• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 特29条の2 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1319882
審判番号 不服2015-15575  
総通号数 203 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-11-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-08-21 
確定日 2016-09-29 
事件の表示 特願2013-262361「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 9月 4日出願公開、特開2014-158676〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成18年6月8日に出願した特願2006-159798号の一部を平成24年5月10日に新たな特許出願とした特願2012-108629号とし、さらにその一部を、平成25年12月19日に新たな特許出願としたものであって、平成26年7月22日に手続補正書が提出され、平成26年12月1日付けで拒絶の理由が通知され、平成27年1月29日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、同年6月4日付けで拒絶査定がなされ、それに対して、同年8月21日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に、明細書に係る手続補正がなされたものである。

第2 本願発明
平成27年8月21日付けの手続補正は、明細書に係るものであり、新規事項を追加するものではない。
よって、本願の請求項1?3に係る発明は、平成27年1月29日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?3に特定されたとおりであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものと認める。
「【請求項1】
遊技領域に設けられ遊技媒体が進入したときに予め定められた第1始動条件が成立する第1始動領域と、遊技領域に設けられ遊技媒体が進入したときに予め定められた第2始動条件が成立する第2始動領域と、前記第1始動条件が成立したことに基づいて第1識別情報の変動表示を行なって表示結果を導出表示する第1変動表示部と、前記第2始動条件が成立したことに基づいて第2識別情報の変動表示を行なって表示結果を導出表示する第2変動表示部とを備え、前記第1変動表示部または前記第2変動表示部に導出表示される表示結果が予め定められた特定表示結果となったときに遊技者にとって通常状態よりも有利な特定遊技状態に移行させる遊技機であって、
前記第1始動条件の成立後前記第1識別情報の変動表示の表示結果を導出表示する前に、前記第1変動表示部に前記特定表示結果を導出表示するか否かを決定し、前記第2始動条件の成立後前記第2識別情報の変動表示の表示結果を前記第2変動表示部に導出表示する前に、前記第2変動表示部に前記特定表示結果を導出表示するか否かを決定する事前決定手段と、
前記第1始動条件は成立しているが、前記第1識別情報の変動表示が開始されていない数を特定する第1特定手段と、
前記第2始動条件は成立しているが、前記第2識別情報の変動表示が開始されていない数を特定する第2特定手段と、
前記第1識別情報および前記第2識別情報のうちのいずれかの変動表示を開始する前に、当該変動表示を開始してから表示結果を導出表示するまでの変動時間を決定する変動時間決定手段と、
前記第1識別情報の変動表示に対応して、第1特別識別情報の変動表示を制御する第1変動表示制御手段と、
前記第2識別情報の変動表示に対応して、第2特別識別情報の変動表示を制御する第2変動表示制御手段と、
前記第1識別情報の変動表示および前記第2識別情報の変動表示に対応して、第3特別識別情報の変動表示を制御する第3変動表示制御手段とを備え、
前記変動時間決定手段は、前記第1特定手段により特定される数と前記第2特定手段により特定される数との合計数が所定数より多いときには、当該合計数が当該所定数以下であるときより短い変動時間を決定することを特徴とする、遊技機。」

第3 先願発明等
原査定の拒絶の理由に他の出願3として引用された、本願の遡及日前の他の特許出願であって、その遡及日後に出願公開がされた特願2006-134390号(特開2007-301240号公報参照。以下、「先願」という。)の願書に最初に添付した明細書又は図面(以下、「先願明細書等」という。)には、「遊技機」に関して、図面とともに以下の事項が記載されている(下線は審決で付した。以下同じ。)。

(1-a)「【0002】
例えばパチンコ遊技機においては、表示画面に複数の絵柄を変動表示する絵柄表示装置を備えたものが知られている。
・・・
【0004】
ところで、かかる構成の遊技機においては、保留記憶数が上限に達している状況下で遊技球が作動口を通過したとしても、新たに抽選情報等が保留記憶されない。このことは、作動口に遊技球を通過させたにも関わらず当該結果に基づいて当たり抽選が行われないこととなるため、遊技者の不利益に繋がる可能性が懸念される。一方、前記不利益を回避すべく保留記憶数が上限に達している状況下で遊技者が遊技球の発射を停止させた場合、パチンコ機を設置する遊技場にとっては稼動が低下することとなり、遊技場の不利益に繋がる可能性が懸念されることとなる。
【特許文献1】特開2004-81853号公報
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、遊技者と遊技場の双方に不利益が生じ難い遊技機を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下、上記課題を解決するのに有効な手段等につき、必要に応じて効果等を示しつつ説明する。なお以下においては、理解の容易のため、発明の実施の形態において対応する構成を括弧書き等で適宜示すが、この括弧書き等で示した具体的構成に限定されるものではない。
【0007】
手段1.遊技球が飛翔する遊技球飛翔領域を備えた遊技機本体(遊技盤30を含む本体枠12)と、前記遊技球飛翔領域に設けられると共に識別情報(LEDの表示色、図柄、貝キャラクタ)を変化表示する識別情報表示装置(第1特定ランプ部47、第2特定ランプ部48、図柄表示装置41)と、前記遊技球飛翔領域に設けられた作動口(作動口装置33)を遊技球が通過した場合、情報(大当たり乱数カウンタC1等のカウンタ値)を取得する情報取得手段(情報取得処理機能S206)と、前記情報取得手段が取得した情報に基づいて当たり外れの判定を行う判定手段(大当たり判定機能S1001)と、前記判定手段の判定結果に基づいて前記識別情報の変化表示を行うと共に、前記判定手段の判定結果が当たりの場合には特定識別情報(赤色又は緑色、同一主図柄の組み合わせ、貝殻部が開いた状態の貝キャラクタ)を最終停止表示するように、前記識別情報表示装置を表示制御する識別情報制御手段(特定ランプ部切り替え処理機能S805、S808、S809、表示制御装置214)と、前記判定手段の判定結果が当たりであって前記特定識別情報を最終停止表示した場合、遊技状態を通常遊技状態より遊技者に有利な特別遊技状態(大当たり状態)に移行させる特別遊技状態移行手段(大当たり状態処理S1201?S1209)と、前記情報取得手段の取得する情報を規定数(4個)を上限として保留記憶する保留記憶手段(保留球格納エリア)とを備えた遊技機において、前記遊技球飛翔領域に、前記作動口として少なくとも第1作動口(上側作動口33a)と第2作動口(下側作動口33b)を設け、前記保留記憶手段として、前記第1作動口を遊技球が通過した場合に前記情報取得手段が取得する情報を、前記規定数を上限として保留記憶する第1保留記憶手段(第1特定ランプ部用保留エリアRa)と、前記第2作動口を遊技球が通過した場合に前記情報取得手段が取得する情報を、第2規定数(4個)を上限として保留記憶する第2保留記憶手段(第2特定ランプ部用保留エリアRb)と、を設け、前記判定手段を、前記第1保留記憶手段又は前記第2保留記憶手段の保留記憶する情報を用いて前記当たり外れの判定を行う構成とし、さらに、前記各保留記憶手段の保留記憶数の総和(特定保留数)を把握する総保留数把握手段(特定保留数読み出し機能S1112)と、前記判定手段の判定結果と前記総保留数把握手段の把握結果とに基づいて、前記識別情報を最終停止表示させるまでの変化表示時間を決定する変化表示時間決定手段(完全外れにおける変動表示時間導出機能S1114)とを備えることを特徴とする遊技機。
【0008】
手段1によれば、遊技球飛翔領域には、作動口として少なくとも第1作動口と第2作動口が設けられており、第1作動口を遊技球が通過した場合には当たり外れの判定に用いる情報が規定数を上限として保留記憶され、第2作動口を遊技球が通過した場合には当たり外れの判定に用いる情報が第2規定数を上限として保留記憶される。かかる構成とすることにより、当たり外れの判定に用いる情報が保留記憶される数を実質的に増加させることが可能となる。故に、遊技者の不利益に繋がる機会が生じることを低減させると共に、遊技場の不利益に繋がる機会が生じることを低減させることが可能となる。
【0009】
また、各保留記憶手段の保留記憶数の総和に基づいて変化表示時間を決定する構成とすることにより、例えば各保留記憶手段の保留記憶数の総和に基づいて変化表示時間を短くすることが可能となり、各保留記憶手段の保留記憶数が上限に達しているにも関わらず識別情報の変化表示が長時間にわたって行われる機会を低減させることが可能となる。
【0010】
ここで、情報取得手段の取得する情報を第1保留記憶手段と第2保留記憶手段に保留記憶させる構成において、第1保留記憶手段の保留記憶する情報を用いて当たり外れの判定を行った場合には第1保留記憶手段の保留記憶数に基づいて変化表示時間を決定し、第2保留記憶手段の保留記憶する情報を用いて当たり外れの判定を行った場合には第2保留記憶手段の保留記憶数に基づいて変化表示時間を決定する構成とすることも可能である。しかしながら、かかる構成とした場合、保留記憶手段のそれぞれが保留記憶する数によって変化表示時間が長短入り乱れるといった機会が生じてしまう。そこで、各保留記憶手段の保留記憶数の総和に基づいて変化表示時間を決定する構成とすることにより、上述した懸念を回避することができる。
【0011】
以上の結果、遊技者の不利益又は遊技場の不利益に繋がる機会が生じることを低減させつつ、さらに、遊技者に違和感を抱かせない識別情報の変化表示を行うことが可能となる。」

(1-b)「【0065】
第1特定ランプ部47及び第2特定ランプ部48には、その内側に赤、緑、青の3色発光タイプのLEDが配設されている。各特定ランプ部47、48は、対応する作動口33a、33bへの入賞をトリガとして、所定の順序で発光色の切り替えが行われる。第1特定ランプ部47を例として具体的に説明すると、上側作動口33aへの入賞をトリガとして、赤色光が点灯され、その状態で所定時間が経過すると緑色光に発光色が切り替えられる。そして、緑色光が点灯された状態で前記所定時間が経過すると青色光に発光色が切り替えられる。その後、発光色の切り替え停止時期がくるまで、赤色、緑色、青色という順序で発光色の切り替えが繰り返し行われる。これにより、第1特定ランプ部47には、赤色、緑色、青色が、この順序で繰り返し表示されることとなる。そして、最終的に赤色又は緑色が停止表示された場合には、大当たり発生としてそれ以降の遊技状態が大当たり状態に移行し、青色が停止表示された場合には、大当たり発生とならず大当たり状態に移行しない。第2特定ランプ部48についても同様であり、下側作動口33bへの入賞をトリガとして、赤色、緑色、青色が、この順序で繰り返し表示されることとなる。そして、最終的に赤色又は緑色が停止表示された場合には、大当たり発生としてそれ以降の遊技状態が大当たり状態に移行し、青色が停止表示された場合には、大当たり発生とならず大当たり状態に移行しない。」

(1-c)「【0119】
・・・作動口装置33の上側作動口33aと対応する位置には当該上側作動口33aへの遊技球の入賞を検知する上側作動口スイッチ224aが設けられ、下側作動口33bと対応する位置には当該下側作動口33bへの遊技球の入賞を検知する下側作動口スイッチ224bが設けられている。」

(1-d)「【0191】
次いで、主制御装置271内のCPU501により実行される各制御処理を図28?図42のフローチャートを参照しながら説明する。
・・・
【0196】
ステップS201では、遊技球が上側作動口33aに入賞(始動入賞)したか否かを上側作動口スイッチ224aの検出情報により判別する。遊技球が上側作動口33aに入賞したと判別すると、ステップS202では、払出制御装置311に遊技球を3個払い出させるための賞球払出コマンドをセットする。続くステップS203では、上側作動口33aに遊技球が入賞したことを遊技ホール側の管理制御装置に対して信号出力すべく、外部信号設定処理を行う。ステップS204では、RAM503の第1特定ランプ部用保留エリアRaに保留記憶されている保留記憶数RaNをセットする。その後、ステップS205では、RAM503に設けられた作動口フラグ格納エリアに0をセットする。作動口フラグ格納エリアとは、いずれの作動口33a、33bに遊技球が入賞したのかを記憶するために用いられる格納エリアである。作動口フラグをセットした後、ステップS206では、大当たり乱数カウンタC1、大当たり種別カウンタC2及びリーチ乱数カウンタC3の各値を格納する情報取得処理を行い、本処理を終了する。
【0197】
ステップS201にて遊技球が上側作動口33aに入賞していないと判別した場合、ステップS207では、遊技球が下側作動口33bに入賞(始動入賞)したか否かを下側作動口スイッチ224bの検出情報により判別する。遊技球が下側作動口33bに入賞したと判別すると、ステップS208にて払出制御装置311に遊技球を5個払い出させるための賞球払出コマンドをセットする。続くステップS209では、RAM503に設けられた作動カウンタの値を1インクリメントする入賞球数記憶処理を行う。ステップS210では、下側作動口33bに遊技球が入賞したことを遊技ホール側の管理制御装置に対して信号出力すべく、外部信号設定処理を行う。ステップS211では、RAM503の第2特定ランプ部用保留エリアRbに保留記憶されている保留記憶数RbNをセットする。その後、ステップS212では、RAM503に設けられた作動口フラグ格納エリアに1をセットする。作動口フラグをセットした後、ステップS206にて情報取得処理を行い、本処理を終了する。
・・・
【0200】
ここで、ステップS206の情報取得処理を図30のフローチャートにより詳細に説明する。
【0201】
先ずステップS301では、上述したステップS204又はステップS211にてセットした保留記憶数N(RaN又はRbN)が上限値(本実施の形態では4)未満であるか否かを判別する。保留記憶数Nが上限値である場合にはそのまま本処理を終了し、上限値未満である場合には、ステップS302にて対応する特定ランプ部用保留エリアの保留記憶数Nを1インクリメントすると共に、ステップS303にて共通保留エリアCRの保留数CRNを1インクリメントする。続くステップS304では、作動口フラグ格納エリアに格納された値が0か否かを判別する。作動口フラグ格納エリアに格納された値が0でなく1である場合、遊技球が下側作動口33bに入賞したことを意味する。かかる場合にはステップS305に進み、共通保留エリアCRの保留数CRNと対応する記憶エリアに保留フラグとして1をセットする。
【0202】
一方、作動口フラグ格納エリアに格納された値が0である場合、遊技球が上側作動口33aに入賞したことを意味する。かかる場合には、共通保留エリアCRの保留数CRNと対応する記憶エリアに保留フラグをセットすることなくステップS306に進む。」

(1-e)「【0213】
次に、通常処理の流れを図33のフローチャートを参照しながら説明する。この通常処理では遊技の主要な処理が実行される。その概要として、ステップS601?S607の処理が4msec周期の定期処理として実行され、その残余時間でステップS609,S610のカウンタ更新処理が実行される構成となっている。
【0214】
通常処理において、ステップS601では、タイマ割込み処理又は前回の通常処理でセットしたコマンド等の出力データをサブ側の各制御装置に送信する。具体的には、入賞検知情報の有無を判別し、入賞検知情報があれば払出制御装置311に対して獲得遊技球数に対応する賞球払出コマンドを送信する。また、図柄表示装置41による図柄の変動表示に際しては停止図柄コマンド、変動パターンコマンド、変動終了コマンド等の表示コマンドを表示制御装置214に対して送信する。さらに、大当たり状態への移行に際しては状態移行コマンドを、可変入賞装置32の開閉に際しては開放コマンドや閉鎖コマンドを表示制御装置214に対して送信する。
・・・
【0227】
次に、前記ステップS605の特定ランプ部制御処理を図35?図39のフローチャートを参照して説明する。
【0228】
特定ランプ部制御処理において、ステップS801では、今現在の遊技状態が大当たり状態であるか否かを判別し、大当たり状態である場合にはそのまま本処理を終了する。大当たり状態でない場合には、ステップS802,S803にて第1特定ランプ部47又は第2特定ランプ部48が切り替え表示中であるか否かを判別する。いずれの特定ランプ部47,48も切り替え表示中でない場合(ステップS802,S803が共にNOの場合)にはステップS804に進み、共通保留エリアCRの保留数CRNが0か否かを判別する。そして、保留数CRNが0である場合には、そのまま本処理を終了する。一方、保留数CRNが0でない場合、第1特定ランプ部用保留エリアRa又は第2特定ランプ部用保留エリアRbの少なくとも一方に、大当たり乱数カウンタC1、大当たり種別カウンタC2及びリーチ乱数カウンタC3の各値が保留記憶されていることを意味する。かかる場合にはステップS805に進み、第1特定ランプ部47又は第2特定ランプ部48に表示される色の切り替えを開始する切り替え開始処理を実行する。つまり、第1特定ランプ部47の切り替え表示中に第2特定ランプ部48の切り替え表示が開始されることはなく、第2特定ランプ部48の切り替え表示中に第1特定ランプ部47の切り替え表示が開始されることもない。
【0229】
切り替え開始処理では、図36のフローチャートに示すように、ステップS901にて共通保留エリアCRのデータを右へ1ビットシフトする。すなわち、共通保留エリアCRの各記憶エリア(各ビット)に格納された値を下位ビット側へとシフトする。続くステップS902では、共通保留エリアCRのデータを右へ1ビットシフトさせた結果として保留フラグがあふれたか否か(キャリービット的な扱いとなるオーバーフロービットが0か1か)を判別する。ステップS901の処理を行った場合には第1エリアに格納された値があふれることとなるため、本実施の形態では、このときにあふれた値に基づいて切り替え表示を行うべき特定ランプ部を把握する。すなわち、ビット値が0であった場合(保留フラグがセットされていなかった場合)には、ステップS903?S909に示す第1特定ランプ部切り替え開始処理を行い、ビット値が1であった場合(保留フラグがセットされていた場合)には、ステップS910?S916に示す第2特定ランプ部切り替え開始処理を行う。
【0230】
第1特定ランプ部切り替え開始処理では、ステップS903にて第1特定ランプ部47に表示される色の切り替えを開始する。具体的には、表示される色の切り替え時期を判断するためのタイマをリセットし、さらに第1特定ランプ部47に配設されたLEDのスイッチを全てオフ制御した上で、赤色光源のスイッチをオン制御する。これにより、第1特定ランプ部47には、赤色が表示される。ステップS904では、第1特定ランプ部47の切り替え表示を開始することを示す第1コマンドを設定する。第1コマンドは表示制御装置214に対して送信されるものであり、表示制御装置214は、第1コマンドが受信されたことに基づいて第1副表示領域Gaの貝キャラクタを変動表示させる。ステップS905では、第1特定ランプ部用保留エリアRaの保留記憶数RaNを1ディクリメントする。続くステップS906では共通保留エリアCRの保留数CRNを1ディクリメントし、ステップS907ではこのときの保留数CRNを特定保留数として記憶する。ステップS908では、第1特定ランプ部用保留エリアRaの第1エリアに格納されたデータを実行エリアAEに移動する。
【0231】
第2特定ランプ部切り替え開始処理では、ステップS910にて第2特定ランプ部48に表示される色の切り替えを開始する。具体的には、表示される色の切り替え時期を判断するためのタイマをリセットし、さらに第2特定ランプ部48に配設されたLEDのスイッチを全てオフ制御した上で、赤色光源のスイッチをオン制御する。これにより、第2特定ランプ部48には、赤色が表示される。ステップS911では、第2特定ランプ部48の切り替え表示を開始することを示す第2コマンドを設定する。第2コマンドは表示制御装置214に対して送信されるものであり、表示制御装置214は、第2コマンドが受信されたことに基づいて第2副表示領域Gbの貝キャラクタを変動表示させる。ステップS912では、第2特定ランプ部用保留エリアRbの保留記憶数RbNを1ディクリメントする。続くステップS913では共通保留エリアCRの保留数CRNを1ディクリメントし、ステップS914ではこのときの保留数CRNを特定保留数として記憶する。ステップS915では、第2特定ランプ部用保留エリアRbの第1エリアに格納されたデータを実行エリアAEに移動する。」

(1-f)「【0234】
変動開始処理では、ステップS1001において、保留球格納エリアの実行エリアAEに格納されている大当たり乱数カウンタC1の値に基づいて大当たりか否かを判別する。より具体的には、大当たり乱数カウンタC1の値が、通常状態下で「337、673」のいずれかの場合に大当たりであると判別し、高確率状態下で「67、131、199、269、337、401、463、523、601、661」のいずれかの場合に大当たりであると判別する。
【0235】
大当たりであると判別した場合にはステップS1002に進み、保留球格納エリアの実行エリアAEに格納されている大当たり種別カウンタC2の値が25未満か否かを判別する。大当たり種別カウンタC2の値が25未満である場合には特定大当たりであることを意味する。そこで、ステップS1003では、現在切り替え表示を行っている特定ランプ部の最終表示色が赤色となるよう赤色表示フラグをセットし、ステップS1004では特定フラグをセットする。一方、大当たり種別カウンタC2の値が25以上である場合には非特定大当たりであることを意味する。かかる場合にはステップS1005に進み、現在切り替え表示を行っている特定ランプ部の最終表示色が緑色となるよう緑色表示フラグをセットする。」

(1-g)「【0242】
変動パターン決定処理について図39のフローチャートを用いて説明すると、ステップS1101では、保留球格納エリアの実行エリアAEに格納されているリーチ乱数カウンタC3の値に基づいてリーチ発生か否かを判別し、リーチ発生の場合、さらにステップS1102で、同じくリーチ乱数カウンタC3の値に基づいて前後外れリーチであるか否かを判別する。
・・・
【0246】
リーチ発生でない場合(ステップS1101がNOの場合)には、ステップS1110にてRAM503の完全外れ図柄バッファに格納されている上・中・下の各外れ図柄カウンタCU、CM、CLの値を参照し、ステップS1111では、参照した各値に基づいて、左ラインL1に停止表示させる図柄を示す停止図柄コマンドを各図柄列Z1?Z3についてそれぞれ設定する。続くステップS1112では特定保留数を読み出し、ステップS1113では現在の遊技状態を把握する。そして、ステップS1114では変動表示時間テーブルを参照し、変動表示時間を導出する。
【0247】
図40に示すように、変動表示時間テーブルには、特定保留数と変動表示時間との対応関係が遊技状態毎に定められている。遊技状態が通常状態の場合には、特定保留数が0?2であれば変動表示時間が7秒と定められており、特定保留数が3又は4であれば変動表示時間が4秒と定められており、特定保留数が5?7であれば変動表示時間が2秒と定められている。つまり、通常状態の場合、特定保留数が3個以上あれば3個未満のときより変動表示時間が短くなるように、さらに特定保留数が5個以上あれば5個未満のときより変動表示時間が短くなるように設定されている。また、遊技状態が高確率状態の場合には、特定保留数が0又は1であれば変動表示時間が7秒と定められており、特定保留数が2又は3であれば変動表示時間が4秒と定められており、特定保留数が4?7であれば変動表示時間が2秒と定められている。つまり、高確率状態の場合、特定保留数が2個以上あれば2個未満のときより変動表示時間が短くなるように、さらに特定保留数が4個以上あれば4個未満のときより変動表示時間が短くなるように設定されている。以上のとおり、本実施の形態では、完全はずれの場合、特定保留数が多くなるほど図柄の変動表示時間が短くなるように設定されている。
【0248】
変動表示時間を導出した後、ステップS1115では完全外れ変動パターン及び変動表示時間を示す完全外れ変動パターンコマンドを設定する。つまり、完全外れの場合には、大当たりの場合や外れリーチの場合と異なり、変動種別カウンタCSの値に基づいて完全外れ変動パターンを決定することなく完全外れ変動パターンコマンドを設定する。ステップS1109では、現在切り替え表示を行っている特定ランプ部の切り替え表示時間を計測するためのタイマに完全外れの場合の変動表示時間をセットし、本処理を終了する。」

(1-h)「【0260】
図35の説明に戻り、ステップS802,S803のいずれかがYESの場合、すなわち第1特定ランプ部47又は第2特定ランプ部48が切り替え表示中である場合にはステップS807に進み、先の変動開始処理S806にてセットした切り替え表示時間を経過したか否かを判別する。・・・
【0261】
ステップS807において切り替え表示時間を経過したと判別した場合には、ステップS809において切り替え終了処理を実行する。この切り替え終了処理は、最終表示させる色の光源をオン制御するための処理である。・・・
【0262】
なお、この特定ランプ部制御処理において設定された表示コマンド、具体的には、副表示コマンドとしての第1コマンド又は第2コマンド,各図柄列Z1?Z3の停止図柄コマンド,変動パターンコマンド,変動終了コマンドは、上述した図33の通常処理における外部出力処理S601において表示制御装置214に対して出力される。・・・変動表示時間(切り替え表示時間)を経過したタイミングで変動終了コマンドを出力するようになっている。」

(1-i)「【0276】
まずt0のタイミングで、主制御装置271は、第1特定ランプ部47に配設されたLEDのスイッチをオンオフ制御することにより、第1特定ランプ部47に表示される色の切り替え制御を開始すると共に、表示制御装置214に対して表示コマンドを出力する。そして、表示制御装置214は、当該表示コマンドに基づいて、上・中・下の各図柄列Z1?Z3の変動表示を開始させると共に、第1副表示領域Gaの貝キャラクタの変動表示を開始させるよう図柄表示装置41を表示制御する。但し、第2副表示領域Gbの貝キャラクタの変動表示は開始されない。これにより、上・中・下の各図柄列Z1?Z3の変動表示と、第1副表示領域Gaの貝キャラクタの変動表示と、第1特定ランプ部47に表示される色の切り替え表示とが開始されることとなる。・・・
【0277】
第2特定ランプ部48に表示される色の切り替え態様と、図柄表示装置41における図柄の変動表示、各副表示領域Ga、Gbにおける貝キャラクタの変動表示との関係は、第1副表示領域Gaの貝キャラクタではなく第2副表示領域Gbの貝キャラクタが変動表示されることを除き、第1特定ランプ部47の場合と同様である。また、第2特定ランプ部48の表示色の切り替え表示は、第1特定ランプ部47と同一の制御が行われる。」

(1-j)「【0316】
(e)上記実施の形態では、特定保留数が所定数ある場合に完全外れ変動の変動表示時間を短くする構成としたが、これに代えて又は加えて、特定保留数が所定数ある場合に大当たり変動の変動表示時間やリーチ変動の変動表示時間を短くする構成としても良い。」

(1-k) 上記(1-g)の段落【0242】には、「変動パターン決定処理について図39のフローチャートを用いて説明する」と記載されており、その後に続く変動パターン決定処理の説明として、段落【0246】には、「ステップS1112では特定保留数を読み出し、ステップS1113では現在の遊技状態を把握する。そして、ステップS1114では変動表示時間テーブルを参照し、変動表示時間を導出する。」との記載が、また、段落【0248】には、「変動表示時間を導出した後、・・・ステップS1109では、現在切り替え表示を行っている特定ランプ部の切り替え表示時間を計測するためのタイマに完全外れの場合の変動表示時間をセットし、本処理を終了する。」との記載が存在することから、主制御装置271は、変動開始処理において、特定保留数を読み出し、現在の遊技状態を把握し、その後変動表示時間テーブルを参照して、特定保留数と遊技状態とに基づいて変動表示時間を導出し、現在切り替え表示を行っている特定ランプ部の切り替え表示時間を計測するためのタイマに変動表示時間をセットする変動パターン決定処理を実行するものといえる。

(1-l) 上記(1-g)には、完全はずれの場合に特定保留数が所定数以上の場合に変動表示時間を短くする処理が記載されているが、(1-j)の記載事項を踏まえれば、先願明細書等には、特定保留数が所定数以上の場合に変動表示時間を短くする処理について、完全はずれの場合に限定しない態様が記載されているといえる。

(1-m) 上記(1-h)の段落【0260】-【0262】には、段落【0260】に「図35の説明に戻り」と記載されているとおり、特定ランプ部制御処理の説明がなされており、その説明内容として、段落【0260】には、「第1特定ランプ部47又は第2特定ランプ部48が切り替え表示中である場合にはステップS807に進み、先の変動開始処理S806にてセットした切り替え表示時間を経過したか否かを判別する。」との記載が、段落【0261】には、「ステップS807において切り替え表示時間を経過したと判別した場合には、ステップS809において切り替え終了処理を実行する。この切り替え終了処理は、最終表示させる色の光源をオン制御するための処理である」との記載が、また、段落【0262】には、「変動表示時間(切り替え表示時間)」との記載が存在する。
したがって、主制御装置271がタイマにセットした変動表示時間(切り替え表示時間)は、第1特定ランプ部47又は第2特定ランプ部48が切り替え表示中である場合に、前記変動表示時間が経過したか否かの判別に使用され、経過したと判別した場合に、最終表示される色の光源をオン制御する切り替え終了処理が実行されるものといえる。

(1-n) 図29には、始動入賞処理を示すフローチャートが開示されており、このフローチャートから、情報取得処理が、遊技球が上側作動口33a又は下側作動口33bに入賞したと判別した後のステップで実行されることが把握できる。

(1-o) 図33には、通常処理を示すフローチャートが開示されており、このフローチャートから、通常処理において、切り替え開始処理と変動開始処理を含む特定ランプ部制御処理が実行されることが把握できる。

(1-p) 図35には、特定ランプ部制御処理を示すフローチャートが開示されており、このフローチャートから、変動開始処理が切り替え開始処理に続いて実行されることが把握できる。

(1-q) 図37には、特定ランプ部制御処理において実行される変動開始処理の詳細を示すフローチャートが開示されており、このフローチャートから、変動開始処理において変動パターン決定処理が実行されることが把握できる。

上記(1-a)?(1-j)の記載事項及び(1-k)?(1-q)の認定事項を総合すると、先願明細書等には、次の発明が記載されていると認められる。(以下「先願発明」という。)
「遊技球飛翔領域に設けられ、遊技球が通過した場合に遊技球の入賞を検知する上側作動口スイッチ224aが対応する位置に設けられた上側作動口33aと、遊技球が通過した場合に遊技球の入賞を検知する下側作動口スイッチ224bが対応する位置に設けられた下側作動口33bと、上側作動口33aへの入賞をトリガとして、所定の順序で識別情報であるLEDの表示色(赤色、緑色、青色)の切り替えを行う第1特定ランプ部47と、下側作動口33bへの入賞をトリガとして、所定の順序で識別情報であるLEDの表示色(赤色、緑色、青色)の切り替えを行う第2特定ランプ部48とを備え、前記第1特定ランプ部47または前記第2特定ランプ部48に最終的に赤色又は緑色が停止表示された場合には、大当たり発生としてそれ以降の遊技状態が大当たり状態に移行する遊技機であって、
主制御装置271と、表示制御装置214とを備え、
主制御装置271は、切り替え開始処理とその処理に続いて実行される変動開始処理とを含む通常処理を実行し、
第1特定ランプ部47及び第2特定ランプ部48に表示される色の切り替えを開始する切り替え開始処理に続いて実行する変動開始処理において、第1特定ランプ部用保留エリアのデータと第2特定ランプ部用保留エリアのデータが格納された保留球格納エリアの実行エリアAEの大当たり乱数カウンタC1の値に基づいて大当たりか否かを判別し、大当たりであると判別した場合には大当たり種別カウンタC2の値が25未満か否かを判別し、大当たり種別カウンタC2の値が25未満である場合には、現在切り替え表示を行っている特定ランプ部の最終表示色が赤色となるよう赤色表示フラグをセットし、大当たり種別カウンタC2の値が25以上である場合には、現在切り替え表示を行っている特定ランプ部の最終表示色が緑色となるよう緑色表示フラグをセットする処理を実行すると共に、
遊技球の上側作動口33a又は下側作動口33bへの入賞を判別した後のステップで実行される情報取得処理において、対応する特定ランプ部(第1特定ランプ部又は第2特定ランプ部)用保留エリアの保留記憶数を1インクリメントすると共に、遊技球が下側作動口33bへの入賞が判別された場合、保留フラグとして1をセットし、遊技球が上側作動口33aへの入賞が判別された場合は保留フラグをセットせずに次のステップに進む処理を実行し、前記切り替え開始処理において、前記保留フラグがセットされていない場合には、第1特定ランプ部47に表示される色の切り替えを開始した後、表示制御装置214に対して送信される第1コマンドを設定し、第1特定ランプ部用保留エリアの保留記憶数を1ディクリメントすると共に、前記保留フラグがセットされていた場合は、第2特定ランプ部48に表示される色の切り替えを開始した後、表示制御装置214に対して送信される第2コマンドを設定し、第2特定ランプ部用保留エリアの保留記憶数を1ディクリメントする処理を実行し、
前記切り替え開始処理に続いて実行される変動開始処理において、変動表示時間テーブルを参照して変動表示時間を導出し、現在切り替え表示を行っている特定ランプ部の切り替え表示時間を計測するためのタイマに変動表示時間をセットする変動パターン決定処理を実行し、タイマにセットされた前記変動表示時間(切り替え表示時間)は、第1特定ランプ部47又は第2特定ランプ部48が切り替え表示中である場合に、前記変動表示時間が経過したか否かの判別に使用され、経過したと判別した場合に、最終表示される色の光源をオン制御する切り替え終了処理を実行し、
前回の通常処理において設定された上記第1コマンド、第2コマンドを含む表示コマンドを、次の通常処理において表示制御装置214に対して出力し、
表示制御装置214は、第1特定ランプ部47に表示される色の切り替え制御の開始と共に、主制御装置が出力する第1コマンドに基づいて、第1副表示領域Gaの貝キャラクタの変動表示を開始させ、
第2特定ランプ部48に表示される色の切り替え制御の開始と共に主制御装置が出力する第2コマンドに基づいて、第2副表示領域Gbの貝キャラクタの変動表示を開始させ、
第1特定ランプ部47に表示される色の切り替え制御の開始および第2特定ランプ部48に表示される色の切り替え制御の開始と共に主制御装置が出力する第1コマンド及び第2コマンドに基づいて、上・中・下の各図柄列Z1?Z3の変動表示を開始させ、
前記主制御装置271は、前記変動開始処理において、特定保留数を読み出して現在の遊技状態を把握し、その後、変動表示時間テーブルを参照して変動表示時間を導出するものであって、前記特定保留数は、第1特定ランプ部47用保留エリアの保留記憶数と前記第2特定ランプ部47用保留エリアの保留記憶数の総和であり、前記変動表示時間テーブルには、前記特定保留数と変動表示時間との対応関係が遊技状態毎に定められており、通常状態の場合、特定保留数が3個以上あれば3個未満のときより変動表示時間が短くなるように、さらに特定保留数が5個以上あれば5個未満のときより変動表示時間が短くなるように設定されている、遊技機。」

第4 対比
本願発明と先願発明とを対比する。

1 先願発明の「遊技球飛翔領域」及び「遊技球」は、本願発明の「遊技領域」及び「遊技媒体」に相当する。
また、先願発明の上側作動口33aは、対応する位置に設けられた上側作動口スイッチ224aが遊技球の入賞を検知し、上側作動口33aへの入賞をトリガとして(条件として)、その後のLEDの表示色の切り替え等を実行するものであるから、上側作動口33aに遊技球が進入したときに、その後の処理のための予め定められた条件が成立するものといえる。
したがって、先願発明の「上側作動口33a」は、本願発明の「第1始動領域」に相当する。
さらに、先願発明の下側作動口33bは、対応する位置に設けられた下側作動口スイッチ224bが遊技球の入賞を検知し、下側作動口33bへの入賞をトリガとして(条件として)、その後のLEDの表示色の切り替え等を実行するものであるから、下側作動口33bに遊技球が進入したときに、その後の処理のための予め定められた条件が成立するものといえる。
したがって、先願発明の「下側作動口33b」は、本願発明の「第2始動領域」に相当する。
よって、先願発明の「遊技球飛翔領域に設けられ、遊技球が通過した場合に遊技球の入賞を検知する上側作動口スイッチ224aが設けられた上側作動口33a」及び「遊技球が通過した場合に遊技球の入賞を検知する下側作動口スイッチ224bが設けられた下側作動口33b」はそれぞれ、本願発明の「遊技領域に設けられ遊技媒体が進入したときに予め定められた第1始動条件が成立する第1始動領域」及び「遊技領域に設けられ遊技媒体が進入したときに予め定められた第2始動条件が成立する第2始動領域」に相当する。

2 先願発明の第1特定ランプ部47は、上側作動口33aへの入賞をトリガとして(第1始動条件が成立したことに基づいて)、所定の順序で識別情報であるLEDの表示色(赤色、緑色、青色)の切り替え(第1識別情報の変動表示)を行い、最終的に停止表示させるものであるから、先願発明の「第1特定ランプ部47」、(第1特定ランプ部47の)「LEDの表示色の切り替え」がそれぞれ、本願発明の「第1変動表示部」、「第1識別情報の変動表示」に相当する。
また、先願発明の第2特定ランプ部48は、下側作動口33bへの入賞をトリガとして(第2始動条件が成立したことに基づいて)、所定の順序で識別情報であるLEDの表示色(赤色、緑色、青色)の切替(第2識別情報の変動表示)を行い、最終的に停止表示させるものであるから、先願発明の「第2特定ランプ部48」及び(第2特定ランプ部48の)「LEDの表示色の切り替え」がそれぞれ、本願発明の「第2変動表示部」及び「第2識別情報の変動表示」に相当する。
さらに、先願発明において、第1特定ランプ部47または前記第2特定ランプ部48は、最終的に赤色又は緑色が停止表示された場合には、大当たり発生としてそれ以降の遊技状態が大当たり状態に移行するものであるから、表示結果が、予め定められた特定表示結果である赤色又は緑色となったときに、遊技者にとって通常状態よりも有利な特定遊技状態に移行させるものといえる。
よって、先願発明の「上側作動口33aへの入賞をトリガとして、所定の順序で識別情報であるLEDの表示色(赤色、緑色、青色)の切り替えを行う第1特定ランプ部47と、下側作動口33bへの入賞をトリガとして、所定の順序で識別情報であるLEDの表示色(赤色、緑色、青色)の切り替えを行う第2特定ランプ部48とを備え、前記第1特定ランプ部47または前記第2特定ランプ部48に最終的に赤色又は緑色が停止表示された場合には、大当たり発生としてそれ以降の遊技状態が大当たり状態に移行する遊技機」は、本願発明の「前記第1始動条件が成立したことに基づいて第1識別情報の変動表示を行なって表示結果を導出表示する第1変動表示部と、前記第2始動条件が成立したことに基づいて第2識別情報の変動表示を行なって表示結果を導出表示する第2変動表示部とを備え、前記第1変動表示部または前記第2変動表示部に導出表示される表示結果が予め定められた特定表示結果となったときに遊技者にとって通常状態よりも有利な特定遊技状態に移行させる遊技機」に相当する。

3 先願発明の主制御装置271は、変動開始処理において、大当たりか否かを判別し、大当たりであると判別した場合には大当たり種別カウンタの値を判別し、判別結果によって特定ランプ部の最終表示色が赤色となる赤色表示フラグや最終表示色が緑色となる緑色表示フラグをセットする処理を実行するから、特定ランプ部に特定表示結果である赤色表示や緑色表示を最終表示するか否かを決定するものである。
また、変動開始処理は、特定ランプ部のLEDの表示色(赤色、緑色、青色)の切替を開始する切り替え開始処理に続いて実行される処理であり、前記特定ランプ部のLEDの表示色の切り替えは、遊技球の作動口33a,33bへの入賞をトリガとして実行されるものであるから、始動条件である作動口への入賞の成立後に実行される処理であるといえる。
さらに、前記変動開始処理の結果としてセットされる表示フラグは、現在切り替え表示を行っている特定ランプ部のLEDの最終表示色を決定するものであるから、前記変動開始処理は、切り替え表示が行われており表示結果が導出される前の段階で実行される処理であるといえる。
そして、大当たりか否かを判別するにあたり、第1特定ランプ部用保留エリアのデータと、第2特定ランプ部用保留エリアのデータの双方に基づいて判別を行っていることから、前記変動開始処理は、第1特定ランプ部への第1識別情報の表示と第2特定ランプ部への第2識別情報の表示の双方について実行される処理であるといえる。
したがって、先願発明は、本願発明の「前記第1始動条件の成立後前記第1識別情報の変動表示の表示結果を導出表示する前に、前記第1変動表示部に前記特定表示結果を導出表示するか否かを決定し、前記第2始動条件の成立後前記第2識別情報の変動表示の表示結果を前記第2変動表示部に導出表示する前に、前記第2変動表示部に前記特定表示結果を導出表示するか否かを決定する」点に相当する構成を有するものである。
よって、先願発明の「第1特定ランプ部47及び第2特定ランプ部48に表示される色の切り替えを開始する切り替え開始処理に続いて実行する変動開始処理において、第1特定ランプ部用保留エリアのデータと第2特定ランプ部用保留エリアのデータが格納された保留球格納エリアの実行エリアAEの大当たり乱数カウンタC1の値に基づいて大当たりか否かを判別し、大当たりであると判別した場合には大当たり種別カウンタC2の値が25未満か否かを判別し、大当たり種別カウンタC2の値が25未満である場合には、現在切り替え表示を行っている特定ランプ部の最終表示色が赤色となるよう赤色表示フラグをセットし、大当たり種別カウンタC2の値が25以上である場合には、現在切り替え表示を行っている特定ランプ部の最終表示色が緑色となるよう緑色表示フラグをセットする処理を実行する」主制御装置271は、本願発明の「前記第1始動条件の成立後前記第1識別情報の変動表示の表示結果を導出表示する前に、前記第1変動表示部に前記特定表示結果を導出表示するか否かを決定し、前記第2始動条件の成立後前記第2識別情報の変動表示の表示結果を前記第2変動表示部に導出表示する前に、前記第2変動表示部に前記特定表示結果を導出表示するか否かを決定する事前決定手段」に相当する。

4 先願発明の「第1特定ランプ部用保留エリアの保留記憶数」は、遊技球の上側作動口33aへの入賞を検知した(第1始動条件が成立した)と判別された場合に1インクリメントされ、第1特定ランプ部47のLEDの表示色の切り替えを開始すると、ディクリメントされることから、本願発明の「第1始動条件は成立しているが、第1識別情報の変動表示が開始されていない数」に相当する。
また、先願発明の「第2特定ランプ部用保留エリアの保留記憶数」は、遊技球の下側作動口33bへの入賞を検知した(第2始動条件が成立した)と判別された場合に1インクリメントされ、第2特定ランプ部48のLEDの表示色の切り替えを開始すると、ディクリメントされることから、本願発明の「第2始動条件は成立しているが、第2識別情報の変動表示が開始されていない数」に相当する。
よって、先願発明の「遊技球の上側作動口33a又は下側作動口33bへの入賞を判別した後のステップで実行される情報取得処理において、対応する特定ランプ部(第1特定ランプ部又は第2特定ランプ部)用保留エリアの保留記憶数を1インクリメントすると共に、遊技球が下側作動口33bへの入賞が判別された場合、保留フラグとして1をセットし、遊技球が上側作動口33aへの入賞が判別された場合は保留フラグをセットせずに次のステップに進む処理を実行し、前記切り替え開始処理において、前記保留フラグがセットされていない場合には、第1特定ランプ部47に表示される色の切り替えを開始した後、表示制御装置214に対して送信される第1コマンドを設定し、第1特定ランプ部用保留エリアの保留記憶数を1ディクリメントすると共に、前記保留フラグがセットされていた場合は、第2特定ランプ部48に表示される色の切り替えを開始した後、表示制御装置214に対して送信される第2コマンドを設定し、第2特定ランプ部用保留エリアの保留記憶数を1ディクリメントする処理を実行」する主制御装置271は、本願発明の「前記第1始動条件は成立しているが、前記第1識別情報の変動表示が開始されていない数を特定する第1特定手段」及び「前記第2始動条件は成立しているが、前記第2識別情報の変動表示が開始されていない数を特定する第2特定手段」に相当する。

5 先願発明の「第1副表示領域Gaの貝キャラクタの変動表示」は、識別情報である第1特定ランプ部47に表示される色の切り替え制御の開始と共に主制御装置が出力する第1コマンドに基づいて表示が開始されることから、第1識別情報の変動表示に対応して制御される第1特別識別情報の変動表示といえる。
また、先願発明の「第2副表示領域Gbの貝キャラクタの変動表示」は、識別情報である第2特定ランプ部48に表示される色の切り替え制御の開始と共に主制御装置が出力する第2コマンドに基づいて表示が開始されることから、第2識別情報の変動表示に対応して制御される第2特別識別情報の変動表示といえる。
さらに、先願発明の「上・中・下の各図柄列Z1?Z3の変動表示」は、第1特定ランプ部47に表示される色の切り替え制御の開始および第2特定ランプ部48に表示される色の切り替え制御の開始と共に主制御装置が出力する第1コマンド及び第2コマンドに基づいて表示が開始されることから、第1識別情報の変動表示および第2識別情報の変動表示に対応して制御される第3特別識別情報の変動表示といえる。
よって、先願発明の「第1特定ランプ部47に表示される色の切り替え制御の開始に対応した第1コマンドに基づいて、第1副表示領域Gaの貝キャラクタの変動表示を開始させ、第2特定ランプ部48に表示される色の切り替え制御の開始に対応した第2コマンドに基づいて、第2副表示領域Gbの貝キャラクタの変動表示を開始させ、第1特定ランプ部47に表示される色の切り替え制御の開始および第2特定ランプ部48に表示される色の切り替え制御の開始と共に主制御装置が出力する第1コマンド及び第2コマンドに基づいて、上・中・下の各図柄列Z1?Z3の変動表示を開始させる表示制御装置214」は、本願発明の「前記第1識別情報の変動表示に対応して、第1特別識別情報の変動表示を制御する第1変動表示制御手段」、「前記第2識別情報の変動表示に対応して、第2特別識別情報の変動表示を制御する第2変動表示制御手段」及び「前記第1識別情報の変動表示および前記第2識別情報の変動表示に対応して、第3特別識別情報の変動表示を制御する第3変動表示制御手段」に相当する。

6 先願発明の主制御装置271は、変動開始処理において変動表示時間を導出し、タイマにセットした前記変動表示時間が、第1特定ランプ部47又は第2特定ランプ部48が切り替え表示中である場合に、前記変動表示時間が経過したか否かが判別され、経過したと判別した場合に、最終表示される色の光源をオン制御する切り替え終了処理を実行するものであるから、第1特定ランプ部47のLEDの表示色および第2特定ランプ部48のLEDの表示色の切り替えについて、切り替え開始から最終表示結果を導出表示するまでの変動時間を決定するものといえる。
また、本願発明は、変動時間決定手段が変動表示を開始する前に変動時間を決定するものであるが、先願発明は、変動表示を開始する切り替え開始処理に続いて実行される変動開始処理において変動表示時間を導出し、前記変動開始処理において設定された前記第1コマンド及び第2コマンドを次の通常処理で送信し、表示制御装置214が、送信された前記コマンドに基づいて、第1副表示領域Gaの貝キャラクタ、第2副表示領域Gbの貝キャラクタ及び上・中・下の各図柄列Z1?Z3の変動表示を開始するものであるから、第1識別情報および第2識別情報のうちのいずれかの変動表示を開始した後に変動表示時間を決定し、その後、第1特別識別情報、第2特別識別情報及び第3特別識別情報の変動表示を開始するものといえる。
よって、先願発明の「前記切り替え開始処理に続いて実行される変動開始処理において、変動表示時間テーブルを参照して変動表示時間を導出し、現在切り替え表示を行っている特定ランプ部の切り替え表示時間を計測するためのタイマに変動表示時間をセットする変動パターン決定処理を実行し、タイマにセットされた前記変動表示時間(切り替え表示時間)は、第1特定ランプ部47又は第2特定ランプ部48が切り替え表示中である場合に、前記変動表示時間が経過したか否かの判別に使用され、経過したと判別した場合に、最終表示される色の光源をオン制御する切り替え終了処理を実行し、前回の通常処理において設定された上記第1コマンド、第2コマンドを含む表示コマンドを、次の通常処理において表示制御装置214に対して出力」する主制御装置271と、本願発明の「前記第1識別情報および前記第2識別情報のうちのいずれかの変動表示を開始する前に、当該変動表示を開始してから表示結果を導出表示するまでの変動時間を決定する変動時間決定手段」とは、「前記第1識別情報および前記第2識別情報のうちのいずれかの変動表示を開始してから、当該変動表示を開始してから表示結果を導出表示するまでの変動時間を決定する変動時間決定手段」である点で共通している。

7 上記「4」において検討したとおり、先願発明の「第1特定ランプ部47用保留エリアの保留記憶数」及び「第2特定ランプ部48用保留エリアの保留記憶数」はそれぞれ、本願発明の「第1始動条件は成立しているが、第1識別情報の変動表示が開始されていない数」及び「第2始動条件は成立しているが、第2識別情報の変動表示が開始されていない数」に相当するものであるから、本願発明の「前記第1特定手段により特定される数」及び「前記第2特定手段により特定される数」に相当するものといえる。
また、先願発明の主制御装置271は、前記保留記憶数の総和である特定保留数を読み出して現在の遊技状態を把握するものであるから、「第1特定手段により特定される数と第2特定手段により特定される数との合計数」を読み出すものである。
さらに、先願発明の変動表示時間テーブルには、前記特定保留数と変動表示時間との対応関係が、特定保留数が3個以上あれば3個未満のときより変動表示時間が短くなるように、さらに特定保留数が5個以上あれば5個未満のときより変動表示時間が短くなるように設定されていることから、先願発明の主制御装置271は、「前記合計数が所定数より多いときには、当該合計数が当該所定数以下であるときより短い変動時間を決定する」ものといえる。
よって、先願発明の「主制御装置271」が「前記変動開始処理において、特定保留数を読み出して現在の遊技状態を把握し、その後、変動表示時間テーブルを参照して変動表示時間を導出するものであって、前記特定保留数は、第1特定ランプ部47用保留エリアの保留記憶数と前記第2特定ランプ部47用保留エリアの保留記憶数の総和であり、前記変動表示時間テーブルには、前記特定保留数と変動表示時間との対応関係が遊技状態毎に定められており、通常状態の場合、特定保留数が3個以上あれば3個未満のときより変動表示時間が短くなるように、さらに特定保留数が5個以上あれば5個未満のときより変動表示時間が短くなるように設定されている」点は、本願発明の「変動時間決定手段」が、「第1特定手段により特定する数と第2特定手段により特定される数との合計数が所定数より多いときには、当該合計数が当該所定数以下であるときより短い変動時間を決定する」点に相当する。

8 以上、1?7の検討を踏まえると、本願発明と先願発明とは、
「遊技領域に設けられ遊技媒体が進入したときに予め定められた第1始動条件が成立する第1始動領域と、遊技領域に設けられ遊技媒体が進入したときに予め定められた第2始動条件が成立する第2始動領域と、前記第1始動条件が成立したことに基づいて第1識別情報の変動表示を行なって表示結果を導出表示する第1変動表示部と、前記第2始動条件が成立したことに基づいて第2識別情報の変動表示を行なって表示結果を導出表示する第2変動表示部とを備え、前記第1変動表示部または前記第2変動表示部に導出表示される表示結果が予め定められた特定表示結果となったときに遊技者にとって通常状態よりも有利な特定遊技状態に移行させる遊技機であって、
前記第1始動条件の成立後前記第1識別情報の変動表示の表示結果を導出表示する前に、前記第1変動表示部に前記特定表示結果を導出表示するか否かを決定し、前記第2始動条件の成立後前記第2識別情報の変動表示の表示結果を前記第2変動表示部に導出表示する前に、前記第2変動表示部に前記特定表示結果を導出表示するか否かを決定する事前決定手段と、
前記第1始動条件は成立しているが、前記第1識別情報の変動表示が開始されていない数を特定する第1特定手段と、
前記第2始動条件は成立しているが、前記第2識別情報の変動表示が開始されていない数を特定する第2特定手段と、
前記第1識別情報および前記第2識別情報のうちのいずれかの変動表示結果を導出表示するまでの変動時間を決定する変動時間決定手段と、
前記第1識別情報の変動表示に対応して、第1特別識別情報の変動表示を制御する第1変動表示制御手段と、
前記第2識別情報の変動表示に対応して、第2特別識別情報の変動表示を制御する第2変動表示制御手段と、
前記第1識別情報の変動表示および前記第2識別情報の変動表示に対応して、第3特別識別情報の変動表示を制御する第3変動表示制御手段とを備え、
前記変動時間決定手段は、前記第1特定手段により特定される数と前記第2特定手段により特定される数との合計数が所定数より多いときには、当該合計数が当該所定数以下であるときより短い変動時間を決定する遊技機。」である点で一致し、以下の点で一応相違する。

[相違点]
「変動時間決定手段」に関して、本願発明は、「第1識別情報および第2識別情報のうちのいずれかの変動表示を開始する前に、当該変動表示を開始してから表示結果を導出表示するまでの変動時間を決定する」構成を有するのに対して、先願発明は、第1識別情報および第2識別情報のうちのいずれかの変動表示を開始した後に、当該変動表示を開始してから表示結果を導出表示するまでの変動時間を決定する点。

第5 判断
上記[相違点]が、実質的な相違点といえるか否かについて検討する。

先願発明は、上記「第4 対比」の「6」で検討したとおり、主制御装置271が、第1識別情報および第2識別情報の変動表示を開始した後に変動時間を決定し、その後、表示制御装置214が、第1特別識別情報、第2特別識別情報、第3特別識別情報の変動表示を開始するものである。
一方、先願明細書の段落【0276】及び図43からは、変動時間の決定前に主制御装置271が実行する第1識別情報の変動表示と、変動時間の決定後に表示制御装置214が実行する第1特別識別情報及び第3特別識別情報の変動表示が、同じタイミングで開始されることが把握できる。(段落【0277】によれば、第2識別情報の変動表示についても、第1識別情報と同一の制御が行われる。)
また、先願明細書の段落【0213】及び図33によれば、先願発明における第1識別情報(第2識別情報)の変動表示開始と変動時間の決定を含む通常処理は、最長4msec以内に実行されるものである。
以上を踏まえると、先願発明における第1識別情報(第2識別情報)の変動表示開始、変動時間の決定、第1特別識別情報(第2特別識別情報)及び第3特別識別情報の変動表示開始は、主制御装置271及び表示制御装置214における処理としては順序が存在するものの、この処理はコンピュータ内で電気信号により瞬時に実行されるものであり、実質的に同じタイミングで実行されるものといえる。
したがって、先願発明における第1識別情報(第2識別情報)の変動表示開始から変動時間の決定までの時間差はほぼ無いに等しく、変動時間の決定後に第1識別情報および第2識別情報のいずれかの変動表示を開始する本願発明の構成との間に、効果上の差異は無い。
さらに、一般的な遊技機における始動口の入賞から変動開始までの全ての処理は、電気信号により瞬時に実行されるものであり、変動表示の開始と変動時間の決定のどちらを先に処理した場合も、始動口に入賞した直後に各種識別情報の変動表示が開始される点で、差異の無いものである。
してみると、先願発明と本願発明との上記[相違点]は、実質的な相違点とはいえない。
よって、先願発明と本願発明は、実質的に同一である。

以上のとおり、先願発明と本願発明との間に、実質的な差異は無いが、仮に先願発明と本願発明との間に差異があるとした場合について、以下に検討する。
先願発明は、「第1保留記憶手段と第2保留記憶手段を備えた遊技機において、それぞれが保留記憶する数によって変化表示時間が長短入り乱れることによる遊技者の違和感をなくす」という課題を有しており(段落【0004】-【0006】、【0010】及び【0011】参照)、この課題は、「複数の変動表示手段を備えた遊技機において、それぞれの変動表示手段毎に変動時間が異なってしまうことによる遊技者の違和感をなくす」という本願発明の課題と同一のものである。
また、先願発明の上記課題は、本願発明と同様、個々の保留記憶の和ではなく保留記憶の総和に基づいて変動時間を決定することにより解決されるものであり、上記[相違点]に係る「変動時間を決定する」構成は、先願発明の課題の解決に関連するものとなっている。
そして、上記課題の解決にあたっては、変動時間を、変動表示の開始前に決定する方法と開始後に決定する方法が考えられるところ、先願発明は、その課題を解決するための一実施の形態として、変動表示の開始後に変動時間を決定する方法を選択したものである。
さらに、複数の識別情報を変動表示させる遊技機において、いずれかの識別情報の変動表示を開始する前に、当該変動表示を開始してから表示結果を導出表示するまでの変動時間を決定する本願発明と同様の構成は、遊技機の変動表示制御においてごく当たり前に実施される周知慣用の事項であり(例えば、本願の遡及日前に頒布された特開2005-348880号公報の段落【0183】、【0225】、【0233】、【0234】、【0254】、図18及び図19には、「第1及び第2特別図柄の変動表示に対応したコマンドに基づいて第1及び第2飾り図柄を変動表示させる遊技機において、前記特別図柄を変動表示させる前に、変動時間が特定される変動パターンを選択決定し、その後の処理で前記特別図柄の変動表示をすること」が記載され、特開2006-51238号公報の段落【0080】、【0081】、【0120】、【0123】-【0127】、【0145】、図7及び図8には、「第1及び第2特別図柄を変動表示させる特図ゲームの実行に合わせて第1及び第2飾り図柄を変動表示させる遊技機において、特図ゲームの開始前に変動時間を決定し、その後の処理で、第1及び第2特別図柄を変動表示させる特図ゲームを開始すること」が記載され、特開2006-122341号公報の段落【0106】-【0109】、【0112】、図20及び図23には、「特別図柄の変動表示に対応したコマンドに基づいて、3つのキャラクタ図柄及び第4図柄を変動・停止表示させる遊技機において、特別図柄の変動時間が変動パターンに応じて予め定められており、特別図柄の変動表示開始前に変動パターンを決定する処理を行い、その後の処理で、特別図柄の変動処理を開始すること」が記載されている。)、本願発明においてこの構成を採用することにより、新たな効果を奏するものでもない。
よって、仮に、先願発明と本願発明との間に差異があったとしても、上記[相違点]に係る構成は、先願発明の課題解決のための具体化手段における微差であって、先願明細書等に記載されているに等しい事項といえるから、先願発明と本願発明は、実質的に同一である。

また、請求人は、平成27年8月21日付け審判請求書において、『本願発明においては、変動表示させる情報として、「第1識別情報」、「第2識別情報」、および「第3特別識別情報」が存在するとともに(構成Aおよび構成H参照)、「第1特別識別情報」、および「第2特別識別情報」も存在します(構成Fおよび構成G参照)。 他の出願3には、変動表示させる情報として、少なくとも本願発明の「第1特別識別情報」、および「第2特別識別情報」が存在することは記載されていません。』と主張しているが、上記「第4 対比」の「5」で検討したとおり、先願発明の「第1副表示領域Gaの貝キャラクタの変動表示」は、第1識別情報の変動表示(第1特定ランプ部47のLEDの表示色の切り替え)に対応して制御される第1特別識別情報の変動表示といえ、また、「第2副表示領域Gbの貝キャラクタの変動表示」は、第2識別情報の変動表示(第2特定ランプ部48のLEDの表示色の切り替え)に対応して制御される第2特別識別情報の変動表示といえ、さらに、「上・中・下の各図柄列Z1?Z3の変動表示」は、第1識別情報の変動表示および第2識別情報の変動表示に対応して制御される第3特別識別情報の変動表示といえるから、請求人の上記主張は採用できない。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明は先願発明と実質的に同一であり、かつ、本願発明の発明者が先願発明の発明者と同一の者であるとも、また、本願の出願時に、その出願人が先願発明の出願人と同一の者であるとも認められないから、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-07-13 
結審通知日 2016-07-19 
審決日 2016-08-17 
出願番号 特願2013-262361(P2013-262361)
審決分類 P 1 8・ 16- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 田中 洋行  
特許庁審判長 平城 俊雅
特許庁審判官 清藤 弘晃
長崎 洋一
発明の名称 遊技機  
代理人 特許業務法人深見特許事務所  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ