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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G06F |
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管理番号 | 1319461 |
審判番号 | 不服2015-18264 |
総通号数 | 203 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2016-11-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2015-10-07 |
確定日 | 2016-10-07 |
事件の表示 | 特願2013-543351「通信ネットワークにおけるプレゼンス情報の交換」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 6月14日国際公開,WO2012/078903,平成26年 3月13日国内公表,特表2014-506351,請求項の数(31)〕について,次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は,特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は,平成23年12月8日(パリ条約による優先権主張2010年12月8日アメリカ合衆国,2011年11月23日アメリカ合衆国)の出願であって,平成27年5月29日付けで拒絶査定(以下「原査定」という)がなされ,これに対し,平成27年10月7日に拒絶査定不服審判が請求され,同時に手続補正がなされ,平成27年12月21日付けで特許法第164条第3項に定める報告(以下「前置報告」という)がなされ,その後,当審において平成28年7月28日付けで拒絶理由(以下「当審拒絶理由」という)が通知され,平成28年8月3日付けで手続補正がされたものである。 第2 本願発明 本願の請求項1乃至31に係る発明は,平成28年8月3日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1乃至31に記載された事項により特定されるものと認められる。 本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という)は以下のとおりである。 「ユーザデバイスで実行される通信システム内の分散的プレゼンス管理の方法であって, 前記ユーザデバイスが前記ユーザデバイスに関連する連絡先グループに属する1つまたは複数の他のユーザデバイスにプレゼンス更新メッセージを送信する少なくとも1つの頻度を選択的に更新するステップであって,前記1つまたは複数のプレゼンス更新メッセージのうちの少なくとも1つは,対応するターゲットユーザデバイスが,前記対応するターゲットユーザデバイスに関連するプレゼンス情報により応答することを要求するように構成される,ステップと, 前記選択的に更新された頻度に従って,1つまたは複数のプレゼンス更新メッセージを送信するステップと を含み, 前記送信するステップは, 前記ユーザデバイスが,前記1つまたは複数の他のユーザデバイスのうちの1つまたは複数にメディアを送信するか否かを判断するステップと, 前記ユーザデバイスが前記1つまたは複数の他のユーザデバイスのうちの1つまたは複数にメディアを送信するときに,前記送信されるメディアに前記1つまたは複数のプレゼンス更新メッセージを付加するステップとを含むことを特徴とする方法。」 第3 原査定の理由の概要 1 原査定の理由となった平成26年9月29日付けの拒絶理由(理由2)には以下のとおり記載されている。 『 この出願の下記の請求項に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 (中略) 請求項:1,8,23-27,42,44,46 引用文献:1-3 備考: 引用文献1(段落【0114】等参照)には 「グループに対してプレゼンス情報を送信するプレゼンス通知システムであって, 配信ポリシに従って,所定の間隔でグループに対して,プレゼンス情報を通知するプレゼンス通知システム。」 の発明が記載されている。 また,引用文献2(段落【0026】-【0037】),引用文献3(段落【0016】-【0054】等参照)に示されるように,プレゼンス情報の取得要求の送信間隔を何らかの条件に応じて変更可能とすることは周知であって,引用文献1に記載された発明に上記周知技術を適用して,本願発明の構成とすることは当業者が容易に想到しうることである。 (中略) 引 用 文 献 等 一 覧 1.国際公開第2007/037018号 2.特開2010-81019号公報 3.特開2003-296259号公報 』 2 原査定の理由の判断 (1)刊行物の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された国際公開第2007/037018号(以下,「引用文献1」という。)には,図面と共に次の技術的事項が記載されている。 A 「【0041】 次にプレゼンス通信システム1aの他の特徴について図3?図8を用いて説明する。図3は複数のグループURIに対してプレゼンス情報を提供している様子を示す図である。プレゼンスサーバ10aは,複数の異なるグループURI#1?#nを有し,プレゼンティティ20-1?20-nは,グループURI#1?#nそれぞれにプレゼンス情報を提供する。 【0042】 また,プレゼンティティ20-1?20-nは,グループURIの選択機能を持ち,プレゼンス情報の内容と,グループURIへのプレゼンス情報の提供方針とにもとづき,プレゼンスサーバ10aに対して,プレゼンス情報の提供の有無,またはプレゼンス情報の通知間隔を決定する。」 B 「【0061】 次にプレゼンスサービス方法について説明する。図8はプレゼンスサービス方法の動作を示すフローチャートである。 〔S1〕プレゼンスサーバ10aは,プレゼンス情報を収集するためのグ ループURIを生成する。 【0062】 〔S2〕グループURIディレクトリサーバ40は,サービスの案内情報と共にグループURIのディレクトリを登録する。 〔S3〕プレゼンティティ20-1?20-nは,グループURIディレクトリサーバ40を用いてグループURIを検索し,所望するサービスのグループURIにプレゼンス情報を提供する。 【0063】 〔S4〕プレゼンスサーバ10aは,プレゼンティティ20-1?20-nから提供されたプレゼンス情報をグループURI毎に集約,蓄積する。 〔S5〕ウォッチャー30-1?30-nは,グループURI毎にプレゼンティティ20-1?20-nが提供したプレゼンス情報を要求する。 【0064】 〔S6〕プレゼンスサーバ10aは,グループURI毎に要求されるプレゼンス情報をウォッチャー30-1?30-nに配信する。 〔S7〕ウォッチャー30-1?30-nは,配信されたプレゼンス情報を受信して,プレゼンティティ20-1?20-nの状態を認識し,サービス提供可能なプレゼンティティに対してサービスを実行する。」 C 「 【0114】 S1009:グループウォッチャー6は,配信ポリシの指定にしたがって,グループURIプレゼンスキャッシュ4-1を参照する。プレゼンスキャッシュ4-1の参照の仕方は,例えば1分に一回,グループURIに登録されている全メンバー(クライアント)のプレゼンス情報を通知するとか,グループプレゼンティティと連携して,グループURIの個々のメンバーに対してプレゼンス情報通知が行われた場合,そのメンバーのプレゼンス情報だけを通知するといった方法が考えられる。」 そうすると,引用文献1には, 「プレゼンス通信システムのプレゼンスサーバが複数の異なるグループを有し,グループ毎にプレゼンス情報を集約・蓄積し,プレゼンティティがグループ毎にプレゼンス情報を提供し,ウォッチャーがグループ毎にプレゼンス情報を要求し参照する,プレゼンス情報を通知する方法であって, プレゼンティティが各グループへのプレゼンス情報の提供方針に基づき,プレゼンス情報の通知間隔を決定するステップと, プレゼンティティが所望するサービスのグループにプレゼンス情報を決定された前記通知間隔で提供するステップと, プレゼンスサーバがプレゼンティティから提供されたプレゼンス情報をグループ毎に集約・蓄積するステップと, ウォッチャーがグループ毎にプレゼンティティが提供したプレゼンス情報を要求するステップと, プレゼンスサーバがグループ毎に要求されるプレゼンス情報をウォッチャーに配信するステップと, ウォッチャーが配信されたプレゼンス情報を受信し,サービス提供可能なプレゼンティティーに対してサービスを実行するステップと, ウォッチャーが配信ポリシの指定にしたがって,例えば1分に一回の頻度でグループプレゼンスを参照するステップ を特徴とする方法」(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 (2)対比 ア 引用発明の「プレゼンス通信システムのプレゼンスサーバが複数の異なるグループを有し,グループ毎にプレゼンス情報を集約・蓄積し,プレゼンティティがグループ毎にプレゼンス情報を提供し,ウォッチャーがグループ毎にプレゼンス情報を要求し参照する,プレゼンス情報を通知する方法」と本願発明の「ユーザデバイスで実行される通信システム内の分散的プレゼンス管理方法」とを対比すると, 引用発明の「プレゼンス通信システムのプレゼンスサーバ」は,複数の異なるグループ毎にプレゼンス情報を集約・蓄積しているので,プレゼンス情報を分散的に管理しているといえ,引用発明の「プレゼンティティ」や「ウォッチャー」はユーザデバイスで実行される通信システム内にあることは明らかなので,両者に実質的な差異はない。 イ 引用発明の「プレゼンティティが各グループへのプレゼンス情報の提供方針に基づき,プレゼンス情報の通知間隔を決定するステップ」と本願発明の「前記ユーザデバイスが前記ユーザデバイスに関連する連絡先グループに属する1つまたは複数の他のユーザデバイスにプレゼンス更新メッセージを送信する少なくとも1つの頻度を選択的に更新するステップ」とを対比すると, 引用発明の「プレゼンス情報の通知間隔」は,本願発明の「プレゼンス更新メッセージを送信する頻度」に対応し,頻度を選択し決定しているといえるので,後記する点で相違するものの,“プレゼンス更新メッセージを送信する頻度を決定するステップ”という点で共通している。 ウ 引用発明の「プレゼンティティが所望するサービスのグループにプレゼンス情報を決定された前記通知間隔で提供するステップ」と本願発明の「前記選択的に更新された頻度に従って,1つまたは複数のプレゼンス更新メッセージを送信するステップ」とを対比すると, 引用発明の「決定された前記通知間隔」は本願発明の「選択的に更新された頻度」に対応し,引用発明の「プレゼンティティ」が「プレゼンス情報」を「提供する」ことは,「プレゼンティティ」が「プレゼンス情報」を「送信する」といえるので,後記する点で相違するものの, “決定した頻度に従って,1つまたは複数のプレゼンス更新メッセージを送信するステップ”という点で共通している。 エ 上記ア乃至ウより,以下の点で一致し,以下の点で相違している。 <一致点> ユーザデバイスで実行される通信システム内の分散的プレゼンス管理方法であって, プレゼンス更新メッセージを送信する頻度を決定するステップと, 決定した頻度に従って,1つまたは複数のプレゼンス更新メッセージを送信するステップと, を含むことを特徴とする方法。 <相違点1> 本願発明では「ユーザデバイスが前記ユーザデバイスに関連する連絡先グループに属する1つまたは複数の他のユーザデバイスにプレゼンス更新メッセージを送信する少なくとも1つの頻度を選択的に更新する」のに対して,引用発明ではそのように特定されていない点。 <相違点2> 本願発明では「プレゼンス更新メッセージのうち少なくとも1つは,対応するターゲットユーザデバイスが,前記対応するターゲットユーザデバイスに関連するプレゼンス情報により応答することを要求するように構成」されているのに対して,引用発明ではそのように特定されていない。 <相違点3> 本願発明では「前記送信するステップ」は,「前記ユーザデバイスが,前記1つまたは複数の他のユーザデバイスのうちの1つまたは複数にメディアを送信するか否かを判断するステップと, 前記ユーザデバイスが前記1つまたは複数の他のユーザデバイスのうちの1つまたは複数にメディアを送信するときに,前記送信されるメディアに前記1つまたは複数のプレゼンス更新メッセージを付加するステップとを含む」のに対して,引用発明ではそのように特定されていない。 (3)判断 (3-1)相違点1について 原査定の理由となった平成26年9月29日付けの拒絶理由において引用された引用文献2(特開2010-81019号公報(段落【0026】-【0037】),引用文献3(特開2003-296259号公報(段落【0016】-【0054】)に示されるように,プレゼンス情報の取得要求の送信間隔を何らかの条件に応じて変更可能とすることは周知技術であり,引用発明の「プレゼンティティが各グループへのプレゼンス情報の提供方針に基づき,プレゼンス情報の通知間隔を決定するステップ」において周知技術を適用し,プレゼンス情報の通信間隔(プレゼンス更新メッセージの頻度)を選択的に更新することは,当業者が容易になし得ることである。 よって,相違点1は格別のものではない。 (3-2)相違点2について 原査定において周知技術を示す文献として引用された文献(特開2004-21420号公報(段落【0011】-【0051】)に示されるように,プレゼンス情報を個々の通信端末で管理し,通信端末間で通信ネットワークを介して直接的に共有することは周知技術であるものの,引用発明の「プレゼンティティ」や「ウォッチャー」は「プレゼンスサーバ」を介さずに「プレゼンス情報」を要求又は応答を直接行っていないため,本願発明のように「対応するターゲットユーザデバイス」が「前記対応するターゲットユーザデバイスに関連するプレゼンス情報により応答することを要求するように構成」させるように,引用発明の「プレゼンティティ」又は「ウォッチャー」に周知技術を適用させる動機付けがない。 そうすると,当業者といえども引用発明に基づいて相違点2に係る構成を容易に発明することができたとはいえない。 (3-3)相違点3について 前置報告において周知技術を示す文献として引用された文献(特開2005-107893号公報(段落【0096】参照)に示されるように,メッセージにプレゼンス情報を付加して送信することは周知技術であるものの,引用発明の「プレゼンス情報」を「提供するステップ」や「配信するステップ」において,本願発明の「ユーザデバイスが前記1つ又は複数の他のユーザデバイスのうちの1つまたは複数にメディアを現在送信しているか否かを判断するステップと,前記ユーザデバイスが前記1つまたは複数の他のユーザデバイスのうちの1つまたは複数にメディアを送信するときに,前記送信されるメディアに前記1つまたは複数のプレゼンス更新メッセージを付加するステップ」のように周知技術を適用する動機付けがない。 そうすると,当業者といえども引用発明に基づいて相違点3に係る構成を容易に発明することができたとはいえない。 (4)小括 したがって,本願発明は,当業者が引用発明に基づいて容易に発明することができたとはいえない。 本願の請求項29乃至31に係る発明は,請求項1に係る発明とカテゴリ違いであり, 請求項2乃至28に係る発明は,本願発明をさらに限定したものであるので,本願発明と同様に,当業者が引用発明に基づいて容易に発明することができたものでないから,原査定の理由によっては,本願を拒絶することができない。 第4 当審拒絶理由について 1 当審拒絶理由の概要 『(1)本件出願は,明細書,特許請求の範囲及び図面の記載が下記の点で不備のため,特許法第36条第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしていない。 1.請求項1について (1)当該請求項には「前記ユーザデバイスが前記1つまたは複数の他のユーザデバイスのうちの1つまたは複数にメディアを現在送信しているか否かを判断するステップ」と特定されているところ,明細書の段落【0121】には「判断ブロック802において,フローは,送る通信が生じるまで待機する」「フローは804に進み,限定された能力を有すると想定される共通チャネルが通信に使用されるか否かを判断する」「フローはブロック808に進み,プレゼンス情報を添付するか埋め込むのに十分な能力を有するか否かを判断する」と記載されているものの,「メディアを現在送信しているか否かを判断」することは記載されていない。 (2)当該請求項には「前記ユーザデバイスが前記1つまたは複数の他のユーザデバイスのうちの1つまたは複数にメディアを送信していることに基づいて,前記選択的に更新された頻度に従って,送信されている前記メディアと共に1つ又は複数のプレゼンス更新メッセージを送信するステップ」と特定されているところ,明細書の段落【0121】には「ブロック804の答えがいいえの場合,フローはブロック806に進み,プレゼンス情報,例えばPV更新要求(中略)を通信に埋め込む」「ブロック808の答えがはいである場合,フローはブロック806に進み,プレゼンス情報(中略)を通信に添付する」と記載されているものの,「選択的に更新された頻度に従って,送信する」ことと,「送信されている前記メディアと共に1つ又は複数のプレゼンス更新メッセージを送信する」こととの関係が記載されておらず,不明瞭である。 2.請求項29,30,31について 当該請求項に係る発明は,上記請求項1と同様の理由により,明細書に記載されたものでなく,明瞭でない。』 2 当審拒絶理由の判断 (1)平成28年8月3日付けの手続補正によって, 本願発明の「更新メッセージを送信するステップ」は, 「前記選択的に更新された頻度に従って,1つまたは複数のプレゼンス更新メッセージを送信するステップとを含み, 前記送信するステップは, 前記ユーザデバイスが,前記1つまたは複数の他のユーザデバイスのうちの1つまたは複数にメディアを送信するか否かを判断するステップと, 前記ユーザデバイスが前記1つまたは複数の他のユーザデバイスのうちの1つまたは複数にメディアを送信するときに,前記送信されるメディアに前記1つまたは複数のプレゼンス更新メッセージを付加するステップとを含む」と補正され,請求項1に係る発明について拒絶理由が解消した。 また,請求項29,30,31に係る発明についても同様の補正がされた。このことにより,当審拒絶理由は解消した。 第5 むすび 以上のとおり,原査定の理由によっては,本願を拒絶することができない。また,当審において新たに先行技術を調査したものの,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2016-09-27 |
出願番号 | 特願2013-543351(P2013-543351) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(G06F)
P 1 8・ 537- WY (G06F) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 漆原 孝治 |
特許庁審判長 |
石井 茂和 |
特許庁審判官 |
高木 進 辻本 泰隆 |
発明の名称 | 通信ネットワークにおけるプレゼンス情報の交換 |
代理人 | 黒田 晋平 |
代理人 | 村山 靖彦 |