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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01R
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H01R
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 取り消して特許、登録 H01R
管理番号 1319003
審判番号 不服2015-21824  
総通号数 202 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-10-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-12-09 
確定日 2016-09-27 
事件の表示 特願2011-227169「接続端子」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 5月13日出願公開、特開2013- 89372、請求項の数(8)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続きの経緯
本願は平成23年10月14日の出願であって、平成27年5月29日付けで拒絶理由が通知され、同年6月12日に手続補正がされたが、同年9月30日付け(発送日:同年10月2日)で拒絶査定され、これに対し、同年12月9日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、平成28年5月18日付けで当審において拒絶理由(以下、「当審拒絶理由(1)」という。)が通知され、同年6月17日に手続補正がされ、同年7月12日に最後の拒絶理由(以下、「当審拒絶理由(2)」という。)が通知され、同年7月28日に手続補正がされたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1ないし8に係る発明(以下、「本願発明1」ないし「本願発明8」という。)は、平成28年7月28日に手続補正された特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
金属板状体からなるオス型端子であって、
天面、底面、及び左右側面の四面のうち少なくとも三面が囲われ、前後に長手方向を有する箱体部と、前記長手方向前方から前記箱体部の外に延出する接触部を有する端子部と、を備え、
前記端子部は、前記底面の前端から天面方向に、または前記側面の前端から反対の側面方向に延びる立ち上がり部と、
前記立ち上がり部の端から前方に延びる連結部と、前記連結部の前端につながる前記接触部と、を備えることを特徴とするオス型端子。
【請求項2】
前記オス型端子であって、
前記箱体部の長手方向の長さL1、前記端子部の前記箱体部から外に延びている長さL2、である場合、0.8>L1/(L1+L2)>0.4の関係式が成り立つことを特徴とする請求項1記載のオス型端子。
【請求項3】
前記オス型端子であって、
前記接触部は、金属板を折り重ねて板厚みを構成する重ね合わせ部を備えることを特徴とする請求項1又は2記載のオス型端子。
【請求項4】
前記オス型端子であって、
前記接触部の中央部は、前記重ね合わせ部がなく、対応するメス型端子の係止片が係る窪み部が構成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のオス型端子。
【請求項5】
前記オス型端子であって、
前記立ち上り部が、前記箱体部内にあることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のオス型端子。
【請求項6】
前記オス型端子であって、
前記箱体部の天面が平坦面を備えることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載のオス型端子。
【請求項7】
請求項4から6のいすれか一項に記載のオス型端子と、前記オス型端子に接続するメス型端子と、を備え、
このメス型端子は、前記オス型端子の前記接触部を挟持する一対の挟持片を有し、この挟持片のうち少なくとも一方は、押圧部を備えた弾性片であって、この押圧部には、係止突起が備わり、
前記オス型端子の前記接触部は、前記メス型端子のこの押圧部に弾接され、前記窪み部にこの係止突起が係止することを特徴とする端子間接続構造。
【請求項8】
請求項4から6のいずれか一項に記載のオス型端子と、前記オス型端子に接続するメス型端子と、を備え、
前記オス型端子は、一方の基板の側端に少なくともひとつ実装され、
前記メス型端子は、他方の基板の側端に少なくともひとつ実装され、
前記一方、及び他方の基板同士の側端を対向させた姿勢で接続可能であることを特徴とする基板間接続構造。」

第3 原査定の理由について
1 原査定の理由の概要
本願発明1は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

刊行物1:特開平9-213387号公報
刊行物2:国際公開第2006/100945号
刊行物3:特開2009-158287号公報
刊行物1には、金属板状体からなり、天面、底面、及び左右側面の四面が囲われた箱体部(固着部12、23bや緩衝部15等)と、箱体部の天面下側または側面内側から左右幅方向に直交する長手方向である箱体部外に延出する接触部を有する端子部(端子嵌合部13、23a)と、を備えたオス型端子が記載されている。(段落【0010】-【0016】、段落【0019】、図1、図6参照。)
また、刊行物2、3には、オス型端子の端子部の高さ位置を調整するために、基板に固定されている底面と端子部の接触部との間に、垂直に立ち上がる立ち上がり部を形成したものが記載されている。(刊行物2の図8、刊行物3の段落【0014】、図1参照。)
刊行物1-3記載のオス型端子は、いずれも基板のエッジ部に実装されるオス型端子である点で、作用・機能が共通している。
而して、刊行物1記載の端子部に、刊行物2、3記載の立ち上がり部の構
成を採用することは、当業者が容易になし得たことである。そしてその際、立ち上がり部を端子部のどの位置に設けるかについては、当業者が適宜定める設計的事項と認める。

2 原査定の理由の判断
(1)刊行物
ア 刊行物1及び引用発明
刊行物1には、接続端子に関して図面と共に以下の事項が記載されている。
(ア)「【0010】図1に示したように、第1実施形態の接続端子10は、導電性の金属板をプレス加工することにより成形されたもので、プリント配線基板1上に固着される固着部11と、この固着部11に連設された図示されない電線側の端子が嵌合する端子嵌合部13と、プリント配線基板1に半田付けされる半田付け部14と、この半田付け部14を前記端子嵌合部13に接続する減肉されてその他の部分よりも曲げ剛性が低くされた緩衝部15を備えている。」

(イ)上記記載事項(ア)に照らせば、図1からは、天面、底面、及び左右側面の四面が囲われ、前後に長手方向を有する箱体部と、前記長手方向前方から前記箱体部の外に延出する接触部を有する端子部と、を備えるオス型端子が見て取れる。

(ウ)上記記載事項(ア)及び図示内容(イ)を総合して、本願発明に則って整理すると、刊行物1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
[引用発明]
「金属板からなるオス型端子であって、天面、底面、及び左右側面の四面が囲われ、前後に長手方向を有する箱体部と、前記長手方向前方から前記箱体部の外に延出する接触部を有する端子部と、を備えるオス型端子。」

イ 刊行物2
刊行物2には、「端子部材3」に関して、図1ないし3とともに、次の事項が記載されている。

(エ)「 [0026] 端子部材3は、導電性材料からなり、リード線4側のコネクタ5と接続する端子片16と、合わせガラス1に形成された封入電極8と静電容量結合するための外部電極17と、外部電極17を合わせガラス1に圧接させ、端子部材3を受け部材に保持する連結部18とからなる。端子片16は、JIS-D5403のPA、PB型に示される形状を有している。連結部18は、端子片16に連続して設けられ、その上部に受け部材2の溝部12と係合する突部19を備えている。外部電極17は連結部18に弾性部20を介して設けられている。弾性部20は、板状の部材を折り曲げることにより形成され、外部電極17に対して垂直方向の弾性を有している。また、弾性部20の自由空間での高さは、受け部材2と合わせガラス1によって形成される空間の高さと同じかそれより少し高く設定する。」

ウ 刊行物3
刊行物3には、「接続端子11」に関して、図1及び2とともに、次の事項が記載されている。

(オ)「【0014】
以下、本実施形態の接続端子11について詳細に説明する。
図1及び図2に示すように、矩形板状の金属板を側面視略クランク状に折り曲げ形成した接続端子11は、矩形板状の固定部12が回路基板Kの配線パターン(図示しない)に半田付けされている。回路基板Kに半田付けされた固定部12の一縁辺には、立設部13aが回路基板Kと直角に立設されており、さらに立設部13aから固定部12と反対方向へ回路基板Kと平行に延びるように延設部13bが形成されている。本実施形態では、立設部13aと延設部13bとから、ブスバーBに固定される接続部13が形成されている。ここで、延設部13bの延設された方向を「接続部13の延設方向」とし、接続部13の延設方向と直交する方向を「接続部13の幅方向」とする。また、「回路基板Kと平行」とは、延設部13bが回路基板Kと平行である状態はもとより、延設部13bが立設部13aと連結された部分から、回路基板Kとは反対方向へ向かって僅かに傾斜している状態や、逆に回路基板Kに向かって僅かに傾斜している状態を含む。」

(2)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、引用発明の「金属板」は、本願発明1の「金属板状体」に相当する。
したがって、本願発明1と引用発明とは、次の一致点で一致し、相違点で相違する
[一致点]
「金属板状体からなるオス型端子であって、
天面、底面、及び左右側面の四面のうち少なくとも三面が囲われ、前後に長手方向を有する箱体部と、前記長手方向前方から前記箱体部の外に延出する接触部を有する端子部と、を備えるオス型端子。」

[相違点]
本願発明1の端子部は、「前記底面の前端から天面方向に、または前記側面の前端から反対の側面方向に延びる立ち上がり部と、前記立ち上がり部の端から前方に延びる連結部と、前記連結部の前端につながる前記接触部と、を備える」構成であるのに対し、引用発明の端子部は、このような構成を有しない点。

(3)判断
以下、相違点について検討する。
刊行物1ないし3には、端子部として「前記底面の前端から天面方向に、または前記側面の前端から反対の側面方向に延びる立ち上がり部と、前記立ち上がり部の端から前方に延びる連結部と、前記連結部の前端につながる前記接触部と、を備える」構成は記載されていない。
したがって、引用発明及び刊行物1ないし3に記載された事項から、上記相違点の本願発明1の構成とすることは、当業者といえども容易に想到し得たとはいえない。

これに対して、本願発明1は、上記相違点の本願発明1の構成によって、「立ち上り部が箱体部内にあるので、立ち上り部は、箱体部が盾となって不用意な変形から防がれる。したがって、要部を守る構造のオス型端子が容易な加工で得られる。」(段落【0016】)という格別な効果を奏するのであるから、本願発明1は、引用発明及び刊行物1ないし3に記載された事項に基いて当業者が容易に発明することができたものではない。
そして、本願発明2ないし8は、本願発明1をさらに限定した発明であるから、本願発明1と同様に、引用発明及び刊行物1ないし3に記載された事項に基いて当業者が容易に発明することができたものではない。

よって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。

第4 当審拒絶理由について
1 当審拒絶理由(1)の概要
本願は、特許請求の範囲の記載が下記アないしカの点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

ア 請求項1冒頭の「金属板状体からなる」との記載は、「箱体部」に関する特定事項なのか、「オス型端子」に関する特定事項なのか、不明確である。
イ 請求項1の「天面、底面、及び左右側面の四面のうち少なくとも三面が囲われた箱体部と、この箱体部の前記天面下側または側面内側から前記左右幅方向に直交する長手方向である前記箱体部外に延出する接触部を有する端子部と、を備え、」との記載では、長手方向が箱体部の前後方向なのか上下方向なのか不明確である。

ウ 請求項1の「この端子部は、前記底面または側面につながる長手方向の端面から反対面方向に延びる立ち上り部と、」との記載では、「端面」の概念及び「立ち上がり部」の構造が不明確である。

エ 請求項1の「この立ち上り部につながる端面から前記箱体部外方向に延びる連結部と、この連結部の端面につながる前記接触部と、」との記載では、「端面」の概念並びに「連結部」及び「接触部」の構造が不明確である。
オ 請求項1ないし8の「ところに特徴を有する」という記載は明確でない。
カ 請求項4ないし8の「の内一項記載の」という記載は明確でない。

2 当審拒絶理由(2)の概要
本願は、特許請求の範囲の記載が下記キ及びクの点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

キ 請求項7の冒頭の「前記オス型端子と、」との記載の「前記」が何を指すのか不明である。

ク 請求項8の冒頭の「前記オス型端子と、前記メス型端子と、」との記載は、「前記」が何を指すのか不明である。

本願は、発明の詳細な説明の記載について下記ケないしスの点で、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。

ケ 明細書の段落【0009】末尾の「ことを特徴とする請求項1記載のものである。」との記載で、何を特定したいのか不明である。

コ 明細書の段落【0011】末尾の「ことを特徴とする請求項1又は2記載のものである。」との記載が、何を意味するのか不明である。

サ 明細書の段落【0013】末尾の「ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のものである。」との記載が、何を意味するのか不明である。

シ 明細書の段落【0015】末尾の「ことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のものである。」との記載が、何を意味するのか不明である。

ス 明細書の段落【0017】末尾の「ことを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載のものである。」との記載が、何を意味するのか不明である。

3 当審拒絶理由の判断
(1)平成28年7月28日の手続補正により、本願の請求項1ないし8は上記第2のとおりの記載となったため、当審拒絶理由(1)のアないしカの点並びに当審拒絶理由(2)のキ及びクの点は解消した。

(2)平成28年7月28日の手続補正により、明細書の段落【0009】、【0011】、【0013】、【0015】及び【0017】の末尾の記載は「ことを特徴とするものである。」とされたため、当審拒絶理由(2)のケないしスの点は解消した。

よって、当審で通知した拒絶理由によっては、本願を拒絶することはできない。

第5 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2016-09-14 
出願番号 特願2011-227169(P2011-227169)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H01R)
P 1 8・ 536- WY (H01R)
P 1 8・ 537- WY (H01R)
最終処分 成立  
前審関与審査官 石川 貴志  
特許庁審判長 森川 元嗣
特許庁審判官 内田 博之
中川 隆司
発明の名称 接続端子  

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