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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  H01B
審判 全部申し立て ただし書き1号特許請求の範囲の減縮  H01B
管理番号 1319180
異議申立番号 異議2015-700313  
総通号数 202 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2016-10-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2015-12-16 
確定日 2016-07-07 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5737323号発明「電気絶縁ケーブル」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5737323号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?3〕について訂正することを認める。 特許第5737323号の請求項1、及び2に係る特許を維持する。 特許第5737323号の請求項3に係る特許についての申立てを却下する。 
理由 第1.手続の経緯

特許第5737323号の請求項1?3に係る特許についての出願は、平成25年5月1日の特許出願であって、平成27年5月1日にその特許権の設定登録がされ、その特許に対して、平成27年12月16日に特許異議申立人 鈴木喜克により特許異議の申立てがされた。そして、平成28年2月19日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である平成28年4月22日に特許権者により意見書の提出及び訂正の請求があり、その後、平成28年6月15日に特許異議申立人により意見書が提出されたところである。


第2.訂正の適否についての判断

1.訂正の内容

平成28年4月22日付けの訂正請求(以下、「本件訂正請求」という。)による訂正の内容は以下の訂正事項1?5のとおりである。なお、下線は訂正部分を示す。

(1)訂正事項1

特許請求の範囲の請求項1に、「導体と前記導体を覆うように形成された絶縁層とを含むコア材が複数本撚り合されて形成されたコア電線」とあるのを、「導体と前記導体を覆うように形成された絶縁層とを含むシールドされていないコア材が複数本撚り合されて形成されたコア電線」に訂正する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に、「前記コア電線は、複数本の前記コア材として、互いに略同一の直径をそれぞれ有する2本の第1のコア材と、互いに略同一の直径をそれぞれ有する2本の第2のコア材と、を有し、」とあるのを、「前記コア電線は、複数本の前記コア材として、互いに略同一の直径をそれぞれ有する電動パーキングブレーキ用の2本の第1のコア材と、互いに略同一の直径をそれぞれ有するアンチロックブレーキシステム用の2本の第2のコア材と、を有し、」に訂正する。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項1に、「2本の前記第2のコア材は互いに撚り合されてサブユニットが形成され、前記サブユニットと2本の前記第1のコア部材とが撚り合されて前記コア電線が形成されている」とあるのを、「2本の前記第2のコア材は互いに撚り合されてサブユニットが形成され、前記サブユニットと撚られていない2本の前記第1のコア材とが撚り合されて前記コア電線が形成されており」に訂正する。

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項1に、「請求項1に記載の電気絶縁ケーブル」とあるのを、「前記第1の被覆層は、ポリオレフィン系樹脂、ポリウレタンエラストマー、ポリエステルエラストマー、またはこれらの少なくとも2種を混合して形成される化合物のいずれかである、電気絶縁ケーブル」に訂正する。

(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項3を削除する。

2.訂正要件についての判断

(1)一群の請求項要件
訂正前の請求項2、3は、訂正前の請求項1を引用しているから、これらの請求項は一群の請求項に該当する。本件訂正請求は請求項1ないし3について訂正を請求するものであるから、特許法120条の5第4項に規定する要件を満たす。

(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否

ア.訂正事項1について
(ア)訂正の目的の適否について
訂正事項1は、訂正前の「コア材」を、「シールドされていない」という限定事項を付加して「シールドされていないコア材」に限定するものであるから、特許法120条の5第2項第1号にいう「特許請求の範囲の減縮」を目的としたものに該当し、同法同条同項に規定する要件を満たす。

(イ)新規事項の有無について
訂正事項1に関して、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、単に「本件特許明細書等」という。)には、「コア材」を構成する「第1のコア材」及び「第2のコア材」がシールドされていることを示す記載はない。
ここで、電気信号を送信する際に、外部から到来するノイズが電気信号に混入することを抑制するためにシールドを施すことが技術常識であり、本件特許明細書等に記載される「第1のコア材」及び「第2のコア材」が電気信号を送信するためのものであることを考慮すると、上記シールドされていることを示す記載が特許明細書等にないことは、シールドが施されていることの記載を本件特許明細書等において省略した結果であると解する余地がないではない。
しかしながら、電気信号を送信するケーブルであっても、ノイズが問題にならない条件で使用される場合のような、シールドの必要がない使用場面は容易に想定されるから、「本件特許明細書等に記載される「電気信号を送信するためのケーブル」のコア材は、明記はないものの、例外なくシールドされている」といったことまでは到底いえない。
本件特許明細書等に記載される「電気信号を送信するためのケーブルのコア材」は、シールドについては限定がないもの、換言すれば、シールドされているものとシールドされていないものの両方を含んでいるもの、と解するのが妥当である。
以上を踏まえると、訂正事項1は、本件特許明細書等に実質的に記載があったといえる、「シールドされているコア材」と「シールドされていなコア材」の両方を含む技術的事項を、その一方である「シールドされていないコア材」に限定したものといえるから、本件特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではないといえる。
よって、訂正事項1は、新規事項を導入するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に規定する要件を満たす。
特許異議申立人は、「訂正事項1に基づく特許権者の主張は、出願時には認識していなかった技術思想に基づく主張である」旨主張している(平成28年6月15日付け意見書第3頁)が、訂正事項1に基づく特許権者の主張が、出願時には認識していなかった技術思想に基づくものであるか否かは、訂正事項1が新規事項を導入するものに該当するか否かとは関係のない事項である。
なお、訂正事項1は、出願時には認識し得なかった甲第1号証に記載される発明との違いを明確にするための訂正事項であるから、その訂正事項1に基づく主張は、出願時に認識していたか否かにかかわらず、本件特許明細書等の記載に基づく主張である以上、許されるというべきである。

(ウ)特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項1は、訂正前の「コア材」を、「シールドされていない」という限定事項を付加して「シールドされていないコア材」に限定するものであるから、特許請求の範囲を拡張したり変更したりするものでないことは明らかである。
したがって、訂正事項1は、特許法特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に規定する要件を満たす。


イ.訂正事項2について
(ア)訂正の目的の適否について
訂正事項2は、訂正前の「2本の第1コア材」、「2本の第2コア材」のそれぞれに、「電動パーキングブレーキ用の」、「アンチロックブレーキシステム用の」という限定事項を付加して、それぞれ、「電動パーキングブレーキ用の2本の第1コア材」、「アンチロックブレーキシステム用の2本の第2コア材」に限定するものであるから、特許法120条の5第2項第1号にいう「特許請求の範囲の減縮」を目的としたものに該当し、同法同条同項に規定する要件を満たす。

(イ)新規事項の有無について
一般に、電気絶縁ケーブルを何の用途に使うかは、許容電流値、絶縁性能等の電気絶縁ケーブルの種々の特性と、用途に応じて決まる最大電流値、電圧値等を比較して、当業者が適宜決定し得る事項であり、信号用か電源用かで区別する必要はない事項である。このことは、信号にも電源にも、種々の電圧、電流、周波数のものがあり得、信号用、電源用といっただけでは、電気的特性はなんら規定されないことから明らかである。
以上のことと、本件特許明細書の段落【0010】の「上記構成の電気絶縁ケーブルは、車両用途の細径のケーブルとして要求される性能である難燃性や絶縁性を満たすのに適している。」という記載を考慮すると、本件特許明細書に接した当業者は、信号用か電源用かにかかわらず、本件特許明細書に開示される電気絶縁ケーブルを、その仕様が、要求される電流、電圧値等の種々の特性を満たす範囲で、種々の車両用途に使用し得るものと理解する。
そして、その種々の車両用途の中に「電動パーキングブレーキ用」という用途や「アンチロックブレーキシステム用」という用途があり得ることは当業者に自明なことである。このことは、本件特許明細書の段落【0036】?【0038】の記載からも明らかである。
以上によれば、訂正事項2により導入された「電動パーキングブレーキ用」という技術的事項や「アンチロックブレーキシステム用」という技術的事項は、本件特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項であると考えるのが妥当である。
本件特許明細書の段落【0036】?【0038】に「電動パーキングブレーキの電気信号用」や「アンチロックブレーキシステムの電気信号用」に用いることができる旨の記載があって、それらの電源用に用いることができる旨の明示的記載がないことは、特許異議申立て人が平成28年6月15日付け意見書の第5頁で主張するとおりであるが、上記段落【0036】?【0038】の記載は、第2の実施形態の用途の一例を示したものであり、本件特許発明の電気絶縁ケーブルが、「電動パーキングブレーキ」や「アンチロックブレーキシステム」の電源用に使用できないことをまでを示すものではない。
本件特許発明の電気絶縁ケーブルが、「電動パーキングブレーキ」や「アンチロックブレーキシステム」の電源用に使用され得るか否かは、それらの用途における最大電流値等の要求電気特性と、電気絶縁ケーブルの仕様との関係で自ずと決まることであり、訂正事項2によって付加された限定事項がそれらの電源用の用途を含んでいるからといって、それを、本件特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項ではないということはできない。
以上のとおりであるから、訂正事項2も、新規事項を導入するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に規定する要件を満たす。

(ウ)特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項2は、訂正前の「2本の第1コア材」、「2本の第2コア材」のそれぞれに、「電動パーキングブレーキ用の」、「アンチロックブレーキシステム用の」という限定事項を付加して、それぞれ、「電動パーキングブレーキ用の2本の第1コア材」、「アンチロックブレーキシステム用の2本の第2コア材」に限定するものであるから、特許請求の範囲を拡張したり変更したりするものでないことは明らかである。
したがって、訂正事項2も、特許法特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に規定する要件を満たす。
特許異議申立人は、「訂正事項2は訂正前後の請求項1に係る発明の間で、課題と解決手段を変更したものである」旨主張し(平成28年6月15日付け意見書第6頁)、それを根拠に、訂正事項2が実質上特許請求の範囲を変更するものである旨主張するようであるが、課題と解決手段を変更したか否かは、実質上特許請求の範囲を変更するものか否かとは関係のない事項である(審判便覧「38訂正一般」の「38-03 P 訂正要件」の「8.実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないこと」の欄の記載参照)。訂正事項2による訂正後の発明の技術的範囲に、訂正前の発明の技術的範囲を逸脱する部分がない以上、訂正事項2による訂正は、実質上特許請求の範囲を変更することにはならないというべきである。

ウ.訂正事項3について
訂正事項3に関して、本件特許明細書の発明の詳細な説明の段落【0042】には「・・・電気絶縁ケーブル30はABS用の信号を送信するためのサブユニット31を有し、このサブユニット31は、その導体33の断面積が0.18?0.40mm^(2)の範囲に含まれる第2のコア材32が2本撚り合わせて形成されている。そして、このサブユニット31が2本の第1のコア材4と撚り合されてコア電線1Aが形成されている。・・・」と記載されており、さらに、図3には、第2のコア材32が2本撚り合わせて形成されたサブユニット31と、撚られていない2本の第1のコア材4が示されている。
そうすると、「コア電線」が「サブユニットと撚られていない2本の前記第1のコア材とが撚り合されて」形成されていることが、本件特許明細書等に記載されているものと認められる。
してみると、訂正事項3は、本件特許明細書等に記載された範囲内において、「コア電線」を「サブユニットと撚られていない2本の前記第1のコア材とが撚り合されて」形成されているとして限定したものといえるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、事実上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

エ.訂正事項4について
訂正事項4は、訂正前の請求項3において特定されていた「第1の被覆層」が「ポリオレフィン系樹脂、ポリウレタンエラストマー、ポリエステルエラストマー、またはこれらの少なくとも2種を混合して形成される化合物のいずれかである」ことを請求項1に組み入れようとするものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そして、訂正事項4が、本件特許明細書等に記載された事項の範囲内でしたもので、事実上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかである。

オ.訂正事項5について
上記訂正事項5は、請求項3を削除するというものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そして、訂正事項5が、本件特許明細書等に記載された事項の範囲内でしたもので、事実上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかである。

3.むすび

以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第4項の規定に適合し、かつ、同条第2項第1号に掲げる事項を目的とするものであり、さらに、同条第9項において準用する同法第126条第4項から第6項の規定に適合するので、本件訂正請求を認める。


第3.取消理由について

1.本件特許発明

本件訂正請求により訂正された訂正請求項1及び2に係る発明(以下、それぞれ「本件特許発明1」、「本件特許発明2」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。

【請求項1】

「導体と前記導体を覆うように形成された絶縁層とを含むシールドされていないコア材が複数本撚り合されて形成されたコア電線と、
前記コア電線を覆うように形成された第1の被覆層と、
前記第1の被覆層を覆うように形成された第2の被覆層と、
前記コア電線と前記第1の被覆層との間に、前記コア電線に巻かれた状態で配置されたテープ部材と、
を備え、
前記第2の被覆層は、難燃性のポリウレタン系樹脂で形成され、
各々の前記導体の断面積は、0.18?3.0mm^(2)の範囲に含まれ、
前記コア電線は、複数本の前記コア材として、互いに略同一の直径をそれぞれ有する電動パーキングブレーキ用の2本の第1のコア材と、互いに略同一の直径をそれぞれ有するアンチロックブレーキシステム用の2本の第2のコア材と、を有し、
2本の前記第1のコア材の各々の導体の断面積は、1.5?3.0mm^(2)の範囲に含まれ、
2本の前記第2のコア材の各々の導体の断面積は、0.18?0.40mm^(2)の範囲に含まれ、
2本の前記第2のコア材は互いに撚り合されてサブユニットが形成され、前記サブユニットと撚られていない2本の前記第1のコア材とが撚り合されて前記コア電線が形成されており、
前記第1の被覆層は、ポリオレフィン系樹脂、ポリウレタンエラストマー、ポリエステルエラストマー、またはこれらの少なくとも2種を混合して形成される化合物のいずれかである、
電気絶縁ケーブル。」

【請求項2】

「前記コア材の前記絶縁層は、難燃性のポリオレフィン系樹脂で形成されている、請求項1に記載の電気絶縁ケーブル。」


2.取消理由の概要

訂正前の請求項1?3に係る特許に対して平成28年2月19日付けで特許権者に通知した取消理由は、要旨次のとおりである。

ア.取消理由1-1
請求項1?3に係る発明は、下記の甲第1号証に記載の発明に、甲第2号証?甲第5号証に記載される技術事項を適用して、当業者が容易に発明をすることができたものであって、請求項1?3に係る発明についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

イ.取消理由1-2
請求項1?3に係る発明は、下記の甲第2号証に記載の発明に、甲1、3?5、7?8号証に記載される技術事項を適用して、当業者が容易に発明をすることができたものであって、請求項1?3に係る発明についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。


甲第1号証: 特開2004-111178号公報
甲第2号証: 国際公開第99/60578号公報
甲第3号証: 特開2000-322946号公報
甲第4号証: 特許第4816719号公報(発行日:平成23年11月16日)
甲第5号証: 電線ケーブルハンドブック編集委員会 編,「四訂 電線・ケーブルハンドブック」,株式会社 山海堂,昭和59年(1984年)10月30日,p. 155
甲第7号証: 特開2006-351322号公報
甲第8号証: 特開平6-052729号公報


第4.甲号証の記載事項
1.甲第1号証の記載事項
甲第1号証には、図面と共に以下の事項が記載又は示されている。(下線は、当審において付加した。以下同じ。)
(1)「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車で使用される電気ブレーキシステムに、電力を供給すると共に、制御信号を伝送する電気ブレーキ用ケーブルに関するものである。」(2頁17-20行)

(2)「【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来のシールドケーブル41では、シールド層44を確実に基準電位に接続しなければ、上述のようなノイズ除去効果を確実に得ることができない。すなわち、シールド層44が確実に基準電位に接続されていない場合には、シールド層44からEMIノイズが外部に輻射するという問題がある。また、このシールド層44のアンテナ効果によりコモンモードノイズが発生し、電磁波ノイズが輻射することがある。
【0011】
これらのノイズ対策として、シールドケーブル41にフェライトコアを挿通させる方法が一般的に採用されているが、自動車で使用する場合は、振動によりフェライトコアが割れるおそれや、重量が重くなる、フェライトコアを装着するスペースが必要、フェライトコアの保持方法の工夫(例えば、樹脂モールド成形やカバーケース)が必要、ケーブル外径が大きくなるなど取り扱い上の問題が多い。
【0012】
また、従来の電力供給ケーブルでは、各絶縁電線の絶縁体が全てフェライト含有樹脂で形成されているので、ノイズを有効に抑制できるものの、機械的特性や成形性が悪化するという問題がある。
【0013】
そこで、本発明の目的は、フェライトコアを必要とせず、機械的特性・成形性が良好であり、広帯域に亘ってノイズを有効に抑制でき、取り扱い上の問題がない電気ブレーキ用ノイズ対策ケーブルを提供することにある。」(3頁10-30行)


(3)「【0020】
図1に示すように、本発明に係る電気ブレーキ用ノイズ対策ケーブル1は、主として電気自動車やハイブリッドカーに搭載された電気ブレーキシステムに、電力を供給すると共に、制御信号を伝送するものである。
【0021】
電気ブレーキ用ノイズ対策ケーブル1は、電気ブレーキシステムの制御用モータ等の機器に電力を供給する電力供給線としての2本の電源線2,2と、電気ブレーキシステムの制御用モータ等の機器にブレーキペダルの踏み込み量等の制御信号を伝送する2本の信号線3,3を備えている。
【0022】
各電源線2は、中心の導体4の外周を絶縁体5で被覆した絶縁電線である。絶縁体5は、樹脂に磁性粉を混合した磁性粉混合樹脂層6と、その磁性粉混合樹脂層6の外周を被覆する樹脂の絶縁層7とからなる二層構造になっている。
【0023】
各信号線3は、中心の導体8の外周を絶縁層7で被覆した絶縁電線である。2本の信号線3,3は撚り合わせられ、これらの外周にシールド9が被覆され、1本のシールドケーブル10となっている。シールド9としては、例えば、銅などの金属編組線を用いている。
【0024】
2本の電源線2,2と1本のシールドケーブル10とは、まとめて撚り合わせられ、これらの外周にシース層11が被覆されている。シース層11は、樹脂に磁性粉を混合した磁性粉混合樹脂層6と、その磁性粉混合樹脂層6の外周を被覆する樹脂の保護シース層12とからなる二層構造になっている。
【0025】
シース層11を、磁性粉混合樹脂層6と保護シース層12とからなる二層構造とすることによって、シース層11の機械的強度が補強され、着色が可能であり、また表面状態も滑らかとなり、外観上も良好となる。
【0026】
導体4を絶縁体5で被覆する方法としては、磁性粉混合樹脂層6と絶縁層7の境界面の接着性を考慮して、磁性粉混合樹脂層6と絶縁層7の両層を同時に押出し被覆する方法がよい。電源線2,2とシールドケーブル10をシース層11で被覆する方法についても同様である。
【0027】
信号線3,3とシールド9間や、電源線2,2とシールドケーブル10間、電源線2,2およびシールドケーブル10と磁性粉混合樹脂層6間には、図示しない介在が充填されている。各部材の材質によっては、介在を使用しなくてもよい。
【0028】
絶縁層7と保護シース層12は、本実施の形態では同じ材質であり、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、シリコンゴム、フッ素系ゴムなどの優れた絶縁材料である合成樹脂で形成されている。」(4頁3-41行)

上記甲第1号証の段落【0023】、【0024】の記載、及び図1の記載を参酌すると、甲第1号証では、電力を供給する2本の撚られていない電源線2と、制御信号を伝送する2本の信号線3を撚り合わせたシールドケーブル10が、撚り合わされて「電線群」を形成しているものと認められる。また、2本の電源線2を「第1の電線群」と、また、「2本の信号線3」を「第2の電線群」と呼ぶものとする。
さらに、図1の記載によれば、明らかに、2本の電源線2の直径は略同一であり、さらに、2本の信号線3の直径も略同一であると認められる。
以上総合すると、甲第1号証には、以下の発明(以下、「甲1発明」という。)が開示されていると認められる。

「導体4と、磁性粉混合樹脂層6及び絶縁層7とを含む車両電気ブレーキシステムに電力を供給する2本の撚られていない電源線2、及び導体8と絶縁層7を含む車両用電気ブレーキシステムに制御信号を伝送する2本の信号線3を撚り合わせたシールドケーブル10を撚り合わされて形成された電線群と、
前記電線群を覆うように形成された磁性粉混合樹脂層6と、
前記磁性粉混合樹脂層6を覆うように形成された保護シース層12とを有し、
前記電線群は、互いに略同一の直径をそれぞれ有する2本の電源線2を含む第1の電線群と、互いに略同一の直径をそれぞれ有する2本の信号線3を含む第2の電線群とを有する、
電気ブレーキ用ノイズ対策ケーブル。」

2.甲第2号証の記載事項
甲第2号証には、図面と共に以下の事項が記載又は示されている。(ウムラウト母音は「'」「'」で囲み、エスツェットは「ss」で代用した。なお、翻訳は、特許異議申立人によるものである。)

(1)「The inventive cable (1) contains at least one pair of conductors (11, 15) with conductor insulation (13, 15). A first separator (21) is placed around the conductor insulation. An inner sheath (9) is then placed around said separator without leaving any space, to produce a structure whose outer contour has a circular cross-section. A braided screen (5) and an outer cable sheath (3) are then placed around the inner sheath in a ring shape. The advantage of the inventive cable is that the conductors can be exposed rapidly and without causing any damage by stripping the cable sheath, the braided screen and the inner sheath using cutting tools.」(「Abstract」欄)
(訳:本発明のケーブル(1)は、少なくとも導体絶縁(13、17(但し、15は17の誤記と認められる))を有する一対の導体(11、15)を含む。第1のセパレート(21)は、導体絶縁の周りに位置している。次に、内部シース(9)が、外径が円形断面を有する構造にするため、スペースを形成することなく前記セパレータの周りに位置している。次に、編組スクリーン(5)と外部ケーブルシース(3)が、環状の内部シースの周りに位置している。本発明のケーブルの利点は、カッティングツールを用いてケーブルシース、編組スクリーン及び内部シースを剥離することにより、迅速に、かつ、いかなる損傷も発生させずに、導体が露出できることである。)

(2)「Das in der Figur im Querschnitt dargestellte Kabel 1 dient zur 'U'bertragung von elektrischen Signalen und weist hierzu mindestens ein Paar von nebeneinander liegenden Adern 11 und 15 auf. Bei den Adern kann es sich jeweils um Kupferlitzendr'a'hte handeln, welche gegeneinander verseilt sind. Jede Ader 11 und 15 weist ferner eine separate Aderisolierung 13 und 15 auf. Diese kann bevorzugt aus einem sogenannten Zell - Polye- thylen Dielektrikum bestehen. Um die Aderisolierungen 13, 17 des Adernpaares 11, 15 ist eine erste Trennschicht 21 gelegt, welche bevorzugt aus einer Polyesterfolie besteht. Die dabei im Innenbereich zwischen den Aderisolierungen 13 , 17 und der Trennschicht 21 auftretenden Zwickelbereiche k'o'nnen unausge- f'u'llt bleiben.

Erfindungsgem'a'ss wird nun ein Innenmantel 9 aus leicht extru- dierbarem Polyvinylchlorid hohlraumfrei so um die erste Trennschicht 21 extrudiert, dass ein Aufbau mit einer im Quer- schnitt kreisf'o'rmigen Aussenkontur entsteht. Dabei weist die Kreisform der Aussenkontur eine hohe Genauigkeit auf. Ferner ist die Einheit aus dem mit der Trennschicht 21 umgebenen Adernpaares sehr gleichm'a'ssig mit dem Innenmantel 9 aus Polyvinylchlorid umspritzt. Zur Fertigstellung des Kabels sind ferner ein Schirmgeflecht 5 bevorzugt aus verzinntem Kupfer- gewebe ringf'o'rmig um den Innenmantel 9 und schliesslich ein 'a'usserer Kabelmantel 3 bevorzugt aus Polyvinylchlorid ringf'o'rmig um das Schirmgeflecht 5 gelegt. Vorteilhaft kann das Kabel 1 eine zweite Trennschicht 7 aufweisen, welche ringf'o'rmig um den Innenmantel 9 gelegt und vom Schirmgeflecht 5 umgeben ist. Diese besteht bevorzugt aus einer metallisierten Polyesterfolie .

Dieser erfindungsgem'a'sse pr'a'zise geometrische Aufbau des Kabels erm'o'glicht nun eine pr'a'size Einstellung der Einschnitttiefe eines radial in den 'a'usseren Kabelmantel 3 und die darunter liegenden Schichten einschneidenden Abisolierwerkzeuges. Ein vorteilhaftes, handels'u'bliches Abisolier- und Schneidwerkzeug dieser Art ist unter der Bezeichnung stripax von der Firma Weidm'u'ller erh'a'ltlich.

Im Beispiel der Figur ist in Form eines strichlierten Kreises 23 die sich bei Einsatz eines radial einschneidenden Werkzeuges mit optimal eingestellter Eindringtiefe der Schneidmesser ergebende Umfangsschnittlinie dargestellt. Es ist zu erkennen, dass nicht nur der 'a'ussere Kabelmantel 3, das Schirmgefiecht 5 und die zweite Trennschicht 7 in einem Arbeitsgang vollst'a'ndig durchtrennbar sind. Vielmehr kann auch der Innenmantel 9 aus leicht extrudierbarem Polyvinylchlorid insbeson- dere an dessen schm'a'lsten Stegbereichen 25 und 27 pr'a'zise eingeschnitten werden. Eine Verletzung insbesondere der darunterliegenden Aderisolationen 13 und 17 wird mit Sicherheit vermieden.

Andererseits ist die Struktur des Innenmantels 19 durch die Schnitte in den Stegbereichen 25 und 27 bereits so geschw'a'cht, dass dieser in Form von zwei H'a'lften mit geringstem Aufwand abgenommen werden kann. Ist das Polyvinylchlorid des Innenmantels 9 noch mit entsprechenden Zuschlagstoffen ver- setzt, so dass die Haftung des Innenmantels an der ersten und/oder zweiten Trennschicht 21, 7 eingeschr'a'nkt ist und der Innenmantel 9 eine verringerte Reissfestigkeit bei gleichzeitig erh'o'hter Br'u'chigkeit aufweist, so kann dieser m'u'helos abzogen werden.」(3頁13行-5頁4行)
(訳:図の断面内に示されるケーブル1は、電気信号を送信するために用いられ、そしてその目的のため、互いに隣接して横たわるワイヤ11及び15を有する。前記ワイヤは、それぞれ撚り銅線であり得る。ワイヤ11及び15のそれぞれは、さらに、独立したワイヤ絶縁13及び17(但し、15は17の誤記と認められる。)を有する。これは、好ましくは、所謂発泡ポリエチレン誘電体からなることができる。前記ワイヤの組11及び15が有する前記ワイヤ絶縁13及び17の周りには、第1のセパレート層21が存在し、好ましくは、ポリエステルフィルムからなる。それにより、前記ワイヤ絶縁13、17と前記第1のセパレート層21の間に発生する隙間が満たされない状態を維持することができる。

次に、本発明によれば、内部コーティング9は、断面において円形に形成された外周を有する形状が形成されるように、前記第1のセパレート層21の周りに容易に押し出し可能なポリ塩化ビニルによって、中空の空間なしに形成される。それによって、外周の円形状は高い正確性を有する。さらに、前記セパレート層21によって囲まれた前記ワイヤの組によって形成された前記ユニットは、ポリ塩化ビニルの内部コーティングによって均一に被覆されている。前記ケーブルを完全にするため、その上、好ましくはすずメッキされた銅メッシュによって作られた編組5が、前記内部コーティング9の周りに円形に形成され、最後に、好ましくはポリ塩化ビニルによって形成された外部ケーブルコーティング3が、前記編組5の周りに円形に形成される。好ましくは、前記ケーブル1は、前記内部コーティング9の周りに円形に形成され、前記編組5によって覆われる第2のセパレータ層7を含むことができる。これは、好ましくは、ポリエステルフィルムからなる。

次に、こうした本発明のケーブルの正確な幾何学的構造は、外部ケーブルコーティング3及びその下に形成された複数層に放射状に切りこむ、露出工具の切断深さの正確なセッティングを可能とする。この種の好ましく商業的に利用可能な露出及び切断工具は、ウェイドミューラー(Weidm'u'ller)社からストリパックス(stripax)の名前で利用可能である。

図の例においては、放射状に切断する道具の使用、及び切断歯の切断深さを最善に設定した状態の結果である周囲切断ラインが、点線の円形23の形で示されている。外部ケーブルコーティング3のみならず、編組5及び第2のセパレータ層7が、単一のステップで完全に切断されている状態を見ることができる。その上、容易に押し出し可能なポリ塩化ビニルによって形成された内部コーティング9も、特にその最も狭いブリッジ領域25及び27で、正確に切断され得る。とりわけ、その上に横たわるワイヤ絶縁13及び17への浸入は、確実に避けられている。

一方で、内部コーティング9の構造は、すでに、ほとんど労力を要さずに2半分の形態に除去されうる程度に、ブリッジ領域25及び27の切断によって弱められている。もし、前記内部コーティング9のポリ塩化ビニルが、第1及び第2のセパレータ層21、7における前記内部コーティングの貼りつきが制限され、内部コーティング9が、低減された引裂強度を有し、一方で、同時に増加された脆さを有するように、対応する添加剤をさらに備える場合には、それは容易に取り除かれる。)

図の記載において、導体絶縁13、17からなる部分を「中心部」と呼ぶ。また、図の記載から、該中心部を構成する、2本の部材である導体11及び導体絶縁13、導体15及び導体絶縁17は、互いに略同一の直径と認められる。
以上総合すると、甲第2号証には、以下の発明(以下、「甲2発明」という。)が開示されていると認められる。

「導体11、15と導体を覆うように形成された導体絶縁13、17とを含むシールドされていない部材からなる中心部と、
当該中心部を覆うように形成された内部シース9と、
当該内部シース9の周囲に設けた編組シールド5と、
当該編組シールド5を覆うように形成された外部ケーブルシース3と、
当該中心部と当該内部シース9との間に、当該中心部に巻かれた状態で配置されたポリエステルフィルムからなる第1のセパレート層21と、
を備え、
前記中心部は、複数本の前記部材として、互いに略同一の直径をそれぞれ有する2本の部材である導体11及び導体絶縁13、導体15及び導体絶縁17を有する、
ケーブル1。」

3.甲第3号証の記載事項
甲第3号証には、図面と共に以下の事項が記載又は示されている。

(1)「【0003】このような絶縁被覆材料やシース被覆材料として用いられている高分子材料として、熱可塑性ウレタンエラストマ(以下、「TPU」という)がある。TPUは柔らかくて可撓性が優れ且つ強靭で、しかも150℃以上の耐熱性、優れた耐摩耗性、優れた耐低温性等を有している。更に、このTPUを被覆して成る絶縁電線やケーブルは、その端末或いはその中間部にインサート射出成形等によりポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、アクリル樹脂等をモールド成形したときに、それらの射出樹脂との接着性が優れているという特長も有している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、TPU被覆電線・ケーブルはTPU自体がポリエチレン等のポリオレフィン系材料よりも高価であり、その結果材料コストが高くなってしまうという難点がある。」(2頁1-2欄)

(2)「【0014】本発明において外層に用いるTPUとしては、エーテル系TPU、エステル系TPU、アジペート系TPU、カプロラクトン系TPU、ポリカーボネート系TPUが挙げられる。これらの中で耐加水分解性が良好なものは、エーテル系TPUである。硬度は特に規定しないが、強度、可撓性の観点からJISA80?95が好ましい。」(3頁3欄)

(3)「【0015】本発明において内層のポリオレフィンとしては、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、直鎖状超低密度ポリエチレン、エチレン-メチルメタクリレート共重合体、エチレン-メチルアクリレート共重合体、エチレン-エチルアクリレート共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-メチルアクリレート共重合体、エチレン-グリシジルメタクリレート共重合体、エチレン-無水マレイン酸共重合体、エチレン-ブテン-1共重合体、エチレン-ブテン-へキセン三元共重合体、エチレン-プロピレン-ジエン三元共重合体、スチレン-エチレンブチレン-スチレン三元共重合体、スチレン-エチレンブチレン二元共重合体、スチレン-エチレンプロピレン-スチレン三元共重合体、スチレン-エチレンプロピレン二元共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体、水素添加スチレン-ブタジエン共重合体、塩素化ポリエチレン、クロロスルホン化ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン共重合ポリプロピレン、ポリ-4-メチル-ペンテン-1、マレイン酸グラフ卜低密度ポリエチレン、マレイン酸グラフト直類状低密度ポリエチレン、マレイン酸グラフトエチレン-メチルメタクリレート共重合体、マレイン酸グラフトエチレン-メチルアクリレート共重合体、マレイン酸グラフトエチレン-酢酸ビニル共重合体、マレイン酸グラフトエチレン-メチルアクリレート共重合体、エチレン-無水マレイン酸共重合体、エチレン-エチルアクリレート-無水マレイン酸三元共重合体、液状ゴム等がある。これらは単独または2種以上をブレンドしたゴム、プラスチック材料としても用いることができる。」(3頁3欄)

(4)「【0020】これら外層、中間層、内層の各材料には難燃性を向上させるための難燃剤を添加することができる。」(3頁4欄)


4.甲第4号証の記載事項
甲第4号証には、図面と共に以下の事項が記載又は示されている。

(1)「【0006】
ABSセンサーケーブルのような車載用途のケーブルには優れた耐摩耗性が要求される。そこで、ケーブルの外周を覆うシース(外部シース)には、機械的強度に優れた材料として、熱可塑性ポリウレタンエラストマーなどが用いられる。
一方、車載用途のケーブルには、優れた難燃性も要求される。しかしながら、外部シースが例えば上記のようにエラストマーの混合物等により形成されている場合、当該形成樹脂に水酸化マグネシウムなどの難燃剤を添加すると耐摩耗性が低下する場合があった。」(2頁20-26行)

(2)「【0013】
図1は、本実施形態に係る難燃ケーブルの断面図である。
図1に示すように、難燃ケーブル10は、絶縁電線部20と、絶縁電線部20の外側に形成された被覆部30とを有する。絶縁電線部20は、撚り合わされた2本の絶縁電線21,22を含む。本実施形態において、絶縁電線21,22の各々は、導電部21a,22aの周囲を絶縁被覆21b,22bで覆われた被覆電線である。」(3頁8-13行)

(3)「【0016】
第2被覆部32は、従来のABSセンサーケーブルの外部シースに相当するものであるが、本実施形態においては、例えば熱可塑性ポリウレタンエラストマーを主成分とする樹脂組成物または当該樹脂組成物の架橋体により形成される。」(3頁29-32行)

(4)「【0018】
また、第2被覆部32を形成する樹脂組成物には、非ハロゲン系難燃剤が添加される。非ハロゲン系難燃剤としては、金属水酸化物または窒素系難燃剤が好ましい。また、金属水酸化物としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどが例示でき、窒素系難燃剤としては、メラミン、メラミンシアヌレート、リン酸メラミンなどが例示できる。中でも、金属水酸化物としては水酸化マグネシウムが、窒素系難燃剤としてはメラミンシアヌレートが好ましい。」(3頁40-45行)

(5)「【0027】
(絶縁電線の製造)
LLDPE(融点122℃、メルトフローレート1.0)100重量部、難燃剤として水酸化マグネシウム(平均粒径0.8μm、BET比表面積8m^(2)/g)の80重量部、酸化防止剤としてイルガノックス1010(チバスペッシャリティケミカルズ、商品名)の0.5重量部、およびトリメチロールプロパントリメタクリレートの3重量部の割合からなる配合組成物を、二軸混合機(バレル径45mm、L/D=32)を用いて溶融混合し、吐出ストランドを水冷カットする方法でペレットとした。
【0028】
上記のペレットを、短軸押出機(シリンダー径30mm、L/D=24)を用いて、断面積0.35mm^(2)の撚り線導体上に平均肉厚が0.30mmとなるように押出被覆した後、加速電圧1MeVの電子線を150kGy照射して絶縁電線を製造した。」(4頁43行-5頁4行)

5.甲第5号証の記載事項
甲第5号証には、図面と共に以下の事項が記載又は示されている。

(1)「3.4.10 自動車用電線
自動車用電線は一般配線の低圧電線、耐熱電線と、点火栓に配線する高圧電線に分けられる。
(a)自動車用低圧電線(AV)
導体は可とうよりと半可とうより線の2種類あるが、バッテリ回路を除いては5mm^(2)以下の細い線が用いられる.」(155頁下から4-9行)

6.甲第7号証の記載事項判断
甲第7号証には、図面と共に以下の事項が記載又は示されている。

(1)「【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、自動車のバネ下の部位に使用されているケーブル(以下、バネ下ケーブルという)は使用条件が過酷であるため、そのシース層には、耐熱性、耐外傷性、耐水性、耐油性、及び耐オゾン性などといった種々の耐環境性が要求される。また、バネ下ケーブルにはサスペンションの駆動に伴う揺動が加わることから、耐屈曲性などについても高い信頼性が要求される。これらの要求に適合するシース材として、従来、機械的特性の良好なゴム材料が使用されていた。
【0007】
しかしながら、ゴム材料をシース材として用いたケーブルに、予想外の過大な引張荷重が加わった場合、ゴム材料は弾性率が低いことから、ゴムシースに大きな伸びが生じてしまう。これによって、例えば、ケーブルを固定している金具の位置がズレて、ケーブル配置にズレが生じてしまうおそれがある。その結果、ケーブルとケーブル周囲に配置された機器(以下、周辺機器という)が接触してシース破損が生じたり、ケーブル内部の芯線(絶縁導体)に想定外の過大な応力が負荷され、導体が断線するおそれがある。
【0008】
よって、耐環境性、耐屈曲性、及び引張特性がいずれも良好であり、かつ、電磁波シールド性が良好なケーブルが求められている。」(3頁20-37行)

(2)「【0022】
導体コア11は、図2に示すように、複数本(図2中では2本を図示)の電源線(電力線)21と複数本(図2中では2本を図示)の信号線25を撚り合わせてなる。各電源線21は、導体22を絶縁層23で被覆したものである。各信号線25は、導体27を絶縁層28で被覆してなる素線26を2本撚り合わせ、その対撚線を編組シールド29で被覆したものである。導体22,27の構成材としては、例えばSn含有銅合金(Cu-0.15?0.7wt%Sn合金)、絶縁層23,28の構成材としては、例えば架橋ポリエチレンが挙げられる。」(5頁3-10行)

7.甲第8号証の記載事項
甲第8号証には、図面と共に以下の事項が記載又は示されている。

(1)「【0009】
【実施例】本発明の実施例を図面を参照して詳細にのべると、図1は本発明に係るスピーカ用複合ケーブル10を示し、このスピーカ用複合ケーブル10は、低音用対12と高音用対14から成っている。低音用対12は、2本の絶縁導体16を対撚りして形成され、また高音用対14は、絶縁導体18を対撚りして形成されている。これらの対12、14は、更に相互に撚り合わせられてケーブルコア20を形成し、その上にシース(ジャケット)22を被覆して複合ケーブル10を形成している。尚、図2に示すように、本発明のスピーカ用複合ケーブル10は、高音用対14を2対撚り(カッド撚り)として形成されていることを除いて図1の複合ケーブル10と同じである。図1及び図2において符号16A、18Aは導体、16B、18Bは絶縁体である。」(2頁2欄)


第5.対比・判断
ア.取消理由1-1につい

(ア)本件特許発明1について
本件特許発明1と甲1発明とを対比すると以下のとおりである。

a.甲1発明の「導体4」及び「導体8」は、本件特許発明1の「導体」に相当し、また、甲1発明の「絶縁層7」は、本件特許発明1の「絶縁層」に相当する。
そして、甲1発明の「電源線2」は、「導体4」と「絶縁層7」を含むものであり、また、「信号線3」も、「導体8」と「絶縁層7」を含むものであるから、甲1発明の「電源線2」及び「信号線3」は、本件特許発明1の「コア材」と、「導体と前記導体を覆うように形成された絶縁層とを含むコア材」の点で共通する。
さらに、甲1発明の「第1の電線群」は、「互いに略同一の直径をそれぞれ有する2本の電源線2を含む」ものであり、また、甲1発明の「第2の電線群」は、「互いに略同一の直径をそれぞれ有する2本の信号線3を含む」ものであるから、甲1発明の「第1の電線群」、及び「第2の電線群」は、それぞれ本件特許発明1の「複数本の前記コア材として、互いに略同一の直径をそれぞれ有する2本の第1のコア材」、及び「互いに略同一の直径をそれぞれ有する2本の第2のコア材」に相当する。

b.甲1発明の「電線群」は、「電源線2」と「信号線3を撚り合わせたシールドケーブル10」を「撚り合わされて形成された」ものであるから、本件特許発明1の「コア材が複数本撚り合されて形成されたコア電線」に相当する。
また、甲1発明の「シールドケーブル10」は、「第2の電線群」を撚り合わしたしたものであるから、本件特許発明1の「サブユニット」に相当し、さらに、甲1発明では、「シールドケーブル10」と、撚られていない「第2電線群」を撚って「電線群」を形成しており、甲1発明と「本件特許発明1」は、「2本の前記第2のコア材は互いに撚り合されてサブユニットが形成され、前記サブユニットと撚られていない2本の前記第1のコア材とが撚り合されて前記コア電線が形成されている」点で一致している。

c.甲1発明の「電線群を覆うように形成された磁性粉混合樹脂層6は、本件特許発明1の「コア電線を覆うように形成された第1の被覆層」に相当し、さらに、甲1発明の「磁性粉混合樹脂層6を覆うように形成された保護シース層12」は、本件特許発明1の「第1の被覆層を覆うように形成された第2の被覆層」に相当する。

そうすると、両者は、

「導体と前記導体を覆うように形成された絶縁層とを含むコア材が複数本撚り合されて形成されたコア電線と、
前記コア電線を覆うように形成された第1の被覆層と、
前記第1の被覆層を覆うように形成された第2の被覆層と、
を備え、
前記コア電線は、複数本の前記コア材として、互いに略同一の直径をそれぞれ有する2本の第1のコア材と、互いに略同一の直径をそれぞれ有する2本の第2のコア材と、を有し、
2本の前記第2のコア材は互いに撚り合されてサブユニットが形成され、前記サブユニットと撚られていない2本の前記第1のコア材とが撚り合されて前記コア電線が形成されている、
電気絶縁ケーブル。」

の点で一致し、少なくとも次の点で相違する。

<相違点>
<相違点1>
本件特許発明1は、「前記コア電線と前記第1の被覆層との間に、前記コア電線に巻かれた状態で配置されたテープ部材」を備えるのに対し、
甲1発明は、当該構成を備えていない点。

<相違点2>
本件特許発明1の第2の被覆層は、「難燃性のポリウレタン系樹脂で形成され」ているのに対し、
甲1発明の第2の被覆層(保護シース層12)は、そのようなものには特定されていない点。

<相違点3>
本件特許発明1は、「各々の前記導体の断面積は、0.18?3.0mm2の範囲に含まれ」ているのに対し、
甲1発明は、導体(導体4及び導体8)がそのようなものには特定されていない点。

<相違点4>
本件特許発明1は、「2本の前記第1のコア材の各々の導体の断面積は、1.5?3.0mm2の範囲に含まれ」ているのに対し、
甲1発明は、第1のコア材の各々の導体(導体4)がそのようなものには特定されていない点。

<相違点5>
本件特許発明1は、「2本の前記第2のコア材の各々の導体の断面積は、0.18?0.40mm2の範囲に含まれ」ているのに対し、
甲1発明は、第2のコア材の各々の導体(導体8)がそのようなものには特定されていない点。

<相違点6>
本件特許発明1は、「導体と前記導体を覆うように形成された絶縁層とを含むシールドされていないコア材が複数本撚り合されて形成されたコア電線」を備えるのに対して、
甲1発明では、「それぞれシールドされた電力線及び信号線が複数本撚り合されて形成された電線」を備えている点。

<相違点7>
本件特許発明1のコア電線は、「複数本の前記コア材として、互いに略同一の直径をそれぞれ有する電動パーキングブレーキ用の2本の第1のコア材と、互いに略同一の直径をそれぞれ有するアンチロックブレーキシステム用の2本の第2のコア材と」を有するのに対して、
甲1発明では、「車両電気ブレーキシステムに電力を供給する2本の電源線2、及び車両用電気ブレーキシステムに制御信号を伝送する2本の信号線3」を有する点。

<相違点8>
本件特許発明1の第1の被覆層は、「ポリオレフィン系樹脂、ポリウレタンエラストマー、ポリエステルエラストマー、またはこれらの少なくとも2種を混合して形成される化合物のいずれかである」のに対して、
甲1発明の第1の樹脂層(磁性粉混合樹脂6)は、そのようなものには特定されていない点。

相違点について検討する。
<相違点6>について
ケーブルにおいて、シールドされないケーブル、シールドされたケーブルはそれぞれ周知なケーブルと認められる。
一方、甲第1号証においては、段落【0010】?【0013】に記載されるように、ケーブルのノイズを有効に抑制することが課題があり、そのために甲1発明では、シールド層として電線群を覆うように「磁性粉混合樹脂層6」を設けたものである。
してみれば、シールドされないケーブは周知なものではあるが、甲1発明の「電気絶縁ケーブル」においては、シールド層である「磁性粉混合樹脂層6」を取り除くことはできないものと認められる。

よって、上記相違点6に係る本件特許発明1の構成は、甲1発明に基づいて、当業者が容易に採用し得たものではない。

したがって、本件特許発明1に係る特許は、甲1発明から、当業者が容易に想到し得たものとはいえないから、相違点1?5、7、8については検討するまでもなく、本件特許発明1に係る特許は、取消理由1-1によって取り消すことはできない。

(イ)本件特許発明2について

本件特許発明2は、本件特許発明1の発明特定事項を全て含み、さらに他の発明特定事項を付加して限定したものであるから、本件特許発明2に係る特許は、上記(ア)と同様の理由により、取消理由1-1によって取り消すことはできない。

(ウ)まとめ
したがって、本件特許発明1、2に係る特許は、取消理由1-1によって取り消すことはできない。


イ.取消理由1-2につい
(ア)本件特許発明1について
本件特許発明1と甲2発明とを対比すると以下のとおりである。

a.甲2発明の「導体11、15」は、本件特許発明1の「導体」に相当し、また、甲2発明の「導体絶縁13,17」は、本件特許発明1の「絶縁層」に相当する。
そして、甲2発明の「導体11、15と導体を覆うように形成された導体絶縁13、17とを含むシールドされていない部材」が、本件特許発明1の「導体と前記導体を覆うように形成された絶縁層とを含むシールドされていないコア材」に相当する。
以上を踏まえると、甲2発明の「中心部」と、本件特許発明1の「コア電線」とは「導体と前記導体を覆うように形成された絶縁層とを含むシールドされていないコア材が複数本合さって形成されたコア電線」である点で共通する。

b.甲2発明の「内部シース9」は、「中心部を覆うように形成された」ものであるから、本件特許発明1の「コア電線を覆うように形成された第1の被覆層」に相当し、また、甲2発明の「外部ケーブルシース3」は、「内部シース9」を「編組シールド5」を介して覆っているので、本件特許発明1の「第1の被覆層を覆うように形成された第2の被覆層」に相当する。

c.甲2発明の「第1のセパレート層21」は、「中心部と当該内部シース9との間に、当該中心部に巻かれた状態で配置された」ものであるから、本件特許発明1の「コア電線と前記第1の被覆層との間に、前記コア電線に巻かれた状態で配置されたテープ部材」に相当する。

そうすると、両者は、

「導体と前記導体を覆うように形成された絶縁層とを含むシールドされていないコア材が複数本合さって形成されたコア電線と、
前記コア電線を覆うように形成された第1の被覆層と、
前記第1の被覆層を覆うように形成された第2の被覆層と、
前記コア電線と前記第1の被覆層との間に、前記コア電線に巻かれた状態で配置されたテープ部材と、
を備える、
電気絶縁ケーブル。」

の点で一致し、少なくとも次の点で相違する。

<相違点>
<相違点1>
本件特許発明1の第2の被覆層は、「難燃性のポリウレタン系樹脂で形成され」ているのに対し、
甲2発明の第2の被覆層(外部ケーブルシース3)は、そのようなものには特定されていない点。

<相違点2>
本件特許発明1の「コア電線」は、「シールドされていないコア材が複数本撚り合わされて形成されたもの」であり、かつ、その「コア材」として「互いに略同一の直径をそれぞれ有する電動パーキングブレーキ用の2本の第1のコア材と、互いに略同一の直径をそれぞれ有するアンチロックブレーキシステム用の2本の第2のコア材」を有し、さらに、「2本の前記第2のコア材は互いに撚り合わされてサブユニットが形成され、前記サブユニットと撚られていない2本の前記第1コア材とが撚り合わされて」という構成を有するものであるのに対し、甲2発明の「コア電線」(中心部)は、そのような構成を有するものではない点。

<相違点3>
本件特許発明1は、「各々の前記導体の断面積は、0.18?3.0mm2の範囲に含まれ」、「2本の前記第1のコア材の各々の導体の断面積は、1.5?3.0mm2の範囲に含まれ、2本の前記第2のコア材の各々の導体の断面積は、0.18?0.40mm2の範囲に含まれ」ているのに対し、 甲2発明は、そのような構成を有していない点。

<相違点4>
本件特許発明1の第1の被覆層は、「ポリオレフィン系樹脂、ポリウレタンエラストマー、ポリエステルエラストマー、またはこれらの少なくとも2種を混合して形成される化合物のいずれかである」のに対して、
甲2発明の第1の樹脂層(内部シース6)は、そのようなものには特定されていない点。

相違点について検討する。
<相違点2>について
甲2発明において、コア電線として、具体的にどのようなコア材を選択するかは当業者が適宜選択可能な事項と認められる。
そして、甲1発明には「コア電線は、複数本の前記コア材として、互いに略同一の直径をそれぞれ有する2本の第1のコア材と、互いに略同一の直径をそれぞれ有する2本の第2のコア材」とすることが記載されている。
しかしながら、甲1発明の「第1のコア材」(「電源線2」)はシールド(「磁性粉混合樹脂層6」)を有するものであり、上記「ア.取消理由1-1につい」にも記したように、甲1発明においては、シールド(「磁性粉混合樹脂層6」)を取り除くことはできないものと認められる。
してみれば、甲2発明における「コア電線」として、甲1発明のものを適用したとしても、シールドを有するコア材からなるものとなり、相違点2係る構成は導出されない。
また、甲第7号証にも、コア電線を、複数本のコア材として、互いに略同一の直径をそれぞれ有する2本の第1のコア材と、互いに略同一の直径をそれぞれ有する2本の第2のコア材とする技術事項が記載されているが、甲第7号所においても、コア材は「編組シールド29」を有するものである。
そして、甲第7号証も段落【0008】に記載されるように良好なシールド性を課題とするものであるから、「編組シールド29」を取り除くことはできず、甲2発明における「コア電線」として、甲第7号証のものを適用したとしても、相違点2係る構成は導出されない。
さらに、甲第8号証には、コア電線を、複数本のコア材として、互いに略同一の直径をそれぞれ有する2本の第1のコア材(「低音用対14」)と、互いに略同一の直径をそれぞれ有する2本の第2のコア材(「高音用対12」)とする技術事項が記載されているが、甲第8号証においては、第1コア材(「低音用対14」)が撚られたものであり、該撚られた第1コア材と、、撚られた第2のコア材を、撚り合わせるものであり、また、甲第8号証のケーブルはスピーカ用のものであり、車両のブレーキ用のものでもないことから、甲2発明における「コア電線」として、甲第8号証のものを適用したとしても、相違点2係る構成は導出されない。

よって、上記相違点2に係る本件特許発明1の構成は、甲2発明、甲1発明、甲第7号証、甲第8号証に基づいて、当業者が容易に想到し得たものではない。

したがって、相違点2は、甲2発明、甲1発明、甲第7号証ないし甲第8号証に記載された技術事項から、当業者が容易に想到し得たものとはいえないから、相違点1、3、4については検討するまでもなく、本件特許発明1に係る特許は、取消理由1-2によって取り消すことはできない。

(イ)本件特許発明2について

本件特許発明2は、本件特許発明1の発明特定事項を全て含み、さらに他の発明特定事項を付加して限定したものであるから、本件特許発明2は、上記(ア)と同様の理由により、当業者が引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものではない。

(ウ)まとめ
したがって、本件特許発明1、2に係る特許は、取消理由1-2によって取り消すことはできない。

第6.むすび

以上のとおりであるから、取消理由によっては、本件特許発明1、2に係る特許を取り消すことはできない。

また、他に本件特許発明1、2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。

そして、請求項3に係る特許は、本件訂正により削除され、本件特許の請求項3に対して、申立人がした特許異議の申立てについては、対象となる請求項が存在しない。

よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体と前記導体を覆うように形成された絶縁層とを含むシールドされていないコア材が複数本撚り合されて形成されたコア電線と、
前記コア電線を覆うように形成された第1の被覆層と、
前記第1の被覆層を覆うように形成された第2の被覆層と、
前記コア電線と前記第1の被覆層との間に、前記コア電線に巻かれた状態で配置されたテープ部材と、
を備え、
前記第2の被覆層は、難燃性のポリウレタン系樹脂で形成され、
各々の前記導体の断面積は、0.18?3.0mm^(2)の範囲に含まれ、
前記コア電線は、複数本の前記コア材として、互いに略同一の直径をそれぞれ有する電動パーキングブレーキ用の2本の第1のコア材と、互いに略同一の直径をそれぞれ有するアンチロックブレーキシステム用の2本の第2のコア材と、を有し、
2本の前記第1のコア材の各々の導体の断面積は、1.5?3.0mm^(2)の範囲に含まれ、
2本の前記第2のコア材の各々の導体の断面積は、0.18?0.40mm^(2)の範囲に含まれ、
2本の前記第2のコア材は互いに撚り合されてサブユニットが形成され、前記サブユニットと撚られていない2本の前記第1のコア材とが撚り合されて前記コア電線が形成されており、
前記第1の被覆層は、ポリオレフィン系樹脂、ポリウレタンエラストマー、ポリエステルエラストマー、またはこれらの少なくとも2種を混合して形成される化合物のいずれかである、
電気絶縁ケーブル。
【請求項2】
前記コア材の前記絶縁層は、難燃性のポリオレフィン系樹脂で形成されている、請求項1に記載の電気絶縁ケーブル。
【請求項3】
(削除)
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2016-06-28 
出願番号 特願2013-96607(P2013-96607)
審決分類 P 1 651・ 851- YAA (H01B)
P 1 651・ 121- YAA (H01B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 和田 財太  
特許庁審判長 小曳 満昭
特許庁審判官 山澤 宏
和田 志郎
登録日 2015-05-01 
登録番号 特許第5737323号(P5737323)
権利者 住友電気工業株式会社
発明の名称 電気絶縁ケーブル  
代理人 特許業務法人 東和なぎさ国際特許事務所  
代理人 特許業務法人東和なぎさ国際特許事務所  

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