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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G03B
管理番号 1320110
審判番号 不服2014-14661  
総通号数 203 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-11-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-07-26 
確定日 2016-10-03 
事件の表示 特願2010-503601「立体視覚」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 6月12日国際公開,WO2008/068553,平成22年 7月22日国内公表,特表2010-525387〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本件拒絶査定不服審判事件に係る出願(以下,「本願」という。)は,2007年4月16日を国際出願日とする出願であって,平成24年7月25日付けで拒絶理由が通知され,同年10月12日に意見書及び手続補正書が提出され,平成25年5月2日付けで拒絶理由が通知され,同年8月1日に意見書及び手続補正書が提出されたが,平成26年3月26日付けで,平成25年8月1日提出の手続補正書による補正が却下されるとともに,同日付けで拒絶査定がなされた。
本件拒絶査定不服審判は,これを不服として,平成26年7月26日に請求されたものであって,本件審判の請求と同時に手続補正書が提出され,当審において,平成27年10月2日付けで,平成26年7月26日提出の手続補正書による補正が却下されるとともに,同日付けで拒絶の理由が通知され,同年4月5日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

2 本願の請求項1に係る発明
本願の請求項1に係る発明は,平成28年4月5日提出の手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1によって特定されるものであるところ,当該補正後の請求項1の「前記対象物の画像に垂直中心線上で融合し」なる記載が,「前記対象物の画像の垂直中心線上で融合し」の誤記であることは,当該補正前の請求項1における対応する記載が「前記対象物の画像の垂直中心線上で,・・・(中略)・・・融合する」であったことや,本願明細書の「Using Ms provisionソースの1つ(または両方のソースは)水平に推移するので,中心対象物の2つの画像の垂直な中心線が対象物の立体画像を生み出すフレームの中心と交わる。」(【0048】)との記載及び「ミックス内で機材を用い,ソースが水平上に推移すると,中心の対象物の2つの画像の垂直な中心線はフレームの中心で交わり,対象物の立体画像を作り出す。」(【0056】)との記載等から明らかであるから,本願の請求項1に係る発明は,当該誤記を訂正した次のとおりのものと認められる。

「一対の左右のレンズ又はカメラを介して対象物の画像を生成する画像形成機器において,前記一対の左右のレンズ又はカメラは,前記対象物からその水平面上を伸びる中心線から左右対称等距離に人間の両眼の間の距離だけ離間して配置され,前記一対の左右のレンズ又はカメラで,それぞれ前記対象物の二つの画像である左画像と右画像とを形成し,前記左画像の垂直中心線より右側の内側画像と前記右画像の垂直中心線より左側の内側画像とを削除し,前記左画像の垂直中心線より左側の外側画像と前記右画像の垂直中心線より右側の外側画像とを,前記右画像の垂直中心線と前記左画像の垂直中心線とが一致するよう,前記対象物の画像の垂直中心線上で融合し,人間の見た目に近い画像を得ることを特徴とする画像形成機器。」(下線は,誤記を訂正した箇所を示す。以下,当該発明を「本願発明」という。)

3 当審において通知した拒絶の理由について
当審において平成27年10月2日付けで通知した拒絶の理由の一つ(以下,「当審拒絶理由」という。)は,概略,本願の各請求項に係る発明は,特開2006-154697号公報に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない,というものである。

4 引用例
(1)特開2006-154697号公報の記載
当審拒絶理由で引用された特開2006-154697号公報(以下,「引用文献」という。)は,本願の出願より前に頒布された刊行物であって,当該引用文献には次の記載がある。(下線は,後述する引用発明の認定に特に関係する箇所を示す。)
ア 「【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体を撮像する光学系要素とその像を読み取る受光要素とを,人の左眼に対応した左系の1系列及び人の右眼に対応した右系の1系列の合計2系列を備え,該左系の光学系要素と該右系の光学系要素とを概ね同じ視点方向に向け且つ人の両眼の間隔と略同じ間隔で開離配設し,該左系の撮像受光情報と該右系の撮像受光情報の夫々に中心線を設定し,それを区分線として該左系の受光情報の該中心線から概ね左側の撮像と,該右系の受光情報の該中心線から概ね右側の撮像とを,該中心線に於て接合して単一の像態とする事が可能なる如くに構成した事を特徴とするカメラ。」

イ 「【技術分野】
【0001】
本発明は,被写体の像を結像する光学系要素と,その像を受光する記録要素とにより構成された撮像装置に係る。
・・・(中略)・・・
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来のカメラは人の顔を撮影した場合に,そのイメージが肉眼で見る像態の認識と,撮影した記録画像(写真)とで不一致になる領域がある。即ちこの不一致の領域は撮影距離が近い範囲にあり,従って接写の場合に最も甚だしく,反面遠距離撮影に於ては殆ど問題にならない。
例えば,従来カメラでのアップ撮影や,証明書用写真撮影装置のように近距離から撮る写真の顔は,実態と可成り懸け離れたイメージの撮像となり,また他方スタジオ写真のような4?5m以上離れた撮影や,望遠レンズに依るアップ撮影,或は遠距離から撮って撮影後に引伸ばすアップサイズの写真等に於ては,この違和感が生じない事は大方の認めるところである。
【0004】
従来のカメラに於て,人の顔が肉眼による実像認識と写真の記録画像とで不一致となる理由は,人は両眼で物体を見,一般のカメラは単眼で物体を撮像する事にある。
人の両眼の開離間隔は平均65mm位であり,人の顔の巾は200mm前後であるから,近距離から人の顔を見ると,右目で捉える顔の像態と左目で捉える顔の像態とでは,その捕捉範囲が異なり,人はこの二つの異なった捕捉範囲の画像情報を,両眼の視神経が夫々に捉えて脳に送り,脳がこの両者を一つの像態に合成して人に認識させる。従って肉眼で知覚する人の顔は,当然単眼カメラとは像態が異なる。
但し,これは近距離撮影の場合であって,遠距離撮影ではこの差異は区別出来ないほどに微少になるので,無視が可能である。
・・・(中略)・・・
【0006】
本発明は,この肉眼で見た実像の認識と,カメラ撮影に依る記録画像との不一致をなくして,接写撮影に於ても,人の顔が肉眼で知覚するのと同じイメージの記録画像として得られるカメラを提供する事を課題としたものである。
・・・(中略)・・・
【0009】
これ等に対し,本発明の両眼カメラは,左眼用のレンズと受光記録要素に依り人が左眼で捉える画像を撮像し,また右眼用のレンズと受光記録要素に依り人が右眼で捉える画像を撮像し,この両者を単一の画像に接合する事に依り,人が知覚するのと同じイメージの1枚の画を観賞出来るようにしたものであり,従って出力される撮像(写真)そのものが人の眼の認識と同質の像態に仕上がるものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
被写体を撮像するための光学系要素とその像を読み取る受光要素とを,人の左眼に対応した左系の1系列及び人の右眼に対応した右系の1系列の合計2系列を備え,該左系の光学系要素と該右系の光学系要素とを概ね同じ視点方向に向け且つ人の両眼の間隔と略同じ間隔で開離配設し,該左系の撮像受光情報と該右系の撮像受光情報の夫々に中心線を設定し,それを区分線として該左系の受光情報の該中心線から概ね左側の撮像と,該右系の受光情報の該中心線から概ね右側の撮像とを,該中心線に於て接合して単一の像態とする事を可能ならしめる如くにカメラを構成する。
【発明の効果】
【0011】
本発明のカメラに依れば,近距離撮影においても,人の顔を肉眼で見る実像認識と同様の像態で撮像出来る効果がある。且つ,従来カメラでの撮影手法である,望遠レンズに依るアップ撮影や,撮映後の引伸し等は,肉眼で見る実像認識に近い撮像が得られる方法ではあるが,手ブレ,ボケ,アレ等の画質低下を伴い易いので,高度の撮影技術や,高性能の撮影機材を必要としたりするが,本発明のカメラに依れば,撮影に不慣れな人の場合でも,直接的な接写に依り画質低下を伴うことなく,そのカメラの有する最高画質を以って,肉眼で見る実像認識と同等の撮像が得られる。
また勿論この効果は,人の顔に限らず,あらゆるの物体の撮影に対しても有効であるから,人が顔以外の一般物体に対して過敏ではないとは云いながら,どの様な物体も肉眼で見える通りに撮像出来ることが望ましい事は当然である。」

ウ 「【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
被写体の像を結像するための光学系要素(レンズと記す)と,その像を読み取る受光要素とを一組とした撮像要素を1系列として,これを左眼用に1系列(左系と略記する)及び右眼用に1系列(右系と略記する)の合計2系列備え,左眼用のレンズと右眼用のレンズとを概ね同じ視点方向に向け,且つ人の両眼の間隔と略同じ間隔で水平方向に開離配設してカメラを構成し,左系の撮像要素に依る撮像と右系の撮像要素に依る撮像との夫々に,共通の中央区分線(中心線と略記する)を設定し,左系撮像の該中心線から概ね左側と,右系撮像の該中心線から概ね右側とを,共通の該中心線に於て整合して,単一の像態に接合する事が可能なる如くにカメラを構成する。
以下,内容の詳細に就いて,各実施例毎に記述する。
【実施例1】
【0013】
実施例1は,カメラの主構成に係る実施形態を示すものである。
図1に示すように,本発明のカメラは,左系と右系の2系列の撮像要素を備え,カメラボディー1に対して左系レンズ2と右系レンズ3とを左右水平に配設する。
而して,左系レンズ2と右系レンズ3のレンズ間隔は,人の両眼の間隔が平均65mmであるので,概ねそれに近いンンズ間隔(審決注:「レンズ間隔」の誤記と認める。)に配設する。尚,該レンズ間隔は,設定寸法を固定にしても良いし,また両眼の間隔には若干個人差があるので,撮影者がマニュアル操作に依り該レンズ間隔を任意に調整出来るようにしても良い。
・・・(中略)・・・
【0015】
尚,受光要素を構成する受光素子に就いては,左系レンズ2に対し受光素子1ケと,右系レンズ3に対し受光素子1ケの配設構成としてもよく,また受光素子を1ケとし,左系レンズ2と右系レンズ3の各受光情報を,光学的方法(例えばプリズムなど)で1ケの受光素子の各区分域に集光する構成としてもよい。
・・・(中略)・・・
【実施例2】
【0017】
実施例2は,レンズの指向方向に係る実施形態を示すものである。
実施形態の一例を挙げると,図1に於て左系レンズ2と右系レンズ3は,何れもその光軸をカメラボディー1の正面に指向せしめて固定配設する。或は,そのカメラの最も重視したい撮影距離に於て,左系レンズ2の光軸と右系レンズ2の光軸が,被写体の同一視点で合致するように,水平面に於て若干内向きに指向せしめて固定配設する。・・・(中略)・・・
【実施例3】
【0020】
実施例3は,中心線に係る実施形態を示すものである。
本発明カメラは,左系と右系の受光情報を接合して,単一の像態に形成するものであるが,その接合手段は,顔面5の左系の受光情報と右系の受光情報の夫々に中心線7を設定し,それを区分線として顔面5の左系と右系の受光情報を接合し,単一の顔面5の画像に形成する。
【0021】
中心線7を設定する実施形態の一つとしては,例えば図2に示めす如く,ファインダー或はモニター画面8(以下,総称してモニター画面8と記す)に,顔面5の位置を特定するガイドフレーム9を配設し,その中にカメラボディー1に対し垂直な垂直標線10Vと,それと直交する水平標線10Hから成る十字標線10を設け,撮影時に該ガイドフレーム9内に顔面5を入れ,十字標線10の中心に顔面5の中心を位置せしめ,且つ顔面5の垂線とガイドフレーム9の垂直標線10Vとの傾斜角度を合致させて撮影し,該垂直標線10Vを以って顔面5の中心線7とする。
【0022】
また,モニター画面8の垂直標線10Vは,受光素子面上の相当位置と対応させる。
即ち,垂直標線10Vの方向は,受光素子に於ける垂直ピクセル列と平行であり,垂直標線10Vの位置は,受光素子に於けるモニター画面8と同じ座標位置に対応させるものとする。
【0023】
尚,実際の撮影時のカメラ操作に於ては,顔面5の中心線7に,垂直標線10Vの位置や傾斜角度を正確に一致させる事は困難で,多少のズレは生じ易いが,このズレは操作誤差程度の範囲であれば致命的な支障にはならない。従って,中心線7は概ね中心線,また顔面5の垂線は概ね垂線であっても差支えない。
・・・(中略)・・・
【実施例5】
【0028】
実施例5は,接合に係る実施形態を示すものである。
本発明カメラに於ける左系と右系の受光情報の接合は,単に左系の受光情報と右系の受光情報とを重ね合わせただけでは,ダブリ画像が出来るだけで人が認識するような像態にはならない。また更に,人が認識する顔の像態は必ずしも一元的とは限らない。
例えば,至近距離から人の顔を見ると,顔の各造作部位迄の目視距離の差から,人は顔の中心を凝視している時は輪郭部は茫視し(実態は二重画像),また顔の輪郭を主体に見ている時は顔中央部の造作を個々にそれほど明確に知覚しているとは限らない。更に,顔は絶えず動き,表情は刻々変化し,また観察者の目の疲労度等に依って知覚も変わるので,人の認識自体が一元的ではない。即ち,人は顔を微細正確に認識していると言うより,イメージとして捉えている面が多い。
従って,カメラに於て両眼の受光情報を接合処理するときは,是等の点も考慮して人の視覚認識に対して,違和感や不快感が最少になる様に留意する事が重要である。
【0029】
その為には,接合に伴う欠陥,例えばズレ,ボケ,明るさの段差,色の変調,その他接合に伴い発生する不自然さは,微細なものもこれを不可とし,総体的なイメージは,これを極力損はない事が望ましい。従って光学的な忠実度のみを厳しく追及するだけでは,必ずしも好結果が得られるとは限らない。
従って,本発明の成立に於ては,左系と右系の受光情報を接合に依って単一画像に構成する事が必須条件であるが,接合の手段に関しては,一元的に特定の手段に限定する事が困難な面があり,従って,下記の実施例に記述するものを含めて,それに限らず違和感なく接合可能な方法であれば,何れの手段に依っても良いものである。」

(2)引用文献に記載された発明
前記(1)アないしウから,引用文献には,次の発明が記載されているものと認められる。

「被写体の像を結像するためのレンズと,その像を読み取る受光要素とを一組とした撮像要素を1系列として,これを左眼用に1系列及び右眼用に1系列の合計2系列備えたカメラであって,
カメラボディー1に対して,人の両眼の間隔と略同じ間隔だけ左右水平方向に離れた位置に,左系レンズ2と右系レンズ3とを,そのカメラの最も重視したい撮影距離において,両レンズの光軸が,被写体の同一視点で合致するように,水平面において若干内向きに指向するよう固定配設し,
モニター画面8に,被写体の位置を特定するガイドフレーム9を表示するとともに,カメラボディー1に対して垂直な垂直標線10Vと当該垂直標線10Vと直交する水平標線10Hとからなる十字標線10であって,前記ガイドフレーム9の中に位置する十字標線10を表示して,撮影時に前記ガイドフレーム9内に被写体を入れ,前記十字標線10の中心に被写体の中心を位置せしめ,かつ被写体の垂線と前記垂直標線10Vとの傾斜角度を合致させて撮影するよう構成し,
左系の撮像要素による撮像と右系の撮像要素による撮像の夫々における,前記垂直標線10Vに対応する位置を,各撮像の中心線7として設定し,
違和感なく接合可能な方法によって,左系の撮像要素による撮像の前記中心線7から概ね左側と右系の撮像要素による撮像の前記中心線7から概ね右側とを,前記中心線7において単一の像態に接合した撮像を出力することによって,
近距離撮影においても,人が肉眼で知覚するのと同じイメージとなる撮像が得られるようにしたカメラ。」(以下,「引用発明」という。)

5 対比
(1) 引用発明の「『左系の撮像要素』及び『右系の撮像要素』」,「被写体」,「カメラ」,「左系の撮像要素による撮像」,「右系の撮像要素による撮像」及び「人が肉眼で知覚するのと同じイメージとなる撮像」は,本願発明の「『一対の左右の』『カメラ』」,「対象物」,「画像形成機器」,「左画像」,「右画像」及び「人間の見た目に近い画像」に,それぞれ相当する。

(2) 引用発明は,右系の撮像要素による撮像の中心線7から概ね左側と右系の撮像要素による撮像の中心線7から概ね右側とを,中心線7において単一の像態に接合した撮像を出力することによって,近距離撮影においても,人が知覚するのと同じイメージとなる撮像が得られるようにした「カメラ」(本願発明の「画像生成機器」に相当する。以下,「5 対比」欄において引用発明の構成に付されたカッコ書きは当該構成に相当する本願発明の発明特定事項を示す。)であるところ,左系の撮像要素による撮像及び右系の撮像要素による撮像は,それぞれ「左系の撮像要素及び右系の撮像要素」(一対の左右のカメラ)が撮像した「被写体」(対象物)の画像であり,最終的に「カメラ」から出力される撮像も「被写体」(対象物)の画像であるから,引用発明は,「左系の撮像要素及び右系の撮像要素」(一対の左右のカメラ)を介して「被写体」(対象物)の画像を生成する「カメラ」(画像形成機器)であるといえる。
したがって,引用発明は,「一対の左右のレンズ又はカメラを介して対象物の画像を生成する画像形成機器」であるという本願発明の発明特定事項に相当する構成を具備している。

(3) 引用発明の左系レンズ2と右系レンズ3は,カメラボディー1に対して,人の両眼の間隔と略同じ間隔だけ左右水平方向に離れた位置に,そのカメラの最も重視したい撮影距離において,両レンズの光軸が,被写体の同一視点で合致するように,水平面において若干内向きに指向するよう固定配設されているから,当該左系レンズ2及び右系レンズ3が,「『被写体』(対象物)からその水平面上を伸びる中心線から左右対称等距離に離間して配置され」ていることは明らかである。
したがって,当該左系レンズ2及び右系レンズ3をそれぞれ有する「左系の撮像要素及び右系の撮像要素」(一対の左右のカメラ)は,「『被写体』(対象物)からその水平面上を伸びる中心線から左右対称等距離に人間の両眼の間の距離だけ離間して配置され」ているといえるから,引用発明は,「一対の左右のレンズ又はカメラは,対象物からその水平面上を伸びる中心線から左右対称等距離に人間の両眼の間の距離だけ離間して配置され」るという本願発明の発明特定事項に相当する構成を具備している。

(4) 引用発明の「左系の撮像要素による撮像」(左画像)及び「右系の撮像要素による撮像」(右画像)は,「左系撮像要素及び右系撮像要素」(一対の左右のカメラ)がそれぞれ撮像した「被写体」(対象物)の画像であるから,引用発明は,「一対の左右のレンズ又はカメラで,それぞれ対象物の二つの画像である左画像と右画像とを形成」するという本願発明の発明特定事項に相当する構成を具備している。

(5) 引用発明の中心線7は,モニター画面8に表示される垂直標線10Vに対応する位置に設定されたものであって,撮影時には,被写体の中心を通る垂線が当該垂直標線10Vに合致させて撮影するよう構成されているのだから,当該中心線7は,被写体の中心を通る垂線に設定されるものである。
そして,引用発明において出力される撮像は,「左系の撮像要素による撮像」(左画像)の中心線7から概ね左側と「右系の撮像要素による撮像」(右画像)の中心線7から概ね右側とを,中心線7において単一の像態に接合した,「人が知覚するのと同じイメージとなる撮像」(人間の見た目に近い画像)であるから,当該出力される撮像は,「左系の撮像要素による撮像」(左画像)と「右系の撮像要素による撮像」(右画像)に基づいて生成された,「被写体」(対象物)の中心を通る垂線から左側が「左系の撮像要素による撮像」(左画像)の左側の部分で構成され,被写体の中心を通る垂線から右側が「右系の撮像要素による撮像」(右画像)の右側の部分で構成された「人が知覚するのと同じイメージとなる撮像」(人間の見た目に近い画像)であるといえる。
一方,本願発明により得られる「人間の見た目に近い画像」は,左画像の垂直中心線より左側の外側画像と,右画像の垂直中心線より右側の外側画像とを,前記右画像の垂直中心線と前記左画像の垂直中心線とが一致するよう,「対象物」の画像の垂直中心線上で融合したものであるから,「左画像」と「右画像」に基づいて生成され,「対象物」の画像の垂直中心線から左側は「左画像」の左側の部分で構成され,「対象物」の画像の垂直中心線から右側は「右画像」の右側の部分で構成された,「人間の見た目に近い画像」である。
しかるに,引用発明の「被写体の中心を通る垂線」が,本願発明の「対象物の画像の垂直中心線」に相当するから,本願発明と引用発明は,「左画像と右画像に基づいて,対象物の画像の垂直中心線から左側が左画像の左側の部分で構成され,対象物の画像の垂直中心線から右側が右画像の右側の部分で構成された,人間の見た目に近い画像を生成する」点で共通する。

(6)前記(1)ないし(5)に照らせば,本願発明と引用発明とは,
「一対の左右のレンズ又はカメラを介して対象物の画像を生成する画像形成機器において,前記一対の左右のレンズ又はカメラは,前記対象物からその水平面上を伸びる中心線から左右対称等距離に人間の両眼の間の距離だけ離間して配置され,前記一対の左右のレンズ又はカメラで,それぞれ前記対象物の二つの画像である左画像と右画像とを形成し,当該左画像と右画像に基づいて,対象物の画像の垂直中心線から左側が左画像の左側の部分で構成され,対象物の画像の垂直中心線から右側が右画像の右側の部分で構成された,人間の見た目に近い画像を生成する画像形成機器。」
である点で一致し,次の点で相違する。

相違点:
本願発明では,「左画像」と「右画像」に基づいて,「人間の見た目に近い画像」を生成するための処理が,「左画像の垂直中心線より右側の内側画像と右画像の垂直中心線より左側の内側画像とを削除し,左画像の垂直中心線より左側の外側画像と右画像の垂直中心線より右側の外側画像とを,右画像の垂直中心線と左画像の垂直中心線とが一致するよう,対象物の画像の垂直中心線上で融合」するという処理であるのに対して,
引用発明では,「左系の撮像要素による撮像」と「右系の撮像要素による撮像」に基づいて,「人が知覚するのと同じイメージとなる撮像」を得るための処理が,「違和感なく接合可能な方法によって,左系撮像の中心線7から概ね左側と右系撮像の中心線7から概ね右側とを,中心線7において単一の像態に接合する」という処理である点。

6 判断
(1)相違点について
ア 引用文献には,引用発明の「違和感なく接合可能な方法によって,左系の撮像要素による撮像の中心線7から概ね左側と右系の撮像要素による撮像の中心線7から概ね右側とを,中心線7において単一の像態に接合する」という処理(以下,「引用発明の接合処理」という。)の具体例として,「実施例5」(請求項4に記載された処理の実施例に該当する。)における処理が記載されている(【0030】ないし【0046】を参照。)。
当該「実施例5」における処理の具体的な内容は,概略,次のようなものである。
(ア) 左系レンズ2により撮影した撮像23L(引用発明の「左系の撮像要素による撮像」に該当。以下,「左系撮像23L」という。)及び右系レンズ2により撮影した撮像23R(引用発明の「右系の撮像要素による撮像」に該当。以下,「右系撮像23R」という。)における首頭並びに胴部6を特定し,(【0031】を参照。)
(イ) 左系撮像23Lにおける首頭並びに胴部6に対し,中心線7から顔面5の横巾の約10?30%に相当する距離だけ右方に寄った位置から左側の首頭並びに胴部6の撮像を,輪郭線25までの範囲で切取って,左系人物撮像30Lを作成するとともに,右系撮像23Rについても同様の処理を行って右系人物撮像30Rを作成し(【0034】を参照。),
(ウ) 左系人物撮像30Lと右系人物撮像30Rの全ての水平ピクセル列を水平方向に伸縮自在とした条件下で,両撮像を両撮像中の頭頂点が一点に合致するまで水平に近接させ,両撮像の各水平ピクセル列のオーバーラップ部分を共通の信号波形帯において連結することによって,左系撮像23Lにおける人の顔の中心線に相当する左系湾曲中心線21Lと,右系撮像23Rにおける人の顔の中心線に相当する右系湾曲中心線21Rが,いずれも垂直線となって中心線7に合致するようにして,単一の像態の両眼人物画像30を作成し(【0036】ないし【0039】を参照。),
(エ) 左系撮像23L及び右系撮像23Rから,それぞれ首頭並びに胴部6を切取った残りの背景部分に対して,前記(イ)及び(ウ)と同様の処理を行って,単一の像態の両眼背景画像34を作成し(【0041】ないし【0044】を参照。),
(オ) 両眼人物画像30と両眼背景画像34を,高さ並びに中心線7の位置を合わせて複合して,単一の画像とする(【0045】及び【0046】を参照。)。

イ 引用文献の【0030】ないし【0046】の記載から,左系撮像23L及び右系撮像23Rにおいては,人の顔の中心線が,それぞれ中央が右方及び左方に膨らんだ左系湾曲中心線21L及び右系湾曲中心線21Rとなってしまうことから,左系撮像23Lにおける中心線7から左側と,右系撮像23Rにおける中心線7から右側とを,単純に接合した場合には,違和感が生じてしまうことを把握でき,前記アの「実施例5」における処理が,当該接合に伴う違和感を解消するための処理であると理解される。
しかるに,前記接合に伴う違和感の原因である左系湾曲中心線21L及び右系湾曲中心線21Rの中央部の左右方向への湾曲が,人の顔の中心線を出射して左系レンズ2及び右系レンズ3にそれぞれ入射する光線の進行方向が,カメラボディ1の正面方向に対して傾斜しているために生じること,したがって,前記湾曲の程度すなわち接合に伴う違和感の程度が,撮影距離が小さいほど大きくなり,撮影距離が大きくなると小さくなることは,自然法則や,引用文献の「従来のカメラは人の顔を撮影した場合に,そのイメージが肉眼で見る像態の認識と,撮影した記録画像(写真)とで不一致になる領域がある。即ちこの不一致の領域は撮影距離が近い範囲にあり,従って接写の場合に最も甚だしく,反面遠距離撮影に於ては殆ど問題にならない。例えば,・・・(中略)・・・スタジオ写真のような4?5m以上離れた撮影・・・(中略)・・・に於ては,この違和感が生じない」(【0003】)という記載や「近距離から人の顔を見ると,右目で捉える顔の像態と左目で捉える顔の像態とでは,その捕捉範囲が異なり・・・(中略)・・・遠距離撮影ではこの差異は区別出来ないほどに微少になるので,無視が可能である。」(【0004】)という記載等から,当業者が容易に理解できることである。

ウ また,引用文献に記載された「実施例5」における処理を行うには,前記ア(ア)ないし(オ)の各処理を行うための画像処理回路を必要とするところ,左系撮像23Lに対して中心線7から右側の部分を削除して中心線7から左側の部分のみとし,右系撮像23Rに対して中心線7から左側の部分を削除して右側の部分のみとして,これらを接合するよう構成した場合には,画像処理回路が行う処理を簡略化でき,製造コストを低減できることは当業者に自明である。

エ 引用文献には,引用発明の接合処理について,「本発明の成立に於ては,左系と右系の受光情報を接合に依って単一画像に構成する事が必須条件であるが,接合の手段に関しては,・・・(中略)・・・違和感なく接合可能な方法であれば,何れの手段に依っても良いものである。」(【0029】を参照。)と記載されているところ,前記イ及びウに照らせば,製造コストを低減することを目的として,専ら接合に伴う違和感があまり大きくならない程度の撮影距離で撮影することを想定して,引用発明において,接合処理として,左系の撮像要素による撮像の中心線7から右側の部分を削除して中心線7から左側の部分のみとし,右系の撮像要素による撮像中心線7から左側の部分を削除して右側の部分のみとして,これらを接合するような処理を採用すること,すなわち,引用発明を,相違点に係る本願発明の発明特定事項に相当する構成を具備したものとすることは,当業者が容易になし得たことである。

(2)効果について
本願発明の奏する効果は,引用発明に基づいて,当業者が予測できた程度のものである。

(3)まとめ
以上のとおりであるから,本願発明は,引用発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

7 むすび
本願の請求項1に係る発明は,引用発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願は,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-05-10 
結審通知日 2016-05-11 
審決日 2016-05-24 
出願番号 特願2010-503601(P2010-503601)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G03B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 登丸 久寿  
特許庁審判長 藤原 敬士
特許庁審判官 清水 康司
樋口 信宏
発明の名称 立体視覚  
代理人 三俣 弘文  
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