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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 G03F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G03F
管理番号 1317538
審判番号 不服2015-6131  
総通号数 201 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-09-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-04-02 
確定日 2016-07-27 
事件の表示 特願2012-554984「反射防止ハードマスク組成物及びそれを用いたパターン化材料を調製する方法。」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 9月 1日国際公開、WO2011/106040、平成25年 6月13日国内公表、特表2013-522654〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2010年10月22日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2010年 2月24日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成26年 6月30日付けで拒絶理由が通知され、同年10月15日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年12月 3日付けで拒絶査定がなされたところ、平成27年 4月 2日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出されたものである。

第2 補正の却下の決定
平成27年 4月 2日に提出された手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
1 本件補正の内容
本件補正は、平成26年10月15日に提出された手続補正書により補正された(以下「本件補正前」という。)特許請求の範囲を補正しようとするものであって、そのうち、請求項1に係る補正については次のとおりである(下線は補正に関連する箇所を示し、当審で付加したものである。)。
(1)本件補正前の請求項1及び2
「【請求項1】
下記の群から選択される繰り返し構造単位を含む、反射防止ハードマスク組成物。
【化1】

(式中、xは少なくとも1であり、yは少なくとも1であり、Rは、1つ又は複数の発色団部分、透明部分、及び架橋成分から選択される有機官能基ユニットであり、前記無機ユニットは、下記式を有する、
【化2】

式中、x及びyは前記の意味を有し、M_(d)はTi、Zr、Hf、Sc、Y、La、V、Nb、Ta及びランタニド希土類金属から選択され、R^(1)は同じ又は異なるものでC_(1)-C_(6)アルキル、C_(1)-C_(6)アルコキシ、フェニル及びフェノキシから選択される。)」

「【請求項2】
前記ポリマーは、酸発生剤をさらに含む、請求項1に記載の組成物。」

(2)本件補正後の請求項1
「【請求項1】
下記の群から選択される繰り返し構造単位からなるポリマーと、酸発生剤とを含有する、反射防止ハードマスク組成物。
【化1】

(式中、xは少なくとも1であり、yは少なくとも1であり、Rは、1つ又は複数の発色団部分、透明部分、及び架橋成分から選択される有機官能基ユニットであり、前記無機ユニットは、下記式を有し、
【化2】

式中、x及びyは前記の意味を有し、M_(d)はTiであり、R^(1)は同じ又は異なるものでC_(1)-C_(6)アルキル、C_(1)-C_(6)アルコキシ、フェニル及びフェノキシから選択される。)」

2 新規事項の追加の有無及び補正の目的について
(1)補正事項
請求項1に係る本件補正は、以下の補正事項からなるものである。
ア 請求項1を削除するとともに、請求項2を独立形式の記載に改めて新たな請求項1とする。

イ 本件補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「下記の群から選択される
【化1】

」「繰り返し構造単位」において、選択肢の一部を削除し、「下記の群から選択される
【化1】

」「繰り返し構造単位」と限定する。

なお、上記の補正事項において、「及び」を削除し忘れたことは明らかであり、以後上記補正箇所については「及び」を削除したものとして検討をすすめる。

ウ 本件補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「繰り返し構造単位」を「繰り返し構造単位からなるポリマー」へと補正する。

エ 本件補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「無機ユニット」において、「下記式を有する」との記載を「下記式を有し」へと補正する。

オ 本件補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「下記式を有する、
【化2】

」「無機ユニット」の「Ti、Zr、Hf、Sc、Y、La、V、Nb、Ta及びランタニド希土類金属から選択され」る「M_(d)」において、選択肢の一部を削除し、「Tiであ」る「M_(d)」と限定する。

カ 本件補正前の請求項2に係る発明を特定するために必要な事項である「ポリマー」と「酸発生剤」との関係について、「前記ポリマーは、酸発生剤をさらに含む」との記載を「ポリマーと、酸発生剤とを含有する」へと補正する。

(2)補正の目的等
ア 上記(1)アの補正事項は、特許法17条の2第5項1号に掲げる請求項の削除を目的とするものに該当する。

イ 上記(1)イ及びオの補正事項は、「繰り返し構造単位」及び「無機ユニット」の「M_(d)」において、それぞれ選択肢の一部を削除するものであり、本件補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項を限定するものであって、本件補正の前後で当該請求項に係る発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であると認められるから、特許法17条の2第3項の規定に適合し、また、特許法17条の2第5項2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

ウ 上記(1)ウ、エ及びカの補正事項は、特許法17条の2第5項3号に掲げる誤記の訂正を目的とするものに該当し、また、新規事項を追加するものでもないから、特許法17条の2第3項の規定に適合する。

3 独立特許要件を満たすか否かの検討
請求項1に係る本件補正は、特許法17条の2第5項2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする補正事項を含むものであるから、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか)について検討する。

(1)本願補正発明
本願補正発明は、上記1(2)に記載のとおりのものである。

(2)特許法36条6項1号(サポート要件)について
ア 本願の明細書には、次の記載がある(下線は当審で付した。以下同じ。)。
(ア)「【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造における価格及び性能の競争力を維持する必要性から、業界はデバイス密度の継続的な増大とそれに付随するデバイスの形状寸法の縮小を押し進めている。デバイス寸法の縮小を容易にするために、新規なリソグラフ材料、プロセス及びツールが検討されている。典型的なリソグラフ・プロセスは、放射線感受性レジストを画像形成放射線にパターン様式で露光することによるパターン化レジスト層の形成を伴う。次に、露光されたレジスト層を物質(典型的には水性アルカリ現像剤)と接触させてレジスト層の部分を選択的に除去して所望のパターンを露わにすることによって、画像が現像される。パターン化レジスト層の開口内の材料をエッチングすることによって、このパターンが次に下層の材料に転写される。転写が完了した後に、残りのレジスト層が除去される。現在、248nm及び193nmリソグラフィが、200nm以下の構造部をプリントするために推進されている。
【0003】
これを実行するために、より高い開口数(NA)を有するツールが出現している。より高いNAは解像度の向上を可能にするが、レジスト上に射影される空間像の焦点深度が浅くなる。焦点深度が浅くなるので、より薄いレジストが必要になる。レジストの厚さが減少すると、その後の乾式エッチングによる下層の基板への画像転写のためのマスクとしてのレジストの有効性が減少する。現在の単一層レジストが示すエッチング耐性の著しい向上がなければ、これらの系は、高解像度リソグラフィのために必要なリソグラフィ特性及びエッチング特性を提供することができない。
【0004】
単一層レジスト系に伴う別の問題は、限界寸法(CD)の制御である。紫外(UV)及び深紫外(DUV)波長における基板反射は、定在波効果及びレジストのノッチングを生じさせる厄介な問題であり、これらが単一層レジストのCD制御を著しく制限する。ノッチングは、基板のトポグラフィ及び不均一な基板反射率から生じ、これは、レジスト上の照射エネルギーの局所的変動をもたらす。定在波は、レジストの厚さによる薄膜干渉(TFI)又は光強度の周期的変動である。これらの光の変動は、レジストの平坦化が、下層のトポグラフィにより異なる厚さをもたらすために生じる。薄膜干渉は、単一層フォトレジスト・プロセスのCD制御に主要な役割を果たし、光位相の僅かな変化により有効照射線量の大きな変化を引き起こす。薄膜干渉効果は非特許文献1に記載されており、その教示は引用により本明細書に組み入れられる。
【0005】
薄膜干渉を小さくするために、底面反射防止コーティングすなわちBARCが単一層レジストとともに用いられている。しかし、これらの薄い吸収性BARCには基本的な限界がある。幾つかのリソグラフィ画像化プロセスに対して、使用されるレジストは、レジストの下にある層への所望のパターンの効果的な転写を可能にするのに十分な、後続のエッチング・ステップに対する耐性を与えない。レジストは典型的には、パターンを下のBARC及び基板へ転写した後、使い尽くされる。さらに、より小さな90nm以下のノードの構造部サイズへの移行は、画像崩壊を避けるために極薄レジスト(>200nm)の使用を必要とする。相当のエッチング深度が必要とされる、及び/又は所与の下層材料に対して特定のエッチング剤の使用が望まれる多くの場合には、レジスト厚は、エッチング・プロセスを完了するには不十分である。さらに、使用される放射線感受性レジスト材料は、放射線感受性レジスト及び反射防止コーティング(ARC)の下にある層への所望のパターンの効果的な転写を可能にするのに十分な、後続のエッチング・ステップに対する耐性を与えない。
【0006】
エッチングすべき下の材料層が厚い場合、相当のエッチング深度が必要とされる場合、所与の下層に対して特定のエッチング剤を使用することが望ましい場合、又は上記のいずれかの組み合せの場合などの多くの場合において、反射防止ハードマスクを用いることが望ましいであろう。反射防止ハードマスク層は、パターン化された放射線感受性レジスト材料とパターン化される下層材料層との間の中間層として機能することができる。反射防止ハードマスク層は、パターン化された放射線感受性レジスト材料層から反応性イオン・エッチング(RIE)によってパターンを受取り、次にこのパターンが下層材料層に転写される。反射防止ハードマスク層は、パターンを下層材料層に転写するのに必要なエッチング・プロセスに耐えることができるものであるべきである。さらに、RIEによってレジスト層からパターンを受け取るには、特に薄いレジストを用いる場合、薄い反射防止ハードマスク層が望ましい。ARC組成物として有用な多くの材料が知られているが、放射線感受性レジスト材料に対して、及び、下層材料層に対して高いエッチング選択性を有する、改善された反射防止ハードマスク組成物が必要とされている。さらに、多くの既知の反射防止ハードマスクは基板に塗布することが難しく、例えば、これらARCを塗布するには、化学気相堆積の使用が必要とされることがある(特許文献1、特許文献2)。現在製造に用いられている従来の有機BARCと同様に、スピン・オン技術によって反射防止ハードマスク材料を塗布することが有利であろう。
【0007】
さらに、反射防止ハードマスク材料は、パターン転写後に除去することが難しい。典型的には、有機BARCは湿式又は乾式灰化処理によって除去される。CVDによって堆積させたハードマスク層は、下層の誘電体基板を損傷せずに除去することが難しい。反射防止ハードマスク材料は、下層の基板に対して高い選択性のある湿式剥離によって容易に除去できることが理想的である。
【0008】
従って、高いエッチング選択性を有し、さらになお複数回のエッチングに対する十分な耐性を有するリソグラフ技術を実行できることが望ましい。そのようなリソグラフ技術は、高度に精徴な半導体デバイスの製造を可能にするであろう。」
・・(略)・・
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、反射防止ハードマスク組成物、及び半導体デバイスを処理するために反射防止ハードマスク組成物を使用する技術を提供する。本発明の一態様において、リソグラフィ用の反射防止ハードマスク層が提供される。」

(イ)「【発明を実施するための形態】
【0015】
リソグラフィ構造体は、本明細書で開示される反射防止ハードマスク組成物(以後「本組成物」)を含む。本発明の一態様において、本組成物は、少なくとも1つの発色団部分、少なくとも1つの透明部分、及び架橋成分を含む、骨格に組み込まれた非シリコンの無機部分を含んだSi-O骨格を有するポリマーを含む。このポリマーは、酸発生剤と追加の架橋成分との任意の組み合せを含むことができる。本組成物は、Si-O骨格と骨格に組み込まれた非シリコン・ベースの無機ユニットとを有する、以下の構造式から成る群から選択される繰り返し構造式を有するポリマーを含む。
【化1】

式中、xは少なくとも1であり、yは少なくとも1であり、Rは、発色団部分、少なくとも1つの透明部分、又は少なくとも1つの透明部分及び架橋成分であり、但し、無機ユニットはシリコンを含まず、
【化2】

であり、式中、x及びyは上記の意味を有し、M_(a)はSc、Y、La、B、Al、Ga、In又はランタニド金属であり、M_(b)はTi、Zr、Hf、Ge又はSnであり、M_(c)はV、Nb、Ta、P又は
【化3】

であり、M_(d)はTi、Zr、Hf、Sc、Y、La、ランタニド金属、V、Nb又はTaであり、M_(e)はGe又はSnであり、M’はV又はPであり、R^(1)は同じ又は異なるものでC_(1)-C_(6)アルキル、C_(1)-C_(6)アルコキシ、フェニル又はフェノキシであり、R^(2)は同じ又は異なるものでC_(1)-C_(6)アルキル又はC_(1)-C_(6)アルコキシであり、R^(3)は同じ又は異なるものでC_(1)-C_(6)アルキル又はフェニルであり、但し、M_(d)は別の遷移金属又は周期表の2族から5族までの金属とすることができる。
【0016】
ポリマーが、骨格内のSi-Oと、Siを含まない無機ユニットとを含む例示的な一実施形態において、本組成物は、少なくとも1つ又は複数のSi-Oユニットと、少なくとも1つ又は複数の無機非シリコン含有ユニットとを有する。ポリマー骨格内の無機ユニットの存在は、本組成物のハードマスク特性(特に下層のいずれか1つが酸化シリコン、窒化シリコン、及び/又は、Si及びCを含む誘電体を含むとき)及び可剥性を確かなものにする。Si-O含有ユニットは、シロキサン、シルセスキオキサン又は酸化シリコン(ゾル・ゲル)構成ブロックとすることができる。反射防止ハードマスク層は、従来のスピン・コーティングによる層形成の助けとなる溶解特性及び膜形成特性を有するべきである。」

(ウ)「【実施例1】
【0058】
反射防止ハードマスク層の調製及び分析
試料バイアルに、アルドリッチから入手した4gのDowanol(商標)PM溶液、及び1gのゾル・ゲル前駆体の混合物を入れた。Dowanol(商標)PM溶液は、Dowanol(商標)PM(100g)とFC-4430界面活性剤(0.5g)とを混合して調製した。1gのゾル・ゲル前駆体の混合物は、0.381gのシラン前駆体A(0.45モル%)、0.069gのシラン前駆体B(0.1モル%)、及び0.549gのTi(OC_(4)H_(9))_(4)を含み、ここでシラン前駆体Aは以下の構造式を有する化合物であり、
【化4】

シラン前駆体Bは以下の構造式を有する化合物である。
【化5】

【0059】
バイアルの内容物を室温で5分間撹拌し、その後1gの1N HClを加え、激しく撹拌して分散させた。得られた透明溶液を室温で1時間撹拌し、次いで0.2ミクロンのメンブレン・フィルタを通してろ過した。ろ液をシリコン・ウェハに直接塗布し、3,000rpmで60秒間スピンし、次に温度215℃に2分間曝した。
【0060】
このように調製した反射防止ハードマスク層を、n&k Technology Inc.製のn&k Analyzer(商標)を用いて分析し、その厚さ及び光学定数、即ち193nmで計測された屈折係数(n)及び消衰係数(k)を決定した。さらに、ハードマスク層のラザフォード後方散乱(RBS)分析を行った。これらの分析の結果を表1にまとめる。
【実施例2】
【0061】
反射防止ハードマスク層の調製及び分析
第2の反射防止ハードマスク層を、試料バイアルに入れる1グラムのシラン前駆体の構成要素以外は、実施例1で説明した手順に従って調製し分析した。
【0062】
この実施例において、シランA前駆体は0.444gの重量で使用し、シラン前駆体Bは0.081gの重量で用い、そして第3の成分は0.475gの量で存在するGe(OC_(2)H_(5))_(4)であった。
【0063】
実施例1及び実施例2の反射防止ハードマスク組成物層の繰り返し構造ユニットは、以下の通りである。
【化6】

【0064】
実施例1及び2の反射防止ハードマスク組成物層の概要を表1に与える。
【表1】

【実施例3】
【0065】
反射防止ハードマスク層の上の193nmリソグラフィ層
約250nm厚のアクリル・ベースのフォトレジスト層を、実施例1の硬化した反射防止ハードマスク層の上にスピン・コーティングした。この放射線感受性フォトレジスト画像形成層を130℃で60秒間加熱した。次に、加熱した画像形成層を、0.75NAの193nmASMLステッパを用い、AFSMレチクルを用いた通常の環状照射により画像化した。
【0066】
パターン様式の露光後、放射線感受性フォトレジスト画像形成層を130℃で60秒間加熱した。この画像を、従来の現像剤(0.26M TMAH)を用いて現像した。得られたパターンは、120nmのコンタクト・ホール、113.75nmのライン、及び104nmの間隔パターンを有するものであった。
【実施例4】
【0067】
反応性イオン・エッチングによるパターン転写
実施例3において反射防止ハードマスク層上に形成されたコンタクト・ホール、ライン及び間隔パターンを、LAM RIEツールを用いて、20秒間のフッ化炭素ベースのエッチングにより、酸化シリコン上に転写した。
【0068】
反射防止ハードマスク層の、フォトレジストに対する観測されたエッチング選択性は、約2:1であった。実施例1のブランケット膜のエッチング速度は、トリフルオロメタン/メタン・プラズマ中で613Å/分、塩素プラズマ中で813Å/分、及び、窒素/水素プラズマ中で62Å/分であった。酸化シリコンのエッチング速度は、2000Å/分であった。
【実施例5】
【0069】
反射防止ハードマスク組成物層の剥離
2mlの49%HFを250mlのエチレングリコールに混合して調製したフッ化水素/エチレングリコールの液体混合物中にウェハを60℃で浸漬し、次に、この処理されたウェハをClariant製のAZ400T(商標)(市販の剥離調合物)に80℃で浸漬し、それぞれの浸漬を5分間行うことによって、実施例1および実施例2の反射防止ハードマスク組成物層を、それらがその上にコーティングされたシリコン・ウェハから除去した。」

イ 上記ア(ア)から、本願補正発明の課題は、次のものであると認められる。
「高いエッチング選択性を有し、さらになお複数回のエッチングに対する十分な耐性を有する、リソグラフィ用の反射防止ハードマスク層を提供すること」

ウ 上記ア(イ)のとおり、本願の明細書の【0015】には、Si-O骨格と骨格に組み込まれた非シリコン・ベースの無機ユニットとを有するポリマーが記載されており、当該ポリマーは、繰り返し構造式の選択肢として(a)?(c)を有し、繰り返し構造式に含まれる無機ユニットの選択肢として(a)?(f)を有し、無機ユニットに含まれる「M_(a)」?「M_(e)」の選択肢として多数の金属を有しており、非常に多数の種類のポリマーが含まれるところ、当該ポリマーの繰り返し構造式として「(b)」の繰り返し構造式が選択され、無機ユニットとして「(d)」の無機ユニットが選択され、「(d)」の式中における「M_(d)」として「Ti」が選択されたものが本願補正発明のポリマーに該当する。

エ しかしながら、上記ア(ウ)のとおり、本願の明細書において、実際にポリマーとして合成され、当該ポリマーを含有する反射防止ハードマスク組成物としての効果が確認されているのは、繰り返し構造式として「(b)」の繰り返し構造式が選択され、無機ユニットとして「TiO_(2)」あるいは「GeO_(2)」が選択された実施例1又は2のポリマーのみである。

オ そして、ポリマーを構成する繰り返し単位の構造に応じて当該ポリマーの物性が大きく変化することは、当業者の技術常識であるところ、エッチング選択性やエッチング耐性に関して、本願補正発明のポリマー、すなわち、実施例1又は2のポリマーの無機ユニットを(d)の無機ユニット(M_(d)がTiであるもの)に置き換えてなるポリマーが、実施例1又は2のポリマーと同様の性能を有することの具体的な根拠は、本願の明細書全体を参照しても何ら記載されておらず、自明であると認めることもできない。

カ したがって、本願補正発明が、「高いエッチング選択性を有し、さらになお複数回のエッチングに対する十分な耐性を有する、リソグラフィ用の反射防止ハードマスク層を提供すること」という本願補正発明の課題を解決できることを当業者が理解できるように、発明の詳細な説明が記載されているとは認められない。

キ よって、本願補正発明は、発明の詳細な説明に記載されたものとすることができないから、本願特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしているとすることができず、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(3)進歩性(特許法29条2項)について
ア 引用例の記載事項
(ア)原査定の拒絶の理由で引用文献1として引用された、本願の優先権主張の日(以下「優先日」という。)前に頒布された刊行物である、米国特許出願公開第2007/0015083号明細書(以下「引用例1」という。)には、「ANTIREFLECTIVE COMPOSITION AND PROCESS OF MAKING A LITHOGRAPHIC STRUCTURE」(反射防止組成物及びリソグラフィ構造製造工程)(以下、英文に続けて、当審の和訳を記載する。)に関して、次の記載がある。
a 「FIELD OF INVENTION
[0001] The invention relates to an antireflective composition used in lithography, and a process of making a lithographic structure from the antireflective composition. 」
(和訳:技術分野
[0001]本発明はリソグラフィに使用される反射防止組成物及び該反射防止組成物からリソグラフィ構造を作製する工程に関する。)

b 「BACKGROUND OF THE INVENTION
[0002] In the process of making semiconductor devices photoresists and antireflective materials are applied to a substrate. Photoresists are photosensitive films used to transfer an image to a substrate. A photoresist is formed on a substrate and then exposed to a radiation source through a photomask (reticle). Exposure to the radiation provides a photochemical transformation of the photoresist, thus transferring the pattern of the photomask to the photoresist. The photoresist is then developed to provide a relief image that permits selective processing of the substrate.
[0003] Photoresists are typically used in lithographic structures to create features such as vias, trenches or combination of the two, in a dielectric material. In such a process, the reflection of radiation during exposure of the photoresist can limit the resolution of the image patterned in the photoresist due to reflections from the material beneath the photoresist. Reflection of radiation from the substrate/photoresist interface can also produce variations in the radiation intensity during exposure, resulting in non-uniform linewidths. Also, unwanted scattering of radiation expose regions of the photoresist not intended, which again results in linewidth variation. The amount of scattering and reflection will vary from one region of the substrate to another resulting in further linewidth variation.
[0004] With recent trends towards high-density semiconductor devices, there is a movement in the industry to use low wavelength radiation sources into the deep ultraviolet light (300 nm or less) for imaging a photoresist, e.g., KrF excimer laser light (248 nm), ArF excimer laser light (193 nm), excimer laser light (157 nm), electron beams and soft x-rays. However, the use of low wavelength radiation often results in increased reflections from the upper resist surface as well as the surface of the underlying substrate.
[0005] Substrate reflections at ultraviolet and deep ultraviolet wavelengths are notorious for producing standing wave effects and resist notching which severely limit critical dimension (CD) control. Notching results from substrate topography and non-uniform substrate reflectivity which causes local variations in exposure energy on the resist. Standing waves are thin film interference or periodic variations of light intensity through the resist thickness. These light variations are introduced because planarization of the resist presents a different thickness through the underlying topography. Thin film interference plays a dominant role in CD control of single material photoresist processes, causing large changes in the effective exposure dose due to a tiny change in the optical phase. Thin film interference effects are described in "Optimization of optical properties of resist processes" (T. Brunner, SPIE 10 Proceedings Vol.1466, 1991, 297).
[0006] Bottom anti-reflective coatings (BARCs) have been used with photoresists to reduce thin film interference with some success. However, these relatively thin absorbing BARCs have fundamental limitations. At times, the photoresist does not provide sufficient resistance to subsequent etching steps to enable effective transfer of the desired pattern to a material, e.g., a dielectric, beneath the photoresist. The photoresist is consumed after transferring the pattern into the underlying BARC and substrates. In addition, the trend to smaller sub 90 nm node feature sizes requires the use of relatively thin photoresists (>200 nm) to avoid image collapse. If a substantial etching depth is required, or if it is desired to use certain etchants for a given underlying material, the photoresist thickness is now insufficient to complete the etch process. Consequently, the photoresist does not effectively transfer the desired pattern into the underlying substrate or antireflective material.
[0007] The present trend to 248 nm, 193 nm and 157 nm lithography and the demand for sub 200 nm features requires that new processing schemes be developed. To accomplish this, tools with higher numerical aperture (NA) are emerging. The higher NA allows for improved resolution but reduces the depth of focus of aerial images projected onto the photoresist. Because of the reduced depth of focus, a thinner photoresist is required. However, as the thickness of the photoresist is decreased, the photoresist becomes less effective as a mask for subsequent dry etch image transfer to the underlying substrate. Without significant improvement in the etch resistance exhibited by current single material photoresists, these systems cannot provide the necessary etch characteristics for high resolution lithography.」
(和訳:背景技術
[0002]半導体装置を作製する工程でフォトレジストと反射防止材を基板上に塗布する。フォトレジストは像を基板に転写するのに用いる光感受性の膜である。フォトレジストを基板上に形成し、その後、フォトレジストはフォトマスク(レチクル)を通して放射源に曝露される。放射線の照射によってフォトレジストの光化学的変形がもたらされ、それによって、フォトマスクのパターンがフォトレジストに転写される。次いで、該フォトレジストを現像して、基板の選択的加工を可能にするレリーフ像をもたらす。
[0003]フォトレジストは一般的に、リソグラフィ構造に用いられて、ビア、トレンチ、又はその二つの組合せなどの形状を誘電体材料内に作る。このような工程において、フォトレジスト曝露時の放射線の反射が、フォトレジスト直下の金属からの反射によって、フォトレジスト内にパターン形成される像の解像度を制限し得る。また、基板/フォトレジスト界面からの放射線の反射も曝露時の放射線強度に変動を生じさせ、その結果、不均一なライン幅をもたらす。さらにまた、望まない放射線の散乱によって意図しないフォトレジストの領域が曝露され、これもまたライン幅の変動に帰結する。散乱及び反射の量は、基板の一領域から他の領域まで変化し、更なるライン幅の変化に帰結する。
[0004]高密度半導体デバイスに向かう最近のトレンドでは、産業界に、フォトレジストを撮像するのに遠紫外線(300nm以下)の中へと低波長放射線源を用いる動きがある(例えば、KrFエキシマ・レーザ光(248nm)、ArFエキシマ・レーザ光(193nm)、エキシマ・レーザ光(157nm)、電子ビーム、及び軟X線)。しかし、低波長放射線の使用によって、しばしば上部レジスト表面ならびに下地基板表面からの反射が増大する結果となる。
[0005]紫外線波長及び遠紫外線波長での基板反射は、限界寸法(CD)の制御を厳しく制限する定在波効果とレジスト・ノッチングを生むことで悪名高い。ノッチングは、基板の微細構成と、レジスト上の照射エネルギーに局所的な変化をもたらす不均一な基板の反射率に起因する。定在波は、レジスト厚全体の薄膜干渉又は光強度の周期的な変動である。これらの光変動は、レジストの平坦化が基礎となる微細構成全体の厚さを様々なものにするため、もたらされる。薄膜干渉は単一材料のフォトレジスト・工程のCD制御に支配的な役割を果たし、光位相の微小な変化に起因して有効照射線量の大きな変化が引き起こされる。薄膜干渉効果は、「レジスト・工程の光特性の最適化」(T. Brunner、SPIE 10 Proceedings Vol.1466, 1991, 297)に記載されている。
[0006]底部反射防止膜(BARC)はフォトレジストと共に使用されてきており、薄膜干渉の低減に、ある程度成功している。しかしこれらの比較的薄い吸収性BARCには、基本的な限界がある。フォトレジストは、フォトレジスト直下の材料(例えば、誘電体)に所望のパターンを有効に転写できるようにする、後続のエッチング工程に十分に耐えられないことがある。フォトレジストは下地のBARC及び基板にパターンを転写した後に消費される。さらに、ノード90nm未満のより小さなサイズの形状を用いる傾向があるため、像崩れを回避するような比較的薄いフォトレジスト(>200nm)の使用が求められる。実質的なエッチング深さが必要な場合、又はあるエッチング剤を所与の下地材料に使用することが望まれる場合、フォトレジスト厚さはエッチング工程を終えるのには不十分になる。したがって、フォトレジストは、下地基板又は反射防止材へ、所望のパターンを有効に転写できない。
[0007]248nm、193nm及び157nmのリソグラフィに対する現在の傾向及び200nm未満の形状への需要があるために、新しい加工スキームを開発することが求められる。これを達成するために、より高い開口数(NA)のツールが出現している。開口数がより高くなると解像度の向上が可能になるが、フォトレジスト上に投影された空中像の焦点深度が減少する。焦点深度が減少すると、より薄いフォトレジストが求められる。しかし、フォトレジストの厚さが減少するにつれて、フォトレジストは、その後の工程で、ドライエッチング像を下地基板に転写するためのマスクとしての効果が弱くなる。現在の単一材料フォトレジストが示すエッチング耐性の大幅な向上なしでは、これらのシステムは、高解像度リソグラフィに必要なエッチング特性を提供することができない。)

c 「SUMMARY OF THE INVENTION
[0008] The invention is directed to a composition comprising a polymer of formula I,

[0009] wherein 1≦x≦2; 1≦y≦5; 1≧0; m>0; n>0; R is a chromophore, M is a metal selected from Group IIIB to Group VIB, lanthanides, Group IIIA, Group IVA except silicon; and L is an optional ligand.
[0010] The composition is typically used to form an antireflective material used in lithography. In particular, the antireflective material is used to pattern an underlying substrate, particularly, in high resolution lithography using low wavelength radiation sources into the deep ultraviolet to soft x-rays.」
(和訳:発明の概要
[0008]本発明は以下の式Iのポリマーを含む組成物を対象とする。

[0009]式中、1≦x≦2、1≦y≦5、1≧0、m>0、n>0、Rは発色基、MはIIIB族からVIB族、ランタニド、IIIA属、シリコン以外のIVA族から選ばれた金属、Lは任意選択の配位子である。
[0010]該組成物は、一般的に、リソグラフィで使用される反射防止材を形成するために用いられる。該反射防止材は特に、下地基板にパターン形成するために使用され、特に、遠紫外線から軟X線までの低波長放射線源を使用する高解像度リソグラフィで使用される。)

d 「[0016] The -MO_(y)- polymeric unit can be any one of many different metal-oxide forms. An exemplary list of such metal-oxide forms for a particular metal is as follows:
[0017] 1. -MO_(3)-; wherein M is Sc, Y, lanthanide, and Group IIIA; B, Al, Ga or In.
[0018] 2. -MO_(4)-; wherein M is Group IVB; Ti, Zr or Hf, and Group IVA; Sn or Ge.
[0019] 3. -MO_(5)-; wherein M is Group VB; V, Nb or Ta; or P. The Group VB metals are also known to form stable metal oxo forms, LMO3, wherein L is an oxo.
[0020] 4. -LMO-; many of the listed metals form stable acetoacetato-metal complexes.
[0021] 5. -LMO-; many of the listed metals form stable cyclopentadienyl-metal complexes.
[0022] 6. -LMO-; wherein L is an alkoxy ligand; M is Sc, Y, or lanthanide, Group IVB, and Group VB
[0023] 7. -LMO-; wherein L is an alkyl or phenyl ligand; M is Group IIIA or Group IVA.」
(和訳:[0016]-MO_(y)-ポリマー単位は、様々な金属酸化物形態のうちの任意の一つでよい。特定の金属に対するこのような金属-酸化物形態の例示的なリストは、以下のとおりである。
[0017]1.-MO_(3)-、式中、MはSc、Y、ランタニド、及びIIIA族(B、Al、Ga又はIn)である。
[0018]2.-MO_(4)-、式中、MはIVB属(Ti、Zr又はHf)及びIIIA族(Sn又はGe)である。
[0019]3.-MO_(5)-、式中、MはIVB属(V、Nb又はTa)、又はPである。VB族金属も安定した金属オキソ形態LMO_(3)(式中Lはオキソ)を形成することが知られている。
[0020]4. -LMO-、リストした金属の多くは安定なアセト酢酸-金属錯体を形成する。
[0021]5. -LMO-、リストした金属の多くは安定なシクロペンタジエニル-金属錯体を形成する。
[0022]6. -LMO-、式中、Lはアルコキシ配位子、MはSc、Y、又はランタニド、IVB族及びVB族である。
[0023]7. -LMO-、式中、Lはアルキル配位子又はフェニル配位子、MはIIIA族又はIVA族である。)

e 「[0040] The antireflective compositions will likely contain an acid generator, which is used to catalyze the crosslinking of the polymer. The acid generator can be a compound that liberates acid upon thermal treatment. A listing of known thermal acid generators include 2,4,4,6-tetrabromocyclohexadienone, benzoin tosylate, 2-nitrobenzyl tosylate and other alkyl esters of organic sulfonic acids. Compounds that generate a sulfonic acid upon activation are generally suitable. Other suitable thermally activated, acid generators are described in U.S. Pat. Nos. 5,886,102 and 5,939,236; the disclosures of these two patents as related to the thermally activated, acid generating compounds are incorporated herein by reference.
[0041] If desired, a radiation-sensitive acid generator can be used as an alternative to a thermally activated acid generator or in combination with a thermally activated acid generator. Examples of suitable radiation-sensitive acid generators are described in U.S. Pat. Nos. 5,886,102 and 5,939,236, the disclosures of these two patents as related to radiation sensitive, acid generating compounds are incorporated herein by reference. Other radiation-sensitive acid generators known in the resist art can be used as long as they are compatible with the other components of the antireflective composition.
[0042] A acid generator of the formula below provides an antireflective material with optimal characteristics.

[0043] wherein A is S or I, and x is 0 to 7.」
(和訳:[0040]反射防止組成物は、ポリマーの架橋を触媒する酸発生剤を、おそらく含むであろう。酸発生剤は熱処理時に酸を遊離させる化合物であってよい。知られた熱的酸発生剤のリストには、2,4,4,6-テトラブロモシクロヘキサジエノン、ベンゾイン・トシラート、2-ニトロベンジル・トシラート及び他の有機スルホン酸のアルキル・エステルが含まれる。活性化時にスルホン酸を発生する化合物が一般的に適している。他の適した熱活性化酸発生剤は、米国特許第5,886,102号及び第5,939,236号に記載されており、これらの二つの特許の、熱的に活性化された酸発生化合物に関する開示は、本明細書の参照に組み込まれる。
[0041]必要に応じて、放射線感受性酸発生剤を熱活性化酸発生剤の代わりに用いること、又は熱活性化酸発生剤と組み合わせて用いることができる。適切な放射線感受性酸発生剤の例は、米国特許第5,886,102号及び第5,939,236号に記載されており、これらの二つの特許の放射線感受性の酸発生化合物に関する開示は、本明細書の参照に組み込まれる。レジストの技術分野で知られた他の放射線感受性酸発生剤も、反射防止組成物の他の成分と両立し得る限り、用いることができる。
[0042]下式で表す酸発生剤により、最適特性を備えた反射防止材が提供される。

[0043]式中、AはS又はIであり、xは0?7である。)

f 「 EXAMPLE 1
[0071]

EXAMPLE 1A
[0072] Silane A (0.381 g, 0.45 mol %), Silane B (0.069 g, 0.1 mol %) and Ti(On-Bu)_(4) (0.549 g, 0.45 mol %) was added to a reaction vial with Dowanol PM (Aldrich, 4 g). The solution mixture is stirred at room temperature for about 5 min, followed by the dropwise addition of 1N HCl (1 g). The resulting clear solution is stirred at room temperature for 1 hr, then filtered through a 0.2 micron membrane. The filtered solution is applied to a silicon wafer that is spun at 3000 rpm for 60 sec. The deposited composition is heated at 215℃. for 2 min.
[0073] The optical constants of the resulting silicon-metal oxide, antireflective material were measured using an n & k analyzer. Index of refraction (n)=1.735 and extinction coefficient (k)=0.301 at 193 nm. The material had a thickness of 233 nm.

EXAMPLE 2
[0078] Lithography (193 nm):
[0079] The silicon-metal oxide, antireflective material described in Example 1A was used for lithography. A material of acrylic-based photoresist, a product of JSR microelectronics, was spin-coated over the silicon-metal oxide, antireflective material to a thickness of about 250 nm. The radiation-sensitive imaging material was baked at 130# C. for 60 seconds. The radiation-sensitive imaging material was then imaged using a 0.75 NA 193 nm ASML Stepper with conventional and annular illumination using APSM reticle. After patternwise exposure, the radiation-sensitive imaging material was baked at 130℃. for 60 seconds. The image was then developed using a commercial developer (0.26M TMAH). The resulting pattern showed 120 nm contact holes and 113.75 nm lines and 104 nm space patterns.
[0080] Pattern Transfer by Reactive Ion Etching:
[0081] The contact hole and lines and space pattern formed on the silicon-metal oxide, antireflective material were transferred into silicon oxide by a 20 second fluorocarbon-based etch using a LAM RIE tool. The observed etch selectivity of antireflective hardmask composition to the resist was approximately 2:1. The etch rate of blanket films from example 1A in CHF_(3)/CH_(4) plasma is 613 Å/min (silicon oxide etch rate 2000 Å/min), in chlorine 813 Å/min and N_(2)/H_(2) 62 Å/min.
[0082] Stripping the Silicon-Metal Oxide, Antireflective Materials by a Wet Strip):
[0083] The silicon-metal oxide, antireflective materials described in Examples 1A and 1B were stripped in HF/ethylene glycol (2 ml 49% HF in 250 mL ethylene glycol) at 60℃. and AZ400T, which is commercially available from Clariant, at 80℃. in 5 min dip.」
(和訳: 実施例1
[0071]

実施例1A
[0072]シランA(0.381g、0.45mol%)、シランB(0.069g、0.1mol%)及び、Ti(On-Bu)_(4)(0.549g、0.45mol%)を、Dowanol PM(Aldrich、4g)の入った反応ガラス瓶に加えた。溶液混合物を室温で約5分間攪拌し、続いて1N HCl(1g)を滴下で加えた。生じた透明溶液を室温で1時間攪拌し、次いで、0.2ミクロンの膜でろ過する。ろ過した溶液を3000rpmで回転させたシリコン・ウエハーに60秒間塗布する。堆積した組成物を215℃で2分間加熱する。
[0073]生じたシリコン-金属酸化物・反射防止材の光学定数を、n & kアナライザーを使用して測定した。屈折率(n)=1.735であり、193nmの減衰係数(k)=0.301であった。材料の厚さは233nmであった。
・・(略)・・
実施例2
[0078]リソグラフィ(193nm)
[0079]実施例1Aで説明したシリコン-金属酸化物・反射防止材をリソグラフィに使用した。アクリル系フォトレジストの材料(JSRマイクロエレクトロニクスの製品)を、シリコン-金属酸化物・反射防止材上に約250nmの厚さでスピン・コーティングした。放射線感受性撮像材料を、130℃で60秒間、焼き付けた。次いで市販の現像剤(0.26M TMAH)を用いて像を現像した。得られたパターンは、120nmのコンタクト穴、113.75nmのライン、及び104nmのスペース・パターンであった。
[0080]反応性イオン・エッチングによるパターン転写
[0081]シリコン-金属酸化物・反射防止材上に形成されたコンタクト穴及びライン及びスペース・パターンを、LAM RIEツールを用いて、20秒間のフルオロカーボン系のエッチングによってシリコン酸化物へ転写した。レジストに対する反射防止ハードマスク組成物の測定されたエッチング選択性は、約2:1であった。実施例1Aからのブランケット膜のCHF_(3)/CH_(4)プラズマでのエッチング・レートは613Å/分(シリコン酸化膜のエッチング・レートは2000Å/分)、塩素では813Å/分、N_(2)/H_(2)では62Å/分である。
[0082]シリコン-金属酸化物・反射防止材のストリッピングは、湿式ストリップによりおこなう。
[0083]実施例1A及び1Bに記載したシリコン-金属酸化物・反射防止材は、60℃のHF/エチレングリコール(エチレングリコール250mLに2mlの49%HFが存在)中、及び80℃のAZ400T(Clariantから市販されている)中に5分間浸すことで、ストリッピングした。)

g 上記aないしfから、引用例1には次の発明が記載されているものと認められる。
「下記シランA(0.381g、0.45mol%)、下記シランB(0.069g、0.1mol%)及び、Ti(On-Bu)_(4)(0.549g、0.45mol%)を、Dowanol PM(Aldrich、4g)の入った反応ガラス瓶に加え、溶液混合物を室温で約5分間攪拌し、続いて1N HCl(1g)を滴下で加え、生じた透明溶液を室温で1時間攪拌し、次いで、0.2ミクロンの膜でろ過した、シリコン-金属酸化物を含有する反射防止ハードマスク組成物。

」(以下「引用発明1」という。)

(イ)原査定の拒絶の理由で引用文献2として引用された、本願の優先日前に日本国内において頒布された刊行物である、特開2009-126940号公報(以下「引用例2」という。)には、「金属酸化物含有膜形成用組成物、金属酸化物含有膜、金属酸化物含有膜形成基板及びこれを用いたパターン形成方法」(発明の名称)に関して、次の記載がある。
a 「【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子等の製造工程における微細加工に用いられる多層レジスト法の中間層として使用される金属酸化物含有膜、特に回転塗布で中間層を形成するのに好適な金属酸化物含有膜形成用組成物、これを用いて形成された金属酸化物含有膜、金属酸化物含有膜形成基板及びこれを用いたパターン形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
LSIの高集積化と高速度化に伴い、パターン寸法の微細化が急速に進んでいる。リソグラフィー技術は、この微細化に併せ、光源の短波長化とそれに対するレジスト組成物の適切な選択により、微細パターンの形成を達成してきた。その中心となったのは単層で使用するポジ型フォトレジスト組成物である。この単層ポジ型フォトレジスト組成物は、塩素系あるいはフッ素系のガスプラズマによるドライエッチングに対しエッチング耐性を持つ骨格をレジスト樹脂中に持たせ、かつ露光部が溶解するようなレジスト機構を持たせることによって、露光部を溶解させてパターンを形成し、残存したレジストパターンをエッチングマスクとしてレジスト組成物を塗布した被加工基板をドライエッチング加工するものである。
【0003】
ところが、使用するフォトレジスト膜の膜厚をそのままで微細化、即ちパターン幅をより小さくした場合、フォトレジスト膜の解像性能が低下し、また現像液によりフォトレジスト膜をパターン現像しようとすると、いわゆるアスペクト比が大きくなりすぎ、結果としてパターン崩壊が起こってしまう。このため微細化に伴いフォトレジスト膜厚は薄膜化されてきた。
【0004】
一方、被加工基板の加工には、通常パターン形成されたフォトレジスト膜をエッチングマスクとして、ドライエッチングにより基板を加工する方法が用いられるが、現実的にはフォトレジスト膜と被加工基板の間に完全なエッチング選択性を取ることのできるドライエッチング方法がないため、基板を加工中にレジスト膜もダメージを受け、基板加工中にレジスト膜が崩壊し、レジストパターンを正確に被加工基板に転写できなくなる。そこで、パターンの微細化に伴い、レジスト組成物により高いドライエッチング耐性が求められてきた。
また、露光波長の短波長化によりフォトレジスト組成物に使用する樹脂は、露光波長における光吸収の小さな樹脂が求められたため、i線、KrF、ArFへの変化に対し、ノボラック樹脂、ポリヒドロキシスチレン、脂肪族多環状骨格を持った樹脂へと変化してきているが、現実的には上記ドライエッチング条件におけるエッチング速度は速いものになってきてしまっており、解像性の高い最近のフォトレジスト組成物は、むしろエッチング耐性が低くなる傾向がある。
このことから、より薄くよりエッチング耐性の弱いフォトレジスト膜で被加工基板をドライエッチング加工しなければならないことになり、この加工工程における材料及びプロセスの確保は急務になってきている。
【0005】
このような問題点を解決する方法の一つとして、多層レジスト法がある。この方法は、フォトレジスト膜、即ちレジスト上層膜とエッチング選択性が異なる中間膜をレジスト上層膜と被加工基板の間に介在させ、レジスト上層膜にパターンを得た後、上層レジストパターンをドライエッチングマスクとして、ドライエッチングにより中間膜にパターンを転写し、更に中間膜をドライエッチングマスクとして、ドライエッチングにより被加工基板にパターンを転写する方法である。
・・(略)・・
【0008】
更に多層レジスト法として、単層レジスト法で使用されている一般的なレジスト組成物を用いて行うことができる3層レジスト法がある。例えば、被加工基板上にノボラック等による有機膜をレジスト下層膜として成膜し、その上にケイ素含有膜をレジスト中間膜として成膜し、その上に通常の有機系フォトレジスト膜をレジスト上層膜として形成する。フッ素系ガスプラズマによるドライエッチングに対しては、有機系のレジスト上層膜は、ケイ素含有レジスト中間膜に対して良好なエッチング選択比が取れるため、レジストパターンはフッ素系ガスプラズマによるドライエッチングを用いることでケイ素含有レジスト中間膜に転写される。この方法によれば、直接被加工基板を加工するための十分な膜厚を持ったパターンは形成することが難しいレジスト組成物や、基板を加工するためにはドライエッチング耐性が十分でないレジスト組成物を用いても、ケイ素含有膜にパターンを転写することができれば、2層レジスト法と同様に、加工に十分なドライエッチング耐性を持つノボラック膜のパターンを得ることができる。
・・(略)・・
【0011】
このような多層レジスト法で従来使用されてきたケイ素含有膜には幾つかの問題がある。例えば、光リソグラフィーによりレジストパターンを形成しようとした場合、露光光が基板で反射し、入射光と干渉して、所謂定在波の問題を引き起こすことはよく知られており、レジスト膜のエッジラフネスのない微細パターンを得るためには、中間膜として反射防止膜を入れてやる必要がある。特に最先端の高NA露光条件では反射制御は必須条件である。
【0012】
そこで、反射制御をするために、多層レジスト法、特にCVDでケイ素含有膜を中間層として形成するプロセスでは、レジスト上層膜とケイ素含有中間膜の間に有機反射防止膜を入れてやる必要があることになる。しかしながら、有機反射防止膜を入れた場合、レジスト上層膜をドライエッチングマスクとして有機反射防止膜をパターン加工する必要が生じ、ドライエッチング時にレジスト上層膜をマスクとして反射防止膜をドライエッチング加工した後、ケイ素含有中間層の加工に移行することになる。そのため、反射防止膜を加工する分だけ上層のフォトレジストに対してドライエッチングの負荷が加わる。特に、最先端のフォトレジスト膜では膜厚が薄くなってきており、このドライエッチング負荷を見逃すことはできない。そこで、上記のようなエッチング負荷が生じない光吸収性ケイ素含有膜を中間膜として適用する3層レジスト法が注目を集めるようになってきた。
【0013】
このような光吸収性ケイ素含有中間膜として、回転塗布型の光吸収性ケイ素含有中間膜が知られている。例えば、芳香族構造を光吸収構造として持たせる手法が開示されている(特許文献8:特開2005-15779号公報)。しかし、光を効率よく吸収する芳香環構造は、フッ素系ガスプラズマによるドライエッチング加工では、ドライエッチング速度を低下させる働きがあるため、フォトレジスト膜に負荷をかけないで中間膜のドライエッチングを行うためには不利な方向である。そこで、このような光吸収置換基を多量に加えることは好ましくないため、最小限の導入量に抑える必要がある。
【0014】
更に、中間膜をドライエッチングマスクとして、レジスト下層膜を加工する際に一般的に使用される酸素ガスプラズマによる反応性ドライエッチングに対するドライエッチング速度は、中間膜と下層膜のエッチング選択比を高めるためより小さいことが好ましく、そのためにはフッ素系エッチングガスに対して反応性の高いケイ素含有量がなるべく高い中間膜が望まれている。このように上層のフォトレジスト膜、下層の有機膜いずれの膜との加工条件からの要求としてフッ素ガスに対する反応性の高い成分、ケイ素含有量が高い中間膜が好ましいといえる。
【0015】
しかしながら、実際の回転塗布型ケイ素含有中間膜形成用組成物では、ケイ素含有化合物を有機溶剤に溶解できるように有機置換基を含有している。従来知られているケイ素含有中間膜のうち、SOG膜を形成する組成物は、KrFエキシマレーザー光を使用したリソグラフィーでは非特許文献1(J.Appl.Polym.Sci.,Vol.88,636-640(2003))で開示されている。しかしながら、この組成物では光吸収基に関する記述が無いため、この組成物から得られるケイ素含有膜には反射防止機能がないと予想される。そのため、最先端の高NA露光機を使用するリソグラフィーでは露光時の反射を抑え込むことができないため、高精細なパターン形状を得ることができない可能性がある。
【0016】
更に、上記のような高NA露光機を使う最先端の半導体プロセスにおいては、一段とフォトレジストの薄膜化が進んでいるため、フォトレジストをエッチングマスクとして中間膜をエッチングする場合に置いて、反射防止機能を持ちつつケイ素含有量を高くするだけではケイ素含有中間膜へパターン転写が困難になると予想されている。そのため、更にエッチング速度の速い材料が期待されている。
【0017】
これらのようなドライエッチング特性及び反射防止効果に対する要求の他に、ケイ素含有率の高い中間膜を形成するための組成物において特に問題となるのが当該組成物の保存安定性である。この場合の保存安定性とは、組成物に含まれるケイ素含有化合物にあるシラノール基が縮合し、組成物の分子量が変化する場合がある。そうなると、膜厚変動やリソグラフィー性能の変動が観測される。特に、リソグラフィー性能の変動は敏感であるため、分子内のシラノール基が縮合して膜厚上昇や分子量変化として観測できなくても、高精細なパターン形状の変化として観測されてしまう。
【0018】
従来、このような反応性の高いシラノール基を酸性状態で保持すると比較的安定化させることができるとして、非特許文献2(C.J.Brinker and G.W.Scherer,“Sol-Gel Science:The Physics and Chemistry of Sol-Gel Processing”,Academic Press,San Diego(1990))等に記載されている。更に、非特許文献1(J.Appl.Polym.Sci.,Vol.88,636-640(2003))、特許文献9(特開2004-157469号公報)及び特許文献10(特開2004-191386号公報)等には、保存安定性を向上させるため水を添加することが開示されている。しかしながら、当該特許文献で示されている方法で製造されたケイ素含有化合物では、このような手段を講じても実際にはシラノール基の縮合反応を完全に止めることはできず、時間とともに組成物中のケイ素含有化合物はゆっくりと変化し、変化した組成物から得られるケイ素含有膜の性質も変化してしまう。そのため、使用直前まで冷蔵又は冷凍で保管し、使用する際に使用温度(通常は23℃)に戻し、素早く使い切ってしまわなければいけなかった。
・・(略)・・
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明の課題は、(1)有機膜上に形成された金属酸化物含有膜の上にフォトレジスト膜を形成し、続いてレジストパターンを形成した際、金属酸化物含有膜が光吸収性能を有するので高NA露光条件においても良好なパターン形成が可能であり、(2)金属酸化物含有膜の上層であるフォトレジスト膜、下層である有機膜との間で良好なドライエッチングマスクとして使用できる金属酸化物含有膜を形成でき、(3)保存安定性の良好な金属酸化物含有膜形成用組成物、この組成物から得られる金属酸化物含有膜、この金属酸化物含有膜が形成された基板、更にパターン形成方法を提供することにある。」

b 「【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明者らは、金属酸化物含有中間膜形成用組成物のリソグラフィー特性や安定性について鋭意検討したところ、加水分解性ケイ素化合物を加水分解縮合することにより得られる金属酸化物含有化合物に、下記(B)成分、(C)成分及び(D)成分を添加することにより、
(1)後述する光吸収性置換基を導入することによりドライ、液浸いずれの高NA露光条件下でも反射を抑えることができる金属酸化物含有膜が得られること、
(2)ドライエッチングマスクとして十分なエッチング選択比が得られる金属酸化物含有膜が得られること、
(3)リソグラフィー性能を長期間保持した性能変化のない金属酸化物含有膜形成用組成物が得られること
を見出し、本発明を完成するに至った。
【0021】
即ち、本発明は、(A)一般式(1)で表される1種又は2種以上の加水分解性ケイ素化合物と一般式(2)で表される1種又は2種以上の加水分解性金属化合物とを加水分解縮合することにより得られる金属酸化物含有化合物、
R^(1)_(m1)R^(2)_(m2)R^(3)_(m3)Si(OR)_((4-m1-m2-m3)) (1)
(式中、Rは炭素数1?6のアルキル基であり、R^(1)、R^(2)、R^(3)はそれぞれ水素原子、又は炭素数1?30の1価の有機基であり、m1、m2、m3は0又は1である。m1+m2+m3は0?3の整数である。)
U(OR^(4))_(m4)(OR^(5))_(m5) (2)
(式中、R^(4)、R^(5)は炭素数1?30の有機基であり、m4+m5はUの種類により決まる価数であり、m4、m5は0以上の整数、Uは周期律表のIII族、IV族、又はV族の元素で、ケイ素を除くものである。)
(B)少なくとも1種以上の下記一般式(3)又は(4)で表される化合物、
L_(a)H_(b)X (3)
(式中、Lはリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム又はセシウム、Xは水酸基、又は炭素数1?30の1価又は2価以上の有機酸基であり、aは1以上の整数、bは0又は1以上の整数で、a+bは水酸基又は有機酸基の価数である。)
M_(a)H_(b)A (4)
(式中、Mはスルホニウム、ヨードニウム又はアンモニウムであり、Aは上記X又は非求核性対向イオンであり、aは1以上の整数、bは0又は1以上の整数で、a+bは水酸基又は有機酸基の価数である。)
(C)炭素数が1?30の1価又は2価以上の有機酸、
(D)有機溶剤
を含むことを特徴とする熱硬化性金属酸化物含有膜形成用組成物を提供する(請求項1)。」

c 「【0088】
Uがチタンの場合、式(2)で示される化合物として、チタンメトキシド、チタンエトキシド、チタンプロポキシド、チタンブトキシド、チタンアミロキシド、チタンヘキシロキシド、チタンシクロペントキシド、チタンシクロヘキシロキシド、チタンアリロキシド、チタンフェノキシド、チタンメトキシエトキシド、チタンエトキシエトキシド、チタンジプロポキシビスエチルアセトアセテート、チタンジブトキシビスエチルアセトアセテート、チタンジプロポキシビス2、4ペンタンジオネート、チタンジブトキシビス2、4ペンタンジオネートなどをモノマーとして例示できる。」

d 「【0160】
本発明では光酸発生剤を使用してもよい。本発明で使用される光酸発生剤としては、
(A-I)下記一般式(P1a-1)、(P1a-2)又は(P1b)のオニウム塩、
(A-II)下記一般式(P2)のジアゾメタン誘導体、
(A-III)下記一般式(P3)のグリオキシム誘導体、
(A-IV)下記一般式(P4)のビススルホン誘導体、
(A-V)下記一般式(P5)のN-ヒドロキシイミド化合物のスルホン酸エステル、
(A-VI)β-ケトスルホン酸誘導体、
(A-VII)ジスルホン誘導体、
(A-VIII)ニトロベンジルスルホネート誘導体、
(A-IX)スルホン酸エステル誘導体
等が挙げられる。
・・(略)・・
【0178】
これらの中で、特にトリフルオロメタンスルホン酸トリフェニルスルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸(p-tert-ブトキシフェニル)ジフェニルスルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸トリス(p-tert-ブトキシフェニル)スルホニウム、p-トルエンスルホン酸トリフェニルスルホニウム、p-トルエンスルホン酸(p-tert-ブトキシフェニル)ジフェニルスルホニウム、p-トルエンスルホン酸トリス(p-tert-ブトキシフェニル)スルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸トリナフチルスルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸シクロヘキシルメチル(2-オキソシクロヘキシル)スルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸(2-ノルボニル)メチル(2-オキソシクロヘキシル)スルホニウム、1,2’-ナフチルカルボニルメチルテトラヒドロチオフェニウムトリフレート等のオニウム塩、ビス(ベンゼンスルホニル)ジアゾメタン、ビス(p-トルエンスルホニル)ジアゾメタン、ビス(シクロヘキシルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(n-ブチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(イソブチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(sec-ブチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(n-プロピルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(イソプロピルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(tert-ブチルスルホニル)ジアゾメタン等のジアゾメタン誘導体、ビス-O-(p-トルエンスルホニル)-α-ジメチルグリオキシム、ビス-O-(n-ブタンスルホニル)-α-ジメチルグリオキシム等のグリオキシム誘導体、ビスナフチルスルホニルメタン等のビススルホン誘導体、N-ヒドロキシスクシンイミドメタンスルホン酸エステル、N-ヒドロキシスクシンイミドトリフルオロメタンスルホン酸エステル、N-ヒドロキシスクシンイミド1-プロパンスルホン酸エステル、N-ヒドロキシスクシンイミド2-プロパンスルホン酸エステル、N-ヒドロキシスクシンイミド1-ペンタンスルホン酸エステル、N-ヒドロキシスクシンイミドp-トルエンスルホン酸エステル、N-ヒドロキシナフタルイミドメタンスルホン酸エステル、N-ヒドロキシナフタルイミドベンゼンスルホン酸エステル等のN-ヒドロキシイミド化合物のスルホン酸エステル誘導体が好ましく用いられる。」

e 「【実施例】
【0200】
以下、合成例及び実施例と比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの記載によって限定されるものではない。なお、下記例で%は質量%を示し、分子量測定はGPCによった。
・・(略)・・
【0202】
[合成例2]
プロピレングリコールメチルエーテル40g、メタンスルホン酸1g及び脱イオン水50gの混合物にフェニルトリメトキシシラン10g、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン20g、テトラブトキシチタン10g、2、4-ペンタンジオン20g及びプロピレングリコールメチルエーテル35gの混合物を添加し、そのまま、12時間、30℃に保持し、加水分解縮合させた後、副生アルコールを減圧で留去した。残った溶液にプロピレングリコールメチルエーテルを200ml加えて、更に減圧で濃縮して金属酸化物含有化合物2のプロピレングリコールメチルエーテル溶液120g(ポリマー濃度20%)を得た。このもののポリスチレン換算分子量を測定したところMw=8,000であった。
・・(略)・・
【0210】
[実施例、比較例]
上記合成例で得られた金属酸化物含有化合物1?6、ケイ素含有化合物7,8、酸、熱架橋促進剤、溶剤、添加剤を表1に示す割合で混合し、0.1μmのフッ素樹脂製のフィルターで濾過することによって、金属酸化物含有膜形成用組成物溶液をそれぞれ調製し、それぞれSol.1?18とした。
【0211】
【表1】

【0212】
TPSOAc:酢酸トリフェニルスルホニウム(光分解性熱架橋促進剤)
TPSOH:水酸化トリフェニルスルホニウム(光分解性熱架橋促進剤)
TPSCl:塩化トリフェニルスルホニウム(光分解性熱架橋促進剤)
TPSMA:マレイン酸モノ(トリフェニルスルホニウム)(光分解性熱架橋促進剤)
TPSN:硝酸トリフェニルスルホニウム(光分解性熱架橋促進剤)
TMAOAc:酢酸テトラメチルアンモニウム(非光分解性熱架橋促進剤)
TPSNf:トリフェニルスルホニウムノナフルオロブタンスルホネート(光酸発生剤)
【0213】
【化17】



f 引用例2の上記【表1】からは、Sol.8の金属酸化物含有膜形成用組成物溶液が、金属酸化物含有化合物2と、TPSOAc(酢酸トリフェニルスルホニウム)と、マレイン酸と、プロピレングリコールメチルエーテルと、水と、下記式で表される安定剤2とを含むことが見て取れる。


g 上記aないしfから、引用例2には次の発明が記載されているものと認められる。
「金属酸化物含有化合物2と、TPSOAc(酢酸トリフェニルスルホニウム)と、マレイン酸と、プロピレングリコールメチルエーテルと、水と、下記式で表される安定剤2とを含む金属酸化物含有膜形成用組成物溶液であって、上記金属酸化物含有化合物2のプロピレングリコールメチルエーテル溶液は、プロピレングリコールメチルエーテル40g、メタンスルホン酸1g及び脱イオン水50gの混合物にフェニルトリメトキシシラン10g、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン20g、テトラブトキシチタン10g、2、4-ペンタンジオン20g及びプロピレングリコールメチルエーテル35gの混合物を添加し、そのまま、12時間、30℃に保持し、加水分解縮合させた後、副生アルコールを減圧で留去し、残った溶液にプロピレングリコールメチルエーテルを200ml加えて、更に減圧で濃縮して得たものである、金属酸化物含有膜形成用組成物溶液。

」(以下「引用発明2」という。)

h また、上記aないしfから、引用例2には、
「一般式(1)で表される1種又は2種以上の加水分解性ケイ素化合物と一般式(2)で表される1種又は2種以上の加水分解性金属化合物とを加水分解縮合することにより得られる金属酸化物含有化合物、
R^(1)_(m1)R^(2)_(m2)R^(3)_(m3)Si(OR)_((4-m1-m2-m3)) (1)
(式中、Rは炭素数1?6のアルキル基であり、R^(1)、R^(2)、R^(3)はそれぞれ水素原子、又は炭素数1?30の1価の有機基であり、m1、m2、m3は0又は1である。m1+m2+m3は0?3の整数である。)
U(OR^(4))_(m4)(OR^(5))_(m5) (2)
(式中、R^(4)、R^(5)は炭素数1?30の有機基であり、m4+m5はUの種類により決まる価数であり、m4、m5は0以上の整数、Uは周期律表のIII族、IV族、又はV族の元素で、ケイ素を除くものである。)
を含む熱硬化性金属酸化物含有膜形成用組成物において、Uがチタンの場合、式(2)で示される化合物として、チタンブトキシド、チタンジブトキシビスエチルアセトアセテートなどをモノマーとして例示できる。」との技術的事項が記載されていると認められる。

イ 引用発明1を主引用発明とした場合の検討
(ア)対比
本願補正発明と引用発明1とを対比する。
a 引用発明1における「反射防止ハードマスク組成物」は、本願補正発明における「反射防止ハードマスク組成物」に相当する。

b 引用発明1における「シリコン-金属酸化物」は、本願の明細書の【0058】、【0059】、【0063】及び【0064】に記載された実施例1の反射防止ハードマスク組成物層の繰り返し構造ユニットと同一の原料を同一の組成比で用い、同一の方法により生じたものであるから、上記実施例1の反射防止ハードマスク組成物層の繰り返し構造ユニットと同一の「下記繰り返し構造単位からなるポリマー

」であると認められる。そして、本願の明細書の【0018】における「適切な発色団部分としては、それらに限定されないが、フェニル、クリセン、ピレン、フルオランテン、アントロン、ベンゾフェノン、チオキサントン及びアントラセンが挙げられる。」との記載、【0027】における「本発明に適した、Si-Oユニットに結合される透明部分、発色団部分及び架橋成分の例は、特許文献4、及び、優先日が2003年6月3日の特願2003-157808号に基づく優先権を主張した2004年5月28日出願の特願2004-158639号、及び2004年6月10日出願の特願2004-172222号、並びにそれらの中で引用された文献にさらに記載されており、それらの開示は引用により本明細書に組み入れられる。」との記載を参照し、本願の明細書において引用されている特願2004-172222号の公開特許公報である特開2005-352104号公報の【0023】、【0024】、【0029】?【0034】に、架橋性の1価の有機基を含有する珪素含有化合物の例として、上記繰り返し構造単位の左から1番目の繰り返し単位を構成する珪素含有化合物が記載されていることを考慮すると、引用発明1における「シリコン-金属酸化物」は、本願補正発明における「下記の群から選択される繰り返し構造単位からなるポリマー
【化1】

」と、「式中、xは少なくとも1であり、yは少なくとも1であり、Rは、1つ又は複数の発色団部分、透明部分、及び架橋成分から選択される有機官能基ユニットである」点で一致する。

c 上記a及びbから、本願補正発明と引用発明1とは、
「下記の群から選択される繰り返し構造単位からなるポリマーを含有する、反射防止ハードマスク組成物。
【化1】

(式中、xは少なくとも1であり、yは少なくとも1であり、Rは、1つ又は複数の発色団部分、透明部分、及び架橋成分から選択される有機官能基ユニットである。)」である点で一致し、次の点で相違している。

相違点1:
反射防止ハードマスク組成物が、本願補正発明においては、酸発生剤を含有するのに対し、引用発明1においては、酸発生剤を含有していない点。

相違点2:
上記「繰り返し構造単位」の式中における「無機ユニット」が、本願補正発明においては、「下記式を有し、
【化2】

式中、x及びyは前記の意味を有し、M_(d)はTiであり、R^(1)は同じ又は異なるものでC_(1)-C_(6)アルキル、C_(1)-C_(6)アルコキシ、フェニル及びフェノキシから選択される。」のに対し、引用発明1においては、「TiO_(2)」である点。

(イ)相違点の判断
上記相違点1及び相違点2について判断する。
a 相違点1について
引用例1の[0040]?[0043]には、反射防止組成物が、「ポリマーの架橋を触媒する酸発生剤を、おそらく含むであろう」ことが記載されているから、引用発明1において、反射防止ハードマスク組成物に酸発生剤を含有させることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。

b 相違点2について
引用例2には、上記ア(イ)hのとおり、「一般式(1)で表される1種又は2種以上の加水分解性ケイ素化合物と一般式(2)で表される1種又は2種以上の加水分解性金属化合物とを加水分解縮合することにより得られる金属酸化物含有化合物、
R^(1)_(m1)R^(2)_(m2)R^(3)_(m3)Si(OR)_((4-m1-m2-m3)) (1)
(式中、Rは炭素数1?6のアルキル基であり、R^(1)、R^(2)、R^(3)はそれぞれ水素原子、又は炭素数1?30の1価の有機基であり、m1、m2、m3は0又は1である。m1+m2+m3は0?3の整数である。)
U(OR^(4))_(m4)(OR^(5))_(m5) (2)
(式中、R^(4)、R^(5)は炭素数1?30の有機基であり、m4+m5はUの種類により決まる価数であり、m4、m5は0以上の整数、Uは周期律表のIII族、IV族、又はV族の元素で、ケイ素を除くものである。)
を含む熱硬化性金属酸化物含有膜形成用組成物において、Uがチタンの場合、式(2)で示される化合物として、チタンブトキシド、チタンジブトキシビスエチルアセトアセテートなどをモノマーとして例示できる。」との技術的事項が記載されており、上記式(2)で示される加水分解性金属化合物として「チタンブトキシド」を用いた場合には、金属酸化物含有化合物が含有する金属酸化物は「TiO_(2)」となり、上記式(2)で示される加水分解性金属化合物として「チタンジブトキシビスエチルアセトアセテート」を用いた場合には、金属酸化物含有化合物が含有する金属酸化物は、本願補正発明における「下記式中、xは少なくとも1であり、yは少なくとも1であり、M_(d)はTiであり、R^(1)は異なるものでC_(1)アルキルまたはC_(2)アルコキシである

」「無機ユニット」となる。
そして、引用例1の[0008]、[0009]、[0016]及び[0020]には、組成物に含まれる「下記式Iで表されるポリマー

式中、1≦x≦2、1≦y≦5、1≧0、m>0、n>0、Rは発色基、MはIIIB族からVIB族、ランタニド、IIIA属、シリコン以外のIVA族から選ばれた金属、Lは任意選択の配位子である。」において、-MO_(y)-ポリマーユニットが-LMO-であることができ、記載された多くの金属が安定なアセトアセテート-金属錯体を形成することが記載されているところ、引用発明1における「シリコン-金属酸化物」は、上記イ(ア)bのとおり、「下記繰り返し構造単位からなるポリマー

」であり、引用例1に記載された上記「式Iで表されるポリマー」に該当し、かつ、引用例2に記載された上記「一般式(1)で表される1種又は2種以上の加水分解性ケイ素化合物と一般式(2)で表される1種又は2種以上の加水分解性金属化合物とを加水分解縮合することにより得られる金属酸化物含有化合物」にも該当するものと認められるから、引用発明1において、シリコン-金属酸化物を合成するにあたり、引用例2に記載の上記技術的事項を適用し、「Ti(On-Bu)_(4)(チタンブトキシド)」に代えて「チタンジブトキシビスエチルアセトアセテート」を用いることにより上記相違点2に係る本願補正発明の構成とすることは、引用例1の[0008]、[0009]、[0016]及び[0020]の記載自体が示唆する事項であるから、当業者が容易に想到し得たことである。
また、本願の明細書においては、本願補正発明の反射防止ハードマスク組成物が含有するポリマーを実際には合成しておらず、本願補正発明の奏する効果が不明であるから、当業者が予測し得ない格別の作用効果を奏するものと認めることはできない。

(ウ)まとめ
以上のとおり、本願補正発明は、引用発明1及び引用例2の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

ウ 引用発明2を主引用発明とした場合の検討
(ア)対比
本願補正発明と引用発明2とを対比する。
a 引用例2の【0020】には、「本発明者らは、金属酸化物含有中間膜形成用組成物のリソグラフィー特性や安定性について鋭意検討したところ、加水分解性ケイ素化合物を加水分解縮合することにより得られる金属酸化物含有化合物に、下記(B)成分、(C)成分及び(D)成分を添加することにより、
(1)後述する光吸収性置換基を導入することによりドライ、液浸いずれの高NA露光条件下でも反射を抑えることができる金属酸化物含有膜が得られること、
(2)ドライエッチングマスクとして十分なエッチング選択比が得られる金属酸化物含有膜が得られること、
・・(略)・・
を見出し、本発明を完成するに至った。」との記載があり、引用発明2における「金属酸化物含有膜形成用組成物溶液」を用いて形成した金属酸化物含有膜は、反射防止ハードマスクとして機能するものと認められるから、引用発明2における「金属酸化物含有膜形成用組成物溶液」は、本願補正発明における「反射防止ハードマスク組成物」に相当する。

b 引用発明2における「金属酸化物含有化合物2のプロピレングリコールメチルエーテル溶液」は、「プロピレングリコールメチルエーテル40g、メタンスルホン酸1g及び脱イオン水50gの混合物にフェニルトリメトキシシラン10g、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン20g、テトラブトキシチタン10g、2、4-ペンタンジオン20g及びプロピレングリコールメチルエーテル35gの混合物を添加し、そのまま、12時間、30℃に保持し、加水分解縮合させた後、副生アルコールを減圧で留去し、残った溶液にプロピレングリコールメチルエーテルを200ml加えて、更に減圧で濃縮して得たものであ」り、「金属酸化物含有化合物2」は、本願の明細書の【0058】に記載された以下の構造式を有する化合物である「シラン前駆体B

」と同一の化合物である「フェニルトリメトキシシラン」と、「2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン」と、本願の明細書の【0058】に記載された「Ti(OC_(4)H_(9))_(4)」と同一の化合物である「テトラブトキシチタン」とを加水分解縮合して得られたものであると認められる。そして、本願の明細書の【0018】における「適切な発色団部分としては、それらに限定されないが、フェニル、クリセン、ピレン、フルオランテン、アントロン、ベンゾフェノン、チオキサントン及びアントラセンが挙げられる。」との記載、【0027】における「本発明に適した、Si-Oユニットに結合される透明部分、発色団部分及び架橋成分の例は、特許文献4、及び、優先日が2003年6月3日の特願2003-157808号に基づく優先権を主張した2004年5月28日出願の特願2004-158639号、及び2004年6月10日出願の特願2004-172222号、並びにそれらの中で引用された文献にさらに記載されており、それらの開示は引用により本明細書に組み入れられる。」との記載を参照し、本願の明細書において引用されている特願2004-172222号の公開特許公報である特開2005-352104号公報の【0023】、【0024】、【0029】?【0034】に、架橋性の1価の有機基を含有する珪素含有化合物の例として、「2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン」が記載されていることを考慮すると、引用発明2における「金属酸化物含有化合物2」は、本願補正発明における「下記の群から選択される繰り返し構造単位からなるポリマー
【化1】

」と、「式中、xは少なくとも1であり、yは少なくとも1であり、Rは、1つ又は複数の発色団部分、透明部分、及び架橋成分から選択される有機官能基ユニットである」点で一致する。

c 上記a及びbから、本願補正発明と引用発明2とは、
「下記の群から選択される繰り返し構造単位からなるポリマーを含有する、反射防止ハードマスク組成物。
【化1】

(式中、xは少なくとも1であり、yは少なくとも1であり、Rは、1つ又は複数の発色団部分、透明部分、及び架橋成分から選択される有機官能基ユニットである。)」である点で一致し、次の点で相違している。

相違点1:
反射防止ハードマスク組成物が、本願補正発明においては、酸発生剤を含有するのに対し、引用発明2においては、酸発生剤を含有していない点。

相違点2:
上記「繰り返し構造単位」の式中における「無機ユニット」が、本願補正発明においては、「下記式を有し、
【化2】

式中、x及びyは前記の意味を有し、M_(d)はTiであり、R^(1)は同じ又は異なるものでC_(1)-C_(6)アルキル、C_(1)-C_(6)アルコキシ、フェニル及びフェノキシから選択される。」のに対し、引用発明2においては、そのような特定がなされていない点。

(イ)相違点の判断
上記相違点1及び相違点2について判断する。
a 相違点1について
引用例2の【0160】?【0178】には、「本発明では光酸発生剤を使用してもよい。」と記載されており、「光酸発生剤」が「酸発生剤」に含まれることは明らかであるから、引用発明2において、金属酸化物含有膜形成用組成物溶液に光酸発生剤を含有させることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。

b 相違点2について
上記ウ(ア)bのとおり、引用発明2における「金属酸化物含有化合物2」は、「フェニルトリメトキシシラン」と、「2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン」と、「テトラブトキシチタン」とを加水分解縮合して得られたものであると認められるところ、加水分解縮合する際には、上記「フェニルトリメトキシシラン」、「2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン」及び「テトラブトキシチタン」に加えて「2、4-ペンタンジオン」が添加されている。そして、国際公開第2013/125562号の[0020]?[0036]に、「2、4-ペンタンジオン」のようなジカルボニル化合物と「テトラブトキシチタン」のようなアルコキシチタン化合物とが反応してチタン錯体を形成し、2n+2個のアルコキシ基を有するアルコキシチタン化合物は、通常の反応条件では、アルコキシ基は、2n個までがジカルボニレートに置換される旨が記載されていることからも分かるように、引用発明2の「金属酸化物含有化合物2」において、「テトラブトキシチタン」と「2、4-ペンタンジオン」とは、「テトラブトキシチタン」の4個のブトキシ基のうち2個までが「2、4-ペンタンジオネート」に置換されて「チタン錯体」を形成するものと認められ、当該「チタン錯体」を「フェニルトリメトキシシラン」及び「2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン」とともに加水分解縮合して得た「金属酸化物含有化合物2」において、上記「チタン錯体」は、本願補正発明における「下記式中、xは少なくとも1であり、yは少なくとも1であり、M_(d)はTiであり、R^(1)は同じものでC_(1)アルキルである

」「無機ユニット」となる。
また、仮に引用発明2の「金属酸化物含有化合物2」において、「無機ユニット」が「下記式中、xは少なくとも1であり、yは少なくとも1であり、M_(d)はTiであり、R^(1)は同じものでC_(1)アルキルである

」ものでなかったと仮定しても、引用例2には、上記ア(イ)hのとおり、「一般式(1)で表される1種又は2種以上の加水分解性ケイ素化合物と一般式(2)で表される1種又は2種以上の加水分解性金属化合物とを加水分解縮合することにより得られる金属酸化物含有化合物、
R^(1)_(m1)R^(2)_(m2)R^(3)_(m3)Si(OR)_((4-m1-m2-m3)) (1)
(式中、Rは炭素数1?6のアルキル基であり、R^(1)、R^(2)、R^(3)はそれぞれ水素原子、又は炭素数1?30の1価の有機基であり、m1、m2、m3は0又は1である。m1+m2+m3は0?3の整数である。)
U(OR^(4))_(m4)(OR^(5))_(m5) (2)
(式中、R^(4)、R^(5)は炭素数1?30の有機基であり、m4+m5はUの種類により決まる価数であり、m4、m5は0以上の整数、Uは周期律表のIII族、IV族、又はV族の元素で、ケイ素を除くものである。)
を含む熱硬化性金属酸化物含有膜形成用組成物において、Uがチタンの場合、式(2)で示される化合物として、チタンブトキシド、チタンジブトキシビスエチルアセトアセテートなどをモノマーとして例示できる。」との技術的事項が記載されており、上記式(2)で示される加水分解性金属化合物として「チタンジブトキシビスエチルアセトアセテート」を用いた場合には、金属酸化物含有化合物が含有する金属酸化物は、本願補正発明における「下記式中、xは少なくとも1であり、yは少なくとも1であり、M_(d)はTiであり、R^(1)は異なるものでC_(1)アルキルまたはC_(2)アルコキシである」「無機ユニット」となるものと認められるから、引用発明2において、「金属酸化物含有化合物2」を合成するにあたり、引用例2に記載の上記技術的事項を適用し、「テトラブトキシチタン」に代えて「チタンジブトキシビスエチルアセトアセテート」を用いることにより上記相違点2に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
したがって、上記相違点2は、実質的な相違点でないか、引用発明2及び引用例2の記載事項に基づいて当業者が容易に想到し得たものである。
また、本願の明細書においては、本願補正発明の反射防止ハードマスク組成物が含有するポリマーを実際には合成しておらず、本願補正発明の奏する効果が不明であるから、当業者が予測し得ない格別の作用効果を奏するものと認めることはできない。

(ウ)まとめ
以上のとおり、本願補正発明は、引用発明2及び引用例2の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4 むすび
したがって、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
上記「第2」での本件補正についての補正の却下の決定の結論のとおり、本件補正は却下されたので、本願の請求項に係る発明は、本件補正前の請求項1ないし17に記載されたとおりのものであり、そのうち、請求項2に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記第2の1(1)に記載のとおりのものである。

2 引用例の記載事項
引用例の記載事項については、上記第2の3(3)アのとおりである。

3 判断
上記第2の2(1)で検討したように、本願補正発明は、本願発明の発明特定事項を限定したものに相当する。
そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、これをより限定したものである本願補正発明が、上記第2の3において検討したとおり、引用発明1及び引用例2の記載事項に基づいて、あるいは、引用発明2及び引用例2の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものである。
また、本願発明は、その下位概念として、本願補正発明を含むところ、本願補正発明は、上記第2の3において検討したとおり、発明の詳細な説明に記載したものであるということができないから、本願発明も、同様の理由により、発明の詳細な説明に記載したものであるということができない。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、発明の詳細な説明に記載されたものとすることができないから、特許法36条6項1号の規定により、特許を受けることができず、また、引用発明1及び引用例2の記載事項に基づいて、あるいは、引用発明2及び引用例2の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-02-29 
結審通知日 2016-03-01 
審決日 2016-03-14 
出願番号 特願2012-554984(P2012-554984)
審決分類 P 1 8・ 537- Z (G03F)
P 1 8・ 121- Z (G03F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 石附 直弥清水 裕勝  
特許庁審判長 藤原 敬士
特許庁審判官 本田 博幸
樋口 信宏
発明の名称 反射防止ハードマスク組成物及びそれを用いたパターン化材料を調製する方法。  
復代理人 間山 進也  
代理人 上野 剛史  
代理人 太佐 種一  

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