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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B24B
管理番号 1319657
審判番号 不服2016-5994  
総通号数 203 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-11-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-04-22 
確定日 2016-10-11 
事件の表示 特願2014-121991「渦電流監視用研磨パッド」拒絶査定不服審判事件〔平成26年11月6日出願公開、特開2014-208401、請求項の数(7)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2001年(平成13年)5月18日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2000年5月19日 (US)アメリカ合衆国、2000年7月10日 (US)アメリカ合衆国、2000年7月27日 (US)アメリカ合衆国)を国際出願日として出願した特願2001-585991号の一部を、平成24年10月3日に新たに分割出願した特願2012-221417号の一部を、平成26年6月13日に新たに特許出願したものであって、平成27年12月16日付けで拒絶査定がされ、これに対し、平成28年4月22日に拒絶査定不服審判が請求され、同時に手続補正がされたものである。

第2 平成28年4月22日付けの手続補正の適否
1.補正の内容
(1)請求項1について
平成28年4月22日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の請求項1を、
「研磨面と裏面とを有する研磨層と、
前記研磨層の裏面に固定され且つ当接する裏当て層であって、該層を貫通する開口を有する裏当て層と、
渦電流の測定と干渉しない透磁率を有する薄肉化された領域を含む、前記研磨層における透明プラグと、
を備え、
前記薄肉化された領域は、前記研磨面と同一平面内にある頂面と前記裏面から離隔した底面とを有して、前記研磨層を完全にではなく部分的に通って延びる凹部を形成し、前記凹部は前記裏当て層の前記開口と並び、
前記薄肉化された領域の頂面の一部の、前記薄肉化された領域を取り囲む前記研磨面の一部に対する垂直方向への移動が拘束されるように、前記薄肉化された領域が前記研磨層に結合されている、化学機械研磨装置における渦電流監視システムとともに用いるための研磨パッド。」
とする補正(以下、「補正事項1」という。)を含んでいる。

2.補正の適否
(1)補正事項1について
本件補正の補正事項1は、請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「透明プラグ」の「薄肉化された領域」について、「薄肉化された領域の頂面の一部の、前記薄肉化された領域を取り囲む前記研磨面の一部に対する垂直方向への移動が拘束されるように」「前記研磨層に結合されている」との事項を新たに付加するものであって、当該事項は本願の発明の詳細な説明の特に【0039】及び図15から認められる事項であって新規な事項を追加するものではなく(特許法第17条の2第3項の規定に違反するものではなく)、また、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題を変更するものではない。
また、前記事項を追加することにより、補正前の「透明プラグ」の「薄肉化された領域」は、当該補正により限定されると認められるので、当該補正は、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に係る発明(以下、「補正発明1」という。)が、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について以下に検討する。

ア 刊行物の記載事項
(ア) 刊行物1
原査定の拒絶の理由に引用された特開平9-7985号公報(以下、「刊行物1」という。)には、図1ないし図21とともに、次の記載がある。(下線は当審で付与、以下同じ。)

a「【発明の属する技術分野】本発明は、半導体の製造に関し、特に、ケミカルメカニカルポリシング(chemical mechanical polishing :CMP)及びCMPプロセス中のインシチュウ(in-situ)終点検出に関する。」(【0001】)

b「半導体ウエハの平坦化又は局所構造の除去を実現する方法の1つに、ケミカルメカニカルポリシング(CMP)がある。一般的には、ケミカルメカニカルポリシング(CMP)プロセスは、圧力を制御した状態で、回転する研磨プラーテンに対してウエハを保持し又は回転させる。図1に示されるように、典型的なCMP装置10は、研磨プラーテン16に対してウエハ14を保持するための研磨ヘッド12を有している。研磨プラーテン16は、パッド18によって覆われている。このパッド18は典型的には裏張り層20を有し、これは、ウエハ14を研磨するためにケミカルポリシングスラリと共に用いられるカバー層22とプラーテンとの間のインターフェースとなっている。しかし、パッドの中には、カバー層のみを有し裏張り層を有していないものもある。カバー層22は、通例は、オープンセル発泡ウレタン(例えばRodel IC1000)又はグルーブのある表面を有するポリウレタンシート(例えばRodel EX2000)である。このパッド材料は、研磨剤と化学品とを含有するケミカルポリシングスラリによってウェットな状態となっている。典型的なケミカルポリシングスラリの1例は、KOH(水酸化カリウム)とヒュームドシリカ粒子(fumed-silica particles)とを含有している。プラーテンは、通常は自身の中心軸24の回りに回転している。更に、通常は研磨ヘッドが自身の中心軸26の回りに回転し、平行移動アーム28を介してプラーテンの表面の端から端まで平行移動する。図1には研磨ヘッドが1つしか示されていないが、CMP装置には、典型的には、このようなヘッドが1つ以上研磨プラーテンの周方向に間隔をおいて配置される。」(【0003】)

c「【課題を解決するための手段】本発明は、研磨プロセスに関して正確性を向上し更に有用な情報を与えるために用いる事ができる終点の検出器及び方法を目指すものである。本発明の装置及び方法は、CMPプロセスの最中に、除去された材料の厚さ又はウエハ表面の平坦度をインシチュウに決定するための、干渉による技術を採用する。」(【0006】)

d「データ取得装置によるデータ信号の出力は、CMPプロセスの最中に酸化物層が薄くなるにつれて、ウエハの酸化物層の表面から反射されるレーザービームの部分とこの下のウエハ基板の表面から反射される部分との間で干渉が生じる事により、周期的なものである。従って、ブランク酸化物(blank oxide)ウエハの酸化物層を薄くするCMPプロセスの終点は、データ信号によって現れるサイクルの数を計数し、レーザービームの波長とウエハの酸化物層の反射係数とから出力信号の1サイクルの間に除去される材料の厚さを計算し、酸化物から除去されるべき材料の所望の厚さを、データ信号により現れるサイクルの数と1サイクルの間に除去される材料の厚さとの積を備えた除去厚さと比較し、この除去厚さが除去されるべき材料の所望の厚さ以上になったときにCMPを終了させるための、付加的な装置要素を用いて、決定することが可能である。あるいは、全サイクルを計数する代りに、サイクルの一部を計数してもよい。この手順は、サイクル全体に対してではなくサイクルの一部に対して除去されるべき厚さを決定すること以外は、ほぼ同じである。」(【0012】)

e「概説的に、また別の特徴として、本発明は、上述のケミカルメカニカルポリシングシステムにおいて用いるための研磨パッドである。この研磨パッドは、研磨面と;底面とを有している。研磨パッドの底面及び研磨面は、それらの内部に形成されたウィンドウを有している。このウィンドウは、干渉計からの光に対して透過性を有し、また、散乱性の底面を有している。」(【0024】)

f「図3(b)は、プラーテン16とパッド18の別の具体例である。この具体例では、クオーツインサートは排除され、パッド18には貫通穴は存在しない。その代わりに、プラーテン16のホール30の上の領域では、パッド18の裏張り層20(存在すれば)が除去された。このことにより、ウエハ14とプラーテン16の底部との間には、パッド18のポリウレタンカバー層22だけが残っている。カバー層22に用いられるポリウレタン材料が、レーザー干渉計32からのレーザービームを実質的に透過させるだろうことが、見出されている。従って、プラーテン30の上にあるカバー層22の一部が、レーザービーム34のためのウィンドウとして機能する。この別の構成は、大きな利点を有している。第1に、パッド18自身はウィンドウとして用いられているため、検出できる大きさのギャップは存在しない。従って、レーザービームの有害な散乱を生じさせるスラリ40はほとんど存在しない。この別の具体例のもう一つの利点は、パッドの消耗に関係しなくなることである。図3(a)の最初に説明した具体例では、クオーツインサートとウエハ14との間のギャップは出来るだけ小さくされていた。しかしパッド18は消耗するため、このギャップはまだ小さくなる。最後には、摩耗は大きくなり、インサート38がウエハ14に接触して損害を与える。図3(b)の別の具体例では、パッド18は、ウィンドウとして用いられているため、また、ウエハ14に接触するように設定されているため、パッド18の消耗による有害な効果はない。オープンセルのタイプのパッド及びグルーブを有する表面のタイプのパッドを用いた実験によれば、グルーブを有する表面のパッドの方がレーザービームの弱化が小さくなる結果が示されたことに注目すべきである。従って、このタイプのパッドを用いることが好ましい。」(【0028】)

g「パッドのカバー層に用いられるポリウレタン材料は、レーザービームに対して実質的に透過性を有しているものの、透過性を阻害する添加物を含有している。この問題点は、図3(c)に描かれている本発明の具体例において排除される。この具体例では、プラーテンホール30の上の領域における典型的なパッド材料は、ソリッドな(中空ではない)ポリウレタンプラグ42に置き換えられる。このプラグ42は、レーザービームのウィンドウとして機能し、パッド材料を包囲するグルーブ(又はオープンセル構造)を有しないポリウレタン材料製であり、透過性を阻害する添加物を含有していない。従って、プラグ42を通ることによるレーザービームの弱化は最小になる。好ましくは、プラグ42はパッドと一体で成形される。」(【0029】)

上記摘記事項a?gを、技術常識を考慮しながら整理すると、刊行物1には以下の発明が記載されていると認められる。
「研磨面と裏面とを有するカバー層22と、
前記カバー層22の裏面に固定され且つ当接する裏張り層20であって、プラーテン16のホール30の上の領域を除去した裏張り層20と、
レーザービームを実質的に透過させる、プラーテン16のホール30の上の領域で裏張り層20が除去されてカバー層22だけが残る領域を含む、前記カバー層22におけるレーザービームに対して透過性を有するポリウレタンプラグ42と、
を備え、
前記プラーテン16のホール30の上の領域で裏張り層20が除去されてカバー層22だけが残る領域は、前記研磨面と同一平面内にある頂面と裏面とを有し、
前記ポリウレタンプラグ42が前記カバー層22と一体で成形されることで、前記ポリウレタンプラグ42が前記カバー層22に結合されている、ケミカルメカニカルポリシング装置10におけるレーザー干渉計32とともに用いるためのパッド18。」(以下、「引用発明」という。)

(イ) 刊行物2
原査定の拒絶の理由に引用された特開平10-202520公報(以下、「刊行物2」という。)には、図1ないし図8とともに、次の記載がある。
「上述の図1に示した容量センサ60は、この容量センサ60の検出面の位置を基準位置として、この検出面からウェーハ50の研磨面50Aまでの距離を測定する。また、上述の裏面測定基準部材74はその表面によって裏面測定基準を設定し、渦電流センサ62は、この渦電流センサ62の検出面から裏面測定基準部材74までの距離を測定する。尚、容量センサ60の検出面と渦電流センサ62の検出面の位置の差分(距離)と、ウェーハ50の裏面50Bと裏面測定基準部材74の位置の差分(距離)を予め測定しておけば、これらの差分値に基づいて、容量センサ60及び渦電流センサ62による上記測定値の差分からウェーハ50の厚さを測定することもできる。」(【0012】)

(ウ) 刊行物3
原査定の拒絶の理由に引用された特開平11-198025号公報(以下、「刊行物3」という。)には、図1ないし図12とともに、次の記載がある。
「前記センサ70によって、ウェーハ50の研磨量は概ね検出できるが、本実施の形態では、前記センサ70で検出された検出値を、前記センサ72、72、72で検出された検出値で補正することによりウェーハ50の研磨量を正確に得るようにしている。前記センサ72は、渦電流センサ等の非接触センサであり、その検出面72aが多孔質板42の下面と面一に配置され、ウェーハ50の上面との距離を検出することにより、圧力エア層(空気室51)の層厚の変動量を検出する。」(【0033】)

イ 対比
補正発明1と引用発明とを対比する。
引用発明の「研磨面」を有する「カバー層22」は、補正発明1の「研磨面」を有する「研磨層」に相当する。また、引用発明の「カバー層22の裏面に固定され且つ当接する裏張り層20」は、補正発明1の「研磨層の裏面に固定され且つ当接する裏当て層」に相当する。そして、引用発明の「プラーテン16のホール30の上の領域を除去した裏張り層20」は、裏張り層20について、プラーテン16のホール30の上の領域の部分がカバー層22だけが残るように除去されており、当該裏張り層20を貫通する開口が設けられた構造となっているといえるため、補正発明1の「該層を貫通する開口を有する裏当て層」に相当する。
次に、引用発明の「プラーテン16のホール30の上の領域で裏張り層20が除去されてカバー層22だけが残る領域」は、裏張り層20が存在せずにカバー層22のみが存在することで、パッド18としてみると、裏張り層20とカバー層22との両方がある部分と比べて厚みが薄くなっており、薄肉化された領域であると認められる。
そうすると、引用発明の「レーザービームを実質的に透過させる、プラーテン16のホール30の上の領域で裏張り層20が除去されてカバー層22だけが残る領域」と補正発明1の「渦電流の測定と干渉しない透磁率を有する薄肉化された領域」とは、「測定を行える薄肉化された領域」という点で一致するといえる。
また、補正発明1の「透明プラグ」は、本願の発明の詳細な説明の特に【0039】及び【0056】を参照すると、「透明」であることについては、測定対象物の表面を測定できる程度にレーザービームに対して透過性を有することを特定していると認められる。一方、引用発明の「レーザービームに対して透過性を有するポリウレタンプラグ42」も、測定対象物の表面を測定できる程度にレーザービームに対して透過性を有するものであるため、引用発明の「カバー層22におけるレーザービームに対して透過性を有するポリウレタンプラグ42」は、補正発明1の「研磨層における透明プラグ」に相当すると認められる。
さらに、引用発明の「ポリウレタンプラグ42」は、薄肉化された領域に設けられているとともに研磨面を構成するカバー層22と一体で成形されているため、薄肉化された領域である「ポリウレタンプラグ42」の頂面の一部の、「ポリウレタンプラグ42」を取り囲む研磨面の一部に対する垂直方向への移動は拘束されているといえる。
そうすると、引用発明の「前記ポリウレタンプラグ42が前記カバー層22と一体で成形されることで、前記ポリウレタンプラグ42が前記カバー層22に結合されている」ことは、補正発明1の「前記薄肉化された領域の頂面の一部の、前記薄肉化された領域を取り囲む前記研磨面の一部に対する垂直方向への移動が拘束されるように、前記薄肉化された領域が前記研磨層に結合されている」ことに相当する。
また、引用発明の「ケミカルメカニカルポリシング装置10」及び「パッド18」は、補正発明1の「化学機械研磨装置」及び「研磨パッド」に相当する。
そうすると、引用発明の「ケミカルメカニカルポリシング装置10におけるレーザー干渉計32とともに用いるためのパッド18」と補正発明1の「化学機械研磨装置における渦電流監視システムとともに用いるための研磨パッド」とは、「化学機械研磨装置における測定システムとともに用いるための研磨パッド」という点で一致する。

したがって、補正発明1と引用発明とは、以下の点で一致している。
<一致点>
「研磨面と裏面とを有する研磨層と、
前記研磨層の裏面に固定され且つ当接する裏当て層であって、該層を貫通する開口を有する裏当て層と、
測定を行える薄肉化された領域を含む、前記研磨層における透明プラグと、
を備え、
前記薄肉化された領域の頂面の一部の、前記薄肉化された領域を取り囲む前記研磨面の一部に対する垂直方向への移動が拘束されるように、前記薄肉化された領域が前記研磨層に結合されている、化学機械研磨装置における測定システムとともに用いるための研磨パッド。」

そして、補正発明1と引用発明とは、以下の3点で相違している。
<相違点1>
補正発明1では、薄肉化された領域が「渦電流の測定と干渉しない透磁率を有する」のに対して、引用発明では、薄肉化された領域相当を備えるものの、その透磁率及び渦電流の測定に関する干渉発生の有無はともに不明である点。
<相違点2>
薄肉化された領域について、補正発明1では、「前記研磨面と同一平面内にある頂面と前記裏面から離隔した底面とを有して、前記研磨層を完全にではなく部分的に通って延びる凹部を形成し、前記凹部は前記裏当て層の前記開口と並」ぶのに対して、引用発明は、研磨面と同一平面内にある頂面と裏面とを有するものであって、裏面は当然裏面と離隔していないため、当該領域に開口と並ぶ凹部が形成されていない点。
<相違点3>
測定システムについて、補正発明1では、「渦電流監視システム」であるのに対して、引用発明では、レーザー干渉計である点。

ウ 判断
上記相違点1?3について検討する。

(ア)相違点1について
渦電流センサから測定対象物までの距離を渦電流センサで測定することは、刊行物2や刊行物3にも記載されているように従来周知の事項である。
ところで、引用発明において、研磨パッドから研磨対象物の表面までの距離は、研磨の進行にかかわらず一定である。よって、研磨パッド側から渦電流センサを用いて測定対象物の表面まで距離を測定することは不可能である。
なぜならば、引用発明において、研磨パッドの下方に渦電流センサを配置したとしても、渦電流センサから研磨対象物の表面までの距離は研磨の進行にかかわらず一定であるためである。
よって、引用発明において、研磨パッドの下方に渦電流センサを配置して渦電流センサから研磨対象物の表面までの距離を測定する動機付けはない。
そのため、渦電流センサから測定対象物までの距離を渦電流センサで測定することが、従来周知の事項であったとしても、引用発明において、研磨パッドの下方に渦電流センサを配置することは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
したがって、引用発明において、薄肉化された領域であるポリウレタンプラグ42の性質として、渦電流の測定と干渉しない透磁率とを関連付けることは、当業者が容易に想到し得たことではない。よって、引用発明において、薄肉化された領域を、渦電流の測定と干渉しない透磁率を有するものとすることは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。

(イ)相違点2について
補正発明1においては、薄肉化された領域の研磨層に凹部が設けられているが、これは、本願の発明の詳細な説明の特に【0073】を参照すると、薄肉化された領域を渦電流の測定と干渉しない透磁率を有するような薄さにするためである。
上記相違点1にて検討したとおり、引用発明において、研磨パッドの下方に渦電流センサを配置することは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
そうすると、引用発明において、薄肉化された領域を渦電流の測定と干渉しない透磁率を有するような薄さにすることは、当業者が容易に着想し得たことではないため、引用発明において、薄肉化された領域に凹部を設けることは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。

(ウ)相違点3について
上記相違点1にて検討したとおり、引用発明において、研磨パッドの下方に渦電流センサを配置することは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
そうすると、引用発明における測定システムを渦電流監視システムとすることは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。

したがって、補正発明1は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
また、他に補正発明1が独立して特許を受けることができるものではないとする理由もない。
よって、本件補正の補正事項1は、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合する。

3.むすび
本件補正は、特許法第17条の2第3項ないし第5項の規定に適合する。

第3 本願発明
本件補正は上記のとおり、特許法第17条の2第3項ないし第5項の規定に適合するから、本願の請求項1-7に係る発明は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1-7に記載された事項により特定されるとおりのものである。
そして、補正発明1は、上記第2の2.のとおり、当業者が引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
また、補正発明1を直接又は間接的に引用する請求項2-7に係る発明は、補正発明1に係る発明をさらに限定した発明であるから、補正発明1と同様に、当業者が引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
したがって、本願については、原査定の拒絶理由を検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2016-09-26 
出願番号 特願2014-121991(P2014-121991)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (B24B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 橋本 卓行大山 健  
特許庁審判長 西村 泰英
特許庁審判官 栗田 雅弘
落合 弘之
発明の名称 渦電流監視用研磨パッド  
代理人 園田・小林特許業務法人  

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