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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G01N
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01N
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 G01N
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 G01N
管理番号 1320001
審判番号 不服2014-21259  
総通号数 203 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-11-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-10-21 
確定日 2016-10-14 
事件の表示 特願2009-194357「色彩選別機及び色彩選別機の運転制御方法」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 3月10日出願公開、特開2011- 47692〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件に係る特許出願(以下、「本願」という。)は、平成21年8月25日の出願であって、その手続の経緯の概略は以下のとおりである。
平成25年 7月18日付け:拒絶理由の通知(同年同月23日発送)
平成25年 9月 2日 :意見書、手続補正書の提出
平成26年 2月26日付け:拒絶理由の通知(同年3月4日発送)
平成26年 5月 1日 :意見書、手続補正書の提出
平成26年 7月24日付け:平成26年5月1日の手続補正についての補正却下の決定、拒絶査定(同年7月29日送達)
平成26年10月21日 :審判請求書、手続補正書の提出
平成26年12月16日 :前置報告
平成27年 3月24日 :上申書の提出

第2 補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成26年10月21日に提出された手続補正書による補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。(下線部は、請求人が付したものであり、補正箇所を示す。)
「被選別物を送り出すフィーダと、
前記フィーダに前記被選別物を供給する供給筒と、
前記フィーダより送り出された前記被選別物を流下させる複数の溝からなるシュートと、
前記シュートの下端部に設けられた、各素子が前記シュートの各溝に対応するように割り当てられたカメラを用いた判別センサと、
前記シュートの各溝に対応するように割り当てられた、空気を噴射して不良品を選別する複数の空気噴射口および複数の弁が設けられた空気噴射装置と、
前記判別センサの判別結果に基づいて対応する前記弁を開閉制御する弁制御手段とを備えた色彩選別機において、
前記空気噴射装置は、
正面上部に前記空気噴射口を設けた縦長の筐体と、前記筐体の背面に設けた電磁弁を備えるとともに、前記空気噴射口の背面側の位置において支持部材で支持されることによって前記色彩選別機に固定されたものであり、
さらに前記空気噴射装置の動作異常を検査する異常検査手段を備え、
前記異常検査手段は、
前記支持部材に設置した振動センサと、
前記カメラの前面を左から右または/および右から左に順次移動することによって前記各素子を遮蔽する遮蔽材を備えており、
前記遮蔽材が前記各素子を遮蔽することにより、前記弁制御手段によって前記各弁を開閉制御させて前記空気噴射口から圧縮空気を噴射させ、
前記空気噴射口から噴射される圧縮空気の振動を前記振動センサによって電圧値または電流値に変換するとともに、前記電圧値または前記電流値のピーク値(デジタル信号)を取得し、
前記ピーク値と予め記憶しておいたしきい値とを比較することによって、
前記ピーク値が前記しきい値以下である場合に前記空気噴射装置の動作異常が発生していることを検査するように構成されていることを特徴とする色彩選別機。」(以下、「本件補正発明」という。)

(2)本件補正前の特許請求の範囲の記載
本件補正前の、平成25年9月2日の手続補正による特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「被選別物を送り出すフィーダと、
前記フィーダに前記被選別物を供給する供給筒と、
前記フィーダより送り出された前記被選別物を流下させるシュートと、
前記シュートの下端部に設けた判別センサと、
空気を噴射して不良品を選別する空気噴射口と弁が設けられた空気噴射装置と、
前記判別センサの判別結果に基づいて前記弁を開閉制御する弁制御手段とを備えた色彩選別機において、
前記空気噴射装置の支持部材に設置された、前記空気噴射装置の動作異常を検査する異常検査手段が設けられていることを特徴とする色彩選別機。」

(3)新規事項について
本件補正は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である
「シュート」について、「複数の溝からなるシュート」と、
「判別センサ」について、「各素子が前記シュートの各溝に対応するように割り当てられたカメラを用いた判別センサ」と、
「空気噴射装置」について、「前記シュートの各溝に対応するように割り当てられた、空気を噴射して不良品を選別する複数の空気噴射口および複数の弁が設けられた空気噴射装置」、「正面上部に前記空気噴射口を設けた縦長の筐体と、前記筐体の背面に設けた電磁弁を備えるとともに、前記空気噴射口の背面側の位置において支持部材で支持されることによって前記色彩選別機に固定されたものであり、さらに前記空気噴射装置の動作異常を検査する異常検査手段を備え、」と、
「弁制御手段」について、「前記判別センサの判別結果に基づいて対応する前記弁を開閉制御する弁制御手段」と、
「異常検査手段」について、「前記支持部材に設置した振動センサと、前記カメラの前面を左から右または/および右から左に順次移動することによって前記各素子を遮蔽する遮蔽材を備えており、前記遮蔽材が前記各素子を遮蔽することにより、前記弁制御手段によって前記各弁を開閉制御させて前記空気噴射口から圧縮空気を噴射させ、前記空気噴射口から噴射される圧縮空気の振動を前記振動センサによって電圧値または電流値に変換するとともに、前記電圧値または前記電流値のピーク値(デジタル信号)を取得し、前記ピーク値と予め記憶しておいたしきい値とを比較することによって、前記ピーク値が前記しきい値以下である場合に前記空気噴射装置の動作異常が発生していることを検査するように構成されている」と、補正しようとするものである。
しかしながら、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲には、「空気噴射装置」が「縦長の筐体」を備えるものである点について記載はない。
また、願書に最初に添付した図面第2図には、「空気噴射装置11」全体が記載されているが、明らかに縦寸法より横寸法の方が大きい。一般に、縦長とは「横よりも縦に長いさま」を意味するものであるから(株式会社岩波書店 広辞苑第六版より)、前記第2図に記載された「空気噴射装置11」の筺体が縦長とは認められない。
そして、本件補正により追加された、「空気噴射装置」が「縦長の筐体」を備えるものである点で新たな技術事項を導入するものであるから、本件補正は,願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「本願明細書等」という。)に記載された事項の範囲内においてしたものでなく、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

2 本件補正発明の独立特許要件についての検討
「空気噴射装置」が「縦長の筐体」を備える点については、上記のとおり本願明細書等に記載はないが、請求人は、上申書にて「請求項1に係る発明の「正面上部に前記空気噴射口を設けた縦長の筐体」を「正面上部に前記空気噴射口を設けた横長の筐体」に補正する意向を」示していることから、仮に、「縦長の筐体」を「横長の筐体」と解釈し、本件補正が特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するとして、以下、本件補正発明が、特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるかについて検討する。

(1)引用例1に記載の事項
原査定の拒絶の理由で引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である、特開平11-267596号公報(平成11年10月5日出願公開。以下、「引用例1」という。)には、図面とともに、次の記載がある(なお、下線は、当審が付した。以下、同様。)

「【0013】
【発明の実施の形態】以下、本発明の粒状体検査装置の実施形態を、玄米や精米等の米粒群からなる粒状体群を検査対象物として予定移送経路に沿って移送しながら、不良物の検出及び除去を行う場合について図面に基づいて説明する。
【0014】図1?図3(尚、図3は、不良物の検出及び除去の動作説明図であるために、図1及び図2とは装置構成の配置が異なる箇所がある)に示すように、幅方向全幅に亘って平坦な案内面が形成された板状のシュータ1が、水平面に対して所定角度(例えば60度)に傾斜されて設置され、このシュータ1の上部側に設けた貯溜タンク7からフィーダ9によって搬送・供給された米粒群kが、シュータ1の上面を一層状態で横方向に広がった状態で流下案内されている。つまり、上記シュータ1の上面及びその下端からの流下経路が予定移送経路を形成している。尚、ここでは、一層状態で移送させることを目的としているので、流れ状態により部分的に粒が重なっても、一層状態の概念に含まれる。
【0015】貯溜タンク7には、外部の精米機等から供給される検査対象物や、その外部からの検査対象物を1次選別処理した後再選別される正常物又は不良物が貯溜される。タンク7は下端側ほど先細筒状に形成され、タンク7からフィーダ9上に落下した米粒群kのシュータ1への供給量は、フィーダ9の振動による米粒群kの搬送速度を変化させて調節される。
【0016】シュータ1の下端部から流下する米粒群kが広幅状態で存在する長尺状の検出位置Jが、米粒群kの流下経路中に設定され、その検出位置Jにおける米粒群kの横幅方向の全幅を照明する蛍光灯等のライン状光源4A,4Bと、そのライン状光源4A,4Bからの照明光が上記検出位置Jの米粒群kで反射した反射光を受光する反射用ラインセンサ5Bとが設けられている。一方、上記検出位置Jを挟んで、ライン状光源4A,4Bの設置位置とは反対側(図の右側)に、ライン状光源4A,4Bからの照明光が検出位置Jの米粒群kを透過した透過光を受光する透過用ラインセンサ5Aが設けられている。」

「【0021】図5に示すように、上記両ラインセンサ5A,5Bは、米粒kの大きさよりも小さい範囲p(例えば米粒kの大きさの10分の1程度)を夫々の受光対象範囲として各別に受光情報が取出し可能な複数個の受光部5aを、前記検出位置Jの長手方向に沿って並置させて、米粒群kの横幅方向の全幅を受光範囲とするように構成されている。具体的には、複数個の受光部5aとしての受光素子が直線状に並置されたモノクロタイプのCCDセンサ50と、検出位置Jでの米粒群kの像を上記CCDセンサの各受光素子上に結像させる光学系51とから構成されている。そして、両ラインセンサ5A,5Bは、前記長尺状の検出位置Jの一端側から他端側に向けて、例えば図3において、長尺状の検出位置Jの左端側から右端側に向けて、各受光部5aから各受光情報が順次取り出される。
【0022】上記検出位置Jから流下方向下流側に、上記検出位置Jでの両ラインセンサ5A,5Bの受光情報に基づいて検出された着色粒kや異物等の不良物と正常物(正常な米粒k)とを異なる経路に分離させるために、不良物に向けてエアを噴出する複数のエア噴出部としての噴出ノズル6aが前記予定移送経路の幅方向に沿って並置されている。
【0023】ここで、上記各噴出ノズル6aは、図8及び図9に示すように、各噴出ノズル6aに対応させて各エアー供給口6bから供給されるエアを吹き出す偏平状の吹き出し口を凹部状に形成した下側部分6Aと、各噴出ノズル6aを区分形成するように、下側部分6Aに対して上側からシール接着される上側部分6Bとからなる共通の噴出ケーシング6にて形成されている。そして、各吹き出し口からのエアによって予定移送経路の幅方向の全幅を吹き漏らし部分がなく、しかも、隣接するノズル6aの各吹き出し範囲が重複しないように設定されている。
【0024】そして、シュータ1の下端部から流下する米粒群kのうちで、前記噴出ノズル6aからのエアーの吹き付けを受けずにそのまま進行してくる正常な米粒kを回収する良米用の受口部2Bと、エアーの吹き付けを受けて正常な米粒kの流れから横方向に分離した着色米や胴割れ米等の不良米又は石やガラス片等の異物を回収する不良物用の受口部3Bとが設けられ、良米用の受口部2Bが横幅方向に細長い筒状に形成され、その良米用の受口部2Bの周囲を囲むように、不良物用の受口部3Bが形成されている。尚、良米用の受口部2Bにて回収された米粒k、及び、不良物用の受口部3Bにて回収された不良物は、再選別等のために、本検査装置のタンク7へ又は他の検査装置に搬送される。」

「【0027】前記エアマニホルド16から複数の噴出ノズル6a夫々へのエアの供給を各別に断続する制御弁11が設けられ、その各制御弁11から、各ノズル6aへの流路を形成する樹脂材料等からなる各配管17を介して、エアマニホルド16から各噴出ノズル6aにエアが分岐供給されている。
【0028】制御構成を説明すると、図4に示すように、マイクロコンピュータ利用の制御装置10が設けられ、この制御装置10に、両ラインセンサ5A,5Bからの画像信号と、操作卓21からの操作情報と、圧力スイッチS1の検出信号とが入力されている。一方、制御装置10からは、操作卓21の表示部に対する駆動信号と、ライン状光源4A,4Bの点灯回路19に対する駆動信号と、エアマニホルド16から各噴出ノズル6aへの各エアの供給を断続する各制御弁11を駆動する電磁弁駆動回路11Aに対する駆動信号と、フィーダ用振動発生器9Aに対する駆動信号と、切換弁23に対する駆動信号とが出力されている。」

「【0040】第2の形態では、図11に示すように、前記噴出ケーシング6に振動センサーS2が設置されるとともに、その検出情報がアンプ24によって増幅されて制御装置10に入力されている。そして、前記噴出状況検出手段102が上記振動センサーS2にて構成されて、前記噴出ケーシング6の振動を検出するように構成され、異常判別手段101は、上記振動センサーS2により検出される噴出ケーシング6の振動波形によって、噴出ノズル6aの不良の有無を判別する。つまり、噴出ノズル6aが正常に噴出作動したときは、上記噴出ケーシング6が比較的大きい振幅で振動するのに対して、ノズル6aが正常に噴出作動しない場合には、噴出ケーシング6の振動の振幅が小さいので、例えば、所定の判定レベルを設けて不良の有無を検出することができる。具体的には、前記切換弁23をマニホルド側mに切り換えた状態で、設定時間(例えば、1秒)内に複数回(例えば5回)、検査対象のノズル6aの制御弁11をオンして、夫々に対する振動センサーS2の出力を調べ、所定回数以上(例えば5回のうちで4回)振動センサーS2の出力信号の振幅が判定レベルを越えていれば、正常であると判別する。尚、上記振動センサーS2は、噴出ケーシング6の長手方向において、中央位置に1個設置したり、左右の端部寄りに2個設置したり、左右の端部のいずれか一方に1個設置する等、適宜位置に設置することができる。」

「【0047】前述の噴出状況検出手段の第2形態では、振動センサーS2を噴出ケーシング6に直接取り付けて(図11参照)、その振動を検出するようにしたが、これ以外に間接的に振動を検出する形態でもよい。例えば、図15及び図16に示すように、前記収納部13Aの支持板部26に、噴出ケーシング6と振動センサーS2が横並び状態で取り付けられ、噴出ケーシング6の振動が支持板部26に伝わり、その支持板部26の振動を振動センサーS2で検出するのである。尚、振動センサーS2を噴出ケーシング6に直接取り付ける場合も、噴出ケーシング6の背部の他に、図16に2点鎖線で示すように、噴出ケーシング6の横側端部に取り付けたり、前面下部位置に取り付けるようにしてもよい。」

図8には、「上部に複数の噴出ノズル6aが形成された噴出ケーシング6」が図示され、
図9には、「横長の噴出ケーシング6」が図示され、
図16には、「噴出ケーシング6は、噴出ノズル6aとは反対側の面で支持板部26に取り付けられ」ることが図示され、
図9には、「制御弁11は、配管17を介して噴出ケーシング6に接続され」ることが図示されている。

(2)引用発明
引用例1には、粒状体検査装置として、以下の発明が記載されている(以下、「引用発明」という。また、引用発明の認定に活用した引用例1の記載箇所を明示することを目的として、段落番号、図番号を併記する。)。

「玄米や精米等の米粒群からなる粒状体群を検査対象物として予定移送経路に沿って移送しながら、不良物の検出及び除去を行う粒状体検査装置であって、(段落0013)
貯溜タンク7は下端側ほど先細筒状に形成され、タンク7からフィーダ9上に落下した米粒群kのシュータ1への供給量は、フィーダ9の振動による米粒群kの搬送速度を変化させて調節され、(段落0015)
シュータ1の下端部から流下する米粒群kが広幅状態で存在する長尺状の検出位置Jが、米粒群kの流下経路中に設定され、(段落0016)
ラインセンサ5A,5Bは、複数個の受光部5aとしての受光素子が直線状に並置されたモノクロタイプのCCDセンサ50と、検出位置Jでの米粒群kの像を上記CCDセンサの各受光素子上に結像させる光学系51とから構成され、(段落0021)
上記検出位置Jから流下方向下流側に、上記検出位置Jでの両ラインセンサ5A,5Bの受光情報に基づいて検出された着色粒kや異物等の不良物と正常物(正常な米粒k)とを異なる経路に分離させるために、不良物に向けてエアを噴出する複数のエア噴出部としての噴出ノズル6aが前記予定移送経路の幅方向に沿って並置され、(段落0022)
エアマニホルド16から複数の噴出ノズル6a夫々へのエアの供給を各別に断続する電磁弁駆動回路11Aにより駆動される制御弁11が設けられ、その各制御弁11から、各ノズル6aへの流路を形成する樹脂材料等からなる各配管17を介して、エアマニホルド16から各噴出ノズル6aにエアが分岐供給され、(段落0027,0028)
上部に複数の噴出ノズル6aが形成された横長の噴出ケーシング6は、噴出ノズル6aとは反対側の面で支持板部26に取り付けられ、制御弁11は、配管17を介して噴出ケーシング6に接続され、(図8,9,16)
支持板部26に、噴出ケーシング6と振動センサーS2が横並び状態で取り付けられ、噴出ケーシング6の振動が支持板部26に伝わり、その支持板部26の振動を振動センサーS2で検出するのであり、(段落0047)
異常判別手段101は、噴出ノズル6aが正常に噴出作動したときは、上記噴出ケーシング6が比較的大きい振幅で振動するのに対して、ノズル6aが正常に噴出作動しない場合には、噴出ケーシング6の振動の振幅が小さいので、所定の判定レベルを設けて不良の有無を検出することができ、検査対象のノズル6aの制御弁11をオンして、夫々に対する振動センサーS2の出力を調べ、振動センサーS2の出力信号の振幅が判定レベルを越えていれば、正常であると判別する、(段落0040)
粒状体検査装置。(段落0013)」

(3)引用例2に記載の事項
原査定の拒絶の理由で引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である、特開平5-146764号公報(平成5年6月15日出願公開。以下、「引用例2」という。)には、図面とともに、次の記載がある

「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、穀粒、角切り野菜、コーヒー豆、宝石、樹脂ペレット、その他の粒状物中から不要な又は必要な色の粒状物(以下「異色粒」という)を検出して選別する粒状物色彩選別機に係り、特に、粒状物色彩選別機におけるエジェクタ検査装置に関する。」

「【0017】次に、エジェクタ検査装置について説明する。エジェクタ検査装置は、落下軌跡11上の検出ライン18に沿って横移動する検査バー44と、エジェクタ9の噴風口J1?J30に沿って前記検査バー44と連動して横移動する空気噴射検知器45とからなる。この検査バー44及び空気噴射検知器45はバックグランド用ワイパ46に一体に設けられる。すなわち、バックグラウンド用ワイパ46と光学ケース用ワイパ47とは各々ワイパアーム48に装着され、それぞれのワイパブレードは光学ケース14の透明ガラス15面とバックグラウンド13表面のガラス面に当接する。そして、ワイパアーム48はワイパ駆動装置としてのロッドレスシリンダ49のスライダ26に連結することにより、前記各ワイパ46,47がバックグラウンド13及び光学ケース14の一端から他端に向けて横移動するよう形成されている。前記検査バー44は、バックグラウンド用ワイパ46から横方向に突設した検査バー支持体50に固着され、ほぼバックグランド13と同傾斜上に設けられる。また、この検査バー44は検出ライン18と交差させ、かつ、一つの噴風口J1の幅、つまり光センサ21A1の検出範囲よりも小幅となすとともに、異色粒とみなすためにバックグラウンド13とは異なった色、例えば黒色となす。」

「【0023】以上のようにして、原料ペレット中に含まれる異色ペレット粒を選別除去するのであるが、運転開始に先立って(あるいは定期的に)、操作盤68のワイパスイッチ69を入れると、ロッドレスシリンダ49が駆動し、スライダ26が往復動して光学ケース用ワイパ47及びバックグランド用ワイパ46の各ワイパブレードにより光学ケース14の透明ガラス15とバックグランド13面とが清掃されるのであるが(このとき、振動供給装置7は停止する)、この際、バックグランド用ワイパ46に一体に設けた検査バー44が検査ライン18に沿って移動することに伴い、光センサ21A1,21A2,21A3、光センサ21B1,21B2,21B3…が該検査バー44を順次異色ペレット粒として検出するとともに、これらの光センサ21A1,21A2,21A3…に対応する電磁弁V1,V2,V3…が順次作動して噴風口J1,J2,J3…から順次、高圧空気が噴射される。この空気噴射を空気噴射検知器52によって検知する。すなわち、エジェクタ駆動回路36の光センサ21からの出力Aを取り出すとともに、この出力Aと、前記駆動回路36のバルブドライブ回路43からの出力Bと、空気噴射検知器52の出力Cと、を検査回路53に入力し、前記出力A,B,Cが全てハイ電圧であれば、アンドゲート57からの出力により正常と判別され、出力Bがロー電圧の場合は、出力Aとインバータ58により反転された出力Bとによりアンドゲート59から出力され、LEDアレイなどの表示装置64aにバルブ回路異常の表示が行われる。このとき出力Cもロー電圧なので、インバータ60によって反転されてアンドゲート61に入力され、前記同様に表示装置65aに異常表示する。」

(4)引用発明2
引用例2には、粒状物色彩選別機のエジェクタ検査装置として、以下の発明が記載されている(以下、「引用発明2」という。)。
「粒状物色彩選別機のエジェクタ検査装置は、落下軌跡11上の検出ライン18に沿って横移動する検査バー44と、エジェクタ9の噴風口J1?J30に沿って前記検査バー44と連動して横移動する空気噴射検知器45とからなり、
検査バー44が検査ライン18に沿って移動することに伴い、光センサ21A1,21A2,21A3、光センサ21B1,21B2,21B3…が該検査バー44を順次異色ペレット粒として検出するとともに、これらの光センサ21A1,21A2,21A3…に対応する電磁弁V1,V2,V3…が順次作動して噴風口J1,J2,J3…から順次、高圧空気が噴射され、この空気噴射を空気噴射検知器52によって検知する
粒状物色彩選別機のエジェクタ検査装置。」

(5)対比
本件補正発明と引用発明を対比すると、以下のとおりである。

引用発明において、検査対象物である「米粒群」は、不良品の検出及び除去される対象物、つまり、選別される対象物であるから、本件補正発明の「被選別物」に相当する。

引用発明において、「貯溜タンク7は下端側ほど先細筒状に形成され、タンク7からフィーダ9上に落下した米粒群kのシュータ1への供給量は、フィーダ9の振動による米粒群kの搬送速度を変化させて調節され」るから、引用発明の、「フィーダ9」及び「貯溜タンク7」は、それぞれ本件補正発明の「被選別物を送り出すフィーダ」及び「前記フィーダに前記被選別物を供給する供給筒」に相当する。

引用発明において、フィーダ9上に落下した米粒群kは、シュータ1へ供給され、シュータ1の下端部から流下するから、引用発明の「シュータ1」は、本件補正発明の「前記フィーダより送り出された前記被選別物を流下させる複数の溝からなるシュート」と、「前記フィーダより送り出された前記被選別物を流下させるシュート」である点で共通する。

引用発明において、「シュータ1の下端部から流下する米粒群kが広幅状態で存在する長尺状の検出位置Jが、米粒群kの流下経路中に設定され、ラインセンサ5A,5Bは、複数個の受光部5aとしての受光素子が直線状に並置されたモノクロタイプのCCDセンサ50と、検出位置Jでの米粒群kの像を上記CCDセンサの各受光素子上に結像させる光学系51とから構成され」ているから、引用発明の「ラインセンサ5A,5B」は、本件補正発明の「前記シュートの下端部に設けられた、各素子が前記シュートの各溝に対応するように割り当てられたカメラを用いた判別センサ」と、「前記シュートの下端部に設けられた、カメラを用いた判別センサ」である点で共通する。

引用発明において、「検出位置Jから流下方向下流側に、上記検出位置Jでの両ラインセンサ5A,5Bの受光情報に基づいて検出された着色粒kや異物等の不良物と正常物(正常な米粒k)とを異なる経路に分離させるために、不良物に向けてエアを噴出する複数のエア噴出部としての噴出ノズル6aが前記予定移送経路の幅方向に沿って並置され、」「複数の噴出ノズル6a夫々へのエアの供給を各別に断続する制御弁11が設けられ、その各制御弁11から、各ノズル6aへの流路を形成する樹脂材料等からなる各配管17を介して、エアマニホルド16から各噴出ノズル6aにエアが分岐供給され」るから、引用発明の「不良物に向けてエアを噴出する複数のエア噴出部としての噴出ノズル6a」及び「複数の噴出ノズル6a夫々へのエアの供給を各別に断続する制御弁11」は、本件補正発明の「前記シュートの各溝に対応するように割り当てられた、空気を噴射して不良品を選別する複数の空気噴射口および複数の弁が設けられた空気噴射装置」と、「空気を噴射して不良品を選別する複数の空気噴射口および複数の弁が設けられた空気噴射装置」である点で共通する。

引用発明において、「検出位置Jから流下方向下流側に、上記検出位置Jでの両ラインセンサ5A,5Bの受光情報に基づいて検出された着色粒kや異物等の不良物と正常物(正常な米粒k)とを異なる経路に分離させるために、不良物に向けてエアを噴出する複数のエア噴出部としての噴出ノズル6aが前記予定移送経路の幅方向に沿って並置され」ている「粒状体検査装置」は、受光情報に基づいて検出された着色粒kの不良物に向けてエアを噴出するよう制御弁11を制御する手段を有していることは明らかであるから、引用発明の「粒状体検査装置」は、本件補正発明の「前記判別センサの判別結果に基づいて対応する前記弁を開閉制御する弁制御手段とを備えた色彩選別機」に相当する。

引用発明において、「上部に複数の噴出ノズル6aが形成された横長の噴出ケーシング6は、噴出ノズル6aとは反対側の面で支持板部26に取り付けられ」、「電磁弁駆動回路11Aにより駆動される」「制御弁11は、配管17を介して噴出ケーシング6に接続され」ているから、
(i)引用発明の「上部に複数の噴出ノズル6aが形成された横長の噴出ケーシング6」は、本件補正発明の「正面上部に前記空気噴射口を設けた縦長の筐体」と、「正面上部に前記空気噴射口を設けた筐体」である点で共通し、
(ii)引用発明の「磁弁駆動回路11Aにより駆動される」「制御弁11は、配管17を介して噴出ケーシング6に接続されている」ことは、本件補正発明の「前記筐体の背面に設けた電磁弁を備える」と、「電磁弁を備える」点で共通し、
(iii)引用発明の「噴出ケーシング6は、噴出ノズル6aとは反対側の面で支持板部26に取り付けられ」ていることは、本件補正発明の「前記空気噴射口の背面側の位置において支持部材で支持されることによって前記色彩選別機に固定されたもの」に相当する。

引用発明において、「異常判別手段101は、噴出ノズル6aが正常に噴出作動したときは、上記噴出ケーシング6が比較的大きい振幅で振動するのに対して、ノズル6aが正常に噴出作動しない場合には、噴出ケーシング6の振動の振幅が小さいので、所定の判定レベルを設けて不良の有無を検出することができ」るものであるから、引用発明の、「異常判別手段101」は、本件補正発明の「前記空気噴射装置の動作異常を検査する異常検査手段」に相当する。

引用発明において、「支持板部26に、噴出ケーシング6と振動センサーS2が横並び状態で取り付けられ」るものであるから、引用発明の「振動センサーS2」は、本件補正発明の「前記支持部材に設置した振動センサ」に相当する。

引用発明の「検査対象のノズル6aの制御弁11をオンして、夫々に対する振動センサーS2の出力を調べ」ることは、検査のために検査対象のノズル6aからエアを噴出させる制御をしているものであるから、本件補正発明の「前記カメラの前面を左から右または/および右から左に順次移動することによって前記各素子を遮蔽する遮蔽材を備えており、前記遮蔽材が前記各素子を遮蔽することにより、前記弁制御手段によって前記各弁を開閉制御させて前記空気噴射口から圧縮空気を噴射させ」ることと、「前記弁制御手段によって前記各弁を開閉制御させて前記空気噴射口から圧縮空気を噴射させ」る点で共通する。

引用発明において、「所定の判定レベルを設けて不良の有無を検出する」ものであり、「振動センサーS2の出力信号の振幅が判定レベルを越えていれば、正常であると判別する」ことは、振動センサーS2の出力信号の振幅が判定レベル以下であれば、異常であると判別することを意味する。ここで、「振動センサーS2の出力信号」が電圧または電流であることは明らかであり、また、「所定の判定レベル」は、予め設けられ出力信号の振幅と比較されるものであり、本件補正発明の「しきい値」に相当する。してみると、引用発明における異常であると判別することは、本件補正発明の「前記空気噴射口から噴射される圧縮空気の振動を前記振動センサによって電圧値または電流値に変換するとともに、前記電圧値または前記電流値のピーク値(デジタル信号)を取得し、前記ピーク値と予め記憶しておいたしきい値とを比較することによって、前記ピーク値が前記しきい値以下である場合に前記空気噴射装置の動作異常が発生していることを検査する」ことと、「前記空気噴射口から噴射される圧縮空気の振動を前記振動センサによって電圧または電流としきい値とを比較することによって、前記しきい値以下である場合に前記空気噴射装置の動作異常が発生していることを検査する」点で共通する。

(6)一致点及び相違点

本件補正発明と引用発明との一致点は、以下のとおりである。
「被選別物を送り出すフィーダと、
前記フィーダに前記被選別物を供給する供給筒と、
前記フィーダより送り出された前記被選別物を流下させるシュートと、
前記シュートの下端部に設けられた、カメラを用いた判別センサと、
空気を噴射して不良品を選別する複数の空気噴射口および複数の弁が設けられた空気噴射装置と、
前記判別センサの判別結果に基づいて対応する前記弁を開閉制御する弁制御手段とを備えた色彩選別機において、
前記空気噴射装置は、
正面上部に前記空気噴射口を設けた筐体と、電磁弁を備えるとともに、前記空気噴射口の背面側の位置において支持部材で支持されることによって前記色彩選別機に固定されたものであり、
さらに前記空気噴射装置の動作異常を検査する異常検査手段を備え、
前記異常検査手段は、
前記支持部材に設置した振動センサと、
前記弁制御手段によって前記各弁を開閉制御させて前記空気噴射口から圧縮空気を噴射させ、
前記空気噴射口から噴射される圧縮空気の振動を前記振動センサによって電圧または電流としきい値とを比較することによって、
前記しきい値以下である場合に前記空気噴射装置の動作異常が発生していることを検査するように構成されていることを特徴とする色彩選別機。」


本件補正発明と引用発明との相違点は、以下のとおりである。
(相違点1) シュートについて
本件補正発明において、シュートが、複数の溝からなり、各素子、空気噴射口および複数の弁が前記シュートの各溝に対応するように割り当てられているのに対し、引用発明は、その点が不明な点で相違する。

(相違点2) 筐体、電磁弁について
本件補正発明は、空気噴射装置は、縦長の筐体と、前記筐体の背面に設けた電磁弁を備えるのに対し、引用発明は、噴出ケーシング6(筐体に相当)は横長であり、電磁弁駆動回路11Aにより駆動される制御弁11(電磁弁に相当)は、配管17を介して噴出ケーシング6に接続されており、噴出ケーシング6の背面に設けられていない点で相違する。

(相違点3) 弁制御について
弁制御手段によって前記各弁を開閉制御させて前記空気噴射口から圧縮空気を噴射させる際に、本件補正発明は、 「前記カメラの前面を左から右または/および右から左に順次移動することによって前記各素子を遮蔽する遮蔽材を備えており、前記遮蔽材が前記各素子を遮蔽することにより」行っているのに対し、引用発明は、「検査対象のノズル6aの制御弁11をオン」させているにとどまり、どの様に制御弁11をオンさせるか不明である点で相違する。

(相違点4) 検査において比較する対象について
空気噴射装置の動作異常が発生していることを検査において、比較する対象が、本件補正発明は、「振動センサによって電圧値または電流値に変換するとともに、前記電圧値または前記電流値のピーク値(デジタル信号)」と「予め記憶しておいたしきい値」であるのに対し、引用発明は、「振動センサーS2の出力信号の振幅」と「所定の判定レベル」である点で相違する。

(7)判断
ア 相違点1について
引用発明は、玄米や精米等の米粒群からなる粒状体群を検査対象物として予定移送経路に沿って移送しながら、不良物の検出及び除去を行う粒状体検査装置である。よって、引用発明において、粒状体群を適切に予定移送経路に沿って移送させ不良物の検出及び除去をするという課題を有しているといえる。
そして、粒状体群を適切に予定移送経路に沿って移送させる手段として、複数の溝が形成されたシュートを用いることは、粒状物選別装置において周知技術であるから(例えば、特開2006-150178号公報の「【0020】流下樋2は、上面に直状の流下案内面2aをなす溝を形成され」との記載、及び穀粒wなどの正常移動軌跡a1毎に対応して空気噴射ノズル17が設けられることを図示した図7、特開昭60-179183号公報の「シュートの底面に縦溝が形成されていて、粒状物はこの縦溝に沿って流下するので、粒状物の流下路を正確に規制でき、且つ、少流量の場合でもシュートの全幅に亙つて均一に粒状物を流下させることができ、この結果、選別精度を高めることが可能である。」(第2頁左下欄第5行?第11行)及び第1図等参照。)、引用発明のシュータに複数の溝が形成されたシュートを採用することに困難性は見いだせない。
また、引用発明において、「ラインセンサ5A,5Bの受光情報に基づいて検出された着色粒kや異物等の不良物と正常物(正常な米粒k)とを異なる経路に分離させるために、不良物に向けてエアを噴出する複数のエア噴出部としての噴出ノズル6aが前記予定移送経路の幅方向に沿って並置され、エアマニホルド16から複数の噴出ノズル6a夫々へのエアの供給を各別に断続する電磁弁駆動回路11Aにより駆動される制御弁11が設けられ」るものであり、受光情報を得るための「CCDセンサの各受光素子」、不良物に向けてエアを噴出する「複数の噴出ノズル6a」、複数の噴出ノズル6a夫々へのエアの供給をする「各制御弁11」がそれぞれ対応するようになっていることは明らかであるから、引用発明の「シュータ」、「CCDセンサの各受光素子」、「複数の噴出ノズル6a」、「各制御弁11」を、相違点1に係る構成のように、シュートが、複数の溝からなり、各素子、空気噴射口および複数の弁が前記シュートの各溝に対応するように割り当てられる構成とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。

イ 相違点2について
請求人が上申書にて示した意向のとおり、「縦長の筐体」を「横長の筐体」と解釈すると、本件補正発明の横長の筐体と解釈する「縦長の筐体」と、引用発明の横長の噴出ケーシング6(筐体に相当)は、相違するものではない。
また、ノズルを設けた筐体とその筐体の背面に設けた電磁弁を備えるエジェクター手段(空気噴射装置)は、例えば、特開平11-51845号公報(図2のエジェクター手段9、ノズル9A、バルブ9B)や特開2000-354831号公報(図2のエジェクター手段9、吹き出し部9A、電磁弁9Bを参照。)に記載されているように、粒状体選別装置のエジェクター手段(空気噴射装置)において周知技術であるから、引用発明において周知のエジェクター手段(空気噴射装置)を採用し、相違点2に係る構成のように空気噴射装置が筐体の背面に設けた電磁弁を備えるようにすることは、当業者が適宜なし得ることである。

ウ 相違点3について
本願明細書には、「遮蔽材」に関して以下の記載がある。
「【0049】
本発明の請求項3に係る色彩選別機によれば、遮蔽材が、カメラのレンズまたはレンズを保護するための保護材を清掃する清掃部材であるので、保護材の清掃をしながら判別センサの異常も検査することができる。
また、判別センサ検査手段が異常検査手段に付加されているので、保護材の清掃をしながら噴射口から実際に空気が正常に噴射されているか否かの異常も検査することができる。」
「【0070】
次に、本実施の形態における異常検査手段16の作動を説明する。
選別運転の前や合間に、運転制御手段18によって噴射口の一つ一つに対応するように清掃部材10を移動させて、色判別センサ5a、異物判別センサ5bの各素子(図示せず)が捉える光量を人為的に変化させる。
【0071】
この際、電磁弁制御手段19内の2値化コンバータ28は、色判別センサ5a、異物判別センサ5bの各素子が検知した光量値と予め記憶しておいた被選別物中の良品と不良品とを選別するための判別領域とを比較し、不良品35bが流下したと判断する。
そして、処理手段30において色判別センサ5a及び異物判別センサ5bの判断結果が集約され、いずれか一つの判別センサが不良品35bが流下したと判断した場合には、処理手段30からドライブ基板31に光量が変化した素子に対応する圧縮空気噴射口20の弁の開放信号が送信される。
その後、ドライブ基板31において電磁弁22を開閉するために必要な電圧に調整され、電磁弁22に所定の電圧が送られ、圧縮空気噴射口20から圧縮空気が噴射される。」
以上の記載から、遮蔽材は、圧縮空気噴射口20から圧縮空気が噴射されるようにするために、各素子が捉える光量を人為的に変化させるものである。
してみると、引用発明2の粒状物色彩選別機のエジェクタ検査装置において、「検査バー44が検査ライン18に沿って移動することに伴い、光センサ21A1,21A2,21A3、光センサ21B1,21B2,21B3…が該検査バー44を順次異色ペレット粒として検出するとともに、これらの光センサ21A1,21A2,21A3…に対応する電磁弁V1,V2,V3…が順次作動して噴風口J1,J2,J3…から順次、高圧空気が噴射され、この空気噴射を空気噴射検知器52によって検知する」ものであるから、引用発明2の「検査バー44」は、相違点3に係る構成である「前記カメラの前面を左から右または/および右から左に順次移動することによって前記各素子を遮蔽する遮蔽材」であって、「前記遮蔽材が前記各素子を遮蔽することにより、前記弁制御手段によって前記各弁を開閉制御させて前記空気噴射口から圧縮空気を噴射させ」ているものに相当する。
そして、引用発明の「検査対象のノズル6aの制御弁11をオン」させる手段として、引用発明2の粒状物色彩選別機のエジェクタ検査における、電磁弁V1,V2,V3…を作動させるための検査バー44を用いた手段を採用し、相違点3に係る構成のように「前記カメラの前面を左から右または/および右から左に順次移動することによって前記各素子を遮蔽する遮蔽材を備えており、前記遮蔽材が前記各素子を遮蔽することにより、前記弁制御手段によって前記各弁を開閉制御させて前記空気噴射口から圧縮空気を噴射させ」ることは、当業者が容易に想到し得ることである。

エ 相違点4について
引用発明において、判定は、「振動センサーS2の出力信号の振幅」が「所定の判定レベル」を超えているか否か、つまり比較することで行っている。ここで、出力信号は電圧または電流であることことは明らかであり、電圧又は電流を値に変換し処理すること、つまりデジタル的に処理することは常套手段である。そして、引用発明において、「所定の判定レベルを設けて不良の有無を検出する」ことから、所定の判定レベルは、予め定められたものである。
してみると、引用発明の判定において、比較する対象である「振動センサーS2の出力信号の振幅」と「所定の判定レベル」を、デジタル的に処理するという常套手段を適用し、相違点4に係る構成のように「ピーク値(デジタル信号)」と「予め記憶しておいたしきい値」とすることに困難性は見いだせない。

オ 効果について
また、本件補正発明が奏する効果は、引用発明、引用発明2、周知技術、及び常套手段から予測できる範囲内のものであり、顕著なものであるとはいえない。

(8)小括
本件補正発明は、引用発明、引用発明2、周知技術、及び常套手段に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により、特許出願の際に独立して特許を受けることができないものである。

3 補正却下の決定についてのまとめ
本件補正は、特許法17条の2第3項の規定に違反するものであり、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下されるべきものである。
仮に、本件補正は、特許法17条の2第3項の規定に違反するものではないとしたとしても、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、前記「第2」1(2)に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、概略、
この出願の請求項1,2に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された引用例1に記載された発明(引用発明)であるから、特許法第29条1項3号に該当し、特許を受けることができない。または、この出願の請求項1ないし10に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された引用例1に記載された発明(引用発明)に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

3 引用例1に記載の事項及び引用発明等
引用例1に記載の事項及び引用発明は、前記「第2」2(1)及び(2)に記載したとおりである。

4 対比及び判断
本願発明は、本件補正発明のうち、前記「第2」1(1)の下線部が付された特定事項を除いたもの、つまり、本件補正発明と引用発明との相違点に係る特定事項を全て除いたものである。
そうすると、本願発明と引用発明との相違点はないことから、本願発明は、引用発明である。
または、本願発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 まとめ
以上のとおり、本願発明は、特許法29条1項3号の規定により特許を受けることができない。または、本願発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-08-18 
結審通知日 2015-08-25 
審決日 2015-09-07 
出願番号 特願2009-194357(P2009-194357)
審決分類 P 1 8・ 561- Z (G01N)
P 1 8・ 113- Z (G01N)
P 1 8・ 121- Z (G01N)
P 1 8・ 575- Z (G01N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 越柴 洋哉小野寺 麻美子  
特許庁審判長 清水 稔
特許庁審判官 関根 洋之
森 竜介
発明の名称 色彩選別機及び色彩選別機の運転制御方法  
代理人 岡 健司  

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