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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F |
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管理番号 | 1320104 |
審判番号 | 不服2016-3171 |
総通号数 | 203 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2016-11-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2016-03-01 |
確定日 | 2016-10-31 |
事件の表示 | 特願2014-523162「ローカルに記憶されたデータファイルに関連付けられたトランザクションデータの収集」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 2月 7日国際公開、WO2013/016868、平成26年 9月22日国内公表、特表2014-524603、請求項の数(21)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成23年8月3日を国際出願日とする出願であって、平成27年2月5日付けで拒絶理由が通知され、同年6月9日付けで手続補正がされ、同年10月28日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成28年3月1日に拒絶査定不服審判が請求されると共に手続補正がされたものである。 第2 平成28年3月1日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)の適否 1.補正の内容 本件補正は、特許請求の範囲の請求項8を、 「ファイル記憶部に前記一組のデータファイルへの前記変更を記憶するステップをさらに含む、請求項6に記載のコンピュータ実装方法。」 とする補正(以下、「補正事項1」という。)を含んでいる。 2.補正の適否 本件補正の補正事項1は、請求項8の「前記ファイル記憶部」との記載における「前記」との記載を削除し「ファイル記憶部」とするものであって、平成27年10月28日付け拒絶査定に示す事項についてするものであるから、特許法第17条の2第5項第4号の明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。 また、特許法17条の2第3項、第4項に違反するところはない。 第3 本願発明 本件補正は上記のとおり、特許法第17条の2第3項ないし第5項の規定に適合するから、本願の請求項1-21に係る発明は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1-21に記載された事項により特定されるものと認められるところ、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は以下のとおりである。 「【請求項1】 ページの携帯閲覧を可能にするためのシステムであって、 複数のデータファイルおよびコンテンツスクリプトを記憶するデータ記憶部と、 ネットワークを用いて前記データ記憶部と通信するように構成されるコンピューティングデバイスと、 を備え、 前記コンピューティングデバイスは、ファイル記憶部を備え、 前記データ記憶部から前記コンテンツスクリプトを受信し、かつ前記複数のデータファイルから第1のデータファイルを受信し、 前記コンテンツスクリプトを実行して、 トランザクションデータを入力することによって入力される、前記第1のデータファイルへの変更を許容し、 前記ファイル記憶部に前記第1のデータファイルへの前記変更を記憶し、かつ 前記コンピューティングデバイスが前記ネットワークを介して前記データ記憶部に接続されているかを判定し、 前記コンピューティングデバイスが前記データ記憶部に接続されていると判定された場合、前記コンテンツスクリプトを実行して、前記データ記憶部に前記第1のデータファイルへの前記変更を送信し、かつ前記データ記憶部から前記コンテンツスクリプトへの変更を受信する、 システム。」 第4 原査定の理由の概要 この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 (引用文献等については引用文献等一覧参照) ・請求項 1 ・刊行物等 引用文献1 ・備考 引用文献1には以下の発明が記載されている。 「【要約】 モバイルユーザにより使用される複数の種々のモバイルコンピューティングシステムを動作させるシステムが開示されている。加入者データベース150はモバイルユニットのハードウェア及び/またはソフトウェア能力に関する情報を含んで提供される。アプリケーションサーバ100は加入者データベース150にアクセスして、スクリプトセグメントから、ユニットのハードウェア及び/またはソフトウェア能力に対応するアプリケーションスクリプトの準備を行うことができる。 マークアップ言語のマスターアプリケーション715はアプリケーションスクリプトの準備のために使用される。スクリプトの形式であるアプリケーション及びデータは、各モバイルコンピューティング装置にダウンロードされ、情報サーバデータベース460に保持された情報にデータ及びアプリケーションを周期的にシンクロナイズしつつ、オフラインで機能し続けることができる。」 上記モバイルコンピューティング装置が本願発明のコンピューティングデバイスに相当する物であって、上記「スクリプトの形式であるアプリケーション及びデータ」は本願発明の「コンテンツスクリプト及びデータファイル」に相当し、引用文献1の上記「スクリプトの形式であるアプリケーション及びデータは、各モバイルコンピューティング装置にダウンロードされ、情報サーバデータベース460に保持された情報にデータ及びアプリケーションを周期的にシンクロナイズしつつ、オフラインで機能し続けることができる。」との記載を参照すれば、引用文献1記載のコンピューティング装置が、情報サーバデータベース(データ記憶部)に接続されていると判定された場合に、データ(ファイル)への変更を送信する構成とすることは当業者が容易に想到し得たことである。 したがって、本願の請求項1及び4に係る発明は、引用文献1に記載されている発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものである。 引 用 文 献 等 一 覧 1.特表2004-506282号公報 先に通知した引用文献1には「スクリプトの形式であるアプリケーション及びデータは、各モバイルコンピューティング装置にダウンロードされ、情報サーバデータベース460に保持された情報にデータ及びアプリケーションを周期的にシンクロナイズしつつ、オフラインで機能し続けることができる。」([要約]を参照)発明が記載されている。 出願人は、平成27年6月9日付け意見書において、引用文献1に記載の発明は、モバイルコンピューティング装置が、情報サーバデータベースに接続されていると判定された場合にデータへの変更を送信する点について、上記情報サーバデータベースから送信されたスクリプトをモバイルコンピューティング装置が実行することによって、サーバとの接続の可用性を検査することは行われてなく、モバイル装置200とアプリケーションサーバ100との間のネットワークの接続に関する判定を行う旨は何ら記載されてなく、本願発明は、そのようなネットワークの接続に関する判定を行い、接続されていると判定されてからデータの送信を行うので、データ記憶部に無駄なく確実にデータを送信することができるという効果を奏する旨、主張している。 しかしながら、引用文献1記載のモバイルコンピューティング装置のように、ネットワークへ常時接続がされていない機器が、自動的にネットワークの接続に関する判定を行って、サーバに接続されていると判定された場合にデータの送信を行うことは本願の出願時において慣用技術であった。例えば、本願の出願の相当前に公開された引用文献2に以下の記載がある。 「使い方が非常にわかりにくかったブリーフケースに代わり,Windows 2000ではオフラインフォルダがサポートされる。この機能はネットワークサーバ上の共有フォルダ/共有ファイルをローカルのHDD上にコピーしておき,サーバに接続できない状態でもアクセスを可能にするというもの。定期的にネットワーク接続を確認して,自動的に同期させることもできる。 アプリケーションからは通常のフォルダ,ファイルとまったく同じようにアクセスできるため,ノートPCをネットワークから切り離して持ち歩く際,必要なファイルだけをローカルにコピーしておいたり,共有するファイルをサーバにコピーするといった手間が一切かからない。 たとえば共有したいファイルは,すべてオフラインフォルダに作成するようにすれば,ネットワークに接続した後,自動的に同期がとられ,サーバ上に保存される。逆に資料がつねに置かれているフォルダをオフラインに設定しておけば,最新の資料を外出先でも参照できるようになる(画面4・5)。」(302ページ右欄7-27行) 引用文献1記載のモバイルコンピューティング装置が、自動的にネットワークの接続に関する判定を行って、情報サーバデータベースに接続されていると判定された場合に、データの送信を行うよう構成することは、上記慣用技術の付加に過ぎず、当業者であれば容易に想到し得たことである。 したがって、出願人の主張は採用できない。 <引用文献等一覧> 1.特表2004-506282号公報 2.本田雅一,個人利用から企業システムまでよくわかるWindows2000講座 Windows2000が必要な19の理由,ASCII,日本,株式会社アスキー,1999年 7月 1日,第23巻 第7号,pp.300-305(周知技術を示す文献) 第5 当審の判断 1.引用例の記載事項と引用例記載の発明 原査定で引用された、特表2004-506282号公報(以下「引用例」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。 a)「【要約】 モバイルユーザにより使用される複数の種々のモバイルコンピューティングシステムを動作させるシステムが開示されている。加入者データベース150はモバイルユニットのハードウェア及び/またはソフトウェア能力に関する情報を含んで提供される。アプリケーションサーバ100は加入者データベース150にアクセスして、スクリプトセグメントから、ユニットのハードウェア及び/またはソフトウェア能力に対応するアプリケーションスクリプトの準備を行うことができる。 マークアップ言語のマスターアプリケーション715はアプリケーションスクリプトの準備のために使用される。スクリプトの形式であるアプリケーション及びデータは、各モバイルコンピューティング装置にダウンロードされ、情報サーバデータベース460に保持された情報にデータ及びアプリケーションを周期的にシンクロナイズしつつ、オフラインで機能し続けることができる。」(【要約】の記載。) b)「本発明のさらなる目的は、個々のモバイル通信及びコンピューティング装置が周期的にオンまたはオフラインになる場合に、システムが機能することを可能にするための手段を提供することである。ここで現時点における極端な一例では、モバイルコンピューティング装置は一日に一回情報(例えばタスクのリスト)をダウンロードし、その日の終わりに中央のサーバにアップロードする。他の極端な一例は、オンラインでアクセスできるウェブサーバアプリケーションを提供するものとして知られている。しかしながら、オフラインの場合にはこのタイプのシステムは機能することができず、また恒久的に接続され続けると非常に高価につくので、財政的に実行可能とはいえない。 従って本発明の別の目的は、前記モバイル通信ネットワークが利用不能の場合にもシームレスに機能し続けることができると同時に、基礎システムとのモバイルのネットワーク通信の通信可能性からモバイルワーカが利益を得ることができるようにすることにある。 さらなる目的は、例えばインターネットの常時接続の高いコストを伴わないリモートサーバとの動的通信の利点を得ることである。」(第4頁第28?40行の記載。)(下線は、当審で付与。以下、同様。) c)「システム概観 図1は、システムの個々の構成要素及びこれらの間の接続をブロック形態で図説する。システムはウェブアプリケーションサーバ100と、スクリプトを実行でき、例として201?204で示され、一般には200で参照される複数のモバイルコンピューティング装置とを含む。典型的には、例として451?453で示され、一般に450で参照される1つまたはそれ以上の情報サーバがさらに備えられている。」(第6頁第19?24行の記載。) d)「モバイル装置のハードウェア/ソフトウェア モバイル装置200の例は、ブラウザ211で動作可能なJavaScript(商標)を備えたウィンドウズCE(商標)モバイル装置201、WAPサーバ222を通じて接続されるWMLScript(商標)212を備えたWAPモバイル装置202、KVM(商標)モバイル装置203、あるいはJava(商標)バーチャルマシンである。iMode(商標)や他のフォーマットのような将来の技術も使用できることは明白である。他の実施例においては、以下に説明されているが、ここではMAMLと称されている特許フォーマットでの未翻訳アプリケーションは、MAML動作可能モバイル装置(MAML enabled mobile device)204により翻訳されうる。本質的には、個々のモバイルの装置200はウェブアプリケーションサーバ100と情報を交換し、ユーザインターフェイスを通じてスクリプト及び入出力データを実行する能力を要求される。」(第6頁第43行?第7頁第4行の記載。) e)「アプリケーションサーバハードウェア/ソフトウェア ウェブアプリケーションサーバは、業界の標準的な開発環境中でインプリメント(implemented)でき、例えばCOLDFUSION(商標)のようなアプリケーションサーバである。有用には、COLDFUSION(商標)は、ウインドウズNT(商標)、SOLARIS(商標)、LINUX(商標)のような任意のプラットフォーム上で実行することができる。HTTPサーバは、例えばAPACHE(商標)あるいは他の同様のサーバを使用してインプリメントされる。 ウェブアプリケーションサーバ100は、200で一般的に示す個々の加入者モバイル装置に関連する、ハードウェアとソフトウェアの能力、構成及びユーザデータについての情報を含む加入者データベース150にアクセスする。加入者データベースについては以下にさらに説明する。典型的には、加入者データベースはウェブアプリケーションサーバ100に直接接続され;二者択一的に、情報は情報サーバまたはMAML動作可能モバイル装置204上に格納することができる。」(第7頁第32?44行の記載。) f)「情報サーバ・ハードウェア/ソフトウェア 情報サーバシステムは典型的にはHTTPサーバ400と情報サーバを含む。ネイティブまたはODBCドライバ470が、サーバ451と関連データベース460との間を接続するために使用されていてもよい。前記データベース及びドライバは、例えばSybase(商標)、Oracle(商標)、DB2(商標)、SQLサーバ(商標)などから入手可能な共通ソフトウェアツールを使用して、容易にインプリメントされる。一般に入手可能な情報サーバはVANMAN(商標)、OPTRAC(商標)及びSystems Union(商標)により販売されているものが含まれる。 典型的には、中央ウェブアプリケーションサーバ100はインターネットを通じて451、452及び453として例示され、一般に450と呼ばれる1つまたはそれ以上の情報サーバシステムに接続される。情報サーバ450は、ウェブアプリケーションサーバ100を所有するのと同じ組織に属していてもよく、第三者組織に属していてもよい。重要なのは、これらの各情報サーバシステムは、内部構成及び構造において完全に異なっていてもよいということである。ただ一つ必要なのは、以下に論じられる特定のインターフェイスフォーマットで中央ウェブアプリケーションサーバと通信可能なことである。情報サーバは、モバイルユニットのユーザによって要求される情報を提供し、かつモバイルユニットから返送された情報を格納するように機能する。例えば情報サーバは、ウェブアプリケーションサーバ100によって提供される便益に申込をした特定の組織に属する特定のモバイルユーザにより特定の日に実行されるタスクのリストに関する情報を含む。」(第7頁第45行?第8頁第13行の記載。) g)「エンドユーザによるシステムの使用 図2は、個々の移動するワーカにより所有されているモバイル通信装置及びシステムの1日の使用の例のフローチャートを示す。重要なのは、全体としてのシステムは、モバイルユニットに広範囲なパーソナリゼーションを要求することなく、異なるモバイルユニットとともに動作することができるということである。これを可能にするシステムの1面は、個々のモバイルユニットに送られたスクリプトをカスタマイズする下記のMAML/AXMLの使用、及び個々のモバイルユニットに関する情報を加入者情報データベースに格納するウェブアプリケーションサーバの能力である。 最初に(601)、モバイル通信装置は上述したようなイントラネットまたはインターネットのようなネットワークを介して、中央ウェブアプリケーションサーバ100に上に接続する。接続(602)の後、603において装置は、例えばTCP/IPを使用して、情報サーバ450または中央ウェブアプリケーションサーバ100にログインする。モバイルユニットはURL(universal resource locator)によって定義されるスタートページにログインしてもよい。例えばモバイルユニットは、情報サーバ450の所有者/ユーザに属するウェブページに接続してもよい。好ましくは、これはウェブアプリケーションサーバ100のインターネットアドレスである。 モバイルユニットは、パスワードなどの情報を有する特定のユーザのために予めセットアップされていてもよい。二者択一的に、ウェブアプリケーションサーバは、ユーザを立証するために発呼者回線識別(caller line identification)、クッキーあるいはその他の識別技術を使用することができる。そしてユーザは認識または拒絶される(604)。ログインの際にシステムは、ユーザセットアップの一部としてユーザ605及びその装置を識別する。加入者データベース150はさらに、使用している装置のタイプ、その位置、ビジネスの性質、アクセスを許可すべき第三者アプリケーションサーバ450のタイプなどのモバイル装置の特定ユーザに関連する情報を含んでいてもよい。続いてドキュメントが中央ウェブアプリケーションサーバ及び第三者アプリケーションサーバ415からダウンロードされる(606)。 ダウンロードされた特定の情報は、中央の加入者データベース150の中に保持された情報、及び第三者データベース及びサーバ450、460に格納されたタスク情報に基づく。 これらは個々のプロジェクトを制御する貯蔵所(depot)から直接管理することができる。これは例えば人が訪れる場所のような特別の一連のタスクを指図し、貯蔵所によって決定された小包はそこで下ろされる。情報は、アプリケーション及び関連するデータの両方を含むスクリプトの形式でダウンロードされる。スクリプトは特定のモバイルユニット及びモバイルワーカのためにカスタマイズされており、アプリケーションはそれらの特定のモバイルユニット上の機能に適応し、データはタスクの特定のリストにカスタマイズされている。このカスタマイズについては後述する。 認識605の後、かつ典型的にはダウンロードの後あるいはダウンロード606と同時のある時点で、ある実施例においては、モバイルユニット200はロックされて(607)他の機能性へのアクセスが防止される。これは携帯型ユニットの完全な機能性を規定することができるが、例えば、十分なオペレーティングシステムの機能性に戻ることを許可するための限定的なオプションパスワードを用意することもできる。プログラムが実行されている間の他のモバイル装置の機能性へのアクセスは、ユーザの性質及びユーザの技術的高度レベルに関して、加入者データベース150上で保持されている情報に依存して変化する。ロックは不可欠ではないが、ユーザによっては好ましいであろう。 次に、ユーザは彼らの1日の仕事608を実行する。例えば、ユーザはレシート、仕事のプリントアウトなどのような情報をプリントして、仕事及び関連情報のリストを見ることができる。ユーザはバーコード情報を読み取り、インテリジェントタグ(intelligent tags)に対しリード/ライトを行うことができる。ユーザは署名や他の識別資料をキャプチャして、ベース(base)に送信し返すこともできる。この発明の利点は、このアップロードをその日の終わりにだけ実行し、あるいは業務を遂行している間常にオンラインにして実行しなければならない代わりに、データ及びアプリケーションのシンクロナイズを間隔を置いて実行することができる、ということにある。さらに、オフラインでクレジットカード/スマート・カード情報を読み取り、コスト決定の計算などのような複雑な業務情報を処理することができ、また移動ブラックボックス(vehicle black boxes)、GPSなどのような他の装置と通信を行うことができる。重要なことは、インタフェース設計が単純で、容易に使用できることである。 一日のどの時点でも、ユーザはシンクロナイズ609/送信/ウェブアプリケーションサーバ100及び情報サーバからの情報のダウンロードを行うことができる。例えば、小包の集配や配達のようなタスクが終わったという情報を送信することができ、また新たなタスクに関する情報を入手することができる。単にデータを交換しシンクロナイズするだけでなく、システムはモバイルユニット上で実行される実際のアプリケーションソフトウェアを交換しシンクロナイズさせることができる。したがって容易にソフトウェアのアップデートをダウンロードすることができる。異なるソフトウェアが必要になるいくつかの異なる第三者情報サービス451、452及び453を取り扱いたい場合、この特徴は特に重要になるだろう。 用語「シンクロナイズ」とは、タスクのリストのような2つの異なるデータセットを意味において合致させる既知のプロセスのことを言う。典型的には、モバイルユニット中のタスクのリストは、情報サーバ450あるいは関連データベース460に格納されたタスクのリストにシンクロナイズされる。例えば、モバイルユニットが特定のタスクに関するレコードをアップデートした時に、シンクロナイズ処理は、データベース460中のレコードを、そのアップデートしたレコードにアップデートすることを含む。両方のレコードが変更された状態を処理するための規則は当業者により容易に記述できる。アプリケーションのシンクロナイズには、モバイルユニット内のアプリケーションが、ウェブアプリケーションサーバ100により最も適切であると考えられるバージョンである、ということを保証することを含んでいる。 次に、1日の終わりに、ユーザは中央ウェブアプリケーションサーバ100に再接続し、その日に実行したタスクに関するデータをアップロードする(610)。この時点で、その日のタスクが終了し(611)、1つの旅行で扱うべき情報が完了し、別の旅行を直ちに、もしくは後日始めることができる。本出願中、「1日」を個々の旅行の期間として称してきたが、これは任意の期間であり、例えば数時間、数日あるいは数週間、もしくは不確定でもよいことは、当業者には明らかである。 上記のオペレーションルーチンは、例えばヴァン販売(van sales)、小包の配達、燃料サービスなどのシステムのすべての潜在的な利用に共通である。」(第8頁第14行?第9頁第46行の記載。) h)「本発明は、常時接続のコストを必要とすることなく、また日割りで情報のダウンロード/アップロード可能な時間を単に制限することなしで、モバイルワーカが定期的にアップデートされたアプリケーション及びデータでモバイルユニットを利用できるようにする。」(第12頁第4?6行の記載。) 上記下線部及び関連箇所の記載によれば、引用例には以下の発明(以下、「引用例記載の発明」という。)が記載されている。 「システムはウェブアプリケーションサーバ100と、スクリプトを実行でき、200で参照される複数のモバイルコンピューティング装置とを含み、450で参照される1つまたはそれ以上の情報サーバがさらに備えられており、 モバイル装置200の例は、ブラウザ211で動作可能なJavaScript(商標)を備えたモバイル装置201であり、個々のモバイルの装置200はウェブアプリケーションサーバ100と情報を交換し、ユーザインターフェイスを通じてスクリプト及び入出力データを実行する能力を要求され、 ウェブアプリケーションサーバ100は、個々の加入者モバイル装置に関連する、ハードウェアとソフトウェアの能力、構成及びユーザデータについての情報を含む加入者データベース150にアクセスするものであり、中央ウェブアプリケーションサーバ100はインターネットを通じて450で参照される1つまたはそれ以上の情報サーバシステムに接続され、 情報サーバは、モバイルユニットのユーザによって要求される情報を提供し、かつモバイルユニットから返送された情報を格納するように機能するものであり、 個々の移動するワーカにより所有されているモバイル通信装置及びシステムの1日の使用の例のフローチャートは、 最初に(601)、モバイル通信装置はネットワークを介して、中央ウェブアプリケーションサーバ100に接続し、 接続(602)の後、603において装置は、情報サーバ450または中央ウェブアプリケーションサーバ100にログインし、 そしてユーザは認識または拒絶され(604)、 ログインの際にシステムは、ユーザ605及びその装置を識別し、 続いてドキュメントが中央ウェブアプリケーションサーバ及び第三者アプリケーションサーバ415からダウンロードされ(606)、 ダウンロードされた特定の情報は、中央の加入者データベース150の中に保持された情報、及び第三者データベース及びサーバ450、460に格納されたタスク情報に基づき、情報は、アプリケーション及び関連するデータの両方を含むスクリプトの形式でダウンロードされるものであり、スクリプトは特定のモバイルユニット及びモバイルワーカのためにカスタマイズされており、アプリケーションはそれらの特定のモバイルユニット上の機能に適応し、データはタスクの特定のリストにカスタマイズされており、 次に、ユーザは彼らの1日の仕事608を実行し、 一日のどの時点でも、ユーザはシンクロナイズ609/送信/ウェブアプリケーションサーバ100及び情報サーバからの情報のダウンロードを行うこと、例えば、タスクが終わったという情報を送信すること、また新たなタスクに関する情報を入手すること、単にデータを交換しシンクロナイズするだけでなく、システムはモバイルユニット上で実行される実際のアプリケーションソフトウェアを交換しシンクロナイズさせ、容易にソフトウェアのアップデートをダウンロードすることができ、例えば、モバイルユニットが特定のタスクに関するレコードをアップデートした時に、シンクロナイズ処理は、データベース460中のレコードを、そのアップデートしたレコードにアップデートすることを含み、 次に、1日の終わりに、ユーザは中央ウェブアプリケーションサーバ100に再接続し、その日に実行したタスクに関するデータをアップロード(610)し、 この時点で、その日のタスクが終了(611)するものであり、 スクリプトの形式であるアプリケーション及びデータは、各モバイルコンピューティング装置にダウンロードされ、情報サーバデータベース460に保持された情報にデータ及びアプリケーションを周期的にシンクロナイズしつつ、オフラインで機能し続ける システム。」 原査定で提示された、本田雅一,個人利用から企業システムまでよくわかるWindows2000講座 Windows2000が必要な19の理由,ASCII,日本,株式会社アスキー,1999年 7月 1日,第23巻 第7号,pp.300-305(以下「周知例」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。 i)「理由9オフラインでもサーバ上のファイルにアクセス「オフラインフォルダ」 使い方が非常にわかりにくかったブリーフケース^(*21)に代わり,Windows 2000ではオフラインフォルダがサポートされる。この機能はネットワークサーバ上の共有フォルダ/共有ファイルをローカルのHDD上にコピーしておき,サーバに接続できない状態でもアクセスを可能にするというもの。定期的にネットワーク接続を確認して,自動的に同期させることもできる。 アプリケーションからは通常のフォルダ,ファイルとまったく同じようにアクセスできるため,ノートPCをネットワークから切り離して持ち歩く際,必要なファイルだけをローカルにコピーしておいたり,共有するファイルをサーバにコピーするといった手間が一切かからない。 たとえば共有したいファイルは,すべてオフラインフォルダに作成するようにすれば,ネットワークに接続した後,自動的に同期がとられ,サーバ上に保存される。逆に資料がつねに置かれているフォルダをオフラインに設定しておけば,最新の資料を外出先でも参照できるようになる(画面4・5)。」(第302頁右欄第7-30行の記載。) 上記下線部及び関連箇所の記載によれば、周知例には以下の技術(以下、「周知例記載の技術」という。)が記載されている。 「ネットワークサーバ上の共有フォルダ/共有ファイルをローカルのHDD上にコピーしておき、サーバに接続できない状態でもアクセスを可能にするために、共有したいファイルは、すべてオフラインフォルダに作成すれば、ネットワークに接続した後、自動的に同期がとられ、サーバ上に保存され、定期的にネットワーク接続を確認して、自動的に同期させる技術。」 。 2.対比 本願発明と引用例記載の発明とを対比する。 ア.引用例記載の発明の「システム」が備える「モバイルコンピューティング装置」は「ブラウザ211で動作可能なJavaScript(商標)を備えたモバイル装置201であり、個々のモバイルの装置200はウェブアプリケーションサーバ100と情報を交換し、ユーザインターフェイスを通じてスクリプト及び入出力データを実行する能力」を有するものであるから、引用例記載の発明の「システム」は、本願発明の「ページの携帯閲覧を可能にするためのシステム」に相当する。 イ.引用例記載の発明の「ウェブアプリケーションサーバ100」は、「加入者データベース150にアクセスするもの」であると共に「450で参照される1つまたはそれ以上の情報サーバシステムに接続」され、「情報サーバは、モバイルユニットのユーザによって要求される情報を提供し、かつモバイルユニットから返送された情報を格納するように機能」するものであり、「モバイル通信装置」はネットワークを介して、「中央ウェブアプリケーションサーバ100」に接続し、「中央ウェブアプリケーションサーバ及び第三者アプリケーションサーバ415」からドキュメントをダウンロードし、該ダウンロードされる情報は、「中央の加入者データベース150の中に保持された情報、及び第三者データベース及びサーバ450、460に格納されたタスク情報に基づき」、「アプリケーション及び関連するデータの両方を含むスクリプトの形式でダウンロードされるもの」であるから、引用例記載の発明の「ウェブアプリケーションサーバ100」、「加入者データベース150」、「第三者アプリケーションサーバ415」、「情報サーバ450」、「データベース460」からなる部分は、本願発明の「複数のデータファイルおよびコンテンツスクリプトを記憶するデータ記憶部」に相当する構成を有しているといえ、また、引用例記載の発明の「モバイル通信装置」は、本願発明の「ネットワークを用いて前記データ記憶部と通信するように構成されるコンピューティングデバイス」に相当する。 ウ.引用例記載の発明は、「1日の終わりに、ユーザは中央ウェブアプリケーションサーバ100に再接続し、その日に実行したタスクに関するデータをアップロード」するものであるから、ユーザの使用する「モバイル通信装置」が「その日に実行したタスクに関するデータ」を記憶する記憶部といい得る構成を有しているのは明らかであり、引用例記載の発明の「モバイル通信装置」が当該構成を有していることは、本願発明の「コンピューティングシステムは、ファイル記憶部を備え」ることに相当する。 エ.上記イ.のように、引用例記載の発明の「モバイル通信装置」は、「アプリケーション及び関連するデータの両方を含むスクリプトの形式」で情報をダウンロードするものであり、このことは、本願発明の「コンピューティングデバイス」は、「前記データ記憶部から前記コンテンツスクリプトを受信し、かつ前記複数のデータファイルから第1のデータファイルを受信」することに相当する。 オ.引用例記載の発明の「モバイル通信装置」が、「アプリケーション及び関連するデータの両方を含むスクリプトの形式」であり、「データはタスクの特定のリストにカスタマイズ」されたものをダウンロードし、「モバイルユニットが特定のタスクに関するレコードをアップデート」することは、本願発明の「コンピューティングデバイスは、」「前記コンテンツスクリプトを実行して、」「トランザクションデータを入力することによって入力される、前記第1のデータファイルへの変更を許容し、」「前記ファイル記憶部に前記第1のデータファイルへの前記変更を記憶」することに相当する。 カ.引用例記載の発明の「モバイル通信装置」が、「シンクロナイズ609/送信/ウェブアプリケーションサーバ100及び情報サーバからの情報のダウンロードを行うこと、例えば、タスクが終わったという情報を送信すること」、「中央ウェブアプリケーションサーバ100に再接続し、その日に実行したタスクに関するデータをアップロード」することは、本願発明の「前記コンピューティングデバイスが前記データ記憶部に接続されていると判断された場合、前記コンテンツスクリプトを実行して、前記データ記憶部に前記第1のデータファイルへの前記変更を送信し、かつ前記データ記憶部から前記コンテンツスクリプトへの変更を受信する」ことと「前記コンテンツスクリプトを実行して、前記データ記憶部に前記第1のデータファイルへの前記変更を送信」する点で共通するといえる。 したがって、両者は以下の一致点と相違点を有する。 〈一致点〉 「ページの携帯閲覧を可能にするためのシステムであって、 複数のデータファイルおよびコンテンツスクリプトを記憶するデータ記憶部と、 ネットワークを用いて前記データ記憶部と通信するように構成されるコンピューティングデバイスと、 を備え、 前記コンピューティングデバイスは、ファイル記憶部を備え、 前記データ記憶部から前記コンテンツスクリプトを受信し、かつ前記複数のデータファイルから第1のデータファイルを受信し、 前記コンテンツスクリプトを実行して、 トランザクションデータを入力することによって入力される、前記第1のデータファイルへの変更を許容し、 前記ファイル記憶部に前記第1のデータファイルへの前記変更を記憶し、 前記コンテンツスクリプトを実行して、前記データ記憶部に前記第1のデータファイルへの前記変更を送信する、 システム。」 〈相違点1〉 本願発明は、「前記コンピューティングデバイスは、」「前記コンテンツスクリプトを実行して、」「前記コンピューティングデバイスが前記ネットワークを介して前記データ記憶部に接続されているかを判定」するものであるのに対し、引用例記載の発明は、そのようなものとはされていない点。 〈相違点2〉 本願発明は、「前記コンピューティングデバイスが前記データ記憶部に接続されていると判定された場合、前記コンテンツスクリプトを実行して、前記データ記憶部に前記第1のデータファイルへの前記変更を送信し、かつ前記データ記憶部から前記コンテンツスクリプトへの変更を受信する」ものであるのに対し、引用例記載の発明は、「データを交換しシンクロナイズ」し、また、「データをアップロードする」ものではあるものの、「モバイル通信装置」が「ウェブアプリケーションサーバ」に接続されていると判断された場合にデータをシンクロナイズし、また、アップロードするとはされておらず、また、引用例記載の発明は、「単にデータを交換しシンクロナイズするだけでなく、システムはモバイルユニット上で実行される実際のアプリケーションソフトウェアを交換しシンクロナイズさせ、容易にソフトウェアのアップデートをダウンロードすることができ」るものであるものの、上記接続されていると判断された場合に、ソフトウェアへの変更を受信するともされていない点。 3.判断 〈相違点1,2について〉 上記相違点1,2について検討する。 上記周知例記載の技術のように、定期的にネットワーク接続を確認して、ネットワークに接続されていると判断された場合に、データを送信する技術は、本願の出願日前周知技術であったものと認められる。 しかしながら、上記周知例には、スクリプトを実行して、モバイルデバイスがネットワークを介してサーバに接続されているかを判定すること、当該判定の結果、接続していると判定された場合、スクリプトを実行して、データファイルへの変更をサーバへ送信し、かつサーバからスクリプトへの変更を受信することまでは記載されていない。 よって、上記周知例の記載からは、周知例に、「前記コンピューティングデバイスが前記データ記憶部に接続されていると判定された場合、前記コンテンツスクリプトを実行して、前記データ記憶部に前記第1のデータファイルへの前記変更を送信し、かつ前記データ記憶部から前記コンテンツスクリプトへの変更を受信する」構成が、記載または示唆されているとはいえない。 周知例には、他に当該構成を示すあるいは示唆する記載はない。 したがって、上記周知技術を考慮しても、引用例記載の発明において相違点1,2に係る本願発明の構成を採用することは、当業者が容易になし得たこととはいえない。 以上のとおりであるから、本願発明は、引用例記載の発明及び上記周技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 本願の請求項2-4に係る発明は、本願発明をさらに限定したものであり、本願の請求項5に係る発明は、本願発明の「コンテンツスクリプト」に対応する構成を「実行可能なコード」とすると共に「コンピュータ実装方法」として記載したものであり、本願の請求項6-11に係る発明は、本願の請求項5に係る発明をさらに限定したものであり、本願の請求項12に係る発明は、本願発明の「コンテンツスクリプト」に対応する構成を「実行可能なコード」とすると共にさらに限定して「コンピュータ可読媒体」として記載したものであり、請求項13-21に係る発明は、本願の請求項12に係る発明をさらに限定したものであるので、本願発明と同様に、当業者が引用例記載の発明及び上記周知技術に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。 第6 むすび 以上のとおり、本願の請求項1-21に係る発明は、いずれも、当業者が引用例記載の発明及び上記周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものではないから、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2016-10-17 |
出願番号 | 特願2014-523162(P2014-523162) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(G06F)
|
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 池田 聡史 |
特許庁審判長 |
高瀬 勤 |
特許庁審判官 |
千葉 輝久 山田 正文 |
発明の名称 | ローカルに記憶されたデータファイルに関連付けられたトランザクションデータの収集 |
代理人 | アインゼル・フェリックス=ラインハルト |