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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04W
管理番号 1318845
審判番号 不服2015-12257  
総通号数 202 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-10-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-06-29 
確定日 2016-09-01 
事件の表示 特願2013-507024「緊急時のマシンタイプコミュニケーション(MTC)装置のための修正アクセスクラス」拒絶査定不服審判事件〔平成23年11月 3日国際公開、WO2011/135990、平成25年 6月27日国内公表、特表2013-527695〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
1.手続の経緯

本願は、2011年3月31日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2010年4月30日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成24年11月12日付けで特許協力条約第34条補正の翻訳文が提出され、平成24年11月12日付けで特許協力条約第34条補正の翻訳文が提出され、平成26年3月31日付けで手続補正がなされ、平成26年12月8日付けで拒絶理由が通知され、平成27年2月12日付けで手続補正がなされ、平成27年3月26日付けで拒絶査定がされ、平成27年6月29日に拒絶査定不服審判が請求され、平成28年2月25日付けで当審が拒絶理由を通知し、平成28年4月28日付けで手続補正がなされたものである。


2.当審が通知した拒絶理由通知の内容

平成28年2月25日付けで当審が通知した拒絶理由の内容は下記のとおりである。

1)本件出願は、明細書、特許請求の範囲及び図面の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
2)本件出願は、明細書、特許請求の範囲及び図面の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
3)本件出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)

・理由 1
・請求項 1-8
・備考

請求項1,3,5,7に「第1のアクセス制限情報」及び「第2のアクセス制限情報」の2種類のアクセス制限情報がそれぞれ記載されている。
しかしながら、本願明細書及び図面には、第2のシステム情報ブロックSIB2に含まれる「アクセスクラス」を、MTC装置のネットワーク接続を制限するために使用し(例えば、本願明細書段落[0049]、[0051]参照。)、該「アクセスクラス」は、システム情報データの変更期間内に更新可能であること(例えば、本願明細書段落[0033]、[0064]参照。)は記載されているものの、該「アクセスクラス」以外の別の「アクセス制限情報」を用いることは、本願明細書及び図面には記載されておらず、また、これを示唆する記載も見当たらない。
さらに、平成27年6月29日付け審判請求書を参照しても、2種類のアクセス制限情報に係る根拠について何等明記されていない。

よって、請求項1,3,5,7及び請求項1を引用する請求項2,請求項3を引用する請求項4,請求項5を引用する請求項6,請求項7を引用する請求項8に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでない。

なお、出願人は平成27年2月12日付け意見書の「1.2 補正の適法性」の「(1)補正の根拠」において、
「請求項1の「前記第2のアクセス制限情報は、次の変更期間によって境界付けされた現在の変更期間内に複数回送信され、前記現在の変更期間内の前記第2のアクセス制限情報の各送信は同じ内容を含んでおり、」は、国際出願翻訳文提出書の段落番号〔0042〕の、「システム情報変更指標334は、データフィールドsystemInfoModificationであり、設定時に、システム情報(SI)データが次の変更期間の境界で変わるように予定されていることを示す。」および「SIB2データは、そのスケジューリングに定められた通りに、変更期間内において同じ内容で多数回送信される。」という記載等に基づいています。
また、請求項1の「前記MTC装置がネットワークに接続することを制限するために使われ、」は、国際出願翻訳文提出書の段落番号〔0064〕の、「・・・、マシンタイプコミュニケーション(MTC)装置104がネットワークに接続することを制限する・・・」という記載等に基づいています。
さらに、請求項1の「任意の変更期間内の任意の時点での更新が可能である」は、国際出願翻訳文提出書の段落番号〔0043〕の、「ETWS/CMASメッセージ等の緊急メッセージ(すなわち、緊急情報330)は、任意の時点に発生し得る。」という記載等に基づいています。」
と主張している。
そして、請求項1の記載を参照すれば、「前記MTC装置がネットワークに接続することを制限するために使われ、」及び「任意の変更期間内の任意の時点での更新が可能である」のそれぞれは、請求項1の「第1のアクセス制御情報」に関する要件であることは明らかである。

しかしながら、明細書段落番号[0064]の記載を参照すると、「マシンタイプコミュニケーション(MTC)装置104がネットワークに接続することを制限する」のは「アクセスクラス」であり、同段落[0043]の記載を参照すると、「任意の時点に発生し得る」のは、「緊急メッセージ(すなわち、緊急情報330)」であるから、請求項1の「第1のアクセス制御情報」が「アクセスクラス」に対応するのか「緊急メッセージ(すなわち、緊急情報330)」に対応するのか不明である。
仮に、請求項1の「第1のアクセス制御情報」が「緊急メッセージ(すなわち、緊急情報330)」に対応するとしても、本願明細書及び図面には「緊急メッセージ(すなわち、緊急情報330)」を、MTC装置のネットワーク接続の制限に使用されることは全く記載されていない。
また、仮に、請求項1の「第1のアクセス制御情報」が「アクセスクラス」に対応するとしても、請求項1の「第2のアクセス制御情報」に関する補正の根拠として出願人が主張する本願明細書段落[0042]の記載を参照すれば、該「第2のアクセス制御情報」は「アクセスクラス」であることは明らかであるから、この場合、請求項1に係る発明は、変更期間の境界で変更される「アクセスクラス」と、変更期間内で変更可能な「アクセスクラス」の両方を含む発明であるものと認められるものの、本願明細書及び図面を参照しても、このような発明は全く記載されていない。
よって、上記出願人の平成27年2月12日付け意見書における主張は採用できない。

(以下略)


3.本願発明

本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成28年4月28日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものと認める。

「マシンタイプコミュニケーション(MTC)装置によって実行される方法であって、
第1の情報と第2の情報とを基地局装置から受信する工程、を含み、
前記第1の情報および前記第2の情報は、前記基地局装置へのアクセス権を有しているか否かを示す情報であり、
前記第2の情報は、次の変更期間によって境界付けされた現在の変更期間内に複数回送信され、前記現在の変更期間内の前記第2の情報の各送信は同じ内容を含んでおり、
前記第1の情報は、前記MTC装置がネットワークに接続することを制限するために使われ、任意の変更期間内の任意の時点での更新が可能であることを特徴とする方法。」


4.明細書の記載

4-1.請求人の主張

請求人は、平成28年4月28日の意見書(下線は当審が付与。)において、

「請求項1、3、5、および7について行った上記補正は、出願当初明細書の段落〔0011〕、〔0031〕?〔0038〕、および図2に基づいています。
具体的には、出願当初明細書の段落〔0038〕の、「第2のシステム情報ブロックは、SystemInformationBlockType2(SIB2)と称され、ac-BarringInfo内の無線通信装置106およびマシンタイプコミュニケーション(MTC)装置104の階層的分割を含む。…」という記載から、階層的分割によって第1の情報(例えば、無線通信装置のアクセスクラス)と第2の情報(例えば、MTC装置のアクセスクラス)があることが分かります。
そして、出願当初明細書の段落〔0033〕の、「…この事態を改善するため、基地局102は変更期間中いつでもアクセスクラス118を更新してよい。…」という記載から、MTC装置のアクセスクラス(すなわち、第2の情報)は、任意の変更期間内の任意の時点で更新が可能であることは明らかです。
なお、補正後の請求項1、3、5、および7の「前記第1の情報および前記第2の情報は、前記基地局装置へのアクセス権を有しているか否かを示す情報であり、」という記載は、出願当初明細書〔0011〕の、「…無線フレームには、基地局の現在のアクセスクラスが含まれている。ここでいう無線フレームとは、トリガーとなるイベント後の現在のアクセスクラスを含む最初の無線フレームのことである。上記方法は、MTC装置が基地局へのアクセス権を有しているか否かを判定する工程を含む。さらに、上記方法は、MTC装置がアクセス権を有しているか否かによってネットワークへの接続を試みるかどうかを決定する工程も含む。」という記載などに基づいています。
したがって、上述の補正は、出願当初の特許請求の範囲、明細書及び図面に記載した事項の範囲内においてするものであり、新規事項を追加するものではありません。」

と、本願発明の「第1の情報」は、明細書における「無線通信装置のアクセスクラス」に対応し、本願発明の「第2の情報」は、明細書における「MTC装置のアクセスクラス」に対応するものであって、明細書に記載されていると主張している。

4-2.「第1の情報」と「第2の情報」が「基地局装置へのアクセス権を有しているか否かを示す情報であ」るか否かについて

ここで本願明細書(下線は当審が付与。)と図1には、

「【0027】
緊急時に帯域幅を割り当てるための基地局用の方法の1つとして、アクセスクラスの使用がある。無線通信装置106a?bはそれぞれ、1つ以上のアクセスクラス108b?cを事前に設定されてもよい。マシンタイプコミュニケーション(MTC)装置104もそれぞれ、1つ以上のアクセスクラス108aを事前に与えられてもよい。アクセスクラス108は1からnまでの値をとることができる。無線通信装置106またはマシンタイプコミュニケーション(MTC)装置104がネットワークに(すなわち基地局102を介して基幹ネットワーク110に)アクセスするには、無線通信装置106またはマシンタイプコミュニケーション(MTC)装置104は、少なくとも1つのアクセスクラス108が基地局102における現在のアクセスクラス118と一致する、または超えることを証明することが必要である。無線通信装置106またはマシンタイプコミュニケーション(MTC)装置104は、現在のアクセスクラス118の値を、システム情報(SI)メッセージにより、基地局102から読み出す。尚、システム情報(SI)メッセージに関しては、図3を参照して、後ほど詳細に説明する。
【0028】
各無線通信装置106およびマシンタイプコミュニケーション(MTC)装置104は、上記1つ以上のアクセスクラス108を、上記読み出された現在のアクセスクラス118と比較する。無線通信装置106またはマシンタイプコミュニケーション(MTC)装置104のアクセスクラス108が上記現在のアクセスクラス118よりも大きい場合、無線通信装置106またはマシンタイプコミュニケーション(MTC)装置104は、基地局102のアクセスは適切である(すなわち基地局102にアクセス権が認められる)と決定する。
【0029】
例えば、第1の無線通信装置106aのアクセスクラス108bが3であり、基地局の現在のアクセスクラス118が4である場合、上記第1の無線通信装置106aは基地局102へのアクセスを試みない。したがって、上記第1の無線通信装置106aは緊急時応答無線通信装置106ではない。第2の無線通信装置106bのアクセスクラス108cが5(第2の無線通信装置106bが緊急時応答無線通信装置106であるため、数値はより高くなっている)であり、基地局の現在のアクセスクラス118が4である場合、第1の無線通信装置106aが基地局102にアクセスできないが、第2の無線通信装置106bは基地局102にアクセスできる。マシンタイプコミュニケーション(MTC)装置104のアクセスクラス108aが1であり、基地局の102の現在のアクセスクラス118が4である場合、上記マシンタイプコミュニケーション(MTC)装置104は基地局102への接続の試みをやめる。」


と記載されているように、「無線通信装置106」または「MTC装置104」が、それぞれ自局のアクセスクラスと基地局のアクセスクラスを比較して、自局のアクセスクラスが基地局のアクセスクラスよりも大きい場合にアクセス権を認めるものである。

本願発明は「マシンタイプコミュニケーション(MTC)装置によって実行される方法」であるから、アクセス権を判断する場合に比較する情報は、「MTC装置のアクセスクラス」と「基地局のアクセスクラス」であって、「無線通信装置のアクセスクラス」には何ら影響されないから、本願発明が実行される「MTC装置」にとって、「第1の情報」は「基地局装置へのアクセス権を有しているか否かを示す情報」ではない。

4-3.「第1の情報」と「第2の情報」を「基地局装置から受信」するかについて

本願明細書(下線は当審が付与。)には、

「【0032】
トリガーとなるイベントの検知(202)後、マシンタイプコミュニケーション(MTC)装置104は、基地局102の現在のアクセスクラス118を含む無線フレームを受信する(204)。基地局102は現在のアクセスクラス118を含む無線フレームを周期的にブロードキャストしてもよい。例えば、ある構成では、基地局102は、無線フレームの8回の送信につき1回、現在のアクセスクラス118を含む無線フレームをブローキャストしてもよい。現在のアクセスクラス118を搬送するSIB2サブフレームの分配はシステムにより構成可能であるが、その構成範囲はあらゆる無線フレームの周期を含むものではない。マシンタイプコミュニケーション(MTC)装置104は、現在のアクセスクラス118を含む無線フレームを受信(204)すると、基地局102の現在のアクセスクラス118を上記無線フレームから確定する(206)。」

と記載されているように、MTCが基地局から受信する「アクセスクラス」は、「アクセスクラス118」すなわち「基地局102」の「アクセスクラス118」であって、「MTC装置104」や「無線通信装置106」の「アクセスクラス108」は、基地局から受信しない。
【0027】に「マシンタイプコミュニケーション(MTC)装置104もそれぞれ、1つ以上のアクセスクラス108aを事前に与えられてもよい。」の記載はあるものの、「基地局」から事前に与えられるとは記載されていない。

4-4.「第2の情報」が「変更期間」の境界で変更され、「第1の情報」が任意の時点での更新が可能であるかについて

本願明細書(下線は当審が付与。)には、

「【0033】
LTE-Aのリリース10においては、(マシンタイプコミュニケーション(MTC)装置104等の)無線装置が基地局102から現在のアクセスクラス118を受信したばかりである場合、該無線装置は基地局102の現在のアクセスクラス118を確定する(206)必要はない。しかし、このことは、基地局が緊急事態に対処しているが、アクセスクラス118を現在のものに更新しておらず(この更新は通常、変更期間(Modification Period)の終わりに行われる)、無線装置が十分なアクセス権を持たずにネットワークにアクセスを試みる期間を生み出す。この事態を改善するため、基地局102は変更期間中いつでもアクセスクラス118を更新してよい。また、無線装置はあらゆるトリガーとなるイベント後に基地局102の現在のアクセスクラス118を確定する(206)必要がある。これについては、図3を参照して、後ほどさらに詳細に説明する。」

と記載されているから、「アクセスクラス118」すなわち、「基地局のアクセスクラス」が更新可能であることは記載されているものの、「MTC装置のアクセスクラス」や「無線通信装置のアクセスクラス」が更新可能や変更可能であることは記載されていない。
そして、「MTC装置のアクセスクラス」や「無線通信装置のアクセスクラス」が「変更」や「更新」可能であることが記載されていないから、「変更期間の境界」や「任意の時点」での変更や更新が可能であることも、当然記載されていない。


4-5.まとめ

上記のように、請求人は、「第1の情報」が「無線通信装置のアクセスクラス」に対応し、「第2の情報」が「MTC装置のアクセスクラス」に対応するから、本願発明は明細書に記載されている発明であると主張しているが、本願明細書の記載では、
(1)「無線通信装置のアクセスクラス」や「MTC装置のアクセスクラス」は、基地局から受信されていない。
(2)「無線通信装置のアクセスクラス」は、「MTC装置によって実行される」場合に、アクセス権を有しているか否かを示す情報ではない。
(3)「無線通信装置のアクセスクラス」や「MTC装置のアクセスクラス」が「変更」や「更新」されるものであることは記載されていない。
であるから、本願発明は明細書に記載されている発明ではない。


6.むすび

上記のとおりであるから、本願発明は特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
したがって、他の請求項について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-06-28 
結審通知日 2016-07-05 
審決日 2016-07-19 
出願番号 特願2013-507024(P2013-507024)
審決分類 P 1 8・ 537- WZ (H04W)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 望月 章俊  
特許庁審判長 水野 恵雄
特許庁審判官 古市 徹
吉田 隆之
発明の名称 緊急時のマシンタイプコミュニケーション(MTC)装置のための修正アクセスクラス  
代理人 特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK  

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