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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H04W
管理番号 1319495
審判番号 不服2015-18780  
総通号数 203 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-11-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-10-16 
確定日 2016-10-11 
事件の表示 特願2014- 425「無線通信システムにおいてハンドオーバを実行する方法およびシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 5月 8日出願公開、特開2014- 82785、請求項の数(17)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2007年6月19日(パリ条約による優先権主張外国庁受理、2006年6月20日 米国)を国際出願日とする特願2009-516563号の一部を、平成24年6月18日に新たな出願である特願2012-137075号とし、当該新たな特許出願の一部を、平成26年1月6日にさらに新たな特許出願としたものであって、平成27年6月5日付けで拒絶査定され、これに対し、同年10月16日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に補正がなされ、同年12月28日付けで前置報告書が作成されたものである。


第2 補正の適否について
平成27年10月16日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、本件補正前の請求項10を削除するとともに、これと整合するように請求項の項数を繰り上げる補正である。
したがって請求項の削除を目的とした補正であるから、特許法17条の2第5項1号に該当する。
また、特許法17条の2第3項、第4項に違反するところはない。
よって、本件補正は、特許法17条の2第3項ないし第5項の規定に適合する。


第3 本願発明
本件補正は、上記のとおり、特許法17条の2第3項ないし第5項の規定に適合するから、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成27年10月16日付けの手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものであると認める。

「 【請求項1】
無線送受信ユニット(WTRU)によって実行される、ハンドオーバを実行する方法において、
前記WTRUが、ソースeノードBからハンドオーバコマンドを受信するステップと、
前記WTRUが、ランダムアクセス手順を使用して、ターゲットeノードBとタイミング調整を実行するステップと、
前記WTRUが、前記ハンドオーバコマンドの受信に応答して、無線リンク制御(RLC)およびハイブリッド自動再送要求(HARQ)パラメータをリセットするステップと、
前記WTRUが、前記ハンドオーバコマンドの中に含まれた情報を使用して、前記ターゲットeノードBへハンドオーバを実行するステップと
を備えることを特徴とする方法。」


第4 原査定の理由の概要
原査定の理由となった平成26年9月16日付けの拒絶理由の概要は
「この出願の下記の請求項にかかる発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」(なお、特許法第17条の2第3項、同法第36条6項2号、及び同法第36条第4項第1号についての拒絶の理由は、対象となる請求項が削除されたか、もしくは拒絶査定で言及されなかったものであり、省略する。)
というものであり、以下の引用文献1?5が引用された。(特に、請求項1に対しては、引用文献1?3が引用された。)

1.Nokia, NTT DoCoMo, Intra-LTE Handover operation[online], 3GPP TSG-RAN WG2#53 R2-061135, インターネット<URL:http://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG2_RL2/TSGR2_53/Documents/R2-061135.zip>, 2006年5月3日
2.国際公開第2005/022814号
(対応日本語文献:特表2007-503740号公報)
3.特表2005-539468号公報
4.LG Electronics,Discussion on Initial Access to LTE Cell[online],3GPP TSG-RAN WG2#53 R2-061552,インターネット<URL:http://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG2_RL2/TSGR2_53/Documents/R2-061552.zip>,2006年5月15日
5.特表2003-523138号公報


第5 当審の判断
1.引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献1には、以下の記載がなされている。

ア.「Below is more detailed description of the intra-MME/UPE HO procedure:
・・・・・・
4. UE receives HANDOVER COMMAND with necessary parameters i.e. new C-RATI, possible starting time, target cell SIBs etc. It is probable that UE needs to acknowledge reception of the HO COMMAND with RLC ack procedure.
5. After expiry of starting time in HO COMMAND UE performs synchronization to target cell and then starts acquiring UL timing advance.
a. Timing advance can be achieved by normal one or two phase RACH procedure OR
b. IN the target cell or in the HO COMMAND UE receives allocation(s),which it can use by sending access burst in non-contention based manner.
6. Network responds with UL allocation and timing advance. These are used by UE to send HANDOVER CONFIRM to the target eNodeB, which completes handover proceduer for the UE. It is probable that NWneeds to acknowedge reception of the HO CONFIRM with RLC ack procedure.」(2?3頁)
(当審訳:以下は、イントラMME/UPEハンドオーバ手順のより詳細な説明である。
・・・・・・・・・・・
4.UEは、例えば、新たなC-RNTI、開始可能時間、ターゲットセルSIBなどの必要なパラメータをともなったハンドオーバコマンドを受信する。おそらく、UEは、RLC応答手順で、ハンドオーバコマンドの受信に確認応答する必要があるだろう。
5.ハンドオーバコマンドにおける開始時間の満了後に、UEはターゲットセルとの同期を実行し、それから、アップロードのタイミングアドバンスの取得を開始する。
a.タイミングアドバンスは通常の1つあるいは2つの位相RACH手順によって達成され得るか、または、
b.ターゲットセルもしくはハンドオーバコマンドにおいて、UEは、非競合ベースの方法でアクセスバーストを送信することによって使用できる割り当て(複数可)を受信する。
6.ネットワークはアップロード割り当てとタイミングアドバンスに応答する。これらは、UEのためにハンドオーバ手続を完了するターゲットeノードBにハンドオーバ確認を送信するために、UEによって使われます。NWは、RLC応答手順で、ハンドオーバ確認の受信に確認応答する必要があるだろう。)

イ.「Figure1」とした図面には、以下の事項が記載されている。
・「Source eNode B(ソースeノードB)」から「UE」へ向かう矢印とともに、「4.Handover Command(new C-RATI; FFS; SIBs; FFS; starting time;...)」と記載されている。

したがって、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「UEによって実行されるハンドオーバの方法であって、
前記UEがソースeノードBから、新たなC-RNTI、開始可能時間、及びターゲットセルSIBなどの必要なパラメータである、ハンドオーバコマンドを受信するステップと、
前記UEが、RACH手順によって、ターゲットeノードBとタイミング調整を達成するステップと、
を備える方法。」


2.引用発明2
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献2には、以下の記載がなされている。

ウ.「Transmission techniques are provided that improve service continuity and reduce interruptions in delivery of content that can be caused by transitions that occur when the User Equipment (UE) moves from one cell to the other, or when the delivery of content changes from a Point-to-Point (PTP) connection to a Point-to-Multipoint (PTM) connection in the same serving cell, and vice-versa.」(「Abstract」の欄)(当審訳:サービス連続性を改良し、ユーザー装置(UE)が一つのセルから他のセルへ移動するとき、或いはコンテンツの配送が同じサービス・セルにおいて二地点間(PTP)接続から一地点対多地点(PTM)接続へ変わるとき起こる移行によって引き起こされるコンテンツの配送における中断を低減する伝送技術が提供される。(パテントファミリである特表2007-503740号の対応する記載を援用した。以下同様。))

エ.「[00113] When the User Equipment (UE) or mobile station moves between PTM transmission and Point-to-Point (PTP) fransmission (or changes cells), the RLC entity 152 is reinitialized. 」(当審訳:ユーザー装置(UE)または移動局がPTM伝送と二地点間(PTP)伝送との間で動く(またはセルを変える)ときRLCエンティティー152は再初期化される。)

したがって、引用文献2には、「ユーザー装置(UE)が一つのセルから他のセルへ移動する(ハンドオーバする)ときに、RLCエンティティーを初期化する技術」(以下、「引用発明2」)が記載されていると認められる。


3.引用発明3
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献3には、以下の記載がなされている。

オ.「【0001】
本発明は、無線通信の分野に関し、より詳細には、データ伝送の配布元である中間ノードのMAC層リセット後に、1対のレイヤ2自動反復要求(ARQ)ピアエンティティ間でのデータ伝送を効率的に回復することに関する。ハンドオーバシナリオの一例として、ハイブリッドARQ(H-ARQ)および適応変調および符号化(AM&C)技法を採用するシステムがある。」

カ.「【0015】
ノードB間またはノードB内のハンドオーバ中、RRCメッセージがMAC層リセットインジケータをUEへ搬送することが多い。UEはMAC層リセットインジケータを受信すると、構成済みのすべてのH-ARQプロセスについてバッファをフラッシュする(すなわち、再順序付けバッファ内のすべてのMAC-hs層PDUをMAC-d層PDUに逆アセンブル(disassembling)し、すべてのMAC-d層PDUをMAC-d層に送達した後、関連するRLCエンティティに送達することによって、再順序付けバッファをフラッシュする)ことを含むが、これに限定されることのない、一連の機能を実行する。ノードB間のハンドオーバ(および何らかのノードB内ハンドオーバ)時には、すべてのH-ARQプロセスおよびすべての再順序付けバッファが、ターゲットノードBの新しいMAC-hsエンティティからのデータの受信に対して、UE内のMAC-hs層をリセットする必要がある。」

したがって、引用文献3には、「UEがハンドオーバする際にH-ARQプロセスについてバッファをフラッシュする技術」(以下、「引用発明3」)が記載されていると認められる。


4.対比
本願発明を引用発明と対比すると、
引用発明の「UE」は、本願発明の「無線送受信ユニット(WTRU)」に含まれる。
引用発明の、RACH手順によるタイミング調整は、ランダムアクセス手順を使用したタイミング調整ということができる。
引用発明における「ハンドオーバコマンド」には「新たなC-RNTI、開始可能時間、及びターゲットセルSIB」が含まれており、これらはハンドオーバに使用されることは明らかである。

したがって、本願発明を引用発明と対比すると、以下の点で一致し、また相違する。

(一致点)
「無線送受信ユニット(WTRU)によって実行される、ハンドオーバを実行する方法において、
前記WTRUが、ソースeノードBからハンドオーバコマンドを受信するステップと、
前記WTRUが、ランダムアクセス手順を使用して、ターゲットeノードBとタイミング調整を実行するステップと、
前記WTRUが、前記ハンドオーバコマンドの中に含まれた情報を使用して、前記ターゲットeノードBへハンドオーバを実行するステップと
を備えることを特徴とする方法。」

(相違点)
本願発明の「前記WTRUが、前記ハンドオーバコマンドの受信に応答して、無線リンク制御(RLC)およびハイブリッド自動再送要求(HARQ)パラメータをリセットするステップ」について、引用発明には特定がない点。


5.判断
上記相違点について検討する。
上述したように、
・「ユーザー装置(UE)が一つのセルから他のセルへ移動する(ハンドオーバする)ときに、RLCエンティティーを初期化する技術」(引用発明2)
・「UEがハンドオーバする際にH-ARQプロセスについてバッファをフラッシュする技術」(引用発明3)
は、本願の優先権主張時点において公知である。
しかしながら、引用発明と同様にハンドオーバにかかる技術である引用発明2及び引用発明3を、引用発明に適用し、ハンドオーバに際してRLC及びH-ARQのパラメータをリセットするように構成したとしても、引用発明2及び3にはRLCやH-ARQのリセットとハンドオーバコマンドとの関係について開示も示唆もないから、ハンドオーバコマンドの受信に応答して、無線リンク制御(RLC)およびハイブリッド自動再送要求(HARQ)パラメータをリセットする構成を容易に想到できたということはできない。

したがって、本願発明は、引用文献1?3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。
また、原査定の拒絶の理由で引用された引用文献4,引用文献5を参照しても、本願発明を容易に発明できたということはできない。
本願発明と実質的に同様の技術内容を、無線送受信ユニット(WTRU)として特定した請求項10に係る発明、及びこれらの発明の構成をさらに限定した請求項2?9,11?17に係る発明についても同様である。


第6 むすび
以上のとおり、本願の請求項1?17に係る発明は、引用文献1?5に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることができないから、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2016-09-26 
出願番号 特願2014-425(P2014-425)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H04W)
最終処分 成立  
前審関与審査官 冨永 達朗望月 章俊  
特許庁審判長 近藤 聡
特許庁審判官 古市 徹
山本 章裕
発明の名称 無線通信システムにおいてハンドオーバを実行する方法およびシステム  
代理人 特許業務法人 谷・阿部特許事務所  

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