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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 B32B 審判 全部申し立て 発明同一 B32B 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 B32B |
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管理番号 | 1320186 |
異議申立番号 | 異議2015-700039 |
総通号数 | 203 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2016-11-25 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2015-09-29 |
確定日 | 2016-07-15 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第5694386号発明「炭素繊維強化複合材料の接合体」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第5694386号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[1-7]について訂正することを認める。 特許第5694386号の請求項1ないし7に係る特許を維持する。 |
理由 |
1.手続の経緯 特許第5694386号の請求項1ないし7に係る特許についての出願は、平成24年1月26日(優先権主張平成23年1月28日)に特許出願され、平成27年2月13日にその特許権の設定登録がされた。 その後、請求項1ないし7に係る特許について、特許異議申立人特許業務法人朝日奈特許事務所により特許異議の申立てがなされ、平成27年12月11日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である平成28年2月12日(特許庁受付)に意見書の提出及び訂正の請求があり、平成28年4月5日付けで特許異議申立人特許業務法人朝日奈特許事務所より意見書が提出されたものである。 2.訂正の適否についての判断 (1)訂正の内容 本件訂正請求による訂正の内容は以下のとおりである。 ア.訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に「前記補強材は、前記ランダム層及び前記一方向材層の一方をコア材とし、他方をスキン層とした積層構造を有する、接合体。」とあるのを、 「前記補強材は、ハット形状を有し、前記ランダム層及び前記一方向材層の一方をコア材とし、他方をスキン層とし、前記コア材の外側及び内側のいずれか一方の一部と他方の全部又は一部に前記スキン層が積層された積層構造を有する、接合体。」に訂正する。 イ.訂正事項2 願書に添付した明細書の段落【0006】に「前記補強材は、前記ランダム層及び前記一方向材層の一方をコア材とし、他方をスキン層とした積層構造を有する、接合体。」とあるのを、 「前記補強材は、ハット形状を有し、前記ランダム層及び前記一方向材層の一方をコア材とし、他方をスキン層とし、前記コア材の外側及び内側のいずれか一方の一部と他方の全部又は一部に前記スキン層が積層された積層構造を有する、接合体。」に訂正する。 (2)訂正の目的の適否、一群の請求項、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 ア.訂正事項1による訂正は一群の請求項1ないし7に対し請求されたものである。 イ.訂正事項1について 訂正事項1は、本件特許明細書の段落【0011】の「本発明の接合体に含まれる補強材がハット形状のものである場合、積層の形態としては、ある層の内側の全体か一部、外側の全体か一部、外側および内側それぞれの全体、外側および内側それぞれの一部、または、外側および内側のいずれか一方の一部と他方の全部などに、他の層が積層されているものも好ましい。」なる記載に基づいて、請求項1の「補強材」の形状が「ハット形状」であること及び「コア材」と「スキン層」の「積層構造」が「前記コア材の外側及び内側のいずれか一方の一部と他方の全部又は一部に前記スキン層が積層された積層構造」であることを特定することにより、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 ウ.訂正事項2について 訂正事項2は、本件特許明細書の段落【0011】の上記記載に基づいて、段落【0006】の「補強材」の形状が「ハット形状」であること及び「コア材」と「スキン層」の「積層構造」が「前記コア材の外側及び内側のいずれか一方の一部と他方の全部又は一部に前記スキン層が積層された積層構造」であること明らかにすることにより、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (3)むすび 以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び、同条第9項において準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合するので、訂正後の請求項〔1-7〕について訂正を認める。 3.特許異議の申立てについて (1)本件発明 申立ての対象である本件訂正請求により訂正された請求項1ないし7に係る発明(以下「本件発明1ないし7」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 【請求項1】 熱可塑性樹脂にチョップド炭素繊維がランダム配向しているランダム層と、連続炭素繊維が熱可塑性樹脂中に一方向にそろえて配置されている一方向材層とをそれぞれ少なくとも1層ずつ有する補強材が、 ランダム層および一方向材層よりなる群から選ばれる少なくとも1つを有する、開断面形状の被補強材と中空閉断面を作るように振動溶着されており、 前記補強材は、ハット形状を有し、前記ランダム層及び前記一方向材層の一方をコア材とし、他方をスキン層とし、前記コア材の外側及び内側のいずれか一方の一部と他方の全部又は一部に前記スキン層が積層された積層構造を有する、接合体。 【請求項2】 熱可塑性樹脂にチョップド炭素繊維がランダム配向しているランダム炭素繊維強化複合材料と、連続炭素繊維が熱可塑性樹脂中に一方向にそろえて配置されている連続炭素繊維強化複合材料とを合わせて型内にてプレスすることにより、それぞれをランダム層、一方向材層とした立体形状である補強材を使用した請求項1に記載の接合体。 【請求項3】 ランダム層に含まれるチョップド炭素繊維が繊維長10?100mmのものである請求項1又は2に記載の接合体。 【請求項4】 ランダム層の全体積に対し、一方向材層が5?100Vol%の体積にて存在する補強材を使用した請求項1?3のいずれか1項に記載の接合体。 【請求項5】 ランダム層における熱可塑性樹脂の存在量が、チョップド炭素繊維100重量部に対し、50?1000重量部である事を特徴とする補強材を使用した請求項1?4のいずれか1項に記載の接合体。 【請求項6】 一方向材層における熱可塑性樹脂の存在量が、連続炭素繊維100重量部に対し、30?200重量部である事を特徴とする補強材を使用した請求項1?5のいずれか1項に記載の接合体。 【請求項7】 一方向材層が、連続炭素繊維を一方向に引き揃えた一方向材に熱可塑性樹脂を含浸あるいは半含浸させたものであることを特徴とする請求項1?6のいずれか1項に記載の接合体。 (2)取消理由の概要 訂正前の請求項1ないし7に係る特許に対して、通知した取消理由の概要は、以下のとおりである。 理由1.本件特許の下記の請求項に係る発明は、その出願の日前の特許出願であって、その出願後に出願公開がされた下記の特許出願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、本件特許の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、また本件特許の出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができない。 記 ・請求項 1 ・先の特許出願 特願2010-277205号(特開2012-125948号) ・備考 先の特許出願は、特許異議申立の甲第1号証である。 本件発明1は、先願発明と同一である。 ・請求項 2ないし7 ・先の特許出願 特願2010-277205号(特開2012-125948号) ・備考 本件特許の請求項2ないし7に係る発明は、上記先願発明と同一である。 理由2.本件特許の下記の請求項に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができない。 理由3.本件特許の下記の請求項に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 ・請求項 1ないし7 ・刊行物 1.特開2010-254276号公報 2.特開平4-366627号公報 3.特開2006-205436号公報 4.特開2010-235779号公報 ・備考 刊行物1ないし4は、それぞれ、特許異議申立の甲第5号証ないし甲第8号証である。 本件発明1及び本件特許の請求項2ないし7に係る発明は、刊行物3に例示される周知技術を踏まえると、刊行物1に記載された発明であるか、刊行物1に記載された発明と刊行物2に記載された発明とから当業者が容易に発明し得たものである。 また、本件発明1及び本件特許の請求項2、3、5ないし7に係る発明は、刊行物3に例示される周知技術を踏まえると、刊行物4に記載された発明であるか、刊行物4に記載された発明から当業者が容易に発明し得たものであり、本件特許の請求項4に係る発明は、刊行物4に記載された発明と刊行物2に記載された発明とから当業者が容易に発明し得たものである。 (3)判断 以下に述べるとおり、上記理由1ないし3はいずれも解消された。 ア.理由1について (ア)先願発明 先の特許出願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「先願明細書等」という。)には、その特許請求の範囲、明細書の段落【0001】、【0002】、【0009】?【0015】、【0018】、【0019】、【0022】、【0027】?【0032】、【図1】、【図2】の記載からみて以下の先願発明が記載されている。 《先願発明》 熱可塑性樹脂に、繊維長が、数平均で5?100mmである、束状の炭素繊維の短繊維がランダムに分布した1層の内側繊維強化樹脂層と、熱可塑性樹脂に、連続した炭素繊維の強化繊維(連続繊維)が一方向に引き揃えられた一方向材(UD材)を強化繊維として含む1層の外側繊維強化樹脂層の2層構造になっており、長手方向に沿う凹状部と、その両側に長手方向に沿って形成された縁部とを有する、第1部材と、熱可塑性樹脂に、繊維長が、数平均で5?100mmである、束状の炭素繊維の短繊維がランダムに分布した1層の内側繊維強化樹脂層と、熱可塑性樹脂に、連続した炭素繊維の強化繊維(連続繊維)が一方向に引き揃えられた一方向材(UD材)を強化繊維として含む1層の外側繊維強化樹脂層の2層構造になっており、長手方向に沿う凹状部と、その両側に長手方向に沿って形成された縁部とを有する、第2部材とが、対向する縁部で振動溶着により接合され、中空形状とされている、繊維強化熱可塑性成形品。 (イ)対比、判断 本件発明1と、先願発明とを対比する。 本件特許明細書の段落【0015】、【0016】の記載を踏まえると、先願発明の「数平均で5?100mmである、束状の炭素繊維の短繊維」は、本件発明1の「チョップド炭素繊維」に相当する。 ゆえに、先願発明の「熱可塑性樹脂に、繊維長が、数平均で5?100mmである、束状の炭素繊維の短繊維がランダムに分布した1層の内側繊維強化樹脂層」は、本件発明1の「熱可塑性樹脂にチョップド炭素繊維がランダム配向しているランダム層」に相当する。 先願発明の「熱可塑性樹脂に、連続した炭素繊維の強化繊維(連続繊維)が一方向に引き揃えられた一方向材(UD材)を強化繊維として含む1層の外側繊維強化樹脂層」は、本件発明1の「連続炭素繊維が熱可塑性樹脂中に一方向にそろえて配置されている一方向材層」に相当する。 本件特許明細書には、「補強材」、「被補強材」について、特段の定義がなされていないことを踏まえると、本件発明1における「補強材」、「被補強材」とは、その文字通り、「補強する部材」、「補強される部材」を意味すると解すべきである。 一方、先願発明の「第1部材」と「第2部材」とは、相補的に一方が他方を補強する関係にあると解されることを踏まえると、一方を「補強する部材」といえば、他方は「補強される部材」ということができる。 そして、先願発明の「第2部材」は、「熱可塑性樹脂に、繊維長が、数平均で5?100mmである、束状の炭素繊維の短繊維がランダムに分布した1層の内側繊維強化樹脂層と、熱可塑性樹脂に、連続した炭素繊維の強化繊維(連続繊維)が一方向に引き揃えられた一方向材(UD材)を強化繊維として含む1層の外側繊維強化樹脂層の2層構造」であって、「長手方向に沿う凹状部と、その両側に長手方向に沿って形成された縁部とを有する」という開断面形状であるから、先願発明の「第2部材」は、本件発明1の「被補強材」の「ランダム層および一方向材層よりなる群から選ばれる少なくとも1つを有する、開断面形状」との要件を満たす。 さらに、先願発明の「第1部材」の「長手方向に沿う凹状部と、その両側に長手方向に沿って形成された縁部とを有する」という形状は、本件特許明細書の段落【0011】の「ハット形状の補強材の構造例について図3に示す。」との記載及び図3の記載を参照すれば、本件発明1の「前記補強材は、ハット形状を有する」との要件を満たす。 ゆえに、先願発明の「第1部材」、「第2部材」は、各々、本件発明1の「補強材」、「被補強材」に相当する。 先願発明の「第1部材」と「第2部材」とは、「対向する縁部で振動溶着により接合され、中空形状とされている」ことから、先願発明では、「第1部材」が、開断面形状の「第2部材」と中空閉断面を作るように振動溶着されているといえる。 そして、先願発明の「繊維強化熱可塑性成形品」は、「第1部材」と「第2部材」とが接合された「接合体」といえる。 してみると、本件発明1と先願発明との以下の一致点で一致し、以下の相違点で一応相違する。 《一致点》 熱可塑性樹脂にチョップド炭素繊維がランダム配向しているランダム層と、連続炭素繊維が熱可塑性樹脂中に一方向にそろえて配置されている一方向材層とをそれぞれ少なくとも1層ずつ有する補強材が、 ランダム層および一方向材層よりなる群から選ばれる少なくとも1つを有する、開断面形状の被補強材と中空閉断面を作るように振動溶着されており、 前記補強材は、ハット形状を有する、接合体。 《相違点》 補強材について、本件発明1の「補強材」は、「前記ランダム層及び前記一方向材層の一方をコア材とし、他方をスキン層とし、前記コア材の外側及び内側のいずれか一方の一部と他方の全部又は一部に前記スキン層が積層された積層構造を有する」とされており、3層の構造を有するのに対し、先願発明の「第1部材」は、「内側繊維強化樹脂層」と「外側繊維強化樹脂層」とを積層した「積層構造」を有するが、その一方をコア材とし、他方をスキン層としたとはされておらず、2層の構造を有する点。 相違点について検討する。 本件発明1の「スキン層」、「コア材」について、本件特許明細書では、特段の定義(どのようなものが「スキン層」といえ、どのようなものが「コア材」といえるのか等)がなされていない。 しかし、本件発明1では「補強材」は、「前記コア材の外側及び内側のいずれか一方の一部と他方の全部又は一部に前記スキン層が積層された積層構造を有する」とされていることを踏まえると、本件発明1の「スキン層」、「コア材」とは、甲第2号証(サンドイッチ構造の基礎 1999年1月29日発行 p.10?13)の11頁にも記載されているような、一般に「表面材」、「芯材」と称されるものであると解される。 ここで、先願発明の「第1部材」における「外側繊維強化樹脂層」は、「内側繊維強化樹脂層」の「外側」に「積層された」ものであるから「スキン層」といえ、前記「内側繊維強化樹脂層」は、「コア材」といえるものであるとしても、先願明細書等には、前記「内側繊維強化樹脂層」の「内側」に、表面材となる層、すなわち、スキン層を設けることについては、記載も示唆もされていない。 なお、先願明細書の段落【0022】には、以下の記載事項があるが、外側繊維強化樹脂層を2層で構成した上で、外側繊維強化樹脂層の2層のうち、内側(内側繊維強化樹脂層側)となる層をコア材(芯材)、外側(内側繊維強化樹脂層側とは反対側)となる層をスキン層(表面材)とし、内側繊維強化樹脂層をスキン層(表面材)とすることまでが記載されているとはいえない。 《先願明細書の段落【0022】の記載事項》 また、この例では、外側繊維強化樹脂層は1層から構成されているが、2層以上から構成されてもよく、その場合、外側繊維強化樹脂層を構成する層の内、少なくとも1層の強化繊維が、内側繊維強化樹脂層の強化繊維よりも数平均の繊維長が長ければよい。このような条件を満たしている限り、外側繊維強化樹脂を構成する層の組み合わせに制限はない。例えば、外側繊維強化樹脂層が複数の層からなる場合、各層がいずれも一方向材を含み、隣り合う層の繊維方向が直交するように積層されたものでもよいし、一方向材を含む層とクロス材を含む層とが積層されたものでもよいし、一方向材を含む層と強化繊維として束状の短繊維がランダムに分布したランダム材を含む層とが積層されたものでもよいし、クロス材を含む層とランダム材を含む層とが積層されたものでもよいし、一方向材を含む層とクロス材を含む層とランダム材を含む層とが積層されたものでもよい。 さらに、熱可塑性樹脂にチョップド炭素繊維がランダム配向しているランダム層と、連続炭素繊維が熱可塑性樹脂中に一方向にそろえて配置されている一方向材層とが積層された積層構造物において、「スキン層」、「コア層」、「スキン層」からなる積層構造が、例えば、特許異議申立の甲第8号証(特開2010-235779号公報)、特開2005-288619号公報、特開2002-292592号公報等にも記載されているように、本件特許の優先日前に周知ないし慣用されていた技術であったとしても、このことは、先願明細書に、外側繊維強化樹脂層の2層のうち、内側繊維強化樹脂層側となる層をコア材(芯材)とし、内側繊維強化樹脂層をスキン層(表面材)とすることが記載されているとする理由にはならない。 したがって、本件発明1と先願発明は、上記相違点で相違するから、本件発明1は、先願発明と同一であるとはいえない。 また、本件発明2ないし7は、本件発明1をさらに限定したものであるから、本件発明1と同様の理由により、先願発明と同一であるとはいえない。 イ.理由2、3について 刊行物1ないし4には、「ハット形状を有」する「補強材」が、「コア材の外側及び内側のいずれか一方の一部と他方の全部又は一部にスキン層が積層された積層構造を有する」という本件発明1の発明特定事項について、記載も示唆もされていない。 したがって、本件発明1は、刊行物3に例示される周知技術を踏まえたとしても、刊行物1に記載された発明であるとはいえず、刊行物1に記載された発明と刊行物2に記載された発明とから当業者が容易に発明し得たものであるともいえない。 また、本件発明1は、刊行物4に記載された発明であるとはいえず、刊行物4に記載された発明から当業者が容易に発明し得たものであるともいえない。 そして、本件発明2ないし7は、本件発明1をさらに限定したものであるから、本件発明1と同様の理由により、刊行物1に記載された発明であるか、刊行物1に記載された発明と刊行物2に記載された発明とから当業者が容易に発明し得たものであるとはいえず、また、刊行物4に記載された発明であるか、刊行物4に記載された発明から当業者が容易に発明し得たものであるともいえない。 (4)特許異議申立人の主張について 特許異議申立人は、平成28年4月5日付け意見書で、本件発明1ないし7に関し、依然として上記理由1ないし3が解消されていない旨及び進歩性を有しない旨の意見を述べている。 しかしながら、上記(3)で述べたとおり、上記理由1ないし3はいずれも解消されている。 なお、特許異議申立人は、上記意見書で上記発明特定事項による格別の効果が本件特許明細書には何ら開示も示唆もされていないことを述べているが、このことは、上記発明特定事項が、先願明細書等に記載されているに等しいといえる理由や容易想到といえる理由にはならない。 そして、上記発明特定事項は、上記意見書に添付された甲第9号証(特開2005-125609号公報)にも、記載も示唆もされていない。 したがって、上記意見はいずれも失当である。 (5)むすび 以上のとおりであるから、取消理由によっては、請求項1ないし7係る特許を取り消すことはできない。 また、他に請求項1ないし7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 炭素繊維強化複合材料の接合体 【技術分野】 【0001】 本発明は、炭素繊維と熱可塑性樹脂とを含む積層構造を有する補強材と、炭素繊維と熱可塑性樹脂とを含む被補強材とを振動溶着させた、炭素繊維強化複合材料の接合体に関するものである。 【背景技術】 【0002】 近年、機械分野において、マトリックス樹脂と、炭素繊維などの強化繊維を含む、いわゆる繊維強化複合材料が注目されている。部品や構造体の製造で必要となる、繊維強化複合材料同士の接合において、閉断面を作ることで剛性を高める方法が一般的に用いられている。マトリックスとして熱可塑性樹脂を用いた繊維複合材料同士を接合する際には機械的な接合であるボルト・ナット、リベットなどや、接着剤を用いた接合が用いられているが、ボルト・ナットなどによる機械的な接合は一般に重量増が嵩むほか、特に複合材料においては接合点に応力が集中し、最悪の場合、最初の応力集中点を起点として次々に破壊が進行していく懸念がある。接着剤を用いる接合では一般に強度を確保するため一定厚の接着剤層を確保することが必要であり、特に大型部材を接合する場合には相当量の接着剤を要し、結果として得られた部材の大幅な重量増が懸念されるほかその強度も接着剤のみでは必ずしも充分でないという欠点があった。さらに接着剤を使用する場合は、一般に実用強度を得るまでに時間が掛かるため、養生工程(接着剤による接着効果が充分に発現し安定化するまで静置しておく工程)を要することも問題である。 【0003】 一方、接合体自体の強度を向上させるために、特許文献1のように閉断面内部に発泡剤と補強シートを密着状に設けるなどの対策が行われているが、内部に部材を入れることで量産性が低下するという問題がある。また、特許文献1で具体的に示されている補強シートは、炭素繊維と熱硬化性樹脂からなる繊維強化複合材料によるものであるように、炭素繊維と熱可塑性樹脂からなる繊維強化複合材料の接合に関しては充分に技術が確立されていない。 【先行技術文献】 【特許文献】 【0004】 【特許文献1】特開2000-38157号公報 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0005】 本発明は、熱可塑性樹脂をマトリクスとした炭素繊維強化複合材料の接合体であって、強度・剛性・軽量性・量産性の優れた接合体を提供することである。 【課題を解決するための手段】 【0006】 本発明者らは、上記課題の解決について鋭意検討を行った結果、特定の構成の、炭素繊維と熱可塑性樹脂とを含む積層構造を有する補強材と、炭素繊維と熱可塑性樹脂とを含む被補強材とを振動溶着させた接合体が、際立って優れた特性を有することを見い出し、本発明を完成させた。本発明の要旨を以下に示す。 <1> 熱可塑性樹脂にチョップド炭素繊維がランダム配向しているランダム層と、連続炭素繊維が熱可塑性樹脂中に一方向にそろえて配置されている一方向材層とをそれぞれ少なくとも1層ずつ有する補強材が、 ランダム層および一方向材層よりなる群から選ばれる少なくとも1つを有する、開断面形状の被補強材と中空閉断面を作るように振動溶着されており、 前記補強材は、ハット形状を有し、前記ランダム層及び前記一方向材層の一方をコア材とし、他方をスキン層とし、前記コア材の外側及び内側のいずれか一方の一部と他方の全部又は一部に前記スキン層が積層された積層構造を有する、接合体。 <2> 熱可塑性樹脂にチョップド炭素繊維がランダム配向しているランダム炭素繊維強化複合材料と、連続炭素繊維が熱可塑性樹脂中に一方向にそろえて配置されている連続炭素繊維強化複合材料とを合わせて型内にてプレスすることにより、それぞれをランダム層、一方向材層とした立体形状である補強材を使用した<1>に記載の接合体。 <3> ランダム層に含まれるチョップド炭素繊維が繊維長10?100mmのものである<1>又は<2>に記載の接合体。 <4> ランダム層の全体積に対し、一方向材層が5?100Vol%の体積にて存在する補強材を使用した<1>?<3>のいずれかに記載の接合体。 <5> ランダム層における熱可塑性樹脂の存在量が、チョップド炭素繊維100重量部に対し、50?1000重量部である事を特徴とする補強材を使用した<1>?<4>のいずれかに記載の接合体。 <6> 一方向材層における熱可塑性樹脂の存在量が、連続炭素繊維100重量部に対し、30?200重量部である事を特徴とする補強材を使用した<1>?<5>のいずれかに記載の接合体。 <7> 一方向材層が、連続炭素繊維を一方向に引き揃えた一方向材に熱可塑性樹脂を含浸あるいは半含浸させたものであることを特徴とする<1>?<6>のいずれかに記載の接合体。 なお、本発明は上記<1>?<7>に関するものであるが、参考のため下記1.?9.項に記載した事項などのその他の事項についても記載した。 【0007】 1. 熱可塑性樹脂にチョップド炭素繊維がランダム配向しているランダム層と、連続炭素繊維が熱可塑性樹脂中に一方向にそろえて配置されている一方向材層とをそれぞれ少なくとも1層ずつ有する補強材が、 ランダム層および一方向材層よりなる群から選ばれる少なくとも1つを有する、開断面形状の被補強材と、 中空閉断面を作るように振動溶着された接合体。 2. ランダム層をコア材とし、一方向材層をスキン層とした積層構造を有する補強材を使用した上記1.項に記載の接合体。 3. 一方向材層をコア材とし、ランダム層をスキン層とした積層構造を有する補強材を使用した上記1.項に記載の接合体。 4. 熱可塑性樹脂にチョップド炭素繊維がランダム配向しているランダム炭素繊維強化複合材料と、 連続炭素繊維が熱可塑性樹脂中に一方向にそろえて配置されている連続炭素繊維強化複合材料とを合わせて型内にてプレスすることにより、それぞれをランダム層、一方向材層とした立体形状である補強材を使用した上記1.?3.のいずれかに記載の接合体。 5. ランダム層に含まれるチョップド炭素繊維が繊維長10?100mmのものである上記1.?4.項のいずれかに記載の接合体。 6. ランダム層の全体積に対し、一方向材層が5?100Vol%の体積にて存在する補強材を使用した上記1.?5.項のいずれかに記載の接合体。 7. ランダム層における熱可塑性樹脂の存在量が、チョップド炭素繊維100重量部に対し、50?1000重量部である事を特徴とする補強材を使用した上記1.?6.項のいずれかに記載の接合体。 8. 一方向材層における熱可塑性樹脂の存在量が、連続炭素繊維100重量部に対し、30?200重量部である事を特徴とする補強材を使用した上記1.?7.項のいずれかに記載の接合体。 9. 一方向材層が、連続炭素繊維を一方向に引き揃えた一方向材に熱可塑性樹脂を含浸あるいは半含浸させたものであることを特徴とする上記1.?8.項のいずれかに記載の接合体。 【発明の効果】 【0008】 本発明の接合体は、ランダム層と一方向材層を有する補強材を用いることにより、ランダム層のみを有する補強材を用いた接合体よりも軽量で同等の強度・剛性を達成することができ、一方向材層のみを有する補強材を用いた接合体に比べ、繊維方向以外の剛性・強度が極めて優れている。さらに振動溶着にて被補強材に接合されているため、通常の接着剤による接合よりも高い量産性と接合強度を得ることができる。 【図面の簡単な説明】 【0009】 【図1】本発明の接合体の構造例を示す模式図である。 【図2】本発明の接合体に含まれる補強材の構造例を示す模式図である。 【図3】本発明の接合体に含まれる補強材の構造例を示す模式図である。 【発明を実施するための形態】 【0010】 本発明は、熱可塑性樹脂にチョップド炭素繊維がランダム配向しているランダム層と、連続炭素繊維が熱可塑性樹脂(ランダム層に含まれる熱可塑性樹脂と同じものでも異なるものでも良い)中に一方向にそろえて配置されている一方向材層とをそれぞれ少なくとも1層ずつ有する補強材が、 ランダム層(チョップド炭素繊維および熱可塑性樹脂は、補強材のランダム層に含まれるものと同じものでも、異なるものでも良い)および一方向材層(連続炭素繊維および熱可塑性樹脂は、補強材の一方向材層に含まれるものと同じものでも、異なるものでも良い)よりなる群から選ばれる少なくとも1つを有する、開断面形状の被補強材と、 中空閉断面を作るように振動溶着された接合体であり、簡略に言うと炭素繊維強化複合材料の接合体である。 以下、本発明の接合体の実施形態について示し、本発明の接合体の一例を図1に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。 【0011】 本発明を構成する各要素について、以下に説明する。 [補強材] 本発明の接合体に含まれる補強材は、熱可塑性樹脂にチョップド炭素繊維がランダム配向しているランダム層と、連続炭素繊維が熱可塑性樹脂(ランダム層に含まれる熱可塑性樹脂と同じものでも異なるものでも良い)中に一方向にそろえて配置されている一方向材層とをそれぞれ少なくとも1層ずつ有するものであり、その具体例について図2に示す。 本発明の接合体に含まれる補強材がハット形状のものである場合、積層の形態としては、ある層の内側の全体か一部、外側の全体か一部、外側および内側それぞれの全体、外側および内側それぞれの一部、または、外側および内側のいずれか一方の一部と他方の全部などに、他の層が積層されているものも好ましい。また、“他の層”は、複数に分割された形態で積層されてもよい。具体例として、ランダム層と一方向材層のそれぞれ1層ずつからなる種々の積層形態の、ハット形状の補強材の構造例について図3に示す。言うまでも無く、図3に例示する各積層形態において、ランダム層と一方向材層を入れ替えた構造の補強材も本発明の接合体に好ましいものとして使用することができる。 【0012】 上記補強材としては、ランダム層をコア材とし、一方向材層をスキン層とした積層構造を有する補強材、または一方向材層をコア材とし、ランダム層をスキン層とした積層構造を有する補強材が好ましい。 【0013】 更に、上記補強材としては、熱可塑性樹脂にチョップド炭素繊維がランダム配向しているランダム炭素繊維強化複合材料と、連続炭素繊維が熱可塑性樹脂(ランダム炭素繊維強化複合材料に含まれる熱可塑性樹脂と同じものでも異なるものでも良い)中に一方向にそろえて配置されている連続炭素繊維強化複合材料とを合わせて型内にてプレスすることにより、それぞれをランダム層、一方向材層とした立体形状である補強材が好ましい。 また、上記補強材としては、ランダム層の全体積に対し、一方向材層が5?100Vol%の体積にて存在するもの、言い方を変えると、ランダム層の全体積を100体積部とした場合、一方向材層の体積が5?100体積部であるものが好ましい。 【0014】 [被補強材] 本発明の接合体に含まれる被補強材は、ランダム層(チョップド炭素繊維および熱可塑性樹脂は、補強材のランダム層に含まれるものと同じものでも、異なるものでも良い)および一方向材層(連続炭素繊維および熱可塑性樹脂は、補強材の一方向材層に含まれるものと同じものでも、異なるものでも良い)よりなる群から選ばれる少なくとも1つを有し、かつ開断面形状を有するものである。ここで「開断面形状」とは部材の断面が、箱断面のように閉じたものではない形状をいい、具体例を図1に示す。 【0015】 [ランダム層] 本発明の接合体の補強材や被補強材が有するランダム層とは、熱可塑性樹脂にチョップド炭素繊維がランダム配向している層を言う。該ランダム層としては、チョップド炭素繊維が繊維長10?100mmのものであると好ましく、更に、該チョップド炭素繊維が25?3000g/m^(2)の目付けにて実質的に2次元ランダムに配向しているものが好ましい。ここで、該チョップド炭素繊維が、実質的に2次元ランダムに配向しているとは、該チョップド炭素繊維が、当該ランダム層の接表面内に繊維軸の主配向方向があり、かつ、その面内において互いに直行する二方向に測定した引張弾性率の値のうち大きいものを小さいもので割った比が2を超えないものをいう。 【0016】 上記のランダム層は、開繊程度がコントロールされ、特定本数以上のチョップド炭素繊維が束になった状態のものと、それ以外の開繊されたチョップド炭素繊維とを特定の割合にて含んでいると好ましい。 【0017】 また、該ランダム層としては、熱可塑性樹脂の存在量が、チョップド炭素繊維100重量部に対し、50?1000重量部であると好ましく、50?400重量部であると好ましく、50?100重量部であると更に好ましい。チョップド炭素繊維100重量部に対し熱可塑性樹脂が50重量部未満ではドライのチョップド炭素繊維が増加してしまうことがあり、また、1000重量部を超えるとチョップド炭素繊維が少なすぎて構造材料として不適切となる恐れがある。 【0018】 該ランダム層としては、熱可塑性樹脂にチョップド炭素繊維がランダム配向しているランダム炭素繊維強化複合材料を層状に成形したものが好ましい。 また、該ランダム層は、本発明の効果を阻害しないものであれば、チョップド炭素繊維、熱可塑性樹脂以外の第3成分(フラーレンやカーボンナノチューブといった他の炭素材料、熱硬化性樹脂、金属、セラミック、ガラス等の異素材、各種添加剤など)を含んでいても良い。 本発明の接合体の補強材や被補強材が複数のランダム層を有する場合、そのうち上記の好ましい態様を満たすものは1層だけでも良く、複数あっても良く、全てであっても良い。 【0019】 [一方向材層] 本発明の接合体の補強材や被補強材が有する一方向材層とは、連続炭素繊維が熱可塑性樹脂(ランダム層に含まれる熱可塑性樹脂と同じものでも異なるものでも良い)中に一方向にそろえて配置されているものを言い、本発明において、一方向材とは連続炭素繊維を指す。 【0020】 本発明において用いられる一方向材としては、複数の連続炭素繊維を積層したものであっても良く、連続炭素繊維の束をシート状にして角度を変えて積層したもの(多軸織物基材)を、ナイロン糸、ポリエステル糸、ガラス繊維糸等のステッチ糸で、この積層体を厚さ方向に貫通して、積層体の表面と裏面の間を表面方向に沿って往復しステッチしたような多軸織物であっても良い。 上記一方向材層を構成する連続炭素繊維の平均繊維径は好ましくは3?12μmであり、より好ましくは5?7μmである。 【0021】 本発明の接合体の補強材や被補強材が有する一方向材層においては、熱可塑性樹脂の存在量が、炭素繊維100重量部に対し、30?200重量部であると好ましく、40?100重量部であるとより好ましい。 また、上記一方向材層としては、連続炭素繊維を一方向に引き揃えた一方向材に熱可塑性樹脂を含浸あるいは半含浸させる等して、連続炭素繊維が熱可塑性樹脂中に一方向にそろえて配置されている連続炭素繊維強化複合材料が層状に成形されたものが好ましい。 【0022】 また、上記一方向材層は、本発明の効果を阻害しないものであれば、連続炭素繊維、熱可塑性樹脂以外の第3成分(フラーレンやカーボンナノチューブといった他の炭素材料、熱硬化性樹脂、金属、セラミック、ガラス等の異素材、各種添加剤など)を含んでいても良い。 本発明の接合体の補強材や被補強材が複数の一方向材層を有する場合、そのうち上記の好ましい態様を満たすものは1層だけでも良く、複数あっても良く、全てであっても良い。 【0023】 [熱可塑性樹脂] 本発明の接合体の補強材や被補強材が有するランダム層や一方向材層は熱可塑性樹脂をマトリックス(樹脂)とするものである。該熱可塑性樹脂としては、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリオキシメチレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンエーテル、変性ポリフェニレンエーテル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、AS樹脂、ABS樹脂などおよびこれら2種類以上の樹脂組成物からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましいものとして挙げられる。特に、コストと物性の兼ね合いからポリアミド、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリフェニレンスルフィド、およびこれら2種類以上の樹脂組成物からなる群より選ばれる少なくとも1種がより好ましい。 【0024】 本発明の接合体において、補強材や被補強材が有するランダム層や一方向材層の各層に含まれるそれぞれの熱可塑性樹脂は同じものであっても異なるものであってもよい。 本発明において、上記熱可塑性樹脂と、前記のチョップド炭素繊維や連続炭素繊維を混合し、前記ランダム層や一方向材層を形成する方法としては公知の混練、含浸、成形技術を適用することができる。 【0025】 [チョップド炭素繊維] 本発明において、前記のランダム層に含まれるチョップド炭素繊維とは、炭素繊維を短くカットしたものであり、サイズ剤を用いて集束したものも含め公知のものを使用することができ、複数の種類・銘柄のものを使用しても良い。本発明において用いられるチョップド炭素繊維の好ましいものについては、ランダム層に関して前記したとおりである。 また、本発明において、被補強材がランダム層を有する場合、該ランダム層が含有するチョップド炭素繊維は、補強材のランダム層に含まれるものと同じものでも異なるものでも良い。 【0026】 [連続炭素繊維] 本発明において、前記の一方向材層に含まれる連続炭素繊維とは、チョップ、ミル、粉砕等の短繊維加工をされていない炭素繊維であり、かつウイスカ状でもない長繊維のものを指す。 本発明においては、公知の連続炭素繊維を使用することができ、複数の種類・銘柄のものを使用しても良い。 本発明において用いられる連続炭素繊維の好ましいものについては、ランダム層に関して前記したとおりである。 また、本発明において、被補強材が一方向材層を有する場合、該一方向材層が含有する連続炭素繊維は、補強材の一方向材層に含まれるものと同じものでも異なるものでも良い。 【0027】 [振動溶着] 本発明の接合体を得るために用いられる、振動溶着とは2つの部材を加圧により接触させた状態で、周期的に振動させることにより2部材間に発生する摩擦熱により樹脂を溶融させて接合する方法であり、公知の振動溶着機を用いて行うことができる。 【産業上の利用可能性】 【0028】 本発明の接合体は、航空宇宙、輸送機械、電気・電子機器、工作・産業・一般・精密機械など広範囲に利用でき、特に自動車用部品、車両構造に好適である。 【符号の説明】 【0029】 1.補強材 2.被補強材 3.ランダム層 4.一方向材層 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 熱可塑性樹脂にチョップド炭素繊維がランダム配向しているランダム層と、連続炭素繊維が熱可塑性樹脂中に一方向にそろえて配置されている一方向材層とをそれぞれ少なくとも1層ずつ有する補強材が、 ランダム層および一方向材層よりなる群から選ばれる少なくとも1つを有する、開断面形状の被補強材と中空閉断面を作るように振動溶着されており、 前記補強材は、ハット形状を有し、前記ランダム層及び前記一方向材層の一方をコア材とし、他方をスキン層とし、前記コア材の外側及び内側のいずれか一方の一部と他方の全部又は一部に前記スキン層が積層された積層構造を有する、接合体。 【請求項2】 熱可塑性樹脂にチョップド炭素繊維がランダム配向しているランダム炭素繊維強化複合材料と、連続炭素繊維が熱可塑性樹脂中に一方向にそろえて配置されている連続炭素繊維強化複合材料とを合わせて型内にてプレスすることにより、それぞれをランダム層、一方向材層とした立体形状である補強材を使用した請求項1に記載の接合体。 【請求項3】 ランダム層に含まれるチョップド炭素繊維が繊維長10?100mmのものである請求項1又は2に記載の接合体。 【請求項4】 ランダム層の全体積に対し、一方向材層が5?100Vol%の体積にて存在する補強材を使用した請求項1?3のいずれか1項に記載の接合体。 【請求項5】 ランダム層における熱可塑性樹脂の存在量が、チョップド炭素繊維100重量部に対し、50?1000重量部である事を特徴とする補強材を使用した請求項1?4のいずれか1項に記載の接合体。 【請求項6】 一方向材層における熱可塑性樹脂の存在量が、連続炭素繊維100重量部に対し、30?200重量部である事を特徴とする補強材を使用した請求項1?5のいずれか1項に記載の接合体。 【請求項7】 一方向材層が、連続炭素繊維を一方向に引き揃えた一方向材に熱可塑性樹脂を含浸あるいは半含浸させたものであることを特徴とする請求項1?6のいずれか1項に記載の接合体。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2016-07-05 |
出願番号 | 特願2012-554825(P2012-554825) |
審決分類 |
P
1
651・
161-
YAA
(B32B)
P 1 651・ 113- YAA (B32B) P 1 651・ 121- YAA (B32B) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 中尾 奈穂子 |
特許庁審判長 |
見目 省二 |
特許庁審判官 |
蓮井 雅之 渡邊 豊英 |
登録日 | 2015-02-13 |
登録番号 | 特許第5694386号(P5694386) |
権利者 | 帝人株式会社 |
発明の名称 | 炭素繊維強化複合材料の接合体 |
代理人 | 高松 猛 |
代理人 | 高松 猛 |