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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G03B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G03B
管理番号 1318584
審判番号 不服2015-21003  
総通号数 202 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-10-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-11-26 
確定日 2016-08-22 
事件の表示 特願2011-155749「透過型スクリーン、これを備えた背面投射型表示装置、および透過型スクリーンの製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 1月31日出願公開、特開2013- 20210〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続きの経緯
本願は、平成23年7月14日の出願であって、平成27年2月19日付けで拒絶理由が通知され、同年4月24日付けで意見書が提出されるとともに同日付けで手続補正がなされたが、同年9月14日付けで拒絶査定がなされた(謄本送達日 同年同月25日)。本件は、これに対して同年11月26日に該拒絶査定を不服として審判請求がなされ、同時に手続補正がなされたものである。


第2 平成27年11月26日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成27年11月26日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1 平成27年11月26日付け手続補正(以下「本件補正」という。)は、本件補正前の平成27年4月24日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1及び2である
「【請求項1】
映像光入射側から投射された映像光を映像光出射側に透過させる透過型スクリーンであって、
フレネルレンズ部を有するフレネルレンズシートと、
前記フレネルレンズシートの映像光出射側に配置された光制御シートであって、前記光制御シートの映像光出射面の一部を構成する厚さ方向の断面形状が略台形の複数の単位光透過部と、前記単位光透過部と交互に配置され、前記光制御シートの映像光出射面の一部を構成する厚さ方向の断面形状がV字状又は略台形の複数の単位光吸収部とを有する光制御シートと、前記光制御シートの映像光出射側に配置され、かつ光拡散粒子を含む光拡散層と、前記光拡散層の映像光出射側に配置された着色層とを備える積層体とを備え、
前記フレネルレンズシートおよび積層体が曲面をなすように曲がっていることを特徴とする、透過型スクリーン。
【請求項2】
前記着色層の厚みが、10μm以上200μm以下である、請求項1に記載の透過型スクリーン。」を
「【請求項1】
映像光入射側から投射された映像光を映像光出射側に透過させる透過型スクリーンであって、
フレネルレンズ部を有するフレネルレンズシートと、
前記フレネルレンズシートの映像光出射側に配置された光制御シートであって、前記光制御シートの映像光出射面の一部を構成する厚さ方向の断面形状が台形の複数の単位光透過部と、前記単位光透過部と交互に配置され、前記光制御シートの映像光出射面の一部を構成する厚さ方向の断面形状がV字状の溝又は台形状の溝に形成された複数の単位光吸収部とを有する光制御シートと、前記光制御シートの映像光出射側に配置され、かつ光拡散粒子を含む光拡散層と、前記光拡散層の映像光出射側に配置された着色層とを備える積層体とを備え、
前記フレネルレンズシートおよび積層体が三次元曲面をなすように曲がっており、
前記着色層の厚みが、10μm以上200μm以下であり、
前記光拡散層の厚みが、0.05?2.0mmであることを特徴とする、透過型スクリーン。」とする補正を含むものである(下線は請求人が付与した。)。

2 本件補正の目的
本件補正は、補正前の請求項1を削除して旧請求項2を新請求項1とし、さらに、「曲面」を「三次元曲面」とし、「光拡散層」を「前記光拡散層の厚みが、0.05?2.0mmである」ことに限定することを含むものであるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

3 独立特許要件
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)を、進歩性要件(特許法第29条第2項)について以下に検討する。

(1)本願補正発明の認定
本願補正発明は、上記1において、補正後のものとして記載したとおりのものと認める。

(2)刊行物の記載事項及び引用発明の認定
原査定における拒絶理由通知に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である、特開2006-235036号公報(以下「引用文献」という。)には、以下の記載がある(下線は当審で付与した。)。

ア「【0021】
図2に示す本発明の第1の実施例である透過型スクリーン20は、入射光の方向を整えて出射光とするフレネルレンズ31(フレネルレンズ部)を有するフレネルレンズシート30と、このフレネルレンズシート30からの出射光をスクリーンの左右方向(図2の上下方向)および上下方向(図2の紙面垂直方向)に拡散させる拡散レンズ部44を有する光学部材である光拡散レンズアレイシート40(とくに言及しない限り、ここではレンチキュラーレンズシートを例示する。以下、同じ)とを備えている。
これらフレネルレンズシート30、光拡散レンズアレイシート40は、透過型スクリーン20の背面側(図2の左側)から前面側(図2の右側)にかけて順次配置されているとともに、互いに略平行に配置されている。
ここで、フレネルレンズ31と拡散レンズ部44とは互いに離間されているように描かれているが、あまり離間させると画像にボケが生じるので、なるべく近接させることが好ましい。一部が当接して互いに支持し合うことができる構成とすることがより好ましい。
【0022】
フレネルレンズシート30は、図2に示すように、映像光の入射側から、透明基板32、フレネルレンズ部31が順次配置され、フレネルレンズ31と透明基板32が接合面37において接合されているものである。そして、フレネルレンズ31が光拡散レンズアレイシート40と対向されている。
【0023】
透明基板32は、フレネルレンズ部31を支持するための略長方形状の光透過性の平板である。そして、一方の面がフレネルレンズ部31を接合するための平滑な接合面37からなり、他方の面が拡散層33を接合するための平坦な接合面38からなる。
透明基板32の材質としては、透明な板部材であればどのような材質でもよいが、例えば、アクリル-スチレン共重合樹脂などを好適に採用することができる。
【0024】
フレネルレンズ部31は、光軸方向には、光軸を含む断面が光軸に対称な略鋸歯状の形状を形成する複数のレンズ部を有する。各レンズ部31Aは、光軸方向から見ると、図示しないが、光軸を中心とする同心円状或いは水平方向に直線状に配置され、溝底Vで区切られた輪帯が形成されている。
【0025】
フレネルレンズ部31の材質は、光透過性の母材樹脂(レンズ母材)は、光透過性を有する樹脂であればどのような樹脂でもよいが、例えば紫外線(UV)硬化樹脂を採用することができる。
【0026】
フレネルレンズ部31は、透過光を屈折させるフレネル面31aと、光軸P1に所定の角度を有し、隣接するフレネル面に接続するライズ面31bとを備える。
フレネル面31aは、フレネルレンズ部31の設計条件に応じて、例えば球面や非球面などレンズ面の一部を、光軸P1を中心とする略円筒面状のライズ面31bにより切り取った形状とされる。
本実施例では、フレネルレンズ部31が、リアプロジェクションテレビ10に用いる投影レンズの場合、光軸P1上の焦点位置から投射された映像光がその投射角度に応じた位置においてフレネルレンズシート30に入射したときフレネル面31aで屈折されることにより光軸P1に略平行な光として出射される構成とされる。すなわち、球面または非球面の凸レンズの曲面を適宜数の輪帯に分割した形状とされる。
【0027】
続いて、光拡散レンズアレイシート40について説明する。
光拡散レンズアレイシート40は、図2に示すように、フレネルレンズシート30側から、拡散レンズ部44、シート基板42、遮光部45、透明基材47、光拡散部52が略この順に層状に配置された平板状部材である。光軸方向から見た形状はフレネルレンズシート30と同様な略長方形状とされている。
【0028】
拡散レンズ部44は、略半円柱状をなす複数のシリンドリカルレンズ43が互いに略平行に配列され、上下方向(鉛直方向、図示の紙面垂直方向)に延されたレンチキュラーレンズシートの入射面を構成している。
このような構成により、フレネルレンズシート30から出射される映像光をスクリーンの左右方向(水平方向、図示の上下方向)に集光・拡散してストライプ状の光としてから拡散層52に向けて出射できるようになっている。
【0029】
遮光部(BS=ブラック・ストライプ)45は、複数のシリンドリカルレンズ43が設けられたシート基板42の裏面側に、各シリンドリカルレンズ43の集光位置の間に形成されたストライプ状の非集光部を遮光するためにストライプ状に設けられた光吸収帯である。そして、各遮光部45の間には、シリンドリカルレンズ43によって集光された映像光が通過する開口部46が形成され、拡散層52に向けて拡散光として出射されるようになっている。
【0030】
透明基材47は、開口部46から出射された拡散光を所定距離だけ離して光拡散部52に入射するためのものである。
光拡散部52は、基材中に光拡散性微粒子が分散配置されることによって構成されている。そして、光拡散部52に映像光が入射すると、入射した映像光をスクリーンの上下方向(鉛直方向)へ拡散できるようになっている。
【0031】
光拡散部52は、透過面46を透過した拡散光を左右方向および上下方向に拡散させるための、例えば光拡散性を有する板状またはシート状の光拡散部材を採用することができる。例えば、内部に光拡散材が分散された拡散フィルムなどにより構成することができる。そして、透明基材47の表面に、例えば光透過性の粘着層などを介して装着される。
また光拡散部52は、図示しないが、樹脂に拡散材を分散し剥離シート上に設けた転写シートからの転写や樹脂に拡散材を分散した塗工液の塗工による形成方法も採用することができる。そして、形成される光拡散部は、Haze50?90%程度である。その他、その形成位置においてHaze値を適宜調整することにより本発明の透過型スクリーンの何れかに設けられる各拡散層に適用することができる。

イ「【0032】
次に、図3に示す本発明の第2の実施例である透過型スクリーン22は、図2に示す第1の実施例である透過型スクリーン20とほぼ同一構成であり、フレネルレンズシート30の映像光の入射側から、光拡散部33、透明基板32、フレネルレンズ31が順次配置され、拡散層33とフレネルレンズ部31とが、透明基板32の接合面38、37において接合されているものである。そして、フレネルレンズ部31が光拡散レンズアレイシート40と対向されている。
・・・中略・・・
【0039】
また、フレネルレンズシート301と光拡散レンズアレイシート40としてレンチキュラーレンズシートの光拡散部33、52を樹脂に拡散材を分散し剥離シート上に設けた転写シートから転写により透明基材47に形成する場合では、光拡散部33、57はそれぞれレンズ基材32、透明基材47により離間された位置に配置されるため、シンチレーションの低減には効果があるが、解像度の点で問題がある。そこで、フレネルレンズシート301とレンチキュラーレンズシート40に積層されるレンズ基材32、透明基材47の厚さをそれぞれ1.85mm、1.50mm、1.20mmとし、フレネルレンズシート301への転写による光拡散部33の厚さを31μm、レンチキュラーレンズシートへの転写による光拡散部52の厚さを57μmとしたときのシンチレーションを目視(良好○、限度内△、不良×の3段階)および輝度のバラつき(白色画面表示面からシンチレーションをカメラで撮影した画面から算出し、標準偏差を求めた結果から良好○、限度内△、不良×の3段階)、解像度を目視(良好○、限度内△、不良×の3段階)により、評価した。その結果を図5(1)?(3)に示し、(1)?(3)の結果に基づく総合評価を(4)に示す。
これによれば、シンチレーションは、(1)目視と(2)輝度のバラつきでは、透明基材32、47により離間された距離が大きい、すなわち透明基材が厚いほど評価は良くなっている反面、(3)解像度では、透明基材32、47により離間された距離が小さい、
すなわち透明基材が薄いほど評価は良くなっている。これらシンチレーションと解像度が比較的良好以上と言える領域を上げると(4)に示すようにフレネルレンズシートよりもレンチキュラーレンズシートの厚さが小さいほうが良いことが言える。」

ウ「【0045】
図9に示す本発明の第7の実施例に係る透過型スクリーン26について説明する。
光拡散レンズアレイシート40の観察側最外層に傷を防止する保護層を兼ねるハードコート層、外光の写り込みを防止するための反射防止層、静電気による塵芥の付着を防止するための帯電防止層、コントラストを向上させる着色層等の光学機能層55を何れか一つ以上を同一層に、または多層に形成することができる。
これによれば、本発明の透過型スクリーンの最外層に各種光学機能層を設けることにより、シンチレーションの低減と解像度・明るさの低下を防止とする効果に影響を与えることなく、光学機能層の効果を付加することができる。」

エ「【符号の説明】
【0051】
10、60 リアプロジェクションテレビ(投射型ディスプレイ)
12 プロジェクタ
20、21、22、23、24、25、26、27 透過型スクリーン
30、301、302 フレネルレンズシート
31 フレネルレンズ(フレネルレンズ部)
31a フレネル面
31b ライズ面
32、42 レンズ部材
32A マット面(光拡散部)
33、52 拡散層(光拡散部)
40 光拡散レンズアレイシート
400、401、402 レンチキュラーレンズシート、レンズアレイシート
43 シリンドリカルレンズ
44 拡散レンズ部
45 遮光部
46 開口部
47 透明基材
48 光透過性基材
P1 光軸
P2 中心 」

オ 図2


カ 図3


キ 図9


ク 上記ア、オの第1の実施例、上記イ、カの第2の実施例、上記ウ、キの第7の実施例において、「透過型スクリーン20、22、26」、「フレネルレンズ31(フレネルレンズ部)」、「フレネルレンズシート30」、「光拡散レンズアレイシート40」、「拡散レンズ部44」、「シート基板42」、「遮光部45」、「開口部46」、「透明基材47」、「光拡散部52」は、共通の部材であることは明らかである。

ケ 上記アの「開口部46」は、「各遮光部45の間には、シリンドリカルレンズ43によって集光された映像光が通過する」ものであるから、「遮光部45」と「開口部46」とは同層にあることは、明らかである。

上記アないしケより、引用文献には以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「透過型スクリーン26は、入射光の方向を整えて出射光とするフレネルレンズ31(フレネルレンズ部)を有するフレネルレンズシート30と、このフレネルレンズシート30からの出射光をスクリーンの左右方向(図2の上下方向)および上下方向(図2の紙面垂直方向)に拡散させる拡散レンズ部44を有する光学部材である光拡散レンズアレイシート40とを備え、
前記光拡散レンズアレイシート40は、前記フレネルレンズシート30側から、拡散レンズ部44、シート基板42、遮光部45及び開口部46を有する層、透明基材47、光拡散部52、コントラストを向上させる着色層がこの順に層状に配置され、
前記遮光部45は、複数のシリンドリカルレンズ43が設けられたシート基板42の裏面側に、各シリンドリカルレンズ43の集光位置の間に形成されたストライプ状の非集光部を遮光するためにストライプ状に設けられた光吸収帯であり、各前記遮光部45の間には、シリンドリカルレンズ43によって集光された映像光が通過する前記開口部46が形成され、
前記光拡散部52は、基材中に光拡散性微粒子が分散配置されることによって構成され、
前記光拡散部52の厚さを57μmとする、透過型スクリーン20。」

(3)対比・判断
ア 本願補正発明と引用発明を対比する。
(ア)引用発明の「透過型スクリーン26」、「フレネルレンズ31(フレネルレンズ部)」、「フレネルレンズシート30」、「光拡散性微粒子」、「光拡散部52」、「コントラストを向上させる着色層」及び「光拡散レンズアレイシート40」は、本願補正発明の「透過型スクリーン」、「フレネルレンズ部」、「フレネルレンズシート」、「光拡散粒子」、「光拡散層」、「着色層」及び「積層体」に、それぞれ相当する。

(イ)引用発明の「入射光」が、本願補正発明の「映像光入射側から投射された映像光」であることは、明らかである。また、引用発明の「透過型スクリーン20」が、映像光を映像光出射側に透過させるものであることは、明らかである。
すると、引用発明の「透過型スクリーン26は、入射光の方向を整えて出射光とするフレネルレンズ31(フレネルレンズ部)を有するフレネルレンズシート30と、このフレネルレンズシート30からの出射光をスクリーンの左右方向(図2の上下方向)および上下方向(図2の紙面垂直方向)に拡散させる拡散レンズ部44を有する光学部材である光拡散レンズアレイシート40とを備え」ることは、本願補正発明の「映像光入射側から投射された映像光を映像光出射側に透過させる透過型スクリーンであって、フレネルレンズ部を有するフレネルレンズシートと、」「積層体とを備え」ることに相当する。

(ウ)引用発明の「遮光部45」及び「開口部46」は、本願補正発明の「単位光吸収部」及び「単位光透過部」に、それぞれ相当し、引用発明の「遮光部45及び開口部46を有する層」は、本願補正発明の「光制御シート」に相当する。
すると、引用発明の「遮光部45は、複数のシリンドリカルレンズ43が設けられたシート基板42の裏面側に、各シリンドリカルレンズ43の集光位置の間に形成されたストライプ状の非集光部を遮光するためにストライプ状に設けられた光吸収帯であり、各前記遮光部45の間には、シリンドリカルレンズ43によって集光された映像光が通過する前記開口部46が形成され」ることは、本願補正発明の「前記フレネルレンズシートの映像光出射側に配置された光制御シートであって、前記光制御シートの映像光出射面の一部を構成する厚さ方向の断面形状が台形の複数の単位光透過部と、前記単位光透過部と交互に配置され、前記光制御シートの映像光出射面の一部を構成する厚さ方向の断面形状がV字状の溝又は台形状の溝に形成された複数の単位光吸収部とを有する光制御シート」「を備え」ることと、「前記フレネルレンズシートの映像光出射側に配置された光制御シートであって、前記光制御シートの映像光出射面の一部を構成する」「複数の単位光透過部と、前記単位光透過部と交互に配置され、前記光制御シートの映像光出射面の一部を構成する」「複数の単位光吸収部とを有する光制御シート」「を備え」ることの点で一致する。

(エ)引用発明の「遮光部45及び開口部46を有する層」が「フレネルレンズシート30」の映像光出射側に配置されたのものであり、引用発明の「光拡散部52」が「遮光部45及び開口部46を有する層」の映像光出射側に配置されたのものであり、引用発明の「コントラストを向上させる着色層」が「光拡散部52」の映像光出射側に配置されたのものであることは、いずれも明らかである。
すると、引用発明の「前記フレネルレンズシート30側から、拡散レンズ部44、シート基板42、遮光部45及び開口部46を有する層、透明基材47、光拡散部52、コントラストを向上させる着色層がこの順に層状に配置され」る「前記光拡散レンズアレイシート40」は、本願補正発明の「前記フレネルレンズシートの映像光出射側に配置された」「光制御シートと、前記光制御シートの映像光出射側に配置され」た「光拡散層と、前記光拡散層の映像光出射側に配置された着色層とを備える積層体」に相当する。

(オ)引用発明の「基材中に光拡散性微粒子が分散配置されることによって構成され」る「光拡散部52」は、本願補正発明の「光拡散粒子を含む光拡散層」に相当する。

(カ)引用発明の「前記光拡散部52の厚さを57μmとする」ことは、本願補正発明の「前記光拡散層の厚みが、0.05?2.0mmであること」に相当する。

上記(ア)ないし(カ)より、本願補正発明と引用発明は、
「映像光入射側から投射された映像光を映像光出射側に透過させる透過型スクリーンであって、
フレネルレンズ部を有するフレネルレンズシートと、
前記フレネルレンズシートの映像光出射側に配置された光制御シートであって、前記光制御シートの映像光出射面の一部を構成する複数の単位光透過部と、前記単位光透過部と交互に配置され、前記光制御シートの映像光出射面の一部を構成する複数の単位光透過部とを有する光制御シートと、前記光制御シートの映像光出射側に配置され、かつ光拡散粒子を含む光拡散層と、前記光拡散層の映像光出射側に配置された着色層とを備える積層体とを備え、
前記光拡散層の厚みが、0.05?2.0mmである、透過型スクリーン。」
の点で一致し、以下の点で相違するものと認められる。

<相違点1>
「光制御シート」の「単位光透過部」及び「単位光吸収部」が、本願補正発明では、それぞれ「厚さ方向の断面形状が台形」及び「厚さ方向の断面形状がV字状の溝又は台形状の溝に形成された」のに対して、引用発明では、「遮光部45及び開口部46」の映像光出射面の一部を構成する厚さ方向の断面形状は特定されていない点。

<相違点2>
「前記フレネルレンズシートおよび積層体」が、本願発明では、「三次元曲面をなすように曲がって」いるのに対して、引用発明の「透過型スクリーン20」及び「光拡散レンズアレイシート40」は、そのような構成でない点。

<相違点3>
「着色層の厚み」が、本願発明では、「10μm以上200μm以下であ」るのに対して、引用発明では、「コントラストを向上させる着色層」の厚みは明らかでない点。

イ 判断
上記相違点について検討する。
<相違点1>について
コントラストの向上のために、透過型スクリーンにおいて、光制御シートの映像光出射面の一部を構成する厚さ方向の断面形状が台形の複数の単位光透過部と、前記光制御シートの映像光出射面の一部を構成する厚さ方向の断面形状がV字状の溝又は台形状の溝に形成された複数の単位光吸収部とを有する光制御シートは、周知技術(必要とあらば、例えば、特開2006-178092号公報の【0025】、図1、特開2011-118333号公報の【0042】、図12参照。)である。
してみると、コントラストの向上のために、上記の周知技術を適用し、引用発明の「遮光部45及び開口部46」を相違点1にかかる構成とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。

<相違点2>について
意匠性をよくするために、曲面をなすように透過型スクリーンを曲げることは、周知技術(原査定の拒絶の理由に引用された、特開2005-186784号公報の【0002】、【0003】、【0017】、【0033】、図2、特開2007-223416号公報の【0006】、【0017】、図2参照。)であるので、意匠性をよくするために、引用発明において、上記の周知技術を適用し、「透過型スクリーン26」及び「光拡散レンズアレイシート40」を曲面をなすように曲げることを採用することに、何ら格別の困難性はない。
そして、曲面が二次元曲面であるのか三次元曲面であるのかは、設計上の微差にすぎない。
してみると、引用発明において、「透過型スクリーン26」及び「光拡散レンズアレイシート40」を三次元曲面をなすように曲げることは、当業者が容易に想到し得ることである。

<相違点3>について
着色層の厚みが小さいと外光の影響が大きくなってコントラストを向上することができなくなり、着色層の厚みが大きいと透過型スクリーンの透過率が下がることは、当業者にとって自明のことである。引用発明においても、「コントラストを向上させる着色層」の厚みは、着色層の透過率や散乱性に応じて、必要とする透過型スクリーンのコントラストや透過率を得るように、設計されるものである。
そして、透過型スクリーンの着色層の厚みが100μm程度のものであることは技術常識(必要とあらば、例えば、特開2005-49614号公報の【0009】参照。)であり、また、本願補正発明の着色層の厚みの上限及び下限に臨界的意義は認められない。
してみると、引用発明の「コントラストを向上させる着色層」の厚みを10μm以上200μm以下とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。

そして、本願補正発明が奏する作用効果も、当業者が予測できる域を超えるものではない。

(4)結論
よって、本願補正発明は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4 本件補正の却下の決定についての結び
以上のとおり、本願補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3 本願発明について
1 本願発明
上記のとおり、本件補正は却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成27年4月24日付けの手続補正により補正された明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし16に記載された事項によって特定されると認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記「第2」[理由]「1」において、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1として示したとおりのものである。

2 刊行物の記載事項及び引用発明の認定
上記「第2」[理由]「3」「(2)」のとおりである。

3 対比・判断
上記「第2」[理由]「2」「本件補正の目的」のとおり、本願発明は、本願補正発明の「三次元曲面」を「曲面」とするとともに、本願補正発明から「前記着色層の厚みが、10μm以上200μm以下であ」ること及び「前記光拡散層の厚みが、0.05?2.0mmであること」を削除したものである。
そして、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに限定を付加した本願補正発明が、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである以上、上記「第2」[理由]「3」での検討と同様の理由により、本願発明は引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 結び
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。
したがって、その余の請求項について言及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-06-30 
結審通知日 2016-07-01 
審決日 2016-07-12 
出願番号 特願2011-155749(P2011-155749)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G03B)
P 1 8・ 121- Z (G03B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 関根 裕  
特許庁審判長 森林 克郎
特許庁審判官 井口 猶二
森 竜介
発明の名称 透過型スクリーン、これを備えた背面投射型表示装置、および透過型スクリーンの製造方法  
代理人 末盛 崇明  
代理人 勝沼 宏仁  
代理人 浅野 真理  
代理人 永井 浩之  

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