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審決分類 審判 全部無効 特29条の2  A61K
審判 全部無効 特36条4項詳細な説明の記載不備  A61K
審判 全部無効 2項進歩性  A61K
審判 全部無効 1項3号刊行物記載  A61K
管理番号 1319419
審判番号 無効2014-800167  
総通号数 203 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-11-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 2014-10-14 
確定日 2016-05-24 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第5363107号発明「アジュバントを含むスプリットインフルエンザワクチンにおけるTH1/TH2バランスの変化」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第5363107号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?26について訂正することを認める。 特許第5363107号の請求項1、2、4ないし16に係る発明についての特許を無効とする。 特許第5363107号の請求項3、17ないし26に係る発明についての審判請求は、成り立たない。 審判費用は、その26分の11を請求人の負担とし、26分の15を被請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許第5363107号の特許請求の範囲の請求項1?16に係る発明は、その出願(以下、「本件特許出願」という。)が、2006年11月6日(パリ条約による優先権主張 2005年11月4日 (US)アメリカ合衆国、2006年6月8日 (US)アメリカ合衆国)を国際出願日として出願され、平成25年9月13日に特許権の設定登録がなされた。
これに対して、請求人から、平成26年10月10日付け審判請求書によって、上記請求項1?16に係る発明の特許を無効にすることについて、本件特許無効審判が請求され、平成27年3月9日付けで被請求人から答弁書が提出された。そして、平成27年6月29日に行われた第1回口頭審理において、請求人からは、平成27年6月15日付け口頭審理陳述要領書に沿って第1回口頭審理調書に記載のとおりの陳述がなされ、被請求人からは平成27年6月15日付け口頭審理陳述要領書に沿って同調書に記載のとおりの陳述がなされた。その後、平成27年7月27日付けで審決の予告がなされ、平成27年11月2日付けで被請求人から訂正請求書及び無効審判事件上申書が提出され、さらに平成27年11月20日付けで被請求人から、上記訂正請求書の請求の趣旨等を補正する手続補正書が提出された。

第2 訂正請求
上記平成27年11月20日付け手続補正書による訂正請求の趣旨、及び、上記平成27年11月2日付け訂正請求書による訂正の内容は、該手続補正書及び該訂正請求書によれば、それぞれ以下のとおりである。

2-1.訂正請求の趣旨
特許第5363107号の明細書(以下、「本件特許明細書」という。)および特許請求の範囲を請求書に添付した訂正明細書および特許請求の範囲の通り訂正後の請求項1?26について訂正することを求める。

2-2.訂正の内容
訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、「該抗原は、細胞培養物において増殖されたウイルスから調製され」とあるのを、「該抗原は、鳥類細胞培養物において増殖されたウイルスから調製され」に訂正する。

訂正事項2
特許請求の範囲の請求項3に、「Th1アジュバントは、スクアレン、ポリソルベート80、ソルビタントリオレアートおよび免疫刺激性オリゴヌクレオチドのサブミクロンエマルションの形態」であるとの記載を追加する。

訂正事項3
特許請求の範囲の請求項4、7?8、10?11、および14?16のそれぞれは、請求項1、請求項2、および請求項3などを引用する多数項引用形式で記載された請求項であるのを、請求項2を引用しない請求項として引用請求項を減少させ、かつ、請求項1など(ただし請求項2および請求項3を除く)を引用する請求項4、7?8、10?11、および14?16と、請求項3を引用する新設の請求項17、19?22、および24?26に訂正する。

訂正事項4
特許請求の範囲の請求項6は、請求項1?5を引用する多数項引用形式で記載された請求項であるのを、請求項2を引用しない請求項として引用請求項を減少させ、請求項1、4、および5を引用する訂正後の請求項6、ならびに、請求項3を引用する新設の請求項18に訂正し、さらに、請求項6については、「組成物は、1用量あたり1ng未満の残留宿主細胞DNAを含む」との記載を追加する。

訂正事項 5
特許請求の範囲の請求項13は、請求項1?12を引用する多数項引用形式で記載された請求項であるのを、請求項2を引用しない請求項として引用請求項を減少させ、請求項1および4?12を引用する訂正後の請求項13、ならびに、請求項3を引用する新設の請求項23に訂正し、さらに、請求項13については、「組成物は、1用量あたり100pg未満の残留宿主細胞DNAを含む」との記載を追加する。

なお、訂正の目的が記載された、訂正請求書の7.(1)エ.(ア)、7.(2)エ.(ア)、7.(3)エ.(ア)、7.(4)エ.(ア)において、「特許法第126条第1項ただし書第1号」とあるのは、「特許法第134条の2第1項ただし書第1号」の誤記と認められるため、以下、読み替えて検討する。

2-3.訂正の適否の判断
2-3-1.訂正事項1について
訂正事項1に係る訂正は、請求項1における「細胞培養物」を「鳥類細胞培養物」に訂正するものである。そして、該訂正は、「細胞培養物」を特定のものに限定する訂正であるといえるので、特許請求の範囲の減縮に該当し、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものである。
そして、本件特許明細書の段落【0037】の、以下の記載、
「【0037】
上記抗原の供給源として使用されるウイルスは、細胞培養物において増殖される。ウイルス増殖培養基は、代表的に、哺乳動物起源の細胞株である。・・・あまり好ましくない哺乳動物細胞株の代替物として、ウイルスは、アヒル(例えば、アヒル網膜)または雌鶏(例えば、ニワトリ胚線維芽細胞(CEF))などに由来する細胞株を含む鳥類細胞株[例えば、参考文献38?40]において増殖され得る。例としては、ニワトリ胚性幹細胞、EB45、EB14、およびEB14-074に由来するEBx細胞株[42]を含む鳥類胚性幹細胞[38、41]が挙げられる。」
から、本件特許明細書には細胞培養物として鳥類細胞培養物が記載されているといえる。
そうすると、訂正事項1に係る訂正は、本件特許明細書に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないから、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項に規定する要件に適合するものである。

2-3-2.訂正事項2について
訂正事項2に係る訂正は、請求項3に、「Th1アジュバントは、スクアレン、ポリソルベート80、ソルビタントリオレアートおよび免疫刺激性オリゴヌクレオチドのサブミクロンエマルションの形態」であることを追加するものである。そして、該訂正は、訂正前の請求項3では、Th1アジュバントが、同項が引用する請求項1に記載の「(i)スクアレン、トコフェロールおよびポリソルベート80を含む水中油型エマルション、または(ii)スクアレン、ポリソルベート80、ソルビタントリオレアートおよび免疫刺激性オリゴヌクレオチドのサブミクロンエマルション、の形態」であったものを、(ii)の「スクアレン、ポリソルベート80、ソルビタントリオレアートおよび免疫刺激性オリゴヌクレオチドのサブミクロンエマルションの形態」に限定するものであるといえるので、特許請求の範囲の減縮に該当し、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものである。
そして、訂正事項2に係る訂正は、本件特許明細書に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないから、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項に規定する要件に適合するものである。

2-3-3.訂正事項3について
訂正事項3に係る訂正は、請求項4、7?8、10?11、および14?16について、請求項2を引用しないものとした上で、請求項1、及び、その従属項(ただし請求項2および請求項3を除く)を引用する請求項4、7?8、10?11、および14?16と、請求項3を引用する請求項17、19?22、および24?26に訂正するものである。そして、該訂正は、請求項1?3等を引用していたものを、請求項1及びその従属項(ただし請求項2および3を除く)と、請求項3を引用するものに限定するものであるといえるので、特許請求の範囲の減縮に該当し、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものである。
そして、訂正事項3に係る訂正は、本件特許明細書に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないから、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項に規定する要件に適合するものである。

2-3-4.訂正事項4について
訂正事項4に係る訂正は、請求項6について、請求項2を引用しないものとした上で、請求項1、4、および5を引用し、「組成物は、1用量あたり1ng未満の残留宿主細胞DNAを含む」との記載を追加した請求項6と、請求項3を引用する請求項18に訂正するものである。そして、該訂正は、請求項1?5を引用していたものを、請求項1、4、5、又は、請求項3を引用するものに限定し、さらに、前者について、訂正前の請求項6では、組成物に含まれる残留宿主細胞DNAが、同項が引用する請求項1に記載された「1用量あたり10ng未満」であったものを、「1用量あたり1ng未満」に限定するものであるといえるので、特許請求の範囲の減縮に該当し、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものである。
そして、本件特許明細書の段落【0043】の、以下の記載、
「【0043】
本発明のワクチンは、好ましくは、1用量あたり10ng未満(好ましくは、1ng未満、およびより好ましくは、100pg未満)の残留宿主細胞DNAを含むが、微量の宿主細胞DNAが、存在し得る。・・・」
から、本件特許明細書には、組成物に含まれる残留宿主細胞DNAが、1用量あたり1ng未満のものが記載されているといえる。
そうすると、訂正事項4に係る訂正は、本件特許明細書に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないから、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項に規定する要件に適合するものである。

2-3-5.訂正事項5
訂正事項5に係る訂正は、請求項13について、請求項2を引用しないものとした上で、請求項1、4?12を引用し、「組成物は、1用量あたり100pg未満の残留宿主細胞DNAを含む」との記載を追加した請求項13と、請求項3を引用する請求項23に訂正するものである。そして、該訂正は、請求項1?12を引用していたものを、請求項1、4?12、又は、請求項3を引用するものに限定し、さらに、前者について、訂正前の請求項13では、組成物に含まれる残留宿主細胞DNAが、同項が引用する請求項1に記載された「1用量あたり10ng未満」であったものを、「1用量あたり100pg未満」に限定するものであるといえるので、特許請求の範囲の減縮に該当し、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものである。
そして、本件特許明細書の段落【0043】には、上記2-3-4に摘記したとおりの記載があるから、本件特許明細書には、組成物に含まれる残留宿主細胞DNAが、1用量あたり100pg未満のものが記載されているといえる。
そうすると、訂正事項5に係る訂正は、本件特許明細書に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないから、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項に規定する要件に適合するものである。

2-4.訂正請求についてのまとめ
以上のとおりであるから、上記訂正請求書による訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、同法同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項に規定する要件に適合するものであるので、当該訂正を認める。

第3.本件訂正発明
上記訂正の結果、本件特許第5363107号の特許請求の範囲の請求項1?26に係る発明(以下、順に、「本件訂正発明1」?「本件訂正発明26」といい、併せて「本件訂正発明」ともいう。)は、訂正請求書に添付された特許請求の範囲の請求項1?26に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「【請求項1】
スプリットインフルエンザウイルス抗原とTh1アジュバントとを含む免疫原性組成物であって、該抗原は、鳥類細胞培養物において増殖されたウイルスから調製され、そしていかなる卵タンパク質も含まず、そして、該Th1アジュバントは、(i)スクアレン、トコフェロールおよびポリソルベート80を含む水中油型エマルション、または(ii)スクアレン、ポリソルベート80、ソルビタントリオレアートおよび免疫刺激性オリゴヌクレオチドのサブミクロンエマルション、の形態であり、ここで該組成物は、1用量あたり10ng未満の残留宿主細胞DNAを含む、免疫原性組成物であって、
ここで、該免疫原性組成物が、インフルエンザウイルス感染から防御する一方で、前記Th1アジュバントを含まない該免疫原性組成物よりも、Th2型に偏った免疫応答を少なく誘発するために使用されるものである、免疫原性組成物。
【請求項2】
前記インフルエンザウイルス抗原は、H1、H2、H3、H5、H7またはH9のインフルエンザA型ウイルスサブタイプ由来である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記組成物は、オボアルブミン、オボムコイドおよびニワトリDNAを含まず、かつ、Th1アジュバントは、スクアレン、ポリソルベート80、ソルビタントリオレアートおよび免疫刺激性オリゴヌクレオチドのサブミクロンエマルションの形態である、請求項1または請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記組成物は、1ウイルス株あたり0.1μgと20μgとの間の赤血球凝集素(HA)を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物は、1株あたり約15μgのHAを含むか、または、1株あたり約3.8μgのHAを含む、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記エマルションは、サブミクロンの直径を有する小滴を有し、かつ、前記組成物は、1用量あたり1ng未満の残留宿主細胞DNAを含む、請求項1、4および5のいずれかに記載の組成物。
【請求項7】
前記インフルエンザウイルス抗原は、A/PR/8/34インフルエンザウイルス由来の1種以上のRNAセグメントを有するインフルエンザウイルスから調製される、請求項1、および4?6のいずれかに記載の組成物。
【請求項8】
前記アジュバントは、3-O-脱アシル化モノホスホリルリピドA(3dMPL)を含む、請求項1、および4?7のいずれかに記載の組成物。
【請求項9】
前記3dMPLのうち少なくとも10重量%は、ヘキサアシル鎖形態である、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
水銀物質を含まない、請求項1、および4?9のいずれかに記載の組成物。
【請求項11】
1種以上の緩衝剤を含む、請求項1、および4?10のいずれかに記載の組成物。
【請求項12】
前記緩衝剤は、リン酸緩衝剤;Tris緩衝剤;ホウ酸緩衝剤;コハク酸緩衝剤;ヒスチジン緩衝剤;またはクエン酸緩衝剤を含む、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記組成物は、5.0と8.1との間のpHを有し、かつ、前記組成物は、1用量あたり100pg未満の残留宿主細胞DNAを含む、請求項1、および4?12のいずれかに記載の組成物。
【請求項14】
前記組成物は、2種のインフルエンザA型株および1種のインフルエンザB型株を含む、請求項1、および4?13のいずれかに記載の組成物。
【請求項15】
前記組成物は、流行性インフルエンザウイルス株に対する一価ワクチンである、請求項1、および4?13のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項16】
請求項1、および4?15のいずれかに記載の組成物を調製するためのキットであって、該キットは、
(a)細胞培養物において増殖されたウイルスから調製され、いかなる卵タンパク質も含まないスプリットインフルエンザウイルス抗原を含む第一のキット成分と、
(b)(i)スクアレン、トコフェロールおよびポリソルベート80を含む水中油型エマルション、または(ii)スクアレン、ポリソルベート80、ソルビタントリオレアートおよび免疫刺激性オリゴヌクレオチドのサブミクロンエマルション、の形態であるTh1アジュバントを含む第二のキット成分と、
を備え、ここで、該第一および第二の成分は、別々の容器内にあり、該組成物は、1用量あたり10ng未満の残留宿主細胞DNAを含む、キット。
【請求項17】
前記組成物は、1ウイルス株あたり0.1μgと20μgとの間の赤血球凝集素(HA)を含む、請求項3に記載の組成物。
【請求項18】
前記エマルションは、サブミクロンの直径を有する小滴を有する、請求項3に記載の組成物。
【請求項19】
前記インフルエンザウイルス抗原は、A/PR/8/34インフルエンザウイルス由来の1種以上のRNAセグメントを有するインフルエンザウイルスから調製される、請求項3に記載の組成物。
【請求項20】
前記アジュバントは、3-O-脱アシル化モノホスホリルリピドA(3dMPL)を含む、請求項3に記載の組成物。
【請求項21】
水銀物質を含まない、請求項3に記載の組成物。
【請求項22】
1種以上の緩衝剤を含む、請求項3に記載の組成物。
【請求項23】
5.0と8.1との間のpHを有する、請求項3に記載の組成物。
【請求項24】
前記組成物は、2種のインフルエンザA型株および1種のインフルエンザB型株を含む、請求項3に記載の組成物。
【請求項25】
前記組成物は、流行性インフルエンザウイルス株に対する一価ワクチンである、請求項3に記載の組成物。
【請求項26】
請求項3に記載の組成物を調製するためのキットであって、該キットは、
(a)細胞培養物において増殖されたウイルスから調製され、いかなる卵タンパク質も含まないスプリットインフルエンザウイルス抗原を含む第一のキット成分と、
(b)スクアレン、ポリソルベート80、ソルビタントリオレアートおよび免疫刺激性オリゴヌクレオチドのサブミクロンエマルション、の形態であるTh1アジュバントを含む第二のキット成分と、
を備え、ここで、該第一および第二の成分は、別々の容器内にあり、該組成物は、1用量あたり10ng未満の残留宿主細胞DNAを含む、キット。」

第4 当事者の主張、及び、提出した証拠方法
4-1.請求人の主張する無効理由、及び、提出した証拠方法
請求人が提出した審判請求書及び口頭審理陳述要領書によれば、請求人は、「特許5363107号発明の特許請求の範囲の請求項1?16に記載された発明についての特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする」との審決を求め、その理由として、以下の無効理由1?4を主張し、証拠方法として、甲第1?10号証を提出している。

無効理由1
第1及び第2の基礎出願に基づくパリ条約による優先権主張が認められない場合、本件特許発明1?16は、甲第1号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができないものであり、本件特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。

無効理由2
第1及び第2の基礎出願に基づくパリ条約による優先権主張が認められない場合、本件特許発明1?16は、
(その1)甲第1号証に記載された発明、
(その2)甲第2号証に記載された発明、
に基づいて、出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。

無効理由3
第2の基礎出願に基づくパリ条約による優先権主張が認められる場合、本件特許発明1?16は、本件特許の優先日前の他の特許出願であって、本件特許の出願後に出願公開がされた甲第1号証の願書に最初に添付した明細書に記載された発明と同一であるから、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものであり、本件特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。

無効理由4
特許権者による平成23年11月22日付け意見書における主張が妥当であれば、本件特許は特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、本件特許は同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきである。

(証拠方法)
甲第1号証:国際公開WO2006/100109A1号明細書
甲第2号証:World Health Organization, WHO Technical Report Series, No.927, 2005, Annex 3 Recommendations for the production and control of influenza vaccine (inactivated)
甲第3号証:Hualan Chen ら、Generation and evaluation of a high-growth reassotant H9N2 influenza A virus as a pandemic vaccine candidate, Vaccine 21 (2003) 1974-1979
甲第4号証:第1の基礎出願(US60/734,026)
甲第5号証:第2の基礎出願(US60/812,475)
甲第6号証:HIGHLIGHTS OF PRESCRIBING INFORMATION of FLUARIX
甲第7号証:Mariana Baz et al., Effects of Different Adjuvants in the Context of Intramuscular and Intranasal Routes on Humoral and Cellular Immune Responses Induced by Detergent-Split A/H3N2 Influenza Vaccines in Mice. Clinical and Vaccine Immunology, Vol.19, Num.2, p209-218
(以上、審判請求書に添付。)
甲第8号証:http://www.who.int/biologicals/publications/trs/en/ウェブページの写し
甲第9号証:Proc roy Soc Med 1975, 68: 218
甲第10号証:Int Arch Allergy Immunol 1996, 109: 344-351
(以上、口頭審理陳述要領書に添付。)

4-2.被請求人の主張、及び、提出した証拠方法
被請求人が提出した答弁書、口頭審理陳述要領書及び無効審判事件上申書によれば、被請求人は、「本件無効審判の請求はいずれも成り立たない 審判費用は請求人の負担とする」との審決を求め、その理由として、本件特許には、上記無効理由は存在しない点を主張し、証拠方法として、乙第1?14号証を提出している。

(証拠方法)
乙第1号証:第1の基礎出願(US60/734,026)
乙第2号証:第2の基礎出願(US60/812,475)
乙第3号証:国際公開02/38176号パンフレット
乙第4号証:Baz et al., Clinical and Vaccine Immunology, 2012, Vol.19, Num.2, 209-218
乙第5号証:Wong and Yuen (2005); Hong Kong Med J. 11(5):381-390
乙第6号証:Skowronski et al. (2003) J Infect Dis 187:495-499
乙第7号証:Babiuk, Shawn (2004) J Med Virol., 72(1):138-142
乙第8号証:インフルエンザウイルスワクチン FluarixTM 2005-2006 Formulaの処方情報
乙第9号証:World Health Organization, WHO Technical Report Series, No.927, 2005, Annex 3 Recommendations for the production and control of influenza vaccine (inactivated)
乙第10号証:国際公開第2006/100109 A1号パンフレット
乙第11号証:Hauge et al., Journal of Immunology 2009, 69, 576-578
乙第12号証:Kistner el al., PLoS ONE, 2010, 5(2):e9349
(以上、答弁書に添付。)
乙第13号証:Rang ら、Pharmacology, 第5版, Churchill Livingstone, 2003, pp.222-225
(以上、口頭審理陳述要領書に添付。)
乙14号証:Claus-Michael Lehr編、"Cell Culture Models of Biological Barriers: In vitro Test Systems for Drug Absorption and Delivery", Taylor & Francis Inc., 2002, pp.114
(以上、無効審判事件上申書に添付。)

第5 当審の判断
当審は、本件訂正発明1、2、4?16の特許は無効理由3によって無効にすべきであり、本件訂正発明3、17?26の特許は無効理由1?4によっては無効とすべきではない、と判断する。その理由は、以下のとおりである。

5-1.優先権主張
本件特許出願は、(US)アメリカ合衆国において2005年11月4日に出願された出願である60/734,026、及び、同国において2006年6月8日に出願された出願である60/812,475に基づくパリ条約による優先権を主張するものである(以下、前者を「第1の基礎出願」、後者を「第2の基礎出願」といい、パリ条約による優先権を単に「優先権」という。)。

5-1-1.第1の基礎出願に基づく優先権主張
(1)第1の基礎出願(甲第4号証、乙第1号証)の記載
第1の基礎出願である甲第4号証には、以下の事項が記載されている。なお、原文は英語のため、訳文で示す。
(ア)「請求の範囲
1.(i)インフルエンザウイルス抗原;(ii)水中油型エマルションアジュバント;及び(iii)サイトカイン誘導物質を含む免疫原性組成物。
・・・
3.インフルエンザウイルス抗原が、全ウイルス、スプリットウイルス、又は、精製表面抗原である、請求項1に記載の組成物。
4.インフルエンザウイルス抗原は、H1、H2、H3、H5、H7又はH9のインフルエンザA型ウイルスサブタイプ由来である、請求項1に記載の組成物。
・・・
6.インフルエンザウイルス抗原が細胞培養物において増殖されたインフルエンザウイルスから調製されたものである、前記いずれかの請求項に記載の組成物。
7.組成物は、オボアルブミン、オボムコイド及びニワトリDNAを含まない、請求項1乃至4のいずれかに記載の組成物。
8.組成物は10ng未満の残留宿主細胞DNAを含む、請求項6又は7に記載の組成物。
・・・
10.組成物は1ウイルス株あたり0.1?20μgの赤血球凝集素を含む、前記いずれかの請求項に記載の組成物。
・・・
12.エマルションは、サブミクロンの直径の小滴を有する、前記いずれかの請求項に記載の組成物。
・・・
17.サイトカイン誘導物質は、インターフェロンγの放出を誘導するものである、前記いずれかの請求項に記載の組成物。
・・・
21.(i)インフルエンザウイルス抗原を含む第一のキット成分と、(ii)水中油型エマルションアジュバントを含む第二のキット成分を含むキットであって、(a)第一成分又は第二成分はサイトカイン誘導物質を含むか、(b)キットはサイトカイン誘導物質を含む第三成分を含む、キット。」(第29?30頁)
(イ)「本発明の目的は、(パンデミック及び大流行期間中の両方で使用するための)さらに改善されたアジュバントインフルエンザワクチン及びその製造方法を提供することである。・・・今回、水中油型エマルションはインフルエンザワクチンの優れたアジュバントであるが、その有効性は、他の免疫刺激性物質をさらに含有させることにより改善されることが見出された。・・・特に、添加した免疫刺激性物質は、インターフェロンγ応答のようなインフルエンザワクチンにより誘発されるサイトカイン応答を改善することが見出され、その改善はアジュバント又は免疫刺激性物質を単独で使用したときよりも大きい。
したがって、本発明は、(i)インフルエンザウイルス抗原;(ii)水中油型エマルションアジュバント;及び(iii)サイトカイン誘導物質を含む免疫原性組成物を提供する。」(第1頁第19?30行)
(ウ)「エマルション中の油滴は、一般に、5μm未満の直径であり、そしてサブミクロンの直径でさえも有し得、これらの小さいサイズは、安定なエマルションを提供するために、マイクロフルイダイザーを用いて達成される。」(第2頁第11?14行)
(エ)「本発明に使用される特定の水中油型エマルションアジュバントとしては、以下を含むが、これらに限定されない:
・スクアレン、Tween80、Span85のサブミクロンエマルション。・・・このアジュバントは「MF59」として知られている・・・
・スクアレン、トコフェロールおよびTween80のエマルション・・・
」(第3頁第15?28行)
(オ)「組成物がトコフェロールを含む場合には、任意のα、β、γ、δ、εまたはζトコフェロールが使用され得るが、α-トコフェロールが好ましい。トコフェロールは、例えば、異なる塩及び/又は異性体であるいくつかの形態をとり得る。塩は、コハク酸塩、酢酸塩、ニコチン酸塩等のような有機塩を含む。D-α-トコフェロール及びDL-α-トコフェロールは両者とも使用され得る。好ましいα-トコフェロールは、DL-α-トコフェロールであり、そして、このトコフェロールの好ましい塩はコハク酸塩である。コハク酸塩は、インビボでTNF関連リガンドと協力することが分かっている。さらに、コハク酸α-トコフェロールは、インフルエンザワクチンと適合性であること、及び、水銀化合物に代わるものとして有用な保存剤であることが公知である[111]。」(第4頁第4?10行)
(カ)「サイトカイン誘導物質
・・・
本発明の組成物中に含めるためのサイトカイン誘導物質は、患者に投与されると、免疫系を誘発してサイトカインを放出させることができる。好ましい物質は、インターフェロン-γ;インターロイキン-1;インターロイキン-2;インターロイキン-12;TNF-α;TNF-β;及びGM-CSFのうち1つ以上の放出を誘発し得る。好ましい物質は、Th1型免疫応答と関連するサイトカイン、例えば、インターフェロン-γ、TNF-α、インターロイキン-2の放出を誘発する。インターフェロン-γとインターロイキン-2の両方の刺激が好ましい。」(第4頁第11?20行)
(キ)「適切なサイトカイン誘導物質は、
・CpGモチーフ(・・・)を含むもののような免疫刺激性オリゴヌクレオチド・・・
・3-O-脱アシル化モノホスホリルリピドA(3dMPL、MPLTMとしても知られている)
・・・
を含むが、これらに限らない。」(第4頁第31行?第5頁第3行)
(ク)「2つの好ましいサイトカイン誘導物質は、(a)免疫刺激性オリゴヌクレオチド、及び、(b)3dMPLである。
・・・CpG配列はTh1免疫反応の誘導に特異的に作用するのかもしれない。」(第10頁第18?24行)
(ケ)「本発明に従って用いられる3dMPLアジュバントは、3?6つのアシル鎖を備えたこれらの形態の混合物であり得るが、この混合物中に6つのアシル鎖をもつ3dMPLを含むことが好ましく、そして特にヘキサアシル鎖形態が総3dMPLの少なくとも10重量%、例えば、20重量%以上、30重量%以上、40重量%以上、50重量%以上またはさらに多くを占めることが好ましい。6つのアシル鎖を備えた3dMPLは、最もアジュバント活性な形態であることが見出された。」(第11頁第30?34行)
(コ)「3dMPLは、単独で使用することもでき、又は、更なる化合物と組み合わせて使用することもできる。」(第13頁第1行)
(サ)「インフルエンザウイルス抗原
本発明の組成物はインフルエンザウイルス抗原を含む。抗原は典型的にはインフルエンザビリオンから製造されるが、代わりに、ヘマグルチニンなどの抗原を組換え宿主細胞(例えば・・・)に発現させ、精製された形態で用いることができる。・・・不活性化ウイルスを使用する場合、ワクチンはホールビリオン、スプリットビリオン、又は精製した表面抗原(ヘマグルチニンを含む、及び、通常は、ノイラミニダーゼも含む)を含んでもよい。」(第13頁第8?21行)
(シ)「したがって、特にウイルスが卵で増殖される場合、ウイルスはA/PR/8/34ウイルス(・・・)由来の1又は複数のRNAセグメントを含んでいてもよい。」(第15頁第21?23行)
(ス)「ワクチンに使用されるインフルエンザウイルス株は、季節により異なる。現在の大流行期中は、ワクチンは典型的には2種のインフルエンザA株(H1N1及びH3N2)と、1種のインフルエンザB株を含み、そして、三価ワクチンが典型的である。本発明は、H2、H5、H7又はH9のサブタイプ株(特に、インフルエンザAウイルス)のような流行株(・・・)由来のウイルスも使用してもよく、流行株のインフルエンザワクチンは一価ワクチンでもよく、また、流行株が追加された通常の三価ワクチンに基づいていてもよい。季節やワクチンに含まれる抗原の性質によるが、本発明は1又は複数のヘマグルチニンサブタイプH1、H2、H3、H4、H5、H7、H8、H9、・・・から保護する。」(第14頁15?23行)
(セ)「あまり好ましくない哺乳動物培養細胞株の代替物として、ウイルスは、アヒル(例えば、アヒル網膜)または雌鶏(例えば、ニワトリ胚線維芽細胞(CEF))などに由来する培養細胞株を含む鳥類培養細胞株[例えば、参考文献96-97 98]において増殖され得る。」(第16頁第5?7行)
(ソ)「ウイルスが哺乳類培養細胞株で増殖された場合、キット中の抗原成分は卵タンパク質(例えば、オボアルブミン及びオボムコイド)及びニワトリDNAを有利には含まず、それ故、アレルゲン性を低減する。」(第16頁第8?10行)。
(タ)「ウイルスが培養細胞株で増殖された場合、微量の宿主細胞DNAは存在するかもしれないが、抗原成分は好ましくは1用量あたり10ng未満(好ましくは1ng未満、さらに好ましくは100pg未満)の残留宿主細胞DNAを含む。」(第16頁第16?18行)
(チ)「赤血球凝集素(HA)は不活化インフルエンザワクチン中の主要な免疫原であり、・・・ワクチンは典型的には1株あたり約15μgのHAを含むが、より低い用量がまた、例えば、小児のためかまたは流行性の状況において使用される。・・・したがって、ワクチンは1インフルエンザ株あたり0.1?20μgのHA、好ましくは0.1?15μg・・・等を含んでよい。特定の用量は、例えば、約15、・・・、約3.8等を含む。」(第18頁第8?14行)
(ツ)「しかし、ワクチンは実質的に水銀物質、例えば、チオメルサールを含まない(すなわち、5μg/ml未満)べきであることが、好ましい。水銀を含まないワクチンが、より好ましい。」(第19頁第3?5行)
(テ)「組成物は1又は複数の緩衝剤を含んでもよい。典型的な緩衝剤は、リン酸緩衝剤、Tris緩衝剤、ホウ酸緩衝剤、コハク酸緩衝剤、ヒスチジン緩衝剤又はクエン酸緩衝剤を含む。・・・
組成物のpHは、一般的には5.0?8.1であり、・・・」(第19頁第12?15行)
(ト)「本発明のキット
・・・したがって、本発明は混合の準備がされた種々の成分を含むキットを提供する。キットは、水中油型エマルションと抗原を使用時まで分けておくことを許容する。サイトカイン誘導物質は、これら2つのキット成分に含まれてもよく、3つめのキット成分の一部でもよい。」(第19頁第25?30行)
(ナ)「本発明の実施方法
インフルエンザウイルス株Wyoming H3N2(A)、New-Caledonia H1N1(A)、及びJiangsu(B)は、MDCK細胞で別々に増殖された。三価表面糖タンパク質ワクチンが製造され、・・・を免疫化するために使用された。・・・
免疫化に使用された組成物(ネガティブコントロールを除く)は、(i)MF59エマルション、(ii)・・・のうちの一つを含む。さらに(ネガティブコントロールは除く)、組成物は(a)免疫刺激性CpG ODN又は(b)R-848の一つを含む。」(第23頁第20?30行)
(ニ)「図4は、最高のT細胞応答を示すアジュバントを示す。エマルションベースの組成物が最高の応答を示すことは直ちに明らかである。(a)及び(b)のそれぞれが、MF59と組み合わせた時に最高の結果を示した。インターフェロンγ分泌細胞の最高レベルは、星印で示される、CpG/MF59の組み合わせで達成された。MF59アジュバント単独では、主にTh2型の応答を誘導するが、CpGの添加は、この応答をTh1型に移行させる。」(第24頁第20?24行)

(2)第1の基礎出願に基づく優先権主張の効果について
上記5-1-1(1)(ナ)、(ニ)には、細胞培養物において増殖されたウイルスから調製された抗原と、MF59とCpGを含む免疫原性組成物が記載され、上記5-1-1(1)(エ)によれば、MF59はスクアレン、Tween80、Span85のサブミクロンエマルションであり、上記5-1-1(1)(キ)によれば、CpGは免疫刺激性オリゴヌクレオチドである。また、Span85がソルビタントリオレアートであることは周知の技術的事項である。そして、上記5-1-1(1)(ア)、(サ)によれば、インフルエンザウイルス抗原はスプリットインフルエンザウイルス抗原であってもよく、上記5-1-1(1)(セ)によれば、ウイルスは鳥類培養細胞株において増殖され得るものである。さらに、上記5-1-1(1)(ア)、(ソ)によれば、ウイルスが細胞培養物において増殖された場合、卵タンパク質を含まず、上記5-1-1(1)(ア)、(タ)によれば、ウイルスが細胞培養物において増殖された場合、1用量あたり10ng未満の残留宿主細胞DNAを含むものである。
また、上記5-1-1(1)(イ)には、水中油型エマルションと免疫刺激性物質を組み合わせると、アジュバントの有効性が改善されることが記載されており、該記載から、水中油型エマルションと免疫刺激性物質の組み合わせはアジュバントとして機能するものであるといえる。
そして、上記5-1-1(1)(イ)には、水中油型エマルションアジュバントに免疫刺激性物質を添加することによる、インターフェロンγ応答のようなサイトカイン応答の改善は、免疫刺激性物質単独よりも大きいことが記載されているから、MF59とCpGを含有する免疫原性組成物は、CpG単独よりもインターフェロンγ応答が改善されている、すなわちTh1型に移行した応答を示すといえ、上記5-1-1(1)(ク)、(ニ)の記載から、CpG単独の添加は、何も添加していない免疫原性組成物に比べ、Th1型に移行した応答を示すものと推認されることを踏まえると、MF59とCpGを組み合わせたアジュバントはTh1アジュバントであり、該Th1アジュバントを含有する免疫原性組成物は、該Th1アジュバントを含有しない免疫原性組成物より、Th1型に移行した免疫応答、すなわちTh2型に偏った免疫応答を少なく誘発するものであるといえる。
そうすると、本件訂正発明1のうち、以下の発明については、第1の基礎出願の全体に記載されているといえ、当該発明については、第1の基礎出願に基づく優先権主張の効果が認められる。
「スプリットインフルエンザウイルス抗原とTh1アジュバントとを含む免疫原性組成物であって、該抗原は、鳥類細胞培養物において増殖されたウイルスから調製され、そしていかなる卵タンパク質も含まず、そして、該Th1アジュバントは、(ii)スクアレン、ポリソルベート80、ソルビタントリオレアートおよび免疫刺激性オリゴヌクレオチドのサブミクロンエマルション、の形態であり、ここで該組成物は、1用量あたり10ng未満の残留宿主細胞DNAを含む、免疫原性組成物であって、
ここで、該免疫原性組成物が、インフルエンザウイルス感染から防御する一方で、前記Th1アジュバントを含まない該免疫原性組成物よりも、Th2型に偏った免疫応答を少なく誘発するために使用されるものである、免疫原性組成物。」(以下、「本件訂正発明1(ii)」という。)

一方、第1の基礎出願は、上記5-1-1(1)(ア)に記載のとおり、インフルエンザウイルス抗原、水中油型エマルションアジュバントに加えて、サイトカイン誘導物質を必須とするものであり、上記5-1-1(1)(イ)によれば、該サイトカイン誘導物質を含有することによりインターフェロンγ応答のようなサイトカイン応答を改善するものである。これに対し、本件訂正発明1のうち、Th1アジュバントが、(i)スクアレン、トコフェロールおよびポリソルベート80を含む水中油型エマルションである発明は、インフルエンザウイルス抗原及び上記(i)の水中油型エマルションに加えて、サイトカイン誘導物質を含むものではない。また、トコフェロール等の上記(i)の水中油型エマルションを構成する成分が、上記サイトカイン誘導物質に該当することは5-1-1(1)(ア)、(イ)のいずれにも記載されていないし、甲第4号証中の他の箇所をみてもそのような記載は見出せない。そうすると、本件訂正発明1のうち、Th1アジュバントが上記(i)の水中油型エマルションである発明は、サイトカイン誘導物質を含まない態様を含むものであるから、第1の基礎出願の全体に記載されているとはいえない。
したがって、以下の発明については、第1の基礎出願に基づく優先権主張の効果は認められない。
「スプリットインフルエンザウイルス抗原とTh1アジュバントとを含む免疫原性組成物であって、該抗原は、細胞培養物において増殖されたウイルスから調製され、そしていかなる卵タンパク質も含まず、そして、該Th1アジュバントは、(i)スクアレン、トコフェロールおよびポリソルベート80を含む水中油型エマルション、の形態であり、ここで該組成物は、1用量あたり10ng未満の残留宿主細胞DNAを含む、免疫原性組成物であって、
ここで、該免疫原性組成物が、インフルエンザウイルス感染から防御する一方で、前記Th1アジュバントを含まない該免疫原性組成物よりも、Th2型に偏った免疫応答を少なく誘発するために使用されるものである、免疫原性組成物。」(以下、「本件訂正発明1(i)」という。)

さらに、本件訂正発明2?26は、本件訂正発明1の各成分や組成物がキットであることを特定するものであるが、これらについては、上記5-1-1(1)(ア)、(ウ)、(キ)?(コ)、(シ)、(ス)、(ソ)?(ト)に記載されているから、第1の基礎出願の全体に記載されている。
そうすると、本件訂正発明2?26のうち、Th1アジュバントが(ii)スクアレン、ポリソルベート80、ソルビタントリオレアートおよび免疫刺激性オリゴヌクレオチドのサブミクロンエマルションである発明(以下、順に「本件訂正発明2(ii)」?「本件訂正発明26(ii)」といい、本件訂正発明1(ii)?本件訂正発明26(ii)を併せて「本件訂正発明(ii)」ともいう)については、第1の基礎出願の全体に記載されているといえ、Th1アジュバントが(i)スクアレン、トコフェロールおよびポリソルベート80を含む水中油型エマルションである発明(以下、順に「本件訂正発明2(i)」?「本件訂正発明26(i)」といい、本件訂正発明1(i)?本件訂正発明26(i)を併せて「本件訂正発明(i)」ともいう)については、第1の基礎出願の全体に記載されているとはいえない。
したがって、本件訂正発明2(ii)?26(ii)は、第1の基礎出願に基づく優先権主張の効果が認められ、本件訂正発明2(i)?26(i)は、第1の基礎出願に基づく優先権主張の効果が認められない。

(3)請求人の主張について
請求人は、平成26年10月10日付け審判請求書において、次の主張をしている。
「第1の基礎出願には、「スクアレン、Tween 80(ポリソルベート80)、Span 85のサブミクロンエマルション」に関しては、その一例としての「MF59」について、MF59アジュバント単独では主にTh2型反応を引き起こすが、(免疫刺激性オリゴヌクレオチドである)CpGの添加はこの反応をTh1型に移行させることが記載されている(・・・)。しかし、「スクアレン、Tween 80、Span 85のサブミクロンエマルション」は、「水中油型エマルションアジュバント」の一例であり(・・・)、また、免疫刺激性オリゴヌクレオチドは、「サイトカイン誘導物質」の一例とされているにすぎないところ(・・・)、第1の基礎出願には、両者を併せたものが「Th1アジュバント」であるとは記載されていないし、また、第1の基礎出願の記載から当然にはそのような概念は導き出されない。」
また、請求人は、平成27年6月15日付け口頭審理陳述要領書において、次の主張をしている。
「「CpG/MF59」の組み合わせは、MF59及びCpGのそれぞれの性質に基づく結果であるため、「CpG/MF59」の作用に基づき、本件特許発明1の発明特定事項1Dの「(ii)スクアレン、ポリソルベート80、ソルビタントリオレアートおよび免疫刺激性オリゴヌクレオチドのサブミクロンエマルション」の全体まで拡張・上位化することができない。」

しかしながら、上記5-1-1(2)で説示したとおり、第1の基礎出願の記載から、MF59とCpGを組み合わせたものがTh1アジュバントであると理解できる。また、第1の基礎出願において、免疫刺激性オリゴヌクレオチドは、インターフェロンγ応答のようなサイトカイン応答、すなわちTh1応答を改善するものであること(上記5-1-1(1)(イ))が記載されているから、CpG以外の免疫刺激性オリゴヌクレオチドについても同様に用いられることが推認できる。
したがって、上記請求人の主張を採用することはできない。

(4)被請求人の主張について
被請求人は、平成27年3月9日付け答弁書において、次の主張をしている。
「乙第1号証はさらに、第4頁第4?10行において、「(トコフェロールの)コハク酸塩は、インビボでTNF関連リガンドと協力することが分かっている」と記載し、第4頁第18?20行において、「好ましい因子は、Th1型免疫応答と関連するサイトカイン、例えば、インターフェロンγ、TNF-α・・・(後略)・・・の放出を誘発する」と記載している。・・・また、当業者は、乙第1号証(甲第4号証)の上記記載、開示全体、特に、トコフェロールのコハク酸塩とTNF関連リガンドの間の関係性、そして、技術常識を考慮すれば、開示されるTNFサイトカインの産生がTNF関連リガンドとの協力の結果であることを理解した。すなわち、乙第1号証(甲第4号証)の記載に接した当業者は、トコフェロールがインビボでTNF関連リガンドと協力することから、トコフェロールを含有する水中油型エマルションが必然的に、TNF-α及びTNF-βサイトカインの産生または放出をもたらし、これが最終的にはTh1型免疫応答に繋がることを明確に理解した。さらに、乙第1号証ははっきりと、Th1アジュバントが、主にTh2型の応答をTh1型にシフトさせるという概念を記載している。当業者は、これまたTh1アジュバントとして理解され得るトコフェロールが、Th2からTh1への応答へと免疫応答をシフトさせることも合理的に予測できた。したがって、発明特定事項1D(i)もまた、乙第1号証(甲第4号証)に記載されているか、または、乙第1号証の上記の部分の記載から自明な事項であると理解するである。」
また、被請求人は、平成27年6月15日付け口頭審理陳述要領書においても、上記と同様の主張をしている。

しかしながら、上記5-1-1(2)において説示したとおり、第1の基礎出願は、インフルエンザウイルス抗原及び水中油型エマルションアジュバントに加え、サイトカイン誘導物質を必須成分とするものであり、当該サイトカイン誘導物質を含有することにより、所望の効果を示すものであるから、サイトカイン誘導物質を含まない態様についてまで、第1の基礎出願の全体に記載した事項の範囲内であるということはできない。
また、被請求人の主張する乙第1号証(甲第4号証)第4頁第4?10行(上記5-1-1(1)(オ))のトコフェロールは、「水中油型エマルションアジュバント」について説明された項中に記載されたものであり、上記5-1-1(1)(エ)に記載されるトコフェロールと共通する成分であって、あくまで水中油型エマルションアジュバントの構成成分として挙げられているものである。また、「TNF関連リガンドと協力すること」についても、協力の具体的な内容は何ら記載されていない。一方、TNF-α、TNF-βが記載された乙第1号証(甲第4号証)第4頁第18?20行は、上記5-1-1(1)(カ)によれば、上記「水中油型エマルションアジュバント」とは別項立ての「サイトカイン誘導物質」の項の記載であるところ、この項は5-1-1(1)(ア)の「(iii)サイトカイン誘導物質」について記載された項と解されるものであり、TNF-α、TNF-βは、サイトカイン誘導物質により誘導されるサイトカインの例として挙げられているものに過ぎない。そうすると、上記5-1-1(1)(オ)のコハク酸トコフェロールとTNF関連リガンドとの協力関係に係る記載を参酌しても、当該協力関係の結果がTNFの産生であり、トコフェロールそれ自体が「サイトカイン誘導物質」そのものである、とまで解釈することはできない。
したがって、上記被請求人の主張を採用することはできない。

(5)第1の基礎出願に基づく優先権主張についてのまとめ
以上のとおりであるから、本件訂正発明(ii)は、第1の基礎出願に基づく優先権主張の効果が認められるが、本件訂正発明(i)は、第1の基礎出願に基づく優先権主張の効果を享受することはできない。

5-1-2.第2の基礎出願に基づく優先権主張
5-1-1で説示したとおり、本件訂正発明(ii)は第1の基礎出願に基づく優先権主張の効果が認められるものである。
そこで、次に、本件訂正発明(i)について、第2の基礎出願に基づく優先権主張の効果が認められるか否かについて検討する。

(1)第2の基礎出願(甲第5号証、乙第2号証)の記載
第2の基礎出願である甲第5号証には、以下の事項が記載されている。なお、原文は英語のため、訳文で示す。
(ア)「Th2偏向を回避するために、2つのアプローチが、好ましくは組み合わせて行われる。最初に、スプリットワクチンがアジュバントを含む場合、そのアジュバントは、少なくとも部分的なTh1型応答を刺激するために選択される(例えば、スプリットインフルエンザワクチンへの専らアルミニウム塩を用いたアジュバント添加を回避することが、好ましい)。第2に、アレルゲンの存在が、スプリットワクチンにおいて回避される。インフルエンザワクチンは時期毎の投与において特有であるので、複数回用量を受容する患者は、存在する任意の不純物に対して感作され、そしてアレルゲンは、感作された患者においてTh2応答を引き起こすことが報告されている[5]。アレルゲンを回避するために、インフルエンザウイルスを増殖させるための現在の卵ベースの方法は、細胞培養物を使用する方法に置換され、それによって混入する卵アレルゲン(例えば、オボアルブミンおよびオボムコイド)の存在を回避する。」(第2頁第6?14行)
(イ)「本発明はまた、(i)スプリットインフルエンザウイルス抗原を含むが、卵タンパク質を全く含まない第1のキット成分;と(ii)Th1アジュバントを含む第2のキット成分;とを備えるキットを提供する。」(第3頁第12?14行)
(ウ)「1.スプリットインフルエンザウイルス抗原とTh1アジュバントとを含み、該抗原は、細胞培養物において増殖されたウイルスから調製され、そしていかなる卵タンパク質も含まない、免疫原性組成物。
・・・
5.細胞培養物の宿主由来の10ng未満の細胞DNAを含む、前記請求項のいずれかに記載の組成物。
・・・
8.アジュバントがトコフェロールを含む、前記請求項のいずれかに記載の組成物。
9.アジュバントが水中油型エマルションの形態である、前記請求項のいずれかに記載の組成物。
10.エマルションがサブミクロンの直径の小滴を有するものである、前記請求項のいずれかに記載の組成物。
11.スプリットインフルエンザウイルス抗原と水中油型エマルションとを含む免疫原性組成物であって、(a)該抗原は、細胞培養物において増殖されたウイルスから調製され、かつ(b)該水中油型エマルションは、トコフェロールを含む、免疫原性組成物。
12.前記エマルションは、スクアレン、トコフェロール、及びポリソルベート80を含む、請求項11に記載の組成物。」(第3頁第16行?第4頁第8行)
(エ)「ワクチンに使用するためのインフルエンザウイルス株は、季節により変化する。最近の大流行間期において、2種のインフルエンザA型株(H1N1およびH3N2)および1種のインフルエンザB型株を含む三価ワクチンが、代表的である。本発明は、この型の大流行間期株と一緒に使用され得るが、本発明はまた、(特に、インフルエンザA型ウイルスの)H2、H5、H7またはH9サブタイプ株などの流行株(・・・)由来のウイルスと一緒に使用され得、そして流行株に対するインフルエンザワクチンは、一価であっても、例えば、流行株によって補充された通常の三価ワクチンに基づいてもよい。しかし、季節および上記ワクチンに含まれる抗原の性質に依存して、本発明は、インフルエンザA型ウイルスのHAサブタイプであるH1、H2、H3、H4、H5、H6、H7、H8、H9、H10、H11、H12、H13、H14、H15またはH16の1種以上を防御し得る。」(第5頁5?14行)
(オ)「したがって、ウイルスはA/PR/8/34ウイルス由来の1種以上のRNAセグメント(代表的に、6セグメントは、A/PR/8/34に由来し、上記HAセグメントおよびNセグメントは、ワクチン株に由来する、すなわち、6:2リアソータント)を含み得る。」(第6頁第21?23行)
(カ)「あまり好ましくない哺乳動物培養細胞株の代替物として、ウイルスは、アヒル(例えば、アヒル網膜)または雌鶏(例えば、ニワトリ胚線維芽細胞(CEF))などに由来する培養細胞株を含む鳥類培養細胞株[例えば、参考文献36?38]において増殖され得る。」(第7頁第6?8行)
(キ)「本発明のワクチンは、微量の宿主細胞DNAは存在するかもしれないが、好ましくは、1用量あたり、10ng未満(好ましくは1ng未満、もっと好ましくは100pg未満)の残留宿主細胞DNAを含む。」(第7頁第25?27行)
(ク)「赤血球凝集素(HA)は、不活化インフルエンザワクチン(スプリットワクチンを含む)中の主要な免疫原であり、・・・。現存するスプリットワクチンは、代表的に、1株あたり約15μgのHAを含むが、・・・。したがって、ワクチンは、1つのインフルエンザ株あたり0.1μgと150μgとの間のHA、好ましくは、0.1μgと50μgとの間(例えば、0.1μg?20μg、0.1μg?15μg、0.1μg?10μg、0.1μg?7.5μg、0.5μg?5μgなど)のHAを含み得る。特定の用量は、例えば、1株あたり約15、約10、約7.5、約5、約3.8、約1.9、約1.5などを含む。」(第9頁第4?12行)
(ケ)「本発明によって使用されるアジュバントは、患者に送達される場合に、インフルエンザ抗原に対して専らTh1型応答を誘発し得るが、好ましくは、混合型のTh1/Th2型応答を誘発する。Th0細胞もまた、誘発され得るが、偏向したTh2応答は、回避される。」(第10頁第5?7行)
(コ)「アルミニウム塩のみから構成されない特定の「Th1アジュバント」としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:
・・・
-ビタミンE化合物。ビタミンEは、Th1/Th2バランスに関与する遺伝子の発現に対して顕著な影響を有し、そして免疫細胞のビタミンE刺激は、増大したIL-2産生(すなわち、Th1型応答)を直接的にもたらし得る[94]。獣医学的なウイルスワクチンにおけるアジュバントとしてのその使用は、例えば、ニワトリワクチンにおいて公知である[95]。」(第10頁第19行?第12頁第18行)
(サ)「本発明に従って用いられる3dMPLアジュバントは、3?6つのアシル鎖を備えたこれらの形態の混合物であり得るが、この混合物中に6つのアシル鎖をもつ3dMPLを含むことが好ましく、そして特に6つのアシル鎖形態が総3dMPLの少なくとも10重量%、例えば、20重量%以上、30重量%以上、40重量%以上、50重量%以上またはさらに多くを占めることが好ましい。6つのアシル鎖を備えた3dMPLは、最もアジュバント活性な形態であることが見出された。」(第14頁第15?19行)
(シ)「ビタミンE化合物
参考文献125は、ビタミンE補充がTh1型応答を増強することを報告する。ビタミンE補充による体液性免疫および細胞性免疫の改良はまた、参考文献126において報告されるが、ワクチンアジュバントとしての投与は、ずっと大きい効果を有することが報告される。さらに、参考文献94は、ビタミンEがTh1/Th2バランスに関与する遺伝子の発現に対して顕著な影響を有することを報告する。例えば、免疫細胞のビタミンE刺激は、増大したIL-2産生(すなわち、Th1型応答)を直接的にもたらし得る。」(第16頁第6?12行)
(ス)「ビタミンE化合物は、通常、油であるので、それらは、従来、水中油型エマルション中の成分として含まれ得、それ故、エマルションは、インフルエンザワクチンと適合性であることが公知であり(以下参照)、そしてトコフェロールを含む水中油型エマルションは、Th1誘導性アジュバントであることが、参考文献128において報告される。」(第16頁第28?31行)
(セ)「水中油型エマルションアジュバント
水中油型エマルションは、インフルエンザウイルスワクチンにアジュバント添加するために適切であることが公知である(例えば、FLUADTM製品は、MF59エマルションアジュバントを含む)。これらのエマルションは、代表的に、少なくとも1種の油および少なくとも1種の界面活性剤を含み、その油および界面活性剤は、生分解性(代謝可能)かつ生体適合性である。上記エマルションの成分は、Th1/Th2バランスに影響を及ぼすので、全てのエマルションは、本発明による使用に適していない。例えば、上記MF59アジュバントは、優勢に、免疫応答をTh2型応答へと偏らせるので、本発明は、上記MF59アジュバントを単独で使用しない。対照的に、参考文献128に開示されるトコフェロール含有エマルションは、Th1型応答を誘発するので、本発明によって使用され得る。」(第16頁第32行?第17頁第3行)
(ソ)「本発明によってアジュバントとして有用な2つの特定の水中油型エマルションは:
-スクアレン、トコフェロールおよびTween 80のエマルション。このエマルションは、リン酸緩衝化生理食塩水を含み得る。・・・これらのエマルションは、2?10%スクアレン、2?10%トコフェロールおよび0.3?3%Tween 80を有し得、・・・。この生じたエマルションは、サブミクロンの油滴(例えば、平均直径が100nmと250nmの間、好ましくは約180nm)を有し得る。・・・
これらの2つの好ましいエマルションは、参考文献128に記載されるように、3dMPLおよび/またはサポニンを補充され得る。」(第18頁第17?29行)
(タ)「しかし、上記ワクチンは実質的に水銀物質を含まない(すなわち、5μg/ml未満)(例えば、チオメルサールを含まない)べき[11、134]であることが、好ましい。水銀を含まないワクチンが、より好ましく、そしてこれは、参考文献11に従ってトコフェロール含有アジュバントを使用する場合、従来通り達成され得る。」(第19頁第9?12行)
(チ)「組成物は、1つ以上の緩衝剤を含有し得る。代表的な緩衝剤としては、以下が挙げられる:リン酸緩衝剤;Tris緩衝剤;ホウ酸緩衝剤;コハク酸緩衝剤;ヒスチジン緩衝剤(特に、水酸化アルミニウムアジュバントを含む);またはクエン酸緩衝剤。・・・
組成物のpHは、一般に、5.0と8.1との間、より代表的には6.0と8.0との間、例えば、6.5と7.5との間、または7.0と7.8との間である。」(第19頁第21?26行)

(2)第2の基礎出願に基づく優先権主張の効果について
上記5-1-2(1)(ウ)によれば、スプリットインフルエンザウイルス抗原とTh1アジュバントとを含む免疫原性組成物であって、該抗原は、細胞培養物において増殖されたウイルスから調製され、そしていかなる卵タンパク質も含まず、そして、Th1アジュバントはトコフェロールを含む水中油型エマルションの形態であり、細胞培養物の宿主由来の10ng未満の細胞DNAを含む、免疫原性組成物が記載されており、上記5-1-2(1)(カ)によれば、ウイルスは鳥類培養細胞株から調製し得るものである。また、上記5-1-2(1)(コ)、(シ)、(ス)、(ソ)によれば、スクアレン、トコフェロール、及びポリソルベート80を含む水中油型エマルションは、上記Th1型応答を誘発するトコフェロールを含む水中油型エマルションに該当するものである。そして、上記5-1-2(1)(ケ)、(コ)、(シ)?(セ)によれば、トコフェロール含有水中油型エマルションアジュバントは、Th1型応答を誘発し、偏向したTh2応答を回避するものであるから、該アジュバントを含む免疫原性組成物は、該アジュバントを含まない免疫原性組成物よりも、Th2型に偏った免疫応答を少なく誘発するものであると理解できる。
そうすると、第2の基礎出願の全体には、本件訂正発明1(i)が記載されている。
さらに、本件訂正発明2(i)?26(i)は、本件訂正発明1(i)の各成分や組成物がキットであることを特定するものであるが、これらについては、上記5-1-2(1)(ア)?(オ)、(キ)、(ク)、(サ)、(ソ)?(チ)に記載されているから、第2の基礎出願の全体に記載されている。
したがって、本件訂正発明(i)は、第2の基礎出願に基づく優先権主張の効果が認められる。

(3)請求人の主張について
請求人は、平成26年10月10日付け審判請求書において、以下の主張をしている。
「第2の基礎出願に記載の、スクアレン、トコフェロールおよびポリソルベート80を含む水中油型エマルションがTh1アジュバントであるとは理解しないし、それを含む免疫原性組成物によって第2の基礎出願の課題であるORSの危険性を最小化することに使用できない。よって、本件特許発明1のうち「スクアレン、トコフェロールおよびポリソルベート80を含む水中油型エマルション」に関する部分は、第2の基礎出願の出願書類の全体には実施可能な程度に記載されていない。」
また、請求人は、平成27年6月15日付け口頭審理陳述要領書において、以下の主張もしている。
「第2の基礎出願の全体からは、「Th1アジュバントを含まない該免疫原性組成物よりも、Th2型に偏った免疫応答を少なく誘発する」Th1アジュバントが記載又は示唆されているとは到底理解できない。」

しかしながら、上記5-1-2(1)(ア)によれば、第2の基礎出願において、アジュバントはTh2偏向を回避するために用いられるものであり、少なくとも部分的なTh1型応答を刺激するために選択されるものである。そして、上記5-1-2(1)(セ)によれば、トコフェロール含有エマルションは、Th1型応答を誘発するので、第2の基礎出願において使用され得るものであり、また、上記5-1-2(1)(ソ)によれば、第2の基礎出願における有用なアジュバントとして、スクアレン、トコフェロールおよびTween 80のエマルションが記載されている。また、上記5-1-2(1)(ス)には、トコフェロールを含む水中油型エマルションは、Th1誘導性アジュバントであることが記載され、上記5-1-2(1)(コ)、(シ)には、ビタミンEがTh1型応答を刺激することが記載されている。これら記載を総合勘案すると、第2の基礎出願に全体には、α-トコフェロール、スクアレン及びポリソルベート80からなる水中油型エマルションは、Th2偏向を回避するために用いられ、少なくとも部分的なTh1型応答を刺激する、Th1アジュバントであり、当該アジュバントを含有する免疫原性組成物は、当該アジュバントを含まない免疫原性組成物よりも、Th2型に偏った免疫応答を少なく誘発するものであることが記載されているといえる。
したがって、上記請求人の主張は採用することはできない。

(4)第2の基礎出願に基づく優先権主張についてのまとめ
以上のとおりであるから、本件訂正発明(i)は、第2の基礎出願に基づく優先権主張の効果が認められる。

5-1-3.優先権主張についてのまとめ
本件訂正発明(i)は第1の基礎出願に基づく優先権主張の効果は認められないが、第2の基礎出願に基づく優先権主張の効果は認められる。また、本件訂正発明(ii)は第1の基礎出願に基づく優先権主張の効果が認められる。

5-2.無効理由1及び2について
4-1に記載したとおり、無効理由1及び2は、第1及び第2の基礎出願に基づくパリ条約による優先権主張が認められない場合を前提とするものである。
しかしながら、5-1で説示したとおり、本件訂正発明は、第1又は第2の基礎出願に基づく優先権主張の効果が認められるものである。
そうすると、第1及び第2の基礎出願に基づくパリ条約による優先権主張が認められない場合を前提とする無効理由1及び2によって本件訂正発明を無効にすべきものであるとはいえない。

5-3.無効理由3について
5-3-1.甲号証の記載
(1)甲第1号証
甲第1号証、すなわち、本件特許の優先日前の国際特許出願であって、本件特許の優先日後に国際公開された、PCT/EP2006/002836号(国際公開第2006/100109号)の国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面には、以下の記載がある。なお、原文は英語のため、訳文にて示す。
(ア)「【請求項1】
ヒトにおける、インフルエンザウイルスまたはその抗原性組成物に対するi)改善されたCD4 T細胞免疫応答、またはii)改善された記憶B細胞応答、の少なくとも1つを誘導するための免疫原性組成物の製造における、(a)インフルエンザウイルスまたはその抗原性調製物、ならびに(b)水中油型エマルジョンアジュバントの使用であって、前記水中油型エマルジョンが代謝可能なオイル、ステロール、および乳化剤を含んでなる前記使用。
・・・
【請求項21】
前記水中油型エマルジョンアジュバントが、2?10%スクアレン、2?10%α-トコフェロールおよび0.3?3% Tween 80という組成を有する、請求項1?20のいずれか1項に記載の使用。
【請求項22】
前記免疫原性組成物がTLR-4リガンドをさらに含む、請求項1?21のいずれか1項に記載の使用。
【請求項23】
前記TLR-4リガンドが、3D-MPLのようなリピドAの非毒性誘導体、リピドAの合成誘導体、MDP、およびRSV Fプロテインからなるリストより選択される、請求項22に記載の使用。
【請求項24】
前記リピドA誘導体が3D-MPLである、請求項23に記載の使用。
・・・
【請求項37】
変種インフルエンザ株により引き起こされるインフルエンザ感染症に対する保護のための免疫原性組成物の調製における、(a)第1種のインフルエンザ株由来のインフルエンザウイルスまたはその抗原性調製物、および(b)水中油型エマルジョンアジュバントの使用であって、前記水中油型エマルジョンが代謝可能なオイル、ステロール、および乳化剤を含んでなる前記使用。
・・・
【請求項39】
前記インフルエンザウイルスまたはその抗原性調製物が、一価、二価または三価である、請求項1?38のいずれか1項に記載の使用。
【請求項40】
前記インフルエンザウイルスまたはその抗原性調製物が3種の異なるインフルエンザ株由来である、請求項1?39のいずれか1項に記載の使用。
【請求項41】
少なくとも1種の株が大流行に関与しているかまたは大流行に関与する潜在力を有する株である、請求項40に記載の使用。
【請求項42】
前記流行株がH5N1、H9N2、H7N7、H2N2およびH1N1からなるリストより選択される、請求項41に記載の使用。
・・・
【請求項45】
前記インフルエンザ抗原またはその抗原性調製物が卵由来または組織培養由来である、請求項1?44のいずれか1項に記載の使用。
・・・
【請求項47】
前記インフルエンザウイルスが、スプリットインフルエンザウイルス、全インフルエンザウイルス、サブユニットインフルエンザウイルス、インフルエンザビロソーム、およびその抗原性調製物からなるリストより選択される、請求項1?46のいずれか1項に記載の使用。
【請求項48】
前記インフルエンザウイルスがスプリットインフルエンザウイルス抗原またはその抗原調製物である、請求項47に記載の使用。」(特許請求の範囲)
(イ)「色々な種類のインフルエンザワクチンは通常3価のワクチンである。こうしたワクチンは通常、2種のインフルエンザA型ウイルス株および1種のインフルエンザB型株に由来する抗原を含有する。」(第2頁第34?35行)
(ウ)「特定の実施形態において、前記水中油型エマルジョンアジュバントは、少なくとも1種の代謝可能なオイルを全体積の0.5%?20%という量にて含み、かつ油滴を有し、その油滴の少なくとも70強度%は直径1 μm未満である。」(第4頁第6?9行)
(エ)「インフルエンザウイルス株および抗原
本発明に従って使用するためのインフルエンザウイルスまたはその抗原性調製物は、スプリットインフルエンザウイルスまたはそのスプリットウイルス抗原性調製物であってよい。・・・そのスプリットウイルス抗原性調製物とは、スプリットウイルス成分の抗原特性の大部分を保持しながらスプリットウイルスと比較してある程度精製されていてよいスプリットウイルス調製物を意味する。例えば、卵において製造する場合、スプリットウイルスから卵夾雑タンパク質を除去することができ、または細胞培養において製造する場合、スプリットウイルスから宿主細胞夾雑物を除去することができる。」(第9頁第20行?第10頁第4行)
(オ)「前記インフルエンザウイルスまたはその抗原性調製物は、卵由来または組織培養由来であってよい。
・・・上記ウイルス抗原またはその抗原性調製物は、組織培養を使用してウイルスを増殖させるか、または組換えインフルエンザウイルス表面抗原を発現させる任意の新たな作成方法に由来するものであってよい。ウイルスを増殖させるための適切な細胞基質には、例えば、MDCK、MDCKのクローン由来の細胞、またはMDCK様細胞などのイヌ腎細胞、ベロ細胞を含めたAGMK細胞などのサル腎細胞、適切なブタ培養細胞株、またはワクチン用にインフルエンザウイルスを作成するのに適したあらゆる他の種類の哺乳動物細胞が含まれる。適切な細胞基質には、ヒト細胞、例えば、MRC-5細胞も含まれる。適切な細胞基質は培養細胞株に限られることなく、例えば、ニワトリ胚線維芽細胞などの一次細胞およびトリの培養細胞株も含まれる。」(第10頁第35行?第11頁第13行)
(カ)「インフルエンザ調製物は、低レベルのチオメルサールの存在下で、または好ましくはチオメルサールの不在下で調製されることが好ましい。好ましくは、得られたインフルエンザ調製物は、有機水銀保存剤の不在下で安定であり、特に、この調製物は、剰余のチオメルサールを含有していない。特に、インフルエンザウイルス調製物は、チオメルサールの不在下で、または低レベルのチオメルサールで(通常5μg/ml以下)安定化する赤血球凝集素抗原を含む。」(第12頁第21?26行)
(キ)「一実施形態において、上記組成物は、トール様受容体(TLR)4リガンド、例えばリピドAの非毒性誘導体、特にモノホスホリルリピドA、またはより具体的には3-脱アシル化モノホスホリルリピドA (3D - MPL)を追加的に含みうる。
3 D - MPLは、MPL(登録商標)という商標名にてCorixa corporation社から販売されており(本明細書中ではMPL)、主にIFNγ(Th1)表現型を有するCD4+ T細胞応答を促進する。3 D - MPLはGB 2 220 211 Aに開示の方法により製造することができる。化学的にはMPLは、3、4、5または6個のアシル化鎖を有する3-脱アシル化モノホスホリルリピドAの混合物である。」(第20頁第29?36行)
(ク)「好ましい実施形態では、インフルエンザ株は、伝染病の大流行に関与している、または伝染病の大流行に関与する潜在力を有しているものでありうる。特にワクチンが2価や3価ワクチンなどの多価ワクチンであるとき、少なくとも1種の株は、伝染病の大流行に関与している、または伝染病の大流行に関与する可能性を有する。適切な株は、これだけに限らないが、H5N1、H9N2、H7N7、H2N2、およびH1N1である。」(第23頁第31?36行)
(ケ)「実施例II
水中油型エマルジョンおよびアジュバント製剤の調製および特徴付け
他に特に指示しない限り、後続の実施例で使用される油/水エマルジョンは、2種の油(α-トコフェロールおよびスクアレン)から作製された有機層と、乳化剤としてTween80を含有するPBSの水相とからなる。他に特に指示しない限り、後続の実施例で使用される水中油型エマルジョンアジュバント製剤は、下記の水中油型エマルジョン成分(所与の終濃度)、すなわちスクアレン2.5%(v/v)、α-トコフェロール2.5%(v/v)、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン0.9%(v/v)(Tween80)を含むものが作製され、WO95/17210を参照されたい。後続の実施例ではAS03と呼ばれるこのエマルジョンは、2倍濃縮物として下記の通り調製した。」(第44頁第1?11行)
(コ)「SB62エマルジョンの最終的な組成は、下記の通りである:
Tween80:1.8%(v/v) 19.4mg/ml; スクアレン:5%(v/v) 42.8mg/ml; α-トコフェロール:5%(v/v) 47.5mg/ml; PBS-mod:NaCl 121mM、KCl 2.38mM、Na2HPO4 7.14mM、KH2PO4 1.3mM; pH6.8±0.1。」(第45頁第1?5行)
(サ)「実施例III
スプリットインフルエンザ抗原調製物およびAS03アジュバントを含有するワクチンを用いた65歳以上の高齢者集団における臨床試験(Explo-Flu-001)」(第51頁第29?30行)
(シ)「III.2. ワクチンの組成物および投与(表5)
III.2.1 ワクチンの調製
AS03アジュバント添加インフルエンザワクチン
AS03アジュバント添加インフルエンザワクチン候補は、I型ガラスバイアル(335μl)(抗原容器)内にある濃縮3価不活化スプリットビリオン抗原と、SB62エマルジョンが入っている事前充填式シリンジ(335μl)(アジュバント容器)からなる2成分ワクチンである。注射の時、抗原容器の内容物を、SN62エマルジョン事前充填式シリンジの助けを借りて除去し、その後、シリンジを穏やかに混合する。SB62エマルジョンとワクチン抗原との混合によって、AS03アジュバントが再構成される。」(第52頁第20?30行)
(ス)「1)アジュバントを含まない3価の最終バルクの配合および抗原容器内への充填
・・・濃縮したリン酸緩衝生理食塩水と、Tween80、Triton X-100、およびコハク酸水素α-トコフェリルのプレミックスとを、注射用蒸留水で希釈する。次いで3つの濃縮モノバルク(株A/New Caledonia、株A/Panama、および株B/Shangdong)を、得られたリン酸緩衝生理食塩水/Tween80-Triton X-100-コハク酸水素α-トコフェリル溶液(pH7.4、NaCl 137mM、KCl 2.7mM、Na2HPO4 8.1mM、KH2PO4 1.47mM、Tween80 1500μg/ml、Triton X-100 220μg/ml、およびコハク酸水素α-トコフェリル200μg/ml)中に連続的に希釈して、最終的に、3価の最終バルク1ml当たりA株のHAが60μg(15μg HA/A株/250μl 3価の最終バルク)、およびB株のHAが70μg(17.5μg HA/B株/250μl 3価の最終バルク)の濃度になるようにする。1価のバルクのそれぞれを添加する合間に、混合物を室温で10分間撹拌する。最後の1価のバルクを添加して150分間撹拌した後、pHを検査し、HClまたはNaOHで7.2±0.2に調節する
2)SB62エマルジョン滅菌バルクの調製、およびアジュバント容器への充填
・・・
・乳化:得られた混合物を、ミクロ流動器の相互作用チャンバ内で剪断力、衝撃力、および空洞力にかけて(15000PSI-8サイクル)、サブミクロンの液滴(100から200nmの間の分布)を生成する。得られたpHは、6.8±0.1の間である。」(第53頁第6?35行)
(セ)「III.2.2. ワクチンの組成(表6)および投与

」(第54頁第23行?第55頁第1行)
(ソ)「III.5.1.1. 抗赤血球凝集素抗体応答
a)HI幾何平均力価(GMT)
95%CIでのHI抗体に関するGMTを、表7に示す(抗HI抗体に関するGMT)。・・・


b)抗HI抗体力価のコンバーション係数、血清保護率、およびセロコンバーション率(ヒトにおける保護では相関する)
結果を表8に示す。
・・・

」(第56頁第17行?第58頁第1行)
(タ)「III.5.2. 細胞免疫応答
末梢血抗原特異的CD4およびCD8 T細胞は、これらに対応する抗原と共にインキュベートする場合、IL-2、CD40L、TNF-α、およびIFNγを生成するために、in vitroで再刺激を受けることができる。その結果、細胞内サイトカイン産生と同様に、細胞表現型の従来の免疫蛍光標識の後、フローサイトメトリーによって抗原特異的CD4およびCD8 T細胞を数え上げることができる。本発明の試験では、インフルエンザワクチン抗原ならびに特定のインフルエンザタンパク質由来のペプチドを、インフルエンザ特異的T細胞を再刺激する抗原として使用した。表13から18に、CD4およびCD8 T細胞の応答に関する結果を示す。
・・・

」第62頁第11行?第67頁第1行)

なお、甲第1号証は、(GB)英国において2005年3月23日に出願された出願である0506001.7、及び0506000.9、同国において2005年5月24日に出願された出願である0510589.4、0510591.1等に基づくパリ条約による優先権を主張するものであるところ、上記5-3-1(1)(ア)?(タ)に摘記した事項は、上記優先基礎となる出願の全体に記載されている。

(2)甲第2号証
甲第2号証には、以下の記載がある。なお、原文は英語のため、訳文で示す。
(ア)「生物学的標準化に関するWHO専門家委員会」(表紙)
(イ)「生物学的標準化に関するWHO専門家委員会は、2003年11月17日から21日までジュネーブで開催された。」(第1頁第2?3行)
(ウ)「インフルエンザワクチン(不活化)の生産及びコントロールのための勧告
・・・本文にいくつかの変更を行った後、委員会は改訂テキストをインフルエンザワクチン(不活化)の生産及びコントロールのための勧告として採択し、本報告の附属書類とすべきことに合意した(Annex 3)。」(第10頁第13?33行)
(エ)「連続的細胞培養によって増殖されたウイルスに対しては、精製された1価のウイルスプールについて残留細胞DNAをテストしなければならない。精製工程は一貫して細胞DNAを1ヒト用量あたり10ng未満まで低減することを示さなければならない。」(第119頁第11?14行)

(3)甲第3号証
甲第3号証は、本件優先日前に公開された文献であって、以下の記載がある。なお、原文は英語のため、訳文で示す。
(ア)「現在認可されているヒトインフルエンザA型ワクチンは、HA遺伝子とNA遺伝子、及び付随する抗原特性は流行しているインフルエンザA型ウイルスに由来し、内在遺伝子は高増殖性のA/Puerto Rico/8/34(PR8)に由来する高増殖性の再集合ウイルスをホルマリン不活化して調製されている。」(第1975頁左欄第8?13行)

5-3-2.先願発明
上記5-3-1(1)(ア)によれば、甲第1号証には、ヒトにおける、インフルエンザウイルスまたはその抗原性組成物に対するi)改善されたCD4 T細胞免疫応答、またはii)改善された記憶B細胞応答、の少なくとも1つを誘導するための免疫原性組成物が記載され、上記5-3-1(1)(サ)によれば、前記免疫原性組成物は、スプリットインフルエンザ抗原調製物およびAS03アジュバントを含有するワクチンであり、上記5-3-1(1)(ケ)、(コ)、(シ)、(セ)によれば、AS03アジュバントは、スクアレン、α-トコフェロール、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(Tween80)を含む油中水型エマルションアジュバントである。
そうすると、甲第1号証には、以下の発明が記載されているといえる。
「スプリットインフルエンザウイルス抗原と、スクアレン、α-トコフェロール、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(Tween80)を含んでなる水中油型エマルジョンアジュバントとを含むワクチンである免疫原性組成物であって、ヒトにおける、インフルエンザウイルスまたはその抗原性組成物に対する改善されたCD4 T細胞免疫応答を誘導するための免疫原性組成物。」(以下、「先願発明」という。)

5-3-3.対比・判断
(1)本件訂正発明1について
本件訂正発明1と先願発明を対比する。先願発明における「スプリットインフルエンザ抗原調製物」、「α-トコフェロール、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(Tween80)を含んでなる水中油型エマルジョン」は、それぞれ本件訂正発明1の「スプリットインフルエンザウイルス抗原」、「(i)スクアレン、トコフェロール及びポリソルベート80を含む水中油型エマルション」に該当する。また、先願発明の免疫原性組成物はワクチンであるから、インフルエンザウイルス感染から防御するために使用されるものであることは明らかである。
そうすると、両者は、
「スプリットインフルエンザウイルス抗原とアジュバントとを含む免疫原性組成物であって、アジュバントは、(i)スクアレン、トコフェロールおよびポリソルベート80を含む水中油型エマルション、または(ii)スクアレン、ポリソルベート80、ソルビタントリオレアートおよび免疫刺激性オリゴヌクレオチドのサブミクロンエマルション、の形態であり、
ここで、該免疫原性組成物が、インフルエンザウイルス感染から防御するために使用される、免疫原性組成物。」
で一致し、以下の点で一応相違する。
・本件訂正発明1の抗原が鳥類細胞培養物において増殖されたウイルスから調製され、いかなる卵タンパク質も含まないものであり、免疫原性組成物が1用量当たり10ng未満の残留宿主細胞DNAを含むものであるのに対し、先願発明ではこのような特定がなされていない点(以下、「相違点1」という。)
・アジュバントが、本件訂正発明1ではTh1アジュバントとの特定もされているアジュバントであるのに対し、先願発明ではTh1との特定はされていないアジュバントである点(以下、「相違点2」という。)
・免疫原性組成物が、本件訂正発明1ではTh1アジュバントを含まない免疫原性組成物よりも、Th2型に偏った免疫応答を少なく誘発するために使用されるものであるのに対し、先願発明には、そのような事項がない点(以下、「相違点3」という。)

そこで、上記相違点1?3について検討する。

・相違点1について
上記5-3-1(1)(ア)、(オ)によれば、先願発明ではトリの培養細胞株を使用する組織培養由来の抗原が用いられるから、この点は実質的な相違点ではない。また、細胞培養物において増殖されたウイルスから調製した抗原の場合、卵タンパク質を含まないことは明らかである。そして、上記5-3-1(1)(エ)によれば、スプリットインフルエンザウイルス抗原調製物を細胞培養において製造する場合、スプリットウイルスから宿主細胞夾雑物を除去するものであるし、その宿主細胞夾雑物の残留量をなるべく低くすること、例えば、上記5-3-1(2)(ア)に記載されるように、インフルエンザウイルス抗原を細胞培養において製造する場合、残留宿主細胞DNAを1用量当たり10ng未満まで低減することは、甲第1号証の出願の優先日における技術常識であったといえる。
なお、甲第2号証は2005年に発行された刊行物であるが、上記5-3-1(2)(イ)、(ウ)によれば、上記5-3-1(2)(エ)に記載された事項は2003年11月17?21日に開催されたWHO専門家委員会において採択された内容であり、甲第1号証の出願の優先日には、当該技術分野において技術常識となっていたと認められる。
そうすると、先願発明において、抗原が鳥類細胞培養物において増殖されたウイルスから調製され、いかなる卵タンパク質も含まないものであり、免疫原性組成物が1用量当たり10ng未満の残留宿主細胞DNAを含むものであることは、記載されているに等しい事項である。
よって、相違点1は、実質的な相違点であるとはいえない。

・相違点2及び相違点3について
アジュバントがTh1アジュバントであること、及び、免疫原性組成物がTh1アジュバントを含まない免疫原性組成物よりも、Th2型に偏った免疫応答を少なく誘発することは、本件訂正発明1のアジュバントや免疫原性組成物の固有の性質に過ぎない。そして、先願発明のアジュバントや免疫原性組成物は、本件訂正発明1のアジュバントや免疫原性組成物に該当するものであるから、先願発明のアジュバントもTh1アジュバントであり、先願発明の免疫原性組成物もTh1アジュバントを含まない免疫原性組成物よりも、Th2型に偏った免疫応答を少なく誘発するという固有の性質を有するものであるといえる。よって、相違点2及び3は、相違点であるとはいえない。

なお、本件明細書には、(i)スクアレン、トコフェロールおよびポリソルベート80を含む水中油型エマルションの形態であるTh1アジュバントの効果を確認した具体例としては、段落【0146】?【0156】のヒト試験が記載されるのみであるが、該ヒト試験の記載は甲第1号証を引用するものであり、示されている試験結果も、上記5-3-1(1)(ソ)、(タ)に示された結果と同一である点付言する。

(2)本件訂正発明2、4?16について
本件訂正発明2、4?16は、本件訂正発明1の各成分や組成物がキットであることを特定するものであるが、これらについては、甲第1号証(5-3-1(1)(ア)?(ウ)、(カ)?(ク)、(ス))に記載されているか、または、上記5-3-1(2)(ア)、5-3-1(3)(ア)に記載されるような本技術分野における技術常識に属するものに過ぎないから、甲第1号証に記載されているに等しいものであり、相違点であるとはいえない。
よって、本件訂正発明2、4?16についても、先願発明と同一である。

(3)本件訂正発明3、17?26について
本件訂正発明3は、本件訂正発明1のTh1アジュバントが「スクアレン、ポリソルベート80、ソルビタントリオレアートおよび免疫刺激性オリゴヌクレオチドのサブミクロンエマルションの形態」であることを特定するものである。これに対し、甲第1号証には、スクアレン、ポリソルベート80、ソルビタントリオレアートおよび免疫刺激性オリゴヌクレオチドのサブミクロンエマルションの形態であるアジュバントは記載されていない。
よって、本件訂正発明3は先願発明と同一であるとはいえない。また、本件訂正発明17?26は本件訂正発明3を引用するものであるから、同様に、先願発明と同一であるとはいえない。

5-3-4.被請求人の主張について
被請求人は、平成27年3月9日付け答弁書において、次の主張をしている。
・「甲第1号証には、ウイルス抗原が細胞培養由来のスプリットインフルエンザウイルス抗原でなければならないこと、そして、当該細胞培養由来のスプリットインフルエンザウイルス抗原が、(i)スクアレン、トコフェロールおよびポリソルベート80を含む水中油型エマルション・・・の形態のTh1アジュバントと組み合わせて使用されることが記載されていないことから、本件特許発明1は、甲第1号証に記載された発明と同一であるとはいえない」(以下、「被請求人の主張1」という。)
・「甲第1号証は、細胞培養由来のインフルエンザウイルス抗原とTh1アジュバントの組み合わせが、Th1アジュバントを含まない組成物と比較して、Th2に偏った免疫応答をより少なく生じるという説明をまったく含んでいない。」(以下、「被請求人の主張2」という。)
・「本件特許発明は、細胞培養ベースのスプリットインフルエンザワクチンに限定されているが、甲第1号証は、このようなワクチンがヒトに投与されたこと、または、これらのワクチンがヒトへの投与に適した形態であることを示していない。それゆえ、甲第1号証には、1用量あたり10ng未満の残留宿主細胞DNAというDNA含量のインフルエンザワクチンの開示はなく、たとえ甲第2号証等の技術常識を考慮したとしても、この特徴は、甲第1号証のワクチンに本来備わっている特徴でもない。」(以下、「被請求人の主張3」という。)
また、被請求人は、平成27年6月29日に行われた第1回口頭審理において、以下の主張をしている。
・「甲第2号証には「必ずしも世界保健機関の決議や合意済みの方針を表すものではない」(表紙上部)との記載がある。」(以下、「被請求人の主張4」という。)
さらに、被請求人は、平成27年11月2日付け審判事件上申書において、以下の主張をしている。
・「本件訂正発明1では、「抗原は、鳥類細胞培養物において増殖されたウイルスから調製され」るものであることを特徴としていますが、甲第1号証の11頁5行?13行では、MDCKなどの哺乳類細胞での細胞培養を用いたウイルス抗原の調製が記載され、それに続いて、トリ細胞に関して「ニワトリ肺線維芽細胞などの一次細胞」が例示されています。一次細胞は、本願発明の実施において用いられる細胞とは異なるうえ、甲第2号証が対象とする細胞とも異なります。実際のところ、甲第2号証の119頁11行では、“continuous cell culture”(「連続的細胞培養」)と記載され連続して培養される細胞を対象としていますが、一次細胞は対象としていません(乙14号証参照)。それゆえ、この点においても、本件訂正発明1は甲第1号証に記載の発明とは異なります。」(以下、「被請求人の主張5」という。)

しかしながら、被請求人の主張1については、上記5-3-3で説示したとおり、甲第1号証には、細胞培養由来抗原が用いられることが記載されているから、該主張を採用することはできない。また、被請求人の主張2についても、上記5-3-3で説示したとおり、Th1アジュバントを含まない組成物と比較して、Th2に偏った免疫応答をより少なく生じるとは、免疫原性組成物の固有の性質を示したに過ぎず、先願発明の免疫原性組成物も有する性質であるといえるから、この点において差異があるとはいえない。そして、被請求人の主張3及び4に関し、先願発明はヒトに投与しているものである。また、細胞由来抗原を用いた場合に、残留宿主細胞DNAを低減することは甲第1号証の出願の優先日において当業者が当然に行っていた技術的事項であるといえるし、世界保健機関(WHO)は、本技術分野における方針や基準等を決定する国際機関であるところ、上記5-3-1(2)(ア)?(ウ)によれば、甲第2号証は、WHOの生物学的標準化に関する専門委員会の勧告であるから、当業者であれば考慮すべき事項を示しているものといえる。そうすると、ヒトに投与するインフルエンザワクチンにおいて、細胞培養由来の抗原を用いる場合に1用量あたり10ng未満の残留宿主細胞DNAというDNA含量とすることは、甲第1号証の出願の優先日における技術常識であったといえる。さらに、被請求人の主張5について、本件訂正発明の「鳥類培養細胞物」は、一次細胞も包含するものであるし、また、上記5-3-1(1)(オ)によれば、甲第1号証にはニワトリ肺線維芽細胞などの一次細胞のみならず、トリの培養細胞株も記載されているから、該主張を採用することはできない。
したがって、上記被請求人の主張を採用することはできない。

5-3-5.無効理由3についてのまとめ
よって、本件訂正発明1、2、4?16は、本件特許の優先日前の国際特許出願であって、本件特許の優先日後に国際公開がされた甲第1号証の国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であるから、特許法第184条の13の規定により読み替えて適用される同法第29条の2の規定により特許を受けることができないものであり、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。
一方、本件訂正発明3、17?26は、特許法第29条の2の規定に該当するものではなく、無効理由3によって無効とすべきものでない。

5-4.無効理由4について
5-4-1.無効理由4の要点
請求人が主張する無効理由4の要点は、以下のとおりである。
・本件明細書における実施例のうち、本件発明(i)に関するヒト試験([0146]?[0156]は、卵タンパク質を含むものであり、本件発明の要件を満たさない。
・卵由来の抗原の代わりに、細胞培養由来の抗原を使用した場合、卵アレルゲンを回避できる一方、細胞培養によるスプリットインフルエンザ抗原による過剰なTh2応答が新たに発生しているため、データが示されない限り、ワクチンのTh1/Th2応答の結果は推測できないから、卵由来抗原の結果に基づき、細胞培養由来の抗原による結果は説明できない。

5-4-2.判断
本件訂正発明の免疫原性組成物は、Th1アジュバントを含まない免疫原性組成物よりも、Th2型に偏った免疫応答を少なく誘発するために使用されるものである。ここで、Th1アジュバントを含まない免疫原性組成物よりも、Th2型に偏った免疫応答を少なく誘発するとは、本件訂正発明の免疫原性組成物がTh1/Th2バランスにおいて、Th1型に偏った免疫応答を示すことを意味するものではなく、アジュバント含有免疫原性組成物が、アジュバント非添加の免疫原性組成物と比較して、Th2型に偏った免疫応答を少なく誘発、すなわち、大きいTh1型応答を示すことを意味するものである。
これに対し、本願の発明の詳細な説明に記載の上記ヒト試験では、本件訂正発明(i)のアジュバントを添加したワクチンがアジュバントを添加していないコントロールよりも大きいTh1型応答を示したことが、具体的な試験結果と共に記載されており、これらの結果は、本件訂正発明(i)のアジュバントが、Th1型応答を誘発することを示している。そして、該アジュバント自体の効果が、抗原の由来により影響されるものとはいえないから、細胞培養物由来抗原を含有する免疫原性組成物であったとしても、本件訂正発明(i)のアジュバントを含むものと含まないものでは、アジュバントを含むものの方が大きいTh1型応答を示す、すなわち、Th2型に偏った免疫応答を少なく誘発することが推認できる。
そうすると、本願の発明の詳細な説明では、本件訂正発明に含まれるTh1アジュバントの効果が確認されており、これにより本件訂正発明の免疫原性組成物が、アジュバントを含まない免疫原性組成物よりも、Th2型に偏った免疫応答を少なく誘発するという、目的の効果を有することも確認できるから、本願の発明の詳細な説明は、当業者が本件訂正発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されている。

5-4-3.無効理由4についてのまとめ
よって、本件訂正発明は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たすものであり、無効理由4によって無効とすべきものではない。

第6 むすび
以上のとおりであるから、本件訂正発明1、2、4?16は、無効理由3によって無効にすべきであり、本件訂正発明3、17?26は、無効理由1?4によっては無効にすべきものであるとはいえない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項で準用する民事訴訟法第61条の規定により、その26分の11を請求人の負担とし、26分の15を被請求人の負担とすべきものである。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
アジュバントを含むスプリットインフルエンザワクチンにおけるTH1/TH2バランスの変化
【技術分野】
【0001】
本明細書中に引用される全ての文書は、その全体が参考として援用される。
【0002】
(技術分野)
本発明は、インフルエンザウイルス感染を防御するためのワクチン、そして特に、スプリットワクチン(split vaccine)の分野にある。
【背景技術】
【0003】
(背景技術)
インフルエンザワクチンは、参考文献1の第17章および第18章において記載される。それらのワクチンは、生ウイルス(live virus)または不活化ウイルスに基づき、そして不活化ワクチンは、全ウイルス(whole virus)、「スプリット」ウイルス(「split」virus)または精製された表面抗原(赤血球凝集素およびノイラミニダーゼを含む)に基づき得る。赤血球凝集素(HA)は、不活化インフルエンザワクチンにおける主要な免疫原であり、そしてワクチン用量は、HAレベルへの参照によって標準化され、そのワクチンは、代表的に、1株あたり約15μgのHAを含む。
【0004】
「スプリット」ワクチンは、「Tween-エーテル」分解(splitting)プロセスなどの方法を使用し、ビリオンを洗浄剤により処理して、サブビリオン調製物を産生することによって得られる。スプリットワクチンは、一般に、インフルエンザビリオン由来の複数の抗原を含む。BEGRIVAC^(TM)製品、FLUARIX^(TM)製品、FLUZONE^(TM)製品およびFLUSHIELD^(TM)製品は、スプリットワクチンである。
【0005】
カナダにおいて2000年?2001年の時期の間に、新たに同定された眼呼吸器症候群(oculorespiratory syndrome)(ORS)が、スプリットワクチンを受容した患者において観察された。上記ORSは、高い割合の分解されていない(unsplit)ビリオンの微小凝集体を有する組成物を与える、製造の間のビリオンの不完全な分解に関連している[非特許文献1]。
【非特許文献1】Scheifeleら、Clin Infect Dis、2003年、第36巻、p.850?857
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
スプリットインフルエンザがORSを誘発し得る危険性を最小化することが、本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(発明の開示)
スプリットワクチンとORSとの間の関連の原因説明は存在しないが、ORSの臨床的特徴および疫学的特徴は、過敏症を示すので、そのワクチンは自然なTh1/Th2バランスを撹乱し得、分解されていない微粒子のビリオンはTh2表現型への偏りをもたらすことが、提唱されている。参考文献3において、例えば、スプリットインフルエンザワクチンにおける凝集体の存在は、免疫応答をより大きいTh2サイトカインパターンへと逸脱させることが見出された。しかし、参考文献4において、ORSとTh1/Th2バランスとの間の関連は、確認できなかった。
【0008】
ORSおよびTh2の偏りに関連する任意の正しい証拠がないことにかかわらず、本発明は、スプリットワクチンが過剰なTh2応答を引き起こし得る可能性を最小化することを模索する。インフルエンザワクチンが早急に生産されなければならない状況(例えば、流行の発生後)において、製造業者に対する圧力は、うかつにも、2000年?2001年の部分的に分解していない凝集したCanadianバッチと同じ懸案事項にみまわれるワクチンの放出をもたらし得る。実際に、非特許文献2は、「分解していないビリオンおよび凝集体を必ずしも排除することができない可能性がある」こと、および「眼および呼吸器の症状を誘発するいくつかの低いレベルの危険性を、避けられない可能性がある」ことを報告する。
【0009】
したがって、本発明は、過剰なTh2応答を引き起こし得るスプリットワクチン中の成分を回避することを模索する。Th2応答は、必ずしも完全に回避されない。なぜならば、それらは、防御に重要であり得るが、強力なTh2偏向に重要ではない可能性があるからである。不完全な分解が製造の間にうかつにも生じる場合、またはスプリットワクチンが保存の間に凝集を受ける場合、Th2偏向に関連する任意の有害効果(例えば、ORS)が、回避され得る。
【0010】
Th2偏向を回避するために、2つのアプローチが、好ましくは組み合わせて行われる。最初に、スプリットワクチンがアジュバントを含む場合、そのアジュバントは、少なくとも部分的なTh1型応答を刺激するために選択される(例えば、スプリットインフルエンザワクチンへの専らアルミニウム塩を用いたアジュバント添加(adjuvanting)を回避することが、好ましい)。第2に、アレルゲンの存在が、スプリットワクチンにおいて回避される。インフルエンザワクチンは時期毎の投与において特有であるので、複数回用量を受容する患者は、存在する任意の不純物に対して感作され、そしてアレルゲンは、感作された患者においてTh2応答を引き起こすことが報告されている[5]。アレルゲンを回避するために、インフルエンザウイルスを増殖させるための現在の卵ベースの方法は、細胞培養物を使用する方法に置換され、それによって混入する卵アレルゲン(例えば、オボアルブミンおよびオボムコイド)の存在を回避する。
【0011】
したがって、本発明は、スプリットインフルエンザウイルス抗原とアジュバントとを含む免疫原性組成物を提供し、(a)その抗原は、細胞培養物において増殖されたウイルスから調製され、そして(b)そのアジュバントは、完全にアルミニウム塩から構成されない。
【0012】
本発明はまた、(i)細胞培養物において増殖されたウイルスから調製されたスプリットインフルエンザウイルス抗原;と(ii)完全にアルミニウム塩から構成されないアジュバント;とを合わせる工程を包含する、免疫原性組成物を調製するための方法を提供する。
【0013】
本発明はまた、(i)細胞培養物において増殖されたウイルスから調製されたスプリットインフルエンザウイルス抗原を含む第1のキット成分;と(ii)完全にアルミニウム塩から構成されないアジュバントを含む第2のキット成分とを備えるキットを提供する。
【0014】
さらに、本発明は、スプリットインフルエンザウイルス抗原とアジュバントとを含む免疫原性組成物を提供し、(a)その組成物は、卵タンパク質を全く含まず、そして(b)そのアジュバントは、完全にアルミニウム塩から構成されない。
【0015】
本発明はまた、(i)卵タンパク質を全く含まない組成物;と(ii)完全にアルミニウム塩から構成されないアジュバント;とを合わせる工程を包含する、免疫原性組成物を調製するための方法を提供する。
【0016】
本発明はまた、(i)スプリットインフルエンザウイルス抗原を含むが、卵タンパク質を全く含まない第1のキット成分;と(ii)完全にアルミニウム塩から構成されないアジュバントを含む第2のキット成分;とを備えるキットを提供する。
【0017】
さらに、本発明は、スプリットインフルエンザウイルス抗原とTh1アジュバントとを含む免疫原性組成物を提供し、その抗原は、細胞培養物において増殖されたウイルスから調製される。
【0018】
本発明はまた、(i)細胞培養物において増殖されたウイルスから調製されたスプリットインフルエンザウイルス抗原;と(ii)Th1アジュバント;とを合わせる工程を包含する、免疫原性組成物を調製するための方法を提供する。
【0019】
本発明はまた、(i)細胞培養物において増殖されたウイルスから調製されたスプリットインフルエンザウイルス抗原を含む第1のキット成分;と(ii)Th1アジュバントを含む第2のキット成分;とを備えるキットを提供する。
【0020】
さらに、本発明は、スプリットインフルエンザウイルス抗原とTh1アジュバントとを含む免疫原性組成物を提供し、その組成物は、卵タンパク質を全く含まない。
【0021】
本発明はまた、(i)卵タンパク質を全く含まないスプリットインフルエンザ抗原;と(ii)Th1アジュバント;とを合わせる工程を包含する、免疫原性組成物を調製するための方法を提供する。
【0022】
本発明はまた、(i)スプリットインフルエンザウイルス抗原を含むが、卵タンパク質を全く含まない第1のキット成分;と(ii)Th1アジュバントを含む第2のキット成分;とを備えるキットを提供する。
【0023】
(スプリットインフルエンザウイルス抗原)
本発明の組成物は、細胞培養物におけるウイルス増殖によって得られるインフルエンザビリオンを分解することによって得られる抗原を含む。上記スプリットビリオン(split virion)は、代表的に、上記インフルエンザビリオン由来の複数の抗原を含み、それらとしては、赤血球凝集素、ノイラミニダーゼ、マトリックスおよび核タンパク質が挙げられる。本発明は、生ウイルスワクチン(例えば、FLUMIST^(TM)製品)、全ビリオン不活化ワクチン(例えば、INFLEXAL^(TM)製品)、精製された表面抗原ワクチン(それは、精製された赤血球凝集素表面糖タンパク質およびノイラミニダーゼ表面糖タンパク質に基づく(例えば、FLUVIRIN^(TM)製品、AGRIPPAL^(TM)製品およびINFLUVAC^(TM)製品))またはビロソームワクチン(virosomal vaccine)(それは、INFLEXAL V^(TM)製品およびINVAVAC^(TM)製品のような、核酸を含まないウイルス様リポソーム粒子の形態をとる[6])を包含しない。
【0024】
ビリオンは、種々の方法によってウイルス含有流体から回収され得る。例えば、精製プロセスは、ビリオンを破壊するための洗浄剤を含む直線ショ糖勾配溶液を使用したゾーン遠心分離を含み得る。
【0025】
スプリットビリオンは、ビリオンを洗浄剤(例えば、エチルエーテル、ポリソルベート80、デオキシコール酸塩、トリ-N-ブチルホスフェート、Triton X-100、Triton N101、臭化セチルトリメチルアンモニウム、Tergitol NP9など)により処理(「Tween-エーテル」分解プロセスを含む)してサブビリオン調製物を産生することによって得られる。インフルエンザウイルスを分解する方法は、当該分野において周知である(例えば、参考文献7?12などを参照のこと)。ウイルスの分解は、代表的に、破壊する濃度の分解剤(splitting agent)によって全ウイルスを破壊または断片化する(感染性であっても非感染性であってもよい)ことによって行われる。上記破壊は、ウイルスタンパク質の完全または部分的な可溶化をもたらし、ウイルスの完全性を変化させる。好ましい分解剤は、非イオン性界面活性剤およびイオン性(例えば、カチオン性)界面活性剤(例えば、アルキルグリコシド、アルキルチオグリコシド、アシル糖(acyl sugar)、スルホベタイン、ベタイン、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、N,N-ジアルキル-グルカミド(Glucamide)、Hecameg、アルキルフェノキシ-ポリエトキシエタノール、第四級アンモニウム化合物、サルコシル、CTAB(臭化セチルトリメチルアンモニウム)、トリ-N-ブチルホスフェート、Cetavlon、ミリスチルトリメチルアンモニウム塩、リポフェクチン(lipofectin)、リポフェクタミン(lipofectamine)、およびDOT-MA、オクチル-またはノニルフェノキシポリオキシエタノール(例えば、Triton X-100またはTriton N101などのTriton界面活性剤)、ポリオキシエチレンソルビタンエステル(Tween界面活性剤)、ポリオキシエチレンエーテル、ポリオキシエチレンエステルなどである。1つの有用な分解手順は、デオキシコール酸ナトリウムおよびホルムアルデヒドの継続的な効果を使用し、そして分解は、(例えば、ショ糖密度勾配溶液における)最初のビリオン精製の間に行われ得る。スプリットビリオンは、通常、リン酸ナトリウムによって緩衝化された等張塩化ナトリウム溶液に再懸濁され得る。
【0026】
上記インフルエンザウイルスは、弱毒化され得る。上記インフルエンザウイルスは、温度感受性であり得る。上記インフルエンザウイルスは、低温適応性であり得る。
【0027】
ワクチンに使用するためのインフルエンザウイルス株は、季節により変化する。最近の大流行間期において、2種のインフルエンザA型株(H1N1およびH3N2)および1種のインフルエンザB型株を含む三価ワクチンが、代表的である。本発明は、この型の大流行間期株(inter-pandemic strain)と一緒に使用され得るが、本発明はまた、(特に、インフルエンザA型ウイルスの)H2サブタイプ株、H5サブタイプ株、H7サブタイプ株またはH9サブタイプ株などの流行株(すなわちワクチンのレシピエントおよび一般的なヒト集団が免疫学的にナイーブである株)由来のウイルスと一緒に使用され得、そして流行株に対するインフルエンザワクチンは、一価であっても、例えば、流行株によって補充された通常の三価ワクチンに基づいてもよい。しかし、季節および上記ワクチンに含まれる抗原の性質に依存して、本発明は、インフルエンザA型ウイルスのHAサブタイプであるH1、H2、H3、H4、H5、H6、H7、H8、H9、H10、H11、H12、H13、H14、H15またはH16の1種以上を防御し得る。本発明は、インフルエンザA型ウイルスのNAサブタイプであるN1、N2、N3、N4、N5、N6、N7、N8またはN9の1種以上を防御し得る。
【0028】
大流行間期の株に対して免疫感作するために適切であることと同様に、本発明の組成物は、流行株に対して免疫感作するために特に有用である。流行の発生を引き起こす可能性をインフルエンザ株に与えるインフルエンザ株の特性は、以下である:(a)そのインフルエンザ株が、最近広まっているヒト株におけるHAと比較して新規のHA(すなわち、10年以上にわたってヒト集団において顕性でないHA(例えばH2))を含むか、またはヒト集団において先に全く見出されていない(例えば、一般には鳥類集団においてのみ見出されているH5、H6またはH9)ことにより、ヒト集団がその株のHAに対して免疫学的にナイーブであること;(b)そのインフルエンザ株が、ヒト集団において水平伝播し得ること;および(c)そのインフルエンザ株が、ヒトに対して病原性であること。H5型赤血球凝集素を有するウイルスは、流行性インフルエンザ(例えば、H5N1株)に対する免疫感作のために好ましい。他の可能性のある株としては、H5N3、H9N2、H2N2、H7N1およびH7N7、および任意の他の顕在する潜在的な流行株が挙げられる。H5サブタイプにおいて、ウイルスは、HAクレード1、HAクレード1’、HAクレード2またはHAクレード3に分類され得[13]、クレード1およびクレード3は、特に、関連性がある。
【0029】
本発明によって使用されるインフルエンザウイルス株は、抗ウイルス療法に対して抵抗性(例えば、オセルタミビル[14]および/またはザナミビルに対して抵抗性)であり得、その株は、抵抗性の流行株を含む[15]。
【0030】
本発明の組成物は、インフルエンザA型ウイルスおよび/またはインフルエンザB型ウイルスを含む1種以上(例えば1種、2種、3種、4種またはそれ以上)のインフルエンザウイルス株由来の抗原を含み得る。ワクチンが、1種より多い株のインフルエンザを含む場合、それらの異なる株は、代表的に、別個に増殖され、かつそれらのウイルスが回収および分解された後に混合される。したがって、本発明の方法は、1種より多いインフルエンザ株由来の抗原を混合する工程を含み得る。2種のインフルエンザA型ウイルス株および1種のインフルエンザB型ウイルス株由来の抗原を含む三価ワクチンが、好ましい。
【0031】
本発明のいくつかの実施形態において、上記組成物は、単一のインフルエンザA型株由来の抗原を含み得る。いくつかの実施形態において、上記組成物は、2種のインフルエンザA型株由来の抗原を含み得るが、但し、これらの2種の株は、H1N1およびH3N2ではない。いくつかの実施形態において、上記組成物は、2種より多いインフルエンザA型株由来の抗原を含み得る。
【0032】
上記インフルエンザウイルスは、リアソータント(reassortant)株であり得、そして逆方向遺伝学技術によって得ることができた。逆方向遺伝学技術[例えば、16?20]は、プラスミドを使用してインビトロで調製される所望のゲノムセグメントを有するインフルエンザウイルスを可能にする。代表的に、それは、(a)例えば、polIプロモーターにより、所望のウイルスRNA分子をコードするDNA分子を発現すること、および(b)例えば、polIIプロモーターにより、ウイルスタンパク質をコードするDNA分子を発現することを含むことで、細胞における両方の型のDNAの発現が、完全なインタクト感染性ビリオンの構築を生じる。上記DNAは、好ましくは、全ての上記ウイルスRNAおよびウイルスタンパク質の全てを提供するが、そのRNAおよびタンパク質のいくつかを提供するためにヘルパーウイルスを使用することもまた、可能である。各ウイルスRNAを産生するために別個のプラスミドを使用するプラスミドベースの方法が、好ましく[21?23]、そしてこれらの方法はまた、上記ウイルスタンパク質の全てまたはいくつか(例えば、PB1タンパク質、PB2タンパク質、PAタンパク質およびNPタンパク質だけ)を発現するためのプラスミドの使用を包含し、12種のプラスミドが、いくつかの方法において使用される。
【0033】
必要とされるプラスミドの数を減少させるために、最近のアプローチ[24]は、(ウイルスRNA合成のための)同じプラスミド上の複数のRNAポリメラーゼI転写カセット(例えば、1種、2種、3種、4種、5種、6種、7種または8種全てのインフルエンザA型vRNAセグメントをコードする配列)と、別のプラスミド上のRNAポリメラーゼIIプロモーターを有する複数のタンパク質コード領域(例えば、1種、2種、3種、4種、5種、6種、7種または8種全てのインフルエンザA型mRNA転写物をコードする配列)を合わせる。参考文献24の方法の好ましい局面は、以下を含む:(a)単一プラスミド上のPB1 mRNAコード領域、PB2 mRNAコード領域およびPA mRNAコード領域;および(b)単一プラスミド上の全8種のvRNAコードセグメント。1つのプラスミド上にNAセグメントおよびHAセグメントを含み、そして別のプラスミド上に6種の他のセグメントを含むこともまた、問題を容易にし得る。
【0034】
上記ウイルスRNAセグメントをコードするためにpolIプロモーターを使用する代わりに、バクテリオファージポリメラーゼプロモーターを使用することが、可能である[25]。例えば、SP6ポリメラーゼ、T3ポリメラーゼまたはT7ポリメラーゼのためのプロモーターが、慣用的に使用され得る。polIプロモーターの種特異性に起因して、バクテリオファージポリメラーゼプロモーターは、多くの細胞型(例えばMDCK)に関してより慣用的であり得るが、細胞はまた、外因性ポリメラーゼ酵素をコードするプラスミドによってトランスフェクトされる必要がある。
【0035】
他の技術において、単一の鋳型に由来して上記ウイルスRNAおよび発現可能なmRNAを同時にコードするために二重のpolIプロモーターおよびpolIIプロモーターを使用することが、可能である[26、27]。
【0036】
したがって、インフルエンザA型ウイルスは、特に、ウイルスが卵において増殖される場合、A/PR/8/34ウイルス由来の1種以上のRNAセグメント(代表的に、6セグメントは、A/PR/8/34に由来し、上記HAセグメントおよびNセグメントは、ワクチン株に由来する、すなわち、6:2リアソータント)を含み得る。それはまた、ワクチン調製物のためのリアソータントウイルスを産生するために、A/WSN/33ウイルス由来の1種以上のRNAセグメント、または有用な任意の他のウイルス株の1種以上のRNAセグメントを含み得る。代表的に、上記株のゲノムは、通常、哺乳動物(例えば、ヒト)インフルエンザウイルスに由来する少なくとも1種のRNAセグメントを含むので、本発明は、ヒト同士の伝染が可能である株から防御する。それは、鳥インフルエンザウイルスに由来するNSセグメントを含み得る。
【0037】
上記抗原の供給源として使用されるウイルスは、細胞培養物において増殖される。ウイルス増殖培養基は、代表的に、哺乳動物起源の細胞株である。適切な哺乳動物細胞の起源としては、ハムスター細胞、ウシ細胞、霊長類細胞(ヒト細胞およびサル細胞を含む)およびイヌ細胞が挙げられるが、これらに限定されない。腎細胞、線維芽細胞、網膜細胞、肺細胞などのような種々の細胞型が、使用され得る。適切なハムスター細胞の例は、BHK21またはHKCCの名前を有する細胞株である。適切なサル細胞は、例えば、アフリカミドリザル細胞(例えば、Vero細胞株のような腎細胞)である。適切なイヌ細胞は、例えば、MDCK細胞株のような腎細胞株である。したがって、適切な細胞株としては、MDCK;CHO;293T;BHK;Vero;MRC-5;PER.C6;WI-38;などが挙げられるが、これらに限定されない。インフルエンザウイルスを増殖させるために好ましい哺乳動物細胞株としては、以下が挙げられる:Madin Darbyイヌ腎臓に由来するMDCK細胞[28?31];アフリカミドリザル(Cercopithecus aethiops)腎臓に由来するVero細胞[32?34];またはヒト胚性網膜芽細胞に由来するPER.C6細胞[35]。これらの細胞株は、例えば、American Type Cell Culture(ATCC)コレクション[36]、Coriell Cell Repositories[37]、またはEuropean Collection of Cell Cultures(ECACC)から広範に入手可能である。例えば、ATCCは、カタログ番号CCL-81、CCL-81.2、CRL-1586およびCRL-1587の種々の異なるVero細胞を提供し、そしてATCCは、カタログ番号CCL-34のMDCK細胞を提供する。PER.C6は、寄託番号96022940においてECACCから入手可能である。あまり好ましくない哺乳動物細胞株の代替物として、ウイルスは、アヒル(例えば、アヒル網膜)または雌鶏(例えば、ニワトリ胚線維芽細胞(CEF))などに由来する細胞株を含む鳥類細胞株[例えば、参考文献38?40]において増殖され得る。例としては、ニワトリ胚性幹細胞、EB45、EB14、およびEB14-074に由来するEBx細胞株[42]を含む鳥類胚性幹細胞[38、41]が挙げられる。
【0038】
インフルエンザウイルスを増殖させるために最も好ましい細胞株は、MDCK細胞株である。元のMDCK細胞株は、CCL-34としてATCCから入手可能であるが、この細胞株の派生物もまた、使用され得る。例えば、参考文献28は、懸濁培養物における増殖に適合したMDCK細胞株(DSM ACC 2219として寄託された「MDCK 33016」)を開示する。同様に、参考文献43は、無血清培養の懸濁物において増殖するMDCK由来細胞株(FERM BP-7449として寄託された「B-702」)を開示する。参考文献44は、非腫瘍形成性MDCK細胞(「MDCK-S」(ATCC PTA-6500)、「MDCK-SF101」(ATCC PTA-6501)、「MDCK-SF102」(ATCC PTA-6502)および「MDCK-SF103」(PTA-6503)を含む)を開示する。参考文献45は、感染に対して高い感受性を有するMDCK細胞株(「MDCK.5F1」細胞(ATCC CRL-12042)を含む)を開示する。任意のこれらのMDCK細胞株が、使用され得る。
【0039】
ウイルスは、懸濁物における細胞[28、46、47]または付着培養(adherent culture)中の細胞において増殖され得る。懸濁培養のための1つの適切なMDCK細胞株は、MDCK 33016(DSM ACC 2219として寄託された)である。
【0040】
インフルエンザウイルス複製を補助する細胞株は、好ましくは、無血清培地および/またはタンパク質を含まない培地において増殖される。培地は、ヒト起源または動物起源の血清に由来する添加物が存在しない本発明の文脈において、無血清培地と称される。タンパク質を含まないことは、上記細胞の増殖がタンパク質、成長因子、他のタンパク質添加物および非血清タンパク質を排除して生じる培養を意味すると理解されるが、ウイルス増殖に必要であり得るトリプシンまたは他のプロテアーゼなどのタンパク質を必要に応じて含み得る。そのような培養物において増殖する細胞は、細胞自体のタンパク質をもちろん含む。
【0041】
増殖に使用される細胞培養物、およびまた、培養を開始するために使用されるウイルス接種物は、好ましくは、単純ヘルペスウイルス、RSウイルス、パラインフルエンザウイルス3型、SARSコロナウイルス、アデノウイルス、ライノウイルス、レオウイルス、ポリオーマウイルス、ビルナウイルス、サーコウイルス、および/またはパルボウイルスを含まない[48](すなわち、それらの培養物および接種物は、これらのウイルスについて試験され、そしてこれらのウイルスによる汚染についてネガティブな結果を得る)。単純ヘルペスウイルスが無いことは、特に好ましい。
【0042】
インフルエンザウイルス複製を補助する細胞株は、好ましくは、ウイルス複製の間に、37℃未満(例えば、30?36℃)にて、増殖のために培養される[49]。
【0043】
本発明のワクチンは、好ましくは、1用量あたり10ng未満(好ましくは、1ng未満、およびより好ましくは、100pg未満)の残留宿主細胞DNAを含むが、微量の宿主細胞DNAが、存在し得る。一般に、上記宿主細胞DNA(それは、本発明の組成物から取り除くことが望ましい)は、100bpよりも長いDNAである。
【0044】
残留宿主細胞DNAの測定は、現在、生物製剤についての慣用的な管理要件(regulatory requirement)であり、そして当業者の通常の能力の範囲内である。DNAを測定するために使用されるアッセイは、代表的に、確認されたアッセイである[50、51]。確認されたアッセイの性能の特徴は、数学的項目および定量可能な項目において記載され得、そしてその考えられる誤差の供給源は、同定されている。上記アッセイは、一般に、正確度、精度、特異性などの特徴について試験された。一旦アッセイが、(例えば、宿主細胞DNAの既知の標準量に対して)較正され、そして試験された場合、定量的DNA測定は、慣用的に行われ得る。DNA定量についての以下の3つの主要な技術が、使用され得る:サザンブロットまたはスロットブロットなどのハイブリダイゼーション法[52];Threshold^(TM) Systemなどのイムノアッセイ法[53];および定量的PCR[54]。これらの方法は全て、当業者によく知られているが、各方法の正確な特徴は、目的とする宿主細胞に依存し得る(例えば、ハイブリダイゼーションのためのプローブの選択、増幅のためのプライマーおよび/またはプローブの選択など)。Molecular Devices製のThreshold^(TM)システムは、ピコグラムレベルの全DNAについての定量的アッセイであり、そして生物製剤中の混入したDNAのレベルをモニタリングするために使用されている[53]。代表的なアッセイは、ビオチン化ssDNA結合タンパク質と、ウレアーゼ結合体化抗ssDNA抗体と、DNAとの間における反応複合体の配列非特異的形成を包含する。全てのアッセイ成分は、上記製造業者から入手可能である完全なTotal DNA Assay Kitに含まれる。種々の商業的な製造業者は、残留宿主細胞DNAを検出するための定量的PCRアッセイを提供する(例えば、AppTec^(TM) Laboratory Services、BioReliance^(TM)、Althea Technologiesなど)。ヒトウイルスワクチンの宿主細胞DNAの混入を測定することについての化学発光ハイブリダイゼーションアッセイと全DNA Threshold^(TM)システムとの比較は、参考文献55に見出され得る。
【0045】
混入したDNAは、標準的な精製手順(例えば、クロマトグラフィーなど)を使用して、ワクチン調製の間に除去され得る。残留宿主細胞DNAの除去は、例えば、DNaseを使用することによるヌクレアーゼ処理によって増強され得る。宿主細胞DNAの混入を減少させるために好都合な方法は、参考文献56および57に開示され、その方法は、最初に、ウイルス増殖の間に使用され得るDNase(例えば、ベンゾナーゼ(Benzonase))を使用し、次いで、ビリオンの破壊の間に使用され得るカチオン性洗浄剤(例えばCTAB)を使用する、2工程の処理を含む。アルキル化剤(例えば、β-プロピオラクトン)による処理がまた、宿主細胞DNAを除去するために使用され得、そしてまた、有益に、ビリオンを不活化するために使用され得る[58]。
【0046】
0.25ml容量あたり<10ng(例えば<1ng、<100pg)の宿主細胞DNAを含むワクチンであるような、15μgの赤血球凝集素あたり<10ng(例えば、<1ng、<100pg)の宿主細胞DNAを含むワクチンが、好ましい。0.5ml容量あたり<10ng(例えば、<1ng、<100pg)の宿主細胞DNAを含むワクチンであるような、50μgの赤血球凝集素あたり<10ng(例えば、<1ng、<100pg)の宿主細胞DNAを含むワクチンが、より好ましい。
【0047】
培養された細胞においてウイルスを増殖させるための方法は、一般に、その培養された細胞に培養されるべき株を接種する工程、ウイルス増殖(例えば、ウイルス力価または抗原発現によって決定される)のために所望の期間(例えば、接種の24時間後と168時間後との間)にわたって、感染された細胞を培養する工程、および増殖されたウイルスを回収する工程を包含する。上記培養された細胞は、1:500?1:1、好ましくは、1:100?1:5、より好ましくは、1:50?1:10の細胞比まで、ウイルス(PFUまたはTCID_(50)によって測定される)を接種される。上記ウイルスは、上記細胞の懸濁物に添加されるか、または上記細胞の単一層に適用され、そしてそのウイルスは、25℃?40℃(好ましくは、28℃?37℃)にて、少なくとも60分間(しかし通常は、300分未満(好ましくは、90分間と240分間との間))にわたってその細胞上に吸着される。上記感染された細胞の培養物(例えば、単一層)は、回収される培養上清のウイルス含量を増大させるために、凍結解凍または酵素作用のいずれかによって除去され得る。次いで、上記回収された流体は、凍結されて不活化または保存のいずれかが行われる。培養された細胞は、約0.0001?10、好ましくは、0.002?5、より好ましくは、0.001?2の感染多重度(「m.o.i.」)にて感染され得る。よりさらに好ましくは、上記細胞は、約0.01のm.o.iにて感染される。感染された細胞は、感染後30時間?60時間で回収され得る。好ましくは、上記細胞は、感染後34時間?48時間で回収される。よりさらに好ましくは、上記細胞は、感染後38時間?40時間で回収される。プロテアーゼ(代表的に、トリプシン)は、一般に、ウイルスの放出を可能にするために細胞培養の間に添加され、そしてそのプロテアーゼは、その培養の間の任意の適切な段階において添加され得る。
【0048】
赤血球凝集素(HA)は、不活化インフルエンザワクチン(スプリットワクチンを含む)中の主要な免疫原であり、そしてワクチン用量は、代表的に、一次元放射状免疫拡散(SRID)アッセイによって測定されるようなHAレベルを参照することによって標準化される。ワクチンは、代表的に、1株あたり約15μgのHAを含むが、より低い用量がまた、例えば、小児のためかまたは流行性の状況において使用される。1/2(すなわち、1株あたり7.5μgのHA)、1/4および1/8のような分割量が、より高い用量(例えば、3×用量または9×用量[59、60])を有する場合に使用されている[63、64]。したがって、ワクチンは、1つのインフルエンザ株あたり0.1μgと150μgとの間のHA、好ましくは、0.1μgと50μgとの間(例えば、0.1μg?20μg、0.1μg?15μg、0.1μg?10μg、0.1μg?7.5μg、0.5μg?5μgなど)のHAを含み得る。特定の用量は、例えば、1株あたり約45、約30、約15、約10、約7.5、約5、約3.8、約1.9、約1.5などを含む。上記ワクチン中にアジュバントを含むことは、これらのより低い用量におけるより低い固有の免疫原性を補い得る。
【0049】
本発明で使用されるHAは、ウイルスにおいて見出されるような天然のHAであっても、改変されていてもよい。例えば、ウイルスを鳥類種において非常に病原性にする決定因子(例えば、HA1とHA2との切断部位周辺の超塩基性領域(hyper-basic region))を除去するためにHAを改変することが、公知である。
【0050】
本発明の組成物は、特に、スプリットワクチンまたは表面抗原ワクチンのために、洗浄剤(例えば、ポリオキシエチレンソルビタンエステル界面活性剤(「Tweens」として公知である)、オクトキシノール(例えば、オクトキシノール-9(Triton X-100)またはt-オクチルフェノキシポリエトキシエタノール)、臭化セチルトリメチルアンモニウム(「CTAB」)、またはデオキシコール酸ナトリウム)を含み得る。上記洗浄剤は、微量でのみ存在し得る。したがって、上記ワクチンは、各々1mg/ml未満のオクトキシノール-10、およびポリソルベート80を含み得る。残りの他の微量成分は、抗生物質(例えば、ネオマイシン、カナマイシン、ポリミキシンB)であり得る。
【0051】
(アジュバント)
アジュバントとインフルエンザワクチンとの使用は、公知である。例えば、精製された表面抗原に基づくFLUAD^(TM)製品は、MF59エマルションアジュバントを含む。さらに、参考文献61?64は、単一のインフルエンザワクチン用量に必要とされる抗原の量を減少させる(したがって、増加した量の用量が固定された量の抗原から産生されることを可能にする)ため、全ビリオン(whole virion)インフルエンザワクチンにアジュバント添加するためのアルミニウム塩の使用を開示する。現在、アジュバント添加(adjuvanted)したスプリットインフルエンザワクチンは、市販されていない。
【0052】
アルミニウム塩(参考文献61?64において使用されるような)が、単独で使用されるときにTh2型免疫応答を促すので、本発明は、この手段でスプリットインフルエンザウイルスにアジュバント添加しない。代わりに、代替的なアジュバントが、使用される(例えば、Th1アジュバント)。
【0053】
Th1 Tヘルパー細胞とTh2 Tヘルパー細胞との間の区別は、周知である。Th1アジュバントおよびTh2アジュバントは、同時投与された抗原に対する免疫応答を、それぞれ、Th1型応答またはTh2型応答に偏らせる。したがって、Th1アジュバントが、IL-2およびインターフェロン-γ(IgG2a抗体を引き出す)などのサイトカインならびにTNF-αを放出する抗原特異的T細胞の産生をもたらすのに対して、Th2アジュバントは、IL-4(IgG1を引き出す)およびIL-5などのサイトカインを放出する抗原特異的T細胞の産生をもたらす。特定のアジュバントのTh1/Th2バランスは、公知のアッセイ(以下参照)によって評価され得るが、送達経路または同時投与された物質の存在などの因子に依存して変動し得る。本発明によって使用されるアジュバントは、患者に送達される場合に、インフルエンザ抗原に対して専らTh1型応答を誘発し得るが、好ましくは、混合型のTh1/Th2型応答を誘発する。Th0細胞もまた、誘発され得るが、偏向したTh2応答は、回避される。
【0054】
専らアルミニウム塩を使用した先行技術と比較して、本発明に使用するのに適した代替的なアジュバントは、アルミニウム塩を完全に回避し得るか、またはそれは、アルミニウム塩と、全体的なアジュバント効果をTh1型応答に移行させる第2のアジュバント成分との混合物に基づき得る。例えば、IL-12[65]または免疫刺激性オリゴヌクレオチド[66]とアルミニウム塩との同時投与は、免疫応答をTh1へと再度指向させ得る。
【0055】
Th1型応答は、当然に、細菌感染に関連し、それ故、本発明に使用されるアジュバントは、一般に、細菌物質を模倣する物質を含む。Th1アジュバントは、Toll様レセプター(TLR)のモジュレーターおよび/またはアゴニストであり得る。例えば、それらは、ヒトTLR1タンパク質、ヒトTLR2タンパク質、ヒトTLR3タンパク質、ヒトTLR4タンパク質、ヒトTLR7タンパク質、ヒトTLR8タンパク質、および/またはヒトTLR9タンパク質のうちの1つ以上のアゴニストであり得る。好ましい薬剤は、TLR7のアゴニスト(例えば、イミダゾキノリン)および/またはTLR9のアゴニスト(例えば、CpGオリゴヌクレオチド)である。これらの薬剤は、先天免疫経路を活性化するために有用である。
【0056】
完全にアルミニウム塩から構成されない特定の「Th1アジュバント」としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:
-免疫刺激性オリゴヌクレオチド(例えば、CpGモチーフ(リン酸結合によってグアノシンに結合された非メチル化シトシンを含むジヌクレオチド配列)または二本鎖RNAを含むもの、あるいはパリンドローム配列を含むオリゴヌクレオチド、あるいはポリ(dG)配列を含むオリゴヌクレオチド)。これらのオリゴヌクレオチドアジュバントは、Th1型応答を誘発するために非常に有用である[67]。
-3-O-脱アシル化モノホスホリルリピドA(「MPL^(TM)」としても公知である「3dMPL」)[68?71]。3dMPLは、Th1型応答を促す[72]。
-広範な植物種の樹皮、葉、茎、根および花においてさえも見出されるステロールグリコシドおよびトリテルペノイドグリコシドの異種群であるサポニン[参考文献108の第22章]。Quillaia saponaria Molina treeの樹皮由来のサポニンは、アジュバントとして広範に研究されている。サポニンはまた、Smilax ornata(サルサパリラ)、Gypsophilla paniculata(ブライダルベール)、およびSaponaria officianalis(サボンソウ根(soap root))から商業的に得られ得る。サポニンアジュバント処方物としては、精製された処方物(例えば、QS21)、および脂質処方物(例えば、ISCOM)が挙げられる。QS21は、Stimulon^(TM)として市販されている。サポニン組成物は、HPLCおよびRP-HPLCを使用して精製されている。これらの技術を使用した特定の精製された分画が、同定されており、それとしては、QS7、QS17、QS18、QS21、QH-A、QH-BおよびQH-Cが挙げられる。好ましくは、上記サポニンは、QS21である。QS21の産生の方法は、参考文献73に開示される。サポニン処方物はまた、ステロール(例えば、コレステロール)を含み得る[74]。サポニンとコレステロールとの組み合わせは、免疫刺激性複合体(ISCOM)と称される固有の粒子を形成するために使用され得る[参考文献108の第23章]。ISCOMはまた、代表的に、リン脂質(例えば、ホスファチジルエタノールアミンまたはホスファチジルコリン)を含む。任意の公知のサポニンは、ISCOMにおいて使用され得る。好ましくは、ISCOMは、QuilA、QHAおよびQHCのうちの1つ以上を含む。ISCOMは、参考文献74?76にさらに記載される。必要に応じて、ISCOMSは、さらなる洗浄剤を欠き得る[77]。サポニンベースのアジュバントの開発の概説は、参考文献78および79において見出され得る。ISCOMおよび遊離QS21は両方とも、Th1応答をアップレギュレートすることが報告されている。
-細菌ADPリボシル化毒素(例えば、E.coli熱不安定性エンテロトキシン「LT」、コレラ毒素「CT」、または百日咳毒素「PT」)およびその無毒化された誘導体(例えば、LT-K63として公知である変異体毒素[80])。無毒化されたADPリボシル化毒素の粘膜アジュバントとしての使用は、参考文献81に記載され、そして非経口アジュバントとしての使用は、参考文献82に記載される。いくつかの変異体は、偏向したTh2型応答(例えば、参考文献83におけるLT-R72;しかし、参考文献84)を誘導することが報告されているが、その他の変異体は、混合型のTh1/Th2型応答(例えば、LT-K63)またはTh1型応答(例えば、LT-G192)を誘導することが報告されている。上記Th1/Th2バランスは、選択された経路によってスプリット抗原を用いて与えられる場合、任意の特定の変異体によって達成され、そしてスケジュールは、容易に評価され得る。
-生分解性かつ非毒性である材料(例えば、ポリ(α-ヒドロキシ酸)、ポリヒドロキシ酪酸、ポリオルトエステル、ポリ無水物、ポリカプロラクトンなど(ポリ(ラクチド-co-グリコシド)が好ましい))から形成された微粒子(すなわち、約100nm?約150μmの直径(より好ましくは、約200nm?約30μmの直径、または約500nm?約10μmの直径)の粒子)(負に荷電した表面(例えば、SDSを用いる)または正に荷電した表面(例えば、カチオン性洗浄剤(例えば、CTAB)を用いる)を有するように必要に応じて処理される)。MF59と比較した場合、PLG微粒子中への抗原の封入は、Th1型応答を促進することが報告されている[85]。
-リポソーム(参考文献108の第13章および第14章)。リポソームは、強力なTh1応答を誘発し得る(特に、ミコバクテリア脂質を含むカチオン性リポソーム)[86]。
-カルシウム塩(例えば、リン酸カルシウム(例えば、参考文献87に開示される「CAP」粒子))。これらの塩への吸着が、好ましい。カルシウム塩は、Th1応答を提供することが報告されている[88]。
-式:
【0057】
【化1】

【0058】
を有するもの(Rは、水素、直鎖または分枝鎖であり、非置換または置換であり、飽和または不飽和である、アシル基、アルキル基(例えば、シクロアルキル基)、アルケニル基、アルキニル基およびアリール基、あるいはそれらの薬学的に受容可能な塩または誘導体からなる群より選択される)などのポリヒドロキシル化ピロリジン化合物[89]。例としては、カスアリン(casuarine)、カスアリン-6-α-D-グルコピラノース、3-エピ-カスアリン、7-エピ-カスアリン、3,7-ジエピ-カスアリンなどが挙げられるが、これらに限定されない。これらの化合物は、Th1応答を増強する。
-γイヌリン[90]またはその誘導体(例えば、アルガムリン(algammulin))。これらのアジュバントは、Th1免疫応答およびTh2免疫応答の両方を促進し得る[91]。
-イミダゾキノリン化合物(例えば、イミキモッド(Imiquimod)(「R-837」)[92、93]、レシキモッド(Resiquimod)(「R-848」)[94]、およびそれらのアナログ;ならびにそれらの塩(例えば、塩酸塩)。免疫刺激性イミダゾキノリンについてのさらなる詳細は、参考文献95?99に見出され得る。これらの化合物は、応答をTh1へと移行させる[97]。
-ロキソリビン(Loxoribine)(7-アリル-8-オキソグアノシン)[100]。
-アミノアルキルグルコサミニドホスフェート誘導体(例えば、RC-529[101、102])。これらの誘導体は、Th1応答を刺激する[103]。
-ビタミンE化合物。ビタミンEは、Th1/Th2バランスに関与する遺伝子の発現に対して顕著な影響を有し、そして免疫細胞のビタミンE刺激は、増大したIL-2産生(すなわち、Th1型応答)を直接的にもたらし得る[104]。獣医学的なウイルスワクチンにおけるアジュバントとしてのその使用は、例えば、ニワトリワクチンにおいて公知である[105]。
-特定の水中油型エマルション(以下参照)。
-TLR4アンタゴニストE5564[106、107]:
【0059】
【化2】

【0060】
などの、ホスフェート含有非環式骨格に結合された脂質を含む化合物。
【0061】
これらアジュバント活性物質および他のアジュバント活性物質は、参考文献108および109においてより詳細に考察される。
【0062】
組成物は、上記アジュバントの2種以上を含み得る。例えば、サポニンが、Th1型応答およびTh2型応答の両方を増強するのに対して、上記サポニンへの3dMPLの添加は、Th1応答の優勢な誘導を与えることが報告されている[110]。さらなる組合せは、以下で考察される。
【0063】
3つの好ましいアジュバントは、免疫刺激性オリゴヌクレオチド、3dMPL、およびビタミンE化合物である。いくつかの水中油型エマルションもまた、好ましいアジュバントである。
【0064】
(免疫刺激性オリゴヌクレオチド)
免疫刺激性オリゴヌクレオチドは、ヌクレオチド改変/アナログ(例えば、ホスホロチオエート改変)を含み得、そして二本鎖であっても(dsRNAを除いて)一本鎖であってもよい。参考文献111、112および113は、可能なアナログ置換(例えば、2’-デオキシ-7-デアザグアノシンによるグアノシンの置換)を開示する。CpGオリゴヌクレオチドのアジュバント効果は、参考文献114?119においてさらに考察される。上記CpG配列は、TLR9に関し得る(例えば、モチーフGTCGTTまたはTTCGTT)[120]。上記CpG配列は、Th1免疫応答の誘導について特異的であり得る(例えば、CpG-A ODN(オリゴデオキシヌクレオチド))か、またはその配列は、B細胞応答の誘導について、より特異的であり得る(例えば、CpG-B ODN)。CpG-A ODNおよびCpG-B ODNは、参考文献121?123において考察される。好ましくは、上記CpGは、CpG-A ODNである。好ましくは、上記CpGオリゴヌクレオチドは、その5’末端がレセプター認識を達成可能であるように構築される。必要に応じて、2つのCpGオリゴヌクレオチド配列は、「イムノマー(immunomer)」を形成するようにそれらの3’末端において結合され得る。例えば、参考文献120および参考文献124?126を参照のこと。有用なCpGアジュバントは、ProMune^(TM)(Coley Pharmaceutical Group,Inc.)としても公知であるCpG7909である。
【0065】
CpG配列を使用する代わりか、またはそれに加えて、TpG配列が、使用され得る[127]。これらのオリゴヌクレオチドは、非メチル化CpGモチーフを含まない可能性がある。
【0066】
上記免疫刺激性オリゴヌクレオチドは、ピリミジンが豊富であり得る。例えば、その免疫刺激性オリゴヌクレオチドは、1個より多くの連続したチミジンヌクレオチド(例えば、参考文献127に開示されるようなTTTT)を含み得るか、そして/または免疫刺激性オリゴヌクレオチドは、>25%(例えば、>35%、>40%、>50%、>60%、>80%など)のチミジンを含むヌクレオチド組成を有し得る。例えば、その免疫刺激性オリゴヌクレオチドは、1個より多くの連続したシトシンヌクレオチド(例えば、参考文献161に開示されるようなCCCC)を含み得るか、そして/またはその免疫刺激性オリゴヌクレオチドは、>25%(例えば、>35%、>40%、>50%、>60%、>80%など)のシトシンを含むヌクレオチド組成を有し得る。これらのオリゴヌクレオチドは、非メチル化CpGモチーフを含まない可能性がある。
【0067】
免疫刺激性オリゴヌクレオチドは、代表的に、少なくとも20個のヌクレオチドを含む。それらは、100個よりも少ないヌクレオチドを含み得る。
【0068】
リポソームと免疫刺激性オリゴヌクレオチドとの組合せが、特に、そのオリゴヌクレオチドがそのリポソーム内に封入される場合に使用され得る。この組合せは、強力なTh1免疫応答を誘導し得る[128]。
【0069】
(3dMPL)
3dMPL(また、3脱-O-アシル化モノホスホリルリピドAまたは3-O-脱アシル-4’-モノホスホリルリピドAとしても公知である)は、モノホスホリルリピドA中の還元末端グルコサミンの3位が脱アシル化されるアジュバントである。3dMPLは、Salmonella minnesotaのヘプトース欠損(heptoseless)変異体から調製され、そして化学的にリピドAに類似しているが、酸に不安定なホスホリル基および塩基に不安定なアシル基を欠いている。それは、単球/マクロファージ系統の細胞を活性化し、そしてIL-1、IL-12、TNF-αおよびGM-CSFを含む数種のサイトカインの放出を刺激する(参考文献103も参照のこと)。3dMPLの調製は、最初に、参考文献129に記載された。
【0070】
3dMPLは、それらのアシル化によって変動する(例えば、異なる長さであり得る3、4、5または6のアシル鎖を有する)関連分子の混合物の形態をとり得る。2つのグルコサミン(2-デオキシ-2-アミノ-グルコースとしても公知の)単糖は、それらの2位の炭素(すなわち、2位および2’位)でN-アシル化され、そしてまた3’位でO-アシル化されている。炭素2に結合する基は、式-NH-CO-CH_(2)-CR^(1)R^(1’)を有する。炭素2’に結合する基は、式-NH-CO-CH_(2)-CR^(2)R^(2’)を有する。炭素3’に結合する基は、式-O-CO-CH_(2)-CR^(3)R^(3’)を有する。代表的な構造は以下:
【0071】
【化3】

【0072】
である。
【0073】
基R^(1)、R^(2)およびR^(3)は、各々独立して-(CH_(2))_(n)-CH_(3)である。nの値は、好ましくは、8と16との間であり、より好ましくは、9と12との間であり、そして最も好ましくは、10である。
【0074】
基R^(1’)、R^(2’)およびR^(3’)は、各々独立して、(a)-H;(b)-OH;または(c)-O-CO-R^(4);であり得、ここでR^(4)は-Hまたは-(CH_(2))_(m)-CH_(3)のいずれかであり、ここでmの値は、好ましくは、8と16との間であり、そしてより好ましくは、10、12または14である。2位では、mは、好ましくは、14である。2’位では、mは、好ましくは、10である。3’位では、mは、好ましくは、12である。したがって、基R^(1’)、R^(2’)およびR^(3’)は、好ましくは、ドデカン酸、テトラデカン酸またはヘキサデカン酸由来の-O-アシル基である。
【0075】
R^(1’)、R^(2’)およびR^(3’)のすべてが-Hである場合、上記3dMPLは3つのアシル鎖のみを有する(2位、2’位および3’位の各々に1つ)。R^(1’)、R^(2’)およびR^(3’)のうち2つのみが-Hである場合、上記3dMPLは4つのアシル鎖を有し得る。R^(1’)、R^(2’)およびR^(3’)のうち1つのみが-Hである場合、上記3dMPLは5つのアシル鎖を有し得る。R^(1’)、R^(2’)およびR^(3’)のいずれもが-Hではない場合、上記3dMPLは、6つのアシル鎖を有し得る。本発明に従って用いられる3dMPLアジュバントは、3?6つのアシル鎖を備えたこれらの形態の混合物であり得るが、この混合物中に6つのアシル鎖をもつ3dMPLを含むことが好ましく、そして特に6つのアシル鎖形態が総3dMPLの少なくとも10重量%、例えば、20重量%以上、30重量%以上、40重量%以上、50重量%以上またはさらに多くを占めることが好ましい。6つのアシル鎖を備えた3dMPLは、最もアジュバント活性な形態であることが見出された。
【0076】
従って、本発明の組成物に含めるために3dMPLの最も好ましい形態は、図2のものである。
【0077】
3dMPLが混合物の形態で使用される場合、本発明の組成物中の3dMPLの量または濃度に関する言及は、混合物中の合わせた3dMPL種をいう。
【0078】
水性条件では、3dMPLは、異なるサイズを備えた(例えば、直径<150nmまたは>500nmを備えた)ミセル凝集体または粒子を形成し得る。これらのいずれか、または両方は、本発明とともに使用され得、そしてより良好な粒子が通常のアッセイによって選択され得る。より小さな粒子(例えば、3dMPLの透明な水性懸濁物を与えるに十分小さい)が、より優れた活性[130]に起因して、本発明に従う使用に好ましい。好ましい粒子は、220nmより小さいか、より好ましくは200nmより小さいか、150nmより小さいか、あるいは120nmより小さい平均直径を有し、100nmより小さい平均直径を有しさえし得る。しかしながら、大部分の場合において、この平均直径は、50nmより小さくはない。これらの粒子は、濾過滅菌に適するほどに十分小さい。粒子直径は、通常の動的光散乱法の技法によって評価され得、平均粒子直径が明らかとなる。粒子がxnmの直径を有するといわれる場合、一般的にはおおよそこの平均の粒子の分布が存在するが、粒子の数で少なくとも50%(例えば、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、またはそれより多く)がx±25%の範囲内の直径を有する。
【0079】
3dMPLは、有益に、水中油型エマルションと組み合わせて使用され得る。実質的に全ての3dMPLは、上記エマルションの水相に位置し得る。
【0080】
ワクチン中の3dMPLの代表的な量は、10?100μg/用量(例えば、約25μgまたは約50μg)である。
【0081】
3dMPLは単独で使用され得るか、またはさらに1つ以上の化合物と組み合わせて使用され得る。例えば、QS21サポニン[131](水中油型エマルション[132]を含む)、免疫刺激性オリゴヌクレオチド、QS21および免疫刺激性オリゴヌクレオチドの両方、リン酸アルミニウム[133]、水酸化アルミニウム[134]またはリン酸アルミニウムおよび水酸化アルミニウムの両方と組み合わせて3dMPLを使用することが公知である。
【0082】
(ビタミンE化合物)
参考文献135は、ビタミンE補充がTh1型応答を増強することを報告する。ビタミンE補充による体液性免疫および細胞性免疫の改良はまた、参考文献136において報告されるが、ワクチンアジュバントとしての投与は、ずっと大きい効果を有することが報告される。さらに、参考文献104は、ビタミンEがTh1/Th2バランスに関与する遺伝子の発現に対して顕著な影響を有することを報告する。例えば、免疫細胞のビタミンE刺激は、増大したIL-2産生(すなわち、Th1型応答)を直接的にもたらし得る。
【0083】
天然のビタミンEは、8種の異なる形態または異性体で存在する:4種のトコフェロールおよび4種のトコトリエノール。全ての異性体は、フリーラジカルを減少させる水素原子を与え得る水酸基と、生物学的な膜への貫入を可能にする疎水性側鎖とを有するクロマノール環を有する。トコフェロールおよびトコトリエノールの両方のα、β、γおよびδ形態(クロマノール環上のメチル基の数によって決定される)が、存在する。各形態は、単独で、身体における生物学的活性、効力の尺度または機能的用途を有する。
【0084】
本発明の組成物に含めるための好ましいビタミンE化合物は、トコフェロールであり、そして任意のα、β、γ、δ、εまたはζトコフェロールが、使用され得る。α-トコフェロールが、好ましい。有益なトコフェロールは、組成物(特に、エマルション)を安定化するために役立ち得る抗酸化剤特性を有する[137]。
【0085】
上記トコフェロールは、いくつかの形態をとり得る(例えば、異なる塩および/または異性体)。塩として、有機塩(例えば、コハク酸塩、酢酸塩、ニコチン酸塩など)が挙げられる。D-α-トコフェロールおよびDL-α-トコフェロールの両方が使用され得る。好ましいα-トコフェロールは、DL-α-トコフェロールであり、そしてこのトコフェロールの好ましい塩は、コハク酸塩である。有益に、コハク酸α-トコフェロールは、インフルエンザワクチンと適合性であること、および水銀化合物に代わるものとして有用な保存剤であることが公知である[11]。
【0086】
ビタミンE化合物は、通常、油であるので、それらは、従来、水中油型エマルション中の成分として含まれ得、それ故、エマルションは、インフルエンザワクチンと適合性であることが公知であり(以下参照)、そしてトコフェロールを含む水中油型エマルションは、Th1誘導性アジュバントであることが、参考文献138において報告される。
【0087】
(水中油型エマルションアジュバント)
水中油型エマルションは、インフルエンザウイルスワクチンにアジュバント添加するために適切であることが公知である(例えば、FLUAD^(TM)製品は、MF59エマルションアジュバントを含む)。これらのエマルションは、代表的に、少なくとも1種の油および少なくとも1種の界面活性剤を含み、その油および界面活性剤は、生分解性(代謝可能)かつ生体適合性である。上記エマルションの成分は、Th1/Th2バランスに影響を及ぼすので、全てのエマルションは、本発明による使用に適していない。例えば、上記MF59アジュバントは、優勢に、免疫応答をTh2型応答へと偏らせるので、本発明は、上記MF59アジュバントを単独で使用しない(しかし、それは、MF59を免疫増強物質(例えば、免疫刺激性オリゴヌクレオチド)と組み合わせて使用し得る)。対照的に、参考文献138に開示されるトコフェロール含有エマルションは、Th1型応答を誘発するので、本発明によって使用され得る。特定のエマルションのTh1/Th2バランスは、従来のアッセイ(例えば、参考文献139および140の二重色(dual-color)ELISPOTアッセイ、参考文献141のマイクロスフェアベースの多重アッセイ、または参考文献142の急速フローサイトメトリーアッセイ(rapid flow cytometric assay))によって評価され得る。
【0088】
適切なエマルション中の油滴は、一般に、5μm未満の直径であり、そしてサブミクロンの直径でさえも有し得、これらの小さいサイズは、安定なエマルションを提供するために、マイクロフルイダイザー(microfluidiser)を用いて達成される。220nm未満のサイズを有する小滴は、それらが濾過滅菌に供され得る場合に好ましい。
【0089】
本発明は、油(例えば、動物(例えば、魚)または植物供給源由来の油)を含み得る。植物油についての供給源としては、ナッツ類、種子類および穀物類が挙げられる。ピーナッツ油、ダイズ油、ココナッツ油およびオリーブ油が最も一般的に入手可能な代表的なナッツ油である。例えば、ホホバ豆から得られるホホバ油が使用され得る。種子油として、ベニバナ油、綿実油、ヒマワリ種子油、ゴマ油などが挙げられる。穀物群において、トウモロコシ油が最も容易に入手可能であるが、小麦、燕麦、ライ麦、イネ、テフ、トリチカレなどの他のシリアル穀物類の油もまた使用され得る。グリセロールおよび1,2-プロパンジオールの6?10炭素の脂肪酸エステルは、種子油内には天然に存在しないが、ナッツ油および種子油から出発した適切な物質の加水分解、分離およびエステル化により調製され得る。哺乳動物のミルク由来の脂肪および油は代謝可能であり、従って、本発明の実施において使用され得る。動物供給源から純粋な油を得るために必要な分離、精製、けん化および他の方法に関する手順は、当該分野において周知である。ほとんどの魚は、容易に回収され得る代謝可能な油を含む。例えば、タラの肝油、サメの肝油、および鯨ろうのようなクジラ油が代表的な種々の魚油であり、本明細書中において使用され得る。いくつかの分枝鎖油は、5炭素イソプレン単位で生化学的に合成され、一般的にテルペノイドといわれる。サメの肝油は、スクアレン、2,6,10,15,19,23-ヘキサメチル-2,6,10,14,18,22-テトラコサヘキサンとして公知の分枝、不飽和テルペノイドを含み、本明細書において特に好ましい。スクアレンの飽和アナログであるスクアランもまた好ましい油である。スクアレンおよびスクアランを含む魚油は、市販の供給源から容易に入手可能であるか、または当該分野において公知の方法により得られ得る。他の好ましい油は、トコフェロール(以下参照)である。油の混合物が使用され得る。
【0090】
界面活性剤は、それらの「HLB」(親水性/親油性バランス)により分類され得る。本発明の好ましい界面活性剤は、少なくとも10、好ましくは少なくとも15、そしてより好ましくは少なくとも16のHLBを有する。本発明は、ポリオキシエチレンソルビタンエステル界面活性剤(一般的にTweenといわれる)、特にポリソルベート20およびポリソルベート80;エチレンオキシド(EO)、プロピレンオキシド(PO)および/またはブチレンオキシド(BO)のコポリマー(例えば、DOWFAX^(TM)商標名で販売される直線状EO/POブロックコポリマー);エトキシ(オキシ-1,2-エタンジイル)基の繰返し数が変動し得るオクトキシノール、特にオクトキシノール-9(Triton X-100、またはt-オクチルフェノキシポリエトキシエタノール)に関心がある;(オクチルフェノキシ)ポリエトキシエタノール(IGEPAL CA-630/NP-40);ホスファチジルコリン(レシチン)のようなリン脂質;Tergitol^(TM) NPシリーズのようなノニルフェノールエトキシレート;ラウリル、セチル、ステアリルおよびオレイルアルコール由来のポリオキシエチレン脂肪エーテル(Brij界面活性剤として公知)(例えば、トリエチレングリコールモノラウリルエーテル(Brij 30));およびソルビタンエステル(一般的にSPANとして公知)(例えば、ソルビタントリオレアート(Span 85)およびソルビタンモノラウレート)を含む界面活性剤を用いて使用され得るが、これらに限定されない。非イオン性界面活性剤が、好ましい。エマルション中に含む好ましい界面活性剤は、Tween 80(ポリオキシエチレンソルビタンモノオレアート)、Span 85(ソルビタントリオレアート)、レシチンおよびTriton X-100である。
【0091】
界面活性剤の混合物は、例えば、Tween 80/Span 85混合物が使用され得る。ポリオキシエチレンソルビタンエステル(例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート(Tween 80))とオクトキシノール(例えば、t-オクチルフェノキシポリエトキシエタノール(Triton X-100))との組合せもまた、適切である。別の有用な組合せは、ラウレス9にポリオキシエチレンソルビタンエステルおよび/またはオクトキシノールを加えたものを含む。
【0092】
界面活性剤の好ましい量(重量%)は、以下である:ポリオキシエチレンソルビタンエステル(例えば、Tween 80)の0.01?1%(特に、約0.1%);オクチル-またはノニルフェノキシポリオキシエタノール(例えば、Triton X-100、またはTritonシリーズにおける他の洗浄剤)の0.001?0.1%(特に、0.005?0.02%);ポリオキシエチレンエーテル(例えば、ラウレス9)の0.1?20%(好ましくは、0.1?10%、そして特に、0.1?1%または約0.5%)。
【0093】
本発明によってアジュバントとして有用な3つの特定の水中油型エマルションは、以下である:
-スクアレン、トコフェロールおよびTween 80のエマルション。このエマルションは、リン酸緩衝化生理食塩水を含み得る。またSpan 85(例えば、1%で)および/またはレシチンも含み得る。これらのエマルションは、2?10%スクアレン、2?10%トコフェロールおよび0.3?3%Tween 80を有し得、これがより安定なエマルションを提供する場合、スクアレン:トコフェロールの重量比は、1以下が好ましい。スクアレンおよびTween 80は、約5:2の容量比で存在し得る。そのようなエマルションの1つは、2%溶液を与えるためにPBS中にTween 80を溶解し、次いでこの溶液90mlを(5gのDL-α-トコフェロールおよび5mlのスクアレンの)混合物とともに混合し、次いでこの混合物を微細流動化することにより作製され得る。この生じたエマルションは、サブミクロンの油滴(例えば、平均直径が100nmと250nmの間、好ましくは約180nm)を有し得る。
-スクアレン、トコフェロールおよびTriton洗浄剤(例えば、Triton X-100)のエマルション。そのエマルションはまた、3d-MPL(以下参照)を含み得る。そのエマルションは、リン酸緩衝剤を含み得る。
-免疫刺激性オリゴヌクレオチドをまた含む、スクアレン、Tween 80、およびSpan 85のサブミクロンエマルション[143?145]。容量によるエマルションの組成は、約5%のスクアレン、約0.5%のポリソルベート80および約0.5%のSpan 85であり得る。重量の項目(term)に関して、これらの比は、参考文献146の第10章および参考文献147の第12章により詳細に記載されるように、4.3%のスクアレン、0.5%のポリソルベート80および0.48%のSpan 85になる。エマルションは、有益に、クエン酸イオン(例えば、10mMクエン酸ナトリウム緩衝剤)を含む。
-ポリソルベート(例えば、ポリソルベート80)、Triton洗浄剤(例えば、Triton X-100)およびトコフェロール(例えば、コハク酸α-トコフェロール)を含むエマルション。そのエマルションは、約75:11:10(例えば、750μg/mlのポリソルベート80、110μg/mlのTriton X-100および100μg/mlのコハク酸α-トコフェロール)の質量比でこれら3つの成分を含み得、そしてこれらの濃度は、抗原由来のこれらの成分の任意の寄与を含むべきである。そのエマルションはまた、スクアレンを含み得る。そのエマルションはまた、3d-MPL(以下参照)を含み得る。その水相は、リン酸緩衝剤を含み得る。
【0094】
これらの3つの好ましいエマルションは、参考文献138に記載されるように、3dMPLおよび/またはサポニンを補充され得る。
【0095】
エマルションは、配布前に抗原と混合され得るか、またはエマルションは、好ましくは、送達時、即時に抗原と混合される。従って、アジュバントおよび抗原は、代表的に包装されたワクチンまたは配布されたワクチンに別個に保たれ、使用時に最終処方物に準備される。この抗原は一般的に水性の形態であり、このワクチンは最終的に2つの液体の混合により調製される。混合のための2つの液体の容量比は、変更し得る(例えば、5:1と1:5の間で)が、一般的に約1:1である。上記抗原およびアジュバントが混合された後、赤血球凝集素抗原は、一般に、水溶液中に残るが、その赤血球凝集素抗原は、それ自体、油/水界面付近に分布し得る。一般に、任意の赤血球凝集素が上記エマルションの油相に進入することは、ほとんどない。
【0096】
(薬学的組成物)
本発明の組成物は、薬学的に受容可能である。それらの組成物は、スプリット抗原、およびアジュバントに加えて、成分を含み得る(例えば、それらの組成物は、代表的に、1つ以上の薬学的キャリアおよび/または賦形剤を含有する)。そのような成分の徹底的な考察は、参考文献148において入手可能である。
【0097】
組成物は、一般に、水性形態である。上記スプリット抗原およびアジュバントは、代表的に、混合物中にある。
【0098】
上記組成物は、チオメルサールまたは2-フェノキシエタノールなどの保存剤を含み得る。しかし、上記ワクチンは実質的に水銀物質を含まない(すなわち、5μg/ml未満)(例えば、チオメルサールを含まない)べき[11、149]であることが、好ましい。水銀を含まないワクチンが、より好ましく、そしてこれは、参考文献11に従ってトコフェロール含有アジュバントを使用する場合、従来通り達成され得る。保存剤を含まないワクチンが、特に好ましい。
【0099】
張度を制御するために、生理的塩(例えば、ナトリウム塩)を含有することが好ましい。塩化ナトリウム(NaCl)が好ましく、その塩化ナトリウムは、1mg/mlと20mg/mlとの間で存在し得る。存在し得る他の塩としては、塩化カリウム、二水素リン酸カリウム、無水二ナトリウムリン酸塩、塩化マグネシウム、塩化カルシウムなどが挙げられる。
【0100】
組成物は、一般に200mOsm/kgと400mOsm/kgとの間、好ましくは240mOsm/kg?360mOsm/kgの間の浸透圧モル濃度を有し、より好ましくは290?310mOsm/kgの範囲内となる。浸透圧モル濃度は、ワクチン接種により引き起こされる痛みに対して影響を有しないことが以前に報告されている[150]が、この範囲に浸透圧モル濃度を維持することが、やはり好ましい。
【0101】
組成物は、1つ以上の緩衝剤を含有し得る。代表的な緩衝剤としては、以下が挙げられる:リン酸緩衝剤;Tris緩衝剤;ホウ酸緩衝剤;コハク酸緩衝剤;ヒスチジン緩衝剤(特に、水酸化アルミニウムアジュバントを含む);またはクエン酸緩衝剤。緩衝剤は、代表的に5?20mMの範囲で含有される。リン酸緩衝化生理食塩水中に形成されるエマルションが、便宜的に使用され得る。
【0102】
組成物のpHは、一般に、5.0と8.1との間、より代表的には6.0と8.0との間、例えば、6.5と7.5との間、または7.0と7.8との間である。したがって、本発明の方法は、包装前にバルクワクチンのpHを調整する工程を包含し得る。
【0103】
上記組成物は、好ましくは、無菌である。上記組成物は、好ましくは、非発熱性である(例えば、1用量あたり<1EU(エンドトキシン単位、標準的な測定単位)、そして好ましくは1用量あたり<0.1EUを含む)。上記組成物は、好ましくは、グルテンを含まない。
【0104】
上記組成物は、単回免疫感作のための物質を含んでも、複数回免疫感作(すなわち、「複数回用量」キット)のための物質を含んでもよい。保存剤を含むことが、複数回用量の準備において好ましい。複数回用量組成物中に保存剤を含むことの代わりとして(またはそれに加えて)、その組成物は、物質を除去するための無菌のアダプターを有する容器中に含まれ得る。
【0105】
インフルエンザワクチンは、代表的に、約0.5mlの投薬容量で投与されるが、半用量(すなわち、約0.25ml)が、小児に投与され得る。
【0106】
組成物およびキットは、好ましくは、2℃と8℃との間にて保存される。それらは、凍結されるべきではない。それらは、理想的には、直接的な光から免れるべきである。
【0107】
(本発明のキット)
本発明の組成物は、送達時において即座に調製され得る。したがって、本発明は、混合のために調整された種々の成分を備えるキットを提供する。上記キットは、上記アジュバントおよび上記抗原が使用時まで別々に保持されることを可能にし、そのことは、水中油型エマルションアジュバントを使用する場合に有用であり得る。
【0108】
上記成分は、上記キット内で、互いから物理的に分離した形態であり、そしてこの分離は、種々の手段で達成され得る。例えば、上記2つの成分は、2つの分離したバイアルなどの容器中にあり得る。次いで、上記2つのバイアルの成分は、例えば、一方のバイアルの成分を取り出し、そしてそれらを他方のバイアルに添加すること、または両方のバイアルの成分を別々に取り出し、そしてそれらを第3の容器中で混合することによって混合され得る。
【0109】
好ましい構成(arrangement)において、キット成分のうちの一方は、注射器中にあり、そして他方は、バイアルなどの容器中にある。注射器(例えば、針を有する)が、その成分を混合のための第2の容器中に挿入するために使用され得、次いでその混合物は、その注射器中に引かれ得る。次いで、その注射器の混合された成分は、代表的に、新規の滅菌針を通して患者に投与され得る。注射器中に1つの成分を包装することは、患者への投与のために別個の注射器を使用する必要性を排除する。
【0110】
別の好ましい構成において、上記2つのキット成分は、同じ注射器(例えば、二重室注射器(dual-chamber syringe)(例えば、参考文献151?158などに開示されるもの))において、一緒であるが分離して保持される。その注射器が、作動される場合(例えば、患者に対する投与の間)、その2つの室の成分は、混合される。この構成は、使用時における別個の混合工程に対する必要性を回避する。
【0111】
上記キット成分は、一般に、水性形態である。いくつかの構成において、一方の成分(代表的に、アジュバント成分よりもむしろ抗原成分)は、乾燥形態(例えば、凍結乾燥された形態)であり、他方の成分は、水性形態である。上記2つの成分は、上記乾燥成分を再活性化し、そして患者に対する投与のための水性組成物を得るために混合され得る。凍結乾燥された成分は、代表的に、注射器よりもむしろバイアル内におかれる。乾燥された成分は、安定剤(例えば、乳糖、ショ糖またはマンニトール、およびそれらの混合物(例えば、乳糖/ショ糖混合物、ショ糖/マンニトール混合物)など)を含み得る。1つの可能な構成は、予め充填された注射器中の水性アジュバント成分およびバイアル中の凍結乾燥された抗原成分を使用する。
【0112】
(組成物またはキット成分の包装)
本発明の組成物(またはキット成分)に適した容器としては、バイアル、注射器(例えば、使い捨て可能な注射器)、点鼻スプレーなどが挙げられる。これらの容器は、無菌であるべきである。
【0113】
組成物/成分が、バイアル中におかれる場合、そのバイアルは、ガラス材料またはプラスチック材料から作製される。上記バイアルは、好ましくは、上記組成物/成分がそのバイアルに添加される前に滅菌される。ラテックス感受性患者に関する懸案事項を回避するために、バイアルは、ラテックスを含まないストッパーによって密封され得、そして全ての包装用物質中にラテックスが存在しないことが、好ましい。上記バイアルは、単回用量のワクチンを含み得るか、またはそのバイアルは、1つよりも多い用量(例えば10用量)を含み得る(「複数回用量」バイアル)。好ましいバイアルは、無色のガラスから作製される。
【0114】
バイアルは、予め充填された注射器がそのキャップ中に挿入され得るように適合したキャップ(例えば、Luerロック)を有し得、その注射器の内容物は、(例えば、その中の凍結乾燥された物質を再構成するために)そのバイアル中に排出され得、そしてそのバイアルの内容物は、その注射器中に戻され得る。上記バイアルから上記注射器を取り外した後、次いで針が、接続され得、そして組成物が、患者に投与され得る。上記キャップが、好ましくは、シールまたはカバーの内側に配置されて、そのシールまたはカバーは、そのキャップが接触され得る前に取り外される必要がある。バイアルは、特に、複数回用量バイアルに関して、その内容物の無菌的な取り出しを可能にするキャップを有し得る。
【0115】
成分が、注射器中に包装される場合、その注射器は、それに接続された針を有し得る。針が接続されない場合、別個の針が、組み立ておよび使用のために注射器とともに提供され得る。そのような針は、シースで覆う(sheathe)ことができる。安全針が、好ましい。1インチ23ゲージの針、1インチ25ゲージの針および5/8インチ25ゲージの針が、代表的である。注射器には、その上に内容物のロット番号、インフルエンザの時期および使用期限日がプリントされ得る剥ぎ取りラベルが提供され得、記録維持を容易にする。上記注射器中のプランジャーは、好ましくは、ストッパーを有し、プランジャーが吸引の間に偶発的に外れることを防ぐ。上記注射器は、ラテックスゴムキャップおよび/またはプランジャーを有し得る。使い捨て可能な注射器は、単回用量のワクチンを含む。上記注射器は、一般に、針の接続前に先端を密封するために先端キャップを有し、そしてその先端キャップは、好ましくは、ブチルゴムから作製される。上記注射器と針とが別個に包装される場合、その針は、好ましくは、ブチルゴムシールドが取り付けられる。好ましい注射器は、商標名「Tip-Lok」^(TM)で市販されるものである。
【0116】
容器は、半用量の容量を示して、例えば、小児に対する送達を容易にするために、標識され得る。例えば、0.5ml用量を含む注射器は、0.25ml容量を示す標識を有し得る。
【0117】
ガラス容器(例えば、注射器またはバイアル)が使用される場合、ソーダ石灰ガラス製の容器よりもホウケイ酸ガラス製の容器を用いることが好ましい。
【0118】
キットまたは組成物は、上記ワクチンの詳細(例えば、投与のための指示書、ワクチン内の抗原の詳細など)を含む印刷物と一緒に(例えば、同じ箱中に)含まれ得る。その指示書はまた、警告、例えば、ワクチン接種の後のアナフィラキシー反応の場合、直ちに利用できるようにアドレナリンの溶液を準備しておくことなどを含み得る。
【0119】
(処置およびワクチンの投与の方法)
本発明の組成物は、ヒト患者への投与に適しており、そして本発明は、患者における免疫応答を惹起する方法を提供し、本発明の組成物をその患者に投与する工程を包含する。
【0120】
本発明はまた、医薬として使用するための本発明のキットまたは組成物を提供する。
【0121】
本発明はまた、患者における免疫応答を惹起するための医薬の製造における、(i)細胞培養物において増殖されたウイルスから調製されたスプリットインフルエンザウイルス抗原および(ii)完全にアルミニウム塩から構成されないアジュバントの使用を提供する。
【0122】
本発明はまた、患者における免疫応答を惹起するための医薬の製造における、(i)卵タンパク質を全く含まないスプリットインフルエンザウイルス抗原および(ii)完全にアルミニウム塩から構成されないアジュバントの使用を提供する。
【0123】
本発明はまた、患者における免疫応答を惹起するための医薬の製造における、(i)細胞培養物において増殖されたウイルスから調製されたスプリットインフルエンザウイルス抗原および(ii)Th1アジュバントの使用を提供する。
【0124】
本発明はまた、患者における免疫応答を惹起するための医薬の製造における、(i)卵タンパク質を全く含まないスプリットインフルエンザウイルス抗原および(ii)Th1アジュバントの使用を提供する。
【0125】
これらの方法および使用によって惹起された免疫応答は、一般に、抗体応答(好ましくは、防御的な抗体応答)を含む。インフルエンザウイルスワクチン接種後の抗体応答、中和能力および防御を評価するための方法は、当該分野において周知である。ヒト研究は、ヒトインフルエンザウイルスの赤血球凝集素に対する抗体力価が防御と相関することを示している(約30?40の血清サンプル赤血球凝集-抑制力価は、同種のウイルスによる感染に対する約50%の防御を与える)[159]。抗体応答は、代表的に、赤血球凝集抑制、マイクロ中和、一次元放射状免疫拡散(SRID)、および/または単純放射溶血(single radial hemolysis)(SRH)によって測定される。これらのアッセイ技術は、当該分野において周知である。
【0126】
本発明の組成物は、種々の手段で投与され得る。最も好ましい免疫感作経路は、筋肉内注射(例えば、腕または脚)によるものであるが、他の利用可能な経路としては、皮下注射、鼻腔内[160?162]、経口[163]、皮内[164、165]、経皮(transcutaneous)、経皮(transdermal)[166]などが挙げられる。
【0127】
本発明に従って調製されるワクチンは、小児および成人の両方を処置するために使用され得る。インフルエンザワクチンは、最近、小児および成人の免疫感作における6月齢からの使用について推奨される。したがって、上記患者は、1歳未満、1?5歳、5?15歳、15?55歳、または少なくとも55歳であり得る。上記ワクチンを受容するための好ましい患者は、高齢者(例えば、50歳以上、60歳以上、および好ましくは65歳以上)、若年者(例えば5歳以下)、入院患者、医療従事者、国軍および軍人、妊婦、慢性疾患患者、免疫不全患者、そのワクチンを受容する前の7日間において抗ウイルス化合物(例えば、オセルタミビルまたはザナミビル化合物;以下を参照のこと)を摂取している患者、卵アレルギーを有する者および海外渡航者である。上記ワクチンは、これらの群に対してのみ適しているわけではないが、より一般的には集団において使用され得る。流行株に関して、全ての年齢群に対する投与が、好ましい。
【0128】
本発明の好ましい組成物は、効力に関してCPMP判定基準の1、2または3を満たす。成人(18?60歳)において、これらの基準は、(1)70%以上のセロプロテクション(seroprotection);(2)40%以上のセロコンバージョン;および/または(3)2.5倍以上のGMT増加である。高齢者(>60歳)において、これらの判定基準は、(1)60%以上のセロプロテクション;(2)30%以上のセロコンバージョン;および/または(3)2倍以上のGMT増加である。これらの判定基準は、少なくとも50人の患者による非盲検研究に基づく。
【0129】
処置は、単回用量スケジュールまたは複数回用量スケジュールによるものであり得る。複数回用量は、一次免疫感作スケジュールおよび/または追加免疫感作スケジュールにおいて使用され得る。複数回用量スケジュールにおいて、種々の用量は、同じかまたは異なる経路(例えば、非経口によるプライム(prime)および粘膜によるブースト(boost)、粘膜によるプライムおよび非経口によるブーストなど)によって与えられ得る。1つより多い用量(代表的に、2用量)の投与は、特に、免疫学的にナイーブな患者において有用である(例えば、以前にインフルエンザワクチンを受容したことがない者のためか、または新規のHAサブタイプに対してワクチン接種するため(流行の発生において))。複数回用量は、代表的に、少なくとも1週間(例えば、約2週間、約3週間、約4週間、約6週間、約8週間、約10週間、約12週間、約16週間など)の間隔を空けて投与される。
【0130】
本発明によって産生されるワクチンは、他のワクチン(麻疹ワクチン、流行耳下腺炎ワクチン、風疹ワクチン、MMRワクチン、水痘ワクチン、MMRVワクチン、ジフテリアワクチン、破傷風ワクチン、百日咳ワクチン、DTPワクチン、結合体化b型H.influenzaeワクチン、不活性化ポリオウイルスワクチン、B型肝炎ウイルスワクチン、髄膜炎菌結合体ワクチン(例えば、四価A-C-W135-Yワクチン)、RSウイルスワクチン、肺炎球菌結合体ワクチンなど)と実質的に同時(例えば、医療専門家またはワクチン接種センターへの同一の医学的な対診または診察の間)に患者に対して投与され得る。肺炎球菌ワクチンおよび/または髄膜炎菌ワクチンと実質的に同時の投与は、特に、高齢患者において有用である。
【0131】
同様に、本発明のワクチンは、抗ウイルス化合物、および特に、インフルエンザウイルスに対して活性な抗ウイルス化合物(例えば、オセルタミビルおよび/またはザナミビル)と実質的に同時(例えば、医療専門家による同一の医学的な対診または診察の間)に患者に対して投与され得る。これらの抗ウイルス剤としては、ノイラミニダーゼインヒビター(例えば、(3R,4R,5S)-4-アセチルアミノ-5-アミノ-3(1-エチルプロポキシ)-1-シクロヘキセン-1-カルボン酸、または5-(アセチルアミノ)-4-[(アミノイミノメチル)-アミノ]-2,6-アンヒドロ-3,4,5-トリデオキシ-D-グリセロ-D-ガラクトノン-2-エノン酸(そのエステル(例えば、エチルエステル)およびその塩(例えば、リン酸塩)を含む))が挙げられる。好ましい抗ウイルス剤は、(3R,4R,5S)-4-アセチルアミノ-5-アミノ-3(1-エチルプロポキシ)-1-シクロヘキセン-1-カルボン酸,エチルエステル,ホスフェート(1:1)(リン酸オセルタミビル(TAMIFLU^(TM))としても公知である)である。
【0132】
(一般)
用語「含む(comprising)」は、「含有する(including)」および「からなる」を包含し、例えば、Xを「含む」組成物は、専らXからなり得るか、またはさらなる何かを含有し得る(例えば、X+Y)。
【0133】
語「実質的に」は、「完全に」を排除せず、例えば、Yを「実質的に含まない」組成物は、Yを完全に含まなくても良い。必要である場合、語「実質的に」は、本発明の定義から省略され得る。
【0134】
数値xに関する用語「約」は、例えば、x±10%を意味する。
【0135】
詳細に述べられていなければ、2つ以上の成分を混合する工程を含むプロセスは、混合の任意の特定の順序を要求しない。したがって、成分は任意の順序で混合され得る。3つの成分が存在するとき、そのときは、2つの成分が互いと組み合わされ得、そして次にこの組み合わせが、第3の成分と組み合わされ得るなどである。
【0136】
動物(および特にウシ)材料が細胞の培養に使用される場合、それらを、伝染性海綿状脳症(TSE)のない、および特にウシ海綿状脳症(BSE)のない供給源から取得しなければならない。総合的に、動物に由来する材料の完全な非存在下で細胞を培養することが、好ましい。
【0137】
化合物が、組成物の部分として投与される場合、その化合物は、代替的に、適切なプロドラッグによって置換され得る。
【0138】
細胞基質が、リアソータント手順または逆方向遺伝学手順のために使用される場合、それは、好ましくは、例えば、Ph Eur総論(general chapter)5.2.3にあるようなヒトワクチン生産における使用について承認されているものである。
【実施例】
【0139】
(本発明を実施するための様式)
(Th1応答を促す水中油型エマルションアジュバント)
2種の市販のアジュバント添加しなかったスプリットビリオン三価インフルエンザワクチン(「SPLIT(A)」および「SPLIT(B)」)を、入手し、そしてマウスを免疫感作するために0.2μgのHAの用量で使用した。ワクチンは、アジュバント添加されなかったか、または(i)水酸化アルミニウム、もしくは(ii)MF59エマルションと10μgの免疫刺激性CpGオリゴヌクレオチドとの混合物を用いてアジュバント添加されたかのいずれかで使用した。8匹の雌Balb/Cマウス(8週齢)の群を、0日目および28日目において、50μl用量の上記ワクチンを用いて筋肉内に免疫感作した。血清を、14日目および42日目に入手し、そしてその血清を、抗HA力価(IgG)、HI力価およびT細胞について分析した。
【0140】
42日目における血清IgG抗体力価(ELISA)は、各ウイルスを個別に見て、以下の通りであった:
【0141】
【化4】

【0142】
42日目におけるHI血清抗体力価は、以下の通りであった:
【0143】
【化5】

【0144】
図1に示した通り、アジュバントされていないワクチンは、非常に低いレベルの抗原特異的T細胞を誘発した。水酸化アルミニウム(alum)アジュバントは、Th2に偏った様式でレベルを増大させ:1匹のマウスにおいて、水酸化アルミニウムは、IL-5^(+) IFN-γ^(-) TNF-α^(-) T細胞(すなわち、Th2型)の大きな増加を引き起こしたが、IL-5^(-) IFN-γ^(+) TNF-α^(+)細胞(すなわち、Th1型)は、見られなかった。対照的に、MF59とCpGオリゴヌクレオチドとの組合せは、抗原特異的T細胞の数の大きな増加、およびまた、Th1型応答への移行の両方を引き起こした。
【0145】
したがって、スプリットインフルエンザワクチンによって誘発される抗原特異的T細胞の数を上昇させるため、およびまた、免疫応答をTh1型応答へと移行させるために、水中油型エマルションアジュバントを使用することが、可能である。対照的に、水酸化アルミニウムアジュバントは、Th2型応答を伴って低いレベルのT細胞を誘発する。
【0146】
(ヒト試験[参考文献167])
参考文献167に記載される通り、スプリットインフルエンザワクチンを、2種の油(α-トコフェロールおよびスクアレン)から作製した有機相と、乳化剤としてTween 80を含むリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)の水性相とを有する水中油型エマルションを用いてアジュバント添加した。それは、2.5%のスクアレン(v/v)、2.5%のα-トコフェロール(v/v)、および0.9%のポリオキシエチレンソルビタンモノオレアート(v/v)(Tween 80)の最終濃度を有する。それを、最初に、インフルエンザ抗原との混合のために2倍濃縮物として調製した。このエマルションは、Th1誘導性アジュバントであることが報告される。
【0147】
上記エマルションを、2%溶液を与えるようにTween 80をPBSに溶解することによって調製した。100mlの2倍濃縮物を提供するために、5gのD,L-α-トコフェロールおよび5mlのスクアレンを、ボルテックスして、それらを徹底的に混合した。90mlのPBS/Tween溶液を、その油混合物に添加し、そして徹底的に混合した。次いで、得られたエマルションを、注射器に通し、そして最終的に、微細流動化した。得られた油滴は、約120?180nmのサイズ(Z平均)を有する。
【0148】
コントロール実験において、上記エマルションは、含まれなかった。
【0149】
三価ワクチンを、ヒト高齢患者に投与した。体液性免疫応答および細胞性免疫応答を、参考文献167に記載されるように、その患者において測定した。セロプロテクションおよびセロコンバージョンを、決定した。
【0150】
セロプロテクション率およびセロコンバージョン率は、以下の通りであった(左=コントロール;右=アジュバント添加):
【0151】
【化6】

【0152】
抗HA抗体応答は、以下の通りであった:
【0153】
【化7】

【0154】
アジュバント添加していないコントロールワクチンとエマルションアジュバント添加したワクチンとの間のTh1応答およびTh2応答を比較するために、サイトカイン応答を、アッセイした。免疫感作した患者から採取したCD4+ T細胞を、スプリット抗原によって再刺激し、そして(i)少なくともインターフェロン-γ(Th1応答を示す)、および1つの他のIL-2、TNFαまたはCD40Lを分泌する数;あるいは(ii)少なくともIL-2(再び、Th1応答を示す)、および1つの他のIFN-γ、TNFαまたはCD40Lを分泌する数;について評価した。結果(免疫感作の前後における違いとして示した)は、以下の通りである:
【0155】
【化8】

【0156】
上記アジュバント添加したワクチンは、アジュバントしていないコントロールよりも大きいTh1型応答を示す。したがって、上記トコフェロール含有アジュバントは、スプリットインフルエンザワクチンのTh1/Th2バランスをモジュレートし得る。
【0157】
本発明は例示のみによって記載され、そして改変は本発明の範囲および精神の中にあるままでもなされ得ることが、理解される。
【0158】
(参考文献(その内容は、本明細書によって参考として援用される))
【0159】
【化9】

【0160】
【化10】

【0161】
【化11-1】

【0162】
[98]米国特許第4689338号、同第4929624号、同第5238944号、同第5266575号、同第5268376号、同第5346905号、同第5352784号、同第5389640号、同第5395937号、同第5482936号、同第5494916号、同第5525612号、同第6083505号、同第6440992号、同第6627640号、同第6656938号、同第6660735号、同第6660747号、同第6664260号、同第6664264号、同第6664265号、同第6667312号、同第6670372号、同第6677347号、同第6677348号、同第6677349号、同第6683088号、同第6703402号、同第6743920号、同第6800624号、同第6809203号、同第6888000号および6924293号.
【0163】
【化11-2】

【0164】
【化12】

【図面の簡単な説明】
【0165】
【図1】図1は、サイトカイン陽性細胞の数を、全CD4+細胞のうちの%として示す。2匹の個々のマウス由来の応答が、示される。マウスは、アジュバントされていないか、あるいは(i)水酸化アルミニウム(alum)または(ii)CpGオリゴヌクレオチドを伴うMF59を用いてアジュバント添加されたかのいずれかであるスプリットワクチン「A」またはスプリットワクチン「B」によって免疫感作された。
【図2】図2は、本発明と一緒に使用するための3dMPLの最も好ましい形態の式を示す。
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スプリットインフルエンザウイルス抗原とTh1アジュバントとを含む免疫原性組成物であって、該抗原は、鳥類細胞培養物において増殖されたウイルスから調製され、そしていかなる卵タンパク質も含まず、そして、該Th1アジュバントは、(i)スクアレン、トコフェロールおよびポリソルベート80を含む水中油型エマルション、または(ii)スクアレン、ポリソルベート80、ソルビタントリオレアートおよび免疫刺激性オリゴヌクレオチドのサブミクロンエマルション、の形態であり、ここで該組成物は、1用量あたり10ng未満の残留宿主細胞DNAを含む、免疫原性組成物であって、
ここで、該免疫原性組成物が、インフルエンザウイルス感染から防御する一方で、前記Th1アジュバントを含まない該免疫原性組成物よりも、Th2型に偏った免疫応答を少なく誘発するために使用されるものである、免疫原性組成物。
【請求項2】
前記インフルエンザウイルス抗原は、H1、H2、H3、H5、H7またはH9のインフルエンザA型ウイルスサブタイプ由来である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記組成物は、オボアルブミン、オボムコイドおよびニワトリDNAを含まず、かつ、前記Th1アジュバントは、スクアレン、ポリソルベート80、ソルビタントリオレアートおよび免疫刺激性オリゴヌクレオチドのサブミクロンエマルションの形態である、請求項1または請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記組成物は、1ウイルス株あたり0.1μgと20μgとの間の赤血球凝集素(HA)を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物は、1株あたり約15μgのHAを含むか、または、1株あたり約3.8μgのHAを含む、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記エマルションは、サブミクロンの直径を有する小滴を有し、かつ、前記組成物は、1用量あたり1ng未満の残留宿主細胞DNAを含む、請求項1、4および5のいずれかに記載の組成物。
【請求項7】
前記インフルエンザウイルス抗原は、A/PR/8/34インフルエンザウイルス由来の1種以上のRNAセグメントを有するインフルエンザウイルスから調製される、請求項1、および4?6のいずれかに記載の組成物。
【請求項8】
前記アジュバントは、3-O-脱アシル化モノホスホリルリピドA(3dMPL)を含む、請求項1、および4?7のいずれかに記載の組成物。
【請求項9】
前記3dMPLのうち少なくとも10重量%は、ヘキサアシル鎖形態である、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
水銀物質を含まない、請求項1、および4?9のいずれかに記載の組成物。
【請求項11】
1種以上の緩衝剤を含む、請求項1、および4?10のいずれかに記載の組成物。
【請求項12】
前記緩衝剤は、リン酸緩衝剤;Tris緩衝剤;ホウ酸緩衝剤;コハク酸緩衝剤;ヒスチジン緩衝剤;またはクエン酸緩衝剤を含む、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記組成物は、5.0と8.1との間のpHを有し、かつ、前記組成物は、1用量あたり100pg未満の残留宿主細胞DNAを含む、請求項1、および4?12のいずれかに記載の組成物。
【請求項14】
前記組成物は、2種のインフルエンザA型株および1種のインフルエンザB型株を含む、請求項1、および4?13のいずれかに記載の組成物。
【請求項15】
前記組成物は、流行性インフルエンザウイルス株に対する一価ワクチンである、請求項1、および4?13のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項16】
請求項1、および4?15のいずれかに記載の組成物を調製するためのキットであって、該キットは、
(a)細胞培養物において増殖されたウイルスから調製され、いかなる卵タンパク質も含まないスプリットインフルエンザウイルス抗原を含む第一のキット成分と、
(b)(i)スクアレン、トコフェロールおよびポリソルベート80を含む水中油型エマルション、または(ii)スクアレン、ポリソルベート80、ソルビタントリオレアートおよび免疫刺激性オリゴヌクレオチドのサブミクロンエマルション、の形態であるTh1アジュバントを含む第二のキット成分と、
を備え、ここで、該第一および第二の成分は、別々の容器内にあり、該組成物は、1用量あたり10ng未満の残留宿主細胞DNAを含む、キット。
【請求項17】
前記組成物は、1ウイルス株あたり0.1μgと20μgとの間の赤血球凝集素(HA)を含む、請求項3に記載の組成物。
【請求項18】
前記エマルションは、サブミクロンの直径を有する小滴を有する、請求項3に記載の組成物。
【請求項19】
前記インフルエンザウイルス抗原は、A/PR/8/34インフルエンザウイルス由来の1種以上のRNAセグメントを有するインフルエンザウイルスから調製される、請求項3に記載の組成物。
【請求項20】
前記アジュバントは、3-O-脱アシル化モノホスホリルリピドA(3dMPL)を含む、請求項3に記載の組成物。
【請求項21】
水銀物質を含まない、請求項3に記載の組成物。
【請求項22】
1種以上の緩衝剤を含む、請求項3に記載の組成物。
【請求項23】
5.0と8.1との間のpHを有する、請求項3に記載の組成物。
【請求項24】
前記組成物は、2種のインフルエンザA型株および1種のインフルエンザB型株を含む、請求項3に記載の組成物。
【請求項25】
前記組成物は、流行性インフルエンザウイルス株に対する一価ワクチンである、請求項3に記載の組成物。
【請求項26】
請求項3に記載の組成物を調製するためのキットであって、該キットは、
(a)細胞培養物において増殖されたウイルスから調製され、いかなる卵タンパク質も含まないスプリットインフルエンザウイルス抗原を含む第一のキット成分と、
(b)スクアレン、ポリソルベート80、ソルビタントリオレアートおよび免疫刺激性オリゴヌクレオチドのサブミクロンエマルション、の形態であるTh1アジュバントを含む第二のキット成分と、
を備え、ここで、該第一および第二の成分は、別々の容器内にあり、該組成物は、1用量あたり10ng未満の残留宿主細胞DNAを含む、キット。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2015-12-24 
結審通知日 2016-01-04 
審決日 2016-01-15 
出願番号 特願2008-538421(P2008-538421)
審決分類 P 1 113・ 536- ZDA (A61K)
P 1 113・ 16- ZDA (A61K)
P 1 113・ 121- ZDA (A61K)
P 1 113・ 113- ZDA (A61K)
最終処分 一部成立  
前審関与審査官 光本 美奈子  
特許庁審判長 内藤 伸一
特許庁審判官 新留 素子
大久保 元浩
登録日 2013-09-13 
登録番号 特許第5363107号(P5363107)
発明の名称 アジュバントを含むスプリットインフルエンザワクチンにおけるTH1/TH2バランスの変化  
復代理人 山本 健策  
復代理人 ▲駒▼谷 剛志  
代理人 吉住 和之  
復代理人 長谷部 真久  
代理人 池田 正人  
復代理人 草深 充彦  
代理人 山本 秀策  
復代理人 難波 早登至  
代理人 城戸 博兒  
代理人 森下 夏樹  
代理人 坂西 俊明  
代理人 山本 秀策  
代理人 渡辺 欣乃  
復代理人 ▲駒▼谷 剛志  
復代理人 山本 健策  
代理人 清水 義憲  
復代理人 長谷部 真久  
代理人 長谷川 芳樹  
復代理人 難波 早登至  
復代理人 草深 充彦  
代理人 森下 夏樹  
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