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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G08B
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G08B
管理番号 1318005
審判番号 不服2015-21093  
総通号数 201 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-09-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-11-27 
確定日 2016-09-02 
事件の表示 特願2014-233274「緊急速報配信システム」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 7月 2日出願公開、特開2015-122059、請求項の数(12)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成26年11月18日(優先権主張 平成25年11月20日)の出願であって、平成27年4月10日付けで拒絶理由が通知され、同年6月15日に手続補正がされ、同年8月28日付け(発送日:同年9月1日)で拒絶査定(以下、「原査定」という。)され、これに対し、同年11月27日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、その請求と同時に手続補正がされ、平成28年6月7日付けで当審において拒絶理由が通知され、同年6月28日及び同年7月20日に手続補正がされたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1ないし12に係る発明は、平成28年7月20日に手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし12に記載された事項により特定されるものと認められるところ、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は以下のとおりである。

「【請求項1】
少なくとも1つの移動式無線機と、上記移動式無線機に予め定められた災害緊急速報の報知内容に対応するトリガ信号を出力するサーバとからなる緊急速報配信システムであって、
上記サーバは、予め定められた災害緊急速報を受信する災害緊急速報受信部と、上記災害緊急速報受信部で受信した災害緊急速報に対応する上記トリガ信号に、災害緊急速報の送信元情報を付加する制御部と、上記送信元情報が付加されたトリガ信号を上記移動式無線機へ送信するトリガ信号送信部とを有し、
上記移動式無線機は、上記トリガ信号送信部から送信された上記トリガ信号を受信するトリガ信号受信部と、上記トリガ信号の送信元情報を解析するトリガ信号解析部と、災害緊急速報を通知するためのアプリケーションデータを記憶する記憶部と、上記トリガ信号に対応する上記アプリケーションデータに基づいて災害緊急速報を報知する報知部と、上記移動式無線機の現在地情報を取得する測位信号受信部と、上記測位信号受信部が取得した現在地情報を上記サーバに送信する現在地情報送信部とを有しており、
上記サーバは、予め定められた範囲毎に区分けされた地図データと、上記移動式無線機の上記現在地情報に基づいて上記移動式無線機が区分けされた地図データの範囲内に存在するかを検出する送信対象検出部とを更に有し、上記トリガ信号送信部は、検出された上記移動式無線機に対して区分けされた地図データの範囲内に応じた上記トリガ信号を送信し、
上記移動式無線機の上記トリガ信号解析部は、上記トリガ信号に含まれる上記送信元情報の認証が得られた場合に、上記記憶部のアプリケーションデータに基づいて災害緊急速報を再生するように構成されていることを特徴とする緊急速報配信システム。」

第3 原査定の理由について
1.原査定の理由の概要
本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)
刊行物1(特開2007-047936号公報)
刊行物2(特開2011-120009号公報)
・備考
刊行物1には、地震情報配信サーバは、地震監視サーバから緊急地震速報を受信し、緊急地震速報に対応するショートメッセージとして移動通信端末に通知する通信インタフェースを有し、移動通信端末は、通知されたショートメッセージを受信し、鳴音や振動とともに緊急地震速報を表示する地震情報配信システムの発明が開示されている(特に段落【0026】ないし【0067】を参照されたい)。
刊行物2には、親局から子局に緊急通報情報を送信する無線通信システムにおいて、親局は受信した緊急地震速報に対応する番号を子局に送信し、子局は受信した番号に応じて緊急通報情報の表示や音声出力を行うことが開示されている(特に段落【0009】ないし【0018】を参照されたい)。
引用文献1に開示された発明において、引用文献2に開示された発明を適用し、緊急地震速報に対応する番号を移動通信端末に通知し、移動通信端末は受信した番号に応じて緊急地震速報を表示することは、当業者が容易に想到し得るものである。

2.原査定の理由の判断
(1)刊行物
ア 刊行物1及び引用発明
刊行物1には、段落【0026】ないし【0067】及び【図1】ないし【図8】の記載を総合して、本願発明に則って整理すると、「地震情報配信システム」に関して、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

「少なくとも1つの移動通信端末MS1?MSkと、上記移動通信端末MS1?MSkに予め定められた災害地震情報の第1報に対応するショートメッセージを出力する地震情報配信サーバSSV1とからなる地震情報配信システムであって、
上記地震情報配信サーバSSV1は、予め定められた災害地震情報を受信する通信インターフェースと、上記ショートメッセージを上記移動通信端末MS1?MSkへ送信する通信インターフェースとを有し、
上記移動通信端末MS1?MSkは、上記通信インターフェースから送信された上記ショートメッセージを受信する受信回路23と、災害地震情報を通知するためのアプリケーションデータを記憶する記憶部と、上記ショートメッセージに対応する上記アプリケーションデータに基づいて災害地震情報を表示する表示部35と、上記移動通信端末MS1?MSkの現在位置を算出するGPS受信機39と、上記GPS受信機39が算出した現在位置を上記地震情報配信サーバSSV1に返送する送信回路25とを有しており、
上記地震情報配信サーバSSV1は、予め定められた範囲毎に区分けされたエリアマップと、上記移動通信端末MS1?MSkの上記現在位置に基づいて上記移動通信端末MS1?MSkが区分けされたエリアマップの配信対象エリア内に存在するかを検出するステップ5bを処理するCPU11とを更に有し、上記通信インターフェースは、検出された上記移動通信端末MS1?MSkに対して区分けされたエリアマップの配信対象エリア内に応じた上記ショートメッセージを送信する地震情報配信システム。」

イ 刊行物2
刊行物2には、次の事項が記載されている。
「【0012】
子局制御部22と記憶部23について、図2を用いて説明する。図2は、本発明の実施例に係る子局の構成例を示す図である。
子局制御部22は、親局10から受信した緊急通報情報を解析する緊急通報情報解析部26と、該解析した緊急通報情報に基づいて音声テキストを合成する音声テキスト合成部27と、合成した音声テキストを音声信号に変換する音声変換部28とを備えている。子局制御部22は、ハードウエア構成としては、CPUと子局制御部22の動作プログラム等を格納するメモリを備えており、CPUは、この動作プログラムに従って動作する。
【0013】
緊急通報情報解析部26は、具体的には、親局10から受信した制御信号であるアイドル信号(PCH)に含まれている緊急通報情報としての緊急フラグと情報番号を読み取り解析するもので、緊急フラグが「1(緊急)」である場合は、アイドル信号(PCH)が緊急通報情報を含むものと判断し、情報番号を取得する。音声テキスト合成部27は、該取得した情報番号に基づき、後述する音声パターンテーブル32から、情報番号に対応する音声番号の組合せを取得し、更に、音声テキスト格納部31の内容に基づき、各音声番号に対応する音声テキストを取得し、音声パターンテーブル32の内容の順に、各音声番号に対応する音声テキストを並べ、合成する。」

(2)対比
本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「移動通信端末MS1?MSk」は、その技術的意義及び機能からみて本願発明の「移動式無線機」に相当し、以下同様に、「災害地震情報の第1報」は「災害緊急速報の報知内容」に、「ショートメッセージ」は「トリガ信号」に、「地震情報配信サーバSSV1」は「サーバ」に、「通信インターフェース」は「災害緊急速報受信部」及び「トリガ信号送信部」に、「受信回路23」は「トリガ信号受信部」に、「表示」は「報知」に、「表示部35」は「報知部」に、「現在位置を算出する」ことは「現在地情報を取得する」ことに、「GPS受信機39」は「測位信号受信部」に、「現在位置を上記地震情報配信サーバSSV1に返送する」ことは「現在地情報を上記サーバに送信する」ことに、「送信回路25」は「現在地情報送信部」に、「エリアマップ」は「地図データ」に、「配信対象エリア」は「範囲」に、「ステップ5bを処理するCPU11」は「送信対象検出部」に、それぞれ相当する。

したがって、本願発明と引用発明とは、次の一致点で一致し、相違点で相違する。

[一致点]
「少なくとも1つの移動式無線機と、上記移動式無線機に予め定められた災害緊急速報の報知内容に対応するトリガ信号を出力するサーバとからなる緊急速報配信システムであって、
上記サーバは、予め定められた災害緊急速報を受信する災害緊急速報受信部と、トリガ信号を上記移動式無線機へ送信するトリガ信号送信部とを有し、
上記移動式無線機は、上記トリガ信号送信部から送信された上記トリガ信号を受信するトリガ信号受信部と、災害緊急速報を通知するためのアプリケーションデータを記憶する記憶部と、上記トリガ信号に対応する上記アプリケーションデータに基づいて災害緊急速報を報知する報知部と、上記移動式無線機の現在地情報を取得する測位信号受信部と、上記測位信号受信部が取得した現在地情報を上記サーバに送信する現在地情報送信部とを有しており、
上記サーバは、予め定められた範囲毎に区分けされた地図データと、上記移動式無線機の上記現在地情報に基づいて上記移動式無線機が区分けされた地図データの範囲内に存在するかを検出する送信対象検出部とを更に有し、上記トリガ信号送信部は、検出された上記移動式無線機に対して区分けされた地図データの範囲内に応じた上記トリガ信号を送信する緊急速報配信システム。」

[相違点]
本願発明は「上記災害緊急速報受信部で受信した災害緊急速報に対応する上記トリガ信号に、災害緊急速報の送信元情報を付加する制御部」を有し、トリガ信号は「上記送信元情報が付加されたトリガ信号」であり、
移動通信端末は「上記トリガ信号の送信元情報を解析するトリガ信号解析部」を有し、
「上記移動通信端末の上記トリガ信号解析部は、上記トリガ信号に含まれる上記送信元情報の認証が得られた場合に、上記記憶部のアプリケーションデータに基づいて災害緊急速報を再生する」のに対し、引用発明は、ショートメッセージに送信元情報を付加するものでない点。

(3)判断
以下、相違点について検討する。
刊行物1には、「地震監視サーバDSV」や「地震計D1?Dn」といった「災害地震情報」の送信元情報を、ショートメッセージに付加する構成について示唆する記載はない。
そして、刊行物2にも、「災害緊急速報」の送信元情報を「緊急通報情報」に付加する、あるいは解析する構成について示唆する記載はない。
さらに、ショートメッセージのような限られたデータ量の中に、「災害緊急速報の送信元情報を付加する」ことが、通常行われていることとも認められない。
したがって、引用発明及び刊行物2に記載された事項から、上記相違点の本願発明の構成とすることは、当業者といえども容易に想到し得たとはいえない。

これに対して、本願発明は、上記相違点の本願発明の構成によって、「認証が得られなかった場合にはアプリケーションデータ格納部を参照しないため、発信元の認証が得られないトリガ信号、例えば誤報を目的としたような非正規のトリガ信号によって緊急災害速報が報知されずにすむ。」(明細書段落【0024】)という格別顕著な効果を奏するのであるから、本願発明は、引用発明及び刊行物2に記載された事項から、当業者が容易になし得たものではない。
そして、請求項2ないし12に係る発明は、本願発明をさらに限定した発明であるから、本願発明と同様に、引用発明及び刊行物2に記載された事項から、当業者が容易になし得たとものではない。

第4 当審拒絶理由について
1 当審拒絶理由の概要
(1)理由1 この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

明細書の発明の詳細な説明の記載(段落【0049】-【0054】)によれば、移動式無線機に対して、サーバが適切なトリガー信号を送信するためには、サーバが移動式無線機の位置を把握している必要がある。しかしながら、請求項1には、サーバが移動式無線機の位置を把握するための事項が特定されていない。
よって、請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでない。

(2)理由2 この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

ア 請求項1に「上記災害緊急速報受信部で受信した災害緊急速報に対応する上記トリガ信号に送信元情報を付加する制御部と、」との記載があるが、「送信元」が何なのか、不明瞭である。

イ 請求項1及び2に係る発明は「緊急速報配信システム」であるため、請求項14に記載された「請求項1又は2記載のサーバ」が何を指すのか不明瞭である。

2 当審拒絶理由の判断
(1)平成28年7月20日の手続補正により、本願の請求項1は上記第2のとおりの記載となり、請求項1は発明の詳細な説明に記載したものとなった。
よって、当審拒絶理由の理由1は解消した。
(2)平成28年7月20日の手続補正により、本願の請求項1の「送信元」についての記載が、「上記災害緊急速報受信部で受信した災害緊急速報に対応する上記トリガ信号に、災害緊急速報の送信元情報を付加する」と改められ、明確となり、請求項14は削除された。
よって、当審拒絶理由の理由2は解消した。

第5 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2016-08-23 
出願番号 特願2014-233274(P2014-233274)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (G08B)
P 1 8・ 121- WY (G08B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 永田 義仁  
特許庁審判長 森川 元嗣
特許庁審判官 内田 博之
小関 峰夫
発明の名称 緊急速報配信システム  
代理人 木村 高明  

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