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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B60R
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B60R
管理番号 1320074
審判番号 不服2015-5438  
総通号数 203 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-11-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-03-23 
確定日 2016-10-06 
事件の表示 特願2011-546693号「ナンバープレート、特に自動車のナンバープレート及びこのナンバープレートを製造する方法」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 7月29日国際公開、WO2010/084013、平成24年 7月12日国内公表、特表2012-515680号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2010年(平成22年)1月22日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2009年1月23日 (DE)ドイツ)を国際出願日とする出願であって、平成26年1月24日付けで拒絶理由が通知され、平成26年6月17日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成26年11月18日に拒絶査定がなされ、それに対して平成27年3月23日に拒絶査定不服審判が請求されると共に手続補正書が提出されたものである。
そして、当審において、平成28年1月12日付けで拒絶理由を通知し、応答期間内である平成28年4月5日に意見書及び手続補正書が提出されたところである。

第2 当審の判断
1 本願発明
本願の請求項1?6に係る発明は、平成28年4月5日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?6に記載された事項によって特定されるとおりのものであると認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりである。
「文字が施されている1つのナンバープレート本体(37,38)及び少なくとも1つのセキュリティーフィーチャー(36,42)を有するナンバープレート又は自動車のナンバープレートであって、前記少なくとも1つのセキュリティーフィーチャー(36,42)は、前記ナンバープレート本体(37,38)の輪郭内に配置されている当該ナンバープレートにおいて、
ホログラムとして構成された少なくとも1つのセキュリティーフィーチャー(36,42)が、前記ナンバープレート本体(37,38)の透明な上層(25,39)の内部に封入されていることを特徴とするナンバープレート。」

2 引用文献の記載事項及び記載された発明
(1)引用文献の記載事項
当審の拒絶の理由に「引用文献」として示され、本願の優先日前に電気通信回路を通じて公衆に利用可能になった国際公開第2005/083661号には、図面と共に、以下の事項が記載されている。(下線は当審で付加した。以下同様。)

ア 「さらに具体的には,・・・自動車やオートバイ等の車両のナンバープレート類・・・表示装置に関する。」(明細書第1ページ第16?21行)

イ 「本発明における表面保護層(1)は光透過性または光不透過性の情報表示層(3)に設けられた情報が該表面保護層(1)を通じて判読できる事が好ましい。好ましい光透過率としては50?95%である。」(明細書第6ページ第23?25行)

ウ 「これらの表面保護層(1)は各種の感熱接着剤,熱硬化性接着剤,紫外線および光架橋型接着剤や粘着剤などの接着剤層(2)あるいは熱融着などの方法によって反射性樹脂シート(4)や情報表示層(3)と接合されている。」(明細書第7ページ第3?6行)

エ 「設置できる情報としては,文字,数字,絵柄,バーコード情報やロゴなどを単独にまたは組み合わせて設置する事ができる。また,設置される情報は肉眼で判読可能な情報や,紫外線の照射で判読できるような不可視情報であっても良い。さらに、情報表示層(3)は鏡面反射層(16)とはことなるホログラムの層や,紫外線発光性の印刷層であってもよい。」(明細書第7ページ第13?17行)

オ 「図4は本発明に最適な他の態様である表示装置の断面図を示している。この表示装置においては、表面層(11),保持層(12),微少ガラス球(13),破壊層(14)、焦点形成層(15)および鏡面反射層(16)により封入型微小ガラス球再帰反射シートが構成されている。表示装置の表面保護層(1)と、反射性樹脂シート(4)を構成する表面層(11)とが接着剤層(2)を介して接着されており,表面層(4)の表層には情報表示層(3)が設置されている。」(明細書第15ページ19?24行、合議体注:「表面層(4)」は「表面層(11)」の誤記と認める。)

(2)引用文献に記載された発明
ア 上記(1)アに示される「自動車やオートバイ等の車両のナンバープレート」として文字が施されているものは、ごく通常の態様である。そして、「自動車やオートバイ等の車両のナンバープレート」である場合、その本体に当たる部分は「ナンバープレート本体」といえるものである。

イ また、上記(1)イより、「表面保護層(1)」は透明といえることは明らかである。また、上記(1)ウには、当該「表面保護層(1)」を熱融着により接合することの記載があり、この場合には図4等に記載される「接着剤層(2)」は存在しないことになる。 そして、この場合、「情報表示層(3)」は、「表面保護層(1)」及び「表面層(11)」から構成されるものの内部に封入されることとなる。

ウ 加えて、上記(1)エには複数種の情報を必要に応じて組み合わせて設置することが記載され、さらに、「情報表示層(3)」として「ホログラムの層」を用いることも記載されている。そして、その「ホログラムの層」は「ナンバープレート本体」の輪郭内に配置されていることも構成上明らかである。

エ ここで、上記(1)ウ、オには、「表面層(11)」が透明であるかどうかの直接的な記載はないが、透明でないと「鏡面反射層(16)」による光の反射ができないことから、それが透明であることは自明のことといえる。

以上のことより、引用文献には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。
「文字が施されている1つのナンバープレート本体及び少なくとも1つのホログラムの層を有する自動車やオートバイ等の車両のナンバープレートにおいて、
前記少なくとも1つのホログラムの層からなる情報表示層(3)は、前記ナンバープレート本体の輪郭内に配置されている当該ナンバープレートにおいて、
少なくとも1つのホログラムの層からなる情報表示層(3)が、前記ナンバープレート本体の透明な表面保護層(1)及び表面層(11)の内部に封入されているナンバープレート。」

3 対比・判断
本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「自動車やオートバイ等の車両のナンバープレート」は、本願発明の「自動車のナンバープレート」に相当するし、本願発明に選択的に記載された「ナンバープレート」の一態様でもあるといえる。
また、引用発明の「表面保護層(1)及び表面層(11)」は、本願発明の「上層」に相当するといえる。
そして、本願発明の「セキュリティーフィーチャー」は、「ホログラムとして構成された」ものであるので、引用発明の「ホログラムの層からなる情報表示層(3)」とは、「ホログラム」の限度において一致するといえる。

そうすると、両者は次の点で一致する。
「文字が施されている1つのナンバープレート本体及び少なくとも1つのホログラムを有するナンバープレート又は自動車のナンバープレートであって、前記少なくとも1つのホログラムは、前記ナンバープレート本体の輪郭内に配置されている当該ナンバープレートにおいて、
少なくとも1つのホログラムが、前記ナンバープレート本体の透明な上層の内部に封入されているナンバープレート。」

そして、両者は次の点で相違する。
[相違点]
「ホログラム」について、本願発明では「セキュリティーフィーチャー」であるのに対し、引用発明ではセキュリティーフィーチャーであるか不明な点。

次に、上記相違点について検討する。
[相違点の判断]
自動車のナンバープレートにおいて、ホログラムをセキュリティーフィーチャーとして用いることは、本願の優先日前の周知技術(一例として、米国特許第4368979号明細書;特に第3欄第53?64行を参照。)であり、セキュリティ性向上は自動車のナンバープレートの分野における一般的な課題であることから、引用発明の「ホログラムの層からなる情報表示層(3)」をセキュリティーフィーチャーとすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。
したがって、引用発明において、本願発明の上記相違点に係る事項を有するものとすることは、当業者であれば容易になし得たことである。

そして、本願発明が奏する作用効果についても、引用発明及び周知技術から予測し得る範囲内のものであって、格別でない。

よって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明し得たものである。

4 意見書における主張の検討
請求人は、平成28年4月5日に提出の意見書において、「すなわち、セキュリティーフィーチャーを差し替えて改竄しようとする場合、本願発明では、セキュリティーフィーチャーが埋設されている樹脂(上層(25,39))を破壊しなければ、改竄できず、よって改竄したことを容易に気づくことができます(当該破壊が実行されると、当該改竄が、その破壊の痕跡から容易に知られてしまうと思料します)。一方で、引用文献(図4参照)では、セキュリティーフィーチャー(情報表示層(3))を層(接着剤層(2))と層(表面層(11))との間にサンドイッチする構造となっているので、第三者が、当該両層間をうまく剥がして、セキュリティーフィーチャーを差し替え、再び当該両層同士を接合すれば、当該改竄の形跡が残らず、改竄したことが分からないといったおそれがあります。」と主張する。

しかしながら、引用文献に記載された発明として当審が指摘するのは、上記2(1)イ、2(2)イに示したように「接着剤層(2)」を用いず「熱融着」によって「表面保護層(1)」と「表面層(11)」とを接合するものであって、当審の拒絶理由通知の<理由1>2.(1)ウ、2.(2)ア(イ)においても同様の指摘しているのであるから、上記主張は当審の拒絶理由通知に対する適切な反論とはいえない。

そして、引用文献における「熱融着」は、特段易剥離性を考慮したものではないことから、熱融着により一体化した表面保護層(1)と表面層(11)とを破壊せずに剥がすことは極めて困難であることは技術常識からみて明らかといえる。(なお、表示装置(25)を無理に剥がそうとした場合、「破壊層(14)」の箇所が剥離されることになる。引用文献の明細書第2ページ第3?7行、第15ページ第8?12行参照。)
したがって、主張する効果は、引用発明のものと格別相違するものとはいえない。

以上検討したとおりであるので、請求人の主張は採用できない。

5 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-05-09 
結審通知日 2016-05-11 
審決日 2016-05-24 
出願番号 特願2011-546693(P2011-546693)
審決分類 P 1 8・ 537- WZ (B60R)
P 1 8・ 121- WZ (B60R)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 柳幸 憲子岩▲崎▼ 則昌  
特許庁審判長 和田 雄二
特許庁審判官 島田 信一
一ノ瀬 覚
発明の名称 ナンバープレート、特に自動車のナンバープレート及びこのナンバープレートを製造する方法  
代理人 清田 栄章  
代理人 江崎 光史  
代理人 鍛冶澤 實  
代理人 篠原 淳司  

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