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審決分類 |
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H04W 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H04W |
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管理番号 | 1318772 |
審判番号 | 不服2015-3404 |
総通号数 | 202 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2016-10-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2015-02-23 |
確定日 | 2016-09-13 |
事件の表示 | 特願2012-542190「無線通信システムにおける協調多機能通信のための方法および装置」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 6月 9日国際公開,WO2011/068983,平成25年 4月18日国内公表,特表2013-513308,請求項の数(30)〕について,次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は,特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は,2010年12月2日(パリ条約に基づく優先権主張外国庁受理 2009年12月3日 米国)を国際出願日とする出願であって,平成25年11月28日付けで拒絶理由が通知され,平成26年3月3日付けで手続補正がされ,同年10月16日付けで拒絶査定(以下,「原査定」という)がされ,これに対し,平成27年2月23日に拒絶査定不服審判が請求され,その後,当審において平成28年2月4日付けで拒絶理由(以下,「当審拒絶理由」という)が通知され,同年5月9日付けで手続補正がされたものである。 第2 本願発明 本願の請求項1-30に係る発明は,平成28年5月9日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-30に記載された事項により特定されるものと認められる。そのうち,請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は以下のとおりである。 「【請求項1】 無線通信装置であって, 低電力トランシーバによって,少なくとも1つの遠隔アクセス端末との通信リンクを確立し, 前記少なくとも1つの遠隔アクセス端末から機能のリストを受信し,前記リストは,前記少なくとも1つの遠隔アクセス端末が実行するように構成された,複数の機能を備え, 前記リストから,前記少なくとも1つの遠隔アクセス端末の機能を判定し, 前記無線通信装置と前記少なくとも1つの遠隔アクセス端末のそれぞれとの間のリンクの強度を判定し, 前記無線通信装置が高電力トランシーバを停止している間,前記リストから判定された前記機能と,前記無線通信装置と前記少なくとも1つの遠隔アクセス端末のそれぞれとの間の前記リンクの前記判定された強度と,前記少なくとも1つの遠隔アクセス端末うちのどの遠隔アクセス端末が前記無線通信装置に比べて消費電力に対して感度が低いかと,に基づいて,前記少なくとも1つの遠隔アクセス端末のうちの1つの遠隔アクセス端末に,高電力トランシーバの使用を必要とする少なくとも1つのタスクを委任する, ように構成されたコントローラを備える,無線通信装置。」 第3 原査定の理由についての当審の判断 1.原査定の理由の概要 平成25年11月28日付けで拒絶理由の概要は,以下のとおりである。 「A.この出願の下記の請求項に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 (引用文献等については引用文献等一覧参照) 【請求項1-32】 引用文献1-4 備考 引用文献1の例えば【0001】-【0016】にある様に,Bluetoothにおいて,周辺端末のサービスを調べて接続することが記載されている。そして,図1にあるように,Bluetoothで接続する端末は携帯電話であり,そして,【0009】に「ダイヤルアップネットワーキングプロファイル(DUN)」,「FAXプロファイル(FAX)」等のサービスを行うことが記載されている。つまり,遠隔に接続することは明らかであるから,図1の携帯電話の一方が,遠隔アクセス端末に対応する。(請求項1,2,4,6,14) 無線環境が良ければ無線接続を行いタスクを実行させることは設計事項に過ぎない。逆に,無線環境が悪ければ無線接続できないからタスクも実行できない。(請求項3) 携帯端末を,低消費モードで動作させることは設計事項にすぎない。(請求項5) 引用文献2第1図及びその詳細な説明にある様に,1つの端末から,複数の異なる機能を持った無線機(122,124)に接続することは設計事項にすぎない。(請求項7) 引用文献2第2図にGPS238と接続することが示唆されている。 また,引用文献3第2図にあるように,Bluetoothで接続するセイキュリティ機器130は,他の装置のGPSを利用している。 そうしてみれば,Bluetoothで接続する端末が,他の端末のGPSを利用することは容易に想到しえたものと認められる。(請求項8,9) WANやLAN等に接続することは設計事項にすぎない。(請求項10,12) 例えば,引用文献1において,携帯電話は基地局の信号をモニタしている。そうしてみれば,遠隔アクセス端末が基地局の信号をモニタしている。(請求項11) WCDMA等の携帯電話において,接続可能なネットワーク(GSMやWCDAMA)を探すことはインターラット(inter-RAT)で周知である。そうしてみれば,引用文献1において,携帯電話(本願で言うところの遠隔アクセス端末)が接続する場合,利用可能なネットワークを探索することは容易に想到しえたものと認められる。(請求項13) センサと接続することは設計事項にすぎない。例えば,引用文献4第1図を参照。(請求項15) 請求項16-32に関しては,上記の関連する請求項の記載を参照されたい。 (中略) 引 用 文 献 等 一 覧 1.特開2004-343219号公報 2.特開2008-521309号公報 3.米国特許出願公開第2007/0126562号明細書 4.特開2008-278170号公報」 また,平成26年10月16日拒絶査定の備考欄には,以下の記載がある。 「【理由A.請求項1-32について】 引用文献1-4に加えて,他の端末に接続する場合,通信状態(リンクの強度等)を考慮することは設計事項にすぎない。 例えば,特開2004-104531号『【0066】さらに,例えば,請求項15に記載するように,前記端末は,いずれの前記ゲートウェイにも接続していない状態のときに,Bluetoothのインクワイアリー機能及びサービスディスカバリー機能を利用して,周期的に前記ゲートウェイを検索して,当該周期的なゲートウェイの検索で一定時間以上複数のゲートウェイを発見し続けると,ゲートウェイとの接続時に,当該複数のゲートウェイのうち,受信電波強度の強い方のゲートウェイを接続先として選択して接続するものであってもよい。』 を参照されたい。 従って,依然として,本願は引用文献から容易に想到しえたものと認められる。」 2.原査定の理由の判断 (1)刊行物の記載事項 ア 引用例1 原査定の拒絶理由で引用された特開2004-343219号公報(以下,「引用例1」という。)には,図面と共に以下の事項が記載されている。 (ア) 「【0010】 図13は,従来の無線通信装置が,周辺にBluetooth通信が可能な他の無線通信装置があるかどうかをサーチする手順を示したフローチャートである。サーチされて通信相手となる他の無線通信装置をリモートデバイスと呼ぶ。 【0011】 使用者により,無線通信装置に設けられたサーチボタンが押されると,サーチが行われて,その時点で周辺に存在する1または複数の無線通信装置から,それぞれのBluetoothテーブル90をロードしてくる(ステップS91)。次に,そのロードしたBluetoothテーブル90の対応サービス90dをチェックして,どのようなサービスを実行できるのかを調べて,通信可能なリモートデバイスを確認する(ステップS92)。 【0012】 通信可能なリモートデバイスがあれば,1つまたは複数のリモートデバイスの一覧リストを無線通信装置の表示部に表示する。この表示の方法は,先ず,上記したBluetoothテーブル90のデバイス名90aに記載があるかをチェックする(ステップS93)。デバイス名90aに記載があれば,その内容の例えば「鈴木太郎」と表示する(ステップS94)。デバイス名90aに記載が無ければ,アドレス90b,例えば,「123456789ABC」を表示する(ステップS95)。 【0013】 一方,ステップS92において,リモートデバイスが存在しない場合には,「リモートデバイス無し」と表示する(ステップS96)。以上で,サーチ手順は終了する(ステップS97)。 【0014】 この後,使用者は,この表示部に表示された一覧リストからBluetooth通信したい相手を選択して,Bluetooth通信の接続手順を行う。」(2ページ) (イ) 「【0025】 図1は,近距離無線通信として知られているBluetooth通信のシステム図を示し,携帯電話機1および携帯電話機20は,Bluetooth通信機能を有する無線通信装置である。 【0026】 図1は,また,本発明を適用した携帯電話機1のブロック図を示すもので,携帯電話機1の主要部は,アンテナ2,携帯電話無線部3,加入者ID記憶部4,電話帳テーブル5,制御部6,キー入力部7,LCD8,アンテナ9,Bluetooth無線部10,Bluetoothテーブル11,装置情報記憶部12等から構成されている。なお,携帯電話機20のBluetoothテーブル110は,第2の実施の形態に使用されるものである。 【0027】 携帯電話網による電話通信は,アンテナ2によって携帯電話用の無線信号の送信受信が行われる。携帯電話無線部3は,アンテナ2と接続され無線信号の変調復調等の処理を行う。」(5ページ) (ウ) 「【0036】 (第1の実施の形態) 図1に示した無線通信装置の構成において,携帯電話機20が周辺にBluetooth通信が可能な無線通信装置があるかどうかをサーチし,携帯電話機1をサーチしてリモートデバイスとして設定する第1の実施の形態について,以下,図2?図4を参照して説明する。 【0037】 図2は,携帯電話機1のBluetoothテーブル11の構成図である。図3は,携帯電話機1におけるBluetoothテーブル11へのデバイス名登録の手順を示すフローチャートである。図4は,携帯電話機20が,周辺にBluetooth通信可能な装置が存在するかを調べるための,サーチ動作の手順を示すフローチャートである。 【0038】 図2は,Bluetoothテーブル11に記憶される無線情報の具体的な構成を示し,デバイス名11a,アドレス11b,機器種別11c,対応サービス11d等から構成される。 【0039】 デバイス名11aは,製造メーカーからの出荷時には何も書き込まれていない。このデバイス名11aには,後述するように自動処理によってデバイスを識別する情報が書き込まれる。また,自動処理によって書き込まれた後も,使用者が携帯電話機1のキー入力部7を操作して任意の名前に変更することができる。 【0040】 アドレス11bは,16進数(4ビット)で12桁の数字であり,例えば,「123456789ABC」と表わされる。このアドレス11bの番号は,同一番号が存在しないように製造メーカーに割り振られて,管理される番号である。そして,携帯電話機の製造時にその番号が書き込まれる。このアドレス11bの番号は,その後,書き換えることが出来ない。 【0041】 機器種別11cは,無線通信装置の機器種別を示すもので,製造メーカによって書き込まれる。この例では,「携帯電話機」と書き込まれている。この機種種別11cのデータは,その後,書き換えることが出来ない。 【0042】 対応サービス11dは,無線通信装置である携帯電話機1がサポートしているBluetoothでのサービスの種類を表わすプロファイル一覧が記録される。例えば,サービスの種類として「ダイヤルアップネットワーキングプロファイル(DUN)」,「FAXプロファイル(FAX)」,「LANアクセスプロファイル(LAP)」,「ファイル転送プロファイル(FTP)」等が書き込まれている。この対応サービス11dのデータも,その後,書き換えることが出来ない。」(6?7ページ) (エ) 「【0054】 次に,図4を参照して,携帯電話機1のBluetoothテーブル11に記憶されたデータを携帯電話機20へ送信する動作について説明する。 【0055】 先ず,携帯電話機20からBluetooth通信可能な無線通信装置が存在するかを調べるために,サーチ信号が周辺の装置に向かって送信される(ステップS11)。携帯電話機1の制御部6は,アンテナ9,Bluetooth無線部10を経由して,このサーチ信号を受信する。そして,制御部6は,サーチ信号を受信するとBluetooth無線部10,アンテナ9を経由して,送信元の携帯電話機20へ向かってBluetoothテーブル11に記憶されているデータを送信する。 【0056】 携帯電話機20の制御部(図示せず)は,携帯電話機1から送信されたBluetoothテーブル11の情報を受信すると,上記データに含まれている対応サービス11dの内容と携帯電話機20が有する対応サービスとを比較して,同じサービスが有るか否かをチェックする。例えば,携帯電話機20が「ファイル転送プロファイル(FTP)」対応サービスを有しているとすると,携帯電話機1から送信された対応サービス11dの内容に同じ「ファイル転送プロファイル(FTP)」対応サービスが有るか否かをチェックして,Bluetooth通信可能なリモートデバイスであるかを確認する(ステップS12)。 【0057】 同様に,携帯電話機20の表示部(図示せず)には,サーチされたBluetooth通信可能なリモートデバイスの一覧リストが表示される。この一覧リスト中の携帯電話機1に関する表示を以下に説明する。」(8ページ) 上記(ア)ないし(エ)より,「携帯電話機20」について,以下の事項が記載されていると認められる。 a 上記(イ)より,携帯電話機20と携帯電話機1は,Bluetooth通信機能を有することが明らかである。 b 上記(エ)の段落【0055】には,携帯電話機20からBluetooth通信可能な無線通信装置が存在するかを調べるために,サーチ信号が周辺の装置に向かって送信され,携帯電話機1の制御部は,前記サーチ信号を受信すると送信元の携帯電話機20に向かってBluetoothテーブル11に記憶されているデータを送信すること,同段落【0056】には,前記携帯電話機20の制御部が前記データを受信することが記載されている。そして,前記Bluetoothテーブル11には,上記(ウ)の段落【0042】より,対応サービス11dとして,携帯電話機がサポートしているBluetoothでのサービスの一覧が含まれている。 そうすると,引用例1には,「携帯電話機から対応サービスを受信し,前記対応サービスは,前記携帯電話機がサポートする,複数のサービスを備ええること」が記載されているといえる。 c 上記(エ)の段落【0056】より,携帯電話機20が,受信した「前記対応サービスから,前記携帯電話機1がサポートするサービスをチェックすること」が記載されているといえる。 d 前記携帯電話機20は,前記cの後,前記(ア)の従来技術との対比から,Bluetooth通信したい相手を選択してBluetooth通信の接続手順を行うこと(段落0014)は明らかであり,このときに「Bluetooth通信機能によって,前記携帯電話機1との通信リンクを確立すること」は明らかである。 e 前記(ウ)の段落【0042】より,対応サービスとして,「ダイヤルアップネットワーキングプロファイル(DUN)」が含まれている。そして,前記DUNは,Bluetooth通信を利用して相手の携帯電話機等の通信機器を介して該通信機器の通信機能を利用してインターネット等のネットワークに接続するプロファイルのことであることが技術常識であるから,前記サービスのうち「DUN」を選択した場合には,通信相手である携帯電話機にネットワーク接続を委任したものということができる。この場合,「DUN」を選択する場合には,複数の相手(携帯電話機)のうち,該「DUN」のサービスを有する相手に委任するものといえる。 そうすると,引用例1には,「前記対応サービスに含まれる前記サービスに基づいて,「ダイヤルアップネットワーキングプロファイル(DUN)」が選択された場合には,複数の携帯電話機のうちの1つの携帯電話機に,該携帯電話機の通信機能を利用する「ダイヤルアップネットワーキングプロファイル(DUN)」を委任すること」が記載されているといえる。 f 携帯電話機20の「制御部」(上記(エ)の段落【0056】)が上記bないしeの処理を行うように構成されているといえる。 g 引用例1の「携帯電話機20」は,「無線通信装置」の例(上記(イ)の段落【0025】)である。 また,サーチの対象となるのは「1または複数の無線通信機」(上記(ア)の段落【0011】)であり,サーチされて通信相手となる他の無線通信装置(すなわち,「携帯電話機20」の通信相手である「携帯電話機1」)を「リモートデバイス」と呼ぶ(上記(ア)の段落【0010】)ことから,前記「携帯電話機20」の通信相手は、「1または複数のリモートデバイス」といえる。 上記aないしgを総合すると,引用例1には,次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認める。 「無線通信装置であって, 1または複数のリモートデバイスから対応サービスを受信し,前記対応サービスは,前記1または複数のリモートデバイスがサポートする,複数のサービスを備え, 前記対応サービスから,前記1または複数のリモートデバイスがサポートするサービスをチェックし, Bluetooth通信機能によって,前記1または複数のリモートデバイスとの通信リンクを確立し, 前記対応サービスに含まれる前記サービスに基づいて,「ダイヤルアップネットワーキングプロファイル(DUN)」が選択された場合には,前記1または複数のリモートデバイスのうちの1つのリモートデバイスに,該リモートデバイスの通信機能を利用する「ダイヤルアップネットワーキングプロファイル(DUN)」を委任する, ように構成された制御部を備える,無線通信装置。」 イ 引用例2 原査定の拒絶理由で引用された特開2008-521309号公報(以下,「引用例2」という。)には,段落【0015】-【0020】,【0024】,図1,図2に関連して,概略以下の事項が記載されている。 「1つの端末が,Bluetooth用及びGPS用の通信インターフェースを備え,さらに複数の異なる機能を持った無線機に接続すること。」 ウ 引用例3 原査定の拒絶理由で引用された米国特許出願公開第2007/0126562号明細書(以下,「引用例3」という。)には,図2に関連して,概略以下の事項が記載されている。 「Bluetoothで接続するセキュリティ機器が,他の装置のGPSを利用すること。」 エ 引用例4 原査定の拒絶理由で引用された特開2008-278170号公報(以下,「引用例4」という。)には,図1に関連して,概略以下の事項が記載されている。 「携帯端末がセンサとの間で通信可能なこと。」 オ 周知例 拒絶査定の理由で引用された特開2004-104531号公報(以下「周知例」という。)には,特に段落【0066】に関連して,概略以下の事項(以下,「周知事項」という。)が記載されている。 「端末は,Bluetoothのインクワイアリー機能及びサービスディスカバリー機能を利用して,周期的にゲートウェイを検索して,当該周期的なゲートウェイの検索で一定時間以上複数のゲートウェイを発見し続けると,ゲートウェイとの接続時に,当該複数のゲートウェイのうち,受信電波強度の強い方のゲートウェイを接続先として選択して接続すること。」 (2)対比 本願発明と引用発明とを技術常識を参酌して対比すると, a 引用発明の「無線通信装置」,「1または複数のリモートデバイス」は,本願発明の「無線通信装置」,「少なくとも1つの遠隔アクセス端末」に相当する。 b 引用発明の「Bluetooth通信機能」は,本願発明の「低電力トランシーバ」に含まれるから,引用発明の「Bluetooth通信機能によって,前記リモートデバイスとの通信リンクを確立し」は,下記相違点1のとおり,通信リンクを確立するタイミングが異なる点を除き本願発明の「低電力トランシーバによって,少なくとも1つの遠隔アクセス端末との通信リンクを確立し」に含まれる。 c 引用発明の「前記1または複数のリモートデバイスがサポートする,複数のサービス」は,本願発明の「前記少なくとも1つの遠隔アクセス端末が実行するように構成された,複数の機能」に含まれるといえ,引用発明の「対応サービス」は,本願発明の「機能のリスト」に他ならない。 そうすると,引用発明の「リモートデバイスから対応サービスを受信し,前記対応サービスは,前記リモートデバイスがサポートする,複数のサービスを備え」は,本願発明の「前記少なくとも1つの遠隔アクセス端末から機能のリストを受信し,前記リストは,前記少なくとも1つの遠隔アクセス端末が実行するように構成された,複数の機能を備え」に相当する。 d 引用発明の「前記対応サービスから,前記1または複数のリモートデバイスがサポートするサービスをチェックし」は,サポートするサービスにいかなるものが含まれるかをチェックすることといえ,本願発明の「前記リストから,前記少なくとも1つの遠隔アクセス端末の機能を判定し」に相当する。 e 引用発明の「前記対応サービスに含まれる前記サービスに基づいて」と,本願発明の「前記リストから判定された前記機能と,前記無線通信装置と前記少なくとも1つの遠隔アクセス端末のそれぞれとの間の前記リンクの前記判定された強度と,前記少なくとも1つの遠隔アクセス端末うちのどの遠隔アクセス端末が前記無線通信装置に比べて消費電力に対して感度が低いかと,に基づいて」は,「少なくとも前記リストから判定された前記機能に基づいて」の点で共通する。 さらに,引用発明の「該リモートデバイスの通信機能」は,リモートデバイスがインターネット等のネットワークに接続するための通信機能であって,本願発明の「高電力トランシーバ」に含まれるといえる。そうすると,該リモートデバイスの通信機能(高電力トランシーバ)を利用(使用)する,引用発明の「ダイヤルアップネットワーキングプロファイル(DUN)」は,本願発明の「少なくとも1つのタスク」といえ,引用発明の「『ダイヤルアップネットワーキングプロファイル(DUN)』を委任する」ことは,本願発明の「少なくとも1つのタスクを委任する」ことに含まれる。 上記aないしeを総合すると,本願発明と引用発明は,以下の一致点及び相違点を有する。 (一致点) 「無線通信装置であって, 低電力トランシーバによって,少なくとも1つの遠隔アクセス端末との通信リンクを確立し, 前記少なくとも1つの遠隔アクセス端末から機能のリストを受信し,前記リストは,前記少なくとも1つの遠隔アクセス端末が実行するように構成された,複数の機能を備え, 前記リストから,前記少なくとも1つの遠隔アクセス端末の機能を判定し, 少なくとも前記リストから判定された前記機能に基づいて,前記少なくとも1つの遠隔アクセス端末のうちの1つの遠隔アクセス端末に,高電力トランシーバの使用を必要とする少なくとも1つのタスクを委任する, ように構成されたコントローラを備える,無線通信装置。 (相違点1) 一致点の「低電力トランシーバによって,少なくとも1つの遠隔アクセス端末との通信リンクを確立し」が,本願発明では,「前記少なくとも1つの遠隔アクセス端末から機能のリストを受信」する前に行われているのに対し,引用発明では,「リモートデバイスから対応サービスを受信し」た後に行われる点。 (相違点2) 本願発明は,「前記無線通信装置と前記少なくとも1つの遠隔アクセス端末のそれぞれとの間のリンクの強度を判定」するのに対し,引用発明では,当該判定を行うことが不明である点。 (相違点3) 一致点である「高電力トランシーバの使用を必要とする少なくとも1つのタスクを委任する」について,本願発明では,「前記無線通信装置が高電力トランシーバを停止している間」に行い,かつ「前記リストから判定された前記機能と,前記無線通信装置と前記少なくとも1つの遠隔アクセス端末のそれぞれとの間の前記リンクの前記判定された強度と,前記少なくとも1つの遠隔アクセス端末うちのどの遠隔アクセス端末が前記無線通信装置に比べて消費電力に対して感度が低いかと,に基づいて」委任するのに対し,引用発明では,高電力トランシーバの停止している間に行う点の特定はなく,かつ,「前記対応サービスに含まれる前記サービスに基づいて」委任する点。 (3)判断 事案に鑑み,まず相違点3について検討する。 本願発明では,相違点3に係る構成により,「高電力トランシーバの使用を必要とする少なくとも1つのタスクを委任する」遠隔アクセス端末を,「前記少なくとも1つの遠隔アクセス端末うちのどの遠隔アクセス端末が前記無線通信装置に比べて消費電力に対して感度が低いか」に基づいて判断しているといえる。 しかしながら,この点は,原審の拒絶理由で引用された引用例2ないし4に記載された事項(上記(1)のイないしエの項参照),及び,拒絶査定で引用された周知事項(上記(1)のオの項参照)のいずれにも,記載も示唆もされておらず,当業者にとって自明なものでもない。 そうすると,前記の点を含む相違点3に係る構成は,引用発明,引用例2ないし4に記載された事項並びに周知事項から容易に想到し得るものとはいえない。 (4)小括 したがって,本願発明は,上記相違点1及び2について検討するまでもなく,当業者が引用発明,引用例2ないし4に記載された事項並びに周知事項に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。 また,本願の請求項14,27及び28に係る発明は,本願発明のカテゴリーを変更したものであり,引用発明に対して,前記相違点3と同様の相違点を有するから,当業者が引用発明,引用例2ないし4に記載された事項並びに周知事項に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。 また,本願の請求項2-13,15-26,29-30に係る発明は,本願発明又は請求項14に係る発明をさらに限定したものであるので,同様に,当業者が引用発明,引用例2ないし4に記載された事項並びに周知事項に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。 よって,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。 第4 当審拒絶理由について 1.当審拒絶理由の概要 当審拒絶理由の概要は,以下のとおりである。 「 1.(サポート要件)この出願は,特許請求の範囲の記載が下記の点で,特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。 2.(明確性)この出願は,特許請求の範囲の記載が下記の点で,特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 記 1.理由1(サポート要件)について (1)本願発明の解決しようとする課題は,「余分な処理を低減してバッテリ寿命を延ばすこと」(段落0003)にあるものと認められ,発明の詳細な説明の「高電力トランシーバは,低電力トランシーバよりも多くの電力を消費するので,高電力トランシーバをオフし,ホスト端末104からの送信を受信するために,低電力トランシーバを用いることによって,アクセス端末102における省電力を容易にする。」(段落0028)等の記載を参酌すると,前記課題を解決するためには,「低電力トランシーバによって,遠隔アクセス端末との通信リンクを確立すること」,すなわち,請求項4に記載の事項が必要であると認められる。 したがって,請求項1には,発明の詳細な説明に記載された,発明の課題を解決するための手段が反映されておらず,請求項1に係る発明は,発明の詳細な説明に記載した範囲を超えることとなる。 よって,請求項1に係る発明は,発明の詳細な説明に記載したものでない。 請求項2-3,7-18,22-34についても同様である。 (2)請求項33に記載された事項は,発明の詳細な説明に記載されたどの事項に対応しているのかが不明瞭である。(対応する記載が無い場合は,請求項33を削除されたい。) 2.理由2(明確性)について (1)タスクの委任について,請求項1では「消費電力に対して感度が低いか」に基づくとされているところ,該請求項1を引用する請求項3では,「電力感度」に基づくとされており,両者の関係が不明瞭である。 同様に,請求項18に記載された「電力感度」について,該請求項18で引用する請求項16の「消費電力に対して感度が低いか」との関係が不明瞭である。 両者が同じ意味である場合は,請求項3及び18に記載された事項はそれぞれ請求項1及び16に含まれることとなるので,請求項3及び18を削除されたい。 (2)請求項6及び21に記載された「前記低電力コントローラ」は,この記載より前に「低電力コントローラ」の記載が無いため,「前記」が何を指し示しているのかが不明瞭である。(「前記低電力トランシーバ」とすべきではないか。) (3)請求項32に記載された「持続的記録媒体」の「持続的」の意味が不明瞭である。単に,「記録媒体」としてはどうか。 」 2.当審拒絶理由についての当審の判断 (1)平成28年5月9日付け手続補正(以下,「手続補正」という。)によって,本願の請求項1,14,27及び28は,課題を解決するために必要な事項である,「低電力トランシーバによって,遠隔アクセス端末との通信リンクを確立すること」が特定されたため,拒絶理由1.(1)は解消した。 (2)手続補正によって,本願の請求項29(補正前の請求項33)は,「前記コントローラは,更に,前記無線通信装置の残っている電力がしきい値未満であることを判定すると,機能のリストを問い合わせるように構成される」と補正され,発明の詳細な説明と対応することとなり,当審拒絶理由1.(2)は解消した。 (3)手続補正によって,補正前の請求項3,18が削除され,当審拒絶理由2.(1)は解消した。 (4)手続補正によって,本願の請求項4,17(補正前の請求項6,21)の「前記低電力コントローラ」は「前記低電力トランシーバ」に補正され,当審拒絶理由2.(2)は解消した。 (5)手続補正によって,本願の請求項28(補正前の請求項32)の「持続的記録媒体」は「記録媒体」に補正され,当審拒絶理由2.(3)は解消した。 第5 むすび 以上のとおり,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。 また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2016-08-30 |
出願番号 | 特願2012-542190(P2012-542190) |
審決分類 |
P
1
8・
537-
WY
(H04W)
P 1 8・ 121- WY (H04W) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 野元 久道 |
特許庁審判長 |
大塚 良平 |
特許庁審判官 |
林 毅 中野 浩昌 |
発明の名称 | 無線通信システムにおける協調多機能通信のための方法および装置 |
代理人 | 井関 守三 |
代理人 | 福原 淑弘 |
代理人 | 蔵田 昌俊 |
代理人 | 奥村 元宏 |