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審決分類 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A61K
管理番号 1319780
審判番号 不服2014-12998  
総通号数 203 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-11-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-07-04 
確定日 2016-09-21 
事件の表示 特願2010-270610「泌尿器系疾患を治療する医薬組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成24年6月21日出願公開、特開2012-116818〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 出願の経緯
本件特許出願は、平成22年12月3日に出願されたものであって、平成25年1月22日付けで拒絶理由が通知され、同年4月30日に意見書及び手続補正書が提出され、同年8月8日付けで拒絶理由が通知され、同年11月11日に意見書及び手続補正書が提出され、平成26年3月4日付けで拒絶査定され、同年7月4日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出され、同年8月21日付けで前置審査の結果が報告され、当審において、平成27年10月21日付けで拒絶理由が通知され、平成28年1月22日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

2 本件特許出願に係る発明
本件特許出願の請求項1?6に係る発明は、平成28年1月22日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?6にそれぞれ記載された事項により特定されるとおりのものであり、そのうち請求項1に係る発明は次のとおりのものである。

【請求項1】
活性炭ファイバー粉末であるカーボン材料と、
緩衝液である含水賦形剤と、を含み、
膀胱と接触することで、膀胱炎の症状を緩和させ、
前記カーボン材料は、銀である金属顆粒が結合されており、直径が20nm?2mmであることを特徴とする泌尿器系疾患を治療する医薬組成物。

3 記載要件についての判断
(1)請求項1に係る発明は、明細書の発明の詳細な説明における上記記載から見て、第2実施例に関するものと認められるところ、「銀である金属顆粒が結合され」た「活性炭ファイバー粉末であるカーボン材料」については、以下の記載があるのみである。
「カーボン材料は直径が2nm?2mmである銀……を含む金属顆粒と結合する。金属顆粒と結合したカーボン材料は、……」(【0008】)
「カーボン材料はさらに直径2nm?2mmの間の銀……を含む小顆粒金属顆粒と結合する。金属顆粒は、カーボン材料と金属顆粒との総質量の20質量%以下であり、第2実施例では、小顆粒金属がカーボン材料と金属顆粒との総質量の5質量%以下であることが好ましい。小顆粒金属がカーボン材料と結合した後、……」(【0014】)
「医薬組成物の……金属顆粒と結合したカーボン材料は、……」(【0016】)
「M3-3(LPS-ACF)組は本発明の第2実施例である。実施例で用いられた医薬組成物はナノレベルの金属顆粒とカーボン材料とを結合し、……」(【0029】)
「図12に示すように、M3-3(LPS-ACF)組のラットは、炎症誘導剤により炎症誘導後、銀を含む金属顆粒と結合したカーボン材料で治療されたため、……。よって、カーボン材料と銀を含む金属顆粒と結合して形成する医薬組成物は、……」(【0030】)
「上記実施例の泌尿器系統を治療する医薬組成物は、カーボン材料が直径2nm?2mmの銀……を含むナノレベルの金属顆粒と結合するものであり、……」(【0031】の3)
これらの記載からは、「カーボン材料」が「活性炭ファイバー粉末である」ことも明らかではないし、「銀である金属顆粒」がどのように「活性体ファイバー粉末」に結合されているのかも明らかにされておらず、請求項1に係る発明の医薬組成物の実体は不明である。

(2)ところで、明細書の発明の詳細な説明には、第2実施例に関連して、
「本発明の第2実施例の主要組成と効果は、第1実施例と相同であるため、詳述は行わない。」(【0014】)
「図10?12は、各組のラット膀胱のH&E染色病理組織切片である。主な実施方式は第1実施例と相同であるため、詳述は行わない。」(【0029】)
と記載されていることに鑑み、「カーボン材料」について第1実施例を参酌すると、以下の記載がある。
「カーボン材料は、粒状であり、カーボンファイバー(……)、活性炭ファイバー(……)、活性炭(……)、……の内の少なくとも一種を含む。その直径は20nm?2mmであり、比表面積値(……)は20m^(2)/g?4000m^(2)/gである。本実施例では、カーボン材料は、80質量%以上のカーボンを含む活性炭ファイバー(……)粉末、或いは活性炭(……)で構成されるもので、……」(第1実施例【0012】)
「図1?5に示すように、医薬組成物のカーボン材料は、活性炭ファイバー(……)を50μm?100μm含み、比表面積値(……)が200m^(2)/g?2000m^(2)/gの顆粒に研磨されるものである。」(【0017】)
これらの記載によれば、第2実施例における「カーボン材料」は「活性炭ファイバーを50μm?100μm含み、比表面積値が200m^(2)/g?2000m^(2)/gの顆粒に研磨され」たものと解する余地がある。

(3)しかしながら、「カーボン材料」すなわち「活性炭ファイバー粉末」(直径:20nm?2mm)と「銀である金属顆粒」(直径:2nm?2mm)をどのように結合するのかは第1実施例の記載を参酌しても不明であるから、結局、発明の詳細な説明には、請求項1に係る発明の「医薬組成物」(「銀である金属顆粒が結合され」た「活性炭ファーバー粉末であるカーボン材料」)についてどのようにして得ることができるのかは具体的には開示されていないといえる。
さらに、図12によりその効果が示されたM3-3(LPS-AFC)組のラットに適用された「銀を含む金属顆粒と結合したカーボン材料」は、「活性炭ファイバー粉末」の具体的な大きさや比表面積値等も、また「銀を含む金属顆粒」の大きさや結合量も不明であるから、どのような医薬組成物を使用すれば、明細書に開示された効果が得られるのか当業者には理解できないものと言える。

(4)そうすると、発明の詳細な説明は、当業者が請求項1に係る発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるということはできない。


4 むすび
以上のとおりであるから、本件特許出願は特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしておらず、したがって、この理由により本件特許出願は拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-04-19 
結審通知日 2016-04-26 
審決日 2016-05-09 
出願番号 特願2010-270610(P2010-270610)
審決分類 P 1 8・ 536- WZ (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 高橋 樹理  
特許庁審判長 大熊 幸治
特許庁審判官 松浦 新司
齊藤 光子
発明の名称 泌尿器系疾患を治療する医薬組成物  
代理人 服部 雅紀  

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