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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C08L
管理番号 1319733
審判番号 不服2015-1399  
総通号数 203 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-11-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-01-26 
確定日 2016-09-23 
事件の表示 特願2013-253977「難燃化帯電防止性高分子複合材料および難燃化帯電防止性部材」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 6月22日出願公開、特開2015-113350〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成25年12月9日の出願であって、平成26年9月25日付けで拒絶理由が通知され、同年10月14日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成27年1月5日付けで拒絶査定がされ、同年1月26日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に明細書及び特許請求の範囲を補正する手続補正書が提出されたものである。

第2 本件補正について
平成27年1月26日に提出された手続補正書による手続補正(以下、「本件補正」という。)は、明細書及び特許請求の範囲についての補正であって、その内、特許請求の範囲についての補正は、特許法第17条の2第5項第4号の明りようでない記載の釈明を目的とするものであり、また、特許法第17条の2第3項及び第4項に規定する要件に違反するものではない。
さらに、本件補正の内、明細書についての補正は、特許請求の範囲の請求項1の記載を補正することに伴い、明細書の段落【0015】の記載を本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載と整合させるためのものであり、特許法第17条の2第3項及び第4項に規定する要件に違反するものではない。

よって、本件補正は、適法にされたものである。

第3 本願発明
本願の特許請求の範囲の請求項1ないし4に係る発明は、本件補正により補正された明細書及び特許請求の範囲並びに願書に最初に添付された図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりである。

「【請求項1】
熱重量減少の微分曲線において、180?300℃の温度範囲にピークを有さず、300?400℃の温度範囲にピークを有し、平均アスペクト比が5?100の範囲にある竹由来の粉末が10?60質量%、高分子材料が20?50質量%および難燃剤が10?60質量%の範囲でそれぞれの総和が100質量%からなる難燃化帯電防止性高分子複合材料。」

第4 引用文献の記載等
1 引用文献1の記載等
(1)引用文献1の記載
原査定の拒絶の理由で引用され、本願の出願前に日本国内において、頒布された刊行物である特開2013-127031号公報(公開日:平成25年6月27日、以下、「引用文献1」という。)には、「高分子複合材料用帯電防止剤および高分子複合材料ならびに高分子複合材料の製造方法」に関して、図面とともにおおむね次の記載(以下、順に「記載1a」ないし「記載1f」という。)がある。

1a 「【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱重量減少の微分曲線において、180?320℃の温度範囲にピークを有さず、300?400℃の温度範囲にピークを有する竹粉末からなる高分子複合材料用帯電防止剤。
・・・(略)・・・
【請求項3】
前記竹粉末の平均アスペクト比が5以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の高分子複合材料用帯電防止剤。
【請求項4】
請求項1?3のいずれか1項に記載の高分子複合材料用帯電防止剤と高分子材料を、10:90?80:20の質量比で配合した組成物から成形されることを特徴とする高分子複合材料。」(【特許請求の範囲】の【請求項1】ないし【請求項4】)

1b 「【0001】
本発明は、竹粉末の利用技術に関する。
【背景技術】
【0002】
化石資源の枯渇が懸念されるようになり、再生可能資源であるバイオマスへの希求が高まってきている。
植物由来のバイオマスは、セルロース繊維を組織構造の主成分として有しており、そのセルロース繊維の強度は極めて高く、従来からの繊維やロープなどの分野だけでなく、一般工業材料としての利用可能性を十分に秘めている(非特許文献1参照)。
このセルロース繊維を高分子材料の繊維強化材料として利用し、高分子材料の強度向上のみならず、バイオマスの利用率の向上にも役立てようとする取り組みが、自動車産業などで進んでいる。しかしながら、現状では、バイオマスから繊維構造成分を取り出すには、幾段階もの物理的および化学的処理を経ることが必要である。また、高分子材料との複合体である高分子複合材料(バイオマス強化コンポジット)は、化石資源由来の材料と比べて、必ずしも明確な優位性を持った性能や機能を発現しているとは言い難い。
【0003】
バイオマス強化コンポジットの利用展開において、住宅や自動車、家電、IT機器などの部材としての利用が検討されている。これらの一般工業製品用部材への展開においては、繊維強化による機械的強度のみならず、意匠性や帯電防止性が求められている。
【0004】
工業製品のなかでも、高分子材料を用いた部材の意匠性は極めて多種多様である。その理由は、高分子材料の優れた溶融成形性にあり、複雑な形状の部材を正確に効率的に大量生産できる点にある。この溶融成形性は、高分子材料、とりわけ熱可塑性樹脂の溶融流動性に依存しており、バイオマスなどの不融成分、特に繊維状の不融成分の共存は、この溶融成形性を著しく減退させる作用を持っている。したがって、高分子材料の持つ優位点である溶融成形性を損なうことなく、バイオマスの導入を図る方法の技術開発が活発に検討されている。
【0005】
高分子材料の帯電防止については多くの技術が開示されている。帯電とは、物体が電気を帯びる現象である。別の物体から電子を奪った場合には負に帯電し、逆の場合は正に帯電する。帯電したまま動かずにいる電気を静電気という。静電気はほこりの吸着、繊維製品や頭髪などの傷み、また放電による電子機器の破損、火災や爆発の危険など悪影響が大きいので、積極的な除去を必要とする。
導電性の低い物品は、帯電すると静電気を生じるが、すぐに放電すれば静電気を帯びた状態を解消することができる。導電性を高めることによって部材が静電気を帯びるのを防ぐために帯電防止剤が広く用いられる。
高分子材料へ帯電防止性を付与する技術としては、帯電防止剤を用いるものとして、1)金属粉、カーボンブラック等の導電性物質を混入する方法、および、2)界面活性剤の一種である帯電防止剤を塗布又は混入する方法があり、また帯電防止剤を用いないものとして、3)プラズマ処理等により表面を親水化する方法等がある。」(段落【0001】ないし【0005】)

1c 「【0027】
竹粉末は、平均アスペクト比が5以上であることが好ましく、10以上であることがより好ましく、15以上であることがさらに好ましい。平均アスペクト比の上限は特にないが、例えば最大100程度あれば十分である。
ここでアスペクト比は、長軸径/短軸径の比として表わされる。長軸径/短軸径の比は、繊維長/繊維径の比といってもよい。アスペクト比が大きいということは、より細長い繊維状の形態であることを意味している。平均スペクト比が所定の範囲内にある粉末の質量比率は、上記した長軸径が所定の範囲内にある粉末の質量比率の測定方法に準じて測定する。」(段落【0027】)

1d 「【0042】
本実施の形態例に係る竹粉末コンポジットは、合成木質素材として各種住宅建築資材類に、また、家電・IT機器類の各種部品や自動車内装品等の各種溶融成型体の用途に好適に用いることができる。」(段落【0042】)

1e 「【0055】
<帯電防止剤の熱重量(TG)分析>
製造実施例の帯電防止剤(竹粉末)および過熱水蒸気処理をしていない孟宗竹それぞれについて、セイコーインスツルメンツ株式会社製の熱重量分析計EXSTAR 6200 TG/DTAを用いて、竹成分の熱分解に伴う重量減少挙動を確認した。測定は、サンプル約2?4mgをアルミニウムパン(PN50-020 Alφ5 Pan)に取り、窒素気流(50mL/分)下、室温から550℃もしくは600℃まで昇温速度10℃/分で等速昇温して行った。結果を図5に示す。
図5から、水蒸気処理をしていない孟宗竹の熱重量減少微分曲線には180?320℃の温度範囲にヘミセルロース成分の熱分解に基づくピークと300?400℃の温度範囲にセルロース成分の熱分解に基づくピークの双方が観察されるのに対して、水蒸気処理した竹粉末2種類(235メッシュパス成分および235?140メッシュ間成分)の微分曲線には、300?400℃の温度範囲にセルロース成分の熱分解に基づくピークのみが観察された。」(段落【0055】)

1f 図5として、次の図面が記載されている。
「【図5】



(2)引用文献1の記載事項
記載1aないし1fから、引用文献1には、次の事項が記載されていると認める。

・記載1aによると、引用文献1には、「熱重量減少の微分曲線において、180?320℃の温度範囲にピークを有さず、300?400℃の温度範囲にピークを有し、平均アスペクト比が5以上である竹粉末からなる高分子複合材料用帯電防止剤」と「高分子材料」を配合した「組成物」が記載されている。

・記載1a、記載1e及び1fによると、引用文献1における「熱重量減少の微分曲線において、180?320℃の温度範囲にピークを有さず、300?400℃の温度範囲にピークを有し、平均アスペクト比が5以上である竹粉末からなる高分子複合材料用帯電防止剤」は180?320℃の温度範囲にピークを有さないことから、180?300℃の温度範囲にピークを有さないことは明らかである。したがって、引用文献1には、「熱重量減少の微分曲線において、180?300℃の温度範囲にピークを有さず、300?400℃の温度範囲にピークを有する竹粉末からなる高分子複合材料用帯電防止剤」が記載されている。

・記載1a及び記載1cによると、引用文献1には、竹粉末の平均アスペクト比が5?100の範囲にあることが記載されている。

(3)引用発明
したがって、記載1aないし1fを整理すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認める。

「熱重量減少の微分曲線において、180?300℃の温度範囲にピークを有さず、300?400℃の温度範囲にピークを有し、平均アスペクト比が5?100の範囲にある竹粉末からなる高分子複合材料用帯電防止剤と高分子材料を配合した組成物。」

2 引用文献2の記載
原査定の拒絶の理由で引用され、本願の出願前に日本国内において、頒布された刊行物である特開2002-256107号公報(以下、「引用文献2」という。)には、「難燃性セルロース系粉体含有複合樹脂成形体及びその製造方法」に関して、次の記載(以下、まとめて「引用文献2の記載」という。なお、下線は当審で付したものである。)がある。

・「【特許請求の範囲】
【請求項1】 ポリオレフィン(A)とセルロース系粉体(B)とをA:B=90?10:10?90の比率(質量比)で含有し、かつ、(A)+(B)の合計量100質量部に対して難燃剤を1?400質量部の割合で含有し、該難燃剤がポリオレフィン中に分散しており、及び/又はセルロース系粉体の仮導管内及び表面に担持されており、建築基準法施行令第1条第6号(難燃材料)の規定に基づく発熱性試験において、着火開始時間が加熱開始から30秒を超えることを特徴とする難燃性セルロース系粉体含有複合樹脂成形体。」(【特許請求の範囲】の【請求項1】)

・「【0002】
【従来の技術】従来からこの種のセルロース系粉体含有複合樹脂成形体の開発は種々行なわれ、特に充填材にセルロース系粉体を用いることは木屑、木質系建築廃材、古紙等の資源の再利用を図るために有効な方法である。また、セルロース系粉体含有複合樹脂成形体中のセルロース系粉体の割合を多くし、ポリオレフィンの割合を少なくすることが経済的に有利であり、さらに木粉が多くなるに従って、優れた木質感が得られる。このような組成のセルロース系粉体含有複合樹脂成形品は、例えば、特公昭59-30176号に開示されている。しかしながら、前記セルロース系粉体含有複合樹脂成形体においては、ポリオレフィンにセルロース系粉体が配合されているため、難燃性に劣り、火災が起こった際、延焼を抑制できないという問題がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、前記したような問題に鑑みなされたものであり、その目的は、母材樹脂がポリオレフィンからなる難燃性セルロース系粉体含有複合樹脂成形体において、建築基準法施行令第1条第6号(難燃材料)の規定に基づく発熱性試験の基準を充分に満たし、燃焼時の総発熱量及び発熱速度が小さく、火災が起こった際、延焼を抑制する効果がある難燃性セルロース系粉体含有複合樹脂成形体、及び該成形体を生産性よく低コストで製造できる方法を提供することにある。」(段落【0002】及び【0003】)

・「【0014】前記セルロース系粉体としては如何なるものであってもよく、例えば木粉、竹粉、パルプ、バカス、ケナフ、おが屑、木質繊維、籾殻、破砕チップ材、果実穀粉、古紙等が挙げられ、これらを単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。また、セルロース系粉体全てが仮導管を有することは必ずしも必要でなく、仮導管を有する少なくとも1種類のセルロース系粉体を含んでいればよい。このようなセルロース系粉体の中でも、特に木粉を用いることが好ましい。」(段落【0014】)

・「【0018】また、難燃剤の配合量が、ポリオレフィンとセルロース系粉体の合計量100質量部に対して1質量部よりも少なくなると、得られる複合樹脂成形体に充分な難燃性を付与できなくなり、一方、400質量部よりも多くなると、その分、添加するセルロース系粉体の割合が少なくなり、天然に近い木質感が損なわれるので好ましくない。」(段落【0018】)

・「【0026】実施例1
130℃における揮発成分を0.5質量%以内に調整した100メッシュを70質量%以上通過した木粉100部と、大和化学工業株式会社製難燃剤フランW-1218(水酸化マグネシウム25質量%、熱膨張性黒鉛50質量%、ポリリン酸メラミン25質量%からなる)200部を投入した後、約5分間ヘンシェルミキサーの攪拌羽根を回転させ、仮導管内に難燃剤を担持した木粉を得た。このフランW-1218担持木粉に、さらに、ポリプロピレン100部及び無水マレイン酸変性ポリプロピレン1部を加え、ヘンシェルミキサーで混練し、コンパウンドを得た。得られたコンパウンドをクラッシャーによって粉砕して粒径を調整した。粒径を調整したコンパウンドを、二軸押出機及び金型を用い、幅100mm、高さ10mmの板状に押出成形した。押出機の温度条件は、シリンダー温度185℃、金型温度185℃とした。この際、金型部での樹脂温度は185℃であった。185℃で成形された成形体を冷却金型で冷却し、形状を保持した。冷却金型から押出された直後の成形体の表面温度は約40℃であった。以上の方法により本発明に係る難燃性セルロース系粉体含有複合樹脂成形体を作製した。
【0027】実施例2?6
実施例1において、木粉を表1に記載したメッシュの配合に変更した以外は、実施例1と同様の押出条件及び操作を行なうことにより、本発明に係る難燃性セルロース系粉体含有複合樹脂成形体を作製した。(実施例2:10メッシュ90%、実施例3:20メッシュ80%、実施例4:60メッシュ60%、実施例5:150メッシュ80%、実施例6:200メッシュ90%)」(段落【0026】及び【0027】)

3 引用文献3の記載
原査定の拒絶の理由で引用され、本願の出願前に日本国内において、頒布された刊行物である特表2012-517510号公報(以下、「引用文献3」という。)には、「環境保護型セラミックス・プラスチック複合材料処方及びその製造方法」に関して、次の記載(以下、まとめて「引用文献3の記載」という。なお、下線は当審で付したものである。)がある。

・「【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性プラスチック、竹粉および/または木粉、可塑剤、内外潤滑剤、架橋結合調節剤、充填剤、難燃剤、顔料、さらにほこりを含める環境保護型セラミックス・プラスチック高分子複合材料。」(【特許請求の範囲】の【請求項1】)

・「【0006】
環境保護型セラミックス・プラスチック複合材料の処方は、重さに計量される以下の成分からなる。即ち、熱可塑性プラスチック10?70分、ほこり10?90分、竹粉および/または木粉0?40分、可塑剤0.5?2分、内外潤滑剤0.3?5分、架橋結合調節剤0.5?5分、充填剤0.1?2分、難燃剤0?15分、顔料が適量である。」(段落【0006】)

第4 対比
本願発明と引用発明を対比する。

引用発明における「竹粉末からなる高分子複合材料用帯電防止剤」は、その機能、構成または技術的意義からみて、本願発明における「竹由来の粉末」に相当する。
また、引用発明における「竹粉末からなる高分子複合材料用帯電防止剤と高分子材料を配合した組成物」は、「竹粉末からなる高分子複合材料用帯電防止剤」から由来する帯電防止性という機能を有することは明らかであるから、本願発明における「竹由来の粉末が10?60質量%、高分子材料が20?50質量%および難燃剤が10?60質量%の範囲でそれぞれの総和が100質量%からなる難燃化帯電防止性高分子複合材料」と、「竹由来の粉末と高分子材料を配合した帯電防止性高分子複合材料」という限りにおいて一致する。

したがって、両者は、
「熱重量減少の微分曲線において、180?300℃の温度範囲にピークを有さず、300?400℃の温度範囲にピークを有し、平均アスペクト比が5?100の範囲にある竹由来の粉末と高分子材料を配合した帯電防止性高分子複合材料。」
である点で一致し、次の点(以下、「相違点」という。)で相違する。

<相違点>
「竹由来の粉末と高分子材料を配合した帯電防止性高分子複合材料」に関して、本願発明においては、「難燃剤」を配合した「難燃化帯電防止性高分子材料」であり、且つ、「竹由来の粉末が10?60質量%、高分子材料が20?50質量%および難燃剤が10?60質量%の範囲でそれぞれの総和が100質量%」であるのに対し、引用発明においては、そのようなものではない点。

第5 相違点についての判断
そこで、相違点について、以下に検討する。

引用発明は、記載1dによると、各種住宅建築資材類、家電・IT機器類の各種部品及び自動車内装品の用途に用いるものであり、記載1bの「静電気はほこりの吸着、繊維製品や頭髪などの傷み、また放電による電子機器の破損、火災や爆発の危険など悪影響が大きいので、積極的な除去を必要とする。」(段落【0005】)によると、上記用途に用いる場合には、火災の危険がないようにする、すなわち燃えにくくするものであるし、そもそも、各種住宅建築資材類、家電・IT機器類の各種部品及び自動車内装品において、燃えにくくすることは、内在する課題である。
他方、引用文献2及び3の記載に示されるように、竹粉等のセルロース系粉体と高分子材料を配合した組成物において、難燃剤を配合することによって、難燃性という機能を付与することは、本願出願前に周知(以下、「周知技術」という。)である。
また、引用文献2には、難燃剤の配合量を充分な難燃性と天然に近い木質感を損なわないような配合量にすることが記載され(引用文献2の段落【0018】)、具体例として、木粉を100部、高分子材料であるポリプロピレンを100部及び難燃剤フランW-218を200部(それぞれの総和が100質量%となるような質量%で表現すると、それぞれ、25質量%、25質量%及び50質量%となり、これらの値は、本願発明における竹由来の粉末、高分子材料及び難燃剤のそれぞれの配合割合に含まれる。)とすることが記載されている(引用文献2の段落【0026】)。さらに、引用文献3において、配合割合を、竹粉を上限の40分、熱可塑性プラスチックを上限の70分及び難燃剤を上限の15分とした場合には、それぞれの総和が100質量%となるような質量%で表現して、難燃剤は12質量%となる。してみると、本願発明において特定されたような竹由来の粉末、高分子材料及び難燃剤のそれぞれの配合割合は、当業者が通常行う程度のものといえる。
そして、難燃剤を配合する際に、どの程度配合するかは、それによって生じるメリット及びデメリットを考慮して、また、引用発明が元来有する帯電防止性という機能が難燃剤を配合することによって、なるべく損なわれないように、当業者が適宜決めるべき設計的事項である。

したがって、引用発明において、周知技術を適用して、難燃剤を配合するようにし、その際、竹粉末からなる高分子複合材料用帯電防止剤が10?60質量%、高分子材料が20?50質量%及び難燃剤の配合量が10?60質量%の範囲でそれぞれの総和が100質量%となるようにして、相違点に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。

そして、引用発明において、周知技術を適用して、難燃剤を配合すれば、難燃性という機能を有することになり、また、難燃剤を配合する際に、引用発明が元来有する帯電防止性という機能がなるべく損なわれないように、帯電防止性と難燃性の双方の機能のバランスをとるのは当然であるから、本願発明を全体としてみても、本願発明は、引用発明及び周知技術からみて、格別顕著な効果を奏するともいえない。

よって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

第6 むすび
上記第5のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないので、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-07-25 
結審通知日 2016-07-26 
審決日 2016-08-08 
出願番号 特願2013-253977(P2013-253977)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (C08L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 安田 周史  
特許庁審判長 小柳 健悟
特許庁審判官 前田 寛之
加藤 友也
発明の名称 難燃化帯電防止性高分子複合材料および難燃化帯電防止性部材  
代理人 中前 富士男  

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