ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 判定 同一 属する(申立て成立) A01K |
---|---|
管理番号 | 1319215 |
判定請求番号 | 判定2016-600017 |
総通号数 | 202 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許判定公報 |
発行日 | 2016-10-28 |
種別 | 判定 |
判定請求日 | 2016-05-17 |
確定日 | 2016-09-15 |
事件の表示 | 上記当事者間の特許第4865894号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 |
結論 | イ号の説明に示す「運搬器具」は、特許第4865894号の特許請求の範囲の請求項1に係る発明の技術的範囲に属する。 |
理由 |
第1 請求の趣旨 本件判定請求の趣旨は、イ号の説明に示す「運搬器具」(以下「イ号物件」という。)は、特許第4865894号の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本件特許発明」という。)の技術的範囲に属する、との判定を求めるものと認める。 なお、判定請求書において、請求の趣旨には判定の対象となる請求項の特定はないものの、請求項1に係る発明を本件特許発明としてイ号物件との対比を行っていることから、請求項1に係る発明を判定の対象としていることは明らかである。 第2 手続の経緯 本件特許発明に係る出願は、平成22年8月9日の出願であって、平成23年11月18日に特許権の設定登録がされたものである。 その後、平成28年5月17日に本件判定が請求され、平成28年5月26日付けで被請求人に判定請求書副本及び証拠説明書副本を送達するとともに、期間を指定して答弁書を提出する機会を与えたが、被請求人から答弁書等の提出はなかった。 第3 本件特許発明 本件特許発明は、これに係る出願の特許権設定登録時の願書に添付された特許請求の範囲、明細書及び図面の記載からみて、当該特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである(当審において、構成要件に分説し、AないしIを付した。以下、分説した構成要件を「構成要件A」などという。)。 「A 対向する第1及び第2の側面を有する本体と、 B 前記本体から延在する肩紐と、 C 底板と、 D 前記底板を保持するための第1及び第2のポケットとを備え、 E 前記第1及び第2のポケットが、前記第1及び第2の側面の間に設けられた底面上に形成されている、 F 運搬器具であって、 G 前記運搬器具の使用時には前記底面が曲面を形成し、 H 前記第1及び第2のポケットの開口縁は、互いに対向するように離れた位置に形成されている、 I 運搬器具。」 第4 イ号物件 1 本件判定の対象となるイ号物件について 判定請求書の請求の趣旨は、「イ号の説明に示す運搬器具は、特許第4865894号発明の技術的範囲に属する、との判定を求める。」とされているので、本件判定の対象となるイ号物件は、「イ号の説明に示す運搬器具」である。 これに対し、判定請求書3頁下から4行?5頁下から2行の「イ号物件の説明」は、請求人の主張するイ号物件の構成を、請求人の提出した各甲号証により立証するという説明となっており、イ号物件の特定について説明するものではない。よって、当該「イ号物件の説明」によっては、「イ号の説明に示す運搬器具」が特定されていないものと解される。 さらに判定請求書を見ると、「6.請求の理由」の「判定請求の必然性」(判定請求書2頁12?14行)において、「本件判定被請求人(株式会社ラディカ)は、フタ付きスリング(上蓋・底板付)型式番号B7018(甲第4号証、及び甲第5号証。以下、「イ号物件」という。)を販売していた。」と記載されている。 この記載からは「型式番号B7018」で特定される「フタ付きスリング(上蓋・底板付)」がイ号物件であるとも解される一方、請求人より提出された「イ号物件現物」(判定請求書8頁6行)を当審が確認したところ、そのタグには、「ARTICLE No.」として、「R7018(70296)」と記載されており、これも、型式番号であると解される。 このように、判定請求書記載の上記型式番号と、イ号物件現物の上記型式番号との間に齟齬があり、よって、型式番号によっても、「イ号の説明に示す運搬器具」が特定されていないものと解される。このことは、請求の趣旨中に、型式番号の明記がないこととも沿う。 そこで、証拠説明書を見ると、甲第4号証の1ないし9はイ号物件が撮影対象の写真とされている(証拠説明書2頁の表の上から3欄目、左から2欄目)。さらに判定請求書を見ると、イ号物件として、写真による写しが提出されている(判定請求書8頁5行)。この写真の撮影対象は、この写真と甲第4号証の2が構図が一致するものであることからみても、甲第4号証の1ないし9の撮影対象であると認められる。また、上記「イ号物件現物」は、その名称からして、「イ号物件」の現物を示すものと解されるところ、これも、甲第4号証の1ないし9の撮影対象であると認められる。 以上のとおり、判定請求書並びに添付書類及び添付物件に照らせば、「イ号の説明に示す運搬器具」とは、甲第4号証で特定される「運搬器具」であると解される。 2 イ号物件の構成についての請求人の主張 本件判定の対象となるイ号物件は、上記1のとおり、甲第4号証で特定される「運搬器具」と解される。判定請求書3頁下から4行?5頁下から2行の「イ号物件の説明」は、イ号物件を特定するためのものではなく、(既に特定された)イ号物件の構成を甲第4ないし第6号証で立証しようとしたものと解され、そしてそのようなイ号物件の構成についての請求人の主張として、「イ号物件の説明」には以下の記載がある。 「以下の説明に示すとおりイ号物件は、本件特許発明に即して記載すると、次のとおりのものである。 「a: 対向する第1及び第2の側面を有する本体と、 b: 前記本体から延在する肩紐と、 c: 底板と、 d: 前記底板を保持するための第1及び第2のポケットとを備え、 d-1: 前記第1及び第2のポケットが、前記第1及び第2の側面の間に設けられた底面上に形成されている、 e: 運搬器具であって、 f: 前記運搬器具の使用時には前記底面が曲面を形成し、 d-2: 前記第1及び第2のポケットの開口縁は、互いに対向するように離れた位置に形成されている、 運搬器具。」 aの説明 甲第4号証の1から甲第4号証の9(イ号物件を各種角度で撮影した写真)の符号A、A1及びA2で示した部分より、イ号物件の本体(A)が第1及び第2の側面(A1、A2)を有することは明らかである。 bの説明 甲第4号証の1から甲第4号証の9の符号Bで示した部分より、イ号物件の肩紐(B)が本体(A)から延在することは明らかである。 cの説明 甲第4号証の1から甲第4号証の9の符号Cで示した部分より、イ号物件が底板(C)を備えることは明らかである d(d-1、d-2を含む)の説明 甲第4号証の1から甲第4号証の9の符号D、D1、D2、D11及びD21で示した部分より、イ号物件が、底板(C)を保持するための第1及び第2のポケット(D1、D2)を備え、第1及び第2のポケット(D1、D2)が、第1及び第2の側面(A1、A2)の間に設けられた底面(D)上に形成されており、第1及び第2のポケットの開口縁(D11、D21)は、互いに対向するように離れた位置に形成されていることは明らかである。 また、甲第5号証(イ号物件に添付の取扱説明書)に、「底板を中央でグニャっと折り曲げ左右のポケットに差し込みます。」という記載がある。 また、甲第6号証(被請求人ホームページ)に、取り外し可能な底板を取りつける方法の説明とともに、『「ピッタリフィットして動いてもずれない!」簡単装着!』という作用効果の説明がある。 eの説明 甲第6号証に、イ号物件の中にイヌを入れて運搬している写真が多数掲載されていることから、イ号物件がペット用の運搬器具であることは明らかである。 fの説明 本件特許発明の運搬器具の「使用時」とは、甲第1号証の段落【0009】の記載等に基づけば、例えば、犬、猫、ウサギ等の小動物を運搬している状態を指すと解することが妥当であるところ、甲第4号証の9(イ号物件に被運搬物を模した物体を入れて肩紐を肩にかけた状態を撮影した写真)の符号Dで示した部分より、使用時にイ号物件の底面が曲面を形成することは明らかである。 また、甲第6号証に、「底板はスリングの形状に合わせてたわむようになっています。」という記載があり、イ号物件の中にイヌを入れて運搬している様子の写真において、底面は曲面を形成している。」 3 甲第4号証の記載内容 証拠方法として提出されたイ号物件を撮影した写真である甲第4号証の1ないし9から、以下の事項が看て取れる。 (1)イ号物件は、甲第4号証の1、2、3、4及び9で示される形状より、バッグであることが分かる。 そしてイ号物件は、甲第4号証の1、2、3、4及び9で示されるように、符号Aで示される袋状の部材と、符号Bで示される紐状の部材とを有している。甲第4号証の1、2、3、4及び9で示されているその形状から、符号Aで示される部材はバッグの本体であり、符号Bで示される部材はバッグの肩紐であることが分かる。 (2)甲第4号証の1、2、3、4及び9で示されるように、イ号物件の符号Aで示される袋状の本体は、符号Dで示される底面と開口面が略長方形となるマチを有するものである。 (3)甲第4号証の1、2、3、4及び9で示されるように、イ号物件の符号Bで示される肩紐は、本体上部より延びているものである。 (4)甲第4号証の4、5、6及び7で示されるように、イ号物件は符号Aで示される本体及び符号Bで示される肩紐とは別部材として、符号Cで示される板状部材を有し、該板状部材は符号Dで示される底面をカバーする形状である。これらより、符号Cで示される板状部材はバッグの底板であることが分かる。 (5)甲第4号証の5、6、7及び8で示されるように、底面には開口縁が互いに離間して対向する2つのポケットが形成され、それらポケットには底板が差し込まれる。甲第4号証の5、6、7及び8においては、上記2つのポケットにD1、D2、上記それらの開口縁にD11、D21という符号が付されている。 (6)上記「1 イ号物件の認定についての請求人主張」で摘記した「fの説明」で「イ号物件に被運搬物を模した物体を入れて肩紐を肩にかけた状態を撮影した写真」と説明されている甲第4号証の9は、肩紐でイ号物件を保持した状態を撮影しているものであることが看て取れるが、符号Dで示される底面が湾曲している。 また、甲第4号証の6で符号Cで示される底板が湾曲している状態より、底板は可撓性を有するものであり、イ号物件の本体に物を入れ肩紐で保持した場合にその物の重量により底面が湾曲することは明らかである。 これらより、イ号物件の本体に物を入れ肩紐で保持すると本体の底面は湾曲することが分かる。 4 当審によるイ号物件の構成の認定 イ号物件は、上記3を総合して、本件特許発明の構成要件の分説と対応するように記号を付して構成に分説すると、以下のとおりのものと認める(以下、分説した構成を「構成a」などという。)。 「a 底面と開口面が略長方形となるマチを有する袋状の本体と、 b 前記本体上部より延びる肩紐と、 c 底板と、 d 前記底板が差し込まれる2つのポケットとを備え、 e 前記2つのポケットは、前記本体の底面上に形成されている、 f バッグであって、 g 前記本体に物を入れ肩紐で保持すると前記本体の底面は湾曲し、 h 前記2つのポケットの開口縁は互いに離間して対向している、 i バッグ。」 第5 判断 イ号物件が、本件特許発明の構成要件AないしIを充足するか否かについて、以下検討する。 (1)構成要件Aの充足性について イ号物件の構成aの「底面と開口面が略長方形となるマチを有する袋状の本体」について、「マチを有する袋状の本体」ではマチをはさむ前見頃と後身頃の両面が対向するものであるところ、構成aの「本体」は本件特許発明の構成要件Aの「対向する第1及び第2の側面を有する本体」に相当する。よって、イ号物件は本件特許発明の構成要件Aを充足する。 (2)構成要件Bの充足性について イ号物件の構成bの「前記本体上部より延びる肩紐」について、この「肩紐」が本件特許発明の構成要件Bの「本体から延在する肩紐」に相当することは明らかである。よって、イ号物件は本件特許発明の構成要件Bを充足する。 (3)構成要件Cの充足性について イ号物件の構成cの「底板」が本件特許発明の構成要件Cの「底板」に相当することは明らかである。よって、イ号物件は構成要件Cを充足する。 (4)構成要件D、E、Hの充足性について イ号物件の構成dの「前記底板が差し込まれる2つのポケット」について、上記(3)で述べたようにイ号物件の「底板」は本件特許発明における「底板」に相当するところ、構成dの「底板」が差し込まれる「2つのポケット」は本件特許発明の構成要件Dの「前記底板を保持するための第1及び第2のポケット」に相当する。よって、イ号物件は構成要件Dを充足する。 続いて、イ号物件の構成eの「前記2つのポケットは、前記本体の底面上に形成されている」について、「マチを有する袋状の本体」の「底面」はマチをはさむ前見頃と後身頃の両面の間にあるところ、構成eの「2つのポケット」が「前記本体の底面上に形成されている」ことは本件特許発明の構成要件Eの「前記第1及び第2のポケット」が「前記第1及び第2の側面の間に設けられた底面上に形成されている」ことに相当する。よって、イ号物件は構成要件Eを充足する。 そして、イ号物件の構成hの「前記2つのポケットの開口縁は互いに離間して対向している」ことは本件特許発明の構成要件Hの「前記第1及び第2のポケットの開口縁は、互いに対向するように離れた位置に形成されている」ことに相当することは明らかである。よって、イ号物件は構成要件Hを充足する。 (5)構成要件F、Iの充足性について イ号物件の構成f、iの「バッグ」が本件特許発明の構成要件F、Iの「運搬器具」に相当することは明らかである。よって、イ号物件は構成要件F、Iを充足する。 (6)構成要件Gの充足性について イ号物件の構成gの「前記本体に物を入れ肩紐で保持すると前記本体の底面は湾曲」することについて、「本体に物を入れ肩紐で保持」するとは「バッグ」の使用時にあたることは明らかであるから、イ号物件の構成gは本件特許発明の構成要件Gの「前記運搬器具の使用時には前記底面が曲面を形成」することに相当する。よって、イ号物件は構成要件Gを充足する。 (7)小括 以上(1)ないし(6)より、イ号物件は、本件特許発明の構成要件をすべて充足する。 第6 むすび 以上のとおり、イ号物件は、本件特許発明の構成要件をすべて充足するから、イ号物件は、本件特許発明の技術的範囲に属する。 よって、結論のとおり判定する。 |
別掲 |
イ号物件 |
判定日 | 2016-09-06 |
出願番号 | 特願2010-188816(P2010-188816) |
審決分類 |
P
1
2・
1-
YA
(A01K)
|
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 村田 泰利 |
特許庁審判長 |
中田 誠 |
特許庁審判官 |
赤木 啓二 前川 慎喜 |
登録日 | 2011-11-18 |
登録番号 | 特許第4865894号(P4865894) |
発明の名称 | ペット用の運搬器具 |
代理人 | 折坂 茂樹 |