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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G02B
管理番号 1320075
審判番号 不服2015-9172  
総通号数 203 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-11-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-05-18 
確定日 2016-10-06 
事件の表示 特願2014- 69820「面光源装置および表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成27年11月 2日出願公開,特開2015-191181〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本件拒絶査定不服審判事件に係る出願(以下,「本願」という。)は,平成26年3月28日の出願であって,同年10月29日付けで拒絶理由が通知され,同年12月19日に意見書及び手続補正書が提出されたが,平成27年2月13日付けで拒絶査定がなされた。
本件拒絶査定不服審判は,これを不服として,同年5月18日に請求されたものであって,本件審判の請求と同時に手続補正書が提出され,当審において,平成28年4月25日付けで拒絶の理由が通知され,同年6月23日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

2 本願の請求項1に係る発明
本願の請求項1に係る発明は,平成28年6月23日提出の手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1によって特定されるものであるところ,本願の請求項1に係る発明は,次のとおりのものと認められる。

「シート状の本体部と,第1方向に配列された複数の単位プリズムであって,各々が前記第1方向と交差する方向に延びている,複数の単位プリズムと,を有する光学シートと,
前記光学シートの前記単位プリズムに対面するようにして配置された出光面と,前記第1方向に対向する一対の側面と,を有する導光板と,
前記光学シートの前記導光板の側とは反対側に配置された反射型偏光分離シートと,
前記導光板の前記第1方向における一側に位置する前記側面に対面して配置された光源と,を備え,
前記単位プリズムの配列ピッチが,10μm以上40μm以下であり,
各単位プリズムは,前記第1方向の一側を向く第1プリズム面と,前記第1方向の他側を向く第2プリズム面と,を含み,
前記第2プリズム面は,前記第1方向と前記本体部の法線方向との両方に平行な主切断面において,折れ線状に,或いは,折れ線の角部を面取りしてなる形状となる外輪郭を有し,前記第2プリズム面は,前記主切断面において前記第1方向に対する傾斜角度が,前記本体部から最も離間した単位プリズムの先端部の側から,前記本体部に最も近接した単位プリズムの基端部の側へ向けて,しだいに大きくなるように配置された二つ又は三つの要素面を含み,
前記主切断面において,前記単位プリズムの二つの基端部の中点と当該単位プリズムの前記先端部との前記第1方向に沿ったずれ量zの,当該単位プリズムの前記第1方向に沿った幅Wbに対する比(z/Wb)が,次の条件を満たす,面光源装置。
0 ≦ |z/Wb| ≦ 0.06」(以下,当該発明を「本願発明」という。)

3 当審において通知した拒絶の理由について
当審において平成28年4月25日付けで通知した拒絶の理由(以下,「当審拒絶理由」という。)は,概略,本願の各請求項に係る発明は,特開2013-3276号公報に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない,というものである。

4 引用例
(1)特開2013-3276号公報の記載
当審拒絶理由で引用された特開2013-3276号公報(以下,「引用文献」という。)は,本願の出願より前に頒布された刊行物であって,当該引用文献には次の記載がある。(下線は,後述する引用発明の認定に特に関係する箇所を示す。)

ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は,平行光源とその光を液晶パネル上で拡散する視野拡大シートを用いた液晶表示装置に関するものである。
・・・(中略)・・・
【0007】
本発明の課題は,光の拡散特性を容易に制御可能であり,良好な視野角を実現でき,かつ,光の利用効率が高く,コントラストの低下が少ない液晶表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は,出光面に単位光学要素が複数並列された導光板と,導光板側に単位プリズムが複数配列されたプリズムシートとを備え,画面の上下方向及び左右方向における光の進行方向を制御して,出光面の法線方向に平行な平行光を出射する面光源装置と,シート面内において直交する2方向に配列された第1単位光学形状及び第2単位光学形状を供える視野拡大シートとを用い,画面上下方向及び画面左右方向の光の平行度と拡散性を各々制御することにより,上記課題を解決した。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば,その出光面の法線方向に平行な平行光を出射できる面光源装置と,その平行光を,観察者側から見て直交する2方向に拡散する視野拡大シートとを備えることにより,画面の上下方向及び左右方向において,それぞれ独立して光の拡がりを制御でき,全方向にわたって良好な視野角を得ることができる。また,視野拡大シートは,外光を拡散反射しないので,高いコントラストの映像が得られる。」

イ 「【0012】
(実施形態)
<液晶表示装置>
まず,本実施形態の表示装置1の全体構成から説明する。
図1は,本実施形態の表示装置1を説明する図である。図1では,表示装置1のうち,液晶パネル15,面光源装置20,及び視野拡大シート40に注目して示した分解斜視図である。図1及び適宜示す図により表示装置1について説明する。
表示装置1は,液晶パネル15,面光源装置20,視野拡大シート40を備える液晶表示装置である。また,表示装置1には,説明は省略するが,その他これが表示装置として動作するために必要とされる通常の機器を具備している。」

【図1】


ウ 「【0013】
なお,図中及び以下の説明において,理解を容易にするために,表示装置1の使用状態において,観察者が液晶パネル15を正面から観察した場合の画面上下方向(鉛直方向)をY方向,画面左右方向(水平方向)をX方向,厚み方向(奥行方向,観察画面に直交する方向)をZ方向とする。観察者は,観察者側となるZ2側から背面側となるZ1側に向けて,液晶パネル15の画面の表示を視認する。また,プリズムシート30及び視野拡大シート40の厚み方向(Z方向)においては,Z1側は,光の入射側であり,Z2側は光の出射側となる。さらに,特に断りが無い場合,以下の説明において,画面左右方向,画面上下方向とは,この表示装置1の使用状態における画面左右方向(X方向),画面上下方向(Y方向)であるとする。
【0014】
液晶パネル15は,透過型の映像表示部であり,視野拡大シート40側(Z2側)に配置された上偏光板13と,面光源装置20側(Z1側)に配置された下偏光板14と,上偏光板13と下偏光板14との間に配置され,マトリクス状に配列された液晶セル12とを有している。
上偏光板13及び下偏光板14は,入射した光を直交する二つの偏光成分(P波及びS波)に分解し,一方の方向(透過軸と平行な方向)の偏光成分(例えば,P波)を透過させ,この一方の方向に直交する他方の方向(吸収軸と平行な方向)の偏光成分(例えば,S波)を吸収する機能を有している。
液晶セル12は,1つの画素を形成する領域毎に,電界印加され,この電界印加によって液晶セル12の配向方向が,変化する。
【0015】
面光源装置20から出射し,下偏光板14を透過した特定方向の偏光成分(例えば,P波)は,電界印加された液晶セル12を通過する際にはその偏光方向を90°回転させ,電界印加されていない液晶セル12を通過する際にはその偏光方向を維持する。従って,液晶セル12への電界印加の有無によって,下偏光板14を透過した特定方向の偏光成分(P波)が,上偏光板13を透過するか,あるいは,上偏光板13で吸収されて遮断されるかを制御できる。そして,このような液晶セル12への電界印加により,液晶パネル15では,面光源装置20からの光の透過又は遮断を画素毎に制御し,映像を表示可能とする。
本実施形態の液晶パネル15は,一例としてTN型のものとするが,これに限らず,他の型の液晶パネル(STN,VA,MVA,IPS,OCB等)を用いてもよい。
【0016】
<面光源装置>
次に,本実施形態の面光源装置20について説明する。
図2は,本実施形態の面光源装置20の構成を説明する図である。図2(a)には,図1にA1-A2で示した線に沿った面光源装置20の矢視断面図を示し,図2(b)には,図1にB1-B2で示した線に沿った面光源装置20の矢視断面図を示す。
面光源装置20は,図1に示すように,液晶パネル15の背面側(Z1側)に配置され,液晶パネル15を背面側から照明する照明装置である。
面光源装置20は,図1及び図2に示すように,導光板21と,光源部10と,プリズムシート30と,反射シート11とを備えるエッジライト型の面光源装置(バックライト)である。」

【図2】


エ 「【0017】
導光板21は,光源部10から入射した光を,導光板21内で反射作用等を受けながら光源部10側とは対向する端部側へ導光し,その導光過程で,徐々に出光面(プリズムシート30側の面)から出射する部材である。導光板21は,基部22と,出射側単位光学要素部23と,裏面側単位光学要素部25とを有している。
・・・(中略)・・・
【0018】
出射側単位光学要素部23は,図1及び図2に示すように,基部22のプリズムシート30側(Z2側)の面に形成されている。出射側単位光学要素部23には,複数の出射側単位光学要素24が並列されている。
出射側単位光学要素24は,柱状であり,図2(b)に示す断面に現れる断面形状を維持して,画面上下方向(Y方向)を長手方向とし,この長手方向と直交する方向である画面左右方向(X方向)に複数並列されている。」

オ 「【0027】
図1に戻って,光源部10について説明する。
光源部10は,導光板21の基部22の板状の対向する2組の側面のうち,出射側単位光学要素24の長手方向(Y方向)両端となる一組の側面21a,21bのうち,一方の面又は双方の面に対して対向する位置に,その面に沿って配置される。本実施形態では,図1に示すように,導光板21の一方の側面21aに面する位置に,側面21aに沿って光源部10が設けられる例を示しているが,これに限らず,側面21a,21bの両面に対向するようにそれぞれ光源部10が設けられる形態としてもよい。」

カ 「【0029】
<プリズムシート>
次に,プリズムシート30について説明する。
図1及び図2に示すように,プリズムシート30は,シート状に形成された本体部31と,入光面となる本体部31の導光板21側(Z1側)の面に設けられたプリズム部32とを有している。このプリズムシート30は,導光板21から出射した光を,集光する作用を有している。
本体部31は,その導光板21側(Z1側)にプリズム部32を支持する平板状のシート状の部材である。そして,本体部31の導光板21側とは反対側の面が出光面30aとなる。本実施形態の出光面30aは,平坦で平滑な面として形成されている。しかし,出光面30aは,これに限らず,微小な凹凸が付された面,いわゆるマット面としてもよく,必要に応じた表面形態を適用することが可能である。
【0030】
プリズム部32には,前述の図1及び図2に示すように,複数の単位プリズム33が本体部31の入光側(Z1側)の面に,そのシート面に沿って複数並列されて形成されている。
単位プリズム33は,柱状であり,画面左右方向(X方向)を長手方向とし,その長手方向に所定の断面形状を維持して延在し,かつ,長手方向に直交する画面上下方向(Y方向)に複数並列されている。
ここで,シート面とは,各光学シート等において,そのシート全体として見たときにおける,シートの平面方向となる面を示すものであり,本明細書中,及び,特許請求の範囲においても同一の定義として用いている。例えば,プリズムシート30のシート面は,プリズムシート30全体として見たときにおける,プリズムシート30の平面方向となる面であり,プリズムシート30の出光面30aと平行であり,液晶パネル15の観察面と平行な面である。
・・・(中略)・・・
【0032】
図4は,本実施形態のプリズムシート30のプリズム部32を説明する図である。図4では,図2(a)に示す断面の一部を拡大して示した図である。
図4に示すように,本実施形態の単位プリズム33は,本体部31の導光板21側の面から導光板21側(Z1側)に突出した形状を有しており,本体部31のシート面と平行な方向における単位プリズム33の幅は,本体部31の法線方向(Z方向)に沿って本体部31から離れるにつれて小さくなっている。
本実施形態の単位プリズム33は,第1斜面34と,第2斜面35を有する略三角柱形状である。この第2斜面35は,傾斜角度が異なる複数の平坦面35a,35bを有し,第1斜面34と対向している。そして,隣り合う単位プリズム33の一方が有する第1斜面34と他方が有する第2斜面35が向き合うように配列されている。
単位プリズム33の並列方向は,光源部10から導光板21への光の供給方向に平行であり,その並列方向において,第1斜面34は,光源部10側となっている。」

【図4】


キ 「【0034】
図4に示すように,第1斜面34とプリズムシート30のシート面の法線Hとがなす角(入射面角)は,φ1である。また,第2斜面35の各平坦面のうち,頂点t側(Z1側)の平坦面35aと法線Hとがなす角(第1反射面角)は,φ2である。第2斜面35の各平坦面のうち,本体部31側(Z2側)の平坦面35bと法線Hとがなす角(第2反射面角)は,φ3である。
また,単位プリズム33のピッチはPであり,断面形状において本体部31側の幅がWである。本実施形態では,ピッチPは,幅Wに等しい。さらに,単位プリズム33の高さ(厚み方向における単位プリズム33間の谷底となる点から頂点tまでの寸法)がHである。」

ク 「【0065】
(実施例及び比較例の比較)
ここで,導光板21,プリズムシート30,視野拡大シート40の実施例又は比較例に相当する具体例を作成し,本実施形態の表示装置1の実施例及び比較例を作成し,その光学特性等を評価した。導光板21,プリズムシート30,視野拡大シート40の各具体例は,以下の通りである。
【0066】
(導光板21の具体例)
導光板21の具体例I,IIの各部の寸法等は以下の通りである。
具体例I:
出射側単位光学要素24:ピッチPa=50μm,頂角θ3=90°
裏面側単位光学要素26:ピッチPb=200μm,頂角θ6=178°
導光板21の総厚:0.8mm
具体例II:
出射側単位光学要素24:ピッチPa=50μm,頂角θ3=90°ただし,頂角は丸められ,頂部が出射側に凸となる曲面状
裏面側単位光学要素26:ピッチPb=200μm,頂角θ6=178°
導光板21の総厚:0.8mm
具体例I,IIはいずれも熱可塑性アクリル樹脂製である。
【0067】
(プリズムシート30の具体例)
プリズムシート30の例A,B,Cの単位プリズムの各部の寸法等は以下の通りである。
具体例Aの単位プリズム:
入射面角φ1=35.0°,第1反射面角φ2=40.3°,第2反射面角φ3=26.8°,高さH=36.7μm
具体例Bの単位プリズム:
入射面角φ1=35.0°,第1反射面角φ2=35.5°,第2反射面角φ3=30.5°,高さH=37.1μm
具体例Cの単位プリズム:
入射面角φ1=33.0°,第1反射面角φ2=33°,高さH=38.5μ(すわなち,二等辺三角柱状)
具体例A?Cは,いずれも単位プリズムのピッチP=50μmであり,本体部31には厚さ125μmのPET樹脂製のシート状の部材を使用した。
また,具体例A,Bにおいて,第2斜面の各平坦面の傾斜角度が変化する境界点の位置を,単位プリズムの高さを100%としたとき,単位プリズムの基底面から境界点までの高さを50%とした。
さらに,具体例A,B,Cのプリズムシートのプリズム部32は,紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂のプレポリマーを主成分とする紫外線硬化樹脂製である。」

ケ 「【0070】
(表示装置1の実施例1)
具体例Iの導光板の出射側単位光学要素24稜線方向と直交する側面に面する位置に点光源10aとしてLED光源からなる光源部10を配置した。光源部10は,表示装置の画面上下方向の下側に位置する。導光板の裏面側には,反射シート11として,銀を蒸着したPET樹脂製の反射シートを配置した。
具体例Iの導光板の観察者側には,観察者側から見て出射側単位光学要素24の並列方向と直交する方向に単位プリズムが並列された具体例Aのプリズムシートを,プリズム部32側を導光板側として配置し,面光源装置を作製した。
この面光源装置の観察者側に,画面サイズ9.7インチのTN型の液晶パネル15を積層して,その観察者側表面に具体例イの視野拡大シートを配置して粘着剤で貼合し,表示装置1の実施例1とした。
以下,略同様の工程を経て,表示装置1の実施例2?5及び比較例1?3を作成した。
実施例1?5及び比較例1?3の導光板,プリズムシート,視野拡大シートの組み合わせは,以下の表1に示す通りである。なお,実施例4の表示装置は,光源部10を液晶表示装置の画面左右方向の一端に配置し,導光板,プリズムシート及び視野拡大シートの各光学形状や単位プリズムを,実施例1とは直交する方向に変えて配置した。」

(2)引用文献に記載された発明
実施例1として開示された発明は,段落【0032】の「単位プリズム33の並列方向は,光源部10から導光板21への光の供給方向に平行であり,その並列方向において,第1斜面34は,光源部10側となっている」との記載を参照すれば,その単位プリズム33の形状からみて,光源部10は,導光板21の基部22の板状の対向する2組の側面のうち,出射側単位光学要素24の長手方向両端となる一組の側面21a,21bの一方の面のみに対して対向する位置に配置されることは明らかである。そうすると,引用文献には,実施例1として,以下の発明が記載されているものと認められる。なお,段落番号は,引用発明の認定に際して参照した引用例1の記載箇所を参考として示すために併記したものである。

なお,引用文献の【0027】の「出射側単位光学要素24の長手方向」との記載,【0070】の「出射側単位光学要素24稜線方向」との記載,同【0070】の「出射側単位光学要素24の並列方向と直交する方向」とは,いずれも同じ方向を指し示すことは明らかであるから,混乱を避けるため,これらを「出射側単位光学要素24の長手方向」と統一して表記する。

「導光板21と,光源部10と,プリズムシート30と,反射シート11とを備えるエッジライト型の面光源装置20であって(【0016】),
導光板21は,基部22と,出射側単位光学要素部23と,裏面側単位光学要素部25とを有し(【0017】),
前記出射側単位光学要素部23は,基部22のプリズムシート30側の面に形成され,前記出射側単位光学要素部23には,複数の出射側単位光学要素24が並列され, 出射側単位光学要素24は,柱状であり,断面形状を維持して,画面上下方向を長手方向とし,この長手方向と直交する方向である画面左右方向に複数並列され(段落【0018】),
光源部10は,導光板21の基部22の板状の対向する2組の側面のうち,出射側単位光学要素24の長手方向両端となる一組の側面21a,21bの一方の面に対して対向する位置に,その面に沿って配置され(【0027】),
前記プリズムシート30は,シート状に形成された本体部31と,入光面となる本体部31の前記導光板21側の面に設けられたプリズム部32とを有しており(【0029】),
前記プリズム部32には,複数の単位プリズム33がシート面に沿って複数並列されて形成されており(【0030】),
前記プリズムシート30の前記単位プリズム33は,第1斜面34と,第2斜面35を有する略三角柱形状であり,前記第2斜面35は,傾斜角度が異なる複数の平坦面35a,35bを有し,第1斜面34と対向しており,隣り合う単位プリズム33の一方が有する第1斜面34と他方が有する第2斜面35が向き合うように配列されたものであり(【0032】),
第1斜面34は,光源部10側であり(【0032】),
前記第1斜面34と前記プリズムシート30の前記シート面の法線Hとがなす角を入射面角φ1とし,前記第2斜面35の各平坦面のうち,頂点t側の平坦面35aと法線Hとがなす角を第1反射面角φ2とし,前記第2斜面35の前記各平坦面のうち,前記本体部31側の前記平坦面35bと法線Hとがなす角を第2反射面角φ3とした場合に(【0034】),
入射面角φ1=35.0°,第1反射面角φ2=40.3°,第2反射面角φ3=26.8°であり,その単位プリズム33の高さH=36.7μm,ピッチP=50μmであり,前記第2斜面35の各平坦面の傾斜角度が変化する境界点の位置を,単位プリズム33の高さを100%としたとき,単位プリズム33の基底面から境界点までの高さを50%とし(【0067】),
観察者側から見て出射側単位光学要素24の長手方向に前記単位プリズム33が並列された(【0070】),
面光源装置20。」(以下,「引用発明」)という。

5 対比
(1) 引用発明の「光源部10」,「導光板21」,「プリズムシート30」及び「面光源装置20」は,それぞれ,本願発明の「光源」,「導光板」,「光学シート」及び「面光源装置」に相当する。
また,引用発明の「単位プリズム33」,「本体部31」,「第1斜面34」,「第2斜面35」,「平坦面35a,35b」,「頂点t」及び「ピッチP」は,それぞれ,本願発明の「単位プリズム」,「本体部」,「第1プリズム面」,「第二プリズム面」,「要素面」,「先端部」及び「ピッチ」に相当する。

(2)
ア 引用発明は,「本体部31」と「プリズム部32」で「プリズムシート30」を構成するのであるから,本体部もまたシート状であることは明らかである。してみれば,引用発明の「本体部31」は「シート状」であるといえる。

イ 本願発明の「基端部」とは,段落【0054】に「第1プリズム面71および第2プリズム面72が本体部65にそれぞれ接続する位置において,単位プリズム70の基端部75bが画成されている。」と記載されていることから,単位プリズムの第1プリズム面及び第2プリズム面が本体部に接続する位置を指すものと認められる。引用発明においても,図2に示されたプリズム面の形状等からみて,引用発明の「単位プリズム33」が「二つの基端部」を有していることは明らかである。

ウ 引用発明の「プリズムシート30」は,「シート状に形成された本体部31と・・・プリズム部32とを有し」,「前記プリズム部32には,複数の単位プリズム33が・・・複数並列されて形成されており」,「観察者側から見て出射側単位光学要素24の長手方向に前記単位プリズム33が並列され」,かつ「略三角柱形状」なのであるから,「略三角柱形状」の「単位プリズム33」が,「観察者側から見て出射側単位光学要素24の長手方向」(本願発明の「第1方向」に該当する。)と交差する方向に延びていることは明らかである(このことは,図1からも直ちに見て取れる事項である。)。
したがって,引用発明の「プリズムシート30」は,本願発明の「シート状の本体部と,第1方向に配列された複数の単位プリズムであって,各々が前記第1方向と交差する方向に延びている,複数の単位プリズムと,を有する」との要件を満たす。

(3) 引用発明の「プリズムシート30」は,「シート状に形成された本体部31と,入光面となる本体部31の前記導光板21側の面に設けられたプリズム部32とを有」するのものであり,「プリズム部32」には,複数の「単位プリズム33」が形成されているのであるから,「プリズムシート30の単位プリズム33に対面するようにして配置」されている。したがって,引用発明の「導光板21」は,本願発明の「光学シートの前記単位プリズムに対面するようにして配置」されるとの要件を満たす。

(4) 引用発明の「出射側単位光学要素24の長手方向」は本願発明の「第1方向」に対応するのであるから,引用発明の「導光板21」の「出射側単位光学要素24の長手方向両端となる一組の側面21a,21b」は,本願発明の「導光板」の「第1方向に対向する一対の側面」に相当する。

(5) 引用発明の「プリズムシート30」は,「観察者側から見て出射側単位光学要素24の長手方向に前記単位プリズム33が並列され」るのであるから,引用発明の「単位プリズム33」を構成する「第1斜面34」は本願発明の「第1方向の一側を向く」との要件を満たし,「第2斜面35」は本願発明の「第1方向の他側を向く」との要件を満たすことは明らかである。

(6) 引用発明の「プリズムシート30」は「略三角形柱状」であって,かつ「観察者側から見て出射側単位光学要素24の長手方向」に並列されるものであり,かつ「単位プリズム33」の「第2斜面35」は傾斜角度が異なる「複数の平坦面35a,35b」を有するのであるから,引用発明の「第2斜面35」は,本願発明の「前記第1方向と前記本体部の法線方向との両方に平行な主切断面において,折れ線状に,或いは,折れ線の角部を面取りしてなる形状となる外輪郭を有し」との要件を満たす。

(7) 引用発明の「単位プリズム33」は,「前記第1斜面34と前記プリズムシート30の前記シート面の法線Hとがなす角を入射面角φ1とし,前記第2斜面35の各平坦面のうち,頂点t側の平坦面35aと法線Hとがなす角を第1反射面角φ2とし,前記第2斜面35の前記各平坦面のうち,前記本体部側の前記平坦面35bと法線Hとがなす角を第2反射面角φ3とした場合に」「入射面角φ1=35.0°,第1反射面角φ2=40.3°,第2反射面角φ3=26.8°」とされている。ここで,上記「シート面の法線」と「出射側単位光学要素24の長手方向」(本願発明の「第1方向」に相当)とのなす角は90°であるから,第前記1反射面角及び前記第2反射面角を「出射側単位光学要素24の長手方向」に対する傾斜角度で表現すると,それぞれ49.7°,63.2°となり,その値はしだいに大きくなっている。
してみれば,引用発明の「第2斜面35」は,「前記主切断面において前記第1方向に対する傾斜角度が,前記本体部から最も離間した単位プリズムの先端部の側から,前記本体部に最も近接した単位プリズムの基端部の側へ向けて,しだいに大きくなるように配置された二つ又は三つの要素面を含」むとの要件を満たす。

(8) 引用発明の「単位プリズム33」は,「前記第1斜面34と前記プリズムシート30の前記シート面の法線Hとがなす角を入射面角φ1とし,前記第2斜面35の各平坦面のうち,頂点t側の平坦面35aと法線Hとがなす角を第1反射面角φ2とし,前記第2斜面35の前記各平坦面のうち,前記本体部側の前記平坦面35bと法線Hとがなす角を第2反射面角φ3とした場合に」,「入射面角φ1=35.0°,第1反射面角φ2=40.3°,第2反射面角φ3=26.8°であり,その単位プリズム33の高さH=36.7μm」とし,「前記第2斜面35の各平坦面の傾斜角度が変化する境界点の位置を,単位プリズム33の高さを100%としたとき,単位プリズム33の基底面から境界点までの高さを50%」とするものである。ここで,「単位プリズム33」の底辺の幅のうち,「第1斜面34」の部分(以下,この幅を「W1」と表記する。)は36.7×tan(35×π/180)μmとなり,「第2斜面35」の部分(以下,この幅を「W2」と表記する。)は36.7/2×[tan(40.3×π/180)+tan(26.8×π/180)]μmとなる。そして,「単位プリズム33」の底辺の幅に対する,「単位プリズム33」の二つの基端部の中点と当該「単位プリズム33」の「頂点t」とのずれ量の比は,以下のように表すことができる。
|W1-(W1+W2)/2|/(W1+W2)
これを計算すると,概ね0.0086程度となるから,引用発明の「単位プリズム33」は,本願発明の「前記主切断面において,前記単位プリズムの二つの基端部の中点と当該単位プリズムの前記先端部との前記第1方向に沿ったずれ量zの,当該単位プリズムの前記第1方向に沿った幅Wbに対する比(z/Wb)が次の条件を満たす 0 ≦ |z/Wb| ≦ 0.06」との要件を満たしている。

(9)引用発明は,「導光板21の基部22の板状の対向する2組の側面のうち,出射側単位光学要素24の長手方向両端となる一組の側面21a,21bの一方の面に対して対向する位置に,その面に沿って配置され」る「光源部10」を有するのであるから,引用発明と本願発明とは,「導光板の第1方向における一側に位置する側面に対面した配置された光源」を備える点で一致している。

(10)前記(1)ないし(9)に照らせば,本願発明と引用発明とは,

「シート状の本体部と,第1方向に配列された複数の単位プリズムであって,各々が前記第1方向と交差する方向に延びている,複数の単位プリズムと,を有する光学シートと,
前記光学シートの前記単位プリズムに対面するようにして配置された出光面と,前記第1方向に対向する一対の側面と,を有する導光板と,
前記導光板の前記第1方向における一側に位置する前記側面に対面して配置された光源と,を備え,
各単位プリズムは,前記第1方向の一側を向く第1プリズム面と,前記第1方向の他側を向く第2プリズム面と,を含み,
前記第2プリズム面は,前記第1方向と前記本体部の法線方向との両方に平行な主切断面において,折れ線状に,或いは,折れ線の角部を面取りしてなる形状となる外輪郭を有し,前記第2プリズム面は,前記主切断面において前記第1方向に対する傾斜角度が,前記本体部から最も離間した単位プリズムの先端部の側から,前記本体部に最も近接した単位プリズムの基端部の側へ向けて,しだいに大きくなるように配置された二つ又は三つの要素面を含み,
前記主切断面において,前記単位プリズムの二つの基端部の中点と当該単位プリズムの前記先端部との前記第1方向に沿ったずれ量zの,当該単位プリズムの前記第1方向に沿った幅Wbに対する比(z/Wb)が,次の条件を満たす,面光源装置。
0 ≦ |z/Wb| ≦ 0.06」

である点で一致し,次の点で相違する。

相違点1:
本願発明は,「前記単位プリズムの配列ピッチが,10μm以上40μm以下」であるのに対し,引用発明は50μmである点。

相違点2:
本願発明は,「光学シートの導光板の側とは反対側に配置された反射型偏光分離シート」を具備するのに対し,引用発明は反射型偏光分離シートを具備しない点。

6 判断
(1)相違点について
ア 相違点1について
引用発明では,「単位プリズム33」のピッチは50μmとされているものの,引用文献の段落【0042】には,「単位プリズム33のピッチPは,特に限定されないが,通常10?100μmである。」と記載されており,10?100μmの範囲において,50μm以外のピッチとすること自体を否定する説明は何ら見出せず,50μmという値そのものに格別な理由を見出せないから,引用発明において,10?100μmの範囲から実際に製造しようとする製品に応じて,適宜設定し得るものである。
また,プリズムシートなどの光学部材において,その部材を薄型化することは一般的な課題であって(一例として,特開2010-231896号公報の段落【0030】には,ピッチ幅を小さくすると,プリズムシート厚が薄くなるので好ましいことが記載されている。),引用発明において,薄型化するために,そのピッチ幅を,引用文献中に開示された「10?100μm」という範囲中で,50μmよりも小さな「10?40μm」の範囲内の値に変更することは,当業者が適宜なし得た設計変更にすぎない。
そして,光学部材を薄型化する際には,その光学特性を変動させないように,部材の相似関係を保ったまま比例縮小するのが技術常識であるから,当業者は,引用発明のピッチ幅を変更したとしても,単位プリズム33の二つの基端部の中点と当該単位プリズム33の頂点tとの出射側単位光学要素24の長手方向に沿ったずれ量の,出射側単位光学要素24の長手方向に沿った当該単位プリズム33の幅に対する比を変更させることはないものと認められる。

イ 相違点2について
面光源装置を備えた液晶表示装置の技術分野において,光源が発する光の利用効率を改善し,輝度を向上させるために,反射型偏光分離シートを面光源装置に設けることは,本件出願より前に周知の技術である(例えば,特開2013-77473号公報の段落【0031】,【0032】及び図1や特開2010-140035号公報の段落【0023】,【0024】及び図1を参照。)。
引用発明の面光源装置20は液晶表示装置に用いられるものである(引用文献の【0012】等の記載を参照。)ところ,引用発明を用いた液晶表示装置における光の利用効率を改善し,輝度を向上させるために,引用発明に前記周知技術を適用して,反射型偏光分離シートを設けることは,当業者が容易に想到し得たことである。

(2)効果について
本願発明の奏する効果は,引用発明に基づいて,当業者が予測できた程度のものである。

(3)請求人の主張について
請求人は,平成28年6月23日に提出した意見書(以下,単に「意見書」という。)において,以下のように主張している。

ア 課題について
請求人は,意見書の第7段落において,引用文献には本願の課題がない旨主張している。
しかし,本願の課題の有無にかかわらず,引用発明に対して反射型偏光分離シートを適用する動機付けとなるに足る課題の存在が認められることは,上記6(1)イにおいて既に検討したとおりである。

イ ピッチ幅について
請求人は,意見書の第8?9段落において,配列ピッチを設計事項と判断することは誤りである旨主張しているが,配列ピッチを本願発明のようなものとすることについて進歩性が認められないことは,上記 6(1)アにおいて既に検討したとおりである。

(4)まとめ
以上のとおりであるから,本願発明は,引用発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

7 むすび
本願の請求項1に係る発明は,引用発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願は,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-08-02 
結審通知日 2016-08-05 
審決日 2016-08-25 
出願番号 特願2014-69820(P2014-69820)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 加藤 昌伸  
特許庁審判長 藤原 敬士
特許庁審判官 清水 康司
道祖土 新吾
発明の名称 面光源装置および表示装置  
代理人 勝沼 宏仁  
代理人 堀田 幸裕  
代理人 永井 浩之  

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