下、同様に、「側板部相当部分」は「側板部」に、「金属製キャップ13」は「金属製のボタンキャップ」に、「合成樹脂からなる基体12」は「樹脂製の成形体」に、それぞれ、相当する。
さらに、記載1aの「箱型状の金属製キャップ13に、合成樹脂からなる基体12をインサート成形することにより」(段落【0006】)によると、引用発明における「合成樹脂からなる基体12」は、「金属製キャップ13」にインサート成形して成形されるものであり、「金属製キャップ13」と一体化されたものであることは明らかであるから、引用発明における「上記金属製キャップ13の裏面に設けられた合成樹脂からなる基体12」は、その機能、構成及び技術的意義からみて、本願発明における「上記ボタンキャップの裏面に設けられ、上記接着層を介して上記ボタンキャップと一体になっている樹脂製の成形体」と、「上記ボタンキャップの裏面に設けられ、上記ボタンキャップと一体になっている樹脂製の成形体」という限りにおいて、一致する。

したがって、本願発明と引用発明は、以下の点で一致する。

「エレベータ利用者により操作されるエレベータの操作ボタンであって、
表板部と、上記表板部の外周部から裏側へ突出する側板部とを有する金属製のボタンキャップ、
上記ボタンキャップの裏面に設けられ、上記ボタンキャップと一体になっている樹脂製の成形体
を備えているエレベータの操作ボタン。」

そして、以下の点で相違する。

<相違点>
「上記ボタンキャップの裏面に設けられ、上記ボタンキャップと一体になっている樹脂製の成形体」に関して、本願発明においては、「上記ボタンキャップの裏面に設けられ、上記接着層を介して上記ボタンキャップと一体になっている樹脂製の成形体」であって、そのために、「上記ボタンキャップの裏面のうち、上記表板部の裏面にのみ設けられた接着層」を有し、かつ、「上記ボタンキャップを構成する金属及び上記成形体を構成する樹脂のそれぞれに対する上記接着層の結合力は、上記成形体がインサート成形により上記ボタンキャップと直接一体化された場合の、上記ボタンキャップを構成する金属に対する上記成形体の結合力よりも高くなっている」のに対し、引用発明においては、「上記金属製キャップ13の裏面に設けられた合成樹脂からなる基体12」であり、本願発明のような接着層を有するか否か不明である点(以下、「相違点」という。)。

第5 相違点に対する判断
そこで、相違点について、以下に検討する。

インサート部材である金属製の部品を樹脂でインサート成形する際に、接着強度を向上させるために、インサート部材である金属製の部品と樹脂の間に接着層を設けることは、本願の国際出願日前に周知(必要であれば、引用文献2ないし4の記載等を参照。以下、「周知技術1」という。)であり、その際に、接着剤塗布の作業性、コスト及び接着強度を維持できるかどうか等を考慮して、インサート部材の必要な箇所にのみ部分的に接着層を設けることも、本願の国際出願日前に周知(必要であれば、引用文献4の記載等を参照。以下、「周知技術2」という。)である。
また、周知技術1における「接着層」は、それが無い場合よりも接着強度を向上させるものであるから、周知技術1における「接着層」として、インサート部材である金属製の部品及び樹脂のそれぞれに対する「接着層」の結合力は、樹脂がインサート成形によりインサート部材である金属製の部品と直接一体化された場合の、インサート部材である金属製の部品に対する樹脂の結合力よりも高くなるものを採用することは、当然である。

したがって、引用発明において、周知技術1及び2を適用して、「接着層」を「金属製キャップ13」の必要な箇所にのみ部分的に設けるようにし、その際に、「金属製キャップ13」の表板部の裏面は、側板部の裏面よりも接着剤を塗布しやすい箇所であること、「金属製キャップ13」の表板部は、エレベータ利用者により押される箇所であって、外力が反復的に作用するため、その裏面は、剥離が生じやすい箇所であり、そこに剥離が生じるとエレベータ利用者の操作感触が悪くなるので、剥離が生じるのを避けたい箇所であること及び「金属製キャップ13」の表板部の裏面は、側板部の裏面よりも面積が小さいため接着剤の塗布量が少なくて済むこと等は当業者にとって明らかであるから、「接着層」を設ける箇所として、「金属製キャップ13」の「基体12」側である「金属製キャップ13」の裏面の内、表板部の裏面のみを選択し、かつ、「金属製キャップ13」を構成する金属及び「基体12」を構成する樹脂のそれぞれに対する「接着層」の結合力は、「基体12」がインサート成形により「金属製キャップ13」と直接一体化された場合の、「金属製キャップ13」を構成する金属に対する「基体12」の結合力よりも高くなっているようにして、相違点に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

そして、本願発明を全体としてみても、本願発明が、引用発明並びに周知技術1及び2からみて、格別顕著な効果を奏するともいえない。

なお、請求人が主張する「ボタンキャップの表板部の裏面ではなくボタンキャップの側板部の裏面から優先的に成形体が剥がれるようにすることができ、ボタンキャップの表板部の裏面に成形体が一体になっている状態をより確実に保つことができます。」(平成28年4月7日に提出された意見書の(3)(a)等を参照。)という効果は、「接着層」を設けた箇所と「接着層」を設けない箇所とでは、「接着層」を設けない箇所の方が剥離が生じやすいことは明らかであるから、引用発明において、「接着層」を設ける箇所を、「金属製キャップ13」の表板部の裏面のみを選択したことによって、当然予測できる効果であるし、「接着層」を設ける箇所として「金属製キャップ13」の表板部の裏面のみを選択したことによって生じる「金属製キャップ13」の表板部の裏面と「基体12」の接着強度が向上するという効果に付随する効果にすぎず、格別顕著な効果とはいえない。
また、請求人が主張する上記効果は、「ボタンキャップ」の側板部の裏面が「樹脂製の成形体」と一体化していることを前提とするものであるが、特許請求の範囲の請求項1の記載によると、本願発明は、「ボタンキャップ」の側板部の裏面が「樹脂製の成形体」と一体化しているものに限られないことから(平成28年4月7日に提出された手続補正書により、特許請求の範囲の請求項1の「インサート成形により上記接着層を介して上記ボタンキャップと一体化された」という記載が「上記接着層を介して上記ボタンキャップと一体になっている」と補正され、本願発明が、「インサート成形により」「一体化された」という発明特定事項を有しないものとなったため。)、請求人が主張する上記効果は、そもそも、本願発明の発明特定事項に基づく効果とはいえない。
さらに、本願明細書には、「接着層」を「ボタンキャップ」の表板部の裏面に設けることの効果に関して、「また、上記の例では、接着層12がボタンキャップ11の表板部14の裏面にのみ設けられているが、側板部15の裏面にも接着層12を設けてもよい。これにより、ボタンキャップ11から成形体13をさらに外れにくくすることができる。」(本願明細書の段落【0038】を参照。)と記載されており、「側板部」の裏面にも接着層を設けた方がよい旨の記載があるものの、請求人が主張する上記効果は本願明細書の他の箇所をみても記載されておらず、請求人が主張する上記効果は、本願明細書の記載に基づかないものでもある。

したがって、本願発明は、引用発明並びに周知技術1及び2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第6 むすび
上記第5のとおり、本願発明は、引用発明並びに周知技術1及び2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-05-19 
結審通知日 2016-05-24 
審決日 2016-06-06 
出願番号 特願2013-546854(P2013-546854)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B66B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 藤村 聖子  
特許庁審判長 伊藤 元人
特許庁審判官 加藤 友也
槙原 進
発明の名称 エレベータの操作ボタン、及びエレベータの操作ボタンの製造方法  
代理人 大宅 一宏  
代理人 吉田 潤一郎  
代理人 曾我 道治  
代理人 上田 俊一  
代理人 飯野 智史  
代理人 梶並 順  
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